説明

電気二重層キャパシタ用電極材料、および該電極材料用添加材

【課題】低内部抵抗の電気二重層キャパシタを製造するための電気二重層キャパシタ用電極材料、およびこの電極材料の構成部材になる電極材料用添加の提供。
【解決手段】電気二重層キャパシタ用電極材料は、平均粒径が1μm以下の第一活性炭と、平均粒径が1μmを超える第二活性炭とが混合されたものであり、第一活性炭の平均粒径は0.8μm以下であると好ましく、0.5μm以下であるとより好ましく、第一活性炭の量はこの第一活性炭および第二活性炭の合計量100質量%に対して2質量%以上であると良い。電極材料用添加材は、平均粒径1μm以下の第一活性炭を有し、平均粒径が1μmを超える第二活性炭が混合されている電気二重層キャパシタ用電極材料に使用されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗が低く且つ静電容量が大きい電気二重層キャパシタを製造するために使用される電気二重層キャパシタ用電極材料、および当該電極材料の構成部材になる電極材料用添加材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、電解液と電極との界面で電気二重層が生じることを蓄電原理とする大容量キャパシタとして知られている。電気二重層キャパシタを情報機器のメモリーバックアップ、モーター駆動用等の汎用電源にするためには、効率の良い充放電を実現するべく、電気二重層キャパシタの低内部抵抗化が望まれる。
【0003】
電気二重層キャパシタの電極には、活性炭が主たる電極材料として使用されており、電気的特性に優れる電気二重層キャパシタを実現するための電極材料開発が進められている。そして、その開発の成果が多くの文献で公開されている。
【0004】
例えば特許文献1には、低内部抵抗かつ大容量の電気二重層キャパシタを実現するために、フラーレン含有煤またはフラーレン含有煤からフラーレンの少なくとも一部を溶媒抽出して得られた抽出残渣物を熱処理または賦活処理することにより、平均粒径5〜7μmの炭素質物質を製造し、当該炭素質物質を活性炭と併用して電極を製造することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電気二重層キャパシタの大容量化のためには充填性の良い電極材料が必要であると開示され、その必要な電極材料は、平均粒径4〜40μmの活性炭(A)と、平均粒径4μm以下の活性炭(B)とを混合したものであると開示されている。そして、活性炭(A)の好ましい平均粒径は10〜30μm、活性炭(B)の好ましい平均粒径は活性炭(A)の平均粒径の1/5以下であると特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2006−294817号公報
【特許文献2】特開2001−146410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少なくとも低内部抵抗の電気二重層キャパシタを製造するための電気二重層キャパシタ用電極材料、および当該電極材料の構成部材になる電極材料用添加材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、平均粒径が1μm以下の第一活性炭と、平均粒径が1μmを超える第二活性炭とが混合されている電気二重層キャパシタ用電極材料である。前記第一活性炭の平均粒径は、内部抵抗および静電容量を一層良化させるには0.8μm以下が好ましく、内部抵抗を特に低くするためには0.5μm以下が好ましい。本発明に係る電極材料における前記第一活性炭量は、当該第一活性炭および第二活性炭の合計量100質量%に対して、2質量%以上であると良い。本発明に係る電極材料を使用して電気二重層キャパシタ用電極を製造でき、当該電極を使用して電気二重層キャパシタを製造できる。
【0008】
なお、本発明における「平均粒径」とは、試料を水に分散し、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて求められるメジアン径である。
【0009】
本発明は、平均粒径1μm以下の第一活性炭を有し、平均粒径が1μmを超える第二活性炭が混合されている電気二重層キャパシタ用電極材料に使用される電極材料用添加材である。当該添加材は、第一活性炭のみからなるもの、および第一活性炭以外の部材を含むもののいずれであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極材料は、所定の平均粒径の第一活性炭と当該第一活性炭よりも平均粒径が大きな第二活性炭とが混合されているから、第二活性炭のみを活性炭として有する電極材料よりも、電気二重層キャパシタの内部抵抗を低くすることが可能である。そして、本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタの静電容量は、第二活性炭のみを活性炭として有する電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタと同等以上になる。
【0011】
また、本発明に係る電極材料用添加材は、所定の平均粒径の第一活性炭を有するから、本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極材料の一構成部材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(電気二重層キャパシタ用電極材料)
本実施形態に係る電気二重層キャパシタ用電極材料は、所定の平均粒径の第一活性炭と所定の平均粒径の第二活性炭との混合物である。この混合物を調製するときの混合法は、特に限定されない。なお、以下においては、「電気二重層キャパシタ」を単に「キャパシタ」と称し、「電気二重層キャパシタ用電極」を単に「電極」と称し、「電気二重層キャパシタ用電極材料」を単に「電極材料」と称することがある。
【0013】
本実施形態における電極材料は、第一活性炭と第二活性炭とが混合されている限り、他の構成部材が混合されていても良い。その構成部材は、例えば、電極を低抵抗とする目的をもって活性炭に混合される一般的な導電性付与剤(例えば、アセチレンブラック)である。
【0014】
(第一活性炭)
第一活性炭は、平均粒径が1μm以下の活性炭である。第一活性炭の平均粒径が1μmを超えると、電極材料用活性炭として第二活性炭のみを使用するよりも、キャパシタの静電容量が小さくなる場合がある。第一活性炭の平均粒径は、キャパシタの内部抵抗を一層低下させ且つ静電容量を大きくするには、0.8μm以下が好ましい。内部抵抗が特に低いキャパシタを実現するには、第一活性炭の平均粒径は、0.5μm以下が最適である。
【0015】
また、第一活性炭の比表面積および細孔容積は特に限定されないが、比表面積は500〜2000m/g、細孔容積は0.50〜1.3ml/gである。その比表面積については、多孔質炭素の窒素吸着等温線を測定するBET法により求められ、細孔容積については、相対圧P/P(P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、P:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.93までの窒素吸着量を測定するBET法により求められる。
【0016】
本実施形態の電極材料における第一活性炭量が多い程、キャパシタの内部抵抗が低下すると共に、静電容量が向上する。そのため、第一活性炭の量は、所望の内部抵抗および静電容量に応じた量であると良い。第一活性炭の下限量は、通常、第一活性炭および第二活性炭の合計量100質量%に対して好ましくは2質量%であり、更に好ましくは5質量%である。一方、第一活性炭の上限量は、10質量%、20質量%、または30質量%と特に限定されるものではないが、第一活性炭が多量であると電極の成形性が低下する問題が生じる上に、30質量%以上からはキャパシタの内部抵抗が一定になると見込まれるので、第一活性炭および第二活性炭の合計量100質量%に対して30質量%であると良い。
【0017】
公知の活性炭原料である炭素質物質を賦活処理することにより、第一活性炭を製造することができる。
【0018】
上記炭素質物質は、特に限定されない。例えば、木材、おが屑、木炭、ヤシガラ、セルロース系繊維、合成樹脂(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂)等の難黒鉛化性炭素;ピッチ(例えば、メソフェーズピッチ)、コークス(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、フリュードコークス)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、PAN等の易黒鉛化性炭素;およびこれらの混合物が挙げられる。必要に応じて、賦活処理前に炭化処理が行われた炭素質物質が活性炭原料として使用される。ここで、炭化処理は、高温(例えば、900〜1000℃)の窒素等の不活性ガス中に炭素質物質を置き、炭素質物質の炭化を進行させる処理である。
【0019】
上記賦活処理とは、炭素質物質の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。この賦活処理としては、(1)ガスとの共存下で炭素質物質を加熱して活性炭を製造するガス賦活、および(2)賦活剤と炭素質物質との混合物を加熱して活性炭を製造する薬剤賦活、などが知られている。公知の賦活処理から任意に選択された処理により、第一活性炭を製造できる。
【0020】
ガス賦活を選択した場合には、700〜1000℃の温度雰囲気で、水蒸気、空気、炭酸ガス、燃焼ガス等から選択される一種または二種以上の酸化性ガスと、炭素質物質とを接触させると良い。この接触で、炭素質物質の細孔径、比表面積、および細孔容積が大きくなり、第一活性炭が製造される。
【0021】
ガス賦活に比して大きな比表面積の第一活性炭を容易に製造できる薬剤賦活を選択することは好適である。この薬剤賦活は、上記の通り、賦活剤と炭素質物質との混合物を加熱して行なわれる。この場合、リン酸、硫酸、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫化カリウム、およびアルカリ金属化合物等の公知の賦活剤から選択した一種または二種以上を使用すると良い。賦活処理を容易に行える賦活剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属の硫酸塩;が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましく、水酸化カリウムが更に好ましい。賦活剤の使用量は、例えばアルカリ金属の水酸化物を賦活剤として使用する場合、炭素質物質の質量の0.5〜10倍であると良い。この使用量が多量である程、比表面積および平均細孔径が大きな第一活性炭を製造でき、少量である程、活性炭の比表面積および平均細孔径が小さな第一活性炭を製造できる。
【0022】
なお、薬剤賦活においては、賦活剤を溶融容易とするために、炭素質物質および賦活剤と共に水を混合しても良い。このときの水の混合量は、アルカリ金属の水酸化物を賦活剤に使用する場合、賦活剤の質量の0.05〜10倍であると良い。
【0023】
薬剤賦活における加熱では、そのときの加熱温度が400〜900℃程度であると良い。加熱温度が低いと、比表面積および平均細孔径が小さくなる傾向があり、加熱温度が高いと、比表面積および平均細孔径が大きくなる傾向がある。なお、薬剤賦活における加熱は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下;または減圧下(真空中);等で行われる。
【0024】
炭素質物質を賦活処理することにより第一活性炭を製造できるが、賦活処理後の第一活性炭表面には、活性炭原料(炭素質物質)および/または賦活処理に由来する不純物が吸着している場合がある。その不純物は金属元素(鉄、銅、ニッケル、アルカリ金属等)および金属元素化合物(以下、「金属元素および金属元素化合物」を「金属元素等」という)であり、当該金属元素等が多量に吸着した第一活性炭を電極材料に使用した場合、キャパシタの耐久性低下(キャパシタ寿命の短命化)を誘発することがある。そのため、通常、賦活処理で製造した第一活性炭の洗浄を行なう。
【0025】
公知の洗浄方法により、第一活性炭の表面から金属元素等を除去できる。その公知の洗浄方法としては、例えば、(1)水のみを洗浄液に使用し、第一活性炭を洗浄する方法、(2)塩酸、硫酸等の強酸を一種または二種以上混合した強酸水溶液を洗浄液に使用し、第一活性炭を洗浄する方法、が挙げられる。
【0026】
第一活性炭の平均粒径は上記所定の平均粒径であることから、第一活性炭の平均粒径調整が必要な場合には、適宜に選択された公知の粒径調整手段で第一活性炭の平均粒径を調整する。例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等の粉砕機を使用して第一活性炭の平均粒径を調整すると良い。
【0027】
本実施形態の第一活性炭は、以上に詳述したとおりである。本実施形態の第一活性炭は、それのみで本実施形態に係る電極材料の添加材となり得、第一活性炭以外の部材(例えば、アセチレンブラック等の導電性付与剤)と混合されたものも、その添加材となり得る。なお、第一活性炭は、水等の分散媒と混合してスラリー状態で使用することが好ましい。
【0028】
(第二活性炭)
第二活性炭は、平均粒径が1μmを超える活性炭である。電極材料の低温特性を重視する場合、第二活性炭の平均粒径は、6μm以下であると良く、2〜4μmが好ましい。
【0029】
また、第二活性炭の比表面積および細孔容積は特に限定されないが、通常、比表面積は1500〜2500m/g、細孔容積は1.0〜2.0ml/gである。これら比表面積および細孔容積は、上記第一活性炭と同様に求められる値である。
【0030】
第一活性炭と同様、炭素質物質を賦活処理すれば第二活性炭を製造できる。このときに使用する炭素質物質は、第一活性炭を製造するために使用する炭素質物質と同種であっても良く、異種であっても良い。また、賦活処理も、第一活性炭の製造で使用される処理と同じ処理であっても、異なる処理であっても良い。そして、必要に応じて、第二活性炭を洗浄しても良い。
【0031】
第二活性炭の平均粒径を調整する必要がある場合には、公知の粒径調整手段を使用すると良い。公知の粉砕機(例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル)で平均粒径を小さくする調整が可能である。
【0032】
(電気二重層キャパシタ用電極)
本実施形態の電極材料は、電気二重層キャパシタ用電極の材料として使用できる。この電極の製造においては、公知の製法を使用すると良い。例えば、第一活性炭および第二活性炭が混合されている本実施形態の電極材料と、導電性付与剤と、バインダー溶液とを混練し、溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔等の集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去することにより、電極を製造することが可能である。
【0033】
電極を製造する際に使用するバインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂が挙げられる。また、導電性付与剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素系導電性付与剤;酸化ルテニウム等の金属酸化物系導電性付与剤;が挙げられる。
【0034】
(電気二重層キャパシタ)
コイン型、巻回型、積層型等の電気二重層キャパシタが知られており、当該キャパシタは、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造が一般的である。活性炭は、何れのキャパシタにおいても電極材料として使用されている。
【0035】
電解液には、分解電圧が高い非水系極性溶媒を主溶媒とする非水系電解的を選択することが好ましい。非水系電解液の溶媒には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等の非水系極性溶媒から選択された一種または二種以上を主溶媒にすることが好ましい。また、電解液の電解質としては、アミジンまたは第四級アンモニウムと、過塩素酸、四フッ化ホウ素または六フッ化リンとの塩等がある。また、セパレータを例示すれば、セルロース、ガラス繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】
第一活性炭と第二活性炭の所定量を混合し、実施例および比較例の電極材料を作製した。また、これら電極材料を使用して電気二重層キャパシタを作製した。そして、作製した電気二重層キャパシタについては、その電極の密度、静電容量、および内部抵抗率を算出した。以上の詳細を以下に示す。
【0038】
なお、以下における平均粒径は、試料を水に分散し、株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置「SALD−2000」を用いて求められるメジアン径である。比表面積は、マイクロメリティックス社製ASAP−2400窒素吸着装置を使用し、多孔質炭素の窒素吸着等温線を測定するBET法により求めた値である。また、細孔容積は、マイクロメリティックス社製ASAP−2400窒素吸着装置を使用し、相対圧P/P(P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、P:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.93までの窒素吸着量を測定するBET法により求めた値である。
【0039】
(第一活性炭)
遊星ボールミル(フリッチュジャパン社製「モデルP−5」)で活性炭を、適宜粉砕して第一活性炭を得た。実施例および比較例で使用した第一活性炭の詳細は、以下の通りである。
【0040】
実施例1a〜1b、2a〜2d、3a〜3b、9および11、並びに比較例2および3:
市販のフェノール樹脂系活性炭(カーボンテック社製「マックスソーブ」)を粉砕して第一活性炭を調製した。第一活性炭の平均粒径、比表面積および細孔容積は、夫々、実施例1aおよび1bが0.3μm、1570m/g、1.1ml/g;実施例2a〜2dが0.5μm、1700m/g、1.1ml/g;実施例3aおよび3bが1.0μm、1860m/g、0.94ml/g;実施例9および11が0.5μm、1700m/g、1.1ml/g;であった。
【0041】
実施例4:
紙−フェノール樹脂積層板の水蒸気賦活により得られた活性炭を粉砕して実施例4の第一活性炭を調製した。平均粒径は0.5μm、比表面積は1830m/g、細孔容積は1.2ml/gであった。
【0042】
実施例5、および10:
石油コークスのアルカリ賦活炭であるカーボンテック社製石油コークス系活性炭を、実施例5および10の第一活性炭とした。両活性炭の平均粒径は0.5μm、比表面積は1710m/g、細孔容積は0.95ml/gであった。
【0043】
実施例6:
ヤシガラの水蒸気賦活炭であるカーボンテック社製ヤシガラ系活性炭を、実施例6の第一活性炭とした。この活性炭の平均粒径は0.5μm、比表面積は1260m/g、細孔容積は0.72ml/gであった。
【0044】
実施例7:
フラーレン製造の際に発生する煤(フロンティアカーボン社製「フロンティアブラック」)を950℃で水蒸気賦活して、実施例7の第一活性炭を得た。この活性炭の平均粒径は0.5μm、比表面積は1180m/g、細孔容積は0.87ml/gであった。
【0045】
実施例8:
Cabot社製「BLACK PEARLS−1400(粒状品)」を実施例8の第一活性炭とした。この活性炭の平均粒径は0.7μm、比表面積は530m/g、細孔容積は0.54ml/gであった。
【0046】
(第二活性炭)
第一活性炭と同様、活性炭を適宜粉砕して第二活性炭を得た。実施例および比較例で使用した活性炭は、以下の通りである。
【0047】
実施例1a〜1b、2a〜2d、3a〜3b、および4〜8、並びに、比較例1〜3:
市販のフェノール樹脂系活性炭(カーボンテック社製「マックスソーブ」)を実施例1a等の第二活性炭とした。いずれの第二活性炭においても、平均粒径は3μm、比表面積は2310m/g、細孔容積は1.1ml/gであった。
【0048】
実施例9〜11、および比較例4〜5:
石油コークスをアルカリ賦活して製造されたカーボンテック社製石油コークス系活性炭を、実施例9等の第二活性炭とした。実施例9、実施例10、および比較例4の平均粒径は3μm、比表面積は2280m/g、細孔容積は1.1ml/g;実施例11、および比較例5の平均粒径は5μm、比表面積は2380m/g、細孔容積は1.2ml/g;であった。
【0049】
(キャパシタの作製)
1.電極の作製
実施例または比較例の電極材料それぞれに、水溶性バインダー(市販のCMC)とアセチレンブラックとを、電極材料:CMC:アセチレンブラック=8:1:1(質量比)になるように混合し、さらにペースト化してアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥してシート状の電極を作製した。乾燥後の塗布層の厚みは80μmであった。次に、前記アルミニウムを直径25.4mmの円形に打ち抜き、これを77MPaでプレスし、電極を作製した。
【0050】
2.キャパシタの組み立て
真空条件下、200℃、1時間の条件で電極を乾燥した後、窒素ガスを流通させたグローブボックス内で電解液(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートが1mol/Lのプロピレンカーボネート溶液)を電極に真空含浸させた。この電極を、電解液を含浸させたポリプロピレン製セパレータ(Celgard社製「セルガード♯3501」)で挟み、更にアルミニウム板で挟んでキャパシタを組み立てた。
【0051】
(キャパシタ電極の密度)
電極材料を作製する際に使用した第一活性炭、第二活性炭、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、およびポリテトラフルオロエチレンの総質量を、電極材料層の体積で除することにより、電極の密度を算出した。
【0052】
(キャパシタの静電容量)
充放電装置(アスカ電子株式会社製「ACD−01」)の充放電端子をキャパシタのアルミニウム板に接続し、−30℃で、集電板間電圧が2.5Vになるまで20mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で5分間充電した。充電後、定電流(放電電流=0.015A)でキャパシタの放電を行わせた。2.0〜1.0Vの間の放電曲線から、キャパシタの静電容量を求めた。そして、キャパシタの静電容量を第一活性炭と第二活性炭の総質量で除することで質量基準静電容量(単位:F/g)を算出し、キャパシタの静電容量を電極における電極材料層の総体積で除することで体積基準静電容量(単位:F/ml)を算出した。
【0053】
(キャパシタの内部抵抗率)
上記静電容量の評価と同じ条件でキャパシタの充電を行った後、定電流(放電電流=0.015A)でキャパシタの放電を行わせた。この放電開始直後の電圧降下から、内部抵抗率を求めた。つまり、放電開始後0.5〜2.0秒の間の各測定電圧から電圧勾配を導き出し、この電圧勾配から放電開始時の電圧を求め、当該電圧と充電電圧(2.5V)と電圧差を求めた。この電圧差、放電電流、電極材料層の厚み、および電極材料の面積からキャパシタの内部抵抗率(単位:Ω・m)を算出した。
【0054】
上記比表面積、細孔容積、電極密度、静電容量、および内部抵抗率の算出結果を、表1〜3に示す。
【0055】
また、第一活性炭の平均粒径とキャパシタの内部抵抗率との相関関係を表すグラフ(実施例1a、実施例2b、実施例3a、および比較例1〜3のデータに基づくグラフ)を図1に示し、第一活性炭の平均粒径とキャパシタの静電容量との相関関係を表すグラフ(実施例1a、実施例2b、実施例3a、および比較例1〜3のデータに基づくグラフ)を図2に示し、第一活性炭の添加量とキャパシタの内部抵抗率との相関関係を表すグラフ(実施例1a〜1b、実施例2a〜2d、実施例3a〜3b、および比較例1〜3のデータに基づくグラフ)を図3に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
図1に示すグラフおよび表1(実施例1a、2b、3a、比較例1〜3)より、第一活性炭の平均粒径が小さくなるとキャパシタの内部抵抗率が低くなり、平均粒径1.0μm以下では内部抵抗率の低下が大きくなり始め、平均粒径0.8μm以下では内部抵抗率の低下が更に大きくなっていたことを確認できる。また、図2に示すグラフおよび表3(実施例1a、2b、3a、比較例1〜3)より、平均粒径が1.0μmの第一活性炭を使用しても、静電容量が小さくならなかったことを確認でき、平均粒径が1.0μm未満の第一活性炭を使用すれば、静電容量が大きくなったことを確認できる。
【0060】
また、表1における全実施例と全比較例との対比より、平均粒径が1.0μm以下の第一活性炭を使用した場合には、その第一活性炭の原料および賦活方法の種別とは無関係に内部抵抗率が低下し、静電容量が大きくなったことを確認できる。この傾向は、第二活性炭を替えても同様である(表2参照)。
【0061】
図3に示すグラフおよび表3(実施例1a〜1b、実施例2a〜2d、実施例3a〜3b、および比較例1〜3)より、平均粒径が1.0μm以下の第一活性炭を使用したときには、その使用量が増加するほど、キャパシタの内部抵抗率が低くなる傾向があったことを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る実施例および比較例の第一活性炭の平均粒径と、キャパシタの内部抵抗率との相関関係を表すグラフである。
【図2】本発明に係る実施例および比較例の第一活性炭の平均粒径と、キャパシタの静電容量との相関関係を表すグラフである。
【図3】本発明に係る実施例および比較例の第一活性炭の添加量と、キャパシタの内部抵抗率との相関関係を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が1μm以下の第一活性炭と、平均粒径が1μmを超える第二活性炭とが混合されている電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項2】
前記第一活性炭の平均粒径が、0.8μm以下である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項3】
前記第一活性炭の平均粒径が、0.5μm以下である請求項1または2に記載の電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材料を使用して製造された電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電気二重層キャパシタ用電極を使用して製造された電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
平均粒径1μm以下の第一活性炭を有し、平均粒径が1μmを超える第二活性炭が混合されている電気二重層キャパシタ用電極材料に使用される電極材料用添加材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−135146(P2009−135146A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307822(P2007−307822)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】