説明

電気光学装置の製造方法

【課題】破損しにくい基板構造を有する電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子が設けられた第1基板と、第1基板に対向配置されこれを封着する第2基板と、を備えた表示パネル12を有する有機EL装置の製造方法であって、第1基板が面付けされたマザー基板12a’において、第2基板のコーナー部の領域を含む格子状にシール材26を塗布する工程と、シール材26を介してマザー基板12a’に第2基板が面付けされたマザー基板を対向して貼り付ける工程と、一対のマザー基板を、表示パネル12の形状に相当する切断ラインに沿って切断する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の1つとして、例えば、陽極と陰極との間に発光層などの有機膜が挟持された構造の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置がある。有機EL装置の製造方法としては、まず、複数の有機EL装置を形成するため、ガラス基板(マザー基板)上の複数の領域に有機EL層を形成する。次に、それぞれの有機EL層の領域毎にシール材を塗布し、その後、もう一つのガラス基板(マザー基板)を用いて各有機EL層を封止する。次に、有機EL装置の外形(四角形状)となる切断ラインに沿って一対のガラス基板に、例えば、特許文献1に記載のような、切断処理(例えば、ダイシング)を施し、複数の有機EL装置に分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−223111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス基板の厚みを薄くすると有機EL装置の特にコーナーの強度が弱くなり、切断処理を行った際、切断する応力によってコーナーに欠けや割れが発生しやすい。言い換えれば、切断処理が安定してできないという課題があった。
【0005】
また、完成品となった有機EL装置の取り扱いにおいて、コーナーに割れや欠けが発生し易いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、電気光学素子が設けられた第1基板と、前記第1基板に対向配置されこれを封着する第2基板と、を備えた電気光学パネルを有する電気光学装置の製造方法であって、前記第1基板が面付けされた第1マザーガラス基板において、前記第2基板のコーナー部の領域を含む格子状にシール材を塗布する塗布工程と、前記シール材を介して前記第1マザーガラス基板に前記第2基板が面付けされた第2マザーガラス基板を対向して貼り付ける貼付工程と、前記第1マザーガラス基板及び前記第2マザーガラス基板を、前記電気光学パネルの形状に相当する切断ラインに沿って切断する切断工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、塗布工程において第2基板のコーナー部の領域を含む格子状にシール材を塗布するので、切断工程において電気光学パネルの形状に切断した際、第1基板と第2基板とが重なるコーナー部にシール材を介在させることができる。つまり、格子状にシール材を塗布したことで、電気光学パネルの中で強度が比較的弱いコーナー部の部分にも、シール材を介在させることができる。よって、切断工程において電気光学パネルの形状に切断した際、コーナー部の強度を強くすることが可能となり、安定して切断することができる。これにより、コーナー部が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。また、完成品となった電気光学パネルを扱う際に応力が加わった場合でも、コーナー部が破損することを抑えることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記塗布工程は、前記第1マザーガラス基板における対向する一端から他端に亘って順に格子状に前記シール材を塗布することが好ましい。
【0010】
この方法によれば、シール材を第1マザーガラス基板の一端から他端に亘って順に格子状に塗布するので、シール材の塗布する方向を何回も変えずに行うことができる。また、順に塗布していくので塗布量を比較的安定させることができる。また、一端から他端に亘ってシール材を塗布するので、電気光学パネルの形状に切断した場合でも、破材同士を繋ぎとめておくことが可能となり、破材がばらばらになることを抑えることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記第1基板は、前記第2基板と平面的に重なり合わない端子部の領域を有し、前記塗布工程は、前記第2基板の辺より前記端子部側にはみ出さないように前記シール材を前記第1マザーガラス基板に塗布することが好ましい。
【0012】
この方法によれば、第2基板の辺より端子部側にはみ出さないように塗布するので、切断工程において、第2マザーガラス基板における端子部の領域を切断する際、シール材の縁に沿って切断することが可能となる。よって、シール材に影響されることなく切断部分を取り除くことができる。また、切断した後の電気光学パネルの外周の縁にシール材を残すことが可能となり、電気光学パネルの中に不純物が侵入することを防ぐことができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記塗布工程は、前記電気光学パネルにおける前記端子部の領域を除くコーナー部の面形状に沿って前記シール材を塗布することが好ましい。
【0014】
この方法によれば、コーナー部に面形状に沿ってシール材を塗布するので、電気光学パネルの形状に切断したとき、コーナー部の面形状に沿ってシール材を介在させることができる。よって、コーナー部における基板間に隙間がある場合と比較して、コーナー部の強度を向上させることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記塗布工程は、前記シール材が交差する部分において、前記シール材の塗布量が他の部分の塗布量と同等になるように塗布量を変える、又は、塗布のタイミングを変えることが好ましい。
【0016】
この方法によれば、交差部分において、シール材の塗布量、又は塗布タイミングを変えるので、交差部分にシール材が過剰に塗布されることを抑えることができる。これにより、電気光学パネルの表示領域にシール材がはみ出すことを抑えることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記第1マザーガラス基板には、複数の第1基板がマトリクス状に面付けされており、前記塗布工程は、前記複数の第1基板に跨るように前記シール材を格子状に塗布することが好ましい。
【0018】
この方法によれば、複数の電気光学パネルを効率よく製造することが可能となり、多数個取り加工の生産性を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記切断工程は、前記第1基板の前記端子部の領域のコーナー部を面取りするように切断することが好ましい。
【0020】
この方法によれば、端子部の領域のコーナー部を面取りするので、コーナー部の強度を向上させることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記切断工程は、ダイシング法又はレーザー切断法を用いて、前記第1マザーガラス基板及び前記第2マザーガラス基板を切断することが好ましい。
【0022】
この方法によれば、ダイシング法又はレーザー切断法を用いるので、シール材を含むガラス基板の部分を切断することができる。また、電気光学パネルとなった外周にシール材を介在させることが可能となり、電気光学パネルの強度を向上させることができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記電気光学パネルの厚みが100μm以下で構成され、少なくとも一方が透明な一対の樹脂フィルムで前記電気光学パネルを挟んでラミネートするラミネート工程を有することが好ましい。
【0024】
この方法によれば、電気光学パネルを構成するガラス基板からなる第1基板及び第2基板を樹脂フィルムでラミネートするので、電気光学パネルのコーナー部への衝撃を緩和することができる。また、ガラス基板が破損したとき等、外部に飛散することを防ぐことが可能となり、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の電気光学装置としての有機EL装置の構成を示す模式平面図。
【図2】図1に示す有機EL装置のA−A'線に沿う模式断面図。
【図3】有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図4】有機EL装置を構成する表示パネルの構造を示す模式断面図。
【図5】有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図7】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図8】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図9】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式図。
【図10】第2実施形態の有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図11】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図12】有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図。
【図13】有機EL装置の製造方法の変形例を示す模式平面図。
【図14】有機EL装置の製造方法の変形例を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0027】
(第1実施形態)
<電気光学装置の構成>
図1は、電気光学装置としての有機EL装置の構成を示す模式平面図である。図2は、図1に示す有機EL装置のA−A'線に沿う模式断面図である。以下、有機EL装置の構成を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0028】
図1に示すように、有機EL装置11は、外形が矩形状の電気光学パネルとしての表示パネル12を内包した表示部13を備えている。表示パネル12は、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の色表示が可能な複数の画素14が設けられた表示領域15を有している。複数の画素14は、表示領域15において3色のうち同色の画素14が短辺に沿った方向に配列した所謂ストライプ状の配列となっている。なお、画素14の配列はこれに限定されるものではない。
【0029】
表示パネル12の長辺に沿って設けられた端子部16には、表示パネル12を駆動制御する表示制御部(図示せず)との電気的な接続を図るべく、複数(例えば、3つ)の中継基板17a,17b,17cが実装されている。中継基板17a,17b,17cは、例えばフレキシブル回路基板(FPC)であって、その表面に表示パネル12を駆動する駆動回路の一部を構成する、例えばドライバーICなどの電子部品を実装したものも採用することができる。
【0030】
図2に示すように、有機EL装置11の表示部13は、中継基板17aが実装された表示パネル12を樹脂フィルム21と樹脂フィルム22との間に挟んでラミネートされた構造となっている。
【0031】
表示パネル12は、画素14ごとに対応して設けられた電気光学素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子23(以降、「有機EL素子23」と称する)を有する第1基板31と、同じく画素14ごとに対応して設けられた着色層を具備するカラーフィルター24を有する第2基板32とを、可視光透過性を有する封止樹脂25を介してシール材26により接合したものである。有機EL素子23は白色光を発するものであり、白色光がカラーフィルター24を透過して第2基板32側から射出することにより、カラー表示を可能とする所謂トップエミッション構造となっている。
【0032】
第1基板31には、画素14ごとに有機EL素子23を駆動するための駆動回路(図示せず)が設けられており、有機EL素子23は駆動回路上に形成されている。駆動回路は薄膜トランジスターなどのスイッチング素子やこれに繋がる配線等を含むものであって、公知の構成を採用することができる。
【0033】
このように、有機EL素子23を有する自発光型の表示パネル12において、第1基板31は透明なガラス基板を用いることができる。一方、有機EL素子23からの発光が取り出される側の第2基板32も透明なガラス基板を用いることができる。
【0034】
本実施形態では、第1基板31と第2基板32とを接合した後に、その表面を機械的または化学的な研磨を施すことにより、それぞれの基板の厚みを薄くする加工が施されている。例えば、それぞれの基板の元の厚みは、およそ0.5mmである。そして、加工後の総厚がおよそ100μm以下(例えば、80μm程度)となるように研磨されている。したがって、表示パネル12自体がある程度の可撓性を有する構成となっている。
【0035】
よって、表示パネル12自体では外部からの衝撃に対して弱い、また衝撃で破損したときの飛散を防ぐ必要がある。また、有機EL素子23を封着した密封構造とし、外部からの水分等の浸入を防ぎ、より長い発光寿命を確保したいなどの理由から、同じく可撓性を有する樹脂フィルム21,22でラミネートしている。
【0036】
ラミネートに用いられる樹脂フィルム21は、ガス透過性が低い透明な基材フィルム21aの一方の表面に接着剤を均一に塗布して形成された接着層21bを有する。同様に樹脂フィルム22は、ガス透過性が低い透明な基材フィルム22aの一方の表面に透明な接着剤を均一に塗布して形成された接着層22bを有する。
【0037】
基材フィルム21a,22aとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。接着層21b,22bは、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができる。また、粘着性を有する粘着剤としてもよい。粘着剤を用いればリペア性を実現できる。
【0038】
接着層21b,22bが相対するように表示パネル12を挟んで2つの樹脂フィルム21,22によりラミネートする。また、有機EL素子23の防湿性、言い換えれば封止性を確保するために、ラミネート時に表示パネル12の周辺に発生するおそれがある空間27,28を封止樹脂により埋めた構造となっている。すなわち、封止樹脂と一緒に表示パネル12を挟んでラミネートしており、はみ出した封止樹脂の一部29が樹脂フィルム21,22の端面に盛り上がった状態となっている。
【0039】
素子基板36の端子部16には、異方性導電膜(ACF)33を用いて中継基板17aが実装されている。中継基板17aの接続部を除く表面は絶縁性を有する、例えばポリイミドやソルダーレジストなどの保護膜で覆われており、樹脂フィルム21,22の接着層21b,22bと上記保護膜との接着性を確保するために、双方の界面に接着性を示す中間接着層34,35が設けられている。
【0040】
このような構成の表示部13は所謂シート状(板状)であって、外部応力にある程度追随して表示面を湾曲させることができる。
【0041】
なお、表示パネル12がトップエミッション構造の有機EL素子23を有しているため、第1基板31側から光を取り出す必要がない。したがって、第1基板31側を覆う樹脂フィルム22は透明性を有する必要はなく、ラミネートが可能な金属薄膜などの熱伝導体を備えた不透明な樹脂フィルムでもよい。熱伝導体により有機EL素子23の発光に伴う発熱を放熱することが可能となる。
【0042】
図3は、有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、有機EL装置の電気的な構成を、図3を参照しながら説明する。
【0043】
図3に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線41と、走査線41に対して交差する方向に延びる複数の信号線42と、信号線42に並行に延びる複数の電源線43とが、それぞれ格子状に配線されている。そして、走査線41と信号線42とにより区画された領域が画素領域として構成されている。信号線42は、信号線駆動回路44に接続されている。また、走査線41は、走査線駆動回路45に接続されている。
【0044】
各画素領域には、走査線41を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(Thin Film Transistor)46と、このスイッチング用TFT46を介して信号線42から供給される画素信号を保持する保持容量47と、保持容量47によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT48(以下、「TFT素子48」と称する。)とが設けられている。更に、各画素領域には、TFT素子48を介して電源線43に電気的に接続したときに、電源線43から駆動電流が流れ込む陽極51と、陰極52と、この陽極51と陰極52との間に挟持された機能層53とが設けられている。
【0045】
有機EL装置11は、陽極51と陰極52と機能層53とにより構成される有機EL素子23を複数備えている。また、有機EL装置11は、複数の有機EL素子23で構成される表示領域を備えている。
【0046】
この構成によれば、走査線41が駆動されてスイッチング用TFT46がオン状態になると、そのときの信号線42の電位が保持容量47に保持され、保持容量47の状態に応じて、TFT素子48のオン・オフ状態が決まる。そして、TFT素子48のチャネルを介して、電源線43から陽極51に電流が流れ、更に、機能層53を介して陰極52に電流が流れる。機能層53は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0047】
図4は、有機EL装置を構成する表示パネルの構造を示す模式断面図である。以下、表示パネルの構造を、図4を参照しながら説明する。なお、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。
【0048】
図4に示すように、本実施形態における表示パネル12は、機能層53で発する光を陰極52側から射出させる、いわゆるトップエミッション構造である。この表示パネル12は、第1基板31と、第1基板31に対向配置された第2基板32とを有する。
【0049】
第1基板31としては、ガラス基板等が挙げられる。本実施形態では、第1基板31の材料として無アルカリガラスを用いている。第1基板31の厚さは、例えば、30μm程度である。本実施形態では、第1基板31は、材料として厚さが、例えば、0.5mm程度のガラス基板を用い、第2基板32と接着された後にエッチングにより上述の厚さに加工される。
【0050】
なお、表示パネル12がトップエミッション型であることから、第1基板31の材料として、光透過性を有する材料および光透過性を有していない材料のいずれを用いてもよい。
【0051】
第1基板31上には、回路素子層61が設けられている。回路素子層61は、下地保護膜(図示せず)やTFT素子48、配線等を含んでいる。TFT素子48は、画素14に対応して設けられている。
【0052】
回路素子層61上には、平坦化層62が設けられている。平坦化層62は、TFT素子48や配線等による表面の凹凸を緩和している。平坦化層62には、陽極51に平面的に重なるように、反射層63が内装されている。反射層63は、光反射性を有する金属材料等からなり、例えばアルミニウム合金等からなる。
【0053】
平坦化層62上には、陽極51が設けられている。陽極51は、例えば、ITO(Indium Thin Oxide:インジウム錫酸化物)等の光透過性を有する金属酸化物導電膜からなる。陽極51の材料は、IZO(Indium Zinc Oxide)(登録商標)であってもよい。陽極51は、画素14毎に回路素子層61のTFT素子48のドレイン端子と電気的に接続されている。
【0054】
なお、表示パネル12がトップエミッション型であることから、陽極51の材料は必ずしも光透過性を有していなくてもよい。例えば、アルミニウム等からなる金属電極を用いるようにしてもよい。また、陽極51の材料として光透過性を有していない材料を用いる場合は、反射層63は設けなくてよい。
【0055】
また、平坦化層62上には、隔壁64が設けられている。隔壁64は、例えば、アクリル樹脂等からなり、画素14の領域を区画している。
【0056】
陽極51及び隔壁64上には、機能層53が設けられている。本実施形態の機能層53は、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層とが順に積層されて構成されている(図4では、1層で図示)。正孔注入層は、例えば、トリアリールアミン(ATP)多量体で形成されている。正孔輸送層は、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)で形成されている。
【0057】
発光層の発光色は白色である。白色発光材料としては、スチリルアミン系発光材料、アントラセン系ドーパミント(青色)、あるいはスチリルアミン系発光材料、ルブレン系ドーパミント(黄色)等が用いられる。電子輸送層は、例えばアルミニウムキノリノール錯体(Alq3)で形成されている。機能層53の各層は、例えば、真空蒸着法を用いて順次形成される。
【0058】
機能層53上には、陰極52が設けられている。陰極52は、本実施形態のようにトップエミッション構造である場合、光透過性を有する材料である、例えば、ITO等の透明導電材料が用いられる。また、陰極52は、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)で構成するようにしてもよい。なお、陰極52の下層に、フッ化リチウム(LiF)等からなる電子注入バッファー層が設けられていてもよい。
【0059】
陰極52及び隔壁64上には、電極保護層65が設けられている。電極保護層65は、光透過性、密着性、耐水性、ガスバリアー性等を考慮して、例えば、珪素酸化物や珪素酸窒化物等の珪素化合物で構成される。また、電極保護層65の厚さは100nm以上が好ましく、隔壁64を被覆することで発生する応力によるクラック発生を防ぐため、厚さの上限は200nm以下とすることが好ましい。電極保護層65は、PVD(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)、またはイオンプレーティング法等を用いて形成される。
【0060】
電極保護層65上には、有機緩衝層66が形成されている。この有機緩衝層66は、隔壁64の形状の影響により凹凸状に形成された電極保護層65の凹凸部分を埋めるように設けられ、その上面は略平坦に形成される。
【0061】
有機緩衝層66としては、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂等からなる。有機緩衝層66は、第1基板31及び回路素子層61等の反りや堆積膨張により発生する応力を緩和し、不安定な形状の隔壁64から電極保護層65が剥離することを防止する機能を有する。
【0062】
また、有機緩衝層66の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層66上に形成される硬い被膜からなる後述するガスバリアー層67も平坦化される。したがって、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリアー層67でのクラックの発生を防止する。
【0063】
有機緩衝層66の厚さは、3μm〜5μm程度が好ましい。有機緩衝層66は、例えば、真空スクリーン印刷法、スリットコート法、インクジェット法等を用いて形成される。
【0064】
有機緩衝層66上には、有機緩衝層66を被覆し、かつ電極保護層65の終端部まで覆うような広い範囲で、ガスバリアー層67が形成されている。ガスバリアー層67は、酸素や水分が浸入するのを防止するためのもので、これにより酸素や水分による有機EL素子23の劣化等を抑えることができる。ガスバリアー層67は、透明性、ガスバリアー性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。なお、本実施形態では、第1基板31からガスバリアー層67までを、「素子基板36」と称する。また、第2基板32とカラーフィルター24とを合わせて、「封止基板37」と称する。
【0065】
素子基板36の有機EL素子23が形成された面側、すなわちガスバリアー層67が形成された面側には、封止基板37が対向して配置されている。封止基板37は、シール材26および封止樹脂25を介して、素子基板36のガスバリアー層67と接着されている。封止基板37を構成する第2基板32は、例えば、光透過性を有する無機ガラスからなる。本実施形態では、第2基板32の材料として無アルカリガラスを用いている。
【0066】
第2基板32の厚さは、例えば、30μm程度である。表示パネル12では、第1基板31および第2基板32に、プラスチック基板に比べてガスバリアー性の高いガラス基板を用い、これらのガラス基板の厚さを薄くすることにより可撓性が付与されている。
【0067】
シール材26は、第1基板31と第2基板32との間の非表示領域に配置され、第1基板31(第2基板32)の外周に沿って枠状に設けられている。シール材26は、水分透過率が低い材料からなる。シール材26の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0068】
封止樹脂25は、素子基板36と封止基板37とシール材26とで囲まれた領域に隙間なく充填されるように設けられている。封止樹脂25は、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の光透光性の高い樹脂からなる。耐熱性や耐水性を考慮すると、封止樹脂25の材料として、エポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
カラーフィルター24は、第2基板32の有機EL素子23側に設けられている。カラーフィルター24は、赤色(R)光に対応するカラーフィルター24Rと、緑色(G)光に対応するカラーフィルター24Gと、青色(B)光に対応するカラーフィルター24Bとを有している(対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター24とも呼ぶ)。カラーフィルター24は、平面視で有機EL素子23に重なるように設けられている。
【0070】
カラーフィルター24R,24G,24Bを区画するように、遮光層68が設けられている。遮光層68は、隔壁64に対応するように配置されている。遮光層68は、遮光性を有する材料からなり、例えばCr(クロム)等からなる。なお、カラーフィルター24と遮光層68とを覆うように、オーバーコート層が設けられていてもよい。
【0071】
表示パネル12は、赤色光を射出する画素14Rと、緑色光を射出する画素14Gと、青色光を射出する画素14Bとを有している(対応する色を区別しない場合には単に画素14とも呼ぶ)。カラーフィルター24R,24G,24Bは、画素14R,14G,14Bに対応して配置されている。
【0072】
有機EL素子23により発せられる白色光がカラーフィルター24R,24G,24Bを透過することで、画素14R,14G,14BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。画素14R,14G,14Bから一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素14R,14G,14Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。したがって、フルカラー表示またはフルカラー発光が可能な表示パネルを提供できる。
【0073】
表示パネル12では、機能層53から陰極52側に発せられた光は、観察側に射出される。また、機能層53から陽極51側に発せられた光は、反射層63により反射されて、観察側に射出される。以下、有機EL装置の製造方法について説明する。
【0074】
<電気光学装置の製造方法>
図5は、電気光学装置の製造方法としての有機EL装置の製造方法を示すフローチャートである。図6〜図8は、有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図である。図9は、有機EL装置の製造方法の一部を示す模式図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図5〜図9を参照しながら説明する。
【0075】
図5に示すように、ステップS11(電気光学層形成工程)では、第1基板31上に画素14を形成する。詳しくは、図4に示すように、第1基板31上に、回路素子層61、隔壁64、陽極51、発光層を含む機能層53、陰極52等を形成する。なお、図4においては、これらの構成要素のいくつかを省略して描いている。
【0076】
ステップS12では、第1基板31上の画素14に対して薄膜封止を行う(図4参照)。詳しくは、画素14を覆うようにして、電極保護層65、有機緩衝層66、ガスバリアー層67を形成する。この工程は、プラズマCVD法、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法、各種エッチング法等の種々の成膜方法、パターニング方法を用いて行うことができる。
【0077】
ステップS13(塗布工程)では、第1基板31上の画素14が形成された側にシール材26を格子状に形成する。具体的には、図6を参照しながら説明する。なお、上記した画素14などは、第1マザーガラス基板としてのマザー基板12a’に形成されている。まず、図6に示すように、例えば、表示パネル12となる第1外形ライン71を含むようにマザー基板12a’の第1辺81(一端)から第2辺82(他端)に亘って第1シール材26aを塗布する。なお、図6における破線は、後に表示パネル12となる形状を示している。
【0078】
次に、第2外形ライン72を含むように第1辺81から第2辺82に亘って第2シール材26bを塗布する。その後、第3外形ライン73を含むように第3辺83(一端)から第4辺84(他端)に亘って第3シール材26cを塗布する。そして、第2基板32(封止基板37)の外形ラインとなる第4外形ライン74においては、第2基板32の面内側に沿って第3辺83から第4辺84に亘って第4シール材26dを塗布する。面内側に塗布することで、第4シール材26dの幅は、他のシール材26a〜26cと比較して細いことが好ましい。このように、第1外形ライン71から第4外形ライン74に沿った格子状にシール材26a〜26dを塗布する。シール材26の幅は、例えば、0.3〜0.4mmである。
【0079】
なお、格子状にシール材26a〜26dを塗布した場合、交差する部分38(図6参照)のシール材26の塗布量が多くなることが考えられる。よって、交差する部分38の近傍では、シール材26の塗布量や塗布タイミングを調整することが望ましい。例えば、一方の第1シール材26aを通常通り塗布し、他方の第3シール材26cの塗布を中止する。また、例えば、交差する部分38のみ、他のライン(交差しないライン)の塗布量に比べて、互いのシール材26a,26cの量を少なくする。なお、その他の交差する部分においても同様に調整する。これにより、交差部分にシール材26を過剰に塗布することを抑えることができ、表示パネル12の表示領域15にシール材26がはみ出すことを抑えることができる。
【0080】
シール材26としては、例えば、エポキシの接着剤が用いられる。シール材26の形成方法としては、例えば、マザー基板12a’上に、ディスペンサー塗布法(スクリーン印刷法)等により、紫外線硬化性樹脂からなるシール材26を塗布することによって行う。また、シール材26にはスペーサーを混入させておく。
【0081】
ステップS14では、マザー基板12a’上のシール材26で囲まれた領域に、封止樹脂25を塗布する。詳しくは、マザー基板12a’上に、ディスペンサー塗布法又は液滴吐出法により熱硬化性樹脂からなる封止樹脂25を塗布することによって行う。また、封止樹脂25は、硬化後に透明となるものを用いる。以上により、素子基板36側が完成する。
【0082】
ステップS21では、第2基板32が面付けされたマザー基板(第2マザーガラス基板)上にカラーフィルター24及び遮光層68を形成して、封止基板37側が完成する。
【0083】
ステップS31(貼付工程)では、素子基板36(マザー基板)と封止基板37(マザー基板)とをシール材26及び封止樹脂25を介して貼り合わせる。詳しくは、減圧環境下において素子基板36と封止基板37との間でアライメント(位置合わせ)をした状態で接触、圧着させる。このとき、素子基板36と封止基板37とは、シール材26に含まれるスペーサーによって支持され、一定の間隔を有した状態で貼り合わされる。このときのシール材26の幅は、例えば、1.5mmである。
【0084】
ステップS32では、シール材26を硬化させる。詳しくは、紫外線硬化性樹脂からなるシール材26に対し、封止基板37側から紫外線を照射することにより、シール材26を硬化させる。
【0085】
ステップS33では、封止樹脂25を硬化させる。詳しくは、熱硬化性樹脂からなる封止樹脂25に対し熱処理を行うことにより、封止樹脂25を硬化させる。熱処理の方法としては、例えば、貼り合わせ後の素子基板36及び封止基板37を焼成炉内で加熱する方法を用いることができる。
【0086】
ステップS34では、第1基板31及び第2基板32をエッチングして、所定の厚さ、例えば、それぞれ30μm程度まで薄くする。エッチング液としては、例えば、フッ酸(フッ化水素酸)を希釈した水溶液を用いる。エッチング液は、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の水溶液であってもよい。エッチング方法は、第1基板31および第2基板32をエッチング液に浸漬してもよいし、エッチング液をシャワー照射してもよい。なお、この状態の基板を、表示パネル前駆体12aと称する。
【0087】
ステップS35(切断工程)では、表示パネル前駆体12aを表示パネル12の形状に相当する切断ラインに沿って切断し個片化する(表示パネル12を切り出す)。具体的には、図7を参照しながら説明する。まず、図7に示すように、例えば、第1外形ライン71、第3外形ライン73、第2外形ライン72を切断する。切断する方法としては、例えば、レーザー切断法が用いられる。なお、レーザー切断法に限定されず、ダイシング法、またスクライブ及びブレイクを行って切断するようにしてもよい。その後、端子部16の両端の第1面76及び第2面77を含む第5外形ライン75を切断する。
【0088】
その後、第4外形ライン74に沿って、第2基板32における端子部16の領域に相当する領域を切断する。なお、第4外形ライン74は、第4シール材26dにおけるライン際である。
【0089】
レーザー切断法による切断条件は、例えば、次の通りである。周波数は50kHzである。レーザー出力は、1Wである。走査速度は、30mm/sである。なお、第2基板32における端子部16に相当する領域のみを切断する場合、レーザー出力は、例えば、0.75Wである。以上により、表示パネル前駆体12aから、図8に示すような表示パネル12が切り出される。
【0090】
このように、シール材26を、切断ライン(第1外形ライン71〜第4外形ライン74)に沿って格子状に塗布するので、素子基板36と封止基板37との間にシール材26を介した状態で、表示パネル12の一部を切断することができる。これにより、表示パネル12における強度的に弱い部分である第1コーナー85〜第4コーナー88は、素子基板36と封止基板37との間にシール材26を介した隙間のない状態で切断することが可能となり、安定した状態で切断される。よって、第1コーナー85〜第4コーナー88が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。
【0091】
また、第1基板31の端子部16に第1面76及び第2面77を形成するので、表示パネル12における端子部16の強度を向上させることができる。また、後から面付け作業を行う場合と比較して、容易に面を形成することができる。
【0092】
また、表示パネル12の素子基板36と封止基板37との間における、第1コーナー85〜第4コーナー88、更に、第1外形ライン71〜第4外形ライン74に沿ってシール材26が介在しているので、表示パネル12、更には、有機EL装置11を扱う際に、割れや欠けが発生することを抑えることができる。加えて、表示パネル12の外周における、素子基板36と封止基板37との間に隙間がないので、ゴミなどの不純物が表示パネル12内に入り込むことを防ぐことができる。
【0093】
ステップS36では、表示パネル12の第1基板31の端子部16に、中継基板17(17a,17b,17c)を接続する(図1、図2参照)。第1基板31と中継基板17との接続は、異方性導電膜等の導電性の接着剤を用いて公知の方法を用いて行われる。
【0094】
ステップS37では、表示パネル12をラミネートする。具体的には、例えば、図9(a)に示すように、各部材を重ね合わせた状態とし、ラミネート装置91にセットする。詳しくは、樹脂フィルム22上に、表示パネル12と、樹脂フィルム21(いずれも図2参照)とを重ねてラミネート装置91にセットする。なお、図9では、ラミネート装置91の加圧ローラー92のみを図示している。
【0095】
次に、図9(b)に示すように、矢印で示す側から加圧し、80℃〜120℃の範囲で加熱して圧着する。加圧ローラー92に挟持された部分では、ローラーの熱によって樹脂フィルム21,22が溶解し、更に加圧されて相互に接着される。加熱圧着の方法は、ホットプレート型の並行板や一対の熱加圧ローラーを用いる方法が好ましい。また、真空圧着装置を用いてもよい。以上により、有機EL装置11が完成する。
【0096】
以上詳述したように、第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0097】
(1)第1実施形態によれば、封止基板37(第2基板32)のコーナー85〜88の領域を含む格子状にシール材26を塗布するので、表示パネル前駆体12aを表示パネル12の形状に切断した際、素子基板36と封止基板37とが重なるコーナー85〜88にシール材26を介在させることができる。つまり、格子状にシール材26を塗布することで、表示パネル12の中で強度が比較的弱いコーナー85〜88の部分にも、シール材26を残すことができる。よって、表示パネル12の形状に切断する際、コーナー85〜88の強度を強くすることが可能となり、コーナー85〜88を安定して切断することができる。これにより、コーナー85〜88が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。また、完成品となった有機EL装置11を扱う際にコーナー85〜88などに応力が加わった場合でも、破損することを抑えることができる。また、封止基板37の外周全域に沿ってシール材26が設けられるので、外周の基板36,37間に隙間がなく、表示パネル12の中(有機EL素子23など)に不純物が入り込むことを防ぐことができる。
【0098】
(2)第1実施形態によれば、表示パネル12を樹脂フィルム21,22でラミネートするので、表示パネル12のコーナー85〜88への衝撃を緩和させることができる。また、ガラス基板からなる第1基板31及び第2基板32が破損したとき等、外部に飛散することを防ぐことが可能となり、安全性を向上させることができる。
【0099】
(3)第1実施形態によれば、表示パネル12における端子部16の両端に面付け(第1面76、第2面77)を行うので、素子基板36の強度を向上させることができる。
【0100】
(4)第1実施形態によれば、マザー基板12a’の第1辺81から第2辺82、及び第3辺83から第4辺84まで、シール材26を格子状に塗布するので、表示パネル12の形状に切断した場合でも、破材同士を繋ぎとめておくことが可能となり、破材がばらばらになることを抑えることができる。
【0101】
(第2実施形態)
<電気光学装置の製造方法>
図10〜図12は、第2実施形態の電気光学装置の製造方法としての有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図5及び図10〜図12を参照しながら説明する。
【0102】
第2実施形態の有機EL装置(111)の製造方法は、1つの表示パネル前駆体112a(マザー基板112a’)から複数の表示パネル112を形成する部分が、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0103】
まず、図5に示すフローチャートにおいて、第1実施形態と同様に、ステップS11及びステップS12を行う。次に、ステップS13では、素子基板36(マザー基板112a’)における画素14が形成された側に、複数の表示パネル112の領域に跨るようにシール材126を格子状に形成する。具体的には、図10を参照しながら説明する。まず、図10に示すように、例えば、複数の表示パネル112に跨る第1外形ライン171を含むように、マザー基板112a’の第1辺181から第2辺182に亘って複数本の第1シール材126aを塗布する。なお、図10における一点鎖線は、後に表示パネル112の外形となる形状を示している。
【0104】
次に、第2外形ライン172を含むように、第1辺181から第2辺182に亘って第2シール材126bを複数本塗布する。その後、第3外形ライン173を含むように、第3辺183から第4辺184に亘って第3シール材126cを複数本塗布する。そして、第2基板32(封止基板37)の外形ラインとなる第4外形ライン174においては、第2基板32の面内側に沿って第3辺183から第4辺184に亘って複数本の第4シール材126dを塗布する。よって、第4シール材126dの幅は、他のシール材126a〜126cと比較して細いことが好ましい。このように、第1外形ライン171から第4外形ライン174に沿った格子状にシール材126a〜126dを塗布する。
【0105】
なお、第1実施形態と同様、格子状にシール材126a〜126dを塗布した場合、交差する部分のシール材126の量が多くなることが考えられる。よって、交差する部分の近傍では、シール材126の塗布量を調整することが望ましい。
【0106】
次に、第1実施形態と同様、ステップS14及びステップS21を行う(図5参照)。これにより、素子基板36及び封止基板37が完成する。その後、ステップS31〜S34を行う。
【0107】
次に、図11に示すように(ステップS35)、素子基板36と封止基板37とが貼り合わされた表示パネル前駆体112aを切断して、それぞれの表示パネル112に個片化する(表示パネル112を切り出す)。まず、例えば、1つの表示パネル112における第1外形ライン171、第3外形ライン173、第2外形ライン172を切断する。切断する方法としては、第1実施形態と同様である。その後、端子部16の両端の第1面76及び第2面77を含む第5外形ライン175を切断する。
【0108】
その後、第4外形ライン174に沿って、第2基板32における端子部16の領域に相当する領域を切断する。なお、第4外形ライン174は、第4シール材126dの縁に沿っている。
【0109】
このように、シール材126を、切断ライン(第1外形ライン171〜第4外形ライン174)に沿って格子状に塗布するので、素子基板36と封止基板37との間にシール材126を介した状態で、表示パネル112の一部を切断することができる。これにより、表示パネル112における強度的に弱い部分である第1コーナー85〜第4コーナー88においては、素子基板36と封止基板37との間にシール材126を介した隙間のない状態で切断することが可能となり、安定して切断することができる。よって、第1コーナー85〜第4コーナー88が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。
【0110】
また、第1基板31の端子部16に第1面76及び第2面77を形成するので、表示パネル112における端子部16の強度を向上させることができる。また、後から面付け作業を行う場合と比較して、容易に面を形成することができる。
【0111】
以上により、図12に示すような複数の表示パネル112が切り出される。そして、引き続きステップS36及びステップS37を行って、有機EL装置(111)を完成させる。
【0112】
以上詳述したように、第2実施形態によれば、上記した第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0113】
(5)第2実施形態によれば、複数の表示パネル112の領域に跨るように、マザー基板112a’の第1辺181から第2辺182、及び第3辺183から第4辺184まで、シール材126を格子状に塗布するので、シール材126を効率よく塗布することが可能となり、多数個取り加工の生産性を向上させることができる。
【0114】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0115】
(変形例1)
上記したように、表示パネル12,112における端子部16のコーナーのみ面付け(第1面76、第2面77)を行うことに限定されず、例えば、図13に示す表示パネル212のような面(78,79)を形成するようにしてもよい。図13は、有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図である。面付けを行う部分としては、パネル前駆体膜212aにおける表示パネル212の4つのコーナーである。なお、第3面78及び第4面79において、シール材126が残るように、各シール材126の幅を設定することが好ましい。これによれば、表示パネル12における4つのコーナーに面付け処理が施され、更に、その部分にシール材126が存在するので、曲げ応力などに対して強度を向上させることができる。
【0116】
(変形例2)
上記した変形例1ように、第3面78及び第4面79にシール材126が介在するようにシール材126の幅を設定することに代えて、例えば、図14に示すように、シール材を塗布してもよい。図14は、有機EL装置の製造方法の一部を示す模式平面図である。図14に示すシール材の塗布方法は、マザー基板312a’に対し格子状にシール材126a〜126dを塗布することに加えて、表示パネル312の第3面78及び第4面79のラインに沿ってシール材226a,226bを塗布する。これにより、格子状のシール材126の幅を広くすることなく、第3面78及び第4面79に沿ってシール材226a,226bを設けた構造にすることができる。これによれば、表示パネル312のコーナーの強度を向上させることができる。
【0117】
(変形例3)
上記したように、トップエミッション型の有機EL装置11,111に適用することに限定されず、例えば、ボトムエミッション型の有機EL装置に適用するようにしてもよい。
【0118】
(変形例4)
上記した電気光学装置は、有機EL装置11,111に限定されず、例えば、液晶装置、プラズマディスプレイ、電子ペーパー等であってもよい。
【符号の説明】
【0119】
11,111…電気光学装置としての有機EL装置、12,112…電気光学パネルとしての表示パネル、12a,112a…表示パネル前駆体、12a’,112a’…第1マザーガラス基板としてのマザー基板、13…表示部、14,14R,14G,14B…画素、15…表示領域、16…端子部、17a,17b,17c…中継基板、21,22…樹脂フィルム、21a,22a…基材フィルム、21b,22b…接着層、23…電気光学素子としての有機EL素子、24,24R,24G,24B…カラーフィルター、25…封止樹脂、26,26a〜26d,126,126a〜126d…シール材、27,28…空間、29…封止樹脂の一部、31…第1基板、32…第2基板、33…異方性導電膜、34,35…中間接着層、36…素子基板、37…封止基板、38…交差する部分、41…走査線、42…信号線、43…電源線、44…信号線駆動回路、45…走査線駆動回路、46…スイッチング用TFT、47…保持容量、48…TFT素子、51…陽極、52…陰極、53…機能層、61…回路素子層、62…平坦化層、63…反射層、64…隔壁、65…電極保護層、66…有機緩衝層、67…ガスバリアー層、68…遮光層、71〜75,171〜175…外形ライン、76〜79…面、81〜84,181〜184…辺、85〜88…コーナー、91…ラミネート装置、92…加圧ローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子が設けられた第1基板と、前記第1基板に対向配置されこれを封着する第2基板と、を備えた電気光学パネルを有する電気光学装置の製造方法であって、
前記第1基板が面付けされた第1マザーガラス基板において、前記第2基板のコーナー部の領域を含む格子状にシール材を塗布する塗布工程と、
前記シール材を介して前記第1マザーガラス基板に前記第2基板が面付けされた第2マザーガラス基板を対向して貼り付ける貼付工程と、
前記第1マザーガラス基板及び前記第2マザーガラス基板を、前記電気光学パネルの形状に相当する切断ラインに沿って切断する切断工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記塗布工程は、前記第1マザーガラス基板における対向する一端から他端に亘って順に格子状に前記シール材を塗布することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第1基板は、前記第2基板と平面的に重なり合わない端子部の領域を有し、
前記塗布工程は、前記第2基板の辺より前記端子部側にはみ出さないように前記シール材を前記第1マザーガラス基板に塗布することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記塗布工程は、前記電気光学パネルにおける前記端子部の領域を除くコーナー部の面形状に沿って前記シール材を塗布することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記塗布工程は、前記シール材が交差する部分において、前記シール材の塗布量が他の部分の塗布量と同等になるように塗布量を変える、又は、塗布のタイミングを変えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第1マザーガラス基板には、複数の第1基板がマトリクス状に面付けされており、
前記塗布工程は、前記複数の第1基板に跨るように前記シール材を格子状に塗布することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記切断工程は、前記第1基板の前記端子部の領域のコーナー部を面取りするように切断することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記切断工程は、ダイシング法又はレーザー切断法を用いて、前記第1マザーガラス基板及び前記第2マザーガラス基板を切断することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記電気光学パネルの厚みが100μm以下で構成され、
少なくとも一方が透明な一対の樹脂フィルムで前記電気光学パネルを挟んでラミネートするラミネート工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−123150(P2011−123150A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279208(P2009−279208)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】