説明

電気乾燥庫の風路構造

【課題】この発明は、本体が左右方向に大きくなることを防ぎ、乾燥ムラを減少させることを目的とする。
【解決手段】この発明は、電気乾燥庫の風路構造において、本体内の上部に上部隔壁により加熱室を形成し、上部隔壁に乾燥室の熱気を加熱室に吸い込む吸込孔を形成し、加熱室に電気ヒータおよび送風機のファンを設置し、本体内の後部に上部が加熱室に連通するとともに下部が本体の下壁に達する後部熱風路を後部隔壁により形成し、後部隔壁に後部熱風路の熱風を乾燥室に吹き出す後部吹出孔を複数形成し、本体内の左右の側壁にトレーを載せる左右のトレー受けを上下に複数並べて設置し、左右のトレー受けに後部熱風路に連通する左右の側部熱風路を形成するとともにこの左右の側部熱風路の熱風を乾燥室に吹き出す左右の側部吹出孔を複数形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気乾燥庫の風路構造に係り、特に、本体が左右方向に大きくなることがなく、試料の乾燥ムラを減少させることができる電気乾燥庫の風路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ヒータで試料を乾燥する電気乾燥庫には、図3に示すものがある。図3に示す電気乾燥庫101は、左右の側壁102・103と後壁104と上壁105と下壁106とにより箱状に形成される本体107の前部に開口部108を開閉可能なドア109を設け、本体107内に乾燥室110を形成している。
【0003】
電気乾燥庫101は、本体107内の上部に上部隔壁111により加熱室112を形成している。上部隔壁111には、乾燥室110の熱気を加熱室112に吸い込む吸込孔113を形成し、吸込孔113に内気循環量を調整するシャッタ114を設置している。加熱室112には、電気ヒータ115および送風機116のファン117を設置している。送風機115のモータ118は、上壁105の外側に配置され、カバー119により覆われている。
【0004】
電気乾燥庫101は、上壁105にカバー119内に臨む吸気口120を形成し、吸気口120を上部隔壁111内に形成した連絡通路121により吸込孔113に連通している。吸気口120には、吸気量を調整するダンパ122を設置している。また、電気乾燥庫101は、上壁105にカバー119内に臨む排気口123を形成し、乾燥室110に連通している。吸気口120と排気口123とは、カバー119内の仕切り壁124で仕切られた吸気通路125と排気通路126とによりそれぞれ外気に連通している。
【0005】
電気乾燥庫101は、本体107内の後部に、後部隔壁127により後部熱風路128を形成している。後部熱風路128は、上部が加熱室112に連通するとともに下部が下壁106に達するように形成している。後部隔壁127には、後部熱風路128の熱風を乾燥室110に吹き出す後部吹出孔129を複数形成している。
【0006】
この電気乾燥庫101は、本体107内の左右の側壁102・103にトレー130を載せる左右のトレー受け131・132を上下に複数並べて設置している。電気乾燥庫101は、本体107内の乾燥室110に電気ヒータ115を熱源として送風機116により発生した熱風を後部吹出孔129から乾燥室110内に送り、乾燥室110内の熱気を吸込孔113から吸い込んで循環させる間に、乾燥室110に配置したトレー130内の試料を乾燥する。
【0007】
電気乾燥庫101は、加熱室112と乾燥室110とに循環される内気循環量をシャッタ114により調整する。また、電気乾燥庫101は、乾燥状態によって、吸気口120のダンパ122を開いて外気を取り入れるとともに排気口123から内気の一部を排気することで、乾燥室110内の空気を入れ換えて乾燥する。
【0008】
従来の電気乾燥庫の風路構造には、本体内の左右の側壁に形成した熱風路から熱風を乾燥室内に吹き出すもの(特許文献1)、本体内のいずれか一方の側壁に形成した熱風路から熱風を乾燥室内に吹き出し、いずれか他方の側壁に形成した吸込路に乾燥室の熱気を吸い込むもの(特許文献2)、などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭62−176696号公報
【特許文献2】特開2001−103905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前記特許文献1に記載の電気乾燥庫の風路構造は、本体内の左右にそれぞれ風路を設け、左右2方向からの熱風を乾燥室に吹き出すため、左右の風路分だけ本体が左右方向に大きくなっていた。前記特許文献2に記載の電気乾燥庫の風路構造も、本体内の左右にそれぞれ風路を設け、乾燥室内のいずれか一方の側面から他方の側面に向かって熱風を流しているため、左右の風路分だけ本体が左右方向に大きくなっていた。
【0011】
また、左右2方向からの熱風を乾燥室に吹き出す特許文献1に記載の電気乾燥庫の風路構造は、左右の風路の熱風温度を均一にするために、電気ヒータも左右風路でそれぞれ1つずつが必要であった。さらに、乾燥室に後方から熱風を吹き出す図3に記載の電気乾燥庫の風路構造や、左右いずれか1方向に熱風を乾燥室に吹き出す特許文献2に記載の電気乾燥庫の風路構造は、乾燥ムラを生じるおそれがあった。
【0012】
この発明は、本体が左右方向に大きくなることを防ぎ、乾燥ムラを減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、本体内の乾燥室に電気ヒータを熱源として送風機により発生した熱風を送り、前記乾燥室に配置したトレー内の試料を乾燥する電気乾燥庫の風路構造において、前記本体内の上部に上部隔壁により加熱室を形成し、前記上部隔壁に前記乾燥室の熱気を加熱室に吸い込む吸込孔を形成し、前記加熱室に前記電気ヒータおよび前記送風機のファンを設置し、前記本体内の後部に上部が前記加熱室に連通するとともに下部が前記本体の下壁に達する後部熱風路を後部隔壁により形成し、前記後部隔壁に前記後部熱風路の熱風を乾燥室に吹き出す後部吹出孔を複数形成し、前記本体内の左右の側壁に前記トレーを載せる左右のトレー受けを上下に複数並べて設置し、前記左右のトレー受けに前記後部熱風路に連通する左右の側部熱風路を形成するとともにこの左右の側部熱風路の熱風を前記乾燥室に吹き出す左右の側部吹出孔を複数形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明の電気乾燥庫の風路構造は、後部隔壁の後部吹出孔および左右のトレー受けの側部吹出孔の3方向から試料に熱風を当て乾燥するので、試料の乾燥ムラを減少させることができる。また、この発明の電気乾燥庫の風路構造は、左右のトレー受けで側部熱風路を形成しているので、本体内に左右の側部隔壁を設置して左右の熱風路を形成する風路構造に比べて、左右の側部隔壁および左右の熱風路の厚さぶんだけ本体を左右方向に小さくすることができ、コンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)は電気乾燥庫の正面図、図1(B)は電気乾燥庫の扉を外した状態の正面図、図1(C)は図1(A)のC−C線による断面図である。(実施例)
【図2】図2は図3に示す従来の電気乾燥庫とこの発明の電気乾燥庫との乾燥バラツキを示すグラフである。(実施例)
【図3】図3(A)は電気乾燥庫の正面図、図3(B)は電気乾燥庫の扉を外した状態の正面図、図3(C)は図3(A)のC−C線による断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の電気乾燥庫の風路構造は、後部隔壁の後部吹出孔および左右のトレー受けの側部吹出孔の3方向から試料に熱風を当てることで、乾燥ムラを減少させ、本体の左右方向の大きさを小さくするものである。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0017】
図1・図2は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は電気乾燥庫である。電気乾燥庫1は、左右の側壁2・3と後壁4と上壁5と下壁6とにより箱状の本体7を形成し、本体7の前部に開口部8を開閉可能なドア9を設け、本体7内に乾燥室10を形成している。
【0018】
電気乾燥庫1は、本体7内の上部に上部隔壁11により上壁5との間に加熱室12を形成している。上部隔壁11には、乾燥室10の熱気を加熱室12に吸い込む吸込孔13を形成し、吸込孔13に内気循環量を調整するシャッタ14を設置している。加熱室12には、電気ヒータ15および送風機16のファン17を設置している。送風機16のモータ18は、上壁5外側に配置され、カバー19により覆われている。
【0019】
電気乾燥庫1は、上壁5にカバー19内に臨む吸気口20を形成している。吸気口20は、上部隔壁11内に形成した連絡通路21により吸込孔13に連通している。吸気口20には、吸気量を調整するダンパ22を設置している。また、電気乾燥庫1は、上壁5にカバー19内に臨む排気口23を形成している。排気口23は、乾燥室10に連通している。吸気口20と排気口23とは、カバー19内の仕切り壁24で仕切られた吸気通路25と排気通路26とにそれぞれ連通している。吸気通路25と排気通路26とは、吸気口20と排気口23とを外気に連通している。
【0020】
電気乾燥庫1は、本体7内の後部に、後部隔壁27により後壁4との間に後部熱風路28を形成している。後部熱風路28は、上部が加熱室12に連通するとともに下部が下壁6に達するように形成している。後部隔壁27には、後部熱風路28の熱風を乾燥室10に吹き出す後部吹出孔29を複数形成している。
【0021】
この電気乾燥庫1は、本体7内の左右の側壁2・3にトレー30を載せる左右の一対のトレー受け31・32を上下に複数並べて設置している。左右のトレー受け31・32は、断面が横向きの樋形状に形成され、開口側をそれぞれ側壁2・3に向けて取り付けている。左右のトレー受け31・32は、内部に前部が閉鎖されて後部が前記後部熱風路28に連通する左右の側部熱風路33・34を形成するとともに、この左右の側部熱風路33・34の熱風を乾燥室10に吹き出す左右の側部吹出孔35・36を複数形成している。
【0022】
前記後部吹出口29と左右の側部吹出孔35・36とは、トレー30の下側で同じ高さ位置になるように、水平方向に並べて形成している。
【0023】
次に作用を説明する。
【0024】
試料を乾燥する際には、電気乾燥庫1のドア9を開け、本体7内の左右のトレー受け31・32に試料を入れたトレー30を載せ、ドア9を閉めて電気ヒータ15および送風機16を作動させ、加熱室12で熱風を発生する。加熱室12で発生された熱風は、後部熱風路28に送り出され、後部隔壁27の後部吹出孔29から乾燥室10の前方向に吹き出される。また、後部熱風路28の熱風は、左右のトレー受け31・32に形成した左右の側部熱風路33・34に流れ、左右の側部吹出孔35・36から乾燥室10の右方向・左方向に吹き出される。
【0025】
乾燥室10に3方向から吹き出された熱風は、トレー30内の試料を乾燥する。試料を乾燥した後の熱気は、上方向の上部隔壁11の吸込孔13から加熱室12に吸い込まれ、再び電気ヒータ15で加熱されて送風機16で熱風として再び後部熱風路28に送り出される。後部熱風路28の熱風は、前記のように後部吹出孔29から乾燥室10に吹き出され、また、左右のトレー受け31・32の側部吹出孔35・36から乾燥室10に吹き出され、試料を乾燥する。
【0026】
これにより、電気乾燥庫1は、電気ヒータ15を熱源として送風機16により加熱室12で発生した熱風を3方向から乾燥室10に送り、加熱室12と乾燥室10との間で熱風を循環させる間に、乾燥室10に配置したトレー30内の試料を乾燥する。
【0027】
電気乾燥庫1は、加熱室12と乾燥室10との間で循環させる内気循環量をシャッタ14の開閉により調整する。また、電気乾燥庫1は、乾燥状態によって、吸気口20のダンパ22を開いて外気を取り入れるとともに排気口23から内気の一部を排気することで、乾燥室10内の空気を入れ換えて乾燥する。吸気口20を全開し、シャッタ14を全閉した場合、吸気口20から吸い込まれた外気は、電気ヒータ15で加熱され、送風機16で後部熱風路28に送り出され、後部吹出孔29、左右の側部吹出孔35・36から乾燥室10に吹き出され、トレー30を通過して試料を乾燥した後、庫内を循環されずに、排気口23から外部に排気される。
【0028】
このように、電気乾燥庫1は、後部隔壁27の後部吹出孔29から乾燥室10に熱風を吹き出し、また、左右のトレー受け31・32の側部吹出孔35・36から乾燥室10に熱風を吹き出す風路構造としている。
【0029】
これにより、この電気乾燥庫1の風路構造は、後部隔壁27の後部吹出孔29および左右のトレー受け31・32の側部吹出孔35・36の3方向から試料に熱風を当て乾燥するので、図2に波線で示すように、実線で示す従来と比べて試料の乾燥ムラを減少させることができる。図2は、被試験用試料を電気乾燥庫1内の各部で乾燥させ、一定時間が経過したときの乾燥率(%)=乾燥重量÷初期重量を計算したものである。最大バラツキ(%)は、{同一トレー内での最大値(%)−最小値(%)}の乾燥室10内での最大値を示している。
【0030】
また、この電気乾燥庫1の風路構造は、左右のトレー受け31・32で側部熱風路33・34を形成しているので、本体7内に左右の側部隔壁を設置して左右の熱風路を形成する風路構造に比べて、左右の側部隔壁および左右の熱風路の厚さぶんだけ本体7を左右方向に小さくすることができ、コンパクト化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の電気乾燥庫の風路構造は、本体が左右方向に大きくなることを防ぎ、乾燥ムラを減少させることができるものであり、電気ヒータによる乾燥庫に限らず、熱風により試料等を乾燥する乾燥機に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 電気乾燥庫
2 右の側壁
3 左の側壁
4 後壁
7 本体
10 乾燥室
11 上部隔壁
12 加熱室
13 吸込孔
15 電気ヒータ
16 送風機
20 吸気口
23 排気口
27 後部隔壁
28 後部熱風路
29 後部吹出孔
30 トレー
31 右のトレー受け
32 左のトレー受け
33 右の側部熱風路
34 左の側部熱風路
35 右の側部吹出孔
36 左の側部吹出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内の乾燥室に電気ヒータを熱源として送風機により発生した熱風を送り、
前記乾燥室に配置したトレー内の試料を乾燥する電気乾燥庫の風路構造において、
前記本体内の上部に上部隔壁により加熱室を形成し、
前記上部隔壁に前記乾燥室の熱気を加熱室に吸い込む吸込孔を形成し、
前記加熱室に前記電気ヒータおよび前記送風機のファンを設置し、
前記本体内の後部に上部が前記加熱室に連通するとともに下部が前記本体の下壁に達する後部熱風路を後部隔壁により形成し、
前記後部隔壁に前記後部熱風路の熱風を乾燥室に吹き出す後部吹出孔を複数形成し、
前記本体内の左右の側壁に前記トレーを載せる左右のトレー受けを上下に複数並べて設置し、
前記左右のトレー受けに前記後部熱風路に連通する左右の側部熱風路を形成するとともにこの左右の側部熱風路の熱風を前記乾燥室に吹き出す左右の側部吹出孔を複数形成したことを特徴とする電気乾燥庫の風路構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−67974(P2012−67974A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213792(P2010−213792)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000197344)静岡製機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】