説明

電気ケーブル終端接続部

【課題】硬化前のゲルを加圧する際においても、ゴムブロックの位置ズレを抑制する。
【解決手段】電気ケーブル終端接続部は、碍管と、端部が碍管内に挿入された電気ケーブルと、電気ケーブルに装着されたゴムブロックと、碍管内に充填されたゲル状絶縁体と、を備える。碍管内には、ゴムブロックが電気ケーブルに対して移動しないように当該ゴムブロックを固定する固定手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍管内にゲル状絶縁体が充填された電気ケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気ケーブル終端接続部としては、碍管内に絶縁充填物として油が充填された油浸式の終端接続部が知られている。この方式であると油漏れが生じた場合に周囲の環境を汚染するおそれがあることから、近年においては、完全乾式の終端接続部が開発されている。
完全乾式の終端接続部には、例えば油の代わりに絶縁性樹脂であるシリコーンゲルなどのゲル状絶縁体を碍管内に充填する終端接続部が知られている(例えば特許文献1参照)。ゲル状絶縁体の原料(以下「ゲル原料」という)は液状であるが、これが固まってゲルになると流動性を失う。このようなゲル状絶縁体を充填した終端接続部によれば、前記のような環境汚染のおそれを回避できる。
前記方式が適用された終端接続部では、ゲル状絶縁体中に気泡が発生するのを防止するため、ゲル原料を碍管内に注入する際に、例えば図9に示すような専用の注入装置300(例えば非特許文献1参照)を用いている。この注入装置300は、スタティックミキサー301とポンプ302とを有している。ゲル原料である主剤Aと硬化剤Bとをポンプ302を介してスタティックミキサー301まで供給し、スタティックミキサー301で撹拌した後に、碍管400の下部から、混合したゲル原料を注入することにより、ゲル原料に空気が混入してしまうことを防止している。
【0003】
ところで、例えば特許文献1に記載の終端接続部では、ゲル原料に空気が混入することを防止するために注入時にどうしても高価な注入装置が必要であり、組立コストが増加する一因となっていた。そこで本発明者らは、専用の注入装置を用いず、簡易な手法でゲル状絶縁体中の気泡を抑制できる方法を鋭意検討した結果、ゲル原料を加圧しながら固化させれば、ゲル状絶縁体中に気泡が残るのを抑制できることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−80338号公報
【非特許文献1】Jicable’03A6.4.”New dry outdoor terminations for HV extruded cables”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気ケーブルの所定位置には絶縁用のゴムブロックが装着されているが、上述したように硬化前のゲル原料を加圧すると、その圧力によってゴムブロックが所定位置からずれてしまうことが懸念される。ゴムブロックの位置ズレは、絶縁性能に悪影響を及ぼし、絶縁耐力の低下や絶縁破壊を誘発してしまうおそれがある。
このため、本発明の課題は、硬化前のゲルを加圧する際においても、ゴムブロックの位置ズレを抑制することのできる電気ケーブル終端接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の電気ケーブル終端接続部の一態様は、
碍管と、
端部が前記碍管内に挿入された電気ケーブルと、
前記電気ケーブルに装着されたゴムブロックと、
前記碍管内に充填されたゲル状絶縁体と、を備える電気ケーブル終端接続部において、
前記碍管内には、前記ゴムブロックが前記電気ケーブルに対して移動しないように当該ゴムブロックを固定する固定手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、電気ケーブルに対して移動しないようにゴムブロックを固定する固定手段が碍管内に設けられているので、ゲル状絶縁体の原料であるゲル原料を、電気ケーブル終端接続部の碍管内に注入してから、碍管内に充填した硬化前のゲル原料を加圧したとしてもゴムブロックは電気ケーブルに対して移動しないことになる。したがって、加圧によりゴムブロックが位置ズレしてしまうことを抑制することができる。
【0008】
前記固定手段として好ましいものとしては、前記電気ケーブルの周囲を囲む筒状の本体部を備えたものがある。この固定手段においては、本体部の下端が前記碍管の下側開口を塞ぐ下部金具に載置され、前記本体部の上端が前記ゴムブロックの下部に当接している。
【0009】
このように、筒状の本体部によってゴムブロックが支持されているので、ゴムブロックと本体部との当接面積を全周にわたって確保することができ、加圧時にゴムブロックが傾くのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲル原料を加圧して固化する際に、ゴムブロックの位置がずれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る電気ケーブル終端接続部の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の電気ケーブル終端接続部に備わる固定手段の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1中符号Cで示す円の部分を示す拡大図である。
【図4】本実施形態の電気ケーブル終端接続部の組立方法の一工程を示す説明図である。
【図5】本実施形態の電気ケーブル終端接続部の組立方法の一工程を示す説明図である。
【図6】本実施形態の電気ケーブル終端接続部の組立方法の一工程を示す説明図である。
【図7】本実施形態の電気ケーブル終端接続部の変形例を示す断面図である。
【図8】図7の電気ケーブル終端接続部に備わる固定手段の概略構成を示す斜視図である。
【図9】従来用いられていた専用の注入装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施形態1)
まず、電気ケーブル終端接続部1について説明する。図1は、本実施形態に係る電気ケーブル終端接続部1の概略構成を示す断面図である。この図1において、2はゴム又はプラスチックで絶縁された電気ケーブルである。このケーブルは段剥ぎされており、外部半導電層3、絶縁層4、導体5が順次露出されている。6は外部半導電層3から絶縁層4にかけて電気ケーブル2の外周に装着された常温収縮ゴムブロックである。7は導体5に圧縮接続された導体引出棒、8は碍管、9は碍管8の上側開口を塞ぐ上部金具、10は碍管8の下側開口を塞ぐ下部金具、11は下部金具10に取り付けたケーブル保護金具、12aは碍管8内に充填されたゲル状絶縁体、13は碍管8からゲル原料の流出を阻止するゲル止め部である。20は、ゴムブロック6が電気ケーブル2に対して移動しないように当該ゴムブロック6を固定する固定手段である。
【0014】
ゴムブロック6は、電界緩和用の半導電ゴム部61と絶縁ゴム部62とから一体的に構成され、電気ケーブル2により拡径されていることによる収縮力でケーブルコア外周面に密着している。
半導電ゴム部61は略円筒形状であり、その下端部は外径が下方に向けて狭まるようなテーパ状となっている。絶縁ゴム部62は、略円筒形状であり、半導電ゴム部61の上部に重なっている。ここで、半導電ゴム部61及び絶縁ゴム部62の外周は互いに面一となっていて、碍管8の内周よりも小さく設定されている。これにより、電気ケーブル2に装着されて碍管8内に収容されたゴムブロック6は、碍管8の内周面からは所定の間隔を空けることになる。
【0015】
碍管8は、例えばFRPから形成された筒体に対してシリコーンゴム等のゴムを被覆することにより多数のヒダが形成されている。
【0016】
ゲル状絶縁体12aは、ゲル原料12である液状の主剤と硬化剤とを撹拌して碍管8内に注入した後、硬化させることで、碍管8内に充填されている。市販のゲル原料12としては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のELASTOSIL(登録商標)RT601や、東レ・ダウコーニング株式会社製のDY35−700A/B等のシリコーンゲルがある。ゲル原料12としては、第一工業製薬株式会社製のEF243や、日立化成工業株式会社製のKU7008等のウレタンゴムを用いることも可能である。
また、検討中のゲル原料12として、付加反応タイプのシリコーンゴムの原料とシリコーンオイルとを混合したものがある。この場合、混合比率は、シリコーンゴムが1で、シリコーンオイルが9であることが好ましい。
【0017】
図2は固定手段20の概略構成を示す斜視図であり、図3は図1中符号Cで示す円の部分を示す拡大図である。この図2,3に示すように、固定手段20は、電気ケーブル2の周囲を囲む筒状の本体部21と、本体部21の下端から外側に向けて延出する台座部22とを備える。
本体部21の下端及び台座部22は、碍管8の下部金具10に載置されている。本体部21の上端は、ゴムブロック6における半導電ゴム部61の下端部に当接している。ここで、本体部21の上端面211は、半導電ゴム部61の下端部の傾斜した周面に沿うように、上方に向かって広がるテーパ面となっている。
台座部22は、貫通孔221を有しており、この貫通孔221は、下部金具10に形成されたネジ孔101に連通している。貫通孔221を介してネジ40をネジ孔101に螺合することで、固定手段20を碍管8内に固定している。
【0018】
次に、本実施形態の電気ケーブル終端接続部1の組立方法について説明する。
まず、電気ケーブル2の終端を段削りして導体5を露出させ、その導体5に対して導体引出棒7を圧縮等により接続する。次いで、電気ケーブル2に対して下部金具10を取り付ける。下部金具10の取付後には、図4に示すように固定手段20を下部金具10に固定してから、ゴムブロック6を電気ケーブル2の所定位置(ケーブルコア)に取り付ける。この際、固定手段20の上端面211と、ゴムブロック6の下端部とが当接することで、固定手段20がゴムブロック6を下方から支持することになり、電気ケーブル2に対するゴムブロック6の移動を規制する。
その後、碍管8内に電気ケーブル2を挿入し、碍管8に下部金具10を取り付ける。この取付後においては、下部金具10のケーブル保護金具11と、電気ケーブル2との間に防食処理を施しつつ、ゲル止め部13を形成する。
【0019】
そして、図5に示すように、ハンドミキサー等により主剤と硬化剤が撹拌されたゲル原料12を碍管8の上方から注入する。ゲル原料12がゴムブロック6近傍まで満たされるまでは、ゲル原料12が落下した勢いによってゴムブロック6に対して下方向に力が付勢する。しかしながら、ゴムブロック6は固定手段20によって下方から支持されているので、ゲル原料12の落下による位置ズレが抑制される。
その後、ゲル原料12を所定位置まで注入したら、図1に示すように碍管8に上部金具9を取り付け、碍管8の内部空間を密閉する。
【0020】
そして、当該ゲル原料12を加圧しつつ固化する。加圧時における状態を図6に示す。図6に示すように上部金具9には碍管8の内部空間と外部とを連通する連通口91が形成されていて、この連通口91に加圧用の気圧調整装置を取り付ける。ここでは気圧調整装置として圧縮気体を貯留したボンベ200を例示する。ボンベ200に貯留される気体としては、例えば窒素や、空気、六弗化硫黄ガス等が好ましい。なお、気圧調整装置としては、ボンベ以外にもポンプやコンプレッサー等を用いることが可能である。
【0021】
次いで、ボンベ200を連通口91に接続した後には、ボンベ200から気体を碍管8の内部空間に供給する。これにより碍管8の内部空間の気圧を高めて、ゲル原料12を加圧する。この際、内部空間の気圧は、ゲル原料12に対する圧力が0.3kg/cm〜1.5kg/cmとなるように設定されていることが好ましい。そして、加圧したままの状態で、ゲル原料12が硬化する所定時間が経過するまで待機し、経過後においてはボンベ200を取り外す。これにより電気ケーブル終端接続部1の組み立てが完了する。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、ゲル原料12の加圧時には、ゴムブロック6は固定手段20によって下から支持され固定されて電気ケーブル2に対して移動しないことになるので、加圧によってゴムブロック6が位置ズレしてしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、筒状の本体部21によってゴムブロック6が支持されているので、ゴムブロック6と本体部21との当接面積を全周にわたって確保することができ、加圧による圧力を分散させることができる。
【0024】
(実施形態2)
実施形態1では、碍管8の内周から所定間隔開けて配置されたゴムブロック6を固定手段20で支持する場合を例示したが、碍管8の内周に密着するゴムブロックであっても固定手段で固定することは可能である。以下、具体的に図7を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態1と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図7に示す電気ケーブル終端接続部1Aは、碍管8の内周に密着するゴムブロック6aを備えている。このゴムブロック6aの半導電ゴム部61aは略円筒形状であり、その上部が上方に向けて広がっている。絶縁ゴム部62aは、半導電ゴム部61aの上部を覆うとともに、下部がスカート状に広がりその周縁部が碍管8の内周に一回り密着する形状となっている。このため、ゲル原料12は絶縁ゴム部62aにのみ接触している。
【0026】
また、下部金具10aの上面には、固定手段20aの位置決めをする凹部105aが周方向に沿って形成されている。
そして、図8に示す固定手段20aは、凹部105a内に載置される筒状の本体部21aと、本体部21aの上端部でその全周にわたって一体化された環状部23aとを有する。環状部23の縦断面形状は略円形状となっている。これにより、環状部23aの上面も円弧状となるので、当該上端面に接するゴムブロック6aを傷付けることを抑制している。
この環状部23aは、ゴムブロック6aの絶縁ゴム部62aのスカート状に広がる下部の奥に当接して、ゴムブロック6aを下から支えている。
【0027】
上記実施形態では、ゲル原料に圧力をかける手段として圧縮空気を用いた例を示したが、ゲル原料の上部に重い板等を置いて圧力をかけるなど他の加圧手段も利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 電気ケーブル終端接続部
2 電気ケーブル
3 外部半導電層
4 絶縁層
5 導体
6 ゴムブロック
7 導体引出棒
8 碍管
9 上部金具
10 下部金具
11 ケーブル保護金具
12 ゲル原料
12a ゲル状絶縁体
13 ゲル止め部
20 固定手段
21 本体部
22 台座部
61 半導電ゴム部
62 絶縁ゴム部
91 連通口
200 ボンベ(気圧調整装置)
211 上端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍管と、
端部が前記碍管内に挿入された電気ケーブルと、
前記電気ケーブルに装着されたゴムブロックと、
前記碍管内に充填されたゲル状絶縁体と、を備える電気ケーブル終端接続部において、
前記碍管内には、前記ゴムブロックが前記電気ケーブルに対して移動しないように当該ゴムブロックを固定する固定手段が設けられていることを特徴とする電気ケーブル終端接続部。
【請求項2】
請求項1記載の電気ケーブル終端接続部において、
前記碍管の下側開口を塞ぐ下部金具を備え、
前記固定手段は、前記電気ケーブルの周囲を囲む筒状の本体部を有し、
前記本体部の下端は前記下部金具に載置され、前記本体部の上端は前記ゴムブロックの下部に当接していることを特徴とする電気ケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−166976(P2011−166976A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28429(P2010−28429)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】