説明

電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法

【課題】基板上に設けられる導電膜の変形を防ぎ、歩留まりの低下を回避することが可能な電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】保持部材32の内部に、保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aを加熱する加熱部36が設けられているので、マザー基板Gを保持する際に当該表面32a、35aを予め加熱しておくことできる。高温の状態にあるマザー基板Gを保持する場合には、加熱された表面32a、35aをマザー基板Gに当接させることにより、マザー基板Gが急激に冷却されるのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置のうち、例えば有機EL装置は、例えばガラス基板上に発光素子である有機EL素子が形成され、当該有機EL素子が保護層で覆われた構成となっているのが一般的である。有機EL素子は、発光層と、この発光層を挟持する電極(陽極及び陰極)とで構成されており、発光層で発光した光が有機EL装置外部に取り出されて表示光や照明光として用いられるようになっている。
【0003】
例えば表示装置として用いられる有機EL装置においては、基板上に有機EL素子が複数設けられている。各有機EL素子に対しては例えば薄膜トランジスタなどのスイッチング素子が接続されており、この薄膜トランジスタに対応してゲート電極やソース電極などの配線パターンが設けられている。
【0004】
ゲート電極やソース電極などの配線パターンは、例えばフォトリソグラフィ法によって形成される。フォトリソグラフィ法では、基板をチャンバ内に収容してチャンバ内で基板を加熱しながらスパッタリングにより金属などの導電膜を形成し、基板をチャンバの外部に搬出して冷却し、その後この導電膜をパターニングする。
【0005】
基板の搬出に用いられる搬送装置は、例えば特許文献1に開示されているように、U字型の保持部材を有する搬送装置を用いることができる。この搬送装置は、一般的にチャンバの外部に設けられている。
【特許文献1】特開2005−12185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チャンバの外部は室温になっており搬送装置の保持部材も室温のままであるため、基板を搬出するときには、高温に加熱された状態の基板に室温の保持部材が当接することになる。特許文献1に記載の保持部材はU字型であるため、基板のうち保持部材に当接された部分と当接されない部分とが生じる。保持部材に当接された部分は急激に冷却され、保持部材に当接されない部分との間に温度差が生じる。
【0007】
特に、導電膜の形成された部分に保持部材が当接すると、導電膜の一部が急激に冷却され、導電膜全体で温度差が生じる。この温度差の発生に伴って、導電膜の結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスが導電膜全体で不均一になってしまう。このため、導電膜の一部が変形あるいは変質し、歩留まりの低下を招く原因になる。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、基板上に設けられる導電膜の変形を防ぎ、歩留まりの低下を回避することが可能な電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る発光装置は、複数のパネル領域を表面に有する電気光学装置用基板のうち少なくとも前記複数のパネル領域の裏面全面に当接する当接部を有し、前記当接部を介して前記電気光学装置用基板を保持する保持部材と、前記保持部材を移動可能な移動手段と、前記保持部材の内部に設けられ、前記当接部を加熱する加熱部とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、保持部材の内部に設けられ、当接部を加熱する加熱部を具備するので、電気光学装置用基板を保持する際に予め当接部を加熱しておくことができる。例えば高温の状態にある電気光学装置用基板を保持する場合には、加熱された当接部を電気光学装置用基板に当接させることにより、電気光学装置用基板が急激に冷却されるのを防ぐことができる。したがって、電気光学装置用基板に温度差が生じるのを防ぐことができ、当該電気光学装置用基板に形成される導電膜の結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスが導電膜全体で不均一になるのを防ぐことができる。これにより、導電膜の変形あるいは変質を防ぐことができ、歩留まりの低下を回避することができる。
【0010】
加えて、本発明では、複数のパネル領域を表面に有する電気光学装置用基板のうち少なくともこの複数のパネル領域の裏面全面に当接部が当接する構成になっているので、導電膜が設けられる領域の温度を均一にすることができる。これにより、導電膜全体において結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスを均一にすることができるという利点を有している。
【0011】
また、前記当接部のうち、少なくとも前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる部分に金属膜が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、当接部のうち、少なくとも電気光学装置用基板に当接した状態で複数のパネル領域に平面視で重なる部分に金属膜が設けられているので、当該金属膜が設けられた部分では熱伝導性が高くなる。このため、加熱部によって当接部を加熱したときに、特に金属膜に加熱部からの熱が伝わりやすく、しかも金属膜全体で均一に伝わることになる。これにより、パネル領域の裏面を効率的かつ均一に加熱することができる。
【0012】
また、前記金属膜が、前記当接部の全面に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、金属膜が、当接部の全面に設けられているので、加熱部による熱が当接部の全面に均一に伝わることになる。これにより、電気光学装置用基板の全面を均一に加熱することができ、当該電気光学装置用基板における温度分布の発生を防ぐことができる。
【0013】
また、前記保持部材が、前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる部分に凸部を有しており、前記凸部が前記当接部になっていることが好ましい。
本発明によれば、保持部材が、電気光学装置用基板に当接した状態で複数のパネル領域に平面視で重なる部分に凸部を有しており、凸部が当接部になっているので、加熱部からの熱が複数のパネル領域に集中的に伝わることになる。これにより、複数のパネル領域を効率的に加熱することができる。
【0014】
また、前記当接部が前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる位置に、前記加熱部が配置されていることが好ましい。
本発明では、当接部が電気光学装置用基板に当接した状態で複数のパネル領域に平面視で重なる位置に、加熱部が配置されているので、加熱部からの熱は、当接部のうち複数のパネル領域に平面視で重なる部分に伝わりやすくなる。これにより、複数のパネル領域を効率的に加熱することができる。
【0015】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、電気光学装置用基板を加熱しながら、当該電気光学装置用基板の複数のパネル領域に導電膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程後、所定の温度に加熱された保持部材により前記電気光学装置用基板の少なくとも前記複数のパネル領域の裏面を保持して前記電気光学装置用基板を搬送する搬送工程とを具備することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、電気光学装置用基板を加熱しながら、当該電気光学装置用基板の複数のパネル領域に導電膜を形成し、導電膜を形成した後、所定の温度に加熱された保持部材により電気光学装置用基板の少なくとも複数のパネル領域の裏面を保持して電気光学装置用基板を搬送するので、電気光学装置用基板の一部が急激に冷却されるのを防ぐことができる。したがって、電気光学装置用基板に温度差が生じるのを防ぐことができ、結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスが導電膜全体で不均一になるのを防ぐことができる。これにより、導電膜の変形あるいは変質を防ぐことができ、動作不良を回避することができる。
【0017】
また、前記電気光学装置用基板には、薄膜トランジスタが設けられており、前記成膜工程後、前記導電膜をパターニングして前記薄膜トランジスタのゲート電極、ソース電極および前記薄膜トランジスタ用配線のうちいずれかを形成するパターン形成工程を更に具備することが好ましい。
電気光学装置用基板上に形成される導電膜は、当該電気光学装置用基板上の凹凸が設けられた面上に形成されることが多いため、わずかな温度差によっても変形する虞がある。これに対して、本発明では、上述した方法により電気光学装置用基板を搬送するので、電気光学装置用基板に温度差が生じにくくなる。これにより、ゲート電極、ソース電極又は薄膜トランジスタ用配線のコンタクトカバレッジや配線の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
(有機EL装置)
図1は、有機EL装置1の概略的な構成を示す断面図である。以下の図では、各部材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。本実施形態の有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタが設けられたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。
【0019】
有機EL装置1は、素子基板2と、有機EL層3と、保護層4とを主体として構成されており、素子基板2上に有機EL層3が形成され、当該有機EL層3を覆うように保護層4が形成された構成になっている。本実施形態では、有機EL層3からの光が素子基板2の方向に射出される、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置を例に挙げて説明する。
【0020】
素子基板2は、基板5と、表面層6と、薄膜トランジスタ7と、ゲート絶縁層8と、ゲート電極9と、第1絶縁層10と、ソース電極11と、第2絶縁層12とを有している。
基板5は、例えばガラスや石英などの光を透過可能な材料からなる矩形の基板である。表面層6は、基板5の表面に形成されており、例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどからなる。
【0021】
薄膜トランジスタ7は、例えばアモルファス・シリコンからなる薄膜を用い、有機EL装置1のスイッチング素子として設けられている。薄膜トランジスタ7の半導体層は、例えば5つの領域に区分されており、図中左右方向中央にはチャネル領域7aが設けられている。チャネル領域7aを基準としてソース側(図中右側)には、当該チャネル領域7aの図中右隣に低濃度ソース領域7bが設けられており、当該低濃度ソース領域7bの図中右隣に高濃度ソース領域7cが設けられている。チャネル領域7aのドレイン側(図中左側)には、当該チャネル領域7aの図中左隣に低濃度ドレイン領域7dが設けられており、当該低濃度ドレイン領域7dの図中左隣に高濃度ドレイン領域7eが設けられている。
【0022】
ゲート絶縁層8は、表面層6及び薄膜トランジスタ7の半導体層を覆うように設けられた絶縁層である。
ゲート電極9は、ゲート絶縁層8上に設けられた電極であり、薄膜トランジスタ7のチャネル領域7aに平面視で重なる位置に配置されている。図示を省略するが、ゲート電極9は例えば金属層が3層重なった多層構造になっており、下層(ゲート絶縁層8の直上)が窒化チタン層、中層がアルミニウム・銅の混合層、上層がチタン層になっている。
第1絶縁層10は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンからなり、ゲート絶縁層8及びゲート電極9を覆うように設けられている。
【0023】
ソース電極11は、第1絶縁層10上に設けられた電極であり、第1絶縁層10及びゲート絶縁層8を貫通して形成されたコンタクトホール13を介して薄膜トランジスタ7の高濃度ソース領域7cに接続されている。ソース電極11は、単層の金属、あるいはゲート電極9と同様に、金属層が多層重なった構造になっており、例えば3層の場合、下層(第1絶縁層10の直上)がチタン層(又は窒化チタン層)、中層がアルミニウム・銅の混合層、上層がチタン層になっている。
第2絶縁層12は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンからなり、第1絶縁層10及びソース電極11を覆うように設けられている。
【0024】
有機EL層3は、陽極21と、正孔注入層22と、発光層23と、陰極24と、隔壁25とを主体として構成されている。素子基板2の第2絶縁層12の直上に隔壁25が設けられ、隔壁25で囲まれた領域に陽極21、正孔注入層22、発光層23が積層され、発光層23及び隔壁25を覆うように陰極24が設けられた構成になっている。
【0025】
陽極21は、素子基板2の第2絶縁層12の直上に薄膜状に設けられており、例えばITOなどの透明な導電材料からなる。陽極21は、第2絶縁層12、第1絶縁層10及びゲート絶縁層8の3つの絶縁層を貫通するコンタクトホール14を介して薄膜トランジスタ7の高濃度ドレイン領域7eに接続されている。
【0026】
正孔注入層22は、陽極21からの正孔を発光層23に注入する層である。発光層23は、正孔注入層22からの正孔と陰極24からの電子とが結合して発光する層である。正孔注入層22及び発光層23は、有機材料によって形成されている。
陰極24は、導電率及び光反射率の高い金属、例えばアルミニウムや銀などからなる電極であり、発光層23に電子を注入する電極である。陰極24は、発光層23で発光する光を基板5の側(図中下側)に反射する反射層としての機能も有している。隔壁25は、上記の薄膜トランジスタ7に平面視で重なる位置に設けられている。
【0027】
(製造装置)
有機EL装置1は、当該有機EL装置1を構成する配線・有機EL層などの構成要素をマザー基板上の複数のパネル領域に形成し、このマザー基板をスクライブして個々のパネル領域を取り出す方法(多面取り)で製造される。以下、図2及び図3をもとにして、上記有機EL装置1を製造する際に、このマザー基板を搬送する搬送装置について説明する。
【0028】
図2は、搬送装置の構成を示す斜視図である。同図に示すように、搬送装置30は、基板保持部31と、アーム33と、制御部34とを主体として構成されている。基板保持部31がアーム33に接続され、アーム33の動作によって基板保持部31が移動するようになっている。アーム33は制御部34に接続されており、制御部34によってアーム33の動作が制御されるようになっている。
【0029】
基板保持部31は、例えば石英などによって板状に形成された保持部材32を有している。保持部材32の表面32aには、金属膜35が設けられている。金属膜35は、熱伝導率の高い金属、例えばアルミニウムによって形成されている。この金属膜35は、保持部材32がマザー基板Gを保持した状態で当該マザー基板G上に設けられたパネル領域Pに平面視で重なる部分に配置されている。図2では、パネル領域Pがマザー基板G上にマトリクス状に配置されており、これに対応するように、金属膜35も保持部材32の表面32aにマトリクス状に配置されている。
【0030】
図3は、図2におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。同図に示すように、保持部材32には金属膜35が配置される位置に窪み32bが形成されており、金属膜35がこの窪み32bに埋め込まれるように設けられている。金属膜35が埋め込まれた状態で、金属膜35の表面35aと保持部材32の表面32aとが同一となる面一状態になっている。マザー基板Gは、面一状態になっている保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aに当接されて保持されるようになっている。したがって、この保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aが当接面になっている。
【0031】
保持部材32の内部には、例えば電熱線などの加熱部36が設けられている。加熱部36で発生した熱は、保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aに伝わるようになっている。加熱部36の加熱温度や加熱時間などについては、例えば上述した制御部34によって制御されるようになっている。
【0032】
(製造方法)
次に、上記のように構成された有機EL装置1の製造方法を説明する。
まず、マザー基板G上のパネル領域Pに表面層6を形成し、表面層6上に薄膜トランジスタ7の半導体層を形成する。薄膜トランジスタ7の半導体層を形成したら、表面層6及びパターニングされた薄膜トランジスタ7の半導体層を覆うようにゲート絶縁層8を形成する。ゲート絶縁層8を形成した後、当該ゲート絶縁層8上の全面にスパッタリング法によってゲート電極9となる導電膜50を形成する(成膜工程)。この工程では、例えば加熱チャンバ内にマザー基板Gを収容し、加熱チャンバ内で加熱しながらスパッタリングを行う。
【0033】
スパッタリングを行う間チャンバ内が加熱状態になるため、成膜工程後には、マザー基板Gの温度は約200℃になっている。導電膜50をパターニングしてゲート電極9を形成する前に、マザー基板Gを冷却するため、当該マザー基板Gを一旦チャンバの外部に搬送する。
【0034】
具体的には、図4に示すように、基板保持部31を移動させ、マザー基板Gのパネル領域Pと保持部材32の金属膜35とが平面視で重なるように位置合わせをする。位置合わせの段階で、加熱部36の加熱温度を予め100℃〜300℃程度に設定し、基板保持部31を加熱しておく。
【0035】
パネル領域Pと金属膜35との位置を合わせた後、図5に示すように、保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aをマザー基板Gの下面に当接させてマザー基板Gを保持し、この状態で基板保持部31を移動させてマザー基板Gをチャンバの外部に搬送して冷却する。冷却には、基板保持部31の温度を下げても良いが、急冷を回避できるような冷却室を用いることもできる。
【0036】
マザー基板Gを冷却した後、ゲート電極、ゲート電極への配線(図示せず)をパターニングし、その後ゲート電極9及びその周辺のゲート絶縁層8上に第1絶縁層10を形成し、コンタクトホール13及びソース電極11、(ドレイン電極)、配線層(図示せず)を形成する。ソース電極11、配線の導電層についても、ゲート電極9と同様、チャンバ内で加熱しながらスパッタリング法によって導電膜を形成する。導電膜の形成後は、加熱部36の温度を予め100℃〜300℃程度に設定して基板保持部31を加熱しておき、当該基板保持部31によってマザー基板Gを保持し、このマザー基板Gをチャンバの外部に搬送して冷却する。マザー基板Gを冷却後、当該導電膜をパターニングしてソース電極11、その他の配線を形成する。なお、薄膜トランジスタ形成のパターニングにはウェット、ドライエッチングをその材料、工程に合わせ適宜用いる。
【0037】
ソース電極11を形成した後、当該ソース電極11及び第1絶縁層10を覆うように第2絶縁層を形成し、コンタクトホール14を形成する。その後、コンタクトホール14の表面に重なるように陽極21を成膜し、パターニング後隔壁25を形成する。隔壁26内には正孔注入層22、発光層23を形成し、陰極24をEL素子上に全面形成して有機EL層3を形成する。さらに、当該有機EL層3を覆うように樹脂封止と保護膜4を形成して、有機EL装置1が完成する。
【0038】
本実施形態によれば、保持部材32の内部に、保持部材32の表面32a及び金属膜35の表面35aを加熱する加熱部36が設けられているので、マザー基板Gを保持する際に当該表面32a、35aを予め加熱しておくことできる。高温の状態にあるマザー基板Gを保持する場合には、加熱された表面32a、35aをマザー基板Gに当接させることにより、マザー基板Gが急激に冷却されるのを防ぐことができる。したがって、マザー基板に温度差が生じるのを防ぐことができ、結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスが導電膜50全体で不均一になるのを防ぐことができる。これにより、導電膜50の変形、変質を防ぐことができ、有機EL装置1の歩留まりの低下を回避することができる。
【0039】
加えて、本発明では、少なくとも複数のパネル領域Pの裏面全面に表面32a、35が当接する構成になっているので、導電膜50が設けられているパネル領域Pの温度を均一にすることができる。これにより、結晶性、膜ストレス(マイグレーション)、表面ラフネスを導電膜50全体で均一にすることができ、ゲート電極9及びソース電極11、(ドレイン電極)のコンタクトカバレッジの向上及び配線の信頼性を向上を図ることができるという利点も有している。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、基板保持部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態では、かかる相違点を中心に説明する。図6は、基板保持部の構成を示す断面図である。
【0041】
図6に示すように、基板保持部131は、保持部材132及び加熱部136を主体として構成されている。保持部材132には、マザー基板Gを保持した状態でパネル領域Pに平面視で重なる部分に凸部132aが設けられている。凸部132aの上面132bがマザー基板Gに当接することにより、保持部材132がマザー基板Gを保持する構成になっている。したがって、凸部132aの上面132bが当接面となる。
【0042】
本実施形態では、保持部材132が、マザー基板Gに当接した状態で複数のパネル領域Pに平面視で重なる部分に凸部132aを有しており、凸部132aの上面132bが当接面になっているので、加熱部136からの熱が各パネル領域Pに集中的に伝わることになる。これにより、各パネル領域Pを効率的に加熱することができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態では、基板保持部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態では、かかる相違点を中心に説明する。図7は、基板保持部の構成を示す断面図である。
【0044】
図7に示すように、基板保持部231は、保持部材232及び加熱部236を主体として構成されている。保持部材232の表面232aは平坦になっており、当該表面232a全面がマザー基板Gに当接するようになっている。したがって、当該保持部材232の表面232aが当接面となる。加熱部236は、保持部材232マザー基板Gを保持した状態で複数のパネル領域Pに平面視で重なる位置に配置されている。
【0045】
本実施形態では、保持部材232の表面232aがマザー基板Gに当接した状態で複数のパネル領域Pに平面視で重なる位置に加熱部236が配置されているので、加熱部236からの熱は、保持部材232の表面232aのうちそれぞれのパネル領域Pに平面視で重なる部分に伝わりやすくなる。これにより、各パネル領域Pを効率的に加熱することができる。
【0046】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態では、基板保持部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の構成は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態では、かかる相違点を中心に説明する。図8は、基板保持部の構成を示す断面図である。
【0047】
図8に示すように、基板保持部331は、保持部材332、金属膜335及び加熱部336を主体として構成されている。保持部材332の表面は平坦になっている。金属膜335は、この保持部材332の表面全面に形成されており、金属膜335の表面335aがマザー基板Gに当接するようになっている。したがって、金属膜335の表面335aが当接面になっている。
【0048】
このように、本実施形態では、金属膜335が保持部材332の表面全面に形成されているので、加熱部336による熱が金属膜335の表面に均一に伝わることになる。これにより、金属膜335に当接するマザー基板Gの全面を均一に加熱することができるので、マザー基板Gにおける温度分布の発生を防ぐことができる。
【0049】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記第1実施形態では、マザー基板Gを保持した状態で当該マザー基板G上に設けられたパネル領域Pに平面視で重なる部分に金属膜35が設けられた構成であると説明したが、これに限られることは無い。例えば、マザー基板G上のパネル領域Pからはみ出すように広い部分に金属膜35を形成し、位置合わせのマージンを確保することも可能である。
【0050】
また、上記第1実施形態では、保持部材32の表面32aに窪み32bを設けて、当該窪み32b内に金属膜35を埋め込んだ構成であると説明したが、これに限られることは無い。例えば、保持部材32の表面32aを平坦に設け、この平坦面に金属膜35を配置する構成であっても構わない。この場合、金属膜35の表面がマザー基板Gに当接することになる。したがって、金属膜35の表面が当接面となる。
【0051】
また、上記第1実施形態では、ゲート電極9の導電膜50やソース電極11の導電膜、あるいは配線層を形成した後に、基板保持部31を加熱し、当該加熱した基板保持部によってマザー基板Gを搬送すると説明したが、これに限られることは無い。例えば、有機EL層3の陽極21や陰極24をスパッタリング法によって形成し、それぞれを形成した後に当該加熱した基板保持部31によって搬送しても構わない。
【0052】
陽極21を形成した後は、マザー基板Gの温度が約150℃になり、10℃から15℃の温度分布が生じるため、基板保持部31が室温だと、急激な温度差が発生することになる。したがって、この場合も加熱部36の加熱温度を約100℃〜300℃に設定し、基板保持部31を加熱しておくことが好ましい。これにより、マザー基板Gの搬送時に、マザー基板Gを急激に冷却するのを防ぐことができると共に、マザー基板Gの温度分布を5℃程度にまで抑えることができる。この結果、陽極21全体で結晶性、表面ラフネス、膜ストレスの均一性が向上することになり、抵抗率や光透過率が均一になるという効果を有する。
【0053】
また、陰極24を形成した後は、マザー基板Gの温度がほぼ室温程度になるものの、マザー基板Gに10℃〜15℃の温度分布が生じることになる。したがって、この場合も加熱部36の加熱温度を約100℃〜200℃に設定し、基板保持部31を加熱した状態にしておくことが好ましい。これにより、マザー基板Gの搬送時に、マザー基板Gの温度分布を5℃程度にまで抑えることができる。この結果、陰極24全体で結晶性、表面ラフネス、膜ストレスの均一性が向上することになり、抵抗率や光反射率が均一になるという効果を有する。
【0054】
また、上記第2実施形態において、凸部132aの上面132bに金属膜を設けた構成にしても構わない。上記第3実施形態においても同様であり、保持部材232の表面全面に金属膜を設けた構成でも構わないし、第1実施形態のように保持部材232に窪みを形成し、窪みの内部に金属膜を設けた構成にしても構わない。その他、上述した各実施形態の構成及び各実施形態の変形例の構成は適宜組み合わせることが可能であり、これにより、一層の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る搬送装置の構成を示す斜視図。
【図3】本実施形態に係る搬送装置の保持部材の構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る有機EL装置の製造過程を示す工程図。
【図5】同、工程図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る搬送装置の保持部材の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る搬送装置の保持部材の構成を示す断面図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る搬送装置の保持部材の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0056】
G…マザー基板 P…パネル領域 1…有機EL装置 9…ゲート電極 11…ソース電極 21…陽極 24…陰極 30…搬送装置 31…基板保持部 32…保持部材 35…金属膜 36…加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル領域を表面に有する電気光学装置用基板のうち少なくとも前記複数のパネル領域の裏面全面に当接する当接部を有し、前記当接部を介して前記電気光学装置用基板を保持する保持部材と、
前記保持部材を移動可能な移動手段と、
前記保持部材の内部に設けられ、前記当接部を加熱する加熱部と
を具備することを特徴とする電気光学装置の製造装置。
【請求項2】
前記当接部のうち、少なくとも前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる部分に金属膜が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造装置。
【請求項3】
前記金属膜が、前記当接部の全面に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の製造装置。
【請求項4】
前記保持部材が、前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる部分に凸部を有しており、
前記凸部が前記当接部になっている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の電気光学装置の製造装置。
【請求項5】
前記当接部が前記電気光学装置用基板に当接した状態で前記複数のパネル領域に平面視で重なる位置に、前記加熱部が配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の電気光学装置の製造装置。
【請求項6】
電気光学装置用基板を加熱しながら、当該電気光学装置用基板の複数のパネル領域に導電膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程後、所定の温度に加熱された保持部材により前記電気光学装置用基板の少なくとも前記複数のパネル領域の裏面を保持して前記電気光学装置用基板を搬送する搬送工程と
を具備することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記電気光学装置用基板には、薄膜トランジスタが設けられており、
前記成膜工程後、前記導電膜をパターニングして前記薄膜トランジスタのゲート電極、ソース電極および前記薄膜トランジスタ用配線のうちいずれかを形成するパターン形成工程を更に具備する
ことを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−292850(P2007−292850A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117929(P2006−117929)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】