説明

電気化学セルおよび関連デバイス

【課題】高温電池セルの熱管理を適切に行うことができるセル構造により、内部抵抗が低く、安全性の高い電池を提供する。
【解決手段】セル10は、容積を画定する内部面を有するハウジング2と、容積内に配置される、細長い、イオン伝導性のセパレータ8とを含む。セパレータは、通常、セルの高さ寸法を画定するように、ハウジングの基底部6に対して垂直方向に延在する。セパレータは、第1のコンパートメント15の一部を画定する第1の円周面14を有する。セルはさらに、内部面4と、セパレータの第1の円周面との間に配置されるシム構造体18を含む。構造体は、少なくとも2つのシムを含む。それぞれのシムは、もう一方に対して概ね平行で、かつセパレータの第1の円周面に対して概ね平行である、円周面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気化学セルに関し、いくつかの特定の実施形態においては、高温で充電可能な電気化学セルおよび関連デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、電気輸送機器、ハイブリッド電気輸送機器、および非輸送機器(たとえば、機関車、オフハイウェイ採掘用車両、海洋用途、バスおよび自動車)などの移動システムにおいて、ならびに無停電電源装置(UPS)システム、および「テレコム」(電気通信システム)などの定置用途のために、エネルギーの一部を貯蔵するために使用される必須の構成要素である。高温のナトリウム−金属ハロゲン化物電気化学セルは、一般に、機関車、電気通信、および無停電電源装置(UPS)のバッテリにおける使用向けである。このようなセルは、これらの用途の多くに、高エネルギー密度、高出力密度、より長いセル寿命、およびより低いコスト要件を、場合により提供することが可能である。
【0003】
通常、バッテリは多くのセルで構成されている。これらのバッテリの最新の開発は、性能およびセルの寿命に焦点が置かれる。いくつかの要因が性能に影響して、セルの寿命に限界を設けることがある。主要な要因は、セパレータの信頼性の欠如であり得る。これらのセルに使用される最も一般的なセパレータは、ナトリウム伝導性のセラミックである、β”−アルミナ固体電解質(BASE)である。いくつかの状況では、使用中のセルにおける熱サイクリング、圧力差、ナトリウム−ウィッキング、および振動により、セパレータが損傷し得ることに留意されたい。損傷したセパレータは、大きな熱エクスカーションを招き、それが次いで、セルケーシング(たとえば鋼ケーシング)の腐食をもたらすことがある。通常、セパレータが割れると、金属短絡が形成され、バッテリを欠陥のあるセルで動作させたままにする。いくつかのセルでは、セルケーシングが腐食する。腐食したセルケーシングにより、セルの化学成分がケーシングに割れ目を作ることがあり、それがバッテリ全体を短絡させることがある。
【0004】
開発作業は、腐食の問題を回避する、および/または解決するための異なるバッテリ設計に着手している。ケーシングの腐食を回避する1つのやり方は、セルのコアとケーシングとの間に、効果的な熱および電気コンダクタンスを提供することによる。しかしながら、現在利用できる設計は、これらの機能に効果的に対処するのに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0178546号明細書
【発明の概要】
【0006】
したがって、さまざまなバッテリ用途のために、改善された熱および電気管理を有する、新たなセル設計を開発することが望ましいであろう。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態が、電気化学セルを提供する。セルは、容積を画定する内部面を有するハウジングを備える。細長い、イオン伝導性のセパレータが、容積内に配置され、第1の円周面を有する。シム構造体(shim structure)が、ハウジングの内部面と、セパレータの第1の円周面との間に配置される。シム構造体は、少なくとも第1のシムおよび第2のシムを備え、それぞれが対向する第1の面および第2の面を有する。第1のシムの第1の面の少なくとも一部が、セパレータの第1の円周面に対して概ね平行である。第1のシムの第2の面の少なくとも一部が、第2のシム部の第1の面の一部に対して概ね平行である。
【0008】
別の実施形態において、電気化学セルは、容積を画定する内部面を有し、かつ基底部を有する、ハウジングを備える。ハウジングは、断面において多角形であり、複数の隅領域を有する。イオン伝導性のセパレータが、容積内に配置され、セルの高さ寸法を画定するように、ハウジングの基底部に対して垂直方向に延在する。セパレータは、第1のコンパートメントの一部を画定する第1の円周面を有する。セパレータはさらに、複数の葉部(lobe portion)および谷部(valley portion)を有する。複数の葉部は、ハウジングの複数の隅領域に数において対応する。セパレータは、ハウジングに同心円状に位置し、セパレータのそれぞれの葉部は、ハウジングの隅領域の1つと一直線上にあり、かつそれに向かって突き出している。セルはさらに、セパレータの第1の円周面に隣接して配置される、少なくとも二重シム構造体を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵デバイスが提供される。デバイスは、互いに熱的におよび電気的に連通している複数の電気化学セルを含む。
【0010】
本発明のこれらの、ならびに他の特徴、態様、および効果は、図面全体を通して同様の文字が同様の部品を表す添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むときに、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に従った電気化学セルの概略図である。
【図2】本発明の実施形態において使用するためのセパレータ設計を並べた図である。
【図3】本発明の実施形態に従った電気化学セルの3次元図を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に従った電気化学セルの断面上面図である。
【図5A】本発明の実施形態に従ったシム構造体の拡大透視図である。
【図5B】本発明の実施形態に従ったシム構造体の断面プロファイルの拡大図である。
【図5C】本発明の別の実施形態に従ったシム構造体の断面プロファイルの拡大図である。
【図6A】本発明の実施形態に従った電気化学セルの透視3次元図である。
【図6B】本発明の実施形態に従った電気化学セルの断面上面図である。
【図7】本発明のさらなる実施形態における電気化学セルの断面上面図である。
【図8】本発明のさらなる実施形態における電気化学セルの断面上面図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態に従った電気化学セルの比較による温度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用されるとき、関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく、差支えない程度に変化してよい任意の量的表現を修飾するために、近似言語を適用することができる。したがって、「約」などの1つまたは複数の用語によって修飾される値は、指定された厳密な値に限定されない。いくつかの例において、近似言語は、値を測定するための計器の精度に対応することができる。
【0013】
以下の明細書および特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、および「the」は、コンテキストが明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0014】
本明細書で使用されるとき、用語「may(〜することができる)」および「may be(〜であってよい)」は、一連の状況内における発生の可能性、特定の特性、特徴、もしくは機能の所有を示す、および/または、限定された動詞に関連付けられた技量、能力、または可能性のうちの1つまたは複数を表現することによって別の動詞を限定する。したがって、「may(〜することができる)」および「may be(〜であってよい)」の使用は、示された能力、機能、または使用について、いくつかの状況においては、修飾された用語が、時に適切でない、可能でない、または好都合でないことがあることを考慮に入れながらも、修飾された用語が、適切であり、可能であり、または好都合であるらしく見えることを示す。たとえば、いくつかの状況においては、ある事象または能力を期待することができるが、他の状況においては、その事象または能力は起こり得ない。この区別が、用語「may(〜することができる)」および「may be(〜であってよい)」によって捕えられる。
【0015】
本明細書で使用されるとき、用語「陰極材料」は、充電中に電子を供給する材料を指し、これはレドックス反応の一部として存在する。本明細書で使用されるとき、用語「陽極材料」は、充電中に電子を受け入れる材料を指し、これもまたレドックス反応の一部として存在する。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「高温」は、そうでないことを示さない限りは、一般に、摂氏約250度(℃)より上の温度を指す。
【0017】
図1は、本発明の一態様に従った、電気化学セル10の概略を示す。電気化学セル10は、容積を画定する内部面4を有し、かつ基底部6を有する、ハウジング2を含む。一実施形態において、ハウジング2は、円形または楕円形の断面を有することができる。別の実施形態において、ハウジング2は、断面において多角形であってもよく、複数の隅領域を有することができる。そのような例では、電気化学セル10のハウジング2は、断面において正方形であって、4つの隅領域を有することができる。材料に関して、ハウジング2は、一般に、金属材料から作られる。好適な金属材料には、ニッケル、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル被覆鋼、モリブデン、およびモリブデン被覆鋼が含まれてよい。
【0018】
電気化学セル10は、ハウジング2の容積内に配置されるイオン伝導性のセパレータ8を含む。セパレータ8は、通常、ナトリウムイオン伝導性の固体電解質である。セパレータ8に好適な材料は、β’−アルミナ、β’’−アルミナ、β’−ガラート、β’’−ガラート、またはゼオライトを含むことができる。特定の実施形態において、セパレータ8は、β’’−アルミナ固体電解質(BASE)を含む。
【0019】
セパレータ8は、通常、セル10の高さ寸法を画定するように、ハウジング2の基底部6に対して概ね垂直方向に延在する。(セパレータ、ならびにハウジングの個々の向きは、ある程度多様であってよい)。セパレータ8は、閉口端9および開口端11を備えた、円筒形、細長、管状、またはカップの形状にされてよい。セパレータの開口端11は、封止可能であってよく、製造プロセスの間にセパレータ8を材料で満たすための開口部12を画定するセパレータアセンブリの一部であってよい。一例において、開口部12は、陰極材料を加えるのに役立つことができる。セパレータ8の閉口端9は、セルの完全性および堅牢性を向上させるために、事前に封止されていてよい。
【0020】
引き続き図1を参照すると、セパレータ8は、第1のコンパートメント15の一部を画定する第1の円周面14と、第2のコンパートメント17の一部を画定する第2の円周面16とを有する。一実施形態において、第1のコンパートメント15は、陽極材料としてのナトリウムを含み、第2のコンパートメント17は、陰極材料を含む。第1のコンパートメント15は、たとえば、ナトリウムイオン伝導性のセパレータ8、たとえば、BASEセパレータを通して、第2のコンパートメント17とイオン連通している。
【0021】
セパレータ8は、たとえば、円形、長円形、楕円形、多角形、十字形、または星型の断面プロファイルを有することができる。図2は、ハウジング2に配置されるセパレータ8の断面プロファイルのいくつかの例を示す。
【0022】
本発明の大部分の実施形態に従って、電気化学セル10(図1)はさらに、少なくとも1つのシム構造体18を含み、シム構造体18は、内部面4と、セパレータ8の第1の円周面14との間に、通常、第1の円周面14に隣接して配置される。シム構造体は、セパレータの全高に対して延在することができるが、これは常にその必要があるわけではない。一実施形態において、シム構造体は、セパレータの高さの少なくとも約20パーセントに対して延在することができる。例示的な実施形態において、シム構造体は、セパレータの高さの少なくとも約90パーセントに対して延在することができる。図1において、シム構造体は、たとえば、本明細書で説明される形状のバリエーションのいくつかを参照せずに、極端に単純化して描かれている。
【0023】
シム構造体は、セパレータ8の第1の円周面14にごく近接して取り付けられてよい。シム構造体は、通常、セパレータの第1の円周面のすべて、または一部に合致するように、BASEセパレータに巻き付けられることを可能にする形状を有する。一実施形態において、シム構造体は、(以下で説明するように)その部分の1つまたは複数が、セパレータの第1の円周面と物理的に接触するような形状にされる。加えて、シム構造体は、セパレータを、所望の位置に保持し、支持するように位置付けられてよい。たとえば、シム構造体は、BASEセパレータの最大表面領域に対して、しっかりと「バイアスがかけられて」いてよい。さらに、シム構造体は、シム構造体と、セパレータの第1の円周面14との間で、陽極材料、たとえばナトリウムの付着およびウィッキングを可能にするように、十分な柔軟性をシム部分に与えるようなやり方で設計される。
【0024】
一実施形態において、複数のシム構造体(すなわち、以下で論じるように、それぞれが、少なくとも第1のシムおよび第2のシムを備える)が組み合わされて、そこからイオン電流を集めることができるBASEセパレータの表面領域のほとんどを覆うことができる。2つ以上のシム構造体が存在するとき、構造体は、組み合っている、または部分的に重なり合っていてもよい。さらに、それぞれのシム構造体は、少なくとも1つの他のシム構造体に物理的に連結されてよく、またはハウジングの一部を構成してもよい。さらに、同じ材料または形状であっても、なくてもよい、他の構造体または部品を使用して、それぞれのシム構造体とハウジングとの間で、他の連結または接触が行われてもよい。多数のシム構造体、たとえば、10〜12以上の構造体を使用することができるが、単純さを増し、コストを下げることから、(構造体の形状および/またはサイズに応じて)可能な限り少ない数のシム構造体の使用が時に望ましい。(本発明の実施形態のための二重シム設計は、厳密に言えば、その用語もまたセパレータを円周方向に取り囲む複数のシム構造体の数を意味するが、単に「シム構造体」と呼ばれることがある)。
【0025】
シム構造体のエッジを、構造体をセルの中に入れるのを容易にするように、作用させる、製造する、および/または形成することができる。作用は、たとえば、シム構造体のエッジにフランジをつける、または斜角をつけることを含むことができる。シム構造体の表面を、流路を画定するようにさらに作用させて、または修正して(たとえば、銃眼を設ける)、セルの使用中に、BASEセパレータの第1の円周面を覆う陽極材料(通常、ナトリウム)の流れを促進することができる。
【0026】
本発明のシム構造体は、少なくとも第1のシムおよび第2のシムを含む(個々のシムは図1には示されていない)。本明細書で使用されるとき、用語「シム」は、比較的薄い、しばしば先細りになった材料片を指し、隙間を埋める、何かを水平にする、何かに支持を与える、またはうまくフィットさせるように何かを調整するために使用される。本発明の実施形態に好適なシムは、適切な厚さおよび長さの金属シートまたは金属箔を、曲げる、形成する、または押し出すことによって、形成することができる。特定の実施形態は、セパレータの第1の円周面に隣接して配置される、少なくとも1つの「二重シム構造体」を含む。
【0027】
それぞれのシムは、対向する第1の面および第2の面を有することができる。第1のシムの第1の面の一部は、セパレータの第1の円周面に対して概ね平行であってよい。第1のシムの第2の面の一部は、第2のシムの第1の面の一部に対して概ね平行であってよい。言い換えれば、1つのシムは、通常、もう一方のシムの大幅な部分に重なり合う。本明細書で使用されるとき、用語「大幅な部分」は、シムの表面領域の約50パーセントを超えることを意味し、いくつかの特定の実施形態においては、シムの表面領域の約75パーセントを超えることを意味する。いくつかの実施形態において、シムは、形状およびサイズにおいて実質的に同一であってよい。いくつかの他の実施形態においては、異なるサイズのシムが使用されてもよい。ある実施形態において、シムは、対称的、すなわち、形状およびサイズにおいて同一であってよく、互いに全面的に重なり合っていてよい。
【0028】
シム構造体は、1つのシムの円周面を、もう一方の円周面に平行に位置付けることによって構築されてよい。たとえば、シムは、一方の上にもう一方を配置して、互いに押しつけて、または単に接触して、たとえば、面と面を互いに触れて、位置付けられてよい。いくつかの例において、構造体は、1つのシムをもう一方のシムの上に摺動させることによって構築されてよい。一実施形態において、2つのシムの間には、実質的に隙間がない。別の実施形態においては、シムの間に隙間があってもよいが、隙間は比較的小さいことが好ましい。隙間を通って移動するナトリウムの量は、通常は取るに足らない量であるものの、陽極材料は、隙間を通してウィッキングすることがある。
【0029】
それぞれのシムの厚さは多様であってよいが、通常は、約0.01ミリメータから約1ミリメータの範囲内である。いくつかの実施形態において、厚さは、約0.05ミリメータから約0.5ミリメータの範囲であってよく、いくつかの特定の実施形態においては、約0.1ミリメータから約0.2ミリメータであってよい。
【0030】
シムに使用される材料は、通常、熱的におよび/または電気的に伝導性である。好ましい材料のいくつかは、陽極環境において、化学的におよび電気化学的に不活性である。いくつかの実施形態において、材料は、単一の金属を含んでよく、または金属含有の複合物もしくは合金であってもよい。一実施形態において、シムは、片側または両側が異なる金属層で覆われた金属基板を含むことができる。一実施形態において、シムは、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、または以上のものを含んだ任意の合金を含むことができる。さらに、シム構造体のそれぞれのシムは、同じ材料から形成されても、異なる材料から形成されてもよい。
【0031】
本発明のためのシム設計は、通常(常にではないものの)、4つの主要な機能を果たす。1つ目の機能は、セパレータと、陽極および/またはハウジングとの間に、密接かつ均一な電気接点を提供して、セル充電の最初の段階における、陽極コンパートメントにナトリウムが存在しないときの電荷移動を促進することである。これは、シム構造体を形成するシムを、セパレータの第1の円周面にぴったりと合致するように形作ることによって達成することができる。2つ目の機能は、コア、すなわちセルの陰極コンパートメントから、セルの外側の位置へと熱を移動させることによって、セルに熱管理を提供することである。さらに、シムは、セルの破損後の過度の熱を消散させて、デバイスの残りの部分の損傷を最小限にするのに役立つことができる。
【0032】
シム構造体の3つ目の機能は、セパレータのための構造支持体としての働きをすることである。シム構造体は、ハウジング内でのセパレータの潜在的な動きを制限することによって、および/または振動および衝撃を吸収することによって、寸法安定性を提供する。4つ目の機能は、イオン電流が通過することになるセパレータの領域上に、金属陽極材料(たとえば、ナトリウム)の最適な分散を提供することである。これは、シム構造体とセパレータとの間の毛細管力による、陽極材料のウィッキングによって達成することができる。
【0033】
上で説明したように、シム構造体は、通常、セルの動作に、電気伝導および熱伝導を提供する。従来、その目的のために、一重の薄型のシム(たとえば、金属シートまたは金属箔)を使用することができる。しかしながら、一重の薄型のシムは、十分かつ効果的な伝導を提供することができない。一方、電気伝導および熱伝導を高めるために、厚い金属シートまたは金属箔が使用されてもよい。しかしながら、厚さの増したそのようなシムは、柔軟性の低さを招き、シムを特定の形状に曲げてセルの内部に組み込むことを困難にすることがある。対照的に、本発明の実施形態に従った複数の薄型のシム(特に、二重シム構造体)は、その柔軟性を損なうことなく、向上した電気伝導および熱伝導を有利に提供する。
【0034】
上で論じたように、セパレータは、たとえば、円形、長円形、楕円形、または多角形の断面プロファイルの、さまざまな形状であってよい。いくつかの実施形態において、セパレータは、ルゲート(rugate)の形状の断面プロファイルを有することができる。そのような形状は、図2の多葉型(multi−lobed)の描写において示され、以下に提示される実施形態のうちのいくつかで説明されるような代替の型において、通常、複数の、葉部および谷(くぼみ)部(「葉」および「谷」とも呼ばれる)を含む。クローバーの葉のような形状を提供することができるルゲートは、所与の容積のために、セパレータの全体の利用可能な表面領域を増加することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの葉の数は、ハウジングの離間した、隅領域の数に対応する。
【0035】
図3および図4は、本発明の例示的な実施形態に従った電気化学セル20の一部を示す。電気化学セル20は、容積を画定する内部面24を有するハウジング22を含む。説明目的のために、ハウジングは、その高さの観点から部分的にのみ示される。ハウジングは、セパレータの全高まで延在することができ、通常は、そうである。図示する実施形態では、ハウジング22は、4つの隅領域25を有する。セパレータ26は、ハウジング22の容積内に配置される。セパレータ26は、第1のコンパートメント30の一部を画定する第1の円周面28を有することができる(図4もまた参照されたい)。セパレータはさらに、第2のコンパートメント34を画定する第2の円周面32を含むことができる。第2のコンパートメント34は、通常、第1のコンパートメント30の内側に配置される。この例示的な設計においては、第1のコンパートメント30が陽極コンパートメントであり、通常はナトリウムを含むが、他の陽極材料も可能である。第2のコンパートメント34は、陰極コンパートメントであって、陰極材料を含む。第1のコンパートメント30は、セパレータ26を通して、第2のコンパートメント34とイオン連通している。
【0036】
先に触れたように、セパレータ26は、4つの葉部(葉)36と、対応する4つの谷部38とを有するように設計されてよい(図3、図4)。対になった葉が、ハウジング22の内部面24と、セパレータ26の第1の面28との間の隙間にまたがる、谷部を画定することができる。セパレータは、ハウジング22に同心円状に位置していてよく、セパレータ26のそれぞれの葉36は、ハウジング22の隅領域25のうちの1つと一直線上にあり、かつそれに向かって突き出している。
【0037】
図3はさらに、セパレータの第1の円周面28に隣接して配置される4つのシム構造体40を示す。それぞれのシム構造体40は、セパレータ26の、1つの葉部36および谷部38の少なくとも一部に係合していてよい。セパレータ26を取り囲むシム構造体40の構成は、(図3に対応して)図4に表示されている電気化学セル20の断面プロファイルから、さらにはっきりと見ることができる。この実施形態において、それぞれのシム構造体40は、二重シム構成を含む。「二重シム構成」は、上で触れ、さらに以下で説明するように、2つのシム、たとえば、通常2つの別個のシムを有するシム構造体を指す。それぞれのシムは、もう一方のシムに対して概ね平行の、対向する第1の面および第2の面を有する。シムの形状およびプロファイルは、通常、セパレータ26の全体の形状および輪郭にフィットするようにして、陽極材料のウィッキングのために、シム構造体40とセパレータ26との間に適切な距離を提供する。
【0038】
図5Aは、第1のシム42および第2のシム44を含む、二重シム構造体40の非限定的な図を提供する。この実施形態において、第1のシムおよび第2のシムは対称であり、形状およびサイズにおいて同一である。しかしながら、他の実施形態においては、シムは互いに同一である必要はない。
【0039】
図5Bは、図5Aのシム構造体40の、対応する断面プロファイルを示す。第1のシム42は、内周面(「第1の面」とも呼ばれる)46と、外周面(「第2の面」とも呼ばれる)47とを有する。内周面46は、概して、セパレータ26の第1の円周面28(図3を参照)に、ごく近接して取り付けられる。第2のシム44は、内周面48と、外周面49とを有する。第2のシム44の内周面48は、第1のシム42の外周面47に対して概ね平行に配置され、それにより、この例では、それらは互いに全面的に重なり合う。
【0040】
一実施形態において、2つのシムの間には、実質的に隙間がない。別の実施形態においては、2つのシム42および44は、隙間60を有してもよい。隙間60は、図5Aおよび5Bでは、明瞭にするために誇張されて示されているが、可能な限り小さく保たれてよい。
【0041】
引き続き図3および図4を参照すると、第1のコンパートメント30および第2のコンパートメント34は、通常、電気化学セル20によって生成される電流を集めるための電流コレクタ(図示せず)を含む。いくつかの特定の実施形態において、シム構造体40は、第1のコンパートメントに電流を集め、電流コレクタとして機能する。
【0042】
シム構造体は、通常、セパレータに向かい合う面、すなわち、第1のシム42の内周面46と、ハウジングに向かい合う面、すなわち、第2のシム44の外周面49とを含む(図5Aおよび5Bを参照されたい)。さまざまな実施形態において、ハウジングに向かい合う面49は、ナトリウムとの親和性を欠いていてよく、セパレータに向かい合う面46は、ナトリウム親和性であってよい(ナトリウムは、やはり任意の好適な陽極材料を表すのに使用されている)。シム同士の間にはナトリウムが存在しないことが好ましいことから、いくつかの実施形態において、第2のシム44の内周面48および第1のシム42の外周面47は、ナトリウムとの親和性を欠いていてよい。
【0043】
セパレータに向かい合う面は、通常、ウィッキングするための表面を誘導するために、たとえば、層またはコーティングの形態での材料を含む。層は、金属製であってよい。表面はまた、ナトリウム親和性にするように表面処理が施されていてよい。ある実施形態において、好適な表面処理は、表面に、化学エッチング、物理エッチング、または反応性ガスの暴露を施すことを含む。さらに、セパレータに向かい合う面は、増加した表面領域を提供するように、パターン形成されてもよい。そのような表面処理およびパターン形成の詳細は、2009年1月9日に出願された、米国特許出願公開第2010/0178546号公報に説明されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
再び図3および図4を参照すると、それぞれのシム構造体40は、セパレータ26の第1の円周面28の一部に係合していてよい、第1のセクション50および第2のセクション52をしばしば有する。図4には、セクション50および52を示すために、直角のブラケットが使用されている。第1のセクション50は、通常、第2のセクション52から突き出ており、セパレータ26の少なくとも葉部36のまわりに延在し、それに係合する。シム構造体40の第2のセクション52は、セパレータ26の、対になった葉部36の間、すなわち、谷部38に配置される。図3に示すように、それぞれのシム構造体の第2のセクション52は、第1のセクション50から離れて、外向きに「カール」してよい。1つのシム構造体の第1のセクション50の一部が、隣接するシム構造体の第2のセクション52の一部に重なり合ってよい。図3および図4に示すように、構造体40の第1のセクション50は、セパレータ26の面28とウィッキング接触している。
【0045】
さらに、第2のセクション52は、通常、コイル部53を含み、コイル部53は、谷部38に位置し、ハウジング22の内部面24(図4)と、セパレータ26の第1の円周面28との間の隙間51にまたがる(span)ように構成されており、したがって、「スパンセクション」とも呼ぶことができる。コイル部53は、セパレータの第1の面28に対してそれを押しつける、またはバイアスをかけることによって、シム構造体40を定位置にしっかりと保持するように機能することができる。ハウジング22とセパレータ26との間でコイル53の圧縮による圧力が生じることになり、それがばね様の特徴を提供する。いくつかの実施形態において、コイルにより誘発された圧力が事前に選択された量の力を有することができる材料から、コイルが形成されてよい。さらに、シムのエッジは、シムのコイル部の下でクランプ留めされてよい。
【0046】
コイルにより誘発された圧力によって生成された力の選択された量は、通常、図3および図4に示すように、シム構造体40とセパレータの第1の円周面28との間に、選択された距離(隙間)55を得るように構成される。選択された距離は、毛細管力によるナトリウムのウィッキングを向上させ、セパレータ26の第1の円周面28の表面領域上に、最適な、および/または均一なナトリウムの分散を提供する。いくつかの実施形態において、隙間55は、約1マイクロメータから約1ミリメータの範囲内にあってよく、ある実施形態においては、約100マイクロメータから約500マイクロメータであってよい。さらに、隙間55は、参照される米国特許出願公開第2010/0178546号公報に説明されるように、均一の、または非均一の厚さを有することができる。
【0047】
コイル部53は、選択された巻き数で構成されてよい。一実施形態において、コイル部53は、図3、図4、および図5Bに表すように、少なくとも半回巻きを含むことができる。いくつかのケースにおいて、コイルは、図5Cに表すように、ほぼ完全な1回巻きを有することができる。いくつかの実施形態において、コイルは、ほぼ完全な1回巻きから、ほぼ完全な5回巻きを含むことができる。
【0048】
この構成においてハウジング22に位置付けられると、第1のシム42の内周面46(図5A)は、シム構造体40の第1のセクション50(図3)の一部を通して、セパレータ26の第1の円周面28と接触する。同時に、内周面46(図5A)は、シム構造体40の第2のセクション52の一部を通して、ハウジング22の内部面24(図4)と接触する。この構成は、このようにして、第1のシム42を通して、セパレータとハウジングとの間に電気的および熱的接点を提供する。
【0049】
セパレータの第1の面と係合させるために、セパレータを囲んで、より多い数の、またはより少ない数のシム構造体を位置付けることもまた可能である。たとえば、図6Aおよび図6Bは、本発明のいくつかの実施形態の態様を含む電気化学セル20を示す。図は、ハウジング22内部で、セパレータ26を取り囲む連続的な二重シム構造体の1つの円周セクション62を示す。シム構造体62は、第1のシム64および第2のシム66を含む。シム構造体62は、セパレータ26の第1の面28にごく近接して配置され、セパレータ26の4つの葉部36および4つの谷部38のまわりに円周セクションをたわませるように設計される。構造体40は、第1のセクション50および第2のセクション52を有する。第2のセクション52は、セパレータ26の谷部38に位置付けられる(または挿入される)コイル53の形態である。コイル53は、ハウジング22の内部面24と、セパレータ26の第1の面28との隙間51にまたがるように構成される。
【0050】
図7は、二重シム構造体の2つの円周セクション70および72を含む電気化学セルの一部を示す。同様に、図8は、二重シム構造体の3つの円周セクション74、76、および78を含む電気化学セルの一部を示す。
【0051】
図面では、説明を簡単にする目的のために、シム構造体のさまざまな部品の間、および隣接するシム構造体の重なり合う部品の間に、時に隙間が示される。実際には、シム構造体は、それらの間に隙間をまったく有しなくてもよく、それにより、たとえば、ウィッキング目的のための、ならびに電気的および熱的な連通のための、十分な電気および/またはイオンの接触を維持することができる。
【0052】
本発明の実施形態に従って、エネルギー貯蔵デバイスは、複数の電気化学セルを含み、それらの電気化学セルは、直接的にまたは間接的に、互いに熱的におよび/または電気的に連通している。当業者は、そのようなデバイスの一般的な原理に精通している。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、単に説明的にすぎず、特許請求される本発明の範囲に対するいかなる類の限定としても解釈するべきではない。
【実施例1】
【0054】
4つの一重シム構造体を、4.8cm×19.8cm×0.1mmの鋼シートから製造した。鋼シートは、両面をニッケルでコーティングされた。コーティングの厚さは、約2ミクロンであった。シートは、スタンピングによって(上記の例示的な実施形態のうちのいくつかで説明し、図3に示したような)特定の形状に設計された。
【実施例2】
【0055】
同じ形状およびサイズの8つのシムを、実施例1で説明したように形成した。2つのシムを一緒に摺動させることによって4つの二重シム構造体を構築し、それにより、2つのシムは、互いに平行に接触し、互いに完全に重なり合った。
【実施例3】
【0056】
一重シム構造体(実施例1)および二重シム構造体(実施例2)をそれぞれ使用した、2つのナトリウム−塩化ニッケルセル、セル1およびセル2を、セル内の温度プロファイルを測定するために使用した。セルは、β”−アルミナセパレータを使用し、図3および図4について説明したのと同じ設計を有した。実施例1の4つの一重シム構造体、および実施例2の4つの二重シム構造体は、それぞれ、セル1およびセル2内部のセパレータにごく近接して組み立てられた。シムは、セパレータの葉ごとに、一重シム構造体または二重シム構造体を配置することによって、セパレータに巻き付けられた。セルの温度プロファイルを、複数の熱電対を使用して測定した。図9は、セル1およびセル2についての温度プロファイルを示す。グラフから、セル2の温度パターンは、セル1の温度パターンよりも低いことが明らかであり、改善された熱管理を実証している。
【0057】
本発明の一定の特徴のみを、本明細書で図示し、説明してきたが、当業者であれば、多くの修正および変更を思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲に入る、すべてのそのような修正および変更を含むように意図することを理解されたい。
【符号の説明】
【0058】
10 電気化学セル
2 ハウジング
4 ハウジングの内部面
6 基底部
8 セパレータ
9 閉口端
11 開口端
12 開口部
14 第1の円周面
15 第1のコンパートメント
16 第2の円周面
17 第2のコンパートメント
18 シム構造体
20 電気化学セル
22 ハウジング
24 ハウジングの内部面
25 ハウジングの4つの隅領域
26 セパレータ
28 セパレータの第1の円周面
30 第1のコンパートメント
32 セパレータの第2の円周面
34 第2のコンパートメント
36 セパレータの4つの葉部
38 4つの谷部
40 シム構造体
42 第1のシム
44 第2のシム
46 第1のシムの内周面
47 第1のシムの外周面
48 第2のシムの内周面
49 第2のシムの外周面
60 2つのシムの間の隙間
50 シム構造体の第1のセクション
52 シム構造体の第2のセクション
53 コイル部
55 シム構造体とセパレータの第1の円周面との間の距離
62 連続的な二重シム構造体の円周セクション
64 第1のシム
66 第2のシム
70、72 2つの円周セクション
74、76、78 3つの円周セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積を画定する内部面を有するハウジングと、
前記容積内に配置される、細長い、イオン伝導性のセパレータであって、第1の円周面を有するセパレータと、
前記ハウジングの前記内部面と前記セパレータの前記第1の円周面との間に配置され、少なくとも、対向する第1の面および第2の面をそれぞれが有する第1のシムおよび第2のシムを備える、シム構造体であって、前記第1のシムの前記第1の面の少なくとも一部が、前記セパレータの前記第1の円周面に対して概ね平行であり、前記第1のシムの前記第2の面の少なくとも一部が、前記第2のシムの前記第1の面の一部に対して概ね平行である、シム構造体と
を備える電気化学セル。
【請求項2】
前記セパレータが、円筒形、細長、管状、またはカップの形状にされる、請求項1記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記セパレータが、クローバーの葉のような形状を含む断面プロファイルを有する、請求項2記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記セパレータが、複数の葉部と複数の谷部とを含む断面プロファイルを有し、前記セパレータの前記複数の葉部が、前記ハウジングの複数の隅領域に数において対応する、請求項3記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記シム構造体が、前記セパレータの前記第1の円周面に実質的に合致するように形作られる、請求項1記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記セパレータが、前記ハウジングの基底部に対して概ね垂直な高さ寸法を有し、前記シム構造体が、前記セパレータの全高に延在する、請求項1記載の電気化学セル。
【請求項7】
二重シム構造体を備える、請求項1記載の電気化学セル。
【請求項8】
それぞれのシムが、鉄、ニッケル、銅、またはアルミニウムを含む金属または金属合金から形成される、請求項1記載の電気化学セル。
【請求項9】
電気化学セルであって、
容積を画定する内部面を有し、基底部を有するハウジングであって、断面において多角形であり、複数の隅領域を有するハウジングと、
前記容積内に配置され、前記セルの高さ寸法を画定するように前記ハウジングの前記基底部に対して概ね垂直方向に延在し、第1のコンパートメントの一部を画定する第1の円周面を有する、イオン伝導性のセパレータであって、前記ハウジングの複数の前記隅領域に数において対応する複数の葉部を含み、セパレータの前記複数の葉部のそれぞれが、前記ハウジングの前記隅領域のうちの1つと一直線上にあり、かつそれに向かって突き出している、前記ハウジングに同心円状に位置する、セパレータと、
前記セパレータの前記第1の円周面に隣接した少なくとも1つの二重シム構造体であって、それぞれのシムが、もう一方に対して概ね平行で、かつ前記セパレータの前記第1の円周面に対して概ね平行である、円周面を有する、少なくとも1つの二重シム構造体と
を備える電気化学セル。
【請求項10】
請求項9記載の複数の電気化学セルを備えるエネルギー貯蔵デバイスであって、前記セルが互いに熱的におよび電気的に連通している、エネルギー貯蔵デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16484(P2013−16484A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144832(P2012−144832)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】