電気光学素子及び走査型光学装置
【課題】高速で、大きな偏角を得ることができるとともに、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子及び走査型光学装置を提供すること。
【解決手段】複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が変化し入射されたレーザ光を走査する電気光学結晶13と、該電気光学結晶13の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極11a,11bと、電気光学結晶13の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極12a,12bと、電気光学結晶13のレーザ光の入射端面及13a及び射出端面13bのうち少なくとも射出端面13b側に設けられ、電気光学結晶13から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材15とを備えることを特徴とする。
【解決手段】複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が変化し入射されたレーザ光を走査する電気光学結晶13と、該電気光学結晶13の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極11a,11bと、電気光学結晶13の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極12a,12bと、電気光学結晶13のレーザ光の入射端面及13a及び射出端面13bのうち少なくとも射出端面13b側に設けられ、電気光学結晶13から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材15とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学素子及び走査型光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光などのビーム状の光を被投射面上でラスタースキャンして画像を表示する走査型画像表示装置が提案されている。この装置では、レーザ光の供給を停止することで完全な黒を表現できるため、例えば液晶ライトバルブを用いたプロジェクタ等に比べて高コントラストの表示が可能である。また、レーザ光を使用した画像表示装置は、レーザ光が単一波長であるために色純度が高い、コヒーレンスが高いためにビームを整形しやすい(絞りやすい)等の特性を持つことから、高解像度、高色再現性を実現する高画質ディスプレイとして期待されている。また、走査型画像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどと異なり、固定された画素を持たないため、画素数という概念がなく、解像度を変換し易いという利点も持っている。
【0003】
走査型画像表示装置で画像を生成するには、ポリゴンミラー、ガルバノミラーなどのスキャナを用いて光を2次元に走査する必要がある。1個のスキャナを水平方向、垂直方向の2方向に振りつつ光を2次元に走査する方法もあるが、その場合、走査系の構成や制御が複雑になるという問題がある。そこで、光を1次元に走査するスキャナを2組用意し、各々に水平走査と垂直走査を受け持たせるようにした走査型画像表示装置が提案されている。従来は、双方のスキャナともにポリゴンミラーやガルバノミラーを使用するのが普通であり、双方のスキャナに回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いた投写装置が下記の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平1−245780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではポリゴンミラーを用いた装置が紹介されているが画像フォーマットの高解像度化に伴い、スキャン周波数も高くなってきており、ポリゴンミラーやガルバノミラーでは限界を迎えつつある。そこで、近年、高速側のスキャナにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したシステムが発表されている。MEMS技術を利用したスキャナ(以下、単にMEMSスキャナという)とは、シリコン等の半導体材料の微細加工技術を用いて製作するものであり、トーションバネ等で支持したミラーを静電力等により駆動するものである。このスキャナは、静電力とバネの復元力との相互作用でミラーを往復運動させて、光を走査することができる。MEMSスキャナを用いることにより、従来のスキャナに比べて高周波数、大偏角のスキャナを実現することができる。これにより、高解像度の画像を表示することが可能になる。
【0005】
ところで、高速のMEMSスキャナを実現するには、ミラーを共振点で往復運動させなければならないため、光利用効率などを考えると、走査線が視聴者から見て左から右へスキャンした後に、次の走査線は右から左にスキャンする(両側スキャン)システムとなる。
一方、画像信号はCRT(Cathode Ray Tube)をベースに規格が決まっているため、左から右へスキャンした後は短い時間で左に戻り、再度右へスキャンする(片側スキャン)に合わせたフォーマットとなっている。したがって、MEMSスキャナの場合、一部のデータは入力された信号の順番を反転して表示しなければならないため、信号の制御が複雑となる。
そこで、MEMSスキャン以外の走査手段としては、電気光学(EO:Electro Optic)スキャナが考えられる。EOスキャナとはEO結晶に電圧を加えることにより、その結晶中を透過する光の進行方向を変える素子である。このようにEOスキャナでは、電圧によりスキャン角を制御できるので、CRTと同様に片側スキャンによる描画が可能となる。
【0006】
また、EOスキャナとは、EO結晶に電圧を印加することにより電子が注入され電子分布に偏りが生じる。そのため、カー効果による屈折率変化にも分布が生じ、入射された光が屈折率の高い側に曲がっていくので、光の走査を可能にしている。また、EO結晶内部の屈折率分布の傾きが、電子注入量、つまり、印加電圧によるため、印加電圧を変化させることで、EO結晶から射出される光のスキャン角度を制御することができる。
【0007】
ところで、EOスキャナを用いた表示装置において、画像を表現するために各画素に対応する位置で強度を変調させる必要がある。SVGA(Super Video Graphics Array)クラスの表示を行うと、約30MHz以上の変調速度が必要である。しかしながら、レーザ光源の種類によっては十分な変調速度が得られないという問題がある。また、電気光学素子や音響光学素子を用いた外部変調器をEOスキャナとは別に設けることも考えられるが、素子点数が増えることが高コスト化を招き、さらには余分に容積が大きくなり大型化してしまう等の問題もある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高速で、大きな偏角を得ることができるとともに、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子及び走査型光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の電気光学素子は、複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が生じる電気光学結晶と、該電気光学結晶の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極と、前記電気光学結晶の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極と、前記電気光学結晶のレーザ光の入射端面及び射出端面のうち少なくとも前記射出端面側に設けられ、前記電気光学結晶から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気光学素子では、強度変調用電極及び走査用電極に電圧を印加する。これにより、強度変調用電極により電圧が印加された電気光学結晶の領域には、複屈折性が生じるため、この領域に入射した光は、印加された電圧値に応じて偏光面が回転する。また、走査用電極により電圧が印加された電気光学結晶の領域に入射した光は、内部に生じる電界により、電気光学結晶の屈折率分布が一方向に向かって連続的に増加あるいは減少する。このため、電気光学結晶の内部に生じる電界と垂直な方向に進行するレーザ光は、屈折率が低い側から高い側に向かって曲げられる。そして、電気光学結晶の射出端面に設けられた偏光選択部材により、電気光学結晶から射出される光は偏光面に応じて特定の振動方向の光が透過される。このように、電気光学結晶に入射した光は変調されて射出される。
【0011】
したがって、電気光学結晶に強度変調用電極及び走査用電極を設けることにより、1つの電気光学結晶で入射した光の強度を変調し、走査することが可能となる。したがって、光の変調速度が十分に取れない、例えば、波長変換素子を用いた光源装置から射出された光が入射しても、電気光学結晶の強度変調用電極に印加する電圧を制御することにより、変調速度を速くすることが可能となる。
すなわち、音響光学素子を用いた外部変調器と同等の変調が可能となり、高速、かつ大偏角の電気光学素子を得ることが可能となる。さらには、他の光学部材を用いて変調速度を上げるのではなく、光を走査する電気光学結晶を共有し変調速度を速くしているため、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子を提供することが可能となる。
【0012】
また、本発明の電気光学素子は、前記電気光学結晶には、入射端面から光の進行方向に向かって、前記強度変調用電極に挟まれた変調領域と、前記走査用電極に挟まれた走査領域とが順に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る電気光学素子では、まず、電気光学結晶の入射端面から入射した光は、変調領域において変調される。その後、変調された光が走査領域に入射し走査される。このとき、走査領域に入射した光は、走査領域の入射端面に対して垂直方向から入射される。これにより、本発明とは逆に、走査領域と変調領域とが順に設けられている場合、走査領域から射出された光は変調領域に斜め方向から入射するため、変調領域を進行する光において所定の偏光面に回転しないおそれが生じる。したがって、本発明のように、変調領域と走査領域とをこの順に設けることにより、電気光学結晶に入射した光をより精度良く走査変調することが可能となる。
【0014】
また、本発明の電気光学素子は、前記強度変調用電極と前記走査用電極との材質が異なることが好ましい。
本発明に係る電気光学素子では、強度変調用電極と走査用電極との材質が異なるため、電気光学結晶において複屈折性と屈折率分布との両特性を確実に引き出すことができる。したがって、電気光学結晶に入射した光の強度変調と偏向との両方を確実に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の電気光学素子は、前記電気光学結晶がKTa1−xNbxO3の組成を有することが好ましい。
【0016】
本発明に係る電気光学素子では、電気光学結晶が、高い誘電率を有する誘電体材料であるKTa1−xNbxO3(タンタル酸ニオブ酸カリウム)の組成を有する結晶である(以下、KTN結晶と称す)。KTN結晶は、立方晶から正方晶さらに菱面体晶へと温度により結晶系を変える性質を有しており、立方晶においては、大きい2次の電気光学効果を有することが知られている。特に、立方晶から正方晶への相転移温度に近い領域では、比誘電率が発散する現象が起こり、比誘電率の自乗に比例する2次の電気光学効果はきわめて大きい値となる。したがって、KTa1−xNbxO3の組成を有する結晶は、他の結晶に比べて屈折率を変化させる際に必要になる印加電圧を低く抑えることが可能となる。これにより、省電力化を実現可能な電気光学素子を提供することが可能となる。
【0017】
本発明の走査型光学装置は、レーザ光を射出する光源装置と、該光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調するとともに、被投射面に向けて走査する上記の電気光学素子を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る走査型光学装置では、光源装置から射出した光は、電気光学素子により、光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調されるとともに、被投射面に向けて走査される。このとき、上述したように、強度変調が可能であり、偏角の大きい電気光学素子を用いることにより、高解像度に対応可能な走査手段を用いた走査型光学装置となる。したがって、装置全体の小型化を図りつつ、画質の劣化を生じさせることなく画像をより鮮明に被投射面に表示できる走査型光学装置を得ることが可能となる。
【0019】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が複数の異なる波長のレーザ光を射出し、前記偏光選択部材が、前記複数のレーザ光の波長域のうち特定の波長域のレーザ光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させ、前記特定の波長域外のレーザ光を振動方向に関わらず透過させることが好ましい。
【0020】
本発明に係る走査型光学装置では、例えば、偏光選択部材として変調速度が遅い光の波長域に機能するものを用いる。このように、偏光選択部材は変調速度が遅い光の波長域に機能するため、電気光学結晶から射出されるレーザ光は、偏光選択部材を透過することにより、この変調速度が遅い光のみ変調させることになる。したがって、複数の異なる波長のレーザ光の変調速度をいずれも同じになるように調整することができるので、鮮明な画像を被投射面に投射することが可能となる。
【0021】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光がそれぞれ前記電気光学結晶の異なる領域に入射され、前記異なる領域ごとに前記強度変調用電極が設けられているこが好ましい。
【0022】
本発明に係る走査型光学装置では、光源装置から射出された異なる波長のレーザ光は、それぞれ電気光学結晶の異なる領域に入射される。そして、異なる領域ごとに、強度変調用電極が設けられているため、各強度変調用電極に印加する電圧を制御することにより、レーザ光ごとに変調量を変化させることが可能となる。したがって、複数のレーザ光の全ての変調速度が適切な表示をするのに満たない場合に、複数のレーザ光それぞれについて、適切な表示に必要な高速かつ異なる変調をかけることができる。したがって、鮮明な画像を被投射面に投射することが可能となる。
【0023】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えるが好ましい。
【0024】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0025】
これら本発明に係る走査型光学装置では、制御部が光源装置の駆動を制御することにより、異なる波長のレーザ光を1フレームごとあるいは1ラインごとに順次走査することができるため、電気光学結晶の同一領域に異なる波長のレーザ光を入射することができる。したがって、異なる波長のレーザ光ごとに強度変調用電極を設ける必要が無いため、小型かつ製造コストを抑えることが可能となる。
【0026】
また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合、1ラインごとに走査する場合に比べて、各レーザ光を長い時間照射するため、制御部による光源装置の駆動制御が簡易となる。また、描画方式による色ずれも起きないので、鮮明な画像を被投射面に投射することができる。
また、異なる波長のレーザ光を1ラインごとに走査する場合、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、色の繰り返し周波数が高くなるので、カラーブレイクアップの発生を抑えることができる。また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、低速側の走査手段の駆動速度、すなわち、被投射面の垂直方向の走査速度が遅くて済むため、低速な走査手段でも良いので、低コスト化が可能である。
【0027】
また、本発明の走査型光学装置は、前記電気光学素子が、水平走査を行うことが好ましい。
【0028】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子が水平走査を行い、垂直走査として例えば、安価なポリゴンミラー等を用いることにより、安価かつ高性能な走査型光学装置を実現することができる。
なお、ここで言う「水平走査」とは、2方向の走査のうち、高速側の走査であり、垂直走査とは低速側の走査である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る電気光学素子及び走査型光学装置の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0030】
[第1実施形態]
電気光学素子1は、複屈折性により入射した光を変調するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が変化することによって、内部を進行するレーザ光を走査する2つの機能を兼ね備えたものである。具体的には、電気光学素子1は、図1に示すように、一対の強度変調用電極11a,11bと、一対の走査用電極12a,12bと、光学素子(電気光学結晶)13とを備えている。また、強度変調用電極11a,11bは光学素子13を挟んで対向配置されている。同様に、走査用電極12a,12bも光学素子13を挟んで対向配置されている。
また、電気光学素子1には、図1の矢印Aに示すように、強度変調用電極11a,11bの配列方向に振動するレーザ光が入射する。
【0031】
光学素子13は、電気光学効果を有する誘電体結晶(電気光学結晶)であり、本実施形態ではKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1−xNbxO3)の組成を有する結晶材料で構成されている。また、光学素子13は、直方体形状であり、入射端面13aと反対の射出端面13bに接触して偏光板(偏光選択部材)15が設けられている。
【0032】
偏光板15は、無機材料からなり、例えばガラスなどの基板上にアルミニウムなどの金属で構成されるワイヤ(細線)をストライプ状に形成したワイヤグリッド型偏光板である。そして、偏光板15は、上記ワイヤの延在方向とほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を透過させると共に、これとほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を反射する構成となっている。
また、偏光板15の偏光方向(透過軸)は、入射するレーザ光の偏光方向に直交する方向(特定の振動方向)となっている。これにより、強度変調用電極11a,11b間に電圧が印加されていない状態で黒表示が行われる(ノーマリーブラック表示)。
【0033】
また、強度変調用電極11a,11bは、図1に示すように、光学素子13の一方の面13cと、一方の面13cと反対の他方の面13dとにそれぞれ設けられている。また、走査用電極12a,12bも、強度変調用電極11a,11bと同様に、光学素子13の一方の面13cと、他方の面13dとにそれぞれ設けられている。
光学素子13の一方の面13c側の強度変調用電極11a,走査用電極12aは一方の面13cを略2等分した領域に設けられている。同様に、光学素子13の他方の面13d側の強度変調用電極11b,走査用電極12bも他方の面13dを略2等分した領域に設けられている。
そして、光学素子13の一方の面13cに設けられた強度変調用電極11aと走査用電極12aとは、所定の間隔をあけてレーザ光の進行方向に向かって隣接して配置されている。すなわち、光学素子13の一方の面13cの入射端面13a側に強度変調用電極11aが配置され、他方の面13dの射出端面13b側に走査用電極12aが設けられている。
また、光学素子13の他方の面13dにも、一方の面13cと同様に、光学素子13の入射端面13a側に強度変調用電極11bが配置され、射出端面13b側に走査用電極12bが設けられている。
これらにより、光学素子13は、強度変調用電極11a,11bに挟まれた領域が変調領域T1と、走査用電極12a,12bに挟まれた領域が走査領域T2とが順に設けられた構成になっている。
【0034】
まず、強度変調用電極11a,11bについて説明する。
強度変調用電極11a,11bの材料としては、光学素子13の内部にカー効果を誘発する材料を選択する。本実施形態では、強度変調用電極11a,11bの電極材料として、ショットキーバリアの大きい電極材料、例えば、Ptを用いる。なお、Ptは一例に過ぎない。
そして、強度変調用電極11a,11b間には電圧を印加する電源E1が接続されている。また、強度変調用電極11a,11bは、光学素子13内を進行するレーザ光Lの進行方向の寸法がほぼ同じである。
【0035】
次に、走査用電極12a,12bについて説明する。
走査用電極12a,12bには、図1に示すように、光学素子13の内部に空間電荷によって屈折率分布が制御される効果(空間電荷制御モード電気光学効果)を誘発する材料を選択する。本実施形態では、走査用電極12a,12bの電極材料として、光学素子13に電流が注入されやすいTiを用いる。なお、走査用電極12a,12bの電極材料はTiに限らず、光学素子13とオーミックコンタクトが取れ、ショットキーバリアを下げる効果がある材質であれば良い。
そして、走査用電極12a,12b間には電圧を印加する電源E2が接続されている。また、走査用電極12a,12bは、光学素子13内を進行するレーザ光Lの進行方向の寸法がほぼ同じである。このように、電源E1及び電源E2により、強度変調用電極11a,11b、走査用電極12a,12bにはそれぞれ独立に電圧が印加できるようになっている。
【0036】
次に、変調領域T1に入射した光について説明する。
変調領域T1には、ショットキーバリアの大きい電極材料Ptにより電圧が印加されるため、入射したレーザ光はカー効果を支配的に受ける。これにより、強度変調用電極11a,11b間に印加される電圧値に応じて偏光面が回転する。
具体的には、強度変調用電極11a,11b間には、電源E1により、例えば図2に示すような、光強度に対応した電圧値のパルス信号が印加される。これにより、変調領域T1に入射したレーザ光は、パルス信号の電圧値に応じて偏光面が回転されて、走査領域T2の入射端面T2aに入射する。走査領域T2に入射したレーザ光は、走査領域T2内において偏光面が維持されて光学素子13の射出端面13bに設けられた偏光板15から射出される。このとき、偏光板15では、入射した光のうち当該偏光板15の透過軸と一致しない成分が反射され、透過軸と合う成分の光が偏光板15を透過し射出される。このようにして、光学素子13に入射した光の強度変調が行われる。
【0037】
次に、走査領域T2に入射した光について説明する。
走査領域T2に入射したレーザ光は、空間電荷制御モード電気光学効果を支配的に受けるので、走査用電極12a,12b間に印加される電圧値に応じて、走査領域T2に生じる電界の強度によって屈折する。
走査用電極12a,12b間には、電源E2により、例えば図3に示すように、鋸歯状の波形の電圧が印加される。なお、走査用電極12bは0Vに固定されている。
走査用電極12aに印加される初期値S1の電圧を走査用電極12aに印加すると、図1に示すように、光学素子13を進行するレーザ光L1は直進する。また、走査用電極12aに印加する電圧値を、図3の電圧の波形に示すように徐々に上げると光学素子の屈折率勾配が大きくなり、電圧値に応じた偏角で射出される。そして、走査用電極12aに最大の電圧値S2を印加すると、光学素子13を進行するレーザ光L2は、図1に示すように、光学素子13内において大きく偏向して射出される。
【0038】
このように、図3に示す波形の電圧を走査用電極12aに印加することで、変調領域T1から射出されたレーザ光Lは、図1に示すように、走査領域T2によりレーザ光L1からレーザ光L2までのスキャン範囲(走査範囲)内を走査されるようになっている。すなわち、光学素子13の入射端面13aから入射した光は、変調領域T1において直進し、所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。
【0039】
また、本実施形態では、レーザ光を片側のみ走査させるため、図1に示すように、光学素子13の入射端面13aの一方の面13c側からレーザ光を入射させる。つまり、本実施形態では、光学素子13の屈折率分布により、光学素子13に入射したレーザ光は他方の面13d側に曲げられるため、光学素子13の一方の面13c側からレーザ光を入射させることにより、スキャン範囲を大きく取ることが可能となっている。
【0040】
本実施形態に係る電気光学素子1では、光学素子13に強度変調用電極11a,11b及び走査用電極12a,12bを設けることにより、1つの光学素子13で入射したレーザ光の強度を変調し、走査することが可能となる。したがって、光の変調速度が十分に取れない光源から射出された光が入射しても、光学素子13の強度変調用電極11a,11bに印加する電圧を制御することにより変調速度を速くすることが可能となる。
すなわち、音響光学素子を用いた外部変調器と同等の変調(数百MHz以上)が可能であり、高速、大偏角の電気光学素子1を得ることが可能となる。さらには、他の光学部材を用いて変調速度を上げるのではなく、光を走査する光学素子13を用いて変調速度を速くしているため、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子1を提供することが可能となる。
つまり、本実施形態の電気光学素子1は、高速で、大きな偏角を得ることができるとともに、小型、かつ、コストを抑えることが可能である。
【0041】
また、偏光板15として、ワイヤグリッド型偏光板を用いているため、誘電体多層膜に比べ、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じることのない偏光変換光学素子を得ることができる。すなわち、偏光分離面に入射する光の入射角度依存性を低減することができるため、光源から射出された光の光量を落とすことなく透過及び反射面に反射させることが可能となり、光利用効率を高めることができる。
また、光学素子13は、入射端面13aからレーザ光の進行方向に向かって、変調領域T1と、走査領域T2とが順に設けられている構成にしたが、走査領域T2、変調領域T1の順に設けられた光学素子であっても良い。
しかしながら、本実施形態では、変調領域T1において、入射した光を所定の偏光面に回転させた後、走査領域T2において走査しているため、走査領域T2の入射端面T2aに対して垂直方向からレーザ光を入射させることが可能となる。これにより、変調領域T1の入射端面T1aに対して、斜め方向からレーザ光が入射する場合(走査領域T2、変調領域T1の順の場合)に比べて、光学素子13に入射した光をより精度良く変調することが可能となる。
【0042】
さらには、外部変調器を用いた場合、外部変調器と、別途設けられた走査手段とのアライメントが必要であるが、本実施形態の電気光学素子1では、アライメントの必要がないため、組み立てが簡易となる。
また、強度変調用電極11a,11b間に電圧が印加されていない状態で黒表示が行われる(ノーマリーブラック表示)ため、電気光学素子1に電圧が印加されていない状態において、万が一電気光学素子1にレーザ光が入射され続けたとしても、電気光学素子1から外部に光が照射させるのを確実に防止することが可能となる。
【0043】
なお、光学素子13の射出端面13bに接触して偏光板15が設けられた構成にしたが、間隔をあけて射出端面13bから射出された光が入射可能な位置に偏光板15を配置しても良い。
また、電気光学素子1に入射する光が所定の偏光方向を有している場合は、上述したように光学素子13の入射端面13aには偏光板15を用いなくても良いが、より高い消光比(コントラスト)が必要である場合は、入射端面13a側にも偏光板を設けることが望ましい。
また、偏光板15として、ワイヤグリッド型偏光板を用いたが、これに限るものではなく、例えば、偏光板15を無機材料からなるものを用いたが、有機材料からなるものを用いることも可能である。
また、透過軸と一致しない成分が反射されるような偏光板を採用したが、透過軸と一致しない成分が偏光板により吸収されるような偏光板を採用しても良い。
また、光学素子13に入射するレーザ光として、強度変調用電極11a,11bの配列方向に振動するレーザ光を用いたが、この方向に限るのもではない。また、偏光板15としては、光学素子13に入射するレーザ光の偏光方向に応じた透過軸を有するものを用いれば良い。
【0044】
さらに、1つの光学素子13において変調領域T1と走査領域T2とを別々に設けたが、変調領域T1と走査領域T2とが重なる電気光学素子20であっても良い。すなわち、電気光学素子20は、図4に示すように、光学素子13の互いに対向する一方の面13cと他方の面13dとに強度変調用電極21a,21bが設けられ、光学素子13の一方の面13cと垂直方向で互いに対向する面13e,13fに走査用電極22a,22bが設けられている。これにより、同一領域で、入射したレーザ光の強度変調及び走査が行われる。
この構成では、変調領域T1と走査領域T2とが同一領域であるため、光学素子13の素子長を短くすることができるので、小型、かつ、低コスト化を図ることが可能となる。さらに、光学素子13の素子長を短くすることで、光学素子13に入射してから射出されるまでのレーザ光の射出時間が短くなるため、光学素子13から射出される光のスキャン速度を速くすることが可能となる。
また、強度変調用電極11a,走査用電極12aは、光学素子13の略2等分した領域に設けられているとしたが、これに限るものではない。
また、電気光学素子1は、レーザ光を片側のみ走査させたが、光学素子13に入射した光を当該光を中心に両側に走査させる両側走査であっても良い。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図5を参照して説明する。
本実施形態では、上記第1実施形態の電気光学素子1を走査手段として備える画像表示装置(走査型光学装置)30について説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係る電気光学素子1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
【0046】
本実施形態に係る画像表示装置30は、図5に示すように、中心波長が630nmである赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(光源装置)30Rと、中心波長が530nmである緑色のレーザ光を射出する緑色光源装置(光源装置)30Gと、中心波長が450nmである青色のレーザ光を射出する青色光源装置(光源装置)30Bと、クロスダイクロイックプリズム31と、クロスダイクロイックプリズム(色合成手段)31から射出されたレーザ光をスクリーン(被投射面)35の水平方向に走査する電気光学素子1と、電気光学素子1から射出されたレーザ光をスクリーン35の垂直方向に走査するガルバノミラー32と、ガルバノミラー32から走査されたレーザ光が投影されるスクリーン35とを備えている。
また、緑色光源装置30Gは、半導体レーザ(LD)及び波長変換素子を有するDPSS(Diode Pomping Solid State)レーザによって構成され、半導体レーザによって射出されたレーザ光は、波長変換素子により中心波長が530nmである緑色のレーザ光に変換される。
本実施形態で用いられる偏光板(偏光選択部材)36は、緑色のレーザ光の波長域、すなわち、490nm〜570nmの波長域の光に機能する。すなわち、偏光板36は、緑色のレーザ光のうち特定の偏光方向の偏光光を透過させ、これとほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を反射する構成となっている。これにより、偏光板36は、490nm〜570nmの波長域外の光には機能しないため、赤色レーザ光及び青色レーザ光は変調されずに透過する。
【0047】
次に、以上の構成からなる本実施形態の画像表示装置30を用いて、画像をスクリーン35に投射する方法について説明する。
各光源装置30R,30G,30Bから射出されたレーザ光は、クロスダイクロイックプリズム31で合成され電気光学素子1に入射する。光学素子13に入射した赤色、緑色、青色レーザ光は、変調領域T1において、強度変調用電極11a,11b間に印加される電圧に応じていずれの色光も偏光面が回転する。そして、変調領域T1から走査領域T2に入射した光は、スクリーン35の水平方向に走査され、ガルバノミラー32により垂直方向に走査されてスクリーン35に投影される。
このとき、赤色、緑色、青色レーザ光は、変調領域T1を通過することにより、いずれの色光も偏光面が回転しているが、電気光学素子1の偏光板36を透過する際、緑色のレーザ光のみ偏光板36の偏光方向と合わない成分が反射され、偏光方向と合う成分の光が偏光板36を透過し射出される。このようにして、光学素子13に入射した緑色のレーザ光の強度変調が行われる。
また、赤色、青色レーザ光は、光源装置30R,30Bに印加する電流または電圧を制御することにより、強度変調を行う。
【0048】
本実施形態に係る画像表示装置30では、緑色光源装置30Gが波長変換素子を用いているため、赤色光源装置30R,青色光源装置30Bの変調速度に比べて緑色光源装置30Gの変調速度が遅い。しかしながら、偏光板36が、緑色のレーザ光の波長域の光に機能するため、光学素子13から射出されるレーザ光は、緑色のレーザ光のみ変調される。したがって、強度変調用電極11a,11b間に印加する電圧を制御することにより、緑色のレーザ光の変調速度を速くすることができる。これにより、複数の異なる波長のレーザ光を射出する光源装置30R,30G,30Bの変調速度をいずれも同じにすることができるので、同じタイミングで同じ領域を照射することができる。したがって、鮮明な画像をスクリーン35に投射することが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置30では、走査手段として偏角の大きい電気光学素子1を用いているため、SVGA(Super Video Graphics Array)クラス等の解像度に対応可能となる。したがって、省電力化を図りつつ、画質の劣化を生じさせることなく、画像をより鮮明にスクリーンに表示させることができる。
しかも、電気光学素子1からなる走査手段は、MEMSスキャナより高速に走査することができるため、本実施形態のように、水平走査として電気光学スキャナを用い、走査自由度が高い垂直走査としてガルバノミラー32(動くことにより光を反射させる可動型の走査手段)を用いることにより、高性能な画像表示装置の実現が期待できる。なお、ガルバノミラー32に代えて、可動型の走査手段の一つである安価なポリゴンミラーにより走査を行っても良い。安価なポリゴンミラーを使用することで、コストを抑えつつ高性能な画像表示を行うことが可能となる。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態について、図6から図9を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置40では、電気光学素子41の構成において第2実施形態と異なる。
【0051】
すなわち、第2実施形態では、緑色光源装置30Gの変調速度のみ調整したが、本第3実施形態の画像表示装置40は、赤色光源装置30R,緑色光源装置30G,青色光源装置30Bから射出される赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光のすべての変調が調整可能な電気光学素子41を備えている。
【0052】
電気光学素子41は、図6に示すように、光学素子13の射出端面13bに接触して偏光板(偏光選択部材)45が設けられている。この偏光板45は、赤色レーザ光の波長域、緑色レーザ光の波長域、青色レーザ光の波長域、すべての波長域の光に機能する。
【0053】
電気光学素子41は、図7に示すように、変調領域T1と走査領域T2とからなる。そして、変調領域T1は、図8に示すように、光学素子13の幅方向に沿って略3等分された赤色変調領域T1Rと、緑色変調領域T1Gと、青色変調領域T1Bとからなる。なお、走査領域T2は第2実施形態と同様の構成である。
また、赤色変調領域T1Rは、一方の面13cに設けられた赤色強度変調用電極42aと他方の面13dに設けられた赤色強度変調用電極42bに挟まれた領域である。この領域T1Rに赤色光源装置30Rから射出された赤色レーザ光LRが入射するようになっている。同様に、緑色変調領域T1Gは、緑色強度変調用電極43a,43bに挟まれた領域であり、緑色レーザ光LGが入射するようになっており、青色変調領域T1Bは、青色強度変調用電極44a,44bに挟まれた領域であり、青色レーザ光LBが入射するようになっている。これら強度変調用電極42a,42b、43a,43b、44a,44bの電極材料はいずれもPtである。
【0054】
また、赤色強度変調用電極42a,42b間には、図8に示すように、電源Erが設けられており、同様に、緑色強度変調用電極43a,43b間には、電源Egが設けられており、青色強度変調用電極44a,44b間には、電源Ebが設けられている。そして、それぞれの電極42a,42b間、43a,43b間、44a,44b間には、電源Er、Eg、Ebにより光強度に対応した電圧値のパルス信号が印加される。
これにより、図7に示すように、各変調領域T1R,T1G,T1Bに入射したレーザ光LR,LG,LBは、パルス信号の電圧値に応じてそれぞれの偏光面が回転されて、走査領域T2に入射する。そして、走査領域T2において、電源E2により走査用電極12a,12b間に電圧が印加されることで、各変調領域T1R,T1G,T1Bから走査領域T2に入射した赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBは、光学素子13内部で同じ電界を受けて走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられた赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBは、それぞれのレーザ光の偏光面に応じて偏光板45を透過して射出される。
【0055】
図9に、スクリーン35上において走査される赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBを示す。
電気光学素子41から射出された赤色、緑色、青色レーザ光は、図9に示すように、スクリーン35の上端35a側から下端35bに向かって順に青色レーザ光LB、緑色レーザ光LG、赤色レーザ光LRが3本同時に走査される。このとき、1番目の水平走査において、青色レーザ光LB及び緑色レーザ光LGはスクリーン35の上端35aの上方(スクリーン35外)を走査するため、青色光源装置30B,緑色光源装置30Gは消灯している。そして、例えば、2番目の水平走査から、緑色光源装置30Gが点灯され、例えば、3番目の水平走査から青色光源装置30Bが点灯される。
そして、例えば、最後から2番目の水平走査から、赤色レーザ光LRはスクリーン35の下端35bの下方(スクリーン35外)を走査するため、赤色光源装置30Rは消灯され、最後の水平走査において、緑色レーザ光LGはスクリーン35の下端35bの下方(スクリーン35外)を走査するため、緑色光源装置30Gは消灯される。
【0056】
本実施形態に係る画像表示装置40では、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bから射出された赤色,緑色,青色レーザ光は、光学素子13の異なる赤色,緑色,青色変調領域T1R,T1G,T1Bに入射するため、それぞれのレーザ光を個別に変調することが可能となる。これにより、各強度変調用電極42a,42b間、43a,43b間、44a,44b間に印加する電圧を制御することにより、レーザ光ごとに変調量を変化させることが可能となる。したがって、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bから射出されたレーザ光の変調速度が適切な表示に対して十分でない場合でも、一つの素子中で、各光線について十分に高速な変調速度を得ることができ、またそれぞれ異なる変調を掛けることができる。したがって、鮮明な画像をスクリーン35に投射することが可能となる。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る第4実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。
上記第3実施形態の画像表示装置40では、赤色、緑色、青色レーザ光のすべての変調速度を調整するために、各領域にそれぞれのレーザ光を入射させた。本第4実施形態の画像表示装置50では、同一変調領域T1に赤色、緑色、青色レーザ光を入射させ、赤色、緑色、青色のレーザ光変調速度を調整する点において第3実施形態の画像表示装置40と異なる。また、電気光学素子としては第1実施形態で用いた電気光学素子1を用いる。なお、電気光学素子1の射出端面13bに設けられた偏光板15は、赤色レーザ光の波長域、緑色レーザ光の波長域、青色レーザ光の波長域、すべての波長域の光に機能する。
【0058】
画像表示装置50は、図10に示すように、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bの駆動を制御する制御部51が設けられている。
制御部51は、図11のタイミングチャートに示すように、1フレーム(1つのカラー画像を描く期間)ごとに、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光が順に射出するように、赤色光源装置30R、緑色光源装置30G、青色光源装置30Bをこの順に色順次駆動する。
時間tFで赤色、緑色、青色レーザ光により3色の1フレーム分を描画する場合、各レーザ光の1フレームあたりの描画時間はtF/3となる。また、各レーザ光は変調領域T1で変調されるため、各光源装置30R,30G,30Bの制御はON、OFFのみである。
【0059】
制御部51により、まず、赤色光源装置30Rを駆動させ、赤色光源装置30Rから射出される赤色レーザ光により、1フレーム分の描画を行う。すなわち、赤色レーザ光は、変調領域T1において所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。また、赤色光源装置30Rにより描画が行われている間は、制御部51は、緑色光源装置30G及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
【0060】
赤色光源装置30Rにより描画が行われた後、制御部51により、緑色光源装置30Gを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、緑色レーザ光による1フレームの描画を行う。また、緑色光源装置30Gにより描画が行われている間は、制御部51は、赤色光源装置30R及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
次に、緑色光源装置30Gにより描画が行われた後、制御部51により、青色光源装置30Bを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、青色レーザ光による1フレームの描画を行う。また、青色光源装置30Bにより描画が行われている間は、制御部51は、赤色光源装置30R及び緑色光源装置30GをOFFに制御する。
このように、赤色、緑色、青色レーザ光により1フレーム分の各色光ごとの画像が形成され、これらの画像が人間の眼で重ね合わされてフルカラー画像が形成される。
また、図11に示すように、走査用電極12a,12bに印加する電圧波形は図3に示す波形と同じである。また、強度変調用電極11a,11bには、図11に示すように、光強度に対応した電圧信号が印加される。
【0061】
本実施形態に係る画像表示装置50では、制御部51により、赤色、緑色、青色レーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するため、光学素子13の同一変調領域T1にこれらのレーザ光を入射することができる。したがって、第3実施形態の画像表示装置50のように、波長の異なるレーザ光ごとに強度変調用電極を設ける必要が無いため、小型かつ製造コストを抑えることが可能となる。
また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査するため、1ラインごとに走査する場合に比べて、各レーザ光を長い時間照射するため、制御部51による光源装置30R,30G,30Bの駆動制御が簡易となる。また、描画方式による色ずれも起きないので、鮮明な画像をスクリーン35に投射することができる。
【0062】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る第5実施形態について、図10及び図12を参照して説明する。
上記第4実施形態の画像表示装置50では、制御部51により、赤色、緑色、青色レーザ光を1フレームごとに走査するように、光源装置30R,30G,30Bを制御した。本第5実施形態の画像表示装置60では、制御部61により、赤色、緑色、青色レーザ光を1ライン(1つのカラー画像を構成する水平方向の1ライン)ごとに走査するように、光源装置30R,30G,30Bを制御する。
なお、本実施形態の画像表示装置60の概略全体構成図は、第4実施形態の画像表示装置50と同じである。
【0063】
画像表示装置60は、図10に示すように、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bの駆動を制御する制御部61が設けられている。
制御部61は、図12のタイミングチャートに示すように、1ラインごとに、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光が順に射出するように、赤色光源装置30R、緑色光源装置30G、青色光源装置30Bをこの順に色順次駆動する。
時間tLで赤色、緑色、青色レーザ光により3色の1ライン分を描画する場合、各レーザ光の1ラインあたりの描画時間はtL/3となる。各レーザ光は変調領域T1で変調されるため、各光源装置30R,30G,30Bの制御はON、OFFのみである。
【0064】
制御部61により、まず、赤色光源装置30Rを駆動させ、赤色光源装置30Rから射出される赤色レーザ光により、1ライン分の描画を行う。すなわち、変調領域T1において所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。また、赤色光源装置30Rにより描画が行われている間は、制御部51により、緑色光源装置30G及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
【0065】
赤色光源装置30Rにより描画が行われた後、制御部61により、緑色光源装置30Gを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、緑色レーザ光による1ラインの描画を行う。また、緑色光源装置30Gにより描画が行われている間は、制御部51により、赤色光源装置30R及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
次に、緑色光源装置30Gにより描画が行われた後、制御部61により、青色光源装置30Bを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、青色レーザ光による1ラインの描画を行う。また、青色光源装置30Bにより描画が行われている間は、制御部51により、赤色光源装置30R及び緑色光源装置30GをOFFに制御する。
このように、1ラインごとに赤色、緑色、青色レーザ光が人間の眼で重ね合わされて適切な表示となる。
【0066】
本実施形態に係る画像表示装置60では、第4実施形態の画像表示装置50と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態の画像表示装置60では、赤色、緑色、青色レーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に、ラインごとに重ね合わされるように走査するため、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、色の繰り返し周波数が高くなるので、カラーブレイクアップの発生を抑えることができる。また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、ガルバノミラー32の駆動速度、すなわち、スクリーン35の垂直方向の走査速度が遅くて済むため、低速なガルバノミラー32でも良いので、低コスト化が可能である。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態において、光学素子としてKTN結晶を例に挙げて説明したが、これに限ることはなく、屈折率が線形的に変化する素子であれば良い。例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)等の電気光学効果を有する誘電体結晶であっても良いが、LiNbO3等の組成を有する結晶は、KTN結晶に比べて走査偏角が小さく、また、駆動電圧が高いため、KTN結晶を用いることが好ましい。
また、色光合成手段として、クロスダイクロイックプリズムを用いたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学素子を示す要部断面図である。
【図2】図1の強度変調用電極に印加する電圧信号を示す図である。
【図3】図1の走査用電極に印加する電圧信号を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電気光学素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図7】図6に示す電気光学素子を示す斜視図である。
【図8】図6に示す電気光学素子を示す要部断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る走査型光学装置の被投射面に投射されるレーザ光を示す模式図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る走査型光学装置の光源装置の駆動及び電気光学素子に印加する電圧のタイミングチャートである。
【図12】本発明の第5実施形態に係る走査型光学装置の光源装置の駆動及び電気光学素子に印加する電圧のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0069】
T1,T1R,T1G,T1B…変調領域、T2…走査領域、1,20,41…電気光学素子、11a,11b,21a,21b,42a,42b,43a,43b,44a,44b…強度変調用電極、12a,12b,22a,22b…走査用電極、13…光学素子(電気光学結晶)、13a…入射端面、13b…射出端面、15,36,45…偏光板(偏光選択部材)、30,40,50,60…画像表示装置(走査型光学装置)、30R…赤色光源装置(光源装置)、30G…緑色光源装置(光源装置)、30B…青色光源装置(光源装置)、51,61…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学素子及び走査型光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光などのビーム状の光を被投射面上でラスタースキャンして画像を表示する走査型画像表示装置が提案されている。この装置では、レーザ光の供給を停止することで完全な黒を表現できるため、例えば液晶ライトバルブを用いたプロジェクタ等に比べて高コントラストの表示が可能である。また、レーザ光を使用した画像表示装置は、レーザ光が単一波長であるために色純度が高い、コヒーレンスが高いためにビームを整形しやすい(絞りやすい)等の特性を持つことから、高解像度、高色再現性を実現する高画質ディスプレイとして期待されている。また、走査型画像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどと異なり、固定された画素を持たないため、画素数という概念がなく、解像度を変換し易いという利点も持っている。
【0003】
走査型画像表示装置で画像を生成するには、ポリゴンミラー、ガルバノミラーなどのスキャナを用いて光を2次元に走査する必要がある。1個のスキャナを水平方向、垂直方向の2方向に振りつつ光を2次元に走査する方法もあるが、その場合、走査系の構成や制御が複雑になるという問題がある。そこで、光を1次元に走査するスキャナを2組用意し、各々に水平走査と垂直走査を受け持たせるようにした走査型画像表示装置が提案されている。従来は、双方のスキャナともにポリゴンミラーやガルバノミラーを使用するのが普通であり、双方のスキャナに回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いた投写装置が下記の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平1−245780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではポリゴンミラーを用いた装置が紹介されているが画像フォーマットの高解像度化に伴い、スキャン周波数も高くなってきており、ポリゴンミラーやガルバノミラーでは限界を迎えつつある。そこで、近年、高速側のスキャナにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したシステムが発表されている。MEMS技術を利用したスキャナ(以下、単にMEMSスキャナという)とは、シリコン等の半導体材料の微細加工技術を用いて製作するものであり、トーションバネ等で支持したミラーを静電力等により駆動するものである。このスキャナは、静電力とバネの復元力との相互作用でミラーを往復運動させて、光を走査することができる。MEMSスキャナを用いることにより、従来のスキャナに比べて高周波数、大偏角のスキャナを実現することができる。これにより、高解像度の画像を表示することが可能になる。
【0005】
ところで、高速のMEMSスキャナを実現するには、ミラーを共振点で往復運動させなければならないため、光利用効率などを考えると、走査線が視聴者から見て左から右へスキャンした後に、次の走査線は右から左にスキャンする(両側スキャン)システムとなる。
一方、画像信号はCRT(Cathode Ray Tube)をベースに規格が決まっているため、左から右へスキャンした後は短い時間で左に戻り、再度右へスキャンする(片側スキャン)に合わせたフォーマットとなっている。したがって、MEMSスキャナの場合、一部のデータは入力された信号の順番を反転して表示しなければならないため、信号の制御が複雑となる。
そこで、MEMSスキャン以外の走査手段としては、電気光学(EO:Electro Optic)スキャナが考えられる。EOスキャナとはEO結晶に電圧を加えることにより、その結晶中を透過する光の進行方向を変える素子である。このようにEOスキャナでは、電圧によりスキャン角を制御できるので、CRTと同様に片側スキャンによる描画が可能となる。
【0006】
また、EOスキャナとは、EO結晶に電圧を印加することにより電子が注入され電子分布に偏りが生じる。そのため、カー効果による屈折率変化にも分布が生じ、入射された光が屈折率の高い側に曲がっていくので、光の走査を可能にしている。また、EO結晶内部の屈折率分布の傾きが、電子注入量、つまり、印加電圧によるため、印加電圧を変化させることで、EO結晶から射出される光のスキャン角度を制御することができる。
【0007】
ところで、EOスキャナを用いた表示装置において、画像を表現するために各画素に対応する位置で強度を変調させる必要がある。SVGA(Super Video Graphics Array)クラスの表示を行うと、約30MHz以上の変調速度が必要である。しかしながら、レーザ光源の種類によっては十分な変調速度が得られないという問題がある。また、電気光学素子や音響光学素子を用いた外部変調器をEOスキャナとは別に設けることも考えられるが、素子点数が増えることが高コスト化を招き、さらには余分に容積が大きくなり大型化してしまう等の問題もある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高速で、大きな偏角を得ることができるとともに、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子及び走査型光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の電気光学素子は、複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が生じる電気光学結晶と、該電気光学結晶の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極と、前記電気光学結晶の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極と、前記電気光学結晶のレーザ光の入射端面及び射出端面のうち少なくとも前記射出端面側に設けられ、前記電気光学結晶から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気光学素子では、強度変調用電極及び走査用電極に電圧を印加する。これにより、強度変調用電極により電圧が印加された電気光学結晶の領域には、複屈折性が生じるため、この領域に入射した光は、印加された電圧値に応じて偏光面が回転する。また、走査用電極により電圧が印加された電気光学結晶の領域に入射した光は、内部に生じる電界により、電気光学結晶の屈折率分布が一方向に向かって連続的に増加あるいは減少する。このため、電気光学結晶の内部に生じる電界と垂直な方向に進行するレーザ光は、屈折率が低い側から高い側に向かって曲げられる。そして、電気光学結晶の射出端面に設けられた偏光選択部材により、電気光学結晶から射出される光は偏光面に応じて特定の振動方向の光が透過される。このように、電気光学結晶に入射した光は変調されて射出される。
【0011】
したがって、電気光学結晶に強度変調用電極及び走査用電極を設けることにより、1つの電気光学結晶で入射した光の強度を変調し、走査することが可能となる。したがって、光の変調速度が十分に取れない、例えば、波長変換素子を用いた光源装置から射出された光が入射しても、電気光学結晶の強度変調用電極に印加する電圧を制御することにより、変調速度を速くすることが可能となる。
すなわち、音響光学素子を用いた外部変調器と同等の変調が可能となり、高速、かつ大偏角の電気光学素子を得ることが可能となる。さらには、他の光学部材を用いて変調速度を上げるのではなく、光を走査する電気光学結晶を共有し変調速度を速くしているため、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子を提供することが可能となる。
【0012】
また、本発明の電気光学素子は、前記電気光学結晶には、入射端面から光の進行方向に向かって、前記強度変調用電極に挟まれた変調領域と、前記走査用電極に挟まれた走査領域とが順に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る電気光学素子では、まず、電気光学結晶の入射端面から入射した光は、変調領域において変調される。その後、変調された光が走査領域に入射し走査される。このとき、走査領域に入射した光は、走査領域の入射端面に対して垂直方向から入射される。これにより、本発明とは逆に、走査領域と変調領域とが順に設けられている場合、走査領域から射出された光は変調領域に斜め方向から入射するため、変調領域を進行する光において所定の偏光面に回転しないおそれが生じる。したがって、本発明のように、変調領域と走査領域とをこの順に設けることにより、電気光学結晶に入射した光をより精度良く走査変調することが可能となる。
【0014】
また、本発明の電気光学素子は、前記強度変調用電極と前記走査用電極との材質が異なることが好ましい。
本発明に係る電気光学素子では、強度変調用電極と走査用電極との材質が異なるため、電気光学結晶において複屈折性と屈折率分布との両特性を確実に引き出すことができる。したがって、電気光学結晶に入射した光の強度変調と偏向との両方を確実に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の電気光学素子は、前記電気光学結晶がKTa1−xNbxO3の組成を有することが好ましい。
【0016】
本発明に係る電気光学素子では、電気光学結晶が、高い誘電率を有する誘電体材料であるKTa1−xNbxO3(タンタル酸ニオブ酸カリウム)の組成を有する結晶である(以下、KTN結晶と称す)。KTN結晶は、立方晶から正方晶さらに菱面体晶へと温度により結晶系を変える性質を有しており、立方晶においては、大きい2次の電気光学効果を有することが知られている。特に、立方晶から正方晶への相転移温度に近い領域では、比誘電率が発散する現象が起こり、比誘電率の自乗に比例する2次の電気光学効果はきわめて大きい値となる。したがって、KTa1−xNbxO3の組成を有する結晶は、他の結晶に比べて屈折率を変化させる際に必要になる印加電圧を低く抑えることが可能となる。これにより、省電力化を実現可能な電気光学素子を提供することが可能となる。
【0017】
本発明の走査型光学装置は、レーザ光を射出する光源装置と、該光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調するとともに、被投射面に向けて走査する上記の電気光学素子を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る走査型光学装置では、光源装置から射出した光は、電気光学素子により、光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調されるとともに、被投射面に向けて走査される。このとき、上述したように、強度変調が可能であり、偏角の大きい電気光学素子を用いることにより、高解像度に対応可能な走査手段を用いた走査型光学装置となる。したがって、装置全体の小型化を図りつつ、画質の劣化を生じさせることなく画像をより鮮明に被投射面に表示できる走査型光学装置を得ることが可能となる。
【0019】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が複数の異なる波長のレーザ光を射出し、前記偏光選択部材が、前記複数のレーザ光の波長域のうち特定の波長域のレーザ光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させ、前記特定の波長域外のレーザ光を振動方向に関わらず透過させることが好ましい。
【0020】
本発明に係る走査型光学装置では、例えば、偏光選択部材として変調速度が遅い光の波長域に機能するものを用いる。このように、偏光選択部材は変調速度が遅い光の波長域に機能するため、電気光学結晶から射出されるレーザ光は、偏光選択部材を透過することにより、この変調速度が遅い光のみ変調させることになる。したがって、複数の異なる波長のレーザ光の変調速度をいずれも同じになるように調整することができるので、鮮明な画像を被投射面に投射することが可能となる。
【0021】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光がそれぞれ前記電気光学結晶の異なる領域に入射され、前記異なる領域ごとに前記強度変調用電極が設けられているこが好ましい。
【0022】
本発明に係る走査型光学装置では、光源装置から射出された異なる波長のレーザ光は、それぞれ電気光学結晶の異なる領域に入射される。そして、異なる領域ごとに、強度変調用電極が設けられているため、各強度変調用電極に印加する電圧を制御することにより、レーザ光ごとに変調量を変化させることが可能となる。したがって、複数のレーザ光の全ての変調速度が適切な表示をするのに満たない場合に、複数のレーザ光それぞれについて、適切な表示に必要な高速かつ異なる変調をかけることができる。したがって、鮮明な画像を被投射面に投射することが可能となる。
【0023】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えるが好ましい。
【0024】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、前記複数のレーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0025】
これら本発明に係る走査型光学装置では、制御部が光源装置の駆動を制御することにより、異なる波長のレーザ光を1フレームごとあるいは1ラインごとに順次走査することができるため、電気光学結晶の同一領域に異なる波長のレーザ光を入射することができる。したがって、異なる波長のレーザ光ごとに強度変調用電極を設ける必要が無いため、小型かつ製造コストを抑えることが可能となる。
【0026】
また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合、1ラインごとに走査する場合に比べて、各レーザ光を長い時間照射するため、制御部による光源装置の駆動制御が簡易となる。また、描画方式による色ずれも起きないので、鮮明な画像を被投射面に投射することができる。
また、異なる波長のレーザ光を1ラインごとに走査する場合、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、色の繰り返し周波数が高くなるので、カラーブレイクアップの発生を抑えることができる。また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、低速側の走査手段の駆動速度、すなわち、被投射面の垂直方向の走査速度が遅くて済むため、低速な走査手段でも良いので、低コスト化が可能である。
【0027】
また、本発明の走査型光学装置は、前記電気光学素子が、水平走査を行うことが好ましい。
【0028】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子が水平走査を行い、垂直走査として例えば、安価なポリゴンミラー等を用いることにより、安価かつ高性能な走査型光学装置を実現することができる。
なお、ここで言う「水平走査」とは、2方向の走査のうち、高速側の走査であり、垂直走査とは低速側の走査である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る電気光学素子及び走査型光学装置の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0030】
[第1実施形態]
電気光学素子1は、複屈折性により入射した光を変調するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が変化することによって、内部を進行するレーザ光を走査する2つの機能を兼ね備えたものである。具体的には、電気光学素子1は、図1に示すように、一対の強度変調用電極11a,11bと、一対の走査用電極12a,12bと、光学素子(電気光学結晶)13とを備えている。また、強度変調用電極11a,11bは光学素子13を挟んで対向配置されている。同様に、走査用電極12a,12bも光学素子13を挟んで対向配置されている。
また、電気光学素子1には、図1の矢印Aに示すように、強度変調用電極11a,11bの配列方向に振動するレーザ光が入射する。
【0031】
光学素子13は、電気光学効果を有する誘電体結晶(電気光学結晶)であり、本実施形態ではKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1−xNbxO3)の組成を有する結晶材料で構成されている。また、光学素子13は、直方体形状であり、入射端面13aと反対の射出端面13bに接触して偏光板(偏光選択部材)15が設けられている。
【0032】
偏光板15は、無機材料からなり、例えばガラスなどの基板上にアルミニウムなどの金属で構成されるワイヤ(細線)をストライプ状に形成したワイヤグリッド型偏光板である。そして、偏光板15は、上記ワイヤの延在方向とほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を透過させると共に、これとほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を反射する構成となっている。
また、偏光板15の偏光方向(透過軸)は、入射するレーザ光の偏光方向に直交する方向(特定の振動方向)となっている。これにより、強度変調用電極11a,11b間に電圧が印加されていない状態で黒表示が行われる(ノーマリーブラック表示)。
【0033】
また、強度変調用電極11a,11bは、図1に示すように、光学素子13の一方の面13cと、一方の面13cと反対の他方の面13dとにそれぞれ設けられている。また、走査用電極12a,12bも、強度変調用電極11a,11bと同様に、光学素子13の一方の面13cと、他方の面13dとにそれぞれ設けられている。
光学素子13の一方の面13c側の強度変調用電極11a,走査用電極12aは一方の面13cを略2等分した領域に設けられている。同様に、光学素子13の他方の面13d側の強度変調用電極11b,走査用電極12bも他方の面13dを略2等分した領域に設けられている。
そして、光学素子13の一方の面13cに設けられた強度変調用電極11aと走査用電極12aとは、所定の間隔をあけてレーザ光の進行方向に向かって隣接して配置されている。すなわち、光学素子13の一方の面13cの入射端面13a側に強度変調用電極11aが配置され、他方の面13dの射出端面13b側に走査用電極12aが設けられている。
また、光学素子13の他方の面13dにも、一方の面13cと同様に、光学素子13の入射端面13a側に強度変調用電極11bが配置され、射出端面13b側に走査用電極12bが設けられている。
これらにより、光学素子13は、強度変調用電極11a,11bに挟まれた領域が変調領域T1と、走査用電極12a,12bに挟まれた領域が走査領域T2とが順に設けられた構成になっている。
【0034】
まず、強度変調用電極11a,11bについて説明する。
強度変調用電極11a,11bの材料としては、光学素子13の内部にカー効果を誘発する材料を選択する。本実施形態では、強度変調用電極11a,11bの電極材料として、ショットキーバリアの大きい電極材料、例えば、Ptを用いる。なお、Ptは一例に過ぎない。
そして、強度変調用電極11a,11b間には電圧を印加する電源E1が接続されている。また、強度変調用電極11a,11bは、光学素子13内を進行するレーザ光Lの進行方向の寸法がほぼ同じである。
【0035】
次に、走査用電極12a,12bについて説明する。
走査用電極12a,12bには、図1に示すように、光学素子13の内部に空間電荷によって屈折率分布が制御される効果(空間電荷制御モード電気光学効果)を誘発する材料を選択する。本実施形態では、走査用電極12a,12bの電極材料として、光学素子13に電流が注入されやすいTiを用いる。なお、走査用電極12a,12bの電極材料はTiに限らず、光学素子13とオーミックコンタクトが取れ、ショットキーバリアを下げる効果がある材質であれば良い。
そして、走査用電極12a,12b間には電圧を印加する電源E2が接続されている。また、走査用電極12a,12bは、光学素子13内を進行するレーザ光Lの進行方向の寸法がほぼ同じである。このように、電源E1及び電源E2により、強度変調用電極11a,11b、走査用電極12a,12bにはそれぞれ独立に電圧が印加できるようになっている。
【0036】
次に、変調領域T1に入射した光について説明する。
変調領域T1には、ショットキーバリアの大きい電極材料Ptにより電圧が印加されるため、入射したレーザ光はカー効果を支配的に受ける。これにより、強度変調用電極11a,11b間に印加される電圧値に応じて偏光面が回転する。
具体的には、強度変調用電極11a,11b間には、電源E1により、例えば図2に示すような、光強度に対応した電圧値のパルス信号が印加される。これにより、変調領域T1に入射したレーザ光は、パルス信号の電圧値に応じて偏光面が回転されて、走査領域T2の入射端面T2aに入射する。走査領域T2に入射したレーザ光は、走査領域T2内において偏光面が維持されて光学素子13の射出端面13bに設けられた偏光板15から射出される。このとき、偏光板15では、入射した光のうち当該偏光板15の透過軸と一致しない成分が反射され、透過軸と合う成分の光が偏光板15を透過し射出される。このようにして、光学素子13に入射した光の強度変調が行われる。
【0037】
次に、走査領域T2に入射した光について説明する。
走査領域T2に入射したレーザ光は、空間電荷制御モード電気光学効果を支配的に受けるので、走査用電極12a,12b間に印加される電圧値に応じて、走査領域T2に生じる電界の強度によって屈折する。
走査用電極12a,12b間には、電源E2により、例えば図3に示すように、鋸歯状の波形の電圧が印加される。なお、走査用電極12bは0Vに固定されている。
走査用電極12aに印加される初期値S1の電圧を走査用電極12aに印加すると、図1に示すように、光学素子13を進行するレーザ光L1は直進する。また、走査用電極12aに印加する電圧値を、図3の電圧の波形に示すように徐々に上げると光学素子の屈折率勾配が大きくなり、電圧値に応じた偏角で射出される。そして、走査用電極12aに最大の電圧値S2を印加すると、光学素子13を進行するレーザ光L2は、図1に示すように、光学素子13内において大きく偏向して射出される。
【0038】
このように、図3に示す波形の電圧を走査用電極12aに印加することで、変調領域T1から射出されたレーザ光Lは、図1に示すように、走査領域T2によりレーザ光L1からレーザ光L2までのスキャン範囲(走査範囲)内を走査されるようになっている。すなわち、光学素子13の入射端面13aから入射した光は、変調領域T1において直進し、所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。
【0039】
また、本実施形態では、レーザ光を片側のみ走査させるため、図1に示すように、光学素子13の入射端面13aの一方の面13c側からレーザ光を入射させる。つまり、本実施形態では、光学素子13の屈折率分布により、光学素子13に入射したレーザ光は他方の面13d側に曲げられるため、光学素子13の一方の面13c側からレーザ光を入射させることにより、スキャン範囲を大きく取ることが可能となっている。
【0040】
本実施形態に係る電気光学素子1では、光学素子13に強度変調用電極11a,11b及び走査用電極12a,12bを設けることにより、1つの光学素子13で入射したレーザ光の強度を変調し、走査することが可能となる。したがって、光の変調速度が十分に取れない光源から射出された光が入射しても、光学素子13の強度変調用電極11a,11bに印加する電圧を制御することにより変調速度を速くすることが可能となる。
すなわち、音響光学素子を用いた外部変調器と同等の変調(数百MHz以上)が可能であり、高速、大偏角の電気光学素子1を得ることが可能となる。さらには、他の光学部材を用いて変調速度を上げるのではなく、光を走査する光学素子13を用いて変調速度を速くしているため、小型、かつ、コストを抑えた電気光学素子1を提供することが可能となる。
つまり、本実施形態の電気光学素子1は、高速で、大きな偏角を得ることができるとともに、小型、かつ、コストを抑えることが可能である。
【0041】
また、偏光板15として、ワイヤグリッド型偏光板を用いているため、誘電体多層膜に比べ、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じることのない偏光変換光学素子を得ることができる。すなわち、偏光分離面に入射する光の入射角度依存性を低減することができるため、光源から射出された光の光量を落とすことなく透過及び反射面に反射させることが可能となり、光利用効率を高めることができる。
また、光学素子13は、入射端面13aからレーザ光の進行方向に向かって、変調領域T1と、走査領域T2とが順に設けられている構成にしたが、走査領域T2、変調領域T1の順に設けられた光学素子であっても良い。
しかしながら、本実施形態では、変調領域T1において、入射した光を所定の偏光面に回転させた後、走査領域T2において走査しているため、走査領域T2の入射端面T2aに対して垂直方向からレーザ光を入射させることが可能となる。これにより、変調領域T1の入射端面T1aに対して、斜め方向からレーザ光が入射する場合(走査領域T2、変調領域T1の順の場合)に比べて、光学素子13に入射した光をより精度良く変調することが可能となる。
【0042】
さらには、外部変調器を用いた場合、外部変調器と、別途設けられた走査手段とのアライメントが必要であるが、本実施形態の電気光学素子1では、アライメントの必要がないため、組み立てが簡易となる。
また、強度変調用電極11a,11b間に電圧が印加されていない状態で黒表示が行われる(ノーマリーブラック表示)ため、電気光学素子1に電圧が印加されていない状態において、万が一電気光学素子1にレーザ光が入射され続けたとしても、電気光学素子1から外部に光が照射させるのを確実に防止することが可能となる。
【0043】
なお、光学素子13の射出端面13bに接触して偏光板15が設けられた構成にしたが、間隔をあけて射出端面13bから射出された光が入射可能な位置に偏光板15を配置しても良い。
また、電気光学素子1に入射する光が所定の偏光方向を有している場合は、上述したように光学素子13の入射端面13aには偏光板15を用いなくても良いが、より高い消光比(コントラスト)が必要である場合は、入射端面13a側にも偏光板を設けることが望ましい。
また、偏光板15として、ワイヤグリッド型偏光板を用いたが、これに限るものではなく、例えば、偏光板15を無機材料からなるものを用いたが、有機材料からなるものを用いることも可能である。
また、透過軸と一致しない成分が反射されるような偏光板を採用したが、透過軸と一致しない成分が偏光板により吸収されるような偏光板を採用しても良い。
また、光学素子13に入射するレーザ光として、強度変調用電極11a,11bの配列方向に振動するレーザ光を用いたが、この方向に限るのもではない。また、偏光板15としては、光学素子13に入射するレーザ光の偏光方向に応じた透過軸を有するものを用いれば良い。
【0044】
さらに、1つの光学素子13において変調領域T1と走査領域T2とを別々に設けたが、変調領域T1と走査領域T2とが重なる電気光学素子20であっても良い。すなわち、電気光学素子20は、図4に示すように、光学素子13の互いに対向する一方の面13cと他方の面13dとに強度変調用電極21a,21bが設けられ、光学素子13の一方の面13cと垂直方向で互いに対向する面13e,13fに走査用電極22a,22bが設けられている。これにより、同一領域で、入射したレーザ光の強度変調及び走査が行われる。
この構成では、変調領域T1と走査領域T2とが同一領域であるため、光学素子13の素子長を短くすることができるので、小型、かつ、低コスト化を図ることが可能となる。さらに、光学素子13の素子長を短くすることで、光学素子13に入射してから射出されるまでのレーザ光の射出時間が短くなるため、光学素子13から射出される光のスキャン速度を速くすることが可能となる。
また、強度変調用電極11a,走査用電極12aは、光学素子13の略2等分した領域に設けられているとしたが、これに限るものではない。
また、電気光学素子1は、レーザ光を片側のみ走査させたが、光学素子13に入射した光を当該光を中心に両側に走査させる両側走査であっても良い。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図5を参照して説明する。
本実施形態では、上記第1実施形態の電気光学素子1を走査手段として備える画像表示装置(走査型光学装置)30について説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係る電気光学素子1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
【0046】
本実施形態に係る画像表示装置30は、図5に示すように、中心波長が630nmである赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(光源装置)30Rと、中心波長が530nmである緑色のレーザ光を射出する緑色光源装置(光源装置)30Gと、中心波長が450nmである青色のレーザ光を射出する青色光源装置(光源装置)30Bと、クロスダイクロイックプリズム31と、クロスダイクロイックプリズム(色合成手段)31から射出されたレーザ光をスクリーン(被投射面)35の水平方向に走査する電気光学素子1と、電気光学素子1から射出されたレーザ光をスクリーン35の垂直方向に走査するガルバノミラー32と、ガルバノミラー32から走査されたレーザ光が投影されるスクリーン35とを備えている。
また、緑色光源装置30Gは、半導体レーザ(LD)及び波長変換素子を有するDPSS(Diode Pomping Solid State)レーザによって構成され、半導体レーザによって射出されたレーザ光は、波長変換素子により中心波長が530nmである緑色のレーザ光に変換される。
本実施形態で用いられる偏光板(偏光選択部材)36は、緑色のレーザ光の波長域、すなわち、490nm〜570nmの波長域の光に機能する。すなわち、偏光板36は、緑色のレーザ光のうち特定の偏光方向の偏光光を透過させ、これとほぼ直交する偏光方向を有する偏光光を反射する構成となっている。これにより、偏光板36は、490nm〜570nmの波長域外の光には機能しないため、赤色レーザ光及び青色レーザ光は変調されずに透過する。
【0047】
次に、以上の構成からなる本実施形態の画像表示装置30を用いて、画像をスクリーン35に投射する方法について説明する。
各光源装置30R,30G,30Bから射出されたレーザ光は、クロスダイクロイックプリズム31で合成され電気光学素子1に入射する。光学素子13に入射した赤色、緑色、青色レーザ光は、変調領域T1において、強度変調用電極11a,11b間に印加される電圧に応じていずれの色光も偏光面が回転する。そして、変調領域T1から走査領域T2に入射した光は、スクリーン35の水平方向に走査され、ガルバノミラー32により垂直方向に走査されてスクリーン35に投影される。
このとき、赤色、緑色、青色レーザ光は、変調領域T1を通過することにより、いずれの色光も偏光面が回転しているが、電気光学素子1の偏光板36を透過する際、緑色のレーザ光のみ偏光板36の偏光方向と合わない成分が反射され、偏光方向と合う成分の光が偏光板36を透過し射出される。このようにして、光学素子13に入射した緑色のレーザ光の強度変調が行われる。
また、赤色、青色レーザ光は、光源装置30R,30Bに印加する電流または電圧を制御することにより、強度変調を行う。
【0048】
本実施形態に係る画像表示装置30では、緑色光源装置30Gが波長変換素子を用いているため、赤色光源装置30R,青色光源装置30Bの変調速度に比べて緑色光源装置30Gの変調速度が遅い。しかしながら、偏光板36が、緑色のレーザ光の波長域の光に機能するため、光学素子13から射出されるレーザ光は、緑色のレーザ光のみ変調される。したがって、強度変調用電極11a,11b間に印加する電圧を制御することにより、緑色のレーザ光の変調速度を速くすることができる。これにより、複数の異なる波長のレーザ光を射出する光源装置30R,30G,30Bの変調速度をいずれも同じにすることができるので、同じタイミングで同じ領域を照射することができる。したがって、鮮明な画像をスクリーン35に投射することが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置30では、走査手段として偏角の大きい電気光学素子1を用いているため、SVGA(Super Video Graphics Array)クラス等の解像度に対応可能となる。したがって、省電力化を図りつつ、画質の劣化を生じさせることなく、画像をより鮮明にスクリーンに表示させることができる。
しかも、電気光学素子1からなる走査手段は、MEMSスキャナより高速に走査することができるため、本実施形態のように、水平走査として電気光学スキャナを用い、走査自由度が高い垂直走査としてガルバノミラー32(動くことにより光を反射させる可動型の走査手段)を用いることにより、高性能な画像表示装置の実現が期待できる。なお、ガルバノミラー32に代えて、可動型の走査手段の一つである安価なポリゴンミラーにより走査を行っても良い。安価なポリゴンミラーを使用することで、コストを抑えつつ高性能な画像表示を行うことが可能となる。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態について、図6から図9を参照して説明する。
本実施形態に係る画像表示装置40では、電気光学素子41の構成において第2実施形態と異なる。
【0051】
すなわち、第2実施形態では、緑色光源装置30Gの変調速度のみ調整したが、本第3実施形態の画像表示装置40は、赤色光源装置30R,緑色光源装置30G,青色光源装置30Bから射出される赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光のすべての変調が調整可能な電気光学素子41を備えている。
【0052】
電気光学素子41は、図6に示すように、光学素子13の射出端面13bに接触して偏光板(偏光選択部材)45が設けられている。この偏光板45は、赤色レーザ光の波長域、緑色レーザ光の波長域、青色レーザ光の波長域、すべての波長域の光に機能する。
【0053】
電気光学素子41は、図7に示すように、変調領域T1と走査領域T2とからなる。そして、変調領域T1は、図8に示すように、光学素子13の幅方向に沿って略3等分された赤色変調領域T1Rと、緑色変調領域T1Gと、青色変調領域T1Bとからなる。なお、走査領域T2は第2実施形態と同様の構成である。
また、赤色変調領域T1Rは、一方の面13cに設けられた赤色強度変調用電極42aと他方の面13dに設けられた赤色強度変調用電極42bに挟まれた領域である。この領域T1Rに赤色光源装置30Rから射出された赤色レーザ光LRが入射するようになっている。同様に、緑色変調領域T1Gは、緑色強度変調用電極43a,43bに挟まれた領域であり、緑色レーザ光LGが入射するようになっており、青色変調領域T1Bは、青色強度変調用電極44a,44bに挟まれた領域であり、青色レーザ光LBが入射するようになっている。これら強度変調用電極42a,42b、43a,43b、44a,44bの電極材料はいずれもPtである。
【0054】
また、赤色強度変調用電極42a,42b間には、図8に示すように、電源Erが設けられており、同様に、緑色強度変調用電極43a,43b間には、電源Egが設けられており、青色強度変調用電極44a,44b間には、電源Ebが設けられている。そして、それぞれの電極42a,42b間、43a,43b間、44a,44b間には、電源Er、Eg、Ebにより光強度に対応した電圧値のパルス信号が印加される。
これにより、図7に示すように、各変調領域T1R,T1G,T1Bに入射したレーザ光LR,LG,LBは、パルス信号の電圧値に応じてそれぞれの偏光面が回転されて、走査領域T2に入射する。そして、走査領域T2において、電源E2により走査用電極12a,12b間に電圧が印加されることで、各変調領域T1R,T1G,T1Bから走査領域T2に入射した赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBは、光学素子13内部で同じ電界を受けて走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられた赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBは、それぞれのレーザ光の偏光面に応じて偏光板45を透過して射出される。
【0055】
図9に、スクリーン35上において走査される赤色、緑色、青色レーザ光LR,LG,LBを示す。
電気光学素子41から射出された赤色、緑色、青色レーザ光は、図9に示すように、スクリーン35の上端35a側から下端35bに向かって順に青色レーザ光LB、緑色レーザ光LG、赤色レーザ光LRが3本同時に走査される。このとき、1番目の水平走査において、青色レーザ光LB及び緑色レーザ光LGはスクリーン35の上端35aの上方(スクリーン35外)を走査するため、青色光源装置30B,緑色光源装置30Gは消灯している。そして、例えば、2番目の水平走査から、緑色光源装置30Gが点灯され、例えば、3番目の水平走査から青色光源装置30Bが点灯される。
そして、例えば、最後から2番目の水平走査から、赤色レーザ光LRはスクリーン35の下端35bの下方(スクリーン35外)を走査するため、赤色光源装置30Rは消灯され、最後の水平走査において、緑色レーザ光LGはスクリーン35の下端35bの下方(スクリーン35外)を走査するため、緑色光源装置30Gは消灯される。
【0056】
本実施形態に係る画像表示装置40では、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bから射出された赤色,緑色,青色レーザ光は、光学素子13の異なる赤色,緑色,青色変調領域T1R,T1G,T1Bに入射するため、それぞれのレーザ光を個別に変調することが可能となる。これにより、各強度変調用電極42a,42b間、43a,43b間、44a,44b間に印加する電圧を制御することにより、レーザ光ごとに変調量を変化させることが可能となる。したがって、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bから射出されたレーザ光の変調速度が適切な表示に対して十分でない場合でも、一つの素子中で、各光線について十分に高速な変調速度を得ることができ、またそれぞれ異なる変調を掛けることができる。したがって、鮮明な画像をスクリーン35に投射することが可能となる。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る第4実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。
上記第3実施形態の画像表示装置40では、赤色、緑色、青色レーザ光のすべての変調速度を調整するために、各領域にそれぞれのレーザ光を入射させた。本第4実施形態の画像表示装置50では、同一変調領域T1に赤色、緑色、青色レーザ光を入射させ、赤色、緑色、青色のレーザ光変調速度を調整する点において第3実施形態の画像表示装置40と異なる。また、電気光学素子としては第1実施形態で用いた電気光学素子1を用いる。なお、電気光学素子1の射出端面13bに設けられた偏光板15は、赤色レーザ光の波長域、緑色レーザ光の波長域、青色レーザ光の波長域、すべての波長域の光に機能する。
【0058】
画像表示装置50は、図10に示すように、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bの駆動を制御する制御部51が設けられている。
制御部51は、図11のタイミングチャートに示すように、1フレーム(1つのカラー画像を描く期間)ごとに、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光が順に射出するように、赤色光源装置30R、緑色光源装置30G、青色光源装置30Bをこの順に色順次駆動する。
時間tFで赤色、緑色、青色レーザ光により3色の1フレーム分を描画する場合、各レーザ光の1フレームあたりの描画時間はtF/3となる。また、各レーザ光は変調領域T1で変調されるため、各光源装置30R,30G,30Bの制御はON、OFFのみである。
【0059】
制御部51により、まず、赤色光源装置30Rを駆動させ、赤色光源装置30Rから射出される赤色レーザ光により、1フレーム分の描画を行う。すなわち、赤色レーザ光は、変調領域T1において所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。また、赤色光源装置30Rにより描画が行われている間は、制御部51は、緑色光源装置30G及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
【0060】
赤色光源装置30Rにより描画が行われた後、制御部51により、緑色光源装置30Gを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、緑色レーザ光による1フレームの描画を行う。また、緑色光源装置30Gにより描画が行われている間は、制御部51は、赤色光源装置30R及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
次に、緑色光源装置30Gにより描画が行われた後、制御部51により、青色光源装置30Bを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、青色レーザ光による1フレームの描画を行う。また、青色光源装置30Bにより描画が行われている間は、制御部51は、赤色光源装置30R及び緑色光源装置30GをOFFに制御する。
このように、赤色、緑色、青色レーザ光により1フレーム分の各色光ごとの画像が形成され、これらの画像が人間の眼で重ね合わされてフルカラー画像が形成される。
また、図11に示すように、走査用電極12a,12bに印加する電圧波形は図3に示す波形と同じである。また、強度変調用電極11a,11bには、図11に示すように、光強度に対応した電圧信号が印加される。
【0061】
本実施形態に係る画像表示装置50では、制御部51により、赤色、緑色、青色レーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するため、光学素子13の同一変調領域T1にこれらのレーザ光を入射することができる。したがって、第3実施形態の画像表示装置50のように、波長の異なるレーザ光ごとに強度変調用電極を設ける必要が無いため、小型かつ製造コストを抑えることが可能となる。
また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査するため、1ラインごとに走査する場合に比べて、各レーザ光を長い時間照射するため、制御部51による光源装置30R,30G,30Bの駆動制御が簡易となる。また、描画方式による色ずれも起きないので、鮮明な画像をスクリーン35に投射することができる。
【0062】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る第5実施形態について、図10及び図12を参照して説明する。
上記第4実施形態の画像表示装置50では、制御部51により、赤色、緑色、青色レーザ光を1フレームごとに走査するように、光源装置30R,30G,30Bを制御した。本第5実施形態の画像表示装置60では、制御部61により、赤色、緑色、青色レーザ光を1ライン(1つのカラー画像を構成する水平方向の1ライン)ごとに走査するように、光源装置30R,30G,30Bを制御する。
なお、本実施形態の画像表示装置60の概略全体構成図は、第4実施形態の画像表示装置50と同じである。
【0063】
画像表示装置60は、図10に示すように、赤色,緑色,青色光源装置30R,30G,30Bの駆動を制御する制御部61が設けられている。
制御部61は、図12のタイミングチャートに示すように、1ラインごとに、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光が順に射出するように、赤色光源装置30R、緑色光源装置30G、青色光源装置30Bをこの順に色順次駆動する。
時間tLで赤色、緑色、青色レーザ光により3色の1ライン分を描画する場合、各レーザ光の1ラインあたりの描画時間はtL/3となる。各レーザ光は変調領域T1で変調されるため、各光源装置30R,30G,30Bの制御はON、OFFのみである。
【0064】
制御部61により、まず、赤色光源装置30Rを駆動させ、赤色光源装置30Rから射出される赤色レーザ光により、1ライン分の描画を行う。すなわち、変調領域T1において所定の偏光面に回転された後、走査領域T2に入射し、走査用電極12b側に曲げられる。そして、走査領域T2において曲げられたレーザ光は、偏光面に応じて偏光板15を透過して射出される。また、赤色光源装置30Rにより描画が行われている間は、制御部51により、緑色光源装置30G及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
【0065】
赤色光源装置30Rにより描画が行われた後、制御部61により、緑色光源装置30Gを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、緑色レーザ光による1ラインの描画を行う。また、緑色光源装置30Gにより描画が行われている間は、制御部51により、赤色光源装置30R及び青色光源装置30BをOFFに制御する。
次に、緑色光源装置30Gにより描画が行われた後、制御部61により、青色光源装置30Bを駆動させ、赤色レーザ光と同様に、青色レーザ光による1ラインの描画を行う。また、青色光源装置30Bにより描画が行われている間は、制御部51により、赤色光源装置30R及び緑色光源装置30GをOFFに制御する。
このように、1ラインごとに赤色、緑色、青色レーザ光が人間の眼で重ね合わされて適切な表示となる。
【0066】
本実施形態に係る画像表示装置60では、第4実施形態の画像表示装置50と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態の画像表示装置60では、赤色、緑色、青色レーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に、ラインごとに重ね合わされるように走査するため、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、色の繰り返し周波数が高くなるので、カラーブレイクアップの発生を抑えることができる。また、異なる波長のレーザ光を1フレームごとに走査する場合に比べて、ガルバノミラー32の駆動速度、すなわち、スクリーン35の垂直方向の走査速度が遅くて済むため、低速なガルバノミラー32でも良いので、低コスト化が可能である。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態において、光学素子としてKTN結晶を例に挙げて説明したが、これに限ることはなく、屈折率が線形的に変化する素子であれば良い。例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)等の電気光学効果を有する誘電体結晶であっても良いが、LiNbO3等の組成を有する結晶は、KTN結晶に比べて走査偏角が小さく、また、駆動電圧が高いため、KTN結晶を用いることが好ましい。
また、色光合成手段として、クロスダイクロイックプリズムを用いたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学素子を示す要部断面図である。
【図2】図1の強度変調用電極に印加する電圧信号を示す図である。
【図3】図1の走査用電極に印加する電圧信号を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電気光学素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図7】図6に示す電気光学素子を示す斜視図である。
【図8】図6に示す電気光学素子を示す要部断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る走査型光学装置の被投射面に投射されるレーザ光を示す模式図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る走査型光学装置の光源装置の駆動及び電気光学素子に印加する電圧のタイミングチャートである。
【図12】本発明の第5実施形態に係る走査型光学装置の光源装置の駆動及び電気光学素子に印加する電圧のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0069】
T1,T1R,T1G,T1B…変調領域、T2…走査領域、1,20,41…電気光学素子、11a,11b,21a,21b,42a,42b,43a,43b,44a,44b…強度変調用電極、12a,12b,22a,22b…走査用電極、13…光学素子(電気光学結晶)、13a…入射端面、13b…射出端面、15,36,45…偏光板(偏光選択部材)、30,40,50,60…画像表示装置(走査型光学装置)、30R…赤色光源装置(光源装置)、30G…緑色光源装置(光源装置)、30B…青色光源装置(光源装置)、51,61…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が生じる電気光学結晶と、
該電気光学結晶の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極と、
前記電気光学結晶の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極と、
前記電気光学結晶のレーザ光の入射端面及び射出端面のうち少なくとも前記射出端面側に設けられ、前記電気光学結晶から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材とを備えることを特徴とする電気光学素子。
【請求項2】
前記電気光学結晶は、入射端面から光の進行方向に向かって、前記強度変調用電極に挟まれた変調領域と、前記走査用電極に挟まれた走査領域とが順に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学素子。
【請求項3】
前記強度変調用電極と前記走査用電極との材質が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気光学素子。
【請求項4】
前記電気光学結晶がKTa1−xNbxO3の組成を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気光学素子。
【請求項5】
レーザ光を射出する光源装置と、
該光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調するとともに、被投射面に向けて走査する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気光学素子を有することを特徴とする走査型光学装置。
【請求項6】
前記光源装置が複数の異なる波長のレーザ光を射出し、
前記偏光選択部材が、前記複数のレーザ光の波長域のうち特定の波長域のレーザ光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させ、前記特定の波長域外のレーザ光を振動方向に関わらず透過させることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項7】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光がそれぞれ前記電気光学結晶の異なる領域に入射され、
前記異なる領域ごとに前記強度変調用電極が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項8】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項9】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項10】
前記電気光学素子が、水平走査を行うことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の走査型光学装置。
【請求項1】
複屈折性を有するとともに、内部に生じる電界の大きさに応じて屈折率分布が生じる電気光学結晶と、
該電気光学結晶の複屈折性を変化させるための電圧を印加させる強度変調用電極と、
前記電気光学結晶の屈折率分布を変化させるための電圧を印加させる走査用電極と、
前記電気光学結晶のレーザ光の入射端面及び射出端面のうち少なくとも前記射出端面側に設けられ、前記電気光学結晶から射出される光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させる偏光選択部材とを備えることを特徴とする電気光学素子。
【請求項2】
前記電気光学結晶は、入射端面から光の進行方向に向かって、前記強度変調用電極に挟まれた変調領域と、前記走査用電極に挟まれた走査領域とが順に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学素子。
【請求項3】
前記強度変調用電極と前記走査用電極との材質が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気光学素子。
【請求項4】
前記電気光学結晶がKTa1−xNbxO3の組成を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気光学素子。
【請求項5】
レーザ光を射出する光源装置と、
該光源装置から射出したレーザ光を画像信号に応じて変調するとともに、被投射面に向けて走査する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気光学素子を有することを特徴とする走査型光学装置。
【請求項6】
前記光源装置が複数の異なる波長のレーザ光を射出し、
前記偏光選択部材が、前記複数のレーザ光の波長域のうち特定の波長域のレーザ光のうち特定の振動方向の光を選択的に透過させ、前記特定の波長域外のレーザ光を振動方向に関わらず透過させることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項7】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光がそれぞれ前記電気光学結晶の異なる領域に入射され、
前記異なる領域ごとに前記強度変調用電極が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項8】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光を1フレームあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項9】
前記光源装置が互いに波長の異なる複数のレーザ光を射出し、
前記複数のレーザ光を1ラインあたりの描画時間で時間順次に走査するように前記光源装置の駆動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の走査型光学装置。
【請求項10】
前記電気光学素子が、水平走査を行うことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の走査型光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−209568(P2008−209568A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45120(P2007−45120)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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