説明

電気デバイスに用いられる電極

【課題】集電体の重量を減少させて、電極を軽量化させる手段を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔を有し、カーボン材と樹脂からなる導電性プライマ層を形成した集電体上32に、織布、不織布等からなる非導電性の多孔質体31と、多孔質体の空孔内に保持される活物質34とを含む、活物質層33が形成されている。多孔質体の空孔内に活物質が保持されているので、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れることがないため、集電体に形成される貫通孔の孔径に制約がない。そのため集電体の重量を減少させることができ、電極を軽量化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイスに用いられる電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、活物質等がバインダとともに集電体に塗布されてなる活物質層を有する正極および負極が、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0004】
上述したような自動車等のモータ駆動用電源として用いられる非水電解質二次電池には、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用非水電解質二次電池と比較して極めて高い出力特性を有することが求められている。このような要求に応えるべく、鋭意研究開発が進められているのが現状である。
【0005】
従来、このような、正極および負極を製造するプロセスとしては、集電体(正極であればアルミ箔等、負極であれば銅箔等が一般的)に、活物質等の混入されたスラリーを塗布し乾燥する方法があった。このような塗工工程を必要とする従来の製造方法においては、液体である活物質スラリーが垂れないように、用いる集電体の形状には制限があり、かような集電体としては、主には穴のあいていない平坦なものが一般的であった。
【0006】
一方で、高密度化が求められている現状の下、電池全体の重量で大きな割合を占める集電体を軽量化するために、集電体に複数の貫通孔を有する、多孔質金属集電体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−111272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように多孔質金属集電体を用いる場合も、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れないように、その集電体に形成されている貫通孔の孔径に制約があった。その結果、集電体の重量を減少させることができないという問題があった。そこで、本発明は、集電体の重量を減少させて、電極を軽量化させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数の貫通孔を有する集電体の上に、非導電性の多孔質体と、前記多孔質体の空孔内に保持される活物質とを含む、活物質層が形成された電極を提供することによって、前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
活物質層は、非導電性の多孔質体を有し、その多孔質体の空孔内に活物質を保持してなる構造を有する。このように、多孔質体の空孔内に活物質が保持されているので、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れることがないため、集電体に形成される貫通孔の孔径に制約がない。したがって、集電体の重量を減少させることができ、電極を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、電気デバイスの代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)の非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。
【図2】図2は、積層型リチウムイオン二次電池で用いられる、第1実施形態の電極を拡大して表した断面概略図である。
【図3】図3は、第1実施形態の電極の製造方法の好ましい実施形態を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態の電極の製造方法の他の好ましい実施形態を示す図である。
【図5】図5は、双極型ではない積層型リチウムイオン二次電池で用いられる、第2実施形態の電極を拡大して表した断面概略図である。
【図6】図6は、双極型ではない積層型リチウムイオン二次電池で用いられる、第3実施形態の電極を拡大して表した断面概略図である。
【図7】図7は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、電気デバイスの好ましい実施形態として、非水電解質リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
リチウムイオン二次電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0014】
同様に、電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0015】
以下の説明では、双極型でない(内部並列接続タイプ)リチウムイオン電池につき図面を用いて説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
【0016】
図1は、扁平型(積層型)の非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の一実施形態の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、複数の貫通孔を有する正極集電体11(以下「複数の貫通孔を有する正極集電体」を単に「正極集電体」とも称する)の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、複数の貫通孔を有する負極集電体12(「複数の貫通孔を有する負極集電体」を単に「負極集電体」とも称する)の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0017】
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0018】
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0019】
<第1実施形態の電極>
図2は、積層型リチウムイオン二次電池10で用いられる、第1実施形態の電極35(正極および負極)を拡大して表した断面概略図である。
【0020】
本実施形態の電極35は、複数の貫通孔を有する集電体32(正極集電体,負極集電体)上に形成されてなる活物質層33(正極活物質層,負極活物質層)を有する。そして、前記活物質層33が、非導電性の多孔質体31と、前記多孔質体31の空孔内に保持される活物質34(正極活物質,負極活物質)とを含む。本明細書中、「集電体」と記載する場合、正極集電体,負極集電体の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。同様に、「活物質層」と記載する場合、正極活物質層,負極活物質層の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。同様に、「活物質」と記載する場合、正極活物質,負極活物質の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。
【0021】
従来、多孔質金属集電体を用いる場合も、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れないように、その集電体に形成されている貫通孔の孔径に制約があった。その結果、集電体の重量を減少させることはできず、かような集電体を有して形成される電極を備える電池もまた、その重量の減少を望めなかった。ひいては、容量が向上させることができず、高密度化をすることができないという問題があった。
【0022】
これに対し、本実施形態の電極に用いられる活物質層は、非導電性の多孔質体を有し、その多孔質体の空孔内に活物質を保持してなる構造を有する。このように、多孔質体の空孔内に活物質が保持されているので、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れることがないため、集電体に形成される貫通孔の孔径に制約がない。そうであるため、かような集電体を有して形成される電極を備える電池は、その重量を有意に減少させることができ、ひいては、容量を増加させることができ、高密度化をすることができる。
【0023】
また、本実施形態の電極は、特定の活物質層のみならず、複数の貫通孔を有する集電体を備えてなる。かような構成により、かかる特定の活物質層のみを電極として使用する形態に比べて、正極集電板25および負極集電板27に向かう電子伝導性(横方向の電子伝導性)が有意に向上する。つまり、電池の高密度化および、集電層の横方向電子伝導性を自在にコントロールすることが可能となる。
【0024】
以下、本実施形態の電極について、詳細に説明する。
【0025】
[集電体]
本実施形態の複数の貫通孔を有する集電体の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子等を用いることができ、好適には金属が用いられる。金属としては、通常、アルミニウム、銅、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、その他合金等が使用される。
【0026】
本実施形態の複数の貫通孔を有する集電体の貫通孔の形状としては、四角形、菱形、亀甲形状、六角形、丸形、角型、星形、十文字形などが挙げられる。例えば、かような所定形状の多数の孔をプレス加工により、例えば、千鳥配置や、並列配置となるように形成した、いわゆるパンチングメタルシートなどがある。また、千鳥状の切れ目を入れたシートを引き伸ばして略ひし形の貫通孔を多数形成したいわゆるエキスパンドメタルシート等を使用できる。
【0027】
本実施形態の複数の貫通孔を有する集電体の開口率は、特に限定されない。上述もしたが、本実施形態の活物質層は、非導電性の多孔質体を有し、その多孔質体の空孔内に活物質を保持してなる構造を有する。このように、多孔質体の空孔内に活物質が保持されているので、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れることがないため、集電体に形成される貫通孔の孔径に制約はない。ただし、集電体の開口率の下限の目安は、好ましくは10面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは70面積%以上、さらに好ましくは90面積%以上である。このように、本実施形態の電極においては、90面積%以上の開口率を有する集電体をも使用することができる。また、上限としては、例えば、99面積%以下、あるいは、97面積%以下などである。このように、有意に大きな開口率を有する集電体を有して形成される電極を備える電池は、その重量を有意に減少させることができ、ひいては、容量を増加させることができ、高密度化をすることができる。
【0028】
また、本実施形態の複数の貫通孔を有する集電体の開口径も同様に、特に制限されないが、下限としては、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは150μm以上である。上限としては、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下程度である。なお、ここでいう開口径とは、開口部の外接円の直径である。外接円の直径は、レーザー顕微鏡や工具顕微鏡などにより集電体の表面観察を行い、開口部に外接円をフィッティングさせ、それを平均化したものである。
【0029】
また、本実施形態の複数の貫通孔を有する集電体の厚さは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜40μmである。上記で述べたように、従来、正極および負極を製造するプロセスとしては、集電体に、活物質等の混入されたスラリーを塗布し乾燥する方法があった。この活物質等の混入されたスラリーを塗布する際に、集電体をある程度の力(例えば、500N/mm程度)で引っ張る必要があった。そのため、集電体自体に引張り強度が求められ、特に大型電池では大面積塗工する必要があるのでその値は大きいものとなった。結果、集電体の厚みが増大し電池重量の増加、容量の減少ということが生じていた。これに対し、本実施形態の電極を作製する際には、従来の塗工・乾燥工程を経ることが不要である。そのため、塗工・乾燥工程で必要とされる引張り強度を有している必要がなく、その分、必要に応じ、集電体の厚みを薄くすることもでき、集電体の設計の自由度が向上する。
【0030】
[活物質層(正極活物質層,負極活物質層)]
本実施形態の電極に使用される活物質層は、非導電性の多孔質体と、前記多孔質体の空孔内に保持される活物質とを含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0031】
(非導電性の多孔質体)
活物質層33は、図2に示すように、非導電性の多孔質体である不織布31に、粒状の活物質34が保持されて形成されている。不織布31は、活物質層33の3次元的な骨格として機能しつつ、活物質34を保持している。活物質34が不織布31に内包されることで、活物質層33のヤング率が高くなり、耐久劣化時の活物質34の膨張収縮による電池性能の悪化を抑制でき、電池性能の長寿命化も可能となる。不織布31の空隙率は、特に限定されないが、70%〜98%であることが好ましい。
【0032】
不織布31は、繊維が異方向に重なって形成されている。不織布31には、樹脂製の非導電性材料が使用されており、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ナイロン等の繊維が適用されうる。なお、多孔質体として、不織布以外の形態が適用されてもよい。不織布以外の形態としては、樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート)製の織布などが考えられる。このように、展性、延性があり、比較的軽量で強度のある樹脂製織布または不織布を用いることで上記のような構造を達成できる。
【0033】
なお、本明細書中、多孔質体の空孔内に保持されうる成分(活物質のみならず、バインダや導電助剤などを含む)を総称して「電極構成材料」と称することがある。
【0034】
(活物質)
活物質としては、従来公知のものを使用することができる。
【0035】
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0036】
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0037】
それぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜25μmである。
【0038】
正極活物質、負極活物質の量は、特に制限されないが、好ましくは電極構成材料の総量に対して、50〜99質量%、より好ましくは70〜97%、さらに好ましくは80〜95%の範囲である。
【0039】
(その他の添加剤)
本実施形態の電極に使用される活物質層における多孔質体の空孔内に、活物質が保持されるだけではなく、その他の添加剤(例えば、バインダ(結着剤)、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等)が保持されることも好ましい。
【0040】
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
バインダ量は、活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは電極構成材料の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0042】
その他、上記のように、添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0043】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。導電助剤の含有量は、電極構成材料の総量に対して好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%であり、さらに好ましくは、4〜10質量%である。
【0044】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0045】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0046】
各活物質層の厚さについても特に制限はないが、電子抵抗を抑えるという観点から、各活物質層の厚さは、1〜120μm程度であることが好ましい。
【0047】
[電極の製造方法]
本実施形態の電極の製造方法は、複数の貫通孔を有する集電体上に、活物質層を配置する工程を有し、前記活物質層が、非導電性の多孔質体と、前記多孔質体の空孔内に保持される活物質とを有する。
【0048】
本実施形態の電極を製造する好ましい実施形態としては、図3、図4に示すように、まず、電極構成材料(例えば、活物質、導電助剤)および溶媒(例えば、NMP)を含む電極スラリーSを含浸槽45に準備する。次に、不織布31をガイドロール41、42、43により搬送し、含浸槽45を通過させて、不織布31に電極スラリーSを含浸させる(工程S11)。次に、ギャップ調整した2本のロール44の間を通過させて、余剰に付着した電極スラリーSを掻き落とす(工程S12)。この後、乾燥炉内にて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、活物質層(電極層)が形成される(工程S13)。続いて、かかる活物質層(電極層)を、複数の貫通孔を有する集電体上に、配置することによって、本実施形態の電極を製造することができる。なお、配置後、圧着等をすることによって電極の厚さを調整することも好ましい。
【0049】
上記でも述べたが、従来、多孔質金属集電体を用いる場合も、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れないように、その集電体に形成されている貫通孔の孔径に制約があった。さらに、貫通孔から垂れないように、電極スラリーの粘度等を調節する必要があり(つまり、貫通孔から垂れないような粘度に調節する必要があり)、生産性に欠け、生産の自由度も制限されていた。これに対し、第1実施形態の電極を製造する際には、電極スラリーSの粘度を特に気にする必要なく、広い粘度範囲において、複数の貫通孔を有する集電体に適用可能である。ここで、本実施形態における電極スラリーSの粘度としては、好ましくは500〜10000mPa・s、より好ましくは800〜9000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。
【0050】
また、このように、含浸槽45を通過させて不織布31に電極スラリーSを含浸させることで、設備コストを抑えつつ製造速度を高速にすることができ、最小限のコストアップで発明に係る活物質層(電極層)を製造できる。また、本実施形態では、電極スラリーSを不織布31に保持させた状態で乾燥させるため、両面乾燥が可能となり、乾燥時間が短縮される。また、多孔質体として不織布31を用いることで、多孔質体のコストを最小限に抑えることができる。
【0051】
なお、他の実施形態として、不織布31に電極スラリーSを含浸させるには、例えば両面ダイコーター等を用いて、不織布31の両面から電極スラリーSを塗布することも可能である。これにより、精度の高い活物質層を作成でき、電池性能を向上させることができる。また、電極スラリーSを非導電性の不織布31に保持させた状態で乾燥させるため、表面自由エネルギーの大きい不織布31に電極構成材料が吸着され、高温乾燥を行なっても電極構成材料の偏在が抑制され、電池の性能低下を引き起こさずに乾燥時間を短縮できる。
【0052】
また、他の実施形態としては、不織布31に電極スラリーSを含浸させるには、例えば不織布31をガイドロール41、42、43などで搬送させることなく、手作業で、電極スラリーSを含む、含浸槽45に含浸させる方法もある。かような方法であれば、別途の装置を準備する必要もなく、簡便な方法によって、電極構成材料を保持させることができる。
【0053】
以上説明した第1実施形態の電極は、以下の効果を有する。
【0054】
第1実施形態の電極における活物質層は、非導電性の多孔質体を有し、その多孔質体の空孔内に活物質を保持してなる構造を有する。このように、多孔質体の空孔内に活物質が保持されているので、活物質等の混入されたスラリーが、貫通孔から垂れることがないため、集電体に形成される貫通孔の孔径に制約がない。したがって、集電体の重量を減少させることができ、電極を軽量化することができる。その結果、かような集電体を有して形成される電極を備える電池は、その重量を有意に減少させることができ、ひいては、容量を増加させることができ、高密度化をすることができる。
【0055】
また、第1実施形態の本実施形態の電極は、特定の活物質層のみならず、集電体を備えてなる。かような構成により、かかる特定の活物質層のみを電極として使用する形態に比べて、横方向の電子伝導性が有意に向上する。その結果、電池の高密度化および、集電層の横方向電子伝導性を自在にコントロールすることが可能となる。
【0056】
<第2実施形態の電極>
図5は、積層型リチウムイオン二次電池10で用いられる、第2実施形態の電極65(正極および負極)を拡大して表した断面概略図である。第2実施形態の電極65も、複数の貫通孔を有する集電体62上に形成されてなる活物質層63を有し、前記活物質層63が、非導電性の多孔質体61と前記多孔質体の空孔内に保持される活物質64とを含む、という点では、第1実施形態の電極35と変わらない。しかしながら、図5に示すように、前記集電体62と、前記活物質層63との間に、導電性プライマ層66がさらに形成されてなる、という点で相違する。このように、導電性プライマ層66をさらに有する構成によって、以下の効果を有する。すなわち、第1実施形態の電極で述べた効果の他に、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが電解質層17を介して対向する方向(縦方向)の電子伝導性が、有意に向上する(図1参照)。また、導電性プライマ層66は、集電体62と、活物質層63との密着性を向上させる、接着剤としての機能をも有するため、集電体62と、活物質層63との接触抵抗が低下し、電池として構成した際に、高出力を期待することができる。
【0057】
(導電性プライマ層)
導電性プライマ層は導電性を有する樹脂層を含む。好適には、導電性プライマ層は、導電性を有する樹脂層からなる。導電性プライマ層が導電性を有するには、具体的な形態として、1)樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態、2)樹脂層が樹脂および導電性フィラー(導電材)を含む形態が挙げられる。
【0058】
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンがより好ましい。
【0059】
上記2)の形態に用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
【0060】
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、カーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。また、これらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0061】
前記カーボン材としては、例えば、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのカーボン材は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン材は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン材は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン材を導電性粒子として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
【0062】
導電性フィラー(導電材)の形状は、特に制限はなく、粒子状、粉末状、繊維状、板状、塊状、布状、またはメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。例えば、樹脂に対して広範囲に亘って導電性を付与したい場合は、粒子状の導電材料を使用することが好ましい。一方、樹脂において特定方向への導電性をより向上させたい場合は、繊維状等の形状に一定の方向性を有するような導電材料を使用することが好ましい。
【0063】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0064】
また、樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、樹脂層を形成する樹脂は、上記導電性フィラーに加えて、当該導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料を含んでいてもよい。樹脂層の構成材料として導電性のない高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0065】
導電性のない高分子材料の例としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
【0066】
導電性フィラーの含有量も特に制限はない。特に、樹脂が導電性高分子材料を含み、十分な導電性が確保できる場合は、導電性フィラーを必ずしも添加する必要はない。しかしながら、樹脂が非導電性高分子材料のみからなる場合は、導電性を付与するために導電性フィラーの添加が必須となる。この際の導電性フィラーの含有量は、非導電性高分子材料の全質量に対して、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは30〜85質量%であり、さらに好ましくは50〜80質量%である。かような量の導電性フィラーを樹脂に添加することにより、樹脂の質量増加を抑制しつつ、非導電性高分子材料にも十分な導電性を付与することができる。
【0067】
上記導電性プライマ層には、導電性フィラーおよび樹脂の他、他の添加剤を含んでいてもよいが、好ましくは、導電性フィラーおよび樹脂からなる。
【0068】
導電性プライマ層は、従来公知の手法により製造できる。例えば、スプレー法またはコーティング法を用いることにより製造可能である。具体的には、高分子材料を含むスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。この塗布の際には、所望の溶媒(例えば、NMP)で調製して、塗布液の形態にしてもよい。スラリーの調製に用いられる高分子材料の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。前記スラリーに含まれる他の成分としては、導電性フィラーが挙げられる。導電性フィラーの具体例についても上述の通りであるために、ここでは説明を省略する。あるいは、高分子材料および導電性フィラー、その他の添加剤を従来公知の混合方法にて混合し、得られた混合物をフィルム状に成形することで得られる。また、導電性プライマ層を別途の層として作製し、それを所望のもの(例えば、集電体)に配置させてもよい。
【0069】
導電性プライマ層の厚さにも特に制限はないが、例えば、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜9μmである。
【0070】
第2実施形態の電極の製造方法も、上記で説明した方法が同様に妥当し、さらに、前記集電体と、前記活物質層との間に、導電性プライマ層をさらに形成する工程を有する製造方法によって作製することができる。より具体的には、高分子材料および導電性フィラーを含むスラリーを調製し、これを集電体に塗布し硬化させる手法が挙げられる。かかる導電性プライマ層の作製方法も上記述べたとおりであり、特に好ましくは、カーボン材と樹脂とを含む塗布液を集電体に塗布し乾燥することによって形成される。このように、導電性プライマ層をさらに形成することによって、前記集電体と、前記活物質層とを密着させることが容易となり、生産性が向上する。
【0071】
以上説明した第2実施形態の電極は、以下の効果を有する。すなわち、第1実施形態の電極で述べた効果の他に、縦方向の電子伝導性が、有意に向上する。また、導電性プライマ層は、集電体と、活物質層との密着性を向上させる、接着剤としての機能をも有する。その結果、集電体と、活物質層との接触抵抗が低下し、電池として構成した際に、高出力を期待することができる。
【0072】
<第3実施形態の電極>
図6は、積層型リチウムイオン二次電池10で用いられる、第3実施形態の電極75(正極および負極)を拡大して表した断面概略図である。第3実施形態の電極75も、複数の貫通孔を有する集電体72上に形成されてなる活物質層73を有し、前記活物質層73が、非導電性の多孔質体71と前記多孔質体の空孔内に保持される活物質74とを含むという点では、第1実施形態の電極35と変わらない。しかしながら、活物質層73と接触する側の集電体72の表面には、表面化学処理、表面粗面化処理があらかじめ施されて、表面処理層76が存在している点が相違する。かような表面処理を施すことによって、集電体62と、活物質層63との接触抵抗が低下する。また、活物質層とも密着性も向上する。その結果、電池として構成した際に、高出力を期待することができる。また、導電性プライマ層のような別途の部材を設けなくてもよいという観点から、部品点数が低減され、さらなる軽量化に繋がる。その結果、電池として構成した際に、高密度化に繋がる。
【0073】
表面化学処理としては、酸処理、クロメート処理等が挙げられる。表面粗面化処理としては、電気化学的エッチング処理、酸またアルカリによるエッチング処理が挙げられる。
【0074】
以上説明した第3実施形態の電極は、以下の効果を有する。すなわち、第1実施形態の電極で述べた効果の他に、集電体と、活物質層との接触抵抗が低下する。また、活物質層とも密着性も向上する。その結果、電池として構成した際に、高出力を期待することができる。また、部品点数が低減され、さらに軽量化に繋がる。その結果、電池として構成した際に、高密度化に繋がる。
【0075】
上記で説明したリチウムイオン二次電池は、電極に特徴を有する。以下、その他の主要な構成部材について説明する。
【0076】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等のポリマー電解質を適宜用いることができる。
【0077】
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。また、支持塩(リチウム塩)としては、特に制限はないが、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0078】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。ゲル電解質は、Li伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。Li伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVdF、PVdF−HFPを用いることが望ましい。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。
【0079】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。
【0080】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0081】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれていてもよい。
【0082】
[タブおよびリード]
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0083】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0084】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0085】
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0086】
なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0087】
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図7は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0088】
図7に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0089】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0090】
また、図9に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図9に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0091】
上記リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0092】
なお、上記実施形態は、電気デバイスとして、リチウムイオン電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには、一次電池にも適用できる。また、電池だけではなく、キャパシタにも適用できる。
【実施例】
【0093】
上記電極を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
【0094】
1.正極スラリーの作製
正極活物質としてLiMn(平均粒子径20μm)と、導電助剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、86:6:8の質量比で混合することによって、正極スラリーを得た。なお、正極スラリーは、B型粘度計を用いて測定したところ、7050mPa・s(6rpm)であった。
【0095】
2.負極スラリーの作製
負極活物質として黒鉛(平均粒子径10μm)と、導電助剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてPVDFとを、90:4:6の質量比で混合することによって、負極スラリーを得た。なお、負極スラリーは、B型粘度計を用いて測定したところ、6200Pa・s(6rpm)であった。
【0096】
3.導電性プライマ層の前駆体の作成
アセチレンブラック(平均粒子径50nm)と、PVDFとを、70:30の質量比で混合することによって、導電性プライマ層の前駆体を得た。
【0097】
尚、上記1〜3で使用された溶媒は全てNMP(N−メチルピロリドン)であった。
【0098】
[実施例1]
(正極の作製)
非導電性の多孔質体である不織布(素材:ポリエチレン)に、上記1.で得られた正極スラリーを十分に含浸させ、その後、ドクターブレードを用いて厚みを制御した。それを、乾燥炉に入れ、100℃で乾燥することによって、NMPを十分に揮発させた。それを、ロール圧延することによって、シート状に形成された正極活物質層を得た。このシート状に形成された正極活物質層の厚さは、100μmであった。
【0099】
続いて、このシート状に形成された正極活物質層の片面に、上記3.で得られた導電性プライマ層の前駆体を結着剤として用いることによって、Al製メッシュシート(開口率90%;厚さ:50μm;開口径:200μm)を貼り付けた。なお、この際の導電性プライマ層の厚さは10μmであった。
【0100】
それを、乾燥炉に入れ、100℃で乾燥することによって、NMPを十分に揮発させた。それを、ロール圧延することによって、シート状に形成された正極を得た。このシート状に形成された正極の総厚みは105μmであった。
【0101】
(負極の作製)
非導電性の多孔質体である不織布(素材:ポリエチレン)に、上記2.で得られた負極スラリーを十分に含浸させ、その後、ドクターブレードを用いて厚みを制御した。それを、乾燥炉に入れ、100℃で乾燥することによって、NMPを十分に揮発させた。それを、ロール圧延することによって、シート状に形成された負極活物質層を得た。このシート状に形成された負極活物質層の厚さは、100μmであった。
【0102】
続いて、このシート状に形成された負極活物質層の片面に、上記3.で得られた導電性プライマ層の前駆体を結着剤として用いることによって、Cu製メッシュシート(開口率90%;厚さ:30μm;開口径:200μm)を貼り付けた。なお、この際の導電性プライマ層の厚さは10μmであった。
【0103】
それを、乾燥炉に入れ、100℃で乾燥することによって、NMPを十分に揮発させた。それを、ロール圧延することによって、シート状に形成された負極を得た。このシート状に形成された負極の総厚みは85μmであった。
【0104】
[比較例1]
実施例1で使用したAl製メッシュシートに、導電性プライマ層の前駆体を結着剤として用いることなく、上記1.で得られた正極スラリーを塗布しようとしたところ、穴からスラリーが垂れてしまい、十分な正極を得ることができなかった。
【0105】
また、実施例1で使用したCu製メッシュシートに、導電性プライマ層の前駆体を結着剤として用いることなく、上記2.で得られた負極スラリーを塗布しようとしたところ、穴からスラリーが垂れてしまい、十分な負極を得ることができなかった。
【0106】
[実施例2]
セパレータとして、ポリエチレン製微多孔質膜(厚さ=25μm 空孔率:55%)を準備した。また、電解液として、1M LiPF/(EC:DEC)(EC:DEC=1:1体積比)を準備した。上記セパレータを、実施例1で作製した正極と、実施例1で作製した負極とで挟持することによって発電要素を作製した。
【0107】
得られた発電要素を外装であるアルミラミネートシート製のバッグ中に載置し、上記で準備した電解液を注液した。真空条件下において、両電極に接続された電流取り出しタブが導出するようにアルミラミネートシート製バッグの開口部を封止し、試験用セルを完成させた。得られた電池(試験用セル)の厚みは、215μmであった。
【符号の説明】
【0108】
10、50 リチウムイオン二次電池、
11 (複数の貫通孔を有する)正極集電体、
12 (複数の貫通孔を有する)負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 電池外装材、
31、61、71 非導電性の多孔質体、
41、42、43 ガイドロール、
44 ロール、
45 含浸槽、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
32、62、72 (複数の貫通孔を有する)集電体、
33、63、73 活物質層、
34、64、74 活物質、
35、65、75 電極、
76 表面処理層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する集電体と、
前記集電体上に形成されてなる活物質層と、を有し、
前記活物質層が、非導電性の多孔質体と、前記多孔質体の空孔内に保持される活物質とを含む、電極。
【請求項2】
前記多孔質体が、樹脂製の織布または不織布である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記集電体と、前記活物質層との間に、導電性プライマ層がさらに形成されてなる、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極を含む、電気デバイス。
【請求項5】
複数の貫通孔を有する集電体上に、活物質層を配置する工程を有し、
前記活物質層が、非導電性の多孔質体と、前記多孔質体の空孔内に保持される活物質とを有する、電極の製造方法。
【請求項6】
前記集電体と、前記活物質層との間に、導電性プライマ層をさらに形成することを有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記導電性プライマ層が、カーボン材と樹脂とを含む塗布液を塗布することによって形成される、請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238469(P2012−238469A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106568(P2011−106568)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】