説明

電気光学装置の廃棄処理方法

【課題】ガラス基板に樹脂シートが接着されている状態でもガラス基板を細かく破砕することのできる電気光学装置の廃棄処理方法を提供すること。
【課題手段】不要になった電気光学装置1の廃棄処理を行うにあたって、破砕工程において、樹脂シート30、40が接着された素子基板10および対向基板20を破砕する前に、樹脂シート切断工程において、樹脂シート30、40に切れ目35、45を形成しておく。このため、ガラス基板(素子基板10および対向基板20)に樹脂シート30、40が接着されている場合でも、ガラス基板を細かく破砕することができるので、破砕物が嵩張らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要な電気光学装置を廃棄する際の電気光学装置の廃棄処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、大型テレビ等の電子機器の表示部には、ガラス基板を備えた液晶パネルを有する液晶装置や、ガラス基板を備えた有機エレクトロルミネッセンスパネルを有する有機エレクトロルミネッセンス装置が広く用いられている。かかる電気光学装置において、メーカー等で発生した不具合品や、市場からの回収品等、不要となった電気光学装置については、埋め立て等の方法で処理される。その際、電気光学装置を破砕すれば、嵩張らない等の利点がある。そこで、液晶装置を一対のガラス基板間に液晶が保持された状態のまま、破砕することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−84531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の廃棄処理方法では、ガラス基板に偏光板等が貼られた状態のままで破砕するため、液晶装置を破砕機に投入しても液晶装置を細かく破砕できず、破砕物が嵩張るという問題点がある。また、特許文献1では、ガラス基板の破砕物を非鉄溶融炉に投入して非鉄溶融炉内での鉄分の低減に用いる方法が提案されているが、破砕物が細かくなっていないと、非鉄溶融炉内の溶融物中において破砕物が均一に分散しないという問題点がある。
【0004】
かかる問題点に鑑みて、本発明の課題は、ガラス基板に樹脂シートが接着されている状態でもガラス基板を細かく破砕することのできる電気光学装置の廃棄処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、一方面に樹脂シートが接着された電気光学装置用のガラス基板を破砕する破砕工程を有する電気光学装置の廃棄処理方法において、前記破砕工程の前に、前記樹脂シートに切れ目を形成する樹脂シート切断工程を行なうことを特徴とする。
【0006】
本発明では、不要になった電気光学装置の廃棄処理を行うにあたって、破砕工程において、一方面に樹脂シートが接着されたガラス基板を破砕する前に、樹脂シート切断工程において、樹脂シートに切れ目を形成しておく。このため、ガラス基板の一方面に樹脂シートが接着されている場合でも、ガラス基板を細かく破砕することができるので、嵩張らない。このため、電気光学装置を破砕後、埋め立てる場合や、電気光学装置の破砕物を再利用する際、破砕物の取り扱いが容易である。また、樹脂シートの存在がガラス基板の破砕の支障にならないので、破砕機としては、細かな破砕に適しているとされる1軸剪断式破砕機の他、2軸剪断式破砕機や衝撃式破砕機等を用いることもできる。
【0007】
本発明において、前記電気光学装置は、例えば、所定の隙間を介して貼り合わされた一対のガラス基板間に液晶が保持された液晶装置であり、当該一対のガラス基板のうちの少なくも一方のガラス基板において前記液晶が位置する側とは反対側の面に前記樹脂シートが接着されており、前記破砕工程において、前記一対のガラス基板は、貼り合わされた状態で破砕される。このように構成すると、液晶を抽出する工程を行なう必要がないので、液晶の抽出に伴う装置や人手が不要であるため、処理コストを削減することができる。
【0008】
かかる液晶装置では、前記一対のガラス基板の双方において前記液晶が位置する側とは反対側の面に前記樹脂シートが各々接着されている場合があり、この場合、前記樹脂シート切断工程では、前記一対のガラス基板に接着されている前記樹脂シートの各々に対して、平面視で重なる位置に前記切れ目を形成することが好ましい。このように構成すると、一対のガラス基板が貼り合わされた状態のまま破砕する場合でも、ガラス基板を細かく破砕することができる。
【0009】
本発明において、前記樹脂シート切断工程では、前記樹脂シートをカッタにより切断する方法を採用することができる。
【0010】
この場合、前記樹脂シート切断工程では、前記カッタにより前記切れ目を形成する際、前記樹脂シートが接着されているガラス基板の表面に溝状の切れ目を同時形成することが好ましい。このように構成すると、ガラス基板を細かく破砕するのが容易である。
【0011】
本発明において、前記樹脂シート切断工程では、前記樹脂シートに電熱線を接触させて当該樹脂シートを焼き切る方法を採用してもよい。
【0012】
この場合、前記樹脂シートに前記電熱線を複数本、同時に接触させて前記切れ目を同時に複数形成する。このように構成すると、樹脂シート切断工程を効率よく行なうことができる。
【0013】
本発明において、前記破砕工程で得られた前記電気光学装置の破砕物を再利用する再利用工程を行なうことが好ましい。この場合でも、本発明によれば、電気光学装置の破砕物中において、電気光学装置が細かく破砕されているため、破砕物中においてガラス以外の異物の分布が均一であるので、再利用するのに都合がよい。
【0014】
例えば、前記再利用工程では、前記破砕物を非鉄溶融炉に投入して当該非鉄溶融炉内での鉄分の低減に用いる。すなわち、ガラス基板は、主成分がシリコン酸化物(SiO2)であるので、ガラス基板に破砕物を非鉄製錬炉内に投入すると、シリコン酸化物と鉄とが結合するため、鉄分を除去することができる。その際、本発明によれば、電気光学装置の破砕物中において、電気光学装置が細かく破砕されているため、非鉄溶融炉内の溶融物中において破砕物が均一に分散するので、溶融物全体において鉄分を効果的に低減することができるとともに、溶融物中においてガラス以外の異物の分布が均一である。また、ガラス基板の破砕物に液晶や樹脂シート等の有機物が混入していても、かかる有機物は非鉄溶融炉内で燃焼するため、不純物として残らない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0016】
[実施の形態1]
(液晶装置の構成)
図1(a)、(b)、(c)は各々、本発明が適用される電気光学装置(液晶装置)を対向基板側(表示面側)からみた斜視図、素子基板側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。
【0017】
図1(a)、(b)、(c)に示す電気光学装置1は、TN(Twisted Nematic)モードの液晶パネル1aを備えた液晶装置であり、素子基板10と、シール材17によって素子基板10に対して所定の隙間を介して貼り合わされた対向基板20と、素子基板10と対向基板20との隙間に充填された液晶50とを備えている。素子基板10および対向基板20はいずれも、例えば厚さ0.5〜2mmまたは石英ガラスや無アルカリガラス等のガラス基板からなる。素子基板10において対向基板20と対向する面側には、複数の画素の各々に画素スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)、ITO(Indium Tin Oxide)膜等からなる画素電極19、走査線やデータ線等の配線、絶縁膜等が形成されている。対向基板20において素子基板10と対向する面側には、ITO膜からなる共通電極21や、遮光膜23等が形成されており、対向基板20は、表示光の出射側に配置されている。本形態において、電気光学装置1は透過型あるいは半透過反射型の液晶装置であり、素子基板10に対して対向基板20とは反対側にはバックライト装置(図示せず)が配置される。なお、電気光学装置1において、いわゆるフリンジフィールドスイッチング(以下、FFS(Fringe Field Switching)という)方式やインプレンスイッチング(以下、IPS(In Plane Switching)という)方式等が採用されている場合、共通電極は素子基板10の側に形成される。また、電気光学装置1がカラー表示用の場合、対向基板20にはカラーフィルタ等も形成される。
【0018】
電気光学装置1では、素子基板10において複数の画素が配置された画素領域の周りに走査線駆動回路やデータ線駆動回路が形成された構造が採用される他、素子基板10において対向基板20の縁から張り出した張り出し領域に、走査線駆動回路やデータ線駆動回路を内蔵する駆動用IC(Integrated Circuit)がCOG(Chip On Glass)実装された構造が採用される場合がある。いずれの場合も、素子基板10の張り出し領域に形成された端子12にはフレキシブル基板60が接続され、フレキシブル基板60を介して外部から各種信号や各種電圧が供給される。なお、素子基板10上に駆動回路を配置した構成の他、フレキシブル基板60に対して、走査線駆動回路やデータ線駆動回路を内蔵する駆動用ICがCOF(Chip On Film)実装された構造が採用される場合もある。
【0019】
このように構成した電気光学装置1において、素子基板10において液晶50が位置する側とは反対側の外側表面10aには、偏光板からなる樹脂シート30が粘着剤31を介して接着されており、対向基板20において液晶50が位置する側とは反対側の外側表面20aにも、偏光板からなる樹脂シート40が粘着剤41を介して接着されている。なお、素子基板10および対向基板20の外側表面10a、20aには、樹脂シート30、40として、偏光板以外の光学シート、例えば、位相差フィルムや光散乱板が接着される場合もある。かかる樹脂シート30、40は、例えば0.1〜1.0mmのPVA(Poly Vinyl Alcohol)、TAC(Tri Acetyl Cellulose)、アクリル樹脂等の単層構造あるいは多層構造を有している。
【0020】
(電気光学装置1の廃棄処理方法)
図2(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置1の廃棄処理方法を示す工程図である。図3(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置1の廃棄処理方法において、樹脂シート切断工程が終了した後の電気光学装置1を対向基板20側(表示面側)からみた斜視図、素子基板10側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。
【0021】
本形態の電気光学装置1において、メーカー等で発生した不具合品や、市場からの回収品等、不要となった電気光学装置1については、埋め立て等の方法で処理される。その際、電気光学装置1を破砕すれば、嵩張らない等の利点がある。そこで、本形態では、以下に説明する廃棄処理方法が採用されている。
【0022】
本形態の電気光学装置1の廃棄処理方法では、図2(a)に示すように、破砕工程ST2を行なう前に、樹脂シート切断工程ST1において、図3(a)、(b)、(c)に示すように、樹脂シート30、40に切れ目35、45を形成する。より具体的には、板状あるいは回転円板タイプのカッタによって、素子基板10に接着されている樹脂シート30に対して格子状の切れ目35を形成するとともに、対向基板20に接着されている樹脂シート40に対しても格子状の切れ目45を形成する。その際、樹脂シート30に対する切れ目35と、樹脂シート40に対する格子状の切れ目45とが、液晶パネル1aを平面視した際に重なるように形成する。なお、図3(a)、(b)には、3本の切れ目35、45が各々縦横に形成された様子を示してあるが、切れ目35、45の数は、電気光学装置1の大きさ等に応じて最適な値に設定される。また、切れ目35、45については格子状に限らず、互いに並列するように形成してもよい。さらに、切れ目35、45については、樹脂シート30、40を完全に分割する深さに達していることが好ましいが、切れ目35、45が樹脂シート30、40の厚さ方向の途中の深さまでしか達していない場合でも、切れ目35、45が形成されている部分は、樹脂シート30、40の脆弱部になっているので、次に行なう破砕工程ST2の初期で分断されることになる。
【0023】
次に、図2(a)に示す破砕工程ST2では、電気光学装置1を素子基板10と対向基板20とが貼り合わされた状態のまま、1軸剪断式破砕機、2軸剪断式破砕機や衝撃式破砕機等の破砕機に投入し、電気光学装置1を破砕する。その際、フレキシブル基板60については素子基板10に接続された状態、あるいは素子基板10から引き剥がした状態のいずれであってもよい。かかる破砕工程ST2で得られた破砕物は、主成分がガラスであり、配線や電極等を構成していた金属や金属酸化物を不純物として含んでいるとともに、カラーフィルタや平坦化膜、配向膜を構成していた有機物を不純物として含んでいる。
【0024】
なお、1軸剪断式破砕機は、複数の回転刃が側面に形成された胴体部が軸線周りに回転する破砕機であり、破砕室の壁には、胴体部が回転したときに回転刃との間に一定の隙間が形成されるように固定刃が形成されている。また、固定刃の下方位置には、胴体部の側面と所定の隙間を介してメッシュ状の篩が配置されており、細かく破砕されたものは篩を通り抜けて落下する一方、篩を通過できない大きさのものは、通過できる大きさとなるまで破砕されることになる。かかる破砕を行うにあたって、回転刃と固定刃との隙間を調節すれば、電気光学装置1を任意の大きさに破砕することができる。
【0025】
2軸剪断式破砕機は、複数の回転刃が側面に形成された一対の胴体部が軸線周りに互いに逆方向に回転する破砕機であり、一対の胴体部に形成された回転刃は互いに櫛歯状に配置されている。
【0026】
衝撃式破砕機は、破砕室中央に回転ハンマーを備えており、円柱状の胴体部の側面には突出部が形成されている。従って、破砕室に落下してきた電気光学装置1は、回転ハンマーにより叩かれて破砕室の壁に衝突し、破砕される。
【0027】
ここで、粒径が例えば5mm以下の大きさにまで破砕するという観点からすれば、細かく破砕するのに適した1軸剪断式破砕機を用いることが好ましい。但し、本形態では、2軸剪断式破砕機や衝撃式破砕機等を用いた場合も、液晶装置を十分に細かく破砕することができる。
【0028】
しかる後には、図2(a)に示す埋め立て工程ST31において、電気光学装置1の破砕物を埋め立てる。
【0029】
また、図2(b)に示すように、樹脂シート切断工程ST1および破砕工程ST2の後に、埋め立て工程ST31に代えて、電気光学装置1の破砕物を再利用する再利用工程ST32を行なってもよい。かかる再利用工程ST32では、例えば、電気光学装置1の破砕物を非鉄溶融炉に投入して非鉄溶融炉内での鉄分の低減に用いる。すなわち、ガラス基板は、主成分がシリコン酸化物(SiO2)であるので、ガラス基板に破砕物を非鉄製錬炉内に投入すると1000℃以上に熱せられた状態で、シリコン酸化物と鉄と係合するため、鉄分を除去することができる。
【0030】
なお、再利用工程ST32では、破砕物を非鉄製錬炉に投入する処理を例示したが、タイル材と混練、成形、焼成してタイル原料として用いてもよい。また、破砕物を道路の舗装材に用いてもよい。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、不要になった電気光学装置1の廃棄処理を行うにあたって、破砕工程ST2において、一方面に樹脂シート30、40が接着されたガラス基板(素子基板10および対向基板20)を破砕する前に、樹脂シート切断工程ST1において、樹脂シート30、40に切れ目35、45を形成しておく。このため、ガラス基板(素子基板10および対向基板20)に樹脂シート30、40が接着されている場合でも、ガラス基板を細かく破砕することができるので、破砕物が嵩張らない。このため、電気光学装置1を破砕後、埋め立てる際、破砕物の取り扱いが容易である。また、樹脂シート30、40の存在がガラス基板の破砕の支障にならないので、破砕機としては、細かな破砕に適しているとされる1軸剪断式破砕機の他、2軸剪断式破砕機や衝撃式破砕機等を用いることもできる。
【0032】
また、本形態では、一対のガラス基板(素子基板10および対向基板20)に接着されている樹脂シート30、40の各々に対して、平面視で重なる位置に切れ目35、45を形成するため、素子基板10と対向基板20とが貼り合わされた状態のまま破砕した場合でも、ガラス基板を細かく破砕することができる。
【0033】
また、破砕工程ST2においては、一対のガラス基板(素子基板10および対向基板20)が貼り合わされた状態で破砕するため、液晶50を抽出する工程を行なう必要がない。それ故、液晶50の抽出に伴う装置や人手が不要であるため、処理コストを削減することができる。
【0034】
また、図2(b)に示すように、電気光学装置1の破砕物を再利用する再利用工程ST32として、電気光学装置1の破砕物を非鉄溶融炉に投入して非鉄溶融炉内での鉄分の低減に用いる場合でも、本形態では、電気光学装置1が細かく破砕されているため、非鉄溶融炉内の溶融物中において破砕物が均一に分散する。このため、溶融物全体において鉄分を効果的に低減することができるとともに、溶融物中においてガラス以外の異物の分布が均一である。また、ガラス基板の破砕物に液晶50や樹脂シート30、40等の有機物が混入していても、かかる有機物は非鉄溶融炉内で燃焼するため、不純物として残らない。
【0035】
[実施の形態2]
図4(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置1の廃棄処理方法において、樹脂シート切断工程ST1が終了した後の電気光学装置1を対向基板20側(表示面側)からみた斜視図、素子基板10側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0036】
本形態でも、実施の形態1と同様、不要となった電気光学装置1を廃棄するにあたって、図2(a)、(b)に示すように、樹脂シート切断工程ST1および破砕工程ST2を行なった後、埋め立て工程ST31あるいは再利用工程ST32を行なう。
【0037】
本形態では、図2(a)、(b)に示す破砕工程ST2を行なうにあたって、カッタとしてダイヤモンドカッタを用い、図4(a)、(b)、(c)に示すように、素子基板10および対向基板20に接着されている樹脂シート30、40に格子状の切れ目35、45を形成する際、素子基板10の外側表面10aおよび対向基板20の外側表面20aにも、溝状の切れ目15、25を同時形成する。素子基板10および対向基板20において、樹脂シート30、40の切れ目35、45と重なる位置には切れ目15、25が形成されることになる。それ故、破砕工程ST2において電気光学装置1を破砕する際、素子基板10および対向基板20を細かく破砕することができる。なお、素子基板10および対向基板20において、切れ目15、25は浅く形成されるだけであるが、切れ目15、25が形成されている部分は、素子基板10および対向基板20の脆弱部になっているので、次に行なう破砕工程ST2の初期で確実に破砕されることになる。
【0038】
[実施の形態3]
図5は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置1の廃棄処理方法で行う樹脂シート切断工程ST1の様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0039】
本形態でも、実施の形態1と同様、不要となった電気光学装置1を廃棄するにあたって、図2(a)、(b)に示すように、樹脂シート切断工程ST1および破砕工程ST2を行なった後、埋め立て工程ST31あるいは再利用工程ST32を行なう。
【0040】
本形態では、図2(a)、(b)に示す破砕工程ST2を行なうにあたって、図5に示すように、電気光学装置1の外形寸法よりも大きなフレーム71、81において、相対向する辺部に複数本の電熱線72、82が張られた加熱切断装置70、80を用いる。かかる加熱切断装置70、80では、複数本の電熱線72、82に給電すると、電熱線72、82が発熱する。従って、加熱切断装置70、80を電気光学装置1の両側から押し当てると、電熱線72、82が樹脂シート30、40に接触し、樹脂シート30、40が焼き切られることになる。従って、加熱切断装置70、80の向きを変えて電気光学装置1の両側で樹脂シート30、40を焼き切ると、図3(a)、(b)に示すように、樹脂シート30、40は格子状に切断されることになる。それ故、手間をかけて樹脂シート30、40を剥がさなくても、素子基板10および対向基板20(一対のガラス基板)を細かく破砕することができる。
【0041】
[他の破砕方法]
上記実施の形態1、2では、カッタと電気光学装置1とを面内方向に相対移動させて樹脂シート30、40を切断したが、押圧面に刃部が格子状に形成されたスタンプ状のカッタを樹脂シート30、40に押し当てて、樹脂シート30、40に切れ目を形成してもよい。
【0042】
上記実施の形態3では、電熱線を樹脂シート30、40に押し当てて樹脂シート30、40を焼き切ったが、押圧面に格子状の線状加熱部が突条に形成されたスタンプ状の加熱切断装置を樹脂シート30、40に押し当てて、樹脂シート30、40に切れ目を形成してもよい。
【0043】
また、電熱線を焼き切るにあたっては、レーザスポットを樹脂シート30、40に照射し、その照射位置を移動させてもよい。
【0044】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、電気光学装置1として液晶装置を例に説明したが、有機エレクトロルミネッセンス装置やプラズマ表示装置等の電気光学装置1においても、発光素子が形成されたガラス基板に対して樹脂シート30、40が保護シートとして接着される場合があり、かかる電気光学装置1を廃棄するのに本発明を適用してもよい。
【0045】
また、タッチパネルに用いられた樹脂シート30、40がガラス基板に接着された電気光学装置1を廃棄するのに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)、(b)、(c)は各々、本発明が適用される電気光学装置(液晶装置)を対向基板側(表示面側)からみた斜視図、素子基板側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。
【図2】(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置の廃棄処理方法を示す工程図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の廃棄処理方法において、樹脂シート切断工程が終了した後の電気光学装置を対向基板側(表示面側)からみた斜視図、素子基板側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置の廃棄処理方法において、樹脂シート切断工程が終了した後の電気光学装置を対向基板側(表示面側)からみた斜視図、素子基板側(表示面側とは反対側)からみた斜視図、および断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る電気光学装置の廃棄処理方法で行う樹脂シート切断工程の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・電気光学装置、1a・・液晶パネル、10・・素子基板(ガラス基板)、15・・素子基板に形成した切れ目、20・・対向基板(ガラス基板)、25・・対向基板に形成した切れ目、30、40・・樹脂シート、31、41・・粘着剤、35、45・・樹脂シートに形成した切れ目、50・・液晶、72、82・・電熱線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に樹脂シートが接着された電気光学装置用のガラス基板を破砕する破砕工程を有する電気光学装置の廃棄処理方法において、
前記破砕工程の前に、前記樹脂シートに切れ目を形成する樹脂シート切断工程を行なうことを特徴とする電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項2】
前記電気光学装置は、所定の隙間を介して貼り合わされた一対のガラス基板間に液晶が保持された液晶装置であり、
当該一対のガラス基板のうちの少なくも一方のガラス基板において前記液晶が位置する側とは反対側の面に前記樹脂シートが接着されており、
前記破砕工程において、前記一対のガラス基板は、貼り合わされた状態で破砕されることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項3】
前記一対の基板の双方において前記液晶が位置する側とは反対側の面に前記樹脂シートが各々接着されており、
前記樹脂シート切断工程では、前記一対のガラス基板に接着されている前記樹脂シートの各々に対して、平面視で重なる位置に前記切れ目を形成することを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項4】
前記樹脂シート切断工程では、前記樹脂シートをカッタにより切断することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項5】
前記樹脂シート切断工程では、前記カッタにより前記切れ目を形成する際、前記樹脂シートが接着されているガラス基板の表面に溝状の切れ目を同時形成することを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項6】
前記樹脂シート切断工程では、前記樹脂シートに電熱線を接触させて当該樹脂シートを焼き切ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項7】
前記樹脂シート切断工程では、前記樹脂シートに前記電熱線を複数本、同時に接触させて前記切れ目を同時に複数形成することを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項8】
前記破砕工程で得られた破砕物を再利用する再利用工程を行なうことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。
【請求項9】
前記再利用工程では、前記破砕物を非鉄溶融炉に投入して当該非鉄溶融炉内での鉄分の低減に用いることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の廃棄処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−258201(P2009−258201A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104375(P2008−104375)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】