説明

電気光学ディスプレイを駆動するための方法

複数のグループに分けられた複数のピクセルを持つディスプレイを以下により駆動する。複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定し、選定したグループのピクセルの各々に駆動電圧又は非駆動電圧のどちらかを印加し、第一フレーム期間内にすべてのピクセル・グループのスキャンを完了し、第二フレーム期間中にピクセル・グループのスキャンを繰り返し、第一と第二フレーム期間との間の休止期間においてはピクセル・グループのスキャンを中断し、この休止期間は第一及び第二フレーム各期間の長さを超えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ディスプレイを駆動するための方法に関する。本発明の方法は、以下に限らないが、特に双安定電気泳動ディスプレイの駆動への使用を目的とする。
【0002】
本出願は、国際出願PCT/US02/37241(公開番号WO03/044765)及びPCT/US2004/10091と密接に関連しており、以下の説明は、読者がこれら文書の内容を知悉していることを前提とする。
【背景技術】
【0003】
本明細書で、材料又はディスプレイに適用する「電気光学」という用語は、画像技術における慣習的な意味で用いられ、少なくとも一つの光学特性において異なった第一及び第二表示状態を持つ材料であって、電界を加えることにより、第一状態から第二状態に変化する材料について称する。光学特性は、通常、人間の目で知覚できる色であるが、透過、反射、ルミネセンス、又は、機械読み取りを目的としたディスプレイの場合には、可視範囲から外れた電磁波長反射の変化という意味で擬似光のような、別の光学特性もある。
【0004】
本明細書で、「グレイ状態」という用語は、画像技術における慣習的な意味で用いられ、ピクセルの両最端の光学状態の中間状態をいい、必ずしも、それら両最端状態の間の黒−白移行を意味するものではない。例えば、以下に述べる特許及び公開出願のいくつかは、最端状態が白色及び藍色の電気泳動ディスプレイを記載しており、ここでは中間の「グレイ状態」は実際は空色ということになろう。実際には、前記のように、2つの最端状態の間の移行で全く色が変化しないものがある。
【0005】
本明細書で、「双安定」及び「双安定性」という用語は、画像技術における慣習的な意味で用いられ、少なくとも一つの光学特性において異なった第一及び第二表示状態を持つ表示素子含むディスプレイについて称し、これらディスプレイは、継続時間が限定的な処理パルスを印加することにより、任意の所定の素子が駆動され第一あるいは第二表示状態となり、パルス印加が終了した後は、表示素子の状態を変化させるために必要な最小処理パルスの継続時間として数回、例えば少なくとも4回印加されるまではその状態が持続するようなディスプレイである。国際出願WO02/079869中には、グレイ・スケール機能を持つある種の粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、最端の黒及び白状態ばかりでなくグレイ状態においても安定的であると示されている。このことは、他のいくつかの種類の電気光学ディスプレイについても同様である。この種類のディスプレイは、正しくは「双安定」でなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、本明細書では、双安定と多安定の両方を含めて「双安定」という用語を用いることがある。
【0006】
本明細書で、「インパルス」という用語を、画像技術における電圧の時間積分についての慣習的な意味で用いる。但し、電荷トランスデューサとして機能しているある種の双安定電気光学媒体については、インパルスの別の定義、すなわち、電流の時間経過積分(印加された合計電荷と等しい)を用いることがある。媒体が電圧時間インパルス・トランスデューサとして機能しているか、電荷トランスデューサとして機能しているかにより、適切なインパルスの定義を用いるものとする。
【0007】
前記のWO03/044765及びPCT/US2004/10091に記載されているように、いくつかの種類の電気光学ディスプレイが知られており、例えば、米国特許5,808,783号、5,777,782号、5,760,761号、6,054,071号、6,055,091号、6,097,531号、6,137,467号、及び6,147.791号に記載された回転バイクロマル部材タイプ、及び、エレクトロクロミック・タイプがあり、例えば、B.オリーガン他、ネーチャー(Nature)誌1991、353、737、及びD.ウッド、情報ディスプレー(Information Display)、18(3)、24(2002年3月)を参照されたい。また、U.バッハ他、Adv.Mater、2002年、14(11)、845も参照されたい。また、この種のナノクロミック膜については、例えば米国特許6,301,038号、国際出願公開WO01/27690号及び米国特許出願2003/0214695に記載されている。
【0008】
ここ数年間、熱心な研究・開発の対象となっている別の種類の電気光学ディスプレイとして、粒子ベース電気泳動ディスプレイがある。マサチューセッツ工科大学及びEインク社(E Ink Corporation)に対し、又はその名の下に与えられた数多くの特許及び出願にこのようなディスプレイが記載されており、例えば以下のものがある。米国特許5,930,026号、5,961,804号、6,017,584号、6、067,185号、6、118,426号、6、120,588号、6、120,839号、6、124,851号、6、130,773号、6、130,774号、6、172,798号、6、177,921号、6、232,950号、6、249,721号、6、252,564号、6、262,706号、6、262,833号、6、300,932号、6、312,304号、6、312,971号、6、323,989号、6、327,072号、6、376,828号、6、377,387号、6、392,785号、6、392,786号、6、413,790号、6、422,687号、6、445,374号、6、445,489号、6、459,418号、6、473,072号、6、480,182号、6、498,114号、6、504,524号、6、506,438号、6、512,354号、6、515,649号、6、518,949号、6、521,489号、6、531,997号、6、535,197号、6、538,801号、6、545,291号、6、580,545号、6、639,578号、6、652,075号、6、657,772号、6、664,944号、6、680,725号、6、683,333号、6、704,133号、6、710,540号、6、721,083号、6、724,519号、及び6、727,881号、及び米国特許出願2002/0019081号、2002/0021270号、2002/0053900号、2002/0060321号、2002/0063661号、2002/0063677号、2002/0090980号、2002/0106847号、2002/0113770号、2002/0130832号、2002/0131147号、2002/0145792号、2002/0171910号、2002/0180687号、2002/0180688号、2002/0185378号、2003/0011560号、2003/0011868号、2003/0020844号、2003/0025855号、2003/0034949号、2003/0038755号、2003/0053189号、2003/0102858号、2003/0132908号、2003/0137521号、2003/0137717号、2003/0151702号、2003/0189749号、2003/0214695号、2003/0214697号、2003/0222315号、2004/0008398号、2004/0012839号、2004/0014265号、2004/0027327号、2004/0075634号、及び2004/0094422号、及び、国際出願公開WO99/67678号、WO00/05704号、WO00/38000号、WO00/38001号、WO00/36560号、WO00/67110号、WO00/67327号、WO01/07961号、WO01/08241号、WO03/092077号、WO03/107315号、WO04/017035号、及びWO04/023202号。
【0009】
前記特許及び出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体中の分離されたマイクロカプセルを取り囲む被覆壁を、連続的フェーズのものに置き換え、これにより、いわゆる「ポリマー分散型電気泳動ディスプレイ」を生成し、その中の電気泳動媒体に、複数種類の電気泳動液の分離溶滴と連続フェーズの重合体材料とを含め、このようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動液の分離溶滴を、各個別の溶滴に対する分離カプセル膜がなくても、カプセル又はマイクロカプセルと見なすことができることを認めている。例えば、前記2002/0131147を参照されたい。従って、本発明の目的の上から、このようなポリマー分散電気型泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なす。
【0010】
電気泳動ディスプレイの関連タイプに、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」がある。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、帯電粒子及び分散液はカプセルには封入されてはいないが、代わりに、キャリヤ媒体、典型的には重合体フィルム内に形成された複数のキャビティに保持されている。例えば、両方ともシピックス・イメージング社(Sipix Imaging,Inc.)が保持する国際出願公開WO02/01281号、及び米国特許2002/0075556を参照されたい。
【0011】
多くの場合、電気泳動媒体は不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子は、ディスプレイを透過する可視光線を大幅に遮断するため)、反射モードで作動するが、多くの電気泳動ディスプレイは、これらをいわゆる「シャッター・モード」で作動するようにすることができ、このモードでは、一つの表示状態は、実質的に不透明で、一つは光透過性である。例えば、前記米国特許6,130,774号、6,172,798号、及び米国特許5、872,552号、6,144,361号、6,271,823号、6,225,971号、及び6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似しているが電界強度の変化に依存しており、同様なモードで作動できる、米国特許4,418,346号を参照されたい。また、他の種類の電気光学ディスプレイもシャッター・モードで作動できる。
【0012】
粒子ベース電気泳動ディスプレイの双安定又は多安定特質、及び同様な特質を表示する他の電気光学ディスプレイ(以下、便宜のため、「インパルス駆動ディスプレイ」という)は、在来の液晶(「LC」)ディスプレイとは、好対照である。ねじれネマチック液晶は、双安定又は他安定作用を持たず、電圧トランスデューサとして作用し、このようなディスプレイのピクセルに所定の電界を加えると、その前にピクセルに存在していたグレイ・レベルのいかんに関わらず、ピクセルに特定のグレイ・レベルが生成される。さらに、LCディスプレイは、一方向にのみ駆動され(不透過性すなわち「濃い」から透過性すなわち「薄い」へ)、薄い状態からより濃い状態への反対方向の移行は、電界の低減又は除去効果によっている。さらにつけ加えると、LCディスプレイのピクセルのグレイ・レベルは、電界の極性に対する感受性はなくその強度に対してだけで、実際には、商用LCディスプレイは、技術的な理由で通常頻繁に駆動電界の極性を反転する。これと対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、おおまかにいえば、インパルス・トランスデューサとして作用し、ピクセルの最終状態が、加えられた電界と電界が加えられた時間とにだけでなく、その電界が加わる前のピクセルの状態にも依存する。
【0013】
このようなインパルス駆動の電気光学ディスプレイを取り扱うための理想的な方法は、各ピクセルが当初のグレイ・レベルから最終的なグレイ・レベルに直接移行するようにコントローラが画像書き込みを設定する、いわゆる「一般グレイスケール画像フロー」であると一見思えるかもしれない。しかしながら、インパルス駆動ディスプレイ上の書き込み画像には、必ず何らかのエラーがある。実務で遭遇するそのようなエラーの一部として以下のものがある。
【0014】
(a)以前の状態への依存性;少なくとも一部の電気光学媒体では、ピクセルを新しい光学状態に切り換えるため必要なインパルスが、現在及び所望の光学状態だけでなく、その前のピクセルの光学状態にも依存している。
【0015】
(b)ドウェル時間への依存性;少なくとも一部の電気光学媒体では、ピクセルを新しい光学状態に切り換えるため必要なインパルスは、そのピクセルの種々の光学状態での経過時間に依存している。この依存性の正確な性質はよく分かっていないが、一般に、ピクセルが現在の光学状態に長くあったほど、より高いインパルスが必要になる。
【0016】
(c)温度依存性;ピクセルを新たな状態に切り換えるために必要なインパルスは、温度に大きく依存している。
【0017】
(d)湿度依存性;ピクセルを新たな状態に切り換えるために必要なインパルスは、少なくとも電気光学媒体の一部のタイプでは、周辺湿度に依存している。
【0018】
(e)機械的均一性;ピクセルを新たな状態に切り換えるために必要なインパルスは、ディスプレイ中の機械的バラツキ、例えば、電気光学媒体又は関連する積層接着剤の厚さのバラツキの影響を受けることがある。他の種類の機械的不均一性として、媒体の製造バッチの違い、製造許容範囲及び材料バラツキからくるものがある。
【0019】
(f)電圧誤差;ピクセルに印加される実際のインパルスは、ドライバにより供給される電圧の僅少な不可避の誤差によって、必然的に、理論的印加とわずかな差異が生じてしまう。
【0020】
前記のWO03/044765及びPCT/US2004/10091に記載されるように、一般グレイスケール画像フローは、ある種の画像に関して、一般の観察者にも明らかなグレイ・レベルの逸脱を生じることのある「誤差累積」現象に影響される。この誤差累積現象は、前記のすべてのタイプの誤差について生じる。前記の2003/0137521に記載されるように、このような誤差を補償することは可能であるが、ある程度の精度までである。しかして、一般グレイスケール画像フローで、良好な結果を得るためには、非常に高精度な印加インパルス制御が必要となり、経験的には、現在の電気光学ディスプレイ技術状態では、商業用のディスプレイで一般グレイスケール画像フローを実施するのは不可能なことがわかっている。
【0021】
ほとんどすべての電気光学媒体は、内蔵のリセット(誤差制限)メカニズム、すなわち、最端(通常黒及び白)光学状態を有し、これらは「光レール」として機能する。電気光学ディスプレイのピクセルに特定のインパルスが印加されると、そのピクセルはそれ以上白く(又は黒く)なれない。例えば、カプセル化電気泳動ディスプレイでは、特定のインパルスが印加されると、すべての電気泳動粒子は相互に又はカプセル化内壁に反発されて身動きできなくなり、制限光学状態すなわち光レール状態になる。このような媒体中では電気泳動粒子のサイズ及び電荷が種々に分布しているので、粒子の一部は他のものより先にレールに衝突して「ソフト・レール」現象を生成し、これにより、移行の最終光学状態が最端の黒色又は白色へのアプローチである場合には必要なインパルス精度が下がり、ピクセルの光学範囲の中間近くへの移行で終る場合には、要求される光学精度は著しく高くなる。
【0022】
光レールの利点を取り入れた、電気光学ディスプレイのための様々な種類のドライブスキームが知られている。例えば、前記のWO03/044765の図9及び10、及びその関連説明には、一切の新規画像を書き込む前に、全体ディスプレイを両方の光レールに駆動する「スライドショー」ドライブスキームが記載されている。このようなスライドショー・ドライブスキームは、正確なグレイスケールを生成するが、ディスプレイを光レールに駆動する際にディスプレイがフラッシングし、これが視聴者の気を散らせる。また、同様なドライブスキームで、新しい画像のため光学状態を変更する必要のあるピクセルだけを光レールに駆動するものを採用することが提案されている(米国特許6,531,997号参照)。しかしながら、この種の「限定スライドショー」ドライブスキームにすると、むしろ、視聴者はもっと気が散ってしまう、というのは、通常のスライドショー・ドライブスキームでは一定であったフラッシングが、画像依存型のフラッシングにとって替わられ、新しい画像が書き込まれる前に、旧画像と新画像の表示内容が反対の色でフラッシュするからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
明らかに、純粋な一般グレイスケール画像フロー・ドライブスキームでは、グレイ・レベルのエラーを防止するために光レールに頼ることはできない、というのは、このようなドライブスキームにおいては、どれかのピクセルが、いずれの光レールにも触れることなく、無限大回数変更され続ける可能性があるからである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一つの形態において、本発明は、スライドショウが達成したのと同様なグレイ・レベルの安定性でありながら、スライドショウ・ドライブスキームの気が散るフラッシングのないグレイ・レベル安定性を実現できる、電気光学ディスプレイのグレイ・レベル制御を達成するための方法を提供することを目的としている。本発明の好適な方法によって、純粋な一般グレイスケール画像フロー・ドライブスキームが提供するのと同様な視覚体験を視聴者に与えることができる。
【0025】
別の形態において、本発明は、パルス幅変調によって駆動されるディスプレイのグレイ・レベル制御を達成するための方法を提供することを希求している。
【0026】
グレイスケール画像を書き込むための、双安定性電気光学媒体を持つアクティブ・マトリクス・ディスプレイを駆動する場合、表示されるグレイスケールの精度よい制御を実現するために、各ピクセルに正確な量のインパルスを印加できることが望ましい。用いる駆動方法として、各ピクセルに印加する電圧の変調、及び/又は電圧を印加している「幅」(時間経過)の変調を用いることができる。電圧変調ドライバ及び関連する電源は比較的高価なので、パルス幅変調には商業的な魅力がある。しかしながら、このようなパルス幅変調を用いたアクチブ・マトリクス・ディスプレイのスキャンにおいて、在来型のドライバ回路構成では、一回のマトリックス・スキャンで、一切のピクセルに対して単一の電圧を印加することしかできない。その結果、アクチブ・マトリクス・ディスプレイのパルス幅変調駆動は、マトリクスを複数回スキャンし、個別ピクセルのグレイ・レベルに必要な変化のいかんによって、ゼロ、一部又はすべてのスキャンにおいて駆動電圧を印加することによって機能する。各スキャンは、駆動波形の一フレームとなり、連続フレームで形成される「スーパーフレーム」が全体的な処理パルスとなる。駆動電圧は、各スキャンにおいて1ライン処理時間の間いずれか特定のピクセル電極に印加されるだけであるが、その電圧は、次に同一ラインが選択されるまでの間、徐々に衰えながらもピクセル電極に残存しており、次に同一ラインが選択されるまでの間、ピクセルを駆動していることに注目されたい。
【0027】
前記したように、各フレーム実施時に、高解像度ディスプレイ(例えば、800x600ピクセルのディスプレイ)に対するフレーム・レートが実際上約500から100Hzの範囲を外れることがなく、各フレームが、通常、10から20m秒継続するように、マトリックスの各ローを個別に選択する必要がある。この長さのフレームでは、多くの高速スイッチング電気光学媒体を持つグレイスケールの微細制御が難しくなる。例えば、一部のカプセル化電気泳動媒体は、約100m秒以内に、実質的にその最端光学状態の間の転換を完了し(約30L*ユニットの移行)、このような媒体においては、20m秒のフレームは、約6L*ユニットのグレイスケール移行に相当する。グレイスケールの精度ある制御をするためには、このような移動は大きすぎる。人間の目は、約1L*ユニットのグレイ・レベルの違いにも感受性があり、約6L*ユニットに等しい尺度だけでインパルスを制御するのは、電気光学媒体の前状態への依存性による「ゴースティング」のような生成物を生じさせやすい。さらに詳細には、前記の特許及び出願の一部で論じられているように、印加インパルスによるグレイ・レベルの変化はリニアでなく、ある特定のグレイ・レベル変化のために必要な全体インパルスは、インパルスが印加された時点及び介在するグレイ・レベルによって変わりえるので、ゴーステイングが出てくることがある。例えば、グレイ・レベル0(黒色)、1(濃いグレイ)、2(薄いグレイ)及び3(白色)のグレイ・レベルを持ち、簡単なパルス幅変調仕組みで駆動されている簡単な4グレイ・レベル・ディスプレイにおいて、これらの非リニアリティにより、概念上の0−2の移行の後得られた実際のグレイ・レベルは、概念上の1−2移行から得られたグレイ・レベルと違ったものになり、非常に望ましくない視覚産物が生成されることになろう。本発明は、パルス幅変調により駆動されるディスプレイのグレイ・レベルの制御を実現するための方法を提供し、これにより前記の問題を回避する。
【0028】
従って、一つの様態において、本発明は、2つの最端光学状態を含め少なくとも4つの異なるグレイ・レベルのいずれをも実現できる、少なくとも一つのピクセルを持つ電気光学ディスプレイを駆動する方法を提供する。この方法は、
第一画像をディスプレイ上に表示することと、
第二画像を表示するためにディスプレイを書き換えることとを含み、
ディスプレイの書き換えにおいて、少なくとも1つの規定された値を超える回数を移行する一切のピクセルは、最端光学状態へ移行するものを除き、少なくとも一つの最端光学状態に駆動された後、そのピクセルの第二画像での最終的光学状態に駆動される。
【0029】
便宜のため、以降、この方法を本発明の「制限移行方法」という。
【0030】
この制限移行方法の一つの形態において、ディスプレイの書き換えは、ピクセルが、一つの極性のパルスによって一つの最端光学状態から反対側の最端光学状態へ一旦駆動されたならば、そのピクセルは反対側最端光学状態に達するまでは、反対極性のパルスを感受しないようにして達成される。
【0031】
また、制限移行方法において、規定された値(前もって定めたられた移行回数)は、N/2を超えない、ここでNは、ピクセルが表示できるグレイ・レベルの合計数である。制限移行方法は、3レベル・ドライバで実行することができるる。すなわち、ディスプレイの書き換えを、−V、0及び+Vのいずれか一つ以上の電圧を特定の又は各ピクセルに印加することにより実行することができる。また制限移行方法をDCバランス法とすることもできる、すなわち、ディスプレイの書き換えにおいてピクセルが経る一連の移行のどれについても、印加する電圧の時間積分値を束縛するようにして達成できる。
【0032】
本発明の制限移行方法において、移行中にピクセルに印加されるインパルスがその移行の初期及び最終のグレイ・レベルだけに依存するようにして、ディスプレイの書き換えを実施することができる。これに換えて、さらなる詳細を後記するように、この方法を調整してディスプレイの他の状態を取り入れることができる。制限移行方法の一つの好適な方式において、グレイ・レベルR2からグレイ・レベルR1に移行する少なくとも一つのピクセルが経る少なくとも一つの移行に対し、以下の形式のインパルスのシーケンスが印加される:
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
ここで、「IP(Rx)」は、各グレイ・レベルに対し一つの値を持つインパルス・ポテンシャル・マトリクスからの対応値を表し、TM(R1,R2)は、各々のR1,R2組合せに対し一つの値を持つ移行マトリクスからの対応値を表す。(便宜のため、このタイプのインパルス・シーケンスを、以降、「−x/ΔIP/x」シーケンスと短縮表現する。)このような−x/ΔIP/xシーケンスを、初期と最終グレイ・レベルとが異なるすべての移行に対して使用することができる。また、このような−x/ΔIP/xシーケンスにおいて、最後の「x」項を、最大更新時間の半分以上を占めるようにすることができる。TM(R1,R2)すなわちxの値を、各値の符号がR1だけに依存するように選定することができる、具体的には、これらの値を、一つ以上の薄いグレイ・レベルに対しては「正」、一つ以上の濃いグレイ・レベルに対しては「負」になるよう選定し、2つの最端光学状態以外のグレイ・レベルに対し、より近い方の最端光学状態からアプローチするようにすることができる。
【0033】
前記の−x/ΔIP/xシーケンスに、追加のパルスを含めることができる。具体的には、このようなシーケンスに、[+y][−y]様式の追加パルス対を含めてることができる、ここでyはインパルスの値で、負又は正のいずれかとすることができ、[+y]及び[−y]パルスは−x/ΔIP/xシーケンスの中に挿入される。このシーケンスに、[+z][−z]様式の第二の追加パルス対をさらに含めることができ、zはyと異なるインパルスの値で、負又は正のいずれかとすることができ、[+z]及び[−z]パルスは−x/ΔIP/xシーケンスの中に挿入される。−x/ΔIP/xシーケンスに、「ピクセルに電圧が印加されない期間」をさらに含めることができる。この[電圧なし]期間は、−x/ΔIP/xシーケンスの2つの要素の間、又は単一の要素内に設定することができる。−x/ΔIP/xシーケンスに2つ以上の「電圧なし」期間を含めることができる。
【0034】
前記−x/ΔIP/xシーケンスを用いる際に、ディスプレイには、複数のグループに分けられた複数のピクセルを含めることができ、移行を、(a)複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定し、選定されたグループの各ピクセルに駆動電圧又は非駆動電圧を印加し、すべてのピクセル・グループのスキャンを第一フレーム期間中に完了し、(b)第二フレーム期間においてこれらピクセル・グループのスキャンを繰り返し、(c)第一と第二フレーム期間との間の休止期間においてはピクセル・グループのスキャンを中断し、この休止期間は、第一及び第二フレーム各期間の長さを超えないようにする、ことによって達成することができる。
【0035】
制限移行方法において、ディスプレイの書き換えを、所定のグレイ・レベルへの移行は常に同一極性の最終パルスで行われるようにして、達成することができる。具体的には、2つの最端光学状態以外のグレイ・レベルに対し、より近い最端光学状態の方向からアプローチすることができる。
【0036】
また、本発明は、複数のグループに分けられた複数のピクセルを持つ電気光学ディスプレイを駆動するための方法を提供する。この方法は、
(a)複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定し、選定されたグループの各ピクセルに駆動電圧又は非駆動電圧を印加し、すべてのピクセル・グループのスキャンを第一フレーム期間中に完了することと、
(b)第二フレーム期間においてこれらピクセル・グループのスキャンを繰り返すことと、
(c)第一と第二フレーム期間との間の休止期間においてはピクセル・グループのスキャンを中断し、この休止期間は、第一及び第二フレーム各期間の長さを超えないようにすることとを含む。
【0037】
便宜のため、以降、この方法を本発明の「中断スキャン」方法という。
【0038】
このような中断スキャン方法において、通常、第一及び第二フレーム期間の長さは等しい。休止期間の長さを、第一及び第二フレーム期間の一つの長さの約数とすることができる。中断スキャン方法に複数の休止期間を含めることができ、これにより、この方法に、少なくとも第一、第二及び第三フレーム期間におけるピクセル・グループのスキャン、ならびに、引き続くフレーム期間の間の、少なくとも第一及び第二休止期間におけるスキャンの中断を含めることができる。第一、第二及び第三フレーム期間の長さを実質上等しくすることができ、休止期間の合計を1フレーム期間、又は1フレーム期間マイナス1休止期間の長さとすることができる。通常、中断スキャン方法において、ピクセルは、複数の横列ローと複数の縦列コラムとを持つマトリクスに、各ピクセルが一定のロー及び一定のコラムの交差で区分されて配列されており、ピクセルの各グループはマトリクスの1つのロー又はコラムを含む。中断スキャン方法は、望ましくは、DCバランスされている、すなわち、ディスプレイのスキャンは、望ましくは、ピクセルが経るどのような一連の移行に対しても印加電圧の時間積分を束縛するようにして達成される。
【0039】
別の形態において、本発明は、複数のピクセルを有し、それらピクセルは、各ピクセルに異なったインパルスを印加することのできるパルス幅変調波形で駆動される、電気光学ディスプレイを駆動するための方法を提供する。この方法は、
(a)所定のインパルスをピクセルに印加した場合、所望のグレイ・レベルより高いレベルか又は低いレベルかいずれのグレイ・レベルが生成されるのかを示すデータを格納することと、
(b)2つの隣接するピクセルの両方共を同じグレイ・レベルにする必要がある時間を検出することと、
(c)2つのピクセルに印加されたインパルスを、一つは所望のグレイ・レベルより低く、他方のピクセルは所望グレイ・レベルを上回るように調整することとを含む。
【0040】
便宜のため、以降、この方法を本発明の「均衡グレイ・レベル」方法という。
【0041】
この方法において、ピクセルは、各ピクセルが、少なくとも一つの反対グループの隣接ピクセルを持つようにして、2つのグループに分けられ、これら2つのグループには別のドライブスキームが用いられる。
【0042】
前記の本発明の各方法は、前記の電気光学ディスプレイのどのタイプでも実施することができる。このように、本発明の方法を、エレクトロクロミック又は回転バイクロマル部材電気光学媒体、カプセル化電気泳動媒体、又はマイクロセル電気泳動媒体を含む電気光学ディスプレイとともに用いることができる。また、他の種類の電気光学媒体に使うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
前記より、本発明が、電気光学ディスプレイを駆動するための方法における種々の改善を提供していることは明らかであろう。後記において、通常、本発明が提供する様々な改善を別々に記載しているが、実際は、単一のディスプレイに対しこれら主要形態の複数を利用することができることは、当業者には自明であろう。例えば、本発明の制限移行方法を用いるディスプレイは、中断スキャン方法も利用することができる。さらに、本発明が提供する改善事項は、これを前記WO03/044765及びPCU/US2004/10091に記載された、電気光学ディスプレイを駆動するための種々様々な方法に応用できるので、以下の記載は、WO03/044765の図1−10及び関連説明に示された基本的駆動方法の熟知を前提とすることになる。具体的には、この出願の図9及び10には、3つの基本セクションを持つ、いわゆる無補償型n−プレパルス・スライドショウ(n−PP SS)波形が記載されている。最初に、ピクセルを消去して一様な光学状態、通常は白又は黒のいずれかにする。次に、ピクセルを2つの光学状態、通常、白と黒の間で前後に駆動する。最後に、ピクセルを新しい光学状態へと処理し、いくつかのグレイ状態の一つとする。最終(又は書き込み)パルスを処理パルスといい、他のパルス(第一(又は消去)パルス及び介在(又はブランキング)パルス)を総称してプレパルスという。
【0044】
この種の波形の主な欠点は、画像と画像の間に大きな振幅の視覚フラッシュがあることである。これは、WO03/044765でその図9及び10を参照して説明されているように、半数のピクセルに対し、1つのスーパーフレーム時間分だけ更新シーケンスをシフトし、これらピクセルを高分解能で交互配置することで改善できる。考えられるパターンには、一つおきのロー、一つおきのコラム、又はチェッカー盤状のパターンが含まれる。このことは、反対極性、すなわち[黒から]対[白から]、を使うことを意味しないことに注意されたい、というのは、それでは、隣接するピクセルが不調和なグレイスケールになってしまうからである。これに換えて、半数のピクセルに対し、1つの「スーパーフレーム」(黒−白の更新の最大長さと等しくフレームをグループ化したもの)分だけ更新を遅らせる(すなわち、第一のピクセル・セットが消去パルスを完了し、第一のピクセル・セットが最初のブランキング・パルスを開始するのとともに、第二ピクセル・セットが消去パルスを開始する)ことでこれを達成できる。この同期化を可能とするために、全体の更新時間に対して1つのスーパーフレームの追加が必要となる。
【0045】
(本発明の制限移行方法)
WO03/044765の図9及び10に示された、ドライブスキームにおける前記フラッシュ問題を回避しつつ、前で論じた一般的グレイスケール画像フローの問題をも避けるためには、本発明の制限移行方法に従って、任意のどのピクセルも、最端光学状態(黒又は白)の一つを通過する前に、規定された最大回数(少なくとも一回)までしかグレイスケール移行を経ることができないようにドライブスキームを構成するのが効果的である。最端光学状態からの移行は、その前に蓄積された一切の誤差を実質的にキャンセルして、正確に分かっている光学状態から開始される。このようなピクセルの最端光学状態を通過する光学的影響(ディスプレイのフラッシュなど)を最小化するための様々な技法が、WO03/044765の中で論じられている。
【0046】
このようなドライブスキームのリセットのステップでディスプレイに現れる前記のような黒及び白のフラッシュは、当然、ユーザの目に入り、多くのユーザにとっては不愉快なものである。このようなリセット・ステップにおける視覚的影響を軽減するために、ディスプレイのピクセルを2つ(又はそれ以上)のグループに分け、異なるグループには異なるタイプのリセットパルスを印加するのが便利である。さらに具体的には、リセット・パルスを使って所定のピクセルを黒白交互に駆動することが必要な場合には、ピクセルを少なくとも2つのグループに分け、一つのピクセル・グループを白に駆動すると同時にもう一つのグループを黒に駆動するようにドライブスキームを構成するのが便利である。2つのグループの空間的分布が注意深く選定されており、ピクセルが十分小さければ、ユーザは、リセットステップを、ディスプレイ上ではグレイの(多分、いくらの微小なフリッカーを伴った)インターバルとして経験することになり、このようなグレイ・インターバルは、通常、一連の黒白フラッシュよりも不快さが少ない。
【0047】
例えば、このような「2グループ・リセット」ステップの一形態において、奇数番号コラム中のピクセルを一つの「奇数」グループに指定し、偶数番号コラム中のピクセルを第二の「偶数」グループに指定することができる。そこで、奇数ピクセルに対して図9に示すドライブスキームを使用し、消去ステップにおいてピクセルを黒状態に駆動し、一方、偶数ピクセルに対してはこのドライブスキームの変形型を使い、消去ステップにおいてピクセルを白状態に駆動することができよう。そこで、リセット・ステップにおいて、両方のピクセル・グループは、2つのグループに対するリセット・パルスが必ず180°位相がずれ、このリセット・ステップ全体を通してディスプレイはグレイに見えるようにして、偶数回数のリセットを受けることになる。最終的に、第二画像の書き込みステップにおいて、奇数ピクセルは黒からその最終状態へと駆動され、一方、偶数ピクセルは白からその最終状態へと駆動される。あらゆるピクセルが、長期的には同一な方法でリセットされることを確実にする(これにより、リセット方法によってディスプレイ上に一切余計な産物が現れないようにする)ために、コントローラによって、引き続く画像の間でドライブスキームを切り換え、一連の新しい画像がディスプレイに書き込まれるのに応じ、各ピクセルが、交互に黒及び白の状態から、その最終状態に書き込まれるようにするのが有益である。
【0048】
当然、奇数番号ローのピクセルで第一グループを形成し、偶数番号ローのピクセルで第二グループを形成して、同様な仕組みを用いるができる。さらなる類似の仕組みにおいて、第一グループに、奇数番号コラムで且つ奇数番号ロー中のピクセルと、偶数番号コラムで且つ偶数番号ロー中のピクセルとを含め、一方、第二グループには、奇数番号コラムで且つ偶数番号ロー中のピクセルと、偶数番号コラムで且つ奇数番号ロー中のピクセルとを含めて、2つのグループをチェッカー盤様式に配置されるようにする。
【0049】
ピクセルを2つのグループに分け、一つのグループのリセット・パルスと、もう一つのグループのものとの位相を180°ずらす代わりに、あるいはこれに加えて、ピクセルを、パルスの数及び周波数が異なる別個のリセット・ステップを用いるグループに分けることができる。例えば、一つのグループは、6パルス・リセット・シーケンスを使い、第二グループは、2倍の周波数の12のパルスを持つ同様なシーケンス使うことができよう。さらに手の込んだ仕組みにおいては、ピクセルを4つのグループに分け、第一及び第二グループは6パルスで互い位相が180°ずれた仕組みを使い、第三及び第四グループは、12パルスで互い位相が180°ずれた仕組みを使うことができよう。
【0050】
本発明の制限移行方法によって、所定のピクセルに対し、光レールに触れる前のグレイ状態の間での連続移行を、ゼロではないが限定された回数にとどめるドライブスキームを用いて、フラッシュ問題のさらなる軽減を達成することができる。このようなドライブスキームにおいては、新しい画像を表示するための書き換えが行われると、最端光学状態に触れることなく、規定された値を超えた回数の移行を経た一切のピクセルは、そのピクセルの最終的光学状態に駆動される前に、少なくとも一つの最端光学状態に駆動される。このようなドライブスキームの好適な形態において、最端光学状態に駆動されるピクセルは、移行後の所望光学状態のグレイ・レベルにより近い最端光学状態に、当然ながらその所望光学状態が最端光学状態の一つでないことを前提として、駆動される。また、前記のような、ルックアップ表を用いたこのようなドライブスキームの好適形態において、ピクセルが光レール(最端光学状態)に触れることなく経ることのできる最大移行回数は、移行マトリクス中に算入されている前回の光学状態移行回数に等しく設定されており、このような方法は、余分なコントローラ・ロジック又はメモリを必要としない。
【0051】
光レールに触れる前の最大移行回数を制限する駆動方法において、ディスプレイの全書き換えのための時間を大きく増加させる必要はない。例えば、白から黒へ、又はその逆への移行に200m秒かかる4グレイ・レベル(2ビット)のディスプレイを考えてみる、ちなみに、一般グレイスケール画像フロー・ドライブスキームはディスプレイの書き換えを完了するのにこのくらい時間がかかる。このようなディスプレイにおいて、移行を変更する必要があるのは、ピクセルが、2つの中間グレイ・レベルの間を繰り返して切り換えられる場合である。このようなピクセルが、2つの中間グレイ・レベルをの間で規定数を超える多くの回数切り換えられた場合、本発明の制限移行方法は、次の切り替えを光レール(最端光学状態)の一つを経由して実行するよう要求する。このような場合、光レールへの移行に約70m秒かかり、その後のグレイ・レベルへの移行には約130m秒かかるので、合計の移行時間は約200m秒だけであることがことが判明している。このように、この制限移行方法は、一般グレイスケール画像フローと比較して移行時間の増加を一切必要としない。
【0052】
リセット・ステップにおける不快な影響を低減する制限移行駆動方法を、図1A及び1Bを参照しながら説明する。この仕組みにおいて、前記同様、ピクセルを2つのグループに分け、第一(偶数)グループは、図1Aに示すドライブスキームに従い、第ニ(奇数)グループは、図1Bに示すドライブスキームに従う。また、この仕組みにおいて、黒と白との中間にあるすべてのグレイ・レベルは、黒レベルに隣接する連続した濃いグレイ・レベルの第一グループと、白レベルに隣接する連続した薄いグレイ・レベルの第ニグループとに分けられており、その分け方は、双方のピクセル・グループとも同じである。必須ではないが望ましくは、これら2つのグループ中のグレイ・レベルは同数であり、グレイ・レベルの数が奇数である場合、中央のレベルは、任意にいずれかのグループに割り振ることができる。説明を簡略化するため、図1A及び1Bは、8レベルグレイスケール・ディスプレイに応用された、本ドライブスキームを示しており、そのレベルは0(黒)から7(白)に指定されていて、グレイ・レベル1、2及び3は濃いグレイ・レベルであり、4、5及び6は薄いグレイ・レベルである。
【0053】
図1A及び1Bのドライブスキームにおいて、グレイからグレイへの移行は、次のルールに従って処理される。
【0054】
(a)第一に、ピクセル偶数グループにおいて、濃いグレイ・レベルへの移行の中で、最後に印加されるパルスは、必ず、白方向駆動パルス(すなわち、ピクセルを黒状態から白状態へ駆動する性質の極性を持つパルス)であり、薄いグレイ・レベルへの移行の中で、最後に印加されるパルスは、必ず、黒方向駆動のパルスである。
【0055】
(b)第二に、ピクセル奇数グループにおいて、濃いグレイ・レベルへの移行の中で、最後に印加されるパルスは、必ず、黒方向駆動パルスであり、薄いグレイ・レベルへの移行の中で、最後に印加されるパルスは、必ず、白方向駆動パルスである。
【0056】
(c)すべての場合において、白状態に到達した後は、黒方向駆動パルスだけが白方向駆動パルスに後続でき、黒状態に到達した後は、白方向駆動パルスだけが黒方向駆動パルスに後続できる。
【0057】
(d)偶数ピクセルを、一回の黒方向駆動パルスだけで、濃いグレイ・レベルから黒へ駆動することはできず、奇数ピクセルを、一回の白方向駆動パルスを使って、薄いグレイ・レベルから白へ駆動することもできない。
【0058】
(明らかに、すべての場合において、最終白方向駆動パルスを使ってだけ白状態を実現でき、最終黒方向駆動パルスを使ってだけ黒状態を実現できる。)
このルールを適用すると、グレイからグレイへの各々の移行は、最大で3つの連続パルスを使用して実行できる。例えば、図1Aは、黒(レベル0)からレベル1への移行過程を示している。これは、1102で示された単一の白方向駆動パルス(当然、図1Aでは正の勾配で示されている)で達成される。次に、ピクセルはレベル3へと駆動される。グレイ・レベル3は、濃いグレイ・レベルなので、ルール(a)に従って、これには白方向駆動パルスによって到達しなければならい、そこで、(レベル1/レベル3)の移行は、単一の白方向駆動パルス1104によって処理することができ、これはパルス1102とは異なったインパルスを持つ。
【0059】
ピクセルは、今度はグレイ・レベル6まで駆動される。これは薄いグレイ・レベルなので、ルール(a)により、黒方向駆動パルスによって到達しなければならない。従って、ルール(a)及び(c)を適用すると、この(レベル3/レベル6)の移行は、2パルス・シーケンス、すなわち、ピクセルを白(レベル7)に駆動する第一の白方向駆動パルス1106と、それに続いてピクセルをレベル7から所望のレベル6へと駆動する黒方向駆動パルス1108とで達成することが必要になる。
【0060】
次に、ピクセルは、グレイ・レベル4に駆動される。これは薄いグレイ・レベルなので、先に説明した(レベル1/レベル3)の移行で適用されたのと全く同様な理由によって、(レベル6/レベル4)の移行は単一の黒方向駆動パルス1110で達成される。次の移行先はレベル3である。これは濃いグレイ・レベルなので、先に説明した(レベル3/レベル6)の移行で適用されたのと全く同様な理由によって、(レベル6/レベル4)の移行は、2パルス・シーケンス、すなわち、ピクセルを黒(レベル0)に駆動する第一の黒方向駆動パルス1112と、それに続いてピクセルをレベル0から所望のレベル3へと駆動する白方向駆動パルス1114とで処理される。
【0061】
図1に示す最後の移行はレベル3からレベル1である。レベル1は濃いグレイ・レベルなので、ルール(a)に従って、白方向駆動パルスによってアプローチしなければならない。従って、ルール(a)及び(c)を適用して、(レベル3/レベル1)の移行は、ピクセルを白(レベル7)へ駆動する第一の白方向駆動パルス1116、ピクセルを黒(レベル0)へ駆動する第二の黒方向駆動パルス1118、及びピクセルを黒から所望のレベル1へ駆動する第三の白方向駆動パルス1120によってこれを処理しなければならない。
【0062】
図1Bは、奇数ピクセルが、図1Aの偶数ピクセルと同じ0−1−3−6−4−3−1のグレイ状態シーケンスを成就するのを示す。しかしながら、使われているパルス・シーケンスが大きく違っていることが見取れよう。規則(b)では、濃いグレイ・レベルであるレベル1は黒方向駆動パルスによってアプローチすることが要求されている。そこで、0−1の移行は、ピクセルを白(レベル7)に駆動する第一の白方向駆動パルス1122と、それに続いてピクセルをレベル7から所望のレベル1へと駆動する黒方向駆動パルス1124とで達成される。1−3の移行は、3パルス・シーケンス、すなわち、ピクセルを黒(レベル0)へ駆動する第一の黒方向駆動パルス1126、ピクセルを白(レベル7)へ駆動する第二の白方向駆動パルス1128、及びピクセルをレベル7から所望のレベル3へ駆動する第三の黒方向駆動パルス1130が必要である。次の移行先は、薄いグレイ・レベルのレベル6で、ルール(b)によれば、白方向駆動パルスでアプローチすることになっており、(レベル3/レベル6)の移行は、ピクセルを黒(レベル0)に駆動する第一の黒方向駆動パルス1132と、ピクセルを所望のレベル6へと駆動する白方向駆動パルス1134とを含む2シーケンスで達成される。(レベル6/レベル4)の移行は、3パルス・シーケンス、すなわち、ピクセルを白(レベル0)へ駆動する第一の白方向駆動パルス1136、ピクセルを黒(レベル0)へ駆動する第二の黒方向駆動パルス1138、及びピクセルを所望のレベル4へ駆動する第三の白方向駆動パルス1140で達成される。(レベル4/レベル3)の移行は、ピクセルを白(レベル7)に駆動する第一の白方向駆動パルス1142と、ピクセルを所望のレベル3へと駆動する黒方向駆動パルス1144とを含む2シーケンスで達成される。最後に、(レベル3/レベル1)の移行は、単一の黒方向駆動パルス1146で達成される。
【0063】
図1A及び1Bから、このドライブスキームは、各ピクセルが「鋸歯」パターンに従い、ピクセルは、黒から白へ方向を変えずに移動し(但し、見られるように、ピクセルはその中間のグレイ・レベルに短い又は長い期間留まることができる)、その後、白から黒へ方向を変えずに移動すること、を確実にしていることを見て取れよう。これより、前記(c)及び(b)のルールを、次のような単一のルール(e)で置き換えることができる。
【0064】
(e) ピクセルが、一つの極性のパルスにより、一つの最端光学状態(すなわち白又は黒)から、反対の最端光学状態に向けて駆動されたならば、そのパルスは、前記反対の最端光学状態に到達するまでは、反対極性のパルスを感受しない。
【0065】
前記のように、このドライブスキームは「レール安定化グレイスケール(rail−stabilized gray scale)」すなわち「RSGS」ドライブスキームである。このようなRSGSドライブスキームは、制限移行ドライブスキームの特殊ケースであって、光レールを経由する移行実施を必要とせずには、多くともN/2(さらに正確には(N−1)/2)に等しい移行回数(Nは表示可能なグレイ・レベルの合計数)しか経過できないことを確実にする。このようなドライブスキームは、個別の移行中の微小誤差(例えば、ドライバの印加電圧の避けられない微小な変動によるもの)が限度なく累積されて、観察者が見て分かるようなグレイスケール画像の大きな歪みに至るのを防止する。さらに、このドライブスキームは、偶数及び奇数のピクセルが、常に反対方向から、所定の中間グレイ・レベルにアプローチするように、すなわち、一つのケースにおいては最終パルスは白方向駆動パルスとなり、他方のケースでは黒方向駆動パルスとなるように設計されている。実質的に同数の偶数及び奇数ピクセルを包含するディスプレイの大きな領域が単一のグレイ・レベルに書き込まれている場合、この「反対方向」特質により、その領域におけるフラッシュが大幅に軽減される。
【0066】
ピクセルを2つの別個のグループに分ける他のドライブスキームに関して前記で説明したのと同様な理由で、図1A及び1Bの鋸歯ドライブスキームを実行する場合には、偶数及び奇数グループ中のピクセルの配置に注意を払う必要がある。この配置によって、望ましくは、実質的に連なっているディスプレイのどの面積も、実質的に等しい数の奇数及び偶数のピクセルを含んでいること、同一グループのピクセルの連なりのブロックの最大サイズが、十分に小さく、一般の観察者には容易に識別できないことを確実にする。すでに論じたように、ピクセルの2つのグループをチェッカー盤パターンに配置することは、このような要求事項を満たす。また、確率論的スクリーニング技法を用いて、2つのグループのピクセルを配置することもできる。
【0067】
しかしながら、鋸歯ドライブスキームで、チェッカー盤パターンを使用すると、ディスプレイのエネルギー消費が加する傾向がある。このようなパターンのどのコラムにおいても、隣接するピクセルは反対グループに属することになり、すべてのピクセルが同じグレイ・レベル移行をたどっている大きなサイズの連続した領域(珍しくない状況)において、隣接するピクセルが、常時、反対極性のインパルスを必要とすることになる。新しい各ラインが書き込まれるのに応じ、反対極性のインパルスをどのコラムの連続したピクセルに印加するためにも、ディスプレイのコラム(ソース)電極を放電して再充電する必要がある。コラム電極の放電と再充電とは、ディスプレイのエネルギー消費の主要要因であることは、アクティブ・マトリクス・ディスプレイ駆動の当業者には周知のことであろう。こういったことにより、チェッカー盤配置はディスプレイのエネルギー消費を増加させる傾向がある。
【0068】
エネルギー消費と、同じグループのピクセルによる大きな連続した領域を避けたいという要求との間の合理的な妥協法は、各グループのピクセルを矩形状に割当て、そのピクセルはすべて同一のコラム内に置くが、矩形の長さをコラム方向に数ピクセルに留めることである。このような配置により、同じグレイ・レベルを持つ領域を書き換えをする場合、コラム電極の放電及び再充電は、一つの矩形から他の矩形にシフトするときだけに必要となる。これら矩形は1x4ピクセルであり、隣接するコラム中の矩形の終端が同一のローとならないよう、すなわち、隣接するコラムの矩形が異なった「位相」を持つように配置される。
【0069】
図1A及び1Bに示す鋸歯ドライブスキームの一つの利点は、ディスプレイの全体的な更新の一部として、どの白黒単画像の領域も単一のパルスで、黒から白、白から黒、いずれも簡単に更新されることである。このような白黒領域の書き換えのための最大時間は、グレイからグレイへの移行を必要とする領域の書き換えの最大時間の半分だけであり、この特質を、ユーザの入力する文字、ドロップダウン・メニュー等といった類の画像機能を素早く更新する利点として生かすことができる。コントローラは、画像更新にグレイからグレイへの移行が必要かどうかを点検すことができ、グレイの必要がない場合、その書き換え必要な領域を、迅速な白黒更新モードを使って書き換えることができる。このように、ユーザは、一般グレイスケール画像の比較的遅い更新作業の上に、切れ目なく重ね合わせられたディスプレイの入力文字、ドロップダウン・メニュー及び他のユーザ対話機能をより迅速に更新するとができる。
【0070】
制限移行ドライブスキームでは、必ずしも、カウンタを使って、ディスプレイの各ピクセルが経過する移行の回数を測定する必要はなく、また、規定回数に達しなくとも光レール経由による特定の移行実施を必要とするドライブスキーム(図1A及び1Bを参照してすでに説明したサイクリックRSGSドライブスキームなど)の使用を禁ずるものではない、但し、移行の実施方法決定に用いられているアルゴリズムによって、どのピクセルも、光レールに触れることなく規定された移行回数を超えた移行はできないということが条件である。さらに、あるピクセルが光レールに触れることなく経過した移行回数の点検をディスプレイ上の画像の書き換えのたびに行う必要は、特に頻繁な間隔で更新されているディスプレイの場合(例えば腕時計)、ないことはよく理解できるであろう。例えば、規定された移行回数を超えたか、あるいは次回更新後この回数を超える可能性のあるすべてのピクセルを光レールに駆動したという前提で、一回おきの更新時だけに点検をすることができよう。
【0071】
説明目的のためだけであるが、本発明の別の好適な制限移行方法を説明する。この好適な方法は、これから実施する移行の初期と最終達成グレイ・レベル(それぞれ「R2」及び「R1」で表す)とだけを考慮した移行マトリクスを用いる4グレイ・レベル(2ビット)のアクチブ・マトリクス・ディスプレイを作動するため使われ、それ以前の状態は考慮されていない。ディスプレイのコントローラは、0に維持された共通のフロント電極に対して、−V、0又は+Vを各ピクセルの電極に印加する機能を持つ3レベル・パルス幅変調(PWM)コントローラである。
【0072】
このディスプレイ・コントローラは、RAM画像バッファを含む。一つのバッファ(「A」)は現在のディスプレイ上の画像を格納する。通常、このコントローラは、データをRAMに保存し、ディスプレイ・ドライバを休止させて、自分はスリープ・モードになっている。双安定電気光学媒体は、ディスプレイ上に同じ画像を保持している。画像更新コマンドを受信すると、コントローラは、新しい画像を第二バッファ(「B」)にロードする。そこで、ディスプレイの各ピクセルに対し、コントローラは、所望のピクセルの最終状態R1(バッファ「B」から)、及び、現在の各ピクセルの初期状態R2(バッファ「A」から)に基づいて、(フラッシュ・メモリ中の)多重フレーム駆動波形を参照する。
【0073】
フラッシュ・メモリ中のデータは電圧値の三次元アレイV(R1,R2、フレーム)に編成され、すでに示したように、R1及びR2はそれぞれ1から4(4つの利用可能グレイ・レベルに対応する)の整数であり、「フレーム」はフレーム番号、すなわち、各移行のため使われるスーパーフレーム内の対応フレームの番号である。通常、スーパーフレームの長さは1秒のことが多く、各フレームは20m秒を占めるので、フレーム番号を1から50まで間でとすることができる。これから、アレイは、4x4x50=800エントリとなる。アレイ中の各エントリは、−V、0、+Vのどれをも表すことができなければならないので、通常、各電圧値(アレイ値)を格納するために2ビットが使われる。
【0074】
これら800アレイの各々が、可能性ある3つの電圧のいずれか一つをとりうるので、それらのアレイ(波形)の数は巨大なものとなり、とても全部を調べられないことは直ぐ分かるであろう。理論的には3800すなわち約5x10381のアレイがあり得る。宇宙には、約1078の原子があり、人間の平均寿命は10なので、実際能力は、全体調査のためには、少なくとも200桁は不足している。幸いなことに、電気光学ディスプレイの動作についての既存知識、及びDCバランスの必要性によって、ありうる波形に対する追加の制限が課され、最適又は最適に近い波形の調査を、実際的な限度に収めることが可能である。
【0075】
前記の米国特許6,504,524号及び6,531,997号及び前記WO03/044765の中で論じられているように、すべてではないが、ほとんどの電気光学媒体は、直流(DC)バランスされた波形を必要とし、そうでなければ有害な影響を受ける。DCバランスされていない波形が使われた場合のこのような影響には、電極の損傷、及び数L*ユニットの範囲にわたる長期の(数時間にわたる)グレイ状態ドリフトが含まれる。従って、DCバランスされたドライブ波仕組みを使うよう、最大限努力をするのが賢明なようである。
【0076】
前記に述べたことから、一見、このようなDCバランスは実現できないように見えるかもしれない、というのは、グレイからグレイへのいっさいの移行に必要なインパルス、及びそれによるピクセル通過電流は実質的に一定だからである。しかしながら、このことは、見積り計算にだけ当てはまることであって、経験的には、少なくとも粒子ベースの電気泳動媒体(以下のことは他の電気光学媒体にも当てはまるように見える)の場合には、(例えば)区切られた5つの50m秒のパルスをピクセルに印加するのは、同じ電圧の250m秒のパルス一つを印加するのと同じではない。従って、所定の移行を達成するためピクセルを通過する電流にはいくらかの融通性があり、DCバランス達成の助力としてこの融通性を使うことができる。例えば、ルックアップ表に、所定の移行のための複数のインパルスを、これらインパルスにより供給される合計電流の値とともに格納しておくことができ、コントローラは、各ピクセルに対して、ある過去の時点から(例えば、ピクセルが最後に黒状態であった時点から)ピクセルに印加されたインパルスの代数和を格納するよう構成されたレジスタを維持することができる。ある特定のピクセルを白又はグレイから黒に駆動する場合、コントローラは、そのピクセルに関連するレジスタを調べ、前回の黒状態から今回の黒状態までの全体の移行シーケンスをDCバランスするために必要な電流を算定し、必要な白/グレイから黒への移行のため、格納された複数のインパルスの中から、関連レジスタをちょうどゼロに、又は、少なくともその残値ができるだけ小さくなるように(この場合、その関連レジスタはその残値を残し、それを後の移行で印加される電流に加えることになる)低減する一つのインパルスを選択することができる。このプロセスを繰り返し適用することによって、各ピクセルの正確な長期的DCバランスを達成できることは明らかであろう。
【0077】
波形のDCバランスの正確な定義を検討することが必要である。波形がDCバランスされているかどうかを判定するために、通常、電気光学媒体の抵抗性モデルが使われる。このようなモデルは完全に正確ではないが、当面の目的のためには十分な正確性があると想定することができる。このモデルを使って、DCバランスされた波形を定義する特徴は、印加電圧の時間積分(印加されたインパルス)が束縛されていることである。この定義は積分が「束縛されている」ことであって「ゼロ」ではないことに注目されたい。この点を説明するために、白から黒への移行を駆動するのに(300m秒x−15V)平方のパルス、及び黒から白への移行駆動に(300m秒x15V)平方のパルスを使う白黒処理波形を考えてみる。この波形は、明らかにDCバランスされているが、印加電圧の積分は、あらゆる時間点でゼロではなく、この積分は0と±4.5V−秒との間で変化する。しかしながら、この波形のDCは、積分が束縛されているのと同程度にバランスされており、例えば、9又は18V−秒に達するようなことは決してない。
【0078】
DCバランスされた波形をさらに検討するために、いくつか用語定義をすることが望ましい。「インパルス」という用語は、すでに、ある特定の時間の間印加された電圧の時間に対する定積分(V−秒単位)を意味するものとして定義され、通常、パルス又はパルスの要素をいう。「インパルス・ポテンシャル」という用語は、任意の開始点(通常、検討対象の一連の移行の開始点)からディスプレイに印加されたすべてのインパルスの合計を意味するものとして使う物とする。この開始点において、インパルス・ポテンシャルは、任意にゼロに設定され、インパルスが印加されるにつれ、インパルス・ポテンシャルは上下する。
【0079】
これらの用語を用いれば、DCバランスの定義は、インパルス・ポテンシャルが束縛されている時かつその時に限り、波形はDCバランスされていることになる。インパルス・ポテンシャルが束縛されているいうことは、有限数のありうるケースの各々におけるインパルス・ポテンシャルがどうなるかを示すことができなければならないことを意味する。
【0080】
時間依存性のないコントローラ(すなわち、前記のR1,R2コントローラのような、そのインパルス波形が対象となる移行の初期及び最終状態だけに影響され、時間、温度、又は他のファクターには関わらないコントローラ)について、波形がDCバランスされていることを示すためには、一切の無限長の光学状態シーケンス中の各々の移行の後で、インパルス・ポテンシャルが束縛されていることを証明できることが必要である。このような証明のための一つの十分条件は、インパルス・ポテンシャルを定められた数の「前状態」の関数で表現できることであり、これは、電気光学ディスプレイのコントローラに対するDCバランスの実際的な概念、すなわちインパルス・ポテンシャルを有限数の以前の及び現在の光学状態の関数として表現できること、を提供する。ディスプレイのどのピクセルのインパルス・ポテンシャルも、一つの画像更新の終了から、次の画像更新の開始までは、その期間は電圧が印加されないので、インパルス・ポテンシャルの変化がないことに注目されたい。
【0081】
前状態の(有限)数の組合せ各々に対し、コントローラは、一定のインパルス(すでに述べたフラッシュ・メモリー中のデータにより決定されたインパルス)を印加し、これら決められたインパルスをリスト設定することができる。これらをリスト設定するためには、前状態の組合せを、少なくともそのコントローラが使っている「前状態の数」まで遡って列挙する必要がある。(すなわち、R1,R2コントローラについては、この列挙に使われた前状態の数は、すべての前状態組合せに対し、2つ遡って定義する必要がある)。
【0082】
インパルス時に印加された固定のインパルスが知られており、更新終了時のインパルス・ポテンシャルを明確化するためには、列挙されたすべての状態について更新開始点のインパルス・ポテンシャルを明確化できる必要がある。このことは、ある波形により印加された正味インパルスは、終了点のインパルス・ポテンシャルを一意的に定義するため必要な前状態の数より一つ少ない前状態数の関数でなければならないことを意味している。これをコントローラが印加する最適波形を求める問題に変換すると、このことは、波形のインパルス・ポテンシャルは、その波形を決定するために用いられた状態の数よりも一つ少ない前状態の関数でなければならないことを意味している。例えば、コントローラが、3つの状態、R1,R2、及びR3(R3は検討対象移行の初期グレイ・レベルの直前のグレイ・レベル)により決定されたインパルス・データをを持つ場合、R1とR2との各々の組合せは、R3に関係なく、電気光学媒体を同じインパルス・ポテンシャルに保たなければならない。
【0083】
言い方を換えれば、コントローラは、適切な値の移行後のインパルス・ポテンシャルを生成するため適正なインパルスを印加できるように、移行の開始時の電気光学媒体のインパルス・ポテンシャルを「知って」いなければならない。もし前記の例のインパルス・ポテンシャルが、R1,R2、及びR3のすべてに基づいて変化することが許されたとすれば、次の移行においては、その前に使ったR3の情報は放棄されてしまっているので、コントローラが開始インパルス・ポテンシャルを「知る」方法はないことになろう。
【0084】
前に示したように、本発明の制限移行方法は、望ましくは、R1,R2コントローラ(すなわち、一切の移行において、印加されるインパルスは移行の初期及び最終グレイ・レベルだけに依存する、コントローラ)を使って実施され、このようなコントローラにおいては、インパルス・ポテンシャルは、R1だけの関数として一意的に定義されなければならないことは、前記の説明から理解できるであろう。
【0085】
最適波形を決定するためのさらなる厄介な問題が、「インパルス・ヒステリシス」と呼ぶことのできる現象から生じる。光レールにおける極度な加熱状況を除き、一つの極性の電圧によって駆動される電気光学媒体は、常により黒くなり、反対極性の電圧によって駆動される電気光学媒体は、常により白くなる。但し、ある種の電気光学媒体、特にある種のカプセル化電気光学媒体において、インパルスによる光学状態の変化はヒステリシスを表し、媒体が白に向かってさらに進んで駆動されるにつれ、印加するインパルス単位ごとの光学的変化は減少する、しかし、印加電圧の極性が急に反転され、ディスプレイが逆方向に駆動されると、インパルス単位あたりの光学的変化は急に増大する。言葉を変えれば、インパルス単位あたりの光学的変化は、現在の光学状態だけでなく、光学状態変化の方向にも大きく依存している。
【0086】
このインパルス・ヒステリシスは、電気光学媒体を中間のグレイ・レベルに向けて移動させる性向を持つ内在的「復元力」を生成し、DCバランスを維持しつつ単極性のパルスで(一般グレイスケール画像フローのように)媒体を状態から状態へと駆動する作業を混乱させる。パルスが印加されると、媒体は、平衡状態に達するまで、三次元のR1,R2/インパルスのヒステリシス面に乗っている。この平衡は、各パルス波長に対し固定されており、一般に光学範囲の中央部にある。例えば、一つのカプセル化4グレイ・レベルの電気光学媒体を、黒から濃いグレイに駆動するのに(100m秒x−15V)の単極性インパルスが必要であるが、それを濃いグレイから黒に戻し駆動するには、(300m秒x15V)の単極性インパルスが必要であることが経験的に分かっている。分かるように、この波形はDCバランスされていない。
【0087】
インパルス・ヒステリシス問題に対する解決策は、二極性の駆動を用いること、すなわち、電気光学媒体を一つのグレイ・レベルから次のレベルへ(潜在する)間接的な経路で駆動することであって、第一にピクセルを、DCバランスを維持する必要性に応じ、どちらかの光レール中に駆動し、次に第二インパルスを印加して所望の光学状態に到達させる。例えば、前記の状況において、(100m秒x−15V)のインパルスを印加して黒から濃いグレイに行くことはできようが、濃いグレイから白に戻るのは、まず、さらに負電圧、次に正電圧を印加し、R1,R2のインパルス・カーブに乗って黒状態に戻ることになる。また、すでに説明したように、このような間接移行は、グレイスケールのレール安定化によって誤差累積問題を防止する。
【0088】
本文前記、ならびに前記特許及び出願中で論じられているように、電気光学媒体のインパルス・ヒステリシス現象及び前状態への依存性のため、各々の移行に対する波形を、対象ピクセルの前状態の経歴いかんによって変える必要がある。前記のWO03/044765に記載されているように、各々の移行に対する最適波形を、波形を生成するための、初期「推量」移行マトリクスを使って決定することができる(すなわち、前記のデータ・アレイに対応する移行テーブルを「調整」することができる)、このマトリクスは、固定された、通常、擬似乱数又は一連の前光学状態を通して電気光学媒体を取り扱うため用いられる。プログラムでは、各々の前状態組合せで達成された実施の光学状態を、同じ組合せの狙いグレイ状態から差し引いて誤差マトリクスを計算し、このマトリクスは移行マトリクスと同一次元である。誤差マトリクスの各要素は、移行マトリクスの要素と対応する。移行マトリクス中の要素が高すぎる場合、誤差マトリクス中の対応する要素も押し上げられることになる。そこで、PID(比例−積分−微分)制御を使って、誤差マトリクスをゼロに向けて駆動することができる。クロス項(移行マトリクスの各要素が誤差マトリクスの複数の要素に影響する)が有るが、これらの影響は微小で、逐次代入を通して調整が進み誤差マトリクスの値の大きさが減ずるにつれ縮小する性向がある。(時によって、PIDコントローラのI又はDの定数を0に設定して、PI、PD、又はP制御を行うことができることに注目されたい。)
調整プロセスが完了すると、所定のグレイ・レベル精度水準を達成するためには、移行マトリクスにある特定数の前状態が存在する必要があることが分かる。例えば、ある特定のカプセル化電気光学媒体に対しこのプロセスを使って波形が生成され、その過程で、コントローラは、移行マトリクスに既存のもの以外のもう一つの前状態を記録し、演算ユニットを使って波形の第一セクション中のインパルスを計算してDCバランスを確実にした。この波形において、インパルス・ポテンシャルは、移行マトリクスに網羅された各前状態の組合せに対するものとは異なったものにされた。
【0089】
移行マトリクスにおける次元の数(「TM次元」)と、この波形に対する最大光学誤差との間の相関は、以下の表1に記載によることが判明した。
【0090】
【表1】

平均的観察者の視覚認知の限界は、大体1L*ユニットなので、この表のデータは、移行マトリクスに複数の次元を設定することは非常に有用であることを示し、一次元よりは二次元が、二次元よりは三次元がよい。
【0091】
前記のすべての点を顧慮して、すでに述べたR1,R2の2ビット・グレイスケール・コントローラに対する好適な波形が考え出された。各々の最終光学状態R1に対し固定されたインパルス・ポテンシャルを維持したが、二次元移行マトリクスを用いた。これは、累積誤差を低減するためレール安定化され、インパルス・ヒステリシスへの顧慮から、切り替え時に低い発散になるように設計された。
【0092】
下記の表記中で使われている数字はインパルスを表す。負のインパルスは所定時間の間−V(例、−15V)を印加することにより加えられ、正のインパルスは所定時間+Vを印加することにより加えられた(すなわち波形はパルス幅変調であった)。電圧−時間の積の大きさは、インパルスの大きさと等しかった。この代わりとして電圧変調を用いることができた。
【0093】
好適な波形において、各更新時に、次のインパルス・シーケンスが、左から右への時間経緯で読みとるようにして印加された:
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
ここで、「IP(Rx)」は、各グレイ・レベルに対し一つの値を持つインパルス・ポテンシャル・マトリクス(この場合ベクトル)からの対応値をあらわし、TM(R1,R2)は、各R1,R2組合せに対し一つの値を持つ移行マトリクスからの対応値を表す。当然、一部のR1及びR2に対してTM(R1,R2)は負になりえる。(すでに述べたように、便宜のために、この種のインパルス・シーケンスを以降「−x・ΔIP・x」シーケンスと短縮表現することがある。)
移行マトリクスの値を、DCバランスを気にすることなく、望むように調整することができよう、というのはこの波形の第一及び第三セクションの正味インパルスは常にゼロだからである。初期と最終状態との間のインパルス・ポテンシャルの差の分は波形の中間セクションで印加される。
【0094】
経験的に、ほとんどの場合、最終駆動パルスの方が、初期パルスよりも最終グレイ・レベルに対する影響が大きいことが判明しているので、この波形に対する移行マトリクスを、前記と同じPID取組み法で調整することができる。インパルス・ポテンシャルとして設定された値は、確定最終グレイ・レベルへの波形の更新速度に影響する。例えば、すべてのインパルス・ポテンシャルをゼロにすることもできるが、その結果、更新時間は長くなる、というのは、最終駆動パルス(第三セクション)は、等しい長さの初期パルス(第一セクション)と相殺されているからである。このように、この場合、最終駆動パルスは、合計更新時間の半分よりも長くはなり得ない。注意深くインパルス・ポテンシャルを選択することによって、合計更新時間の大きな割合最終パルスのために使用することが可能となる。例えば、最終駆動パルスが、最大合計更新時間の半分以上、事実上80%までをも占めるようにすることができる。
【0095】
望ましくは、PID制御のような最適化手法による勾配、差分の組合せ評価等を用いて、各種のパルス長さをコンピュータで選択する。
【0096】
前記のWO03/044765及び本文前記で述べているように、電気光学媒体には、通常、温度感受性があり、また、特定のグレイ・レベルへのすべての移行が常に同一の光レールから来る場合、温度に対するグレイ・レベルの無補償安定性が増加することが判明している。この理由は簡明である。温度が変化するにつれ、電気光学媒体ののスイッチング速度は速くなったり遅くなったりする。2ビット・グレイ・レベル・ディスプレイにおいて、濃いグレイから薄いグレイへの移行は黒レールで反射されるが、白から薄いグレイへの移行は白レールで反射される場合を想定してみる。電気光学媒体のスイッチング速度が遅くなると、黒から反射される薄いグレイ状態はより濃くなり、黒から反射される薄いグレイ状態はより薄くなることになる。かくて、温度安定性のある波形のためには、所定のグレイ・レベルには常に同じ側からアプローチすること、すなわち、最終パルスが常に同じ極性であることが重要である。以下のシーケンス:
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
を用いた、前記好適ドライブスキームにおいて、このために、少なくとも一部のグレイ・レベルに対しては、各値の符号がR1だけに依存するように、TM(R1,R2)の値を選択する必要がある。一つの好適な取組み法は、TM値に対し、黒及び白状態についてはいずれの符号でもとらせるが、薄いグレイについては正符号だけ、濃いグレイについては負符号だけをとらせることであり、これによって、中間グレイ・レベルは、近い方の光レールからだけアプローチされる。
【0097】
この好適波形は、以下に説明するように、短い休止期間を波形に挿入してインパルスの分解能を増大するなどといった手法と完全に両立する。
【0098】
すでに示したように、前記の−x/ΔIP/xパルス・シーケンスを変形して追加のパルスを含めることができる。このような一つの変形に追加のパルス種類を含めることができ、以降、これを「y」パルスという。「y」パルスを[+y][−y]の形で表すものとし、ここでyはインパルスの値であって、負又は正いずれかの値をとることができる(言い換えれば、[−y][+y]は同等に有効である。yパルスは、「x」パルス対の各半分[−x]及び[+x]がΔIPパルスの前と後とに配置されるのに対し、「y」パルスはパルス・シーケンス内の他の位置に配置できるという点が、前記の「x」パルスと違っている。
【0099】
このような第二の変形では、パルス・シーケンス内の任意の点に0V「パルス」(すなわち、対象ピクセルに電圧が印加されていない期間)を加え、例えば、移行から得られたグレイ・レベルを少し上下にシフトしたり、前状態情報のピクセル最終状態に対する影響を低減又は変更するなど、シーケンスの性能を向上する。このような0Vセクションを、異なるパルス要素の間、あるいは、一つのパルス要素の中間に挿入することができる。
【0100】
前記のWO03/044765に記載されているような移行テーブルを使って、レール安定型の波形を構成する好適な方法は以下による。
【0101】
(a)各グレイ・レベルのインパルス・ポテンシャルの値(通常、経験的に導出)を設定し、各移行に対する適切なΔIPを移行テーブルに記入する。
【0102】
(b)各移行に対し、xの値を選定し、−xをΔIPパルスの前に+xを後に挿入する(前述したように、xは負のこともあるので−x及び+xパルスはいずれの極性をとることもできる。
【0103】
(c)各移行に対し、yの値を選定し、−y及び+yをパルス・シーケンスの中に挿入する。−y/+y組合せをどのパルス境界にも、例えば、−xパルスの前、ΔIPパルスの前、+xパルスの前、又は+xパルスの後に挿入することができる。
【0104】
(d)各移行に対し、n=0以上のnの0Vフレームを、パルス・シーケンスの任意の点に挿入する。
【0105】
(e)前記のステップを、波形が所望のレベルに達するまで、必要なだけの回数繰り返す。
【0106】
このプロセスを添付図面を参照して説明する。図2は、一つの移行のための波形の基本的な−x/ΔIP/+x構造を示しており、説明目的のため、x及びΔIP双方の値を仮に正にしている。ΔIPと+xとの間に0V間隔を設ける必要がなければ、これら2つのパルスのつなぎ目で印加電圧を低下させる必要はなく、ΔIPと+xパルスとは、事実上、一つの長い正パルスを形成する。
【0107】
図3は、図2に示した基本の−x/ΔIP/+x波形への[−y][+y]対パルスの挿入を象徴的に図示したものである。−yと+yとを連続させる必要はなく、原波形の異なる場所へ挿入することができる。特に利点のある2つの特殊ケースがある。
【0108】
第一の特殊ケースにおいて、「−y、+y」のパルス対は、−x/ΔIP/+x波形の冒頭、−xパルスの前に置かれ、図4に示す波形を生成する。図4に示すように、yとxとが反対の符号である場合、y持続の調節がある程度粗であったとしても、最終の光学状態を精度よく調整できることが判明している。このように、粗な制御状態と値のyによって、電気光学媒体の最終光学状態の最終制御のためのxの値を調整することができる。これは、yパルスが−xパルスを増強し、これにより電気光学媒体が光レールの一つに押し込まれる度合いが変化することにより生ずると考えられている。この光レールの一つに押し込む度合いが、光レールから離れるパルス(このケースではxパルスが供給)後の最終光学状態の微調整を行うことが分かっている。
【0109】
図5に示した第二の特殊ケースにおいて、前記同様、−yパルスは−x/ΔIP/+x波形の冒頭、−xパルスの前に置かれているが、+yパルスは、この波形の最後、+xの後に配置されている。このタイプの波形においては、最終光学状態はyの大きさに感受性が高いので、最後のyパルスで粗調整を提供する。通常、最終光学状態は光レールに向かう駆動の大きさにそれほど強く依存しないのでxパルスではより微細な調整を提供する。
【0110】
すでに示したように、複数の「y」パルスを、−x/ΔIP/+x波形に挿入して、電気光学媒体のグレイスケールの「微細調整」を可能にし、このような「y」パルスの複数の対を相互に違ったものとすることができる。図6は、図3と同様な方法で、第二のyタイプ・パルス対(「−z」、「+z」で表す)の図5の波形への挿入を象徴的に図示したものである。−z及び+zパルスを図5に示す波形のどのパルス境界にも導入できるので、−z及び+zパルスの導入によって、多数の異なる波形を生成できることは容易に分かる。好適な生成波形を図7に示す。このタイプの波形は、以下の理由により、最終光学状態の微調整のため有用である。−z及び+zパルスがない状態(すなわち前に説明した図5の波形)を考えてみる。xパルス要素は、微調整に使われ、xを増大するすることによって最終光学状態を低下させ、xを低減することによってこれを上昇させることができる。但し、電気光学媒体が、波形の安定性のため必要なほど十分に光レールに近接されなくなるので、所定のある点を超えてxを低減するのは望ましくない。この問題を回避するために、図7に示すように、xを低減する代わりに、zがxと反対の符号を持つようにして−z、+zのパルス対を加えることによって、(実質的に)+xパルスを変えずに−xパルスを増大させることができる。+zパルスは−xパルスを増強し、一方、−zパルスは、移行レベルを望ましい正味インパルスに維持し、かくして、DCバランスされた全体的な移行テーブルが維持される。
【0111】
本発明の制限移行波形取組みにおいて、「対角線要素」(ゼロ移行に対応し、初期と最終のグレイ・レベルが同一の移行テーブル要素であって、移行テーブルの正規マトリクス表現において、このような要素は第一対角線に位置しているためこう呼ばれる。このような対角線要素はΔIP=0である)はx及びyパルスの両方を包含することができる。移行テーブルのどの要素も、ゼロ又はそれ以上のx及び/又はyパルスのセットを包含することができる。
【0112】
また、本発明の制限移行方法は、隣接する移行フレームの間の「休止期間」を活用する。このような休止期間の詳細については、本発明の中断スキャン方法と関連させて後記で説明する。通常、アクチブ・マトリクス・ディスプレイにおいて、ピクセルは一連のグループ(通常、複数のロー)に分けられており、これら複数のグループの各々は連続的に選択され(一般にマトリクスのローがスキャンされる)、選択されたグループの各々のピクセルに対して、駆動電圧又は非駆動電圧のいずれかが印加される。すべてのピクセル・グループのスキャンは、1フレーム期間内に完了する。このピクセル・グループのスキャンは繰り返され、典型的な電気光学ディスプレイにおいては、スキャンは、ディスプレイの全体書き換えに必要なフレームのグループ(便宜的にスーパーフレームと呼ぶ)の期間に1回を超えて繰り返すことになる。通常、更新には、一定の、例えば50Hzのスキャン周波数が用いられ、これでは20m秒のフレームが可能である。しかしながら、このフレーム長さでは、光学波形性能のためには不十分な分解能しか得られないことになろう。多くの場合、t/2の長さのフレーム、例えば通常20m秒のフレーム長さの波形では10m秒のフレームが望ましい。異なった遅延時間のフレームを組み合わせて、n/2のパルス分解能を生成することが可能である。一つの特定なケースを取り上げてみると、単一の長さ1.5*tを波形の冒頭に挿入し、同様なフレームを波形の終わりに(終了0Vフレームの直前、0Vフレームは普通のフレーム速度で必要なもので、通常、波形の終端に使われ、ピクセル上の残留電圧変化による有害な影響を防止する)挿入することができよう。2つの隣接するフレームのスキャンの間に、単に0.5*tの遅延時間を加えることによって、2つのより長いフレームを実現することができる。この波形は以下の構造を持つことになろう:
tm秒のフレーム:t/2m秒の遅延:tm秒のフレーム[…]tm秒のフレーム:t/2m秒の遅延:tm秒のフレーム(全体アウトプットは0Vに)
20m秒長さ通常フレームに対し、最初及び最後のパルス、プラスこれら各々の遅延は各30m秒の長さとなる。
【0113】
この波形構造を使い、最初及び最後のパルス長さを、以下のアルゴリズムを用いて、10m秒変化させる。
【0114】
(a)最初パルスの長さがtで均等に割り切れるならば、冒頭のフレームは0V駆動電圧で構成され、tm秒に相当する数のフレームは、所望のパルス長さを実現するために活性化される、又は
(b)最初のパルスの長さをtで除したときt/2の剰余が出るならば、1.5*tの冒頭フレームは活性となり、最初のフレームに引き続くtm秒に対応する数のフレームは、所望のパルス長さを実現するために活性化される。
【0115】
最後のパルスも同じアルゴリズムに従う。このアルゴリズムが適切に機能するためには、開始時点及び終了時点をそれぞれ整合させなければならないことに注意されたい。さらに、DCバランスを維持す最初及び最後のパルスを−x/+x対の一部として対応させることができる。
【0116】
「休止期間」を採用しているかどうかに関わらず、移行を実行するために使われる波形の効果が、その波形中のパルスの中または前にゼロボルト期間(実際は遅延時間)を置くことによって変化することが判明しており、本発明の制限移行方法に、波形中の連続するパルスの中又はそれらの間にゼロ電圧期間を含めることができる。すなわち、本文書の前記及び前述のPCT/US2004/010091中で使われている用語でいえば、「切れ目のある」波形にすることができる。図8から10は、図2の基本―x・ΔIP・+x波形に、このようなゼロ電圧期間を組み込んだ変形を図示したものである。図8の波形では、時間遅延は−xパルスとΔIPパルスとの間に挿入されている。図9の波形では、時間遅延はΔIPパルスの内部に挿入されている、すなわち、ΔIPパルスが時間遅延によって2つの別個のパルスに分割されているのと同じことに帰着する。図10の波形は、時間遅延が+xパルスの内部に挿入されていることを除けば、図9と同様である。時間遅延を波形内に組み込んで、こういった遅延がなければ実現できないような光学状態を達成することができる。また、時間遅延を最終光学状態の微調整のために用いることもできる。この微調整機能は重要である、というのは、アクチブ・マトリクス駆動においては、各パルスの時間分解能はディスプレイのスキャン周波数によって定義されるからである。スキャン周波数によって与えられる時間分解能は、かなり粗になることがあり、微調整のための何らかの追加手段がなければ、精度ある最終光学状態を達成することができないことがある。
【0117】
(本発明の中断スキャン方法)
すでに述べたように、本発明は、複数のグループに分けられた複数のピクセルを持つ電気光学ディスプレイを駆動するための「中断スキャン」方法を提供する。この方法は、複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定して、選定したグループ中の各ピクセルに駆動電圧又は非駆動電圧を印加し、すべてのピクセルグループのスキャンを第一フレーム期間内に完了することを含む。このピクセル・グループのスキャンは、第二フレーム期間において繰り返される(どの特定のピクセルも、第一フレーム期間においては駆動電圧を印加、第二フレーム期間には非駆動電圧を印加することができ、またその逆も可能なことを理解されたい)。中断スキャン方法の発明において、ピクセル・グループのスキャンは、第一と第二フレーム期間との間の休止期間で中断され、この休止期間は、第一及び第二フレーム各期間の長さを超えない。この方法において、第一及び第二フレーム期間の長さは通常等しく、休止期間の長さは、通常フレーム期間の一つの長さの約数(望ましくは、半分又は四分の一)である。
【0118】
中断スキャン方法において、隣接するフレーム期間の異なる対の間に複数の休止期間を含めることができる。このような複数の休止期間は、望ましくは、おおよそ等しい長さで、複数休止期間の合計長さは一つのフレーム期間全体と等しいか、あるいは、1フレーム期間から1休止期間をマイナスしたものに等しい。例えば、後記でさらに詳細を説明するように、第一方法の一つの実施形態において、複数の20m秒フレームと、3つあるいは4つの5m秒の休止期間とを用いることができよう。
【0119】
この中断スキャン方法において、当然、ピクセル・グループは、通常、在来のロー/コラム型アクチブ・マトリクス・ピクセル・アレイのローとなる。本中断スキャン方法には、複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定して、選定したグループ中の各ピクセルに駆動電圧又は非駆動電圧を印加し(通常、マトリクスのローをスキャンする)、すべてのピクセルグループのスキャンを第一フレーム期間内に完了することが含まれる。このピクセル・グループのスキャンは、第二フレーム期間において繰り返され、典型的な電気光学ディスプレイにおいて、このスキャンは、ディスプレイの完全再書き込みに必要なスーパーフレームの期間中に1回を超えて回繰り返されることになる。ピクセル・グループのスキャンは、第一と第二フレーム期間との間の休止期間の間中断され、この休止期間は第一及び第二フレーム各期間の長さを超えない。
【0120】
駆動電圧は、各スキャンにおける1ライン処理の間に個々のピクセルに印加されるだけであるが、その駆動電圧は、同じラインが次に選定されるまでの時間、徐々に衰えるだけでピクセル電極上に存続し、マトリクスの他のラインが選定されている間もピクセルを駆動し続けており、中断スキャン方法は、「非選定」時間の間のピクセルの継続駆動に依存している。非選定時間におけるピクセル電極電圧の緩徐な低下を暫時無視すると、休止期間の直前のフレーム期間において駆動電圧にセットされたピクセルは、休止期間の間も継続して駆動電圧の影響を受け、このようなピクセルにとって、前回のフレーム期間が、実際上、休止期間の長さ分だけ延長されたことになる。一方、休止期間の直前のフレーム期間において非駆動(通常ゼロ)電圧にセットされたピクセルは、休止期間の間継続してゼロ電圧の下にある。緩徐に低下するピクセル電極電圧によって、休止期間中にピクセルに供給される合計インパルス量が所望値となることを確実にできるように休止期間の長さを調整するのが望ましかろう。
【0121】
説明目的のため、中断スキャン方法の簡単な例として、複数(例えば10)の20m秒フレームで構成されているスーパーフレームを持つ簡単なパルス幅変調ドライブスキームを考えてみる。通常、スーパーフレームの最後のフレームは、すべてのピクセルを非駆動電圧にセットする。双安定電気光学ディスプレイは、通常、表示する画像が変更されるとき、あるいは、表示画像をリフレッシュすることが望まれるような比較的長い間隔においてだけ駆動され、一般に、各スーパーフレームの後にはディスプレイが駆動されない長い期間が続くことになる、そこで、この長い非駆動期間中に一部のピクセルが尚早な変化をするのを防止するため、すべてのピクセルに対し、スーパーフレームの終端に非駆動電圧を設定することが望ましい。本発明の中断スキャン方法に従ってこのようなドライブスキームを変更するため、連続する20m秒フレームの間に10m秒の休止期間を挿入し、この簡単な変更により、印加された電圧と、所定の移行を遂行するため必要な理想的インパルスとの間の最大可能差異を半減し、これによって、実際に達成されるグレイ・レベルの最大逸脱度を約半分にすることができる。10m秒休止期間は、各スーパーフレームの最後から2番目のフレームの後部に便利に挿入されるが、必要に応じ、スーパーフレームの他の点にも挿入することができる。
【0122】
実際面では、この例では、10m秒の休止期間を挿入するだけでなく、各スーパーフレーム中に一つの20m秒フレームを追加挿入することが望ましい。未変更のドライブスキームに対し、以下のインパルスをどのピクセルにも適用することができる:
0,20,40,60…160.180ユニット
ここで、1インパルス・ユニットは、駆動電圧を1m秒間印加することによって得られるインパルスとして定義される。これより、利用可能なインパルスと、任意の移行のため必要な理想的インパルスとの間の最大差異は10ユニットとなる。(スーパーフレームの最後のフレームは、すべてのピクセルを非駆動電圧にセットするので、その前のスーパーフレームの9フレームだけが駆動電圧印加のため使用可能である。)すでに述べたように、休止期間の前のフレームにおいて駆動電圧にセットされたどのピクセルも、そのフレーム期間プラス休止期間の間この駆動電圧の影響を受け続け、これにより、このフレームに対する20ユニットに換えて30ユニットのインパルスを受ける。従って、変更されたドライブスキームでは以下のインパルスをどのピクセルにも適用することができる:
0,20,30,40,50,60ユニット等
スーパーフレームに追加フレームを挿入して、変更後のドライブスキームが、きっちり180ユニットのインパルスを供給できるようにすることが望ましい。20ユニットの整数倍となる一切のインパルスにおいて、休止期間に先行するフレーム期間で関連ピクセルを非駆動電圧にセットする必要があるので、厳密に180ユニットのインパルスを実現するためには11フレーム構成のスーパーフレームが必要であり、180インパルスを受けるどのピクセルに対しても、9フレームの間は駆動電圧にセットすることができ、休止期間に先行するフレーム及び(例のごとく)スーパーフレームの最後のフレームの間は、非駆動電圧にセットすることができるようにする。このように、この変更ドライブスキームを使用した場合、使用可能なインパルスと、任意の移行のための理想的インパルスとの間の最大差異は5ユニットに低減される。(この変更ドライブスキームでは10ユニットのインパルスを印加することはできないが、実際面でこのことはさして重大ではない。合理的に一貫したグレイスケール・レベルを生成するために、どのグレイスケール移行についても10ユニットのような小さなインパルスが必要とならないように、利用可能なインパルス・レベルの数はディスプレイのグレイ・レベルの数よりも十分に多くなければならない。)
当然、休止期間を、印加したインパルスを介して所望の制御を達成するため必要などのような数と長さにすることもできる。例えば、10m秒の休止期間を含める前記ドライブスキームの変更に換えて、望ましくは後ろに休止期間を伴わない3つの追加20m秒駆動フレームをドライブスキームに加えながら、3つの5m秒休止期間を、別々の20m秒駆動フレームの後に含めるようにドライブスキームを変更することができよう。この変更ドライブスキームでは、以下のインパルスをどのピクセルにも適用し:
0,20,25,30,35…170,175,180ユニット
これにより、使用可能なインパルスと、任意の移行のための理想的インパルスとの間の最大差異を2.5ユニットに低減することができ、これは元の変更前ドライブスキームのものと比較すると4分の一への低減となる。
【0123】
中断スキャン方法についての前記説明では、印加インパルスの極性の問題を無視してきた。本明細書の前記及び前記WO03/044765で論じられているように、双安定電気光学媒体は、両方の極性のインパルス印加を必要とする。スライドショウ・ドライブスキームのような一部のドライブスキームにおいては、ディスプレイに新しい画像が書き込まれる前にまず、ディスプレイ上のすべてのピクセルが、黒又は白のいずれかの最端光学状態に駆動され、その後ピクセルは単一極性のインパルスによって最終グレイ状態に駆動される。このようなドライブスキームを、中断スキャン方法に従い、前に説明した方法で変更することができる。その他のドライブスキームでは、ピクセルを最終グレイ状態に駆動するためには両方の極性のインパルスの印加が必要となる。2つの極性のインパルスを別々のフレームで印加することができ、又は、2つの極性のインパルを同一のフレームで、例えば、共通フロント電極はV/2の電圧に保持され、一方、個別ピクセル電極は0、V/2又はVに保持されている3レベル・ドライブスキームを使って印加できる。2つの極性のインパルスが別々のフレームで印加される場合、中断スキャン方法は、望ましくは、一つは、一方の極性のインパルスが印加されるフレームの後に、二番目は、反対極性のインパルスが印加されるフレームの後に置かれた、少なくとも2つの別個の休止期間を設けて実施される。しかしながら、両方の極性が同一のフレームで印加されるドライブスキームを使う場合には、中断スキャン方法では、ただ一つの休止期間を活用することができる、というのは、前の説明でも明らかなように、フレームの後に休止期間を含めることの効果は、駆動電圧の極性いかんに関わらず、そのフレームにおいて駆動電圧が印加された一切のピクセルに印加されるインパルスの強さを増加させることにあるからである。
【0124】
また、前記WO03/044765、及び本文書の前記で論じたように、多くの安定電気光学媒体は、望ましくは、長期的な直流(DC)バランスを実現するドライブスキームによって駆動され、このようなDCバランスは、ピクセルのグレイ・レベルを実質上変化させることのないDCバランス・セクションを、グレイ・レベルを変化させるメイン駆動セクションの前に印加し、印加したインパルスの代数和をゼロ、又は少なくとも非常に小さくなるようにこの2つのセクションを選択するようなドライブスキームを使って好都合に実現する。メイン駆動セクションを、中断スキャン方法に従って変更する場合、休止期間の挿入による追加インパルスが累積して有意なDC不均衡をもたらすことを防止するため、DCバランス・セクションを変更することが大変望ましい。但し、DCバランス・セクションを、メイン駆動セクション変更の正確な鏡像となるように変更する必要はない、というのは、DCバランス・セクションはギャップ(ゼロボルト・フレーム)を持つことができ、ほとんどの電気光学媒体は、短時間のDC不均衡では障害を受けないからである。このように、前記で論じた、10の20m秒フレームの間に挿入した一つの10m秒休止期間を用いたドライブスキームにおいて、このドライブスキームの第一フレームを30m秒時間経過させることによってDCバランスを実現することができる。このフレームにおいてピクセルに駆動電圧を印加、また印加しないことによって、全体的インパルスを20ユニットの倍数にして後にこのインパルスを容易にバランスできるようにする。3つの5m秒休止期間を用いたドライブスキームにおいて、ドライブスキームの最初の2つのフレームを、同じように25m秒及び30m秒の経過時間とし(どの順序でも)、前記と同様に全体インパルスを20ユニットの倍数とすることができる。
【0125】
前記の説明から、本発明の中断スキャン方法は、各スーパーフレーム中に各挿入休止期間に対して1つの追加フレームを含める必要性からくる処理時間の増加と、この方法による、インパルス及びそれによる生成グレイスケールの制御改善との間でトレードオフが必要なことが分かるであろう。しかしながら、本中断スキャン方法は、処理時間の小幅な増加によってインパルス制御の非常に大幅な向上を提供できる。例えば、前記の、20m秒フレームを含むスーパーフレームを3つの5m秒休止期間を含むように変更したドライブスキームは、処理時間の40パーセント増よりは低いコストで、インパルス精度の4倍の向上をもたらす。
【0126】
(本発明のバランス化グレイ・レベル法)
すでに述べたように、本発明はアレイに配置された複数ピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動するための、バランス化グレイ・レベル法をも提供する。ピクセルは、異なった複数インパルスを印加する機能を持つパルス幅変調波形によって駆動される。駆動回路は、任意のインパルスの印加により所望のグレイ・レベルより高いか、又は低いかいずれのグレイ・レベルが生成されるかを示すデータを格納する。2つの隣接するピクセルの両方が同じグレイ・レベルであることが必要な場合、これら2つのピクセルに印加されるインパルスは、一つのピクセルは所望のグレイ・レベルより低く、他方のピクセルは所望のグレイ・レベルを上回るように調整される。
【0127】
この方法の好適な形態において、ピクセルを2つのグループに分け、以降「偶数」と「奇数」として表すことにする。この2つのグループを、各ピクセルが少なくとも一つの反対グループの隣接ピクセルを持ち、2つのグループに対して別のドライブスキームが使われることを条件として、(各ロー及びコラムのピクセルが交互に2つのグループになるように)チェッカー盤パターン、又は前記のWO03/044765に記載されたような他の配列に配置することができる。格納されたデータが、利用可能なインパルスの一つが実質的に所望のグレイ・レベル移行を生成できることを示す場合、このインパルスはその移行のため、偶数及び奇数ピクセル双方に印加される。しかしながら、格納データが、特定のグレイ・レベル移行に必要なインパルスは利用可能な2つのインパルスのおおよそ中間にあることを示す場合、これらインパルスの一つは偶数ピクセルの移行に使われ、他方は奇数ピクセルの移行に使われる。このように、隣接する2つのピクセルが同一のグレイ状態であることが意図されている場合(グレイスケールの高精度制御が最大に重要となる状態)、これらピクセルの一つは、所望レベルをわずかに上回るグレイ・レベルを持つことになり、他方は所望レベルよりわずかに低いグレイ・レベルをもつことになる。目視作用及び視覚の平均化によって2つのグレイ・レベルの平均が見取られ、これにより、利用可能なインパルスが達成できるものよりも所望レベルにより近い見かけ上のグレイ・レベルが生成されることになる。実際には、このバランス化グレイ・レベル法は、大信号の本来のグレイスケールに重ね合わさせた小信号空間ディザ法(印加インパルスの誤差を修正するのに使われる)を用い、利用できるインパルス・レベルを2倍に増加している。各ピクセルは、そのままおおよそ正確なグレイスケール・レベルに保持されているので、ディスプレイの効果的分解能は損なわれていない。
【0128】
MATHLAB擬似コード中の、必要な計算の実行方法一式を以下に記載する。フロアー関数は最も近い整数に切り下げ、モッド関数は、その第一独立変数を第二独立変数で除した剰余を計算する:
quotient=floor(desired_impulse)
quotient=mod(desired_implse,1)
if remainder<=0.25
even_parity_impuluse=quotient
odd_parity_impulse=quotient
else if remainder<=0.75
even_parity_impulse=qiotient +1
odd_parity_impulse=qiotient
else
even_parity_impulse=qiotient +1
odd_parity_impulse=qiotient +1
end.
前記で説明した一部のドライブスキーム、例えば、図1A及び1Bと関連して前記で説明したサイクリックRSGSドライブスキームにおいて、ディスプレイのピクセルはすでに2つのグループに分けられており、2つのグループには別のドライブスキームが使われていて、所望のグレイ・レベルを達成するため必要なインパルスの大きさは2つのグループで異なることになる。このような「2つのグループ」ドライブスキームをバランス化グレイ・レベル法によって変更することができるが、この方法の詳細な実施は、前記で説明した単純なケースといくらか違ってくる。利用可能なインパルスを所望の移行に必要なものと単純に比較する代わりに、2つのグループにおけるグレイスケールの誤差を別々に計算してそれら誤差の算術平均を出し、グループの一つを異なるインパルスにシフトすることで、その算術平均が低減されるかどうかを判断する。この場合、算術平均の低減値は、どちらのグループが異なるパルスにシフトされるかによって異なることになろうから、当然ながら、どちらのシフトであれ、より小さな平均を生成する方を実施すべきことに注意されたい。
【0129】
前記同様に、この方法を、本来の大信号グレイスケールに重ねて実施された小信号空間ディザ法であって、使用パルス幅変調ドライブスキームの限界によるインパルス誤差を是正するため用いられている小信号空間ディザ法と見ることができる。この仕組みにおいて、各ピクセルは、そのままおおよそ正確なグレイスケール・レベルに保持されており、是正はインパルスの丸め誤差を修正するだけなので、ディスプレイ分解能の効果は損なわれていない。言い方を変えれば、この方法は大信号の本来のグレイスケールに加えて小信号空間ディザ法を実施する。
【0130】
本発明の様々な方法において、前記の出願類、特にWO03/044765及びPCT/US2004/010091に記載された各種の追加の変形及び手法を利用することができる。電気光学ディスプレイを駆動するため使われる全般的な波形について、少なくとも一部のケースにおいては、ある種の移行を本発明の各種方法によって実現し、それ以外の移行には、本発明の方法を使わず、以下に記載の他のタイプの移行を利用できることは明らかである。例えば、本発明は下記のいずれか一つ以上を利用している。
【0131】
非連続的処理(non−contiguous addressing)(前記PCT/US2004/010091、[0142]項から[0234]項及び図1−12を参照されたい)。
【0132】
DCバランスされた処理(DC baranced addressing)、前記で一部を説明した(但し、前記PCT/US2004/010091、[0235]項から[0260]項及び図13−21も参照されたい)。
【0133】
定義領域更新(defined region updating)(前記PCT/US2004/010091、[0261]項から[0280]項を参照されたい)。
【0134】
補償電圧処理(compensation voltage addressing)(前記PCT/US2004/010091、[0284]項から[0308]項及び図22を参照されたい)。
【0135】
DTD積分低減処理(DTD integral reduction addressing)(前記PCT/US2004/010091、[0309]項から[0326]項及び図23を参照されたい)。
【0136】
残留電圧処理(remnant voltage addressing))(前記WO03/044,765、頁59から62を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】図1A及び1Bは、本発明の制限移行ドライブスキームの2つの部分を示す。
【図1B】図1A及び1Bは、本発明の制限移行ドライブスキームの2つの部分を示す。
【図2】図2は、本発明の方法で用いるための好適な−x/ΔIP/xシーケンスを示す。
【図3】図3は、図2に示した波形を、どのように変更して追加の駆動パルス対を含めることができるかを概略的に示す。
【図4】図4は、図2の波形を、図3に示した方法で変更して生成した一つの波形を示す。
【図5】図5は、図2の波形を、図3に示した方法で変更して生成した第二の波形を示す。
【図6】図6は、図5に示した波形を、どのように変更してさらなる追加駆動パルス対を含めることができるかを概略的に示す。
【図7】図7は、図5の波形を、図6に示した方法で変更して生成した一つの波形を示す。
【図8】図8−10は、図2に示した波形を変形して電圧ゼロの期間を組み込んだものを示す。
【図9】図8−10は、図2に示した波形を変形して電圧ゼロの期間を組み込んだものを示す。
【図10】図8−10は、図2に示した波形を変形して電圧ゼロの期間を組み込んだものを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグループに分けられた複数のピクセルを持つ電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
(a)前記複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定し、前記選定されたグループ中の前記ピクセルの各々に駆動電圧あるいは非駆動電圧を印加し、前記すべてのピクセル・グループの前記スキャンをを第一フレーム期間中に完了することと、
(b)第二フレーム期間の間に前記ピクセル・グループの前記スキャンを繰り返すこととを含み、
前記第一と第二フレーム期間との間の休止期間において、前記ピクセル・グループの前記スキャンを中断することによって特徴付けられ、この休止期間は前記第一及び第二フレーム各期間の長さを超えない、
前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第一及び第二フレーム期間の長さが等しい、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記休止期間の前記長さは、前記第一及び第二フレーム期間の一つの前記長さの約数である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも第一、第二及び第三フレーム期間において前記ピクセル・グループをスキャンすることと、連続するフレーム期間の間の少なくとも第一及び第二休止期間において前記ピクセル・グループの前記スキャンを中断することとを含む前記方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記第一、第二及び第三フレーム期間は長さが実質上等しく、前記休止期間の合計長さは、1フレーム期間又は1フレーム期間マイナス1休止期間である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記ピクセルは、複数のロー及び複数のコラムを持つマトリクス中に配列され、各ピクセルは、所定のロー及びコラムの交差で定義されており、ピクセルの各グループは、前記マトリクスの1つのロー又は1つのコラムを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記ディスプレイの前記スキャンは、ピクセルが経る一切の一連の移行に対し前記印加電圧の時間積分が束縛されるようにして、達成される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック又は回転2色部材電気光学媒体を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、カプセル化された電気泳動媒体を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、マイクロセル電気泳動媒体を含む、方法。
【請求項11】
複数のピクセルを持つ電気光学ディスプレイを駆動するための方法であって、前記ピクセルは、各ピクセルに複数の異なるインパルスを印加することができるパルス幅変調波形によって駆動され、前記方法は、
(a)あるインパルスをピクセルに印加すると、所望のグレイ・レベルより高いか又は低いどちらのグレイ・レベルが生成されるのかを示すデータを格納することと、
(b)隣接する2つのピクセルの両方が同一のグレイ・レベルになる必要がある時を検知することと、
(c)一つののピクセルは前記所望のグレイ・レベルより低く、他方のピクセルは前記所望のグレイ・レベルを上回るように、前記2つのピクセルに印加されるインパルスを調整することとを
特徴とする前記方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記ピクセルは、各ピクセルが反対グループの隣接ピクセルを少なくとも一つ持つようにして、2つのグループに分けられ、前記2つのグループには別のドライブスキームが使われる、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック又は回転2色部材電気光学媒体を含む、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、カプセル化された電気泳動媒体を含む、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、マイクロセル電気泳動媒体を含む、方法。
【請求項16】
2つの最端光学状態を含む少なくとも4つの異なるグレイ・レベルのどの一つをも実現することのできる少なくとも一つのピクセルを持つ、電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
前記ディスプレイに第一画像を表示することと、
前記ディスプレイを書き換えてそこに第二画像を表示することと
を含み、前記方法は、
前記ディスプレイの書き換えの間に、少なくとも一つは前もって定めらている規定値を超える回数、最端光学状態に触れることなく移行を経た一切のピクセルは、前記第二画像中のピクセルが最終光学状態に駆動される前に、最端光学状態の少なくとも一つに駆動されることによって特徴付けられる前記方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、ピクセルが一つの最端光学状態からその反対の最端光学状態に向けて一つの極性のパルスによって一旦駆動された後は、前記反対の最端光学状態に到達するまでは、前記ピクセルは反対極性のパルスを感受しないようにして、前記ディスプレイの前記書き換えが達成される、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、Nをピクセルが表示できるグレイ・レベルの合計数としたときに、前記規定値はN/2を超えない、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記ディスプレイの前記書き換えを、電圧―V、0及び+Vのどれか一つ以上を前記又は各ピクセルに印加して達成する方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記ディスプレイの前記書き換えは、ピクセルが経る一切の一連の移行に対し前記印加電圧の時間積分が束縛されるようにして、達成される、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、前記ディスプレイの前記書き換えは、移行の間にピクセルに印加される前記インパルスが、その移行の初期及び最終グレイ・レベルにのみ依存するようにして達成される、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、グレイ・レベルR2からグレイ・レベルR1へ前記少なくとも一つのピクセルが経る少なくとも一つの移行に対し、以下の形式のインパルスのシーケンスが前記ピクセルに印加され、
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
ここで「IP(Rx)」は、各グレイ・レベルに対し一つの値を持つインパルス・ポテンシャル・マトリクスからの対応値を表し、TM(R1,R2)は、各R1,R2組合せに対し一つの値を持つ移行マトリクスからの対応値を表す、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、初期及び最終のグレイ・レベルが異なるすべての移行に対し、以下の前記形式のインパルス・シーケンス、
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
である方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
のシーケンスにおいて、最終のTM(R1,R2)セクションが最大更新時間の半分より多くを占める、方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、前記ディスプレイの前記書き換えは、所与のグレイ・レベルへの移行が常に同一極性の最終パルスで実施されるようにして達成される、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記2つの最端光学状態以外のグレイ・レベルへのアプローチは、前記近い方の最端光学状態の方向から行われる、方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、前記TM(R1,R2)の値を、各値の符号がR1だけに依存するようにして選定する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記2つの最端光学状態以外のグレイ・レベルへのアプローチが、前記近い方の最端光学状態の方向から行われるように、前記TM(R1,R2)の値は、一つ以上の薄いグレイ・レベルに対しては正、一つ以上の濃いグレイ・レベルに対しては負になるように選定される、方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも一つの移行は、形式[+y][−y]の追加パルス対をさらに含み、ここでyはインパルスの値であって正又は負いずれの符号をとることもでき、前記[+y]及び[−y]パルスは、前記
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
シーケンスに挿入される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記少なくとも一つの移行は、形式[+z][−z]の第二追加パルス対をさらに含み、ここでzはyと異なるインパルスの値であって正又は負いずれの符号をとることもでき、前記[+z]及び[−z]パルスは、前記
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
シーケンスに挿入される、方法。
【請求項31】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも一つの移行は、前記ピクセルに電圧を印加しない期間をさらに含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記ピクセルに電圧を印加しない前記期間は、前記
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
シーケンスの2つの要素の間に置かれる、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、前記ピクセルに電圧を印加しない前記期間は、前記
−TM(R1,R2)IP(R1)−IP(R2)TM(R1,R2)
シーケンスの単一の要素内の中間点に置かれる、方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法であって、前記少なくとも一つの移行は、前記ピクセルに電圧を印加しない少なくとも2つの期間を含む、方法。
【請求項35】
請求項22に記載の方法であって、前記ディスプレイは、複数のグループに分けられた複数のピクセルを含み、前記移行は、(a)前記複数のピクセル・グループの各々を連続的に選定し、前記選定されたグループの前記ピクセルの各々に駆動電圧又は非駆動電圧のいずれかを印加し、前記すべてのピクセル・グループの前記スキャンを第一フレーム期間中に完了し、(b)第二フレーム期間中に前記ピクセル・グループの前記スキャンを繰り返し、(c)前記第一と第二フレーム期間との間の休止期間において前記ピクセル・グループの前記スキャンを中断し、この休止期間は前記第一及び第二フレーム各期間の長さを超えないものとすることによって達成される、方法。
【請求項36】
請求項16に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック又は回転2色部材電気光学媒体を含む、方法。
【請求項37】
請求項16に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、カプセル化された電気泳動媒体を含む、方法。
【請求項38】
請求項16に記載の方法であって、前記電気光学ディスプレイは、マイクロセル電気泳動媒体を含む、方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−529018(P2007−529018A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517795(P2006−517795)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/021000
【国際公開番号】WO2005/006290
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】