説明

電気二重層キャパシタ

【課題】ケッチエンブラックを分極性電極の電極材料に用いて、静電容量の増加、放電特性に優れる電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】本発明に係る電気二重層キャパシタ10は、集電体12に分極性電極4を取り付けた一対のキャパシタ電極4がセパレータ6を介して配置され、該一対のキャパシタ電極4間に電解液を充填した電気二重層キャパシタにおいて、分極性電極4の表面の全面に、ケッチェンブラックの混入した導電性ペーストをコーティングし、該ペーストを乾燥してなるコーティング層5を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタには、分極性電極として活性炭材料が、電解液には有機系電解液材料または水溶液系電解液材料が用いられている。また、分極性電極の電極材料として、ケッチェンブラックを用いたものがある(特開2003−297695)。この特開2003−297695に示されるものは、分極性電極に、比表面積が1000m/g以上のケッチェンブラックを、6wt%以上含む炭素質導電性材料を用いるものである。ケッチェンブラックは、殻状の構造を有し、従来用いられてきた活性炭よりも細孔径が大きく、溶媒和した電解質が吸着される確率が大きいため、静電容量を増加し得る。また、ケッチェンブラックは、活性炭よりも導電率が大きく、これを用いることで、内部抵抗も小さくできる。
【0003】
なお、図6は、従来の電気二重層キャパシタの構造の一例である。
この電気二重層キャパシタは、上下の正極缶1と負極缶2との間に、セパレータ6を介して正極分極性電極4aおよび負極分極性電極4bを配された分極性電極4が配置されるとともに電解液が充填され、ガスケット7にてシールされてなる。なお、8はスペーサー、9はウエーブワッシャーである。
【特許文献1】特許文献1:特開2003−297695
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものでは、ケッチェンブラックを活性炭等の他の炭素質導電性材料と混合してしまうものであるため、ケッチェンブラックが分極性電極中に埋没し、電解液がケッチェンブラックと直接接触する面がそれだけ少なく、したがって、静電容量の増加、内部抵抗の低減といった目的を十分果たすことができないという課題がある。
また、ケッチェンブラックは高比表面積を有する構造であるが、混合してしまっては、バインダー(結着材)等で細孔を埋めてしまい、電気二重層の容量寄与を十分に果たすことができなかった。
そこで本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ケッチェンブラックを分極性電極の電極材料に用いて、静電容量の増加、放電特性に優れる電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気二重層キャパシタは、集電体に分極性電極を取り付けた一対のキャパシタ電極がセパレータを介して配置され、該一対のキャパシタ電極間に電解液を充填した電気二重層キャパシタにおいて、前記分極性電極の表面の全面に、ケッチェンブラックの混入した導電性ペーストをコーティングし、該ペーストを乾燥してなるコーティング層を形成したことを特徴とする。
【0006】
また、前記活性炭粉末が、絹素材を不活性ガス雰囲気中で焼成し、粉砕したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気二重層キャパシタによれば、 1.2倍〜1.5倍の静電容量の増加を示している。この理由については、図1の4a,4bの正、負極の分極性電極の表面の全面にケッチェンブラックの導電性ペーストをコーティングしてコーティング層を形成したことにより、比表面積の大きなケッチェンブラックが電解液のイオン吸着を十分に行い、これにより静電容量の増加が図られるためである。また、ケッチェンブラックの導電性ペーストをコーティングすることにより、イオンの吸脱着をアシストし、これにより、特に、大電流放電特性に優れた特性を示す電気二重層キャパシタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor、以下EDLCと略す)は、集電体に分極性電極を取り付けた一対のキャパシタ電極間に電解液を充填した電気二重層キャパシタにおいて、前記分極性電極全面に、ケッチェンブラック(以下KBと略す)の混入した導電性ペースト(以下KBペーストと略す)をコーティングし、該ペーストを乾燥してなる導電層を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
すなわち、EDLCの分極性電極(シート型)にKBペースト(ライオン(株)製 ライオンペーストW-310A、W-356A)をコーティングし、活性炭のカーボン分極性電極層とKBペースト層とで多層化領域を形成することにより、電解液のイオン吸脱着性能を向上化させ、EDLCの容量特性を飛躍的に向上させる構造にした。
【0010】
ここで、簡単であるが、KBの特徴について説明する。KBとは、導電性カーボンブラックの一種であり、従来のカーボンブラックと違う点は、その一次粒子径の状態であり、内部が中空シェル状の構造を有していることである。又、下記のような特性を保有する。
(1):通常のカーボンブラックよりも単位重量当たりの一次粒子数が多いため、ネットワーク構造を形成しやすく、高い導電性を有する。
(2):添加量が少量であるので、ベース基材に与える影響度が小さい。
(3):電極作製等の混練による破壊・構造劣化に強い。
(4):通常のカーボンブラックとは異なり、非常に大きな比表面積と細孔容積を有する。
また、後述するがKBペーストを分極性電極を覆うように全面(側面も含む)にコーティングを行うことで、セパレータ付近で蓄えた静電容量を集電体へとスムーズにエネルギーとして伝えることができる。
【実施例】
【0011】
以下実施例を示す。
〔実施例1〕
1)分極性電極の製造
活性炭粉末(MSP-20(関西熱化学社製アルカリ賦活フェノールレジン活性炭)):PTFE(ポリテトラフルオロエチレン):KB (ケッチェンブラック粉末Lion製EC-600JD)=8:1:1の配合比で30分程度混練し、シート電極の前駆体を得た。
その後、その混合物を圧延ローラーにて圧延し、厚み200μmのシート型電極を作製した。
上記で得たシート型電極をφ15mmで打ち抜き、φ15mmのディスク状EDLC電極を形成した。EDLCでは、正極、負極が必要となるので、2枚打ち抜きを行った。
また、EDLCにした際の界面の抵抗を正・負極均一になるようにするために、電極厚については、正・負極200μmで同一に設定した。
次に、打ち抜いた電極を180℃で12時間真空乾燥し、室温まで十分に下がった後に取り出しを行い、ノギスで電極厚、電子秤で電極重量を測定した。その測定結果を後で記載する表1〜5中の重量容量(F/g)などを算出するために用いた。
【0012】
2)分極性電極へのコーティング
KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) ) をマイクロピペッターにてW-376R 10μl、W-356A 30μlほど規定し、乾燥を行った上記分極性電極にコーティングを行った。
EDLCの反応構造上、濃度が高い物を分極性電極と電解液界面にコーティングした方が、イオン吸着を向上させることができ、EDLCの特性へ大きくアシストさせることが出来ると考えられるので、濃度の高いW-356Aのペーストを分極性電極全面にコーティングし、濃度が低いノニオン系のW-376Rペーストを分極性電極との界面となる集電体の表面(接合部分)にコーティングを行った。
コーティング方法としては、ピペット、ブラシ等で同心円を描くように均一厚になるようにコーティングし、分極性電極面の平滑性を出すようにすることが重要であるが、ドクターブレードやディスペンサー等の圧延コーティングや吹付けコーティングでも問題はない。
コーティングが終了した所で、予備乾燥工程で、70℃程度の熱風を分極性電極の表面に送風させ、乾燥させるようにする。理由は、ここで、急激に温度を上げて乾燥してしまうと、分極性電極面や集電体(Al、SUS製)にコーティングしたKBペーストの脱離や剥れ、ペーストの熱収縮が起こってしまうためである。
予備乾燥が終了した所で、150℃で3Hほど真空乾燥を行い、ペーストを固着させる。
【0013】
3)EDLCの製造
その後、 図1の断面図に示すように、本実例では、EDLC10の構成としてCR2032コイン型電池(宝泉(株)製)を採用する。SUS316L 正極缶(ケース)1の上に、W-376R KBペースト層3を設け、正極多層化電極(正極分極性電極4a+ W-356A KBペースト層(コーティング層)5)、セパレータ6、負極多層化電極(負極分極性電極4b+ W-356A KBペースト層(コーティング層)5)をこの順に重ね、PPガスケット7で側面を覆い、さらにSUS316L スペーサー8(W-376RKBペースト層をコーティングによって形成:図示せず)、SUS316Lウェーブワッシャー9を重ねる。有機電解液として、1M TEABF4/PC(支持電解質:テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレイト/ 溶媒:プロピレンカーボネート)を所定量電池缶に注入する。SUS316L 正極缶1はPP ガスケット7を介してSUS316L 負極缶(封口蓋)2でカシメて封口し、EDLC10に形成される。なお、分極性電極4a、4bは、上記1)分極性電極の製造で製造したものである。ちなみに、コイン型電極の場合には、ディスク状もしくはペレット状に成形した物が適している。ディスク状もしくはペレット状に成形した物を分極性電極として使用する理由としては、分極性電極4a、4bの活性炭含有量を多くして、高容量化させることと、分極性電極の強度を向上させることができるためである。また、本技術は、実施例のコイン型のキャパシタだけに限定されず、Alエッジング箔の上にKBペースト(コーティング層)5をコーティングし、セパレータを介して捲回する捲回型の電気二重層キャパシタや、分極性電極4a、4bを積層化して重ねる積層型のEDLCにも展開できる。なお、ペースト層3はKBペーストでなく、他の一般的な黒鉛製ペースト等の層であってもよい。あるいはペースト層3は設けなくともよい。
【0014】
〔実施例2〕
実施例1での 1)分極性電極の製造におけるの活性炭粉末(市販MSP-20)を活性炭粉末(活性炭A(水蒸気賦活フェノールレジン活性炭))に変えた以外は同様である。
【0015】
〔実施例3〕
実施例1での 1)分極性電極の製造における活性炭粉末(市販MSP-20)を活性炭粉末(CSP-α(自社製アルカリ賦活カーボンシルク(シナノケンシ登録商標)))に変えた以外は同様である。
ちなみに活性炭粉末(自社製造CSP-α)の製造方法は以下の通りである。
絹を原料とした繊維等の絹素材を、炭化温度600℃〜1000℃の範囲で5時間〜6時間程度 N雰囲気で焼成を行い、その後、チョッパーミル、ボールミル等で、センター粒径(D50)が5μm〜10μmの範囲になるまで粉砕を行い、絹焼成体を得る。その後、ローラーハースキルンにより、上記で得られた焼成体とKOH(水酸化カリウム)を1.5倍量〜2.0倍量 焼成体の重量に対して混合し十分熱溶融させて賦活を行う。賦活時間については、1〜5時間で行う。その後、塩酸を用いて、酸処理を行い、KOH賦活の反応触媒で使用したカリウムや金属成分を十分に除去し、pH7.0になるまで数回の洗浄を繰り返す。上記工程により、CSP-αの活性炭を得る。この賦活処理によって活性炭の表面に細孔が形成され、表面積が増大する。
【0016】
〔実施例4〕
実施例1での 1)分極性電極の製造における活性炭粉末(市販MSP-20)を活性炭粉末(CSP-β(自社製水蒸気賦活カーボンシルク(シナノケンシ登録商標)))に変えた以外は同様である。
ちなみに活性炭粉末(自社製造CSP-β)の製造方法は以下の通りである。
絹を原料とした繊維等の絹素材を、炭化温度600℃〜1000℃の範囲で5時間〜6時間程度 N2雰囲気で焼成を行い、その後、チョッパーミル、ボールミル等で、センター粒径(D50)が5μm〜10μmの範囲になるまで粉砕を行い、絹焼成体を得る。その後、定置型賦活炉により、水蒸気をフローしながら、上記で得られた焼成体に対して賦活を行う。賦活時間については、炭素材料と水蒸気の流量により最適な時間は変わってくるが、50〜75時間が最適な時間と言える。その後、塩酸を用いて、酸処理を行い、不純物(Ca,Na,金属etc)を十分に除去し、pH7.0になるまで数回の洗浄を繰り返す。上記工程により、CSP-βの活性炭を得る。
【0017】
〔実施例5〕
実施例1での 1)分極性電極の製造における活性炭粉末(市販MSP-20)を活性炭粉末(Yp-17(クラレケミカル社製水蒸気賦活ヤシガラ活性炭))に変えた以外は同様である。
【0018】
〔実施例6〕
実施例1での 1)分極性電極の製造における活性炭粉末(市販MSP-20)を活性炭粉末(Rp-20(クラレケミカル社製水蒸気賦活フェノールレジン活性炭))に変えた以外は同様である。
【0019】
ここで、KBペーストの効果の確認をするため、KBペースト以外の市販の導電性ペーストを用いて作製したEDLCの容量等の確認を行った。
〔比較例1〕
実施例1での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例1と同様である。
【0020】
〔比較例2〕
実施例2での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例2と同様である。
【0021】
〔比較例3〕
実施例3での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例3と同様である。
【0022】
〔比較例4〕
実施例4での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例4と同様である。
【0023】
〔比較例5〕
実施例5での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例5と同様である。
【0024】
〔比較例6〕
実施例6での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を使用しなかった以外は実施例6と同様である。
【0025】
〔比較例7〕
実施例1での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例1と同様である。
【0026】
〔比較例8〕
実施例2での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例2と同様である。
【0027】
〔比較例9〕
実施例3での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例3と同様である。
【0028】
〔比較例10〕
実施例4での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例4と同様である。
【0029】
〔比較例11〕
実施例5での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例5と同様である。
【0030】
〔比較例12〕
実施例6での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品1(ヒタゾルGA-703:日立粉末冶金(株)製)に変えた以外は実施例6と同様である。
【0031】
〔比較例13〕
実施例1での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例1と同様である。
【0032】
〔比較例14〕
実施例2での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) )を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例2と同様である。
【0033】
〔比較例15〕
実施例3での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) ) を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例3と同様である。
【0034】
〔比較例16〕
実施例4での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) ) を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例4と同様である。
【0035】
〔比較例17〕
実施例5での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) ) を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例5と同様である。
【0036】
〔比較例18〕
実施例6での 2)分極性電極へのコーティングにおいて、KBペースト( ライオン株式会社製 W-376R:導電性カーボン分散液(ノニオン系)とW-356A:導電性カーボン分散液(高濃度品) ) を黒鉛製導電性ペースト:市販品2(バニーハイトT-602:日本黒鉛工業(株)製)に変えた以外は実施例6と同様である。
【0037】
製造したEDLCを以下の方法で評価した。なお、サンプル水準は各N=5とし、その平均値を特性とした。
4)EDLC容量特性評価
室温下25℃ 充電:5mA: 2.5V cc-cv / 30min keep 2.5V 放電:1mA:2.0v-1.0Vの条件で評価を行い、その時の静電容量を測定した。
5)交流抵抗特性評価
交流抵抗特性(ESR)の測定は、1kHzの試験信号周波数における交流法により算出した。
EDLC容量特性評価、放電特性評価 (低電流放電、高電流放電)および交流抵抗特性評価の試験結果を表1〜表4にまとめた。
【0038】
表1

【0039】
表2

【0040】
表3

【0041】
表4

【0042】
表1〜表4に示すように、比較例1〜18のどの条件のサンプルよりも、大きな静電容量を有する結果になっている。特に、導電性ペーストをコーティングし多層化していない比較例1〜6の条件のサンプルと比較すると、1.2倍〜1.5倍の静電容量の増加を示している。この理由については、図1の4a,4bの正、負極の分極性電極とその周りにコーティングされている、KBペースト層(コーティング層)3及び5が電解液のイオン吸着を十分に行い、電気二重層容量として寄与を果たしているためである。
【0043】
また、導電性ペーストの種類毎の比較においても、黒鉛系ペーストの代表格である比較例7〜12の黒鉛製導電性ペースト:市販品1(GA-703)、比較例13〜18の黒鉛製導電性ペースト:市販品2(T-602)と比較しても、1.1倍〜1.3倍の静電容量の増加が見られ、導電性ペーストとして、最も優れていることが証明できた。つまり、黒鉛系導電性ペーストでも、抵抗成分を大幅に改善することは可能であるが、静電容量を大幅に向上させることは出来ない。しかしながらKBペーストの場合は、抵抗成分の大幅な低減と、静電容量を大幅に向上させる2段階の寄与をすることができるという優れた特性を発揮する。
【0044】
表5に、各種導電性ペーストにおける細孔分布を示す。表5から明らかなように、KBペーストが、市販品の黒鉛製導電性ペースト1、2に比べて多孔室で、大きな比表面積を有していることがわかる。なお、比表面積、Micro孔容積、Meso孔容積の解析には日本ベル社製BELSORP-miniを使用した。
表5

【0045】
6)放電特性評価 (低電流放電、高電流放電)
活性炭粉末Rp-20、 Yp-17を使用した実施例5、実施例6、比較例5、比較例6、比較例11、比較例12、比較例17、比較例18を使用し、室温下25℃ 充電:5mA: 2.5V cc-cv / 30min keep 2.5V 放電:1mA:2.0v-1.0V 放電:20mA:2.0v-1.0Vの2種類の条件で評価を行い、その時の静電容量を測定した。放電特性については、上記の試験方法で作製した結果よりグラフ化し、x軸の放電時間については、EDLC cell重量(g)で割った値(sec/g)で算出した。使用したcell sizeは、φ20 CR-2032のcoinタイプであり、使用したEDLCの分極性電極サイズは、φ15mmで厚み200μmで統一した物で作製してあるので、cell面積辺りの電流密度に換算すると、放電:1mA:2.0v-1.0Vでは、0.28mA/cm2, 放電:20mA:2.0v-1.0Vでは、5.60 mA/cm2となる。
【0046】
放電特性評価 (低電流放電、高電流放電)の試験結果のグラフを図2〜5に記載する。
一般的に放電特性のグラフは、放電時間が長ければ長いほど、静電容量が大きいことを示す。又、放電曲線の傾きが直線性を示し、放電開始後のIR-Drop(電圧降下)の落ち幅が小さい物ほど、公称電圧幅を広く取れるため、実使用としても取り出せる静電容量が大きくなり、EDLCを使用する上で設計が容易であり、安定性も高い状態であるといえる。図2〜図5から、実施例5のものが、比較例5、11、17のものに比し、大きな静電容量を有し、また実施例6のものが、比較例6、12、18のものに比し、大きな静電容量を有していることがわかる。
また、放電電流値を1mA(0.28mA/cm)の低電流放電にした場合と、放電電流値を20mA(5.6mA/cm)の高電流放電にした場合のどちらの場合においても、実施例5のものの方が、比較例5、11、17のものより長い放電時間が得られ、また、実施例6のものの方が、比較例6、12、18のものより長い放電時間が得られ、いずれも優れた放電特性が得られていることがわかる。すなわち、分極性電極にKBペーストをコーティングした実施例5、6のものの方が、黒鉛製導電性ペースト1、2をコーティングしたものよりも優れた放電特性を有する。このことからも、KBペーストをコーティングすることにより、イオンの吸脱着をアシストし、大電流放電特性に優れた特性を示すことに有用であることが分かる。
また、放電曲線の傾きもKBペーストをコーティングした場合には、直線性を示しており、この特性は、レートを早めた場合である20mA(5.6mA/cm)の放電にした場合にも同様であることから、KBのMeso孔と大きな比表面積が十分に機能出来ているためだと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】電気二重層キャパシタの構造の一例を示す断面図である。
【図2】実施例5、比較例5、11、17のものの低電流密度での放電特性を示すグラフである。
【図3】実施例5、比較例5、11、17のものの高電流密度での放電特性を示すグラフである。
【図4】実施例6、比較例6、12、18のものの低電流密度での放電特性を示すグラフである。
【図5】実施例6、比較例6、12、18のものの高電流密度での放電特性を示すグラフである。
【図6】従来の電気二重層キャパシタの構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 正極缶(ケース)
2 負極缶(封口蓋)
3 KBペースト層
4 分極性電極
4a 正極分極性電極
4b 負極分極性電極
5 KBペースト層(コーティング層)
6 セパレータ
7 ガスケット
8 スペーサ
9 ウエーブワッシャー
10 電気二重層キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体に分極性電極を取り付けた一対のキャパシタ電極がセパレータを介して配置され、該一対のキャパシタ電極間に電解液を充填した電気二重層キャパシタにおいて、
前記分極性電極の表面の全面に、ケッチェンブラックの混入した導電性ペーストをコーティングし、該ペーストを乾燥してなるコーティング層を形成したことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記活性炭粉末が、絹素材を不活性ガス雰囲気中で焼成し、粉砕したものであることを特徴とする請求項1記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−33072(P2009−33072A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198227(P2007−198227)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】