説明

電気二重層キャパシタ

【課題】本発明の課題は、高電圧を印加可能な電解液が封入されている電気二重層キャパシタにおいて、放電時の電圧降下を小さくして充電電圧に見合った放電を得られるようにすることにある。
【解決手段】本発明に係る電気二重層キャパシタ1は、一対の集電体10、セパレータ11、導電性皮膜12、分極性電極13および電解液14を備える。セパレータは、集電体の間に配置される。導電性皮膜12は、少なくとも一方の集電体10の表面のうちセパレータ11に対向する表面を被覆する。分極性電極13は、集電体10および導電性皮膜12の少なくとも導電性皮膜12の表面のうちセパレータ11に対向する表面に接するように形成される。電解液14は、70℃における3.3Vの電圧印加時の安定時反応電流が0.1mA/F以下である。そして、この電解液14は、分極性電極13に含浸される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を向上させる目的で、高電圧を印加可能な電解液(以下「高耐圧電解液」という)が開発されている(例えば、特許文献1(特開2008−016560号公報)参照)。
【0003】
しかし、本願発明者が従来の電解液を高耐圧電解液に置き換えてその電気二重層キャパシタの性能を評価したところ、放電時の電圧降下が大きく充電電圧に見合った放電が十分に得られないことが明らかとなった。そして、本願発明者が、この現象について鋭意検討したところ、電気二重層キャパシタに高電圧を印加して充電する際に分極性電極である活性炭と、集電体であるアルミニウム薄板との界面の電気抵抗が著しく上昇することがその原因であることを突きとめた。そして、本願発明者は、さらに、この電気抵抗の著しい上昇が、高電圧印加時にアルミニウム薄板表面の自然酸化膜が変化して可逆的に形成される多孔質膜に起因しているのではないかとの考えに至った(例えば、非特許文献1(永田伊佐也著,「電解液陰極アルミニウム電解コンデンサ」,日本蓄電器工業株式会社,1997年2月24日)参照)。
【0004】
ところで、このような問題を解決する方法としては、例えば、アルミニウム薄膜表面を化学的に安定化させる方法が考えられる。そして、このようにアルミニウム薄膜表面を安定化させる方法としては、過去に「集電体であるアルミニウム薄膜を加熱処理してアルミニウム薄膜に安定的な酸化膜を形成する」という方法が提案されている(例えば、特許文献2(特開2000−156328号公報)参照)。しかし、酸化アルミニウムは絶縁性物質であるため、このような方法では上記問題の解決は期待することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高電圧を印加可能な電解液が封入されている電気二重層キャパシタにおいて、放電時の電圧降下を小さくして充電電圧に見合った放電にできるだけ近い放電を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る電気二重層キャパシタは、一対の集電体と、セパレータと、導電性皮膜と、分極性電極と、電解液とを備える。セパレータは、集電体の間に配置される。導電性皮膜は、少なくとも一方の集電体の表面のうちセパレータに対向する表面を被覆する。分極性電極は、集電体および導電性皮膜の少なくとも導電性皮膜の表面のうちセパレータに対向する表面に接するように形成される。なお、ここにいう「分極性電極」とは、例えば、活性炭などである。電解液は、溶媒が含フッ素有機溶媒であり、分極性電極に含浸される。なお、ここにいう「含フッ素有機溶媒」とは、例えば、含フッ素エーテルや含フッ素ラクトン等である。
【0007】
本願発明者が鋭意検討した結果、上述のように集電体を導電性皮膜で覆い、その導電性皮膜の上に分極性電極を形成することにより、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を得られることが明らかとなった。このため、この電気二重層キャパシタは、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を行うことができる。
【0008】
本発明では、電解液は溶媒が含フッ素有機溶媒であるため、難燃性や低温特性に優れている。
【0009】
本発明の第2観点に係る電気二重層キャパシタは、3.5V以上の動作電圧が可能な電気二重層キャパシタであって、一対の集電体と、セパレータと、導電性皮膜と、分極性電極と、電解液とを備える。セパレータは、集電体の間に配置される。導電性皮膜は、少なくとも一方の集電体の表面のうちセパレータに対向する表面を被覆する。分極性電極は、集電体および導電性皮膜の少なくとも導電性皮膜の表面のうちセパレータに対向する表面に接するように形成される。なお、ここにいう「分極性電極」とは、例えば、活性炭などである。
【0010】
また、ここで「3.5V以上の動作電圧が可能」とは、以下の試験基準における耐久試験後の静電容量と内部抵抗が下記(1)および(2)を満足することをいうものとする。
(1)電気二重層コンデンサの試験方法であるRC−2377に準拠した計測基準において、静電容量は初期値の70%以上であること
(2)電気二重層コンデンサの試験方法であるRC−2377に準拠した計測基準において、内部抵抗は初期値の4倍以内であること
本願発明者が鋭意検討した結果、上述のように集電体を導電性皮膜で覆い、その導電性皮膜の上に分極性電極を形成することにより、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を得られることが明らかとなった。このため、この電気二重層キャパシタは、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を行うことができる。
【0011】
本発明の第3観点に係る電気二重層キャパシタは、第1観点もしくは第2観点に係る電気二重層キャパシタであって、電解液は、70℃における3.3Vの電圧印加時の安定時反応電流が0.1mA/F以下である。
【0012】
本発明の第4観点に係る電気二重層キャパシタは、第1観点から第3観点のいずれかに係る電気二重層キャパシタであって、導電性皮膜は、黒鉛から形成されている。なお、ここでの黒鉛としては、黒鉛化度が0.6以上0.8以下であることが好ましい。このような導電性皮膜としては、例えば、日本黒鉛工業株式会社製のバニーハイト(登録商標)から形成することができる。
【0013】
このため、この電気二重層キャパシタでは、容易かつ安価に導電性皮膜を形成することができる。
【0014】
本発明の第5観点に係る電気二重層キャパシタは、第1観点から第4観点のいずれかに係る電気二重層キャパシタであって、集電体は、アルミニウムである。
【0015】
このため、この電気二重層キャパシタでは、耐食性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る電気二重層キャパシタは、難燃性や低温特性に優れており、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を行うことができる。
【0017】
本発明の第2、3観点に係る電気二重層キャパシタは、高電圧印加時において、導電性皮膜がない場合よりも放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を行うことができる。
【0018】
本発明の第4観点に係る電気二重層キャパシタでは、容易かつ安価に導電性皮膜を形成することができる。
【0019】
本発明の第5観点に係る電気二重層キャパシタでは、耐食性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気二重層キャパシタの簡易構成図である。
【図2】表1に対応するグラフ図である。
【図3】表2に対応するグラフ図である。
【図4】実施例1の導電性皮膜が形成された状態の断面SEM写真である。
【図5】比較例1の導電性皮膜を形成していない状態の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電気二重層キャパシタ1は、図1に示されるように、主に、容器(図示せず)、一対の集電体10、セパレータ11、導電性皮膜12、分極性電極13および電解液14を備える。
【0022】
(集電体10)
集電体10は、例えば、アルミニウム等の導電性物質からなる薄板である。
【0023】
この集電体10としては、集電体は化学的、電気化学的に耐食性のあるものであればよく、活性炭を主体とする分極性電極の集電体としては、アルミニウム以外にも、例えば、ステンレス、チタンまたはタンタルが好ましく使用できる。これらのうち、ステンレスまたはアルミニウムが、得られる電気二重層キャパシタ1の特性と価格の両面において特に好ましい材料である。また、アルミニウムは、耐食性に優れる点でより好ましい。
【0024】
集電体10の金属の純度としては、99.8%以上のものが好ましい。
【0025】
また、集電体10の表面処理については、サンドブラスト、化学エッチング、電解エッチング等の粗面化処理を施したものや、表面が平滑なものであってもよい。
【0026】
(導電性皮膜12)
そして、片側の集電体10のセパレータ11に対向する面は導電性皮膜12により覆われている。なお、この導電性皮膜は、もう片方の集電体のセパレータ11に対向する面を覆ってもよい。また、この導電性皮膜12は、例えば、黒鉛から形成されており、その黒鉛化度が0.6以上0.8以下であることが好ましい。
【0027】
なお、高出力用途の電気二重層キャパシタとして、分極性電極13の厚みを100μm程度とした場合には、導電性皮膜12の厚みが10μm〜30μmの範囲内にあることが好ましい。なお、導電性皮膜の厚みが10μm未満であると多孔質膜の形成抑制効果が十分でないおそれがあり、導電性皮膜の厚みが30μmよりも大きいとエネルギー密度が低下して内部抵抗も大きくなってしまう懸念がある。
【0028】
また、高容量用途の電気二重層キャパシタとして、分極性電極13の厚みを300μm〜500μm程度とした場合には、多孔質膜の形成抑制効果と静電容量密度低下とのバランスを考慮すると、導電性皮膜12の厚みは60μm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
(セパレータ11)
セパレータ11は、紙や繊維不織布などの非導電性物質からなる薄板である。そして、このセパレータ11は、一対の集電体10の間に配置されている。
【0030】
(分極性電極13)
分極性電極13は、例えば、活性炭などから形成されており、集電体10とセパレータ11との間に配置されている。なお、実際には、この分極性電極13は、集電体10または導電性皮膜12の上に塗膜として形成される。
【0031】
分極性電極13に用いる活性炭としては、フェノール樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭などがある。これらのうち大きい容量を得られる点で石油コークス系活性炭またはフェノール樹脂系活性炭を使用するのが好ましい。また、活性炭の賦活処理法には、水蒸気賦活処理法、溶融KOH賦活処理法などがあり、より大きな容量が得られる点で溶融KOH賦活処理法による活性炭を使用するのが好ましい。
【0032】
また、分極性電極13に用いる活性炭としては、大容量で低内部抵抗の電気二重層キャパシタが得られるように、平均粒径が20μm以下で比表面積が1500〜3000m2/gの活性炭を使用するのが好ましい。
【0033】
また、分極性電極13は、上述した活性炭に代えてまたは併用して、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、ポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラックなどの炭素質材料を用いてもよい。
【0034】
なお、分極性電極13の密度としては、0.37〜0.40g/cm(低密度)が好ましい。
【0035】
また、導電性皮膜12を形成するための塗料を塗布して乾燥させた後に、分極性電極13を形成するための塗料を塗布して乾燥させてもよいし、分極性電極13を形成するための塗料の塗布時に、導電性皮膜12の表面の一部を溶解させながら分極性電極13を形成することで、導電性皮膜12と分極性電極13との界面が無い連続的な構造としてもよい。すなわち、導電性皮膜12と分極性電極13とが2層に明確に分かれていてもよいし、分極性電極13が導電性皮膜12の内部に浸透し、分極性電極13が導電性皮膜12の内部に分散して存在している状態であってもよい。少なくとも分極性皮膜13と集電体10との間に導電性皮膜12が存在する部分を有していればよい。
【0036】
(電解液14)
電解液14は、溶媒が含フッ素有機溶媒であること、もしくは、3.5V以上の動作電圧が印加された場合であっても化学的な分解が生じないものが好ましい。このような電解液14は、例えば、70℃における3.3V電圧印加時の安定時反応電流が0.1mA/F以下である電解液であることが望ましい。
【0037】
電気二重層キャパシタ1の電解液14において、電解質塩溶解用溶媒として、カーボネート類やラクトン類ではなく、含フッ素有機溶媒を使用することは、以下の観点から好ましい。すなわち、3V以上の電圧を印加した場合であっても化学的な分解が生じにくい。また、引火点が低く燃焼性が高いことによる過充電・過加熱時の発火の危険性を回避できる。また、粘性が高くなりにくいため、低温でも伝導率の低下を小さくすることができ、出力が低下してしまうことを抑制できる(低温特性)。加水分解性を低くすることができるため、使用しやすい。このような電解液14の電解液14は、電解質塩の溶解性が高く、塩基性下でも安定な、炭化水素系溶媒との相溶性にも優れた非水系電解液であることが特に好ましい。このような含フッ素有機溶媒としては、電解液が、以下の式(I):
【0038】
【化1】

【0039】
(式中、X1〜X6は同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、CH3または含フッ素メチル基;ただし、X1〜X6の少なくとも1つは含フッ素メチル基である)で示される含フッ素ラクトンであることが好ましい。
【0040】
また、X1〜X6における含フッ素メチル基は、−CH2F、−CHF2および−CF3であり、耐電圧性が良好な点から−CF3が好ましい。含フッ素メチル基はX1〜X6の全てに置換していてもよいし、1個だけでもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3個、特に1〜2個である。また、含フッ素メチル基の置換位置は特に限定されないが、合成収率が良好なことから、X3および/またはX4が、特にX4が含フッ素メチル基、なかでも−CF3であることが好ましい。含フッ素メチル基以外のX1〜X6は、H、F、ClまたはCH3であり、特に電解質塩の溶解性が良好な点からHが好ましい。
【0041】
上記含フッ素ラクトンにおいて、ラクトン環を構成している炭素原子に結合している含フッ素メチル基以外の原子が、Fおよび/またはHであることが好ましい。また、電解質塩が、アンモニウム塩であることが好ましく、テトラアルキル4級アンモニウム塩、スピロビピリジニウム塩またはイミダゾリウム塩であることが特に好ましい。
【0042】
上記含フッ素ラクトンのフッ素含有率は、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、特に30質量%以上であり、上限は通常76質量%、好ましくは55質量%である。含フッ素ラクトン全体のフッ素含有率の測定方法は燃焼法等の通常の手法で測定が可能である。
【0043】
含フッ素ラクトンを含んでいるため、難燃性を向上させる含フッ素エーテルを加える場合であっても、2層に分離しにくく、均一な状態にすることができる。
【0044】
以上のような電解液14は、特開2008−016560号公報に詳しい。
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0046】
<ラミネートセルの作製>
先ず、集電体として日本蓄電器工業株式会社製のエッジドアルミ(品番:20CB)を用意した。なお、このエッジドアルミの厚みは約20μmであった。
【0047】
次に、簡易塗装装置を用いて集電体に日本黒鉛工業株式会社製のバニーハイト(商品名)(品番:T602)を20μm塗布した後、その塗膜を100℃で20分間乾燥させて集電体上に導電性皮膜を形成した。なお、この導電性皮膜の厚みは20μmであった。
【0048】
次いで、新日本石油株式会社製の活性炭(品番:CEP21,表面積:2100m/g)を100重量部、電気化学工業株式会社製のデンカブラック(導電助剤)を300重量部、ライオン株式会社製のケッチェンブラックを200重量部、日本ゼオン株式会社製のバインダー(品番:AZ−9001)を400重量部、東亜合成株式会社製の界面活性剤(品番:A10H)を200重量部混合して導電性塗料を調製した。そして、この導電性塗料を導電性皮膜上に塗布した後、その塗膜を乾燥炉で70℃、110℃でそれぞれ1時間乾燥させて分極性電極を形成した。なお、この分極性電極の厚みは80μmであった。
【0049】
なお、以下、集電体、導電性皮膜および分極性電極をまとめて電極薄板と称する。
【0050】
続いて、この電極薄板を20x72mmの大きさに切断し、エッジドアルミに電極引出リード線を溶接した後、その電極薄板にセルガード株式会社製のセルガードNo.2400(ポリエチレン製多孔質膜セパレータ,膜厚:25μm,密度:0.56g/cm,最大孔径:0.125x0.05μm)で挟み込んで大日本印刷株式会社製のラミネート容器(品番:D−EL40H)に収容した。そして、ドライチャンバー内でラミネート容器に電解液を注入し、ラミネート容器を封止してラミネートセルを完成させた。なお、電解液としては、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンと1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(HCF2CF2CH2OCF2CF2H)との混合溶媒100重量部に日本カーリット株式会社のSBP−PF6(電解質塩)100重量部を溶解させたものを用いた。なお、この電解液は、70℃における3.3Vの電圧印加時の安定時反応電流が0.1mA/F以下である。
【0051】
なお、本実施例では、上記のようにして4つのラミネートセルを作製した。
【0052】
<SEM写真による評価>
上述のようにエッジドアルミに対してバニーハイト(商品名)(品番:T602)を20μm塗布した後、その塗膜を100℃で20分間乾燥させて集電体10上に導電性皮膜12を形成し、さらに導電性塗料を導電性皮膜12上に塗布して乾燥させることで分極性電極13を形成した状態で、液体窒素によって凍結させ、カミソリを用いて切断した断面をSEM写真で評価した。このSEM写真を図4に示す。ここでは、最終的に分極性皮膜13が形成された後の導電性皮膜12の膜厚は、概ね5〜10μmとなっていることが確認された。
【0053】
<高電圧放電特性の計測>
先ず、各ラミネートセルに電子電源を接続した後、各ラミネートセルに定電流充電しながら規定電圧まで充電電圧を上昇させた。そして、充電電圧が規定電圧到達してから約5分間定電圧状態を維持し、充電電流が十分に降下し且つ飽和状態になったことを確認した後に定電流放電して0.5秒毎にセル電圧を計測した。
【0054】
その後、計測されたセル電圧から下記の放電エネルギー量計算式に従って放電開始から放電終了(セル電圧が0.6Vまで下降したところ)まで0.5秒毎の放電エネルギー量Ed(J)を求め、最後にそれらの放電エネルギー量を積算して総放電エネルギー量を算出した。
【0055】
Ed=1/2×I×t×V
なお、上式においてIは定電流値(A)であり、tは0.5秒であり、Vはセル電圧(V)である。
【0056】
また、総放電エネルギー量は、4つのラミネートセルそれぞれについて求め、それらの平均値を最終的な総放電エネルギー量とした。結果を表1および図2に示す。
【0057】
なお、本計測において、充電および放電における定電流値は10mA/Fを目安とした。なお、実際の定電流値は35mAであった。また、本実施例において、電流値は、ラミネートセルに直列に1Ωの固定抵抗を接続してこの固定抵抗の両端の電圧を計測した後、固定抵抗値(1Ω)および計測電圧から算出している。また、本実施例において、規定電圧は2.5V、3.0V、3.3V、3.5V、3.7V、3.9V、4.1Vおよび4.3Vとし、それぞれの規定電圧毎に上記計測を行った。なお、このとき、4台の定電流充放電装置と多チャンネルロガーを用いて4個のラミネートセルの高電圧放電特性を同時計測した。
【実施例2】
【0058】
<捲回セルの作製>
実施例1で作製した電極薄板を34mm幅に切断した後、その電極薄板を皆藤製作所製のEDLC用捲回機によりセルガード株式会社製のセルガードNo.2400と共に捲回した。その後、電極薄板に電極引出し用のタブリードをカシメ接続して直径16mmの円筒捲回体を作製した。そして、この円筒捲回体をφ18mmx40mmの円筒アルミケースに挿入した後、ドライチャンバー中でその円筒アルミケースに実施例1と同一の電解液を注入し、円筒アルミケースをゴムパッキンを介して封止して捲回セルを完成させた。
【0059】
なお、本実施例では、上記のようにして2つの捲回セルを作製した。
【0060】
<高電圧放電特性の計測>
先ず、各捲回セルに電子電源を接続した後、各捲回セルに定電流充電しながら規定電圧まで充電電圧を上昇させた。そして、充電電圧が規定電圧到達してから約5分間定電圧状態を維持し、充電電流が十分に降下し且つ飽和状態になったことを確認した後に定電流放電して0.5秒毎にセル電圧を計測した。
【0061】
その後、計測されたセル電圧から下記の放電エネルギー量計算式に従って放電開始から放電終了(セル電圧が0.6Vまで下降したところ)まで0.5秒毎の放電エネルギー量Ed(J)を求め、最後にそれらの放電エネルギー量を積算して総放電エネルギー量を算出した。
【0062】
Ed=1/2×I×t×V
なお、上式においてIは定電流値(A)であり、tは0.5秒であり、Vはセル電圧(V)である。
【0063】
また、総放電エネルギー量は、2つの捲回セルそれぞれについて求め、それらの平均値を最終的な総放電エネルギー量とした。結果を表2および図3に示す。
【0064】
なお、本計測において、充電および放電における定電流値は10mA/Fを目安とした。なお、実際の定電流値は、作製された捲回セルの実測容量が約50Fであったので、500mAとした。また、本実施例において、電流値は、捲回セルに直列に0.1Ωの固定抵抗を接続してこの固定抵抗の両端の電圧を計測した後、固定抵抗値(0.1Ω)および計測電圧から算出している。また、本実施例において、規定電圧は2.5V、3.0V、3.3V、3.5V、3.7V、3.9Vおよび4.1Vとし、それぞれの規定電圧毎に上記計測を行った。なお、このとき、2台の定電流充放電装置と多チャンネルロガーを用いて2個の捲回セルの高電圧放電特性を同時計測した。
(比較例1)
集電体上に導電性皮膜を形成することなく分極性電極を形成したこと以外は実施例1と同様にして4つのラミネートセルを作製した。図5に、集電体上に導電性皮膜を形成することなく分極性電極が形成された状態で、液体窒素によって凍結させ、カミソリを用いて切断した断面のSEM写真を示す。
【0065】
また、その4つのラミネートセルの総放電エネルギー量を実施例1と同様にして求めた。
【0066】
なお、本比較例において、実際の定電流値は40mAであった。結果を表1および図2に示す。
(比較例2)
集電体上に導電性皮膜を形成することなく分極性電極を形成した電極薄板を用いたこと以外は実施例2と同様にして4つの捲回セルを作製した。また、その4つの捲回セルの総放電エネルギー量を実施例2と同様にして求めた。
【0067】
なお、本比較例において、実際の定電流値は、作製された捲回セルの実測容量が約50Fであったので、500mAとした。結果を表2および図3に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】


表1および図2から明らかなように、実施例1に係るラミネートセルは、3.9V〜4.3Vの規定電圧で顕著な効果を奏していることがわかる。
【0070】
また、表2および図3から明らかなように、実施例2に係る捲回セルは、3.7Vおよび3.9Vの規定電圧で顕著な効果を奏していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る電気二重層キャパシタは、高電圧印加時において放電時の電圧降下が小さく充電電圧に見合った放電に近い放電を行うことができるという特徴を有し、静電容量の増大に有効である。
【符号の説明】
【0072】
1 電気二重層キャパシタ
10 集電体
11 セパレータ
12 導電性皮膜
13 分極性電極
14 電解液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2008−016560号公報
【特許文献2】特開2000−156328号公報
【非特許文献】
【0074】
【非特許文献1】永田伊佐也著,「電解液陰極アルミニウム電解コンデンサ」,日本蓄電器工業株式会社,1997年2月24日

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の集電体と、
前記集電体の間に配置されるセパレータと、
少なくとも一方の前記集電体の表面のうち前記セパレータに対向する表面を被覆する導電性皮膜と、
前記集電体および前記導電性皮膜の少なくとも前記導電性皮膜の表面のうち前記セパレータに対向する表面に接するように形成される分極性電極と、
溶媒が含フッ素有機溶媒であり、前記分極性電極に含浸される電解液と
を備える電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
3.5V以上の動作電圧が可能な電気二重層キャパシタであって、
一対の集電体と、
前記集電体の間に配置されるセパレータと、
少なくとも一方の前記集電体の表面のうち前記セパレータに対向する表面を被覆する導電性皮膜と、
前記集電体および前記導電性皮膜の少なくとも前記導電性皮膜の表面のうち前記セパレータに対向する表面に接するように形成される分極性電極と、
電解液と
を備える電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記電解液は、70℃における3.3Vの電圧印加時の安定時反応電流が0.1mA/F以下である、
請求項1または2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記導電性皮膜は、黒鉛から形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記集電体は、アルミニウムである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226100(P2010−226100A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40223(P2010−40223)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】