電気化学デバイス及びそれを用いた燃料電池、並びに該燃料電池を使用した携帯機器及び画像形成機器
【課題】電気化学的な反応効率が改善されて、製造が簡便で小型軽量な電気化学デバイス及びそれを用いた機器を提供する。
【解決手段】液体、気体、又は液体と気体の混合物などの流体の保持対1,触媒層2,イオン伝導層3,電子伝導体(端子)4、からなる電気化学的デバイスであって、前記流体の流体拡散層を使用しないため、小型軽量化とができ、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水などの排出物を速やかに反応の場である触媒部から引き離すことが容易になる。
【解決手段】液体、気体、又は液体と気体の混合物などの流体の保持対1,触媒層2,イオン伝導層3,電子伝導体(端子)4、からなる電気化学的デバイスであって、前記流体の流体拡散層を使用しないため、小型軽量化とができ、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水などの排出物を速やかに反応の場である触媒部から引き離すことが容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイスに関する。より詳細には、電気化学デバイスを用いた燃料電池及びその燃料電池を用いた携帯機器や画像形成機器などの小型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子の構造は電子(電荷)を発生若しくは蓄積できる層とイオンを伝搬する層から構成されているものが多い。具体的には1次電池、2次電池、燃料電池、太陽電池、コンデンサー、電気分解素子、各種センサーなどがある。これらの構成は、イオン伝導層(液体の場合もあるし固体も場合もある)を挟んで両側に電子を伝導できるアノード層及びカソード層を配した構造である。このような電気化学デバイスの心臓部の構成に対して、液体や気体、又は液体と気体の混合物などの流体を供給することにより、電荷を発生させる電気化学デバイスが存在する。基本的には前述したすべての素子が可能であるが、代表的なものとして燃料電池、電気分解素子がある。
【0003】
従来の燃料電池や電気分解素子等の構造を図1に示す。また流体保持体、つまり“液体、気体、又は液体と気体の混合物の保持体”の平面図及び断面図を図2に示す。構成は、基本的にサンドイッチ形状で、中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、その両側に触媒層と流体拡散層を有し、さらにその両側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む構成であり、図1を参照するに、左から、流体保持体/流体拡散層/触媒層/イオン伝導層/触媒層/流体拡散層/流体保持体という構成である。機能的には保持体に流れ込んだ流体(触媒上での反応物、すなわち液体、気体、又は液体と気体の混合物など)が流体拡散層(通常多孔体)を通して触媒上に達し触媒上で反応し、反応に際し電子の受け渡し反応が行われるものである。
【0004】
従来の触媒層は単純な形状(一般的には四角形)で作製されている。これに対して流体保持体は図2に示す如く保持部が形成されている。この保持部と触媒層を直接接触させると、流体保持体の保持部以外の面に触媒層が接してしまい、機能しない触媒層が発生してしまう。このため触媒全面を機能させるため、流体拡散層(通常多孔体)を設置し、流体が触媒層全面に行き渡るように構成している。
【0005】
しかしながら、流体拡散層を設けることは大きさ(体積)、重さ(重量)的に不利であり、特に携帯機器用の電気化学デバイスの場合、小型軽量であることが要求される実情がある。また流体拡散層は存在すること自身が流体の拡散抵抗を上げる要因となっている。また、反応生成物(水や炭酸ガス)が拡散層の中に留まり、反応を阻害する要因にもなっている。
【0006】
また、上記の流体保持体は触媒層で発生した電荷を伝搬する役割も担っているため、通常、導電体で形成させており、かつ電気化学的には酸化還元の両雰囲気に曝されることからカーボンのような酸化還元の双方に強い材料を使用しているのが現状である。しかしながら、カーボンは硬く、もろいため、加工性が悪く、製造コストがかかると共に、脆いことから必然的に薄く形成することができない欠点を有している。
【0007】
また、上記の従来の一般的電気化学素子(特に燃料電池や電気分解素子)の場合の触媒層や電子伝導層の製造方法は、イオン伝導層に主にカーボンを主体とし触媒金属を含むペーストを塗布することにより作製したり、流体拡散層であるカーボンペーパーやカーボンクロス上に該ペーストを塗布したのちイオン伝導膜と一体化することにより作製されている。いずれの場合においても、塗布により“電子を発生又は蓄積できる層”の形成をするものである。この塗布工程にはブレードコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、スクリーン印刷法、フレクソ印刷法が適用されているのが現状である。ブレードコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法は、長尺の基板に対して連続で塗布することから大面積を生産性高く塗布できる方法である。しかしながら、任意の位置に任意の大きさで(たとえば正方形、長方形などの形状)塗布することはできない。また塗布位置精度も高いものではない問題を有している。スクリーン印刷法やフレクソ印刷法等の印刷版を用いる方法では、任意の位置、任意の大きさに塗布することは可能であるが、印刷位置や印刷形状を変えるためには、版を作り直さなくてはならない問題点を有する。
【0008】
また、塗布以外の方法としてはろ過法、電気泳動法、ミセル電解法などの方法が存在する。ろ過法は多孔質基板への固形物の積層に適用される方法であり、電気化学デバイスの電極作製にも応用されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、積層形状がろ過面の形状で規定されるため、形状変化や形状制御に対する対応性が悪い。また粒子が微細になるほど積層(ろ過)に時間を要し生産性を落とす欠点を有している。電気泳動法は、液体中で帯電している粒子に直流電場を印加することにより、粒子が帯電している極性と逆極性の電場方向に粒子を動かす技術である。この技術も電気化学デバイスの電極作製に応用されている(例えば、非特許文献2参照)。これは、正負電極間(直流電場間)に多孔質膜やイオン伝導膜を配置することにより膜と粒子を複合させるものである。しかしながら、積層形状が膜と液とで形成される液断面形状で決定されるため、ろ過法と同様に形状変化や形状制御に対する対応性が低い。ミセル電解法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法はフェロセンのような酸化還元可能な部位を持つ界面活性剤(ミセル化剤)により作製されるミセルが、電極表面で酸化又は還元を受けてミセルが崩壊し、ミセル内部の物質が電極表面に堆積するものである。この方法は電極面での電気化学反応を利用しているため、電極面すなわち電子伝導性を持つ基板に対してしか適用できない欠点を有している。
【特許文献1】特開昭63−243298号(特公平3−59998号)公報
【特許文献2】特開2001−236026号公報
【特許文献3】特開2002−42790号公報
【非特許文献1】2003年電気化学春季大会、3N08、313頁
【非特許文献2】2003年電気化学春季大会、3N09、314頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、従来の電気化学デバイスが有する前述した問題を解決する電気化学デバイス、すなわち、電気化学的な反応効率が改善されて、製造が簡便で小型軽量な電気化学デバイス及びそれを用いた機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、少なくとも中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、サンドイッチ状でその両側に触媒層を有し、さらに該触媒層の両外側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む電気化学デバイスであって、該イオン伝導層に該触媒層を複合したイオン伝導膜と触媒の複合体の実質的に触媒反応が行われる触媒層表面上に該電子伝導体が接触せず、かつ該触媒層表面に流体を保持できる空間を有していることを特徴とする電気化学デバイスにより達成される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、小型軽量のデバイスを作製すると共に、流体抵抗を減じ、反応生成物の除去が容易な電気化学デバイスを提供することができる。
【0012】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記触媒反応が行われる前記触媒層以外の領域に存在し、かつ前記触媒層と接する前記電子伝導体が層状で前記イオン伝導層表面に存在することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、加工性な容易で、小型薄型の流体保持体が作製できる形態の電気化学デバイスを提供することができる。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の発明において、少なくとも一方の前記保持体の保持面に位置するイオン伝導層面に触媒が存在し、前記保持体の前記流体を保持していない部分に位置する前記イオン伝導層面の少なくとも一部は触媒が存在しないことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、触媒量を低減できると共に利用効率を向上した電気化学デバイスを提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、両方の前記保持体の流体保持面に位置する前記イオン伝導層面に触媒が存在し、かつ触媒層が該イオン伝導層の水平方向に対して表裏で同一の位置に存在することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、素子のイオン抵抗を軽減した電気化学デバイスを提供することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記イオン伝導層の少なくとも一方の表面に前記触媒層が複数箇所形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、抵抗を軽減することができ、電圧を上げることができる電気化学デバイスを提供することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、Pt又は、Pt及びRu若しくはIrから成ることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、水素やメタノールの酸化反応、水の電気分解反応を可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【0022】
請求項7にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSnから成る3種以上の元素混合体であることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、エタノールの酸化反応が可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【0024】
請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも触媒成分を含み、結着性を有する高分子化合物及び/又は導電剤を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明は、任意形状の触媒層を簡便に、しかも何度でも製造できる方法を提供することができる。
【0026】
請求項9にかかる発明は、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも電子伝導成分を含み、結着性を有する高分子化合物を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、任意形状の電子伝導層を簡便に、しかも何度でも製造できる方法を提供することができる。
【0028】
請求項10にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、前記静電潜像を担持した潜像担持体は、光半導体層を有することを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、光半導体層を設けた形態とすることにより、光照射により発生した電荷を速やかに正負電荷に分離することが可能となり、解像度が向上でき、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0030】
請求項11にかかる発明は、請求項10に記載の発明において、前記光半導体を有する担持体は、光照射法により処理されることを特徴とする。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、通常の塗布法に比較して、解像度が高い形状が可能であり、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0032】
請求項12にかかる発明は、請求項11に記載の発明において、前記光照射法は、半導体レーザー光又はLEDアレイによる照射法であることを特徴とする。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、解像度が高く、複雑な形状も可能となり、版(フォトマスク)が不用で形状変化への対応性が可能となり、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0034】
請求項13にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、結着性を有する高分子化合物はイオン伝導性高分子であることを特徴とする。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、粒子の結着性を保持しつつ、界面抵抗の低減を図ると共に分散物の簡素化を図ることができる。
【0036】
請求項14にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、結着性を有する高分子化合物はフッ素系高分子であることを特徴とする。
【0037】
請求項14に記載の発明によれば、結着性を維持しつつ、高分子化合物の電気化学的安定性を向上させることができる。
【0038】
請求項15にかかる発明は、請求項9に記載の発明において、前記電子伝導成分はカーボンであることを特徴とする。
【0039】
請求項15に記載の発明によれば、界面抵抗の低減及び電気学的安定性を向上させることができる。
【0040】
請求項16にかかる発明は、請求項8乃至15のいずれか一項記載の方法を用いて作製した電気化学デバイスによって達成できる。
【0041】
請求項16に記載の発明によれば、製造が簡便で任意形状が可能な触媒層、電子伝導層を有する電気化学デバイスを提供することできる。
【0042】
請求項17にかかる発明は、請求項1乃至7又は16のいずれか一項記載の電気化学デバイスを用いた燃料電池によって達成できる。
【0043】
請求項17に記載の発明によれば、上記目的を達成した電気化学デバイスを用いた燃料電池を提供することができる。
【0044】
請求項18にかかる発明は、請求項17に記載の発明において、前記燃料が炭素数4以下のアルコールであることを特徴とする。
【0045】
請求項18に記載の発明によれば、燃料電池の小型化が可能となり、体積エネルギー密度に優れ、燃料電池の駆動時間を向上できる。
【0046】
請求項19にかかる発明は、請求項18に記載の発明において、前記アルコールはエタノールであることを特徴とする。
【0047】
請求項19に記載の発明によれば、安全面・環境面に優れ、エネルギー密度の高い燃料を使用した燃料電池を提供することができる。
【0048】
請求項20にかかる発明は、請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した携帯機器によって達成できる。
【0049】
請求項20に記載の発明によれば、前記目的を達成した燃料電池を使用した利便性/信頼性の高い携帯機器を提供製造することができる。
【0050】
請求項21にかかる発明は、請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した画像形成機器によって達成できる。
【0051】
請求項21に記載の発明によれば、前記目的を達成した燃料電池を使用した利便性・信頼性の高い画像形成機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
したがって、本発明によれば、小型軽量で製造が簡便な電気化学デバイスを提供することができる。より具体的には、デバイスの反応時における流体抵抗を改善し、該反応による水や炭酸ガスなどの生成物の除去を改善し、反応に使用する触媒量を抑え、反応によって生じる電圧を上げることができるなど、デバイスの電気化学的な反応効率を改善し、用途に応じて触媒層や電子伝導層の任意の形状が簡便に製造可能な電気化学デバイスが提供できる。
【0053】
さらに、そのような電気化学デバイスを用いた安全性が高く、かつ環境的に優れ、エネルギー密度の高い燃料を使用する燃料電池が提供可能であり、該燃料電池を搭載した利便性及び信頼性の高い携帯機器や画像形成機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の電気化学デバイスの構成概念を図3に示す。
【0055】
図3において、1は液体、気体、又は液体と気体の混合物など流体の保持体、2は触媒層、3は固体電解質、4は電子伝導体(端子)である。本発明において、流体とは、上述したように、液体、気体、又は液体と気体の混合物を意味する。図3に示す本発明の実施態様は、流体拡散層を使用しないため、小型化軽量化が可能である。また拡散層が存在しないので、基本的に拡散層による流体の拡散抵抗が存在しない。また流体拡散層がないことから、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水等の排出物を速やかに反応場である触媒部から引き離すことが容易になる。さらに触媒層面と流体保持体で挟ませた部分に電子伝導性の端子を設けて触媒反応で発生した電荷を取り出しているため、流体保持体を電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型が可能な高分子材料を使用することが可能となる。
【0056】
また、図4に本発明の別な実施態様を示す。
【0057】
図4において、5は固体電解質面に形成した電子伝導層である。図4に示す本発明の別の実施態様もまた、流体拡散層を使用しないため、小型化及び軽量化が可能である。また拡散層が存在しないので、基本的に拡散層による流体の拡散抵抗が存在しないと共に、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水等の排出物を速やかに反応場である触媒部から引き離すことが容易になる。また固体電解質面に形成した電子伝導層より触媒で発生した電荷を取り出しているため、流体保持体を電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型が可能な高分子材料を使用することが可能となる。また、触媒層の面積を実質的に触媒反応が行われる面積と概ね同一にできることから、触媒使用量が低減できる。
【0058】
図5に本発明に使用する触媒層の形成例をしめす。また、このとき使用する流体保持体の平面図及び断面図を図6に示す(流体保持体は図6に限定されるものではなく、通路は2本以上であってもかまわなく、混合通路(図7)であってもかまわない。ただし、触媒層は流体保持部にあわせて形成する)。イオン伝導膜上に流体保持体が構成され、その流体保持部分に触媒層が構成されている。このような触媒層を形成することにより、流体拡散層が不用になり、小型軽量化が可能となると共に使用する触媒の全量も削減することができる。また流体拡散層が存在しないことにより流体の拡散抵抗を減じることが可能であると共に排出物の除去も容易となる。
【0059】
イオン伝導層に形成される触媒層は、イオン伝導層の表裏にて概ね同一位置の形成されていることが好ましい。イオン伝導抵抗はその距離に比例するため、位置が異なっているほどイオンの移動距離が長くなり、電気化学デバイスとしても抵抗が大きいものとなってしまう。
【0060】
本発明の別な実施形態を図8(触媒層及び電子伝導層の形成例)に示す。
【0061】
流体保持体の保持部分に触媒層、保持部分以外の面に電子伝導層を設けた構成である。このような構成とすることにより、触媒層で発生した電荷、又は触媒層に供給すべき電荷を低抵抗にて扱うことが可能となる。前記と同様な理由で,イオン伝導層に形成される触媒層及び電子伝導層は、イオン伝導層の表裏にて概ね同一位置に形成されていることが好ましい。また図4の態様で説明したように流体保持体外部まで電子伝導層を広げる(イオン伝導層表面に設けた電子伝導層:図4の5)ことにより外部へ電荷を取り出す、又は内部に注入する端子部を形成することが可能である。
【0062】
図9に本発明の別な触媒及び電子伝導層の形成例を示す。
【0063】
図9は、触媒層4箇所に対して、各々電子伝導層をイオン伝導体の表面に形成した例である(裏面も同様に形成)。4つの電子伝導層(裏面を合わせると8つ)は独立しているため、4個の素電池がひとつのイオン伝導体に形成されていることになる。保持体外部に存在する電子伝導層と表面の他の電子伝導層を電気的に接続する(図示せず)ことにより素電池の並列接続が可能である。表面の電子伝導層と裏面に形成されている別な素電池の電子伝導層(裏面は図示せず)とを電気的に接続すること(図示せず)により素電池の直列接続が可能となる。直接接続の場合は、一つの素電池の起電力を0.75Vとすると、図の構成では3Vの電圧の電池を構成できる。触媒層の形成数及びそれに伴う電子伝導層の形成数を増やすことにより、さらに高電圧化も可能である。
【0064】
本発明に使用される流体保持体は、最低限保持する流体、つまり、液体、気体、又は液体と気体の混合物に対して安定である必要がある。好ましくは、発生する電荷や与える電荷により形成される酸化還元雰囲気に対して安定であることが好ましい。軽量化及び成形性の面からはプラスチック材料で形成されることが好ましく、抵抗の軽減面からは触媒と接せず電子伝導層と接する部分が導電化していることが好ましい。
【0065】
すなわち非導電性部材で形成された流体保持体の表面を導電化して使用することもできる。導電化する方法としては、金属の蒸着、スパッタ、メッキ等の従来から既知の方法が使用できる。
【0066】
また電子伝導性の部分を上記のような面ではなく、立体物とすることも可能である。
【0067】
これは流体保持体自身を、“電子伝導部材(おもにイオン伝導層や電子伝導層と接している部分;立体物)”及び“プラスチック部材(主に液体、気体、又は液体と気体の混合物、つまり流体が保持されている部分;立体物)”のように複数の部材から組み合わせて使用することを意味している。この場合、導電性を有している部分は表面だけではないため、抵抗の面で有利である。また、“流体が保持されている面側”から“流体が保持されていない面”まで連続して導電物質で形成することにより、同一の電気化学デバイスの積層体の形成(接続)などに有利な構成とすることが可能である。
【0068】
次に、本発明の触媒層及び電子伝導層を作製する方法の概念を説明する。(図10)
まず帯電した(静電気を帯びた)基板1を用意する。次に、この帯電した基板を、該基板とは逆の符号で帯電した粒子を含む分散液に接触(浸し)、粒子を基板に付着させる。次いで、この基板を取り出し、粒子を含まない液に浸し、図のようにイオン伝導膜(又は多孔質膜)、及び基板2を設置する。基板2側が粒子とは逆極性となるように(図ではマイナス)となるように直流電界を印加し、基板1側に付着していた粒子をイオン伝導膜上に電気泳動させて付着させる。このような操作によりイオン伝導膜と粒子との積層体を作製することがきる。(基板1とイオン伝導膜と基板2を接近させることにより、粒子のない液を介さず、直接一段階でイオン導電膜に転写することも可能である。)
本発明に使用される静電気担持体は、静電気を担持できるもの、具体的には表面が絶縁性又は半導性のものであれば基本的に使用可能である。帯電させる方法は物理的に2種以上のものを接触摩擦させることによる帯電(摩擦帯電)、空気等に高い電界を印加することにより発生する電荷を利用する帯電(コロナ放電)、電子銃等による帯電(電荷注入)など任意の方法が使用できる。
【0069】
好ましくは、光半導体層を有するものが好ましい。ここでいう光半導体とは光照射により正電荷/負電荷を発生できるものである。このような材料を本発明の静電気担持体に使用した場合、前記の任意の方法で表面全体を帯電させた担持体に光を照射することにより、電荷を消失させることが可能となる。すなわち、光を照射する部位を制御することにより任意の形状で静電気を表面に残す(静電潜像を形成する)ことが可能となる。
【0070】
この場合の概念を図11に示す。光半導体へ帯電処理(図では正帯電)をした後、マスク等を介し光照射を行い光照射部のみ電荷を消失させる。ついで、触媒成分分散液(図の場合、負帯電分散物)を半導体基板上に塗布すると同時に直流電界(図の場合、負帯電ローラー)を印加し、触媒成分を正帯電部に電気泳動させる。ついで正帯電させたローラを介して、イオン導電膜に触媒成分を転写することにより、イオン伝導体と触媒層との積層体を作製することができる。
【0071】
図10や図11の方法によれば、触媒層を保持した任意形状のイオン伝導体を簡便に製造できると共に、基板(光半導体)を再使用するも可能である。また、一般に、光による露光は解像度が前述の通常の塗布法に比較して解像度が高い形状ができる利点を有している。さらに光照射法について述べる。
【0072】
任意形状での光照射法としては、ハロゲンランプ等の光のフォトマクスによる一括照射や、半導体レーザー光をミラー等で走査する描画照射、LEDアレイによる線状照射等の方法により可能である。特にレーザー光とよる描画やLEDアレイによる描画は、解像度が高い点、複雑形状も可能な点、版(フォトマクス)が不用で形状変化への対応性が高いことから好ましい。
【0073】
さらに、好ましい静電気担持体の構成としては、導電性基板の上部に少なくとも上記光半導体層を設けた形状が好ましい、このような形態とすることにより、光照射により発生した電荷を速やかに正負電荷に分離することが可能となり、解像度が向上する。特に導電性基板を表面帯電とは逆の極性(あるいは接地)とすることが電荷分離の点から好ましい。
【0074】
本発明で使用する触媒成分は分散媒中で帯電している必要がある。この帯電を利用して触媒成分を静電気担持体に付着させ、さらにそれをイオン伝導膜又は多孔質膜に転写させている。これは基本的には電気泳動現象を利用しているものである。
【0075】
電気泳動とは粒子(本発明では触媒成分や電子伝導性成分を含む物質)表面に存在する電荷に働く静電引力により動きが発生するもので、当然、正に荷電している粒子は負電場へ負に荷電している粒子は正電場に泳動していく。粒子の電荷はその分散媒自体が解離性の液体の場合(たとえば水(水素イオンと水酸化イオン))、その粒子の表面と親和性の高いイオンが表面に吸着し、吸着したイオンの電荷を粒子が帯びることとなる、また吸着したイオンと逆の電荷を持つイオンはこの粒子の周りを取り巻き、対イオンを形成する。解離性の液体でない場合(通常有機溶媒が多い)は、一般的には電荷制御物質(電解質構造を有するもの等)が添加されることにより、前述した吸着が起こり粒子は電荷を帯びることとなる。勿論、水のような解離性液体中にも電荷制御物質を加え、電荷をコントロールすることはできる。本発明に使用する分散液は解離性液体を使用する場合、基本的構成は液と粒子のみで構成することが可能である。しかしながら、この場合、電荷を決定する成分及び電荷量は粒子の材質と分散媒体の組み合わせで一義的に決定される(制御出来ない)ため、電荷量、符号を自由に制御するためには電荷制御物質を添加するのが好ましい。ここで使用される電荷制御物質は無機塩、有機塩等など、特に制限はないが、粒子の表面の性質及び荷電させたい符号によって適宜選択するのが好ましく、少ない添加でより大きい表面電荷をもたせられるものが好ましい。また、粒子と解離性液体だけ、あるいはさらに電荷制御物質を添加した系では粒子を小さくしないと分散液を安定化させることができない(沈降や凝集を起こしてしまう)ため、分散溶液の安定性を高める目的で界面活性剤を添加することもできる。この場合、界面活性剤がイオン性の時はそれ自体が粒子に電荷を与える役割を担うことにもなる。ここで使用される界面活性剤は非イオン性(ポリエチレングリコール型、多価アルコール型)、カチオン性(アミン塩型、アンモニウム塩型)、アニオン性(カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型)、両性(アミノ酸型、ベタイン型)のいずれも使用可能であるが、粒子に電荷を少ない添加量で付加させるためにはカチオン性又はアニオン性の活性剤を使用することが好ましい。非解離性の液体を使用した場合は電荷制御物質(界面活性剤を含む)が必須となる。同上の理由で界面活性効果のない電荷制御物質では電荷は制御できるが分散液の安定性が悪いため、界面活性剤を使用することが好ましい。
【0076】
分散液の作製は分散媒に不溶な粒子及び、必要により結着性高分子化合物/導電剤/電荷制御剤等を加えたものを“回転刃により粒子の微細化及び混合を行うホモジナイザー”、“回転する3本のロールが有するギャップ゜により粒子の微細化及び混合を行う三本ロールミル”、“ビーズを混合し攪拌することにより粒子の微細化及び混合を行うサンドミル”、“超音波振動により粒子を微細化及び混合する超音波分散”などの分散方法により作製することができる。
【0077】
本発明に使用する結着性を有する高分子化合物とは、分散媒中で安定であって、自己及び他の物質(膜や粒子)を結びつける特性を有するものである。
【0078】
具体的には、ポリフルオロエチレン、ポリエチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン/ブタジエンゴム、ニトロセルロ−ス、シアノエチルセルロ−ス、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロプレン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらは、単独で用いられたり、または混合、さらに、共重合などによって、化学的安定性を強化して用いることもできる。
【0079】
本発明に使用されるイオン伝導層は、自己保持性を有しているものである。その材質は、有機材料、無機材料、単一材料、複合材料などであり、少なくとも分散媒に対して化学的に安定であり、かつ膜厚み方向にイオン伝導性を有するものでなくてはならない。好ましくは高分子化合物であり、分子内にイオン解離基を有するものが使用できる。イオン解離基とは、自身がイオン化可能の基(水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基等)又は解離性物質(電解質塩等)を解離されることが可能な基(アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等)を指す。より具体的にはポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びこれらの誘導体や架橋体を使用できる。単体で自己保持性膜を形成できない場合、例えば、多孔質膜に保持して使用することもできる。
【0080】
本発明に使用される多孔質膜とは、分散媒に対して安定であれば使用可能であるが、イオン伝導性物質を含有(保持)できるものでなくてはならない。多孔質膜を使用する場合、イオン伝導性物質は、液体状、ゲル状、固体状等の様々な形態のイオン伝導物質の使用が可能となる。イオン伝導物質の多孔質膜への保持は、本発明で使用する分散媒中で不溶な粒子を積層したのち行われてもよいし、予め、多孔質膜にイオン伝導性物質を保持させた後、分散媒中で不溶な粒子を積層してもよい。より具体的には、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の高分子繊維からなる多孔体、ガラス繊維とそれらの高分子繊維を混用した物、前記高分子の発泡体等が使用できる。
【0081】
結着剤としては、イオン伝導性高分子を使用することが好ましい。これは結着性という機能とイオン伝導性という機能の二役を一つの材料で担うことが可能となるためである。具体的には、1次元高分子化合物であり、分子内にイオン解離基を有するものが使用できる。イオン解離基とは、自身がイオン化可能の基(水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基等)あるいは解離性物質(電解質塩等)を解離されることが可能な基(アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等)を指す。より具体的にはポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びこれらの誘導体を使用できる。またこれらに代表される解離性基を有する高分子化合物は前記電荷制御物質として機能させることも可能である。
【0082】
また材料の電気化学的(酸化還元)及び化学的(熱等)安定性の観点からは結着剤はフッ素系高分子を使用することが好ましい。具体的にはポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどが好ましくは使用できる。
【0083】
本発明に使用する分散液中に含まれる高分子材料の最も好ましい形態としては、電荷制御材としての機能、イオン伝導体としての機能、結着材としての機能、(電気)化学的安定性を併せ持つものが小型、軽量、安価、積層体の電気化学的性能向上の面で好ましい。具体的には、フルオロカーボン構造を主鎖や側鎖に有し、イオン解離基を分子鎖中に含む高分子材料が好ましい。さらに具体的には、パーフルオロエチレン構造を有し、イオン解離基を含む構造が好ましく、イオン解離基としては、伝導させるイオン種で適宜設定させるものであるが、プロトンであればカルボキシル基、スルフォン酸基、リチウムイオンであればエチレンオキシド構造、プロピレンオキシド構造を有してしていることが好ましい。
【0084】
本発明でいう電子伝導成分とは、分散剤中で安定であって触媒近傍で発生する電荷の伝播を補助する機能を担うものである。
【0085】
電子伝導成分を使用する場合については、分散媒中で安定、デバイスの動作環境下において安定である電子伝導性材料であれば何でもよいが、酸化還元双方に対する安定性、軽量である面、分散媒中での分散性が良好である点、イオン伝導性高分子を電荷制御材として吸着できる点から金属系材料よりも炭素系の材料が好ましい。特に、天然黒鉛、人造黒鉛などが使用できる。
【0086】
本発明で使用される分散媒中で不溶な粒子として、少なくとも触媒作用を有する物質を使用することにより、電気化学的な触媒反応を実施することが可能となる。ここでいう触媒作用を有する物質とは、“自らは変化せずに化学反応を促進するもの”である。粒子の形態としては、触媒作用を有する物質は触媒作用のない担体上(本発明の静電気を担持した担持体の“担持体”と区別するため触媒を担持する媒体は担体と呼ぶこととする)に担持させている形となっていることが触媒活性、耐久性、利用効率の面から好ましい。また、本発明の製法では粒子は帯電していることが必要であるが、この帯電は前述のように電荷制御材により調整することができる。触媒能力を有する物質上に電荷制御物質を被覆又は吸着させることは触媒活性を下げることになり好ましくない。担体を選択することにより電荷制御材を担体上に優性に被覆又は吸着させることにより、触媒能力を落とすことなく、本発明の製造方法を実施できる。
【0087】
触媒作用を有する物質としては、特に制限はないが、本発明がイオン伝導層上への触媒物質の転写であることから、触媒反応にイオンが関与することが好ましい。具体的には触媒作用物質として白金等の貴金属単体又は貴金属と貴金属を含む第2元素、第3元素等の合金や複合物が使用できる。また、担体としては、使用される触媒作用を有する物質及び、デバイスが機能する条件で適宜選択されるものであるが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カーボン、炭化ケイ素又は酸化チタンに代表される光半導体などが使用できる。
【0088】
触媒としてさらに具体的には、水素や有機物の酸化や水の電気分解には、白金を主体とする触媒が好ましい。特にアルコール、なかでもメタノールの酸化には“Pt及びRu又はIr”からなる触媒が好ましく、エタノールの酸化には“Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSn”からなる3種以上の触媒成分を使用することが好ましい。
【0089】
本発明の製法には分散媒に不溶な粒子として各種の材料を使用することにより、触媒反応を利用する様々な電気化学デバイスに応用可能である。
【0090】
以下、燃料電池を具体例に本発明を説明する。
【0091】
プロトン伝導型電解質を使用した燃料電池を図12に示す。
【0092】
基本的構成要素として、中心にイオン伝導層(図の場合はプロトン伝導体)が存在し、その両側にアノードの触媒層、及びカソードの触媒層が配置された構成を有している。燃料としてアノード側にプロトン源となる燃料(水素、アルコールなど)が供給し、アノード内の触媒作用により燃料から水素イオンが発生する。この時、発生する電子は外部回路に流れ出る。発生した水素イオンはプロトン伝導体中を伝搬しアノードに達する。アノードに酸化剤(空気、酸素など)を供給することにより水素イオンと酸素と外部回路を通して流れてくる電子とが反応し、水を生成する。これを反応式として現すと以下のようになる。
アノード反応;H2→2H++2e-(水素燃料の場合)
カソード反応;2H++1/2O2+2e-→H2O
全反応;H2+1/2O2→H2O
燃料電池においては、イオン伝導層の両側に触媒層を積層する必要があるので、これは本発明の製造方法をイオン伝導膜の表裏で2回繰り返すことによっても作製できる。この時、アノード側カソード側に異なる粒子を積層させることも可能である。またアノード側カソード側で同一の粒子の場合、光半導体上にフォトマスクやレーザー描画等の方法で2箇所の部位に光照射することによりイオン伝導層の片面の2個所に触媒層を積層することができるため、イオン伝導膜を内側(触媒層を外側)として触媒層が重なるように折ることによっても燃料電池の機能部材として使用することが可能である。
【0093】
また本発明の製法、特に光半導体を用いる方法においては前記のようにイオン伝導性膜や多孔質膜の同一平面内に1段階で複数の領域に触媒層を形成することが可能(複数の燃料電池要素を形成することが可能)であることから、生産性が高い方法である。また、このような手法でイオン伝導層の表裏複数の領域に触媒層や電子伝導層を形成した部分の各々を燃料電池要素としてすべて使用(並列及び/又は直列の接続;図9参照)することにより、高電圧/高出力の薄型の燃料電池が作製できることから、小型薄型の燃料電池の製法に適しているものである。
【0094】
水素ガスを燃料とする燃料電池は一般に高い出力密度が得られ、水素燃料を用いた固体高分子電解質型燃料電池が電気自動車など高速移動体の電源として、又は分散型電源として期待されている。電極における電気化学反応を活性化するために、電極では殆ど白金触媒を使用しており、アノードで発生した水素イオン(プロトン)はイオン伝導層を介してカソードまで伝導する。しかしながら、燃料水素の貯蔵や運搬、燃料加給の方法などには未だ問題点もあり、特に小型携帯機器、小型画像形成機器等の電子機器用電源を目的としたパーソナル用途には不向きである。
【0095】
本発明の燃料電池は、触媒の種類により適正があるが基本的にはいかなる燃料も使用可能である。しかしながら、燃料は体積及び重量エネルギー密度に優れるものを使用することが好ましい。燃料は通常有限な空間(容器等)に収められているため、一定の体積しか有していない。したがって、本発明の実施にあたっては、体積及び重量エネルギー密度に優れる燃料を使用することが好ましい。特に体積エネルギー密度に優れる燃料が好ましい。したがって、気体状燃料は体積エネルギー密度に劣るため好ましくなく、液体状燃料や固体状燃料が好ましい。
【0096】
これは、例えば1分子の酸化反応より取り出せる電子数が水素であれば2個、メタノールであれば6個、エタノールであれば12個であることから、各々の分子1molから取り出せるクーロン量はそれぞれ理論値として、96500×2C、96500×6C、96500×12Cとなる。各々の密度、分子量を考慮し、1cc当たりのクーロン量に換算すると水素で約9C/cc、メタノールで約14400C/cc、エタノールで15200C/ccのエネルギー密度となる。常圧の気体としての水素は単位体積あたりのエネルギー密度は著しく低くなることなる。メタノールとエタノールは酸化反応には水分子がそれぞれ、1分子、3分子必要であるが(以下の式)、これを加味しても液体燃料が優れることは明白である。
CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
C2H5OH+H2O→12H++12e−+2CO2
高圧状態の水素又は液体水素を使用することも可能であるが、容器を堅牢にする必要が生じ、容器込みのエネルギー密度を考慮すると、常温常圧で液体又は固体状態の燃料がやはり優れている。
【0097】
具体的には、水素吸蔵合金に蓄えた水素、ガソリン、液体状炭化水素、液体状アルコールなどの固体状、液体状燃料が使用できるが、本体燃料電池の小型化が可能な点、体積エネルギー密度に優れる点より、アルコール燃料を使用することが好ましい。アルコール燃料を使用することにより、燃料電池の駆動時間を向上させることが可能できる。なかでも、炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましい。
【0098】
さらに好ましくは、安全性が高く、生合成が可能である点(環境面)からエタノールを使用することが好ましい。このような形態の燃料電池は体積エネルギー密度、重量エネルギー密度に優れることから、持ち運びする携帯機器や小型の画像形成機器に使用した場合に特に好ましいものである。
【0099】
液体燃料の直接酸化ではなく、液化天然ガス(LNG)、メタンガスのような炭化水素系燃料、メタノール等の液体燃料を改質して水素を得て燃料電池の燃料とする、いわゆる改質燃料型の燃料電池も検討されているが、この場合は原燃料の改質によって得られる水素ガス燃料中に微量存在する一酸化炭素(CO)や、その他の微量な不純物により燃料電池の機能を損なう問題(触媒被毒)がある。触媒CO被毒の問題は従来から検討されており、これを低減するために提案されている触媒に白金−ルテニウム(Pt−Ru)合金触媒がある。しかしながら、溶液中のメタノール、エタノールのアノード酸化における触媒化学反応の阻害要因は、CO被毒では説明できないことも多い。これはメタノールやエタノールの酸化反応が水素やCOとは比べ物とならない程の多数の素反応を経て酸化されるためである。
【0100】
本発明によればメタノールの酸化には“Pt及びRu又はIr”からなる触媒が好ましく、エタノールの酸化には“Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSn”からなる3種以上の触媒成分を使用することが好ましい。これらの触媒が好適な理由は定かではないが、メタノール、エタノールの複雑な反応素過程の進行促進に本触媒が寄与していると考える。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例にて挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。
実施例1
10cm×10cmのAl基板上に真空蒸着によりアモルファスセレン層を作製した。Alを接地しセレン上に帯電器(スコロトロン)により帯電電位約1kVに正に帯電させた(図14の1の帯電工程)。図13のガラス性フォトマスクを会してハロゲンランプ光を照射することにより照射部の帯電電位を減衰させた(図14の2のハロゲンランプ光照射工程)。
【0102】
これとは別にアイソパーに白金を担持したカーボン(米国エレクトロケム社製)を8wt%、パーフルオロスルホン酸を4wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。この液を負極性とした導電性ゴムローラーを介して先の光照射した光半導体上に塗布した(図14の3の触媒の電気泳動工程)。この後、正極性を配した導電性ゴムロールでイオン伝導性膜(デュポン製;商標ナフィオン)をセレン上に接触させながら、ほぼ同時にイオン伝導膜をセレン上から剥離させることにより白金を担持したカーボンを主体とする粒子をイオン伝導膜に転写した(図14の4の転写工程)。乾燥した後の転写形状はフォトマスクの形状とほぼ一致していた(図14の5の工程)。同様に、イオン導電膜の裏面に表裏で触媒が同一位置に配置するように白金を担持したカーボンを主体とする粒子を転写した。
【0103】
再度10cm×10cmのAlを接地したセレン上に帯電器(スコロトロン)により帯電電位約1kVに正に帯電させた(図14の1の帯電工程)。図15のガラス性フォトマスクを会してハロゲンランプ光を照射することにより照射部の帯電電位を減衰させた(図14の2のハロゲンランプ光照射工程)。
【0104】
これとは別にアイソパーにカーボンを20wt%、結着性樹脂を2wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。この液を負極性にさせた導電性ゴムローラーを介して先の光照射した光半導体上に塗布した(図14の3の触媒の電気泳動工程)。この後、正極性を配した導電性ゴムロールでイオン伝導性膜(デュポン製;商標ナフィオン)をセレン上に接触させながら、ほぼ同時にイオン伝導膜をセレン上から剥離させることによりカーボンを主体とする粒子をイオン伝導膜に転写した(図14の4の転写工程)。乾燥した後の転写形状はフォトマスクの形状とほぼ一致していた(図14の5の工程)。同様に、イオン導電膜の裏面に表裏でカーボン層(電子伝導層が同一位置にくるようにカーボンを主体とする粒子を転写した。
【0105】
これとは別に図16及び図17の樹脂製の流体保持体、すなわち、“液体、気体、又は液体と気体の混合物の保持体”を用意した。この保持体で先のイオン伝導体を挟み(保持部が触媒転写位置に対応するように調整)、これを12個のボルトで締め付け可能な2枚の金属性プレート間に設置し,ボルトを4Nmで締め付けた。一方の保持体に加湿した水素を、他方に酸素を送ったところ水素側と空気側で0.7Vの起電力が得られ、軽く加工性の良い樹脂製の保持体を使用しても、本デバイスは電気化学デバイスとして機能することを確認した。また酸素を流した場合の圧力損失は拡散層がある場合と比較し小さかった。
実施例2
セレン/アルミ基板を一定速度で走査しながら解像度600dot/inchのLEDアレイを用いて直接セレン上に光照射する(フォトマスクは使用しない)以外は実施例1と同様に行った(光照射形状も実施例1と同様になるよう調整した)。起電力は0.71Vであった。
実施例3
実施例2の方法を用いてイオン交換膜の片面に実施例1のパターンの白金担持カーボン層を形成した。次いで、これとは別にアイソパーに白金ルテニウムを担持したカーボン(米国エレクトロケム社製)を10wt%、パーフルオロスルホン酸を5wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。
この液を用いて、先のイオン交換膜の白金担持カーボンを積層した部位の裏面に実施例2と同様な方法で白金ルテニウム担持カーボンを転写した。
【0106】
次いで、カーボン(電子伝導層)を実施例1と同様に形成した。
【0107】
実施例1と同様な2枚の流体保持体と2枚の金属プレートに挟み、白金ルテニウム側に3%メタノール水溶液、白金側に空気を供給した。起電力が0.65V発生し、積層体が電気化学素子として機能することを確認した。
【0108】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】従来の燃料電池又は電気分解素子等の構造を示す図である。
【図2】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図3】本発明の電気化学デバイスの構成を示す図である。
【図4】本発明の電気化学デバイスの別の態様を示す図である。
【図5】イオン伝導層への触媒層の形成例を示す図である。
【図6】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図7】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図8】イオン伝導層への触媒層/電子伝導層の形成例を示す図である。
【図9】イオン伝導層への触媒層と電子伝導層の形成例を示す図である。
【図10】本発明の触媒層及び電子伝導層を作製する方法を示す図である。
【図11】光半導体を静電気担持体に使用した場合のイオン伝導体と触媒層との積層体の作製を示す図である。
【図12】プロトン伝導型電解質を使用した燃料電池を示す図である。
【図13】ガラスマスク形状を示す図である。
【図14】Al基板上にアモルファスセレン層を作製する方法を示す図である。
【図15】ガラスマスク形状を示す図である。
【図16】保持体1の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図17】保持体2の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【符号の説明】
【0110】
1 流体保持体
2 触媒層
3 イオン伝導層
4 電子伝導層
5 電子伝導層
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイスに関する。より詳細には、電気化学デバイスを用いた燃料電池及びその燃料電池を用いた携帯機器や画像形成機器などの小型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子の構造は電子(電荷)を発生若しくは蓄積できる層とイオンを伝搬する層から構成されているものが多い。具体的には1次電池、2次電池、燃料電池、太陽電池、コンデンサー、電気分解素子、各種センサーなどがある。これらの構成は、イオン伝導層(液体の場合もあるし固体も場合もある)を挟んで両側に電子を伝導できるアノード層及びカソード層を配した構造である。このような電気化学デバイスの心臓部の構成に対して、液体や気体、又は液体と気体の混合物などの流体を供給することにより、電荷を発生させる電気化学デバイスが存在する。基本的には前述したすべての素子が可能であるが、代表的なものとして燃料電池、電気分解素子がある。
【0003】
従来の燃料電池や電気分解素子等の構造を図1に示す。また流体保持体、つまり“液体、気体、又は液体と気体の混合物の保持体”の平面図及び断面図を図2に示す。構成は、基本的にサンドイッチ形状で、中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、その両側に触媒層と流体拡散層を有し、さらにその両側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む構成であり、図1を参照するに、左から、流体保持体/流体拡散層/触媒層/イオン伝導層/触媒層/流体拡散層/流体保持体という構成である。機能的には保持体に流れ込んだ流体(触媒上での反応物、すなわち液体、気体、又は液体と気体の混合物など)が流体拡散層(通常多孔体)を通して触媒上に達し触媒上で反応し、反応に際し電子の受け渡し反応が行われるものである。
【0004】
従来の触媒層は単純な形状(一般的には四角形)で作製されている。これに対して流体保持体は図2に示す如く保持部が形成されている。この保持部と触媒層を直接接触させると、流体保持体の保持部以外の面に触媒層が接してしまい、機能しない触媒層が発生してしまう。このため触媒全面を機能させるため、流体拡散層(通常多孔体)を設置し、流体が触媒層全面に行き渡るように構成している。
【0005】
しかしながら、流体拡散層を設けることは大きさ(体積)、重さ(重量)的に不利であり、特に携帯機器用の電気化学デバイスの場合、小型軽量であることが要求される実情がある。また流体拡散層は存在すること自身が流体の拡散抵抗を上げる要因となっている。また、反応生成物(水や炭酸ガス)が拡散層の中に留まり、反応を阻害する要因にもなっている。
【0006】
また、上記の流体保持体は触媒層で発生した電荷を伝搬する役割も担っているため、通常、導電体で形成させており、かつ電気化学的には酸化還元の両雰囲気に曝されることからカーボンのような酸化還元の双方に強い材料を使用しているのが現状である。しかしながら、カーボンは硬く、もろいため、加工性が悪く、製造コストがかかると共に、脆いことから必然的に薄く形成することができない欠点を有している。
【0007】
また、上記の従来の一般的電気化学素子(特に燃料電池や電気分解素子)の場合の触媒層や電子伝導層の製造方法は、イオン伝導層に主にカーボンを主体とし触媒金属を含むペーストを塗布することにより作製したり、流体拡散層であるカーボンペーパーやカーボンクロス上に該ペーストを塗布したのちイオン伝導膜と一体化することにより作製されている。いずれの場合においても、塗布により“電子を発生又は蓄積できる層”の形成をするものである。この塗布工程にはブレードコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、スクリーン印刷法、フレクソ印刷法が適用されているのが現状である。ブレードコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法は、長尺の基板に対して連続で塗布することから大面積を生産性高く塗布できる方法である。しかしながら、任意の位置に任意の大きさで(たとえば正方形、長方形などの形状)塗布することはできない。また塗布位置精度も高いものではない問題を有している。スクリーン印刷法やフレクソ印刷法等の印刷版を用いる方法では、任意の位置、任意の大きさに塗布することは可能であるが、印刷位置や印刷形状を変えるためには、版を作り直さなくてはならない問題点を有する。
【0008】
また、塗布以外の方法としてはろ過法、電気泳動法、ミセル電解法などの方法が存在する。ろ過法は多孔質基板への固形物の積層に適用される方法であり、電気化学デバイスの電極作製にも応用されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、積層形状がろ過面の形状で規定されるため、形状変化や形状制御に対する対応性が悪い。また粒子が微細になるほど積層(ろ過)に時間を要し生産性を落とす欠点を有している。電気泳動法は、液体中で帯電している粒子に直流電場を印加することにより、粒子が帯電している極性と逆極性の電場方向に粒子を動かす技術である。この技術も電気化学デバイスの電極作製に応用されている(例えば、非特許文献2参照)。これは、正負電極間(直流電場間)に多孔質膜やイオン伝導膜を配置することにより膜と粒子を複合させるものである。しかしながら、積層形状が膜と液とで形成される液断面形状で決定されるため、ろ過法と同様に形状変化や形状制御に対する対応性が低い。ミセル電解法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法はフェロセンのような酸化還元可能な部位を持つ界面活性剤(ミセル化剤)により作製されるミセルが、電極表面で酸化又は還元を受けてミセルが崩壊し、ミセル内部の物質が電極表面に堆積するものである。この方法は電極面での電気化学反応を利用しているため、電極面すなわち電子伝導性を持つ基板に対してしか適用できない欠点を有している。
【特許文献1】特開昭63−243298号(特公平3−59998号)公報
【特許文献2】特開2001−236026号公報
【特許文献3】特開2002−42790号公報
【非特許文献1】2003年電気化学春季大会、3N08、313頁
【非特許文献2】2003年電気化学春季大会、3N09、314頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、従来の電気化学デバイスが有する前述した問題を解決する電気化学デバイス、すなわち、電気化学的な反応効率が改善されて、製造が簡便で小型軽量な電気化学デバイス及びそれを用いた機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、少なくとも中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、サンドイッチ状でその両側に触媒層を有し、さらに該触媒層の両外側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む電気化学デバイスであって、該イオン伝導層に該触媒層を複合したイオン伝導膜と触媒の複合体の実質的に触媒反応が行われる触媒層表面上に該電子伝導体が接触せず、かつ該触媒層表面に流体を保持できる空間を有していることを特徴とする電気化学デバイスにより達成される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、小型軽量のデバイスを作製すると共に、流体抵抗を減じ、反応生成物の除去が容易な電気化学デバイスを提供することができる。
【0012】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記触媒反応が行われる前記触媒層以外の領域に存在し、かつ前記触媒層と接する前記電子伝導体が層状で前記イオン伝導層表面に存在することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、加工性な容易で、小型薄型の流体保持体が作製できる形態の電気化学デバイスを提供することができる。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の発明において、少なくとも一方の前記保持体の保持面に位置するイオン伝導層面に触媒が存在し、前記保持体の前記流体を保持していない部分に位置する前記イオン伝導層面の少なくとも一部は触媒が存在しないことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、触媒量を低減できると共に利用効率を向上した電気化学デバイスを提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、両方の前記保持体の流体保持面に位置する前記イオン伝導層面に触媒が存在し、かつ触媒層が該イオン伝導層の水平方向に対して表裏で同一の位置に存在することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、素子のイオン抵抗を軽減した電気化学デバイスを提供することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記イオン伝導層の少なくとも一方の表面に前記触媒層が複数箇所形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、抵抗を軽減することができ、電圧を上げることができる電気化学デバイスを提供することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、Pt又は、Pt及びRu若しくはIrから成ることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、水素やメタノールの酸化反応、水の電気分解反応を可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【0022】
請求項7にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSnから成る3種以上の元素混合体であることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、エタノールの酸化反応が可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【0024】
請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも触媒成分を含み、結着性を有する高分子化合物及び/又は導電剤を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明は、任意形状の触媒層を簡便に、しかも何度でも製造できる方法を提供することができる。
【0026】
請求項9にかかる発明は、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも電子伝導成分を含み、結着性を有する高分子化合物を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、任意形状の電子伝導層を簡便に、しかも何度でも製造できる方法を提供することができる。
【0028】
請求項10にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、前記静電潜像を担持した潜像担持体は、光半導体層を有することを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、光半導体層を設けた形態とすることにより、光照射により発生した電荷を速やかに正負電荷に分離することが可能となり、解像度が向上でき、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0030】
請求項11にかかる発明は、請求項10に記載の発明において、前記光半導体を有する担持体は、光照射法により処理されることを特徴とする。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、通常の塗布法に比較して、解像度が高い形状が可能であり、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0032】
請求項12にかかる発明は、請求項11に記載の発明において、前記光照射法は、半導体レーザー光又はLEDアレイによる照射法であることを特徴とする。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、解像度が高く、複雑な形状も可能となり、版(フォトマスク)が不用で形状変化への対応性が可能となり、任意の触媒層又は電子伝導層を提供できる。
【0034】
請求項13にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、結着性を有する高分子化合物はイオン伝導性高分子であることを特徴とする。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、粒子の結着性を保持しつつ、界面抵抗の低減を図ると共に分散物の簡素化を図ることができる。
【0036】
請求項14にかかる発明は、請求項8又は9に記載の発明において、結着性を有する高分子化合物はフッ素系高分子であることを特徴とする。
【0037】
請求項14に記載の発明によれば、結着性を維持しつつ、高分子化合物の電気化学的安定性を向上させることができる。
【0038】
請求項15にかかる発明は、請求項9に記載の発明において、前記電子伝導成分はカーボンであることを特徴とする。
【0039】
請求項15に記載の発明によれば、界面抵抗の低減及び電気学的安定性を向上させることができる。
【0040】
請求項16にかかる発明は、請求項8乃至15のいずれか一項記載の方法を用いて作製した電気化学デバイスによって達成できる。
【0041】
請求項16に記載の発明によれば、製造が簡便で任意形状が可能な触媒層、電子伝導層を有する電気化学デバイスを提供することできる。
【0042】
請求項17にかかる発明は、請求項1乃至7又は16のいずれか一項記載の電気化学デバイスを用いた燃料電池によって達成できる。
【0043】
請求項17に記載の発明によれば、上記目的を達成した電気化学デバイスを用いた燃料電池を提供することができる。
【0044】
請求項18にかかる発明は、請求項17に記載の発明において、前記燃料が炭素数4以下のアルコールであることを特徴とする。
【0045】
請求項18に記載の発明によれば、燃料電池の小型化が可能となり、体積エネルギー密度に優れ、燃料電池の駆動時間を向上できる。
【0046】
請求項19にかかる発明は、請求項18に記載の発明において、前記アルコールはエタノールであることを特徴とする。
【0047】
請求項19に記載の発明によれば、安全面・環境面に優れ、エネルギー密度の高い燃料を使用した燃料電池を提供することができる。
【0048】
請求項20にかかる発明は、請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した携帯機器によって達成できる。
【0049】
請求項20に記載の発明によれば、前記目的を達成した燃料電池を使用した利便性/信頼性の高い携帯機器を提供製造することができる。
【0050】
請求項21にかかる発明は、請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した画像形成機器によって達成できる。
【0051】
請求項21に記載の発明によれば、前記目的を達成した燃料電池を使用した利便性・信頼性の高い画像形成機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
したがって、本発明によれば、小型軽量で製造が簡便な電気化学デバイスを提供することができる。より具体的には、デバイスの反応時における流体抵抗を改善し、該反応による水や炭酸ガスなどの生成物の除去を改善し、反応に使用する触媒量を抑え、反応によって生じる電圧を上げることができるなど、デバイスの電気化学的な反応効率を改善し、用途に応じて触媒層や電子伝導層の任意の形状が簡便に製造可能な電気化学デバイスが提供できる。
【0053】
さらに、そのような電気化学デバイスを用いた安全性が高く、かつ環境的に優れ、エネルギー密度の高い燃料を使用する燃料電池が提供可能であり、該燃料電池を搭載した利便性及び信頼性の高い携帯機器や画像形成機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の電気化学デバイスの構成概念を図3に示す。
【0055】
図3において、1は液体、気体、又は液体と気体の混合物など流体の保持体、2は触媒層、3は固体電解質、4は電子伝導体(端子)である。本発明において、流体とは、上述したように、液体、気体、又は液体と気体の混合物を意味する。図3に示す本発明の実施態様は、流体拡散層を使用しないため、小型化軽量化が可能である。また拡散層が存在しないので、基本的に拡散層による流体の拡散抵抗が存在しない。また流体拡散層がないことから、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水等の排出物を速やかに反応場である触媒部から引き離すことが容易になる。さらに触媒層面と流体保持体で挟ませた部分に電子伝導性の端子を設けて触媒反応で発生した電荷を取り出しているため、流体保持体を電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型が可能な高分子材料を使用することが可能となる。
【0056】
また、図4に本発明の別な実施態様を示す。
【0057】
図4において、5は固体電解質面に形成した電子伝導層である。図4に示す本発明の別の実施態様もまた、流体拡散層を使用しないため、小型化及び軽量化が可能である。また拡散層が存在しないので、基本的に拡散層による流体の拡散抵抗が存在しないと共に、アノードやカソードで発生する炭酸ガスや水等の排出物を速やかに反応場である触媒部から引き離すことが容易になる。また固体電解質面に形成した電子伝導層より触媒で発生した電荷を取り出しているため、流体保持体を電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型が可能な高分子材料を使用することが可能となる。また、触媒層の面積を実質的に触媒反応が行われる面積と概ね同一にできることから、触媒使用量が低減できる。
【0058】
図5に本発明に使用する触媒層の形成例をしめす。また、このとき使用する流体保持体の平面図及び断面図を図6に示す(流体保持体は図6に限定されるものではなく、通路は2本以上であってもかまわなく、混合通路(図7)であってもかまわない。ただし、触媒層は流体保持部にあわせて形成する)。イオン伝導膜上に流体保持体が構成され、その流体保持部分に触媒層が構成されている。このような触媒層を形成することにより、流体拡散層が不用になり、小型軽量化が可能となると共に使用する触媒の全量も削減することができる。また流体拡散層が存在しないことにより流体の拡散抵抗を減じることが可能であると共に排出物の除去も容易となる。
【0059】
イオン伝導層に形成される触媒層は、イオン伝導層の表裏にて概ね同一位置の形成されていることが好ましい。イオン伝導抵抗はその距離に比例するため、位置が異なっているほどイオンの移動距離が長くなり、電気化学デバイスとしても抵抗が大きいものとなってしまう。
【0060】
本発明の別な実施形態を図8(触媒層及び電子伝導層の形成例)に示す。
【0061】
流体保持体の保持部分に触媒層、保持部分以外の面に電子伝導層を設けた構成である。このような構成とすることにより、触媒層で発生した電荷、又は触媒層に供給すべき電荷を低抵抗にて扱うことが可能となる。前記と同様な理由で,イオン伝導層に形成される触媒層及び電子伝導層は、イオン伝導層の表裏にて概ね同一位置に形成されていることが好ましい。また図4の態様で説明したように流体保持体外部まで電子伝導層を広げる(イオン伝導層表面に設けた電子伝導層:図4の5)ことにより外部へ電荷を取り出す、又は内部に注入する端子部を形成することが可能である。
【0062】
図9に本発明の別な触媒及び電子伝導層の形成例を示す。
【0063】
図9は、触媒層4箇所に対して、各々電子伝導層をイオン伝導体の表面に形成した例である(裏面も同様に形成)。4つの電子伝導層(裏面を合わせると8つ)は独立しているため、4個の素電池がひとつのイオン伝導体に形成されていることになる。保持体外部に存在する電子伝導層と表面の他の電子伝導層を電気的に接続する(図示せず)ことにより素電池の並列接続が可能である。表面の電子伝導層と裏面に形成されている別な素電池の電子伝導層(裏面は図示せず)とを電気的に接続すること(図示せず)により素電池の直列接続が可能となる。直接接続の場合は、一つの素電池の起電力を0.75Vとすると、図の構成では3Vの電圧の電池を構成できる。触媒層の形成数及びそれに伴う電子伝導層の形成数を増やすことにより、さらに高電圧化も可能である。
【0064】
本発明に使用される流体保持体は、最低限保持する流体、つまり、液体、気体、又は液体と気体の混合物に対して安定である必要がある。好ましくは、発生する電荷や与える電荷により形成される酸化還元雰囲気に対して安定であることが好ましい。軽量化及び成形性の面からはプラスチック材料で形成されることが好ましく、抵抗の軽減面からは触媒と接せず電子伝導層と接する部分が導電化していることが好ましい。
【0065】
すなわち非導電性部材で形成された流体保持体の表面を導電化して使用することもできる。導電化する方法としては、金属の蒸着、スパッタ、メッキ等の従来から既知の方法が使用できる。
【0066】
また電子伝導性の部分を上記のような面ではなく、立体物とすることも可能である。
【0067】
これは流体保持体自身を、“電子伝導部材(おもにイオン伝導層や電子伝導層と接している部分;立体物)”及び“プラスチック部材(主に液体、気体、又は液体と気体の混合物、つまり流体が保持されている部分;立体物)”のように複数の部材から組み合わせて使用することを意味している。この場合、導電性を有している部分は表面だけではないため、抵抗の面で有利である。また、“流体が保持されている面側”から“流体が保持されていない面”まで連続して導電物質で形成することにより、同一の電気化学デバイスの積層体の形成(接続)などに有利な構成とすることが可能である。
【0068】
次に、本発明の触媒層及び電子伝導層を作製する方法の概念を説明する。(図10)
まず帯電した(静電気を帯びた)基板1を用意する。次に、この帯電した基板を、該基板とは逆の符号で帯電した粒子を含む分散液に接触(浸し)、粒子を基板に付着させる。次いで、この基板を取り出し、粒子を含まない液に浸し、図のようにイオン伝導膜(又は多孔質膜)、及び基板2を設置する。基板2側が粒子とは逆極性となるように(図ではマイナス)となるように直流電界を印加し、基板1側に付着していた粒子をイオン伝導膜上に電気泳動させて付着させる。このような操作によりイオン伝導膜と粒子との積層体を作製することがきる。(基板1とイオン伝導膜と基板2を接近させることにより、粒子のない液を介さず、直接一段階でイオン導電膜に転写することも可能である。)
本発明に使用される静電気担持体は、静電気を担持できるもの、具体的には表面が絶縁性又は半導性のものであれば基本的に使用可能である。帯電させる方法は物理的に2種以上のものを接触摩擦させることによる帯電(摩擦帯電)、空気等に高い電界を印加することにより発生する電荷を利用する帯電(コロナ放電)、電子銃等による帯電(電荷注入)など任意の方法が使用できる。
【0069】
好ましくは、光半導体層を有するものが好ましい。ここでいう光半導体とは光照射により正電荷/負電荷を発生できるものである。このような材料を本発明の静電気担持体に使用した場合、前記の任意の方法で表面全体を帯電させた担持体に光を照射することにより、電荷を消失させることが可能となる。すなわち、光を照射する部位を制御することにより任意の形状で静電気を表面に残す(静電潜像を形成する)ことが可能となる。
【0070】
この場合の概念を図11に示す。光半導体へ帯電処理(図では正帯電)をした後、マスク等を介し光照射を行い光照射部のみ電荷を消失させる。ついで、触媒成分分散液(図の場合、負帯電分散物)を半導体基板上に塗布すると同時に直流電界(図の場合、負帯電ローラー)を印加し、触媒成分を正帯電部に電気泳動させる。ついで正帯電させたローラを介して、イオン導電膜に触媒成分を転写することにより、イオン伝導体と触媒層との積層体を作製することができる。
【0071】
図10や図11の方法によれば、触媒層を保持した任意形状のイオン伝導体を簡便に製造できると共に、基板(光半導体)を再使用するも可能である。また、一般に、光による露光は解像度が前述の通常の塗布法に比較して解像度が高い形状ができる利点を有している。さらに光照射法について述べる。
【0072】
任意形状での光照射法としては、ハロゲンランプ等の光のフォトマクスによる一括照射や、半導体レーザー光をミラー等で走査する描画照射、LEDアレイによる線状照射等の方法により可能である。特にレーザー光とよる描画やLEDアレイによる描画は、解像度が高い点、複雑形状も可能な点、版(フォトマクス)が不用で形状変化への対応性が高いことから好ましい。
【0073】
さらに、好ましい静電気担持体の構成としては、導電性基板の上部に少なくとも上記光半導体層を設けた形状が好ましい、このような形態とすることにより、光照射により発生した電荷を速やかに正負電荷に分離することが可能となり、解像度が向上する。特に導電性基板を表面帯電とは逆の極性(あるいは接地)とすることが電荷分離の点から好ましい。
【0074】
本発明で使用する触媒成分は分散媒中で帯電している必要がある。この帯電を利用して触媒成分を静電気担持体に付着させ、さらにそれをイオン伝導膜又は多孔質膜に転写させている。これは基本的には電気泳動現象を利用しているものである。
【0075】
電気泳動とは粒子(本発明では触媒成分や電子伝導性成分を含む物質)表面に存在する電荷に働く静電引力により動きが発生するもので、当然、正に荷電している粒子は負電場へ負に荷電している粒子は正電場に泳動していく。粒子の電荷はその分散媒自体が解離性の液体の場合(たとえば水(水素イオンと水酸化イオン))、その粒子の表面と親和性の高いイオンが表面に吸着し、吸着したイオンの電荷を粒子が帯びることとなる、また吸着したイオンと逆の電荷を持つイオンはこの粒子の周りを取り巻き、対イオンを形成する。解離性の液体でない場合(通常有機溶媒が多い)は、一般的には電荷制御物質(電解質構造を有するもの等)が添加されることにより、前述した吸着が起こり粒子は電荷を帯びることとなる。勿論、水のような解離性液体中にも電荷制御物質を加え、電荷をコントロールすることはできる。本発明に使用する分散液は解離性液体を使用する場合、基本的構成は液と粒子のみで構成することが可能である。しかしながら、この場合、電荷を決定する成分及び電荷量は粒子の材質と分散媒体の組み合わせで一義的に決定される(制御出来ない)ため、電荷量、符号を自由に制御するためには電荷制御物質を添加するのが好ましい。ここで使用される電荷制御物質は無機塩、有機塩等など、特に制限はないが、粒子の表面の性質及び荷電させたい符号によって適宜選択するのが好ましく、少ない添加でより大きい表面電荷をもたせられるものが好ましい。また、粒子と解離性液体だけ、あるいはさらに電荷制御物質を添加した系では粒子を小さくしないと分散液を安定化させることができない(沈降や凝集を起こしてしまう)ため、分散溶液の安定性を高める目的で界面活性剤を添加することもできる。この場合、界面活性剤がイオン性の時はそれ自体が粒子に電荷を与える役割を担うことにもなる。ここで使用される界面活性剤は非イオン性(ポリエチレングリコール型、多価アルコール型)、カチオン性(アミン塩型、アンモニウム塩型)、アニオン性(カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型)、両性(アミノ酸型、ベタイン型)のいずれも使用可能であるが、粒子に電荷を少ない添加量で付加させるためにはカチオン性又はアニオン性の活性剤を使用することが好ましい。非解離性の液体を使用した場合は電荷制御物質(界面活性剤を含む)が必須となる。同上の理由で界面活性効果のない電荷制御物質では電荷は制御できるが分散液の安定性が悪いため、界面活性剤を使用することが好ましい。
【0076】
分散液の作製は分散媒に不溶な粒子及び、必要により結着性高分子化合物/導電剤/電荷制御剤等を加えたものを“回転刃により粒子の微細化及び混合を行うホモジナイザー”、“回転する3本のロールが有するギャップ゜により粒子の微細化及び混合を行う三本ロールミル”、“ビーズを混合し攪拌することにより粒子の微細化及び混合を行うサンドミル”、“超音波振動により粒子を微細化及び混合する超音波分散”などの分散方法により作製することができる。
【0077】
本発明に使用する結着性を有する高分子化合物とは、分散媒中で安定であって、自己及び他の物質(膜や粒子)を結びつける特性を有するものである。
【0078】
具体的には、ポリフルオロエチレン、ポリエチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン/ブタジエンゴム、ニトロセルロ−ス、シアノエチルセルロ−ス、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロプレン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらは、単独で用いられたり、または混合、さらに、共重合などによって、化学的安定性を強化して用いることもできる。
【0079】
本発明に使用されるイオン伝導層は、自己保持性を有しているものである。その材質は、有機材料、無機材料、単一材料、複合材料などであり、少なくとも分散媒に対して化学的に安定であり、かつ膜厚み方向にイオン伝導性を有するものでなくてはならない。好ましくは高分子化合物であり、分子内にイオン解離基を有するものが使用できる。イオン解離基とは、自身がイオン化可能の基(水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基等)又は解離性物質(電解質塩等)を解離されることが可能な基(アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等)を指す。より具体的にはポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びこれらの誘導体や架橋体を使用できる。単体で自己保持性膜を形成できない場合、例えば、多孔質膜に保持して使用することもできる。
【0080】
本発明に使用される多孔質膜とは、分散媒に対して安定であれば使用可能であるが、イオン伝導性物質を含有(保持)できるものでなくてはならない。多孔質膜を使用する場合、イオン伝導性物質は、液体状、ゲル状、固体状等の様々な形態のイオン伝導物質の使用が可能となる。イオン伝導物質の多孔質膜への保持は、本発明で使用する分散媒中で不溶な粒子を積層したのち行われてもよいし、予め、多孔質膜にイオン伝導性物質を保持させた後、分散媒中で不溶な粒子を積層してもよい。より具体的には、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の高分子繊維からなる多孔体、ガラス繊維とそれらの高分子繊維を混用した物、前記高分子の発泡体等が使用できる。
【0081】
結着剤としては、イオン伝導性高分子を使用することが好ましい。これは結着性という機能とイオン伝導性という機能の二役を一つの材料で担うことが可能となるためである。具体的には、1次元高分子化合物であり、分子内にイオン解離基を有するものが使用できる。イオン解離基とは、自身がイオン化可能の基(水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基等)あるいは解離性物質(電解質塩等)を解離されることが可能な基(アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等)を指す。より具体的にはポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びこれらの誘導体を使用できる。またこれらに代表される解離性基を有する高分子化合物は前記電荷制御物質として機能させることも可能である。
【0082】
また材料の電気化学的(酸化還元)及び化学的(熱等)安定性の観点からは結着剤はフッ素系高分子を使用することが好ましい。具体的にはポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどが好ましくは使用できる。
【0083】
本発明に使用する分散液中に含まれる高分子材料の最も好ましい形態としては、電荷制御材としての機能、イオン伝導体としての機能、結着材としての機能、(電気)化学的安定性を併せ持つものが小型、軽量、安価、積層体の電気化学的性能向上の面で好ましい。具体的には、フルオロカーボン構造を主鎖や側鎖に有し、イオン解離基を分子鎖中に含む高分子材料が好ましい。さらに具体的には、パーフルオロエチレン構造を有し、イオン解離基を含む構造が好ましく、イオン解離基としては、伝導させるイオン種で適宜設定させるものであるが、プロトンであればカルボキシル基、スルフォン酸基、リチウムイオンであればエチレンオキシド構造、プロピレンオキシド構造を有してしていることが好ましい。
【0084】
本発明でいう電子伝導成分とは、分散剤中で安定であって触媒近傍で発生する電荷の伝播を補助する機能を担うものである。
【0085】
電子伝導成分を使用する場合については、分散媒中で安定、デバイスの動作環境下において安定である電子伝導性材料であれば何でもよいが、酸化還元双方に対する安定性、軽量である面、分散媒中での分散性が良好である点、イオン伝導性高分子を電荷制御材として吸着できる点から金属系材料よりも炭素系の材料が好ましい。特に、天然黒鉛、人造黒鉛などが使用できる。
【0086】
本発明で使用される分散媒中で不溶な粒子として、少なくとも触媒作用を有する物質を使用することにより、電気化学的な触媒反応を実施することが可能となる。ここでいう触媒作用を有する物質とは、“自らは変化せずに化学反応を促進するもの”である。粒子の形態としては、触媒作用を有する物質は触媒作用のない担体上(本発明の静電気を担持した担持体の“担持体”と区別するため触媒を担持する媒体は担体と呼ぶこととする)に担持させている形となっていることが触媒活性、耐久性、利用効率の面から好ましい。また、本発明の製法では粒子は帯電していることが必要であるが、この帯電は前述のように電荷制御材により調整することができる。触媒能力を有する物質上に電荷制御物質を被覆又は吸着させることは触媒活性を下げることになり好ましくない。担体を選択することにより電荷制御材を担体上に優性に被覆又は吸着させることにより、触媒能力を落とすことなく、本発明の製造方法を実施できる。
【0087】
触媒作用を有する物質としては、特に制限はないが、本発明がイオン伝導層上への触媒物質の転写であることから、触媒反応にイオンが関与することが好ましい。具体的には触媒作用物質として白金等の貴金属単体又は貴金属と貴金属を含む第2元素、第3元素等の合金や複合物が使用できる。また、担体としては、使用される触媒作用を有する物質及び、デバイスが機能する条件で適宜選択されるものであるが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カーボン、炭化ケイ素又は酸化チタンに代表される光半導体などが使用できる。
【0088】
触媒としてさらに具体的には、水素や有機物の酸化や水の電気分解には、白金を主体とする触媒が好ましい。特にアルコール、なかでもメタノールの酸化には“Pt及びRu又はIr”からなる触媒が好ましく、エタノールの酸化には“Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSn”からなる3種以上の触媒成分を使用することが好ましい。
【0089】
本発明の製法には分散媒に不溶な粒子として各種の材料を使用することにより、触媒反応を利用する様々な電気化学デバイスに応用可能である。
【0090】
以下、燃料電池を具体例に本発明を説明する。
【0091】
プロトン伝導型電解質を使用した燃料電池を図12に示す。
【0092】
基本的構成要素として、中心にイオン伝導層(図の場合はプロトン伝導体)が存在し、その両側にアノードの触媒層、及びカソードの触媒層が配置された構成を有している。燃料としてアノード側にプロトン源となる燃料(水素、アルコールなど)が供給し、アノード内の触媒作用により燃料から水素イオンが発生する。この時、発生する電子は外部回路に流れ出る。発生した水素イオンはプロトン伝導体中を伝搬しアノードに達する。アノードに酸化剤(空気、酸素など)を供給することにより水素イオンと酸素と外部回路を通して流れてくる電子とが反応し、水を生成する。これを反応式として現すと以下のようになる。
アノード反応;H2→2H++2e-(水素燃料の場合)
カソード反応;2H++1/2O2+2e-→H2O
全反応;H2+1/2O2→H2O
燃料電池においては、イオン伝導層の両側に触媒層を積層する必要があるので、これは本発明の製造方法をイオン伝導膜の表裏で2回繰り返すことによっても作製できる。この時、アノード側カソード側に異なる粒子を積層させることも可能である。またアノード側カソード側で同一の粒子の場合、光半導体上にフォトマスクやレーザー描画等の方法で2箇所の部位に光照射することによりイオン伝導層の片面の2個所に触媒層を積層することができるため、イオン伝導膜を内側(触媒層を外側)として触媒層が重なるように折ることによっても燃料電池の機能部材として使用することが可能である。
【0093】
また本発明の製法、特に光半導体を用いる方法においては前記のようにイオン伝導性膜や多孔質膜の同一平面内に1段階で複数の領域に触媒層を形成することが可能(複数の燃料電池要素を形成することが可能)であることから、生産性が高い方法である。また、このような手法でイオン伝導層の表裏複数の領域に触媒層や電子伝導層を形成した部分の各々を燃料電池要素としてすべて使用(並列及び/又は直列の接続;図9参照)することにより、高電圧/高出力の薄型の燃料電池が作製できることから、小型薄型の燃料電池の製法に適しているものである。
【0094】
水素ガスを燃料とする燃料電池は一般に高い出力密度が得られ、水素燃料を用いた固体高分子電解質型燃料電池が電気自動車など高速移動体の電源として、又は分散型電源として期待されている。電極における電気化学反応を活性化するために、電極では殆ど白金触媒を使用しており、アノードで発生した水素イオン(プロトン)はイオン伝導層を介してカソードまで伝導する。しかしながら、燃料水素の貯蔵や運搬、燃料加給の方法などには未だ問題点もあり、特に小型携帯機器、小型画像形成機器等の電子機器用電源を目的としたパーソナル用途には不向きである。
【0095】
本発明の燃料電池は、触媒の種類により適正があるが基本的にはいかなる燃料も使用可能である。しかしながら、燃料は体積及び重量エネルギー密度に優れるものを使用することが好ましい。燃料は通常有限な空間(容器等)に収められているため、一定の体積しか有していない。したがって、本発明の実施にあたっては、体積及び重量エネルギー密度に優れる燃料を使用することが好ましい。特に体積エネルギー密度に優れる燃料が好ましい。したがって、気体状燃料は体積エネルギー密度に劣るため好ましくなく、液体状燃料や固体状燃料が好ましい。
【0096】
これは、例えば1分子の酸化反応より取り出せる電子数が水素であれば2個、メタノールであれば6個、エタノールであれば12個であることから、各々の分子1molから取り出せるクーロン量はそれぞれ理論値として、96500×2C、96500×6C、96500×12Cとなる。各々の密度、分子量を考慮し、1cc当たりのクーロン量に換算すると水素で約9C/cc、メタノールで約14400C/cc、エタノールで15200C/ccのエネルギー密度となる。常圧の気体としての水素は単位体積あたりのエネルギー密度は著しく低くなることなる。メタノールとエタノールは酸化反応には水分子がそれぞれ、1分子、3分子必要であるが(以下の式)、これを加味しても液体燃料が優れることは明白である。
CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
C2H5OH+H2O→12H++12e−+2CO2
高圧状態の水素又は液体水素を使用することも可能であるが、容器を堅牢にする必要が生じ、容器込みのエネルギー密度を考慮すると、常温常圧で液体又は固体状態の燃料がやはり優れている。
【0097】
具体的には、水素吸蔵合金に蓄えた水素、ガソリン、液体状炭化水素、液体状アルコールなどの固体状、液体状燃料が使用できるが、本体燃料電池の小型化が可能な点、体積エネルギー密度に優れる点より、アルコール燃料を使用することが好ましい。アルコール燃料を使用することにより、燃料電池の駆動時間を向上させることが可能できる。なかでも、炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましい。
【0098】
さらに好ましくは、安全性が高く、生合成が可能である点(環境面)からエタノールを使用することが好ましい。このような形態の燃料電池は体積エネルギー密度、重量エネルギー密度に優れることから、持ち運びする携帯機器や小型の画像形成機器に使用した場合に特に好ましいものである。
【0099】
液体燃料の直接酸化ではなく、液化天然ガス(LNG)、メタンガスのような炭化水素系燃料、メタノール等の液体燃料を改質して水素を得て燃料電池の燃料とする、いわゆる改質燃料型の燃料電池も検討されているが、この場合は原燃料の改質によって得られる水素ガス燃料中に微量存在する一酸化炭素(CO)や、その他の微量な不純物により燃料電池の機能を損なう問題(触媒被毒)がある。触媒CO被毒の問題は従来から検討されており、これを低減するために提案されている触媒に白金−ルテニウム(Pt−Ru)合金触媒がある。しかしながら、溶液中のメタノール、エタノールのアノード酸化における触媒化学反応の阻害要因は、CO被毒では説明できないことも多い。これはメタノールやエタノールの酸化反応が水素やCOとは比べ物とならない程の多数の素反応を経て酸化されるためである。
【0100】
本発明によればメタノールの酸化には“Pt及びRu又はIr”からなる触媒が好ましく、エタノールの酸化には“Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSn”からなる3種以上の触媒成分を使用することが好ましい。これらの触媒が好適な理由は定かではないが、メタノール、エタノールの複雑な反応素過程の進行促進に本触媒が寄与していると考える。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例にて挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。
実施例1
10cm×10cmのAl基板上に真空蒸着によりアモルファスセレン層を作製した。Alを接地しセレン上に帯電器(スコロトロン)により帯電電位約1kVに正に帯電させた(図14の1の帯電工程)。図13のガラス性フォトマスクを会してハロゲンランプ光を照射することにより照射部の帯電電位を減衰させた(図14の2のハロゲンランプ光照射工程)。
【0102】
これとは別にアイソパーに白金を担持したカーボン(米国エレクトロケム社製)を8wt%、パーフルオロスルホン酸を4wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。この液を負極性とした導電性ゴムローラーを介して先の光照射した光半導体上に塗布した(図14の3の触媒の電気泳動工程)。この後、正極性を配した導電性ゴムロールでイオン伝導性膜(デュポン製;商標ナフィオン)をセレン上に接触させながら、ほぼ同時にイオン伝導膜をセレン上から剥離させることにより白金を担持したカーボンを主体とする粒子をイオン伝導膜に転写した(図14の4の転写工程)。乾燥した後の転写形状はフォトマスクの形状とほぼ一致していた(図14の5の工程)。同様に、イオン導電膜の裏面に表裏で触媒が同一位置に配置するように白金を担持したカーボンを主体とする粒子を転写した。
【0103】
再度10cm×10cmのAlを接地したセレン上に帯電器(スコロトロン)により帯電電位約1kVに正に帯電させた(図14の1の帯電工程)。図15のガラス性フォトマスクを会してハロゲンランプ光を照射することにより照射部の帯電電位を減衰させた(図14の2のハロゲンランプ光照射工程)。
【0104】
これとは別にアイソパーにカーボンを20wt%、結着性樹脂を2wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。この液を負極性にさせた導電性ゴムローラーを介して先の光照射した光半導体上に塗布した(図14の3の触媒の電気泳動工程)。この後、正極性を配した導電性ゴムロールでイオン伝導性膜(デュポン製;商標ナフィオン)をセレン上に接触させながら、ほぼ同時にイオン伝導膜をセレン上から剥離させることによりカーボンを主体とする粒子をイオン伝導膜に転写した(図14の4の転写工程)。乾燥した後の転写形状はフォトマスクの形状とほぼ一致していた(図14の5の工程)。同様に、イオン導電膜の裏面に表裏でカーボン層(電子伝導層が同一位置にくるようにカーボンを主体とする粒子を転写した。
【0105】
これとは別に図16及び図17の樹脂製の流体保持体、すなわち、“液体、気体、又は液体と気体の混合物の保持体”を用意した。この保持体で先のイオン伝導体を挟み(保持部が触媒転写位置に対応するように調整)、これを12個のボルトで締め付け可能な2枚の金属性プレート間に設置し,ボルトを4Nmで締め付けた。一方の保持体に加湿した水素を、他方に酸素を送ったところ水素側と空気側で0.7Vの起電力が得られ、軽く加工性の良い樹脂製の保持体を使用しても、本デバイスは電気化学デバイスとして機能することを確認した。また酸素を流した場合の圧力損失は拡散層がある場合と比較し小さかった。
実施例2
セレン/アルミ基板を一定速度で走査しながら解像度600dot/inchのLEDアレイを用いて直接セレン上に光照射する(フォトマスクは使用しない)以外は実施例1と同様に行った(光照射形状も実施例1と同様になるよう調整した)。起電力は0.71Vであった。
実施例3
実施例2の方法を用いてイオン交換膜の片面に実施例1のパターンの白金担持カーボン層を形成した。次いで、これとは別にアイソパーに白金ルテニウムを担持したカーボン(米国エレクトロケム社製)を10wt%、パーフルオロスルホン酸を5wt%となるように添加し、分散処理を行った液を準備した。
この液を用いて、先のイオン交換膜の白金担持カーボンを積層した部位の裏面に実施例2と同様な方法で白金ルテニウム担持カーボンを転写した。
【0106】
次いで、カーボン(電子伝導層)を実施例1と同様に形成した。
【0107】
実施例1と同様な2枚の流体保持体と2枚の金属プレートに挟み、白金ルテニウム側に3%メタノール水溶液、白金側に空気を供給した。起電力が0.65V発生し、積層体が電気化学素子として機能することを確認した。
【0108】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】従来の燃料電池又は電気分解素子等の構造を示す図である。
【図2】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図3】本発明の電気化学デバイスの構成を示す図である。
【図4】本発明の電気化学デバイスの別の態様を示す図である。
【図5】イオン伝導層への触媒層の形成例を示す図である。
【図6】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図7】流体保持体の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図8】イオン伝導層への触媒層/電子伝導層の形成例を示す図である。
【図9】イオン伝導層への触媒層と電子伝導層の形成例を示す図である。
【図10】本発明の触媒層及び電子伝導層を作製する方法を示す図である。
【図11】光半導体を静電気担持体に使用した場合のイオン伝導体と触媒層との積層体の作製を示す図である。
【図12】プロトン伝導型電解質を使用した燃料電池を示す図である。
【図13】ガラスマスク形状を示す図である。
【図14】Al基板上にアモルファスセレン層を作製する方法を示す図である。
【図15】ガラスマスク形状を示す図である。
【図16】保持体1の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【図17】保持体2の平面図及びAA’断面図を表した図である。
【符号の説明】
【0110】
1 流体保持体
2 触媒層
3 イオン伝導層
4 電子伝導層
5 電子伝導層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、サンドイッチ状でその両側に触媒層を有し、さらに該触媒層の両外側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む電気化学デバイスであって、該イオン伝導層に該触媒層を複合したイオン伝導膜と触媒の複合体の実質的に触媒反応が行われる触媒層表面上に該電子伝導体が接触せず、かつ該触媒層表面に流体を保持できる空間を有していることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記触媒反応が行われる前記触媒層以外の領域に存在し、かつ前記触媒層と接する前記電子伝導体が層状で前記イオン伝導層表面に存在することを特徴とする請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
少なくとも一方の前記保持体の保持面に位置するイオン伝導層面に触媒が存在し、前記保持体の前記流体を保持していない部分に位置する前記イオン伝導層面の少なくとも一部は触媒が存在しないことを特徴とする請求項1又は2記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
両方の前記保持体の流体保持面に位置する前記イオン伝導層面に触媒が存在し、かつ触媒層が該イオン伝導層の水平方向に対して表裏で同一の位置に存在することを特徴とする請求項3記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記イオン伝導層の少なくとも一方の表面に前記触媒層が複数箇所形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記触媒は、Pt又は、Pt及びRu若しくはIrから成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記触媒は、Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSnから成る3種以上の元素混合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも触媒成分を含み、結着性を有する高分子化合物及び/又は導電剤を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の電気化学デバイス用触媒層の形成方法。
【請求項9】
前記静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも電子伝導成分を含み、結着性を有する高分子化合物を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項記載の電気化学デバイス用電子伝導層の形成方法。
【請求項10】
前記静電潜像を担持した潜像担持体は、光半導体層を有することを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記光半導体を有する担持体は、光照射法により処理されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記光照射法は、半導体レーザー光又はLEDアレイによる照射法であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
結着性を有する高分子化合物はイオン伝導性高分子であることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項14】
結着性を有する高分子化合物はフッ素系高分子であることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項15】
前記電子伝導成分はカーボンであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項8乃至15のいずれか一項記載の方法を用いて作製した電気化学デバイス。
【請求項17】
請求項1乃至7又は16のいずれか一項記載の電気化学デバイスを用いた燃料電池。
【請求項18】
前記燃料が炭素数4以下のアルコールであることを特徴とする請求項17に記載の燃料電池。
【請求項19】
前記アルコールはエタノールであることを特徴とする請求項18に記載の燃料電池。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した携帯機器。
【請求項21】
請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した画像形成機器。
【請求項1】
少なくとも中心に固体又は液体電解質のイオン伝導層を有し、サンドイッチ状でその両側に触媒層を有し、さらに該触媒層の両外側に燃料となる流体保持体を有する形状に電子伝導体を含む電気化学デバイスであって、該イオン伝導層に該触媒層を複合したイオン伝導膜と触媒の複合体の実質的に触媒反応が行われる触媒層表面上に該電子伝導体が接触せず、かつ該触媒層表面に流体を保持できる空間を有していることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記触媒反応が行われる前記触媒層以外の領域に存在し、かつ前記触媒層と接する前記電子伝導体が層状で前記イオン伝導層表面に存在することを特徴とする請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
少なくとも一方の前記保持体の保持面に位置するイオン伝導層面に触媒が存在し、前記保持体の前記流体を保持していない部分に位置する前記イオン伝導層面の少なくとも一部は触媒が存在しないことを特徴とする請求項1又は2記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
両方の前記保持体の流体保持面に位置する前記イオン伝導層面に触媒が存在し、かつ触媒層が該イオン伝導層の水平方向に対して表裏で同一の位置に存在することを特徴とする請求項3記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記イオン伝導層の少なくとも一方の表面に前記触媒層が複数箇所形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記触媒は、Pt又は、Pt及びRu若しくはIrから成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記触媒は、Pt並びにRu及び/又はIr及び/又はW及び/又はSnから成る3種以上の元素混合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも触媒成分を含み、結着性を有する高分子化合物及び/又は導電剤を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の電気化学デバイス用触媒層の形成方法。
【請求項9】
前記静電潜像を担持した潜像担持体に、少なくとも電子伝導成分を含み、結着性を有する高分子化合物を含む被分散物を分散媒中に分散した液を接触させ、該分散物により潜像を顕像化するとともに、顕像化した分散物を前記イオン伝導膜又は多孔質膜に転写することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項記載の電気化学デバイス用電子伝導層の形成方法。
【請求項10】
前記静電潜像を担持した潜像担持体は、光半導体層を有することを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記光半導体を有する担持体は、光照射法により処理されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記光照射法は、半導体レーザー光又はLEDアレイによる照射法であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
結着性を有する高分子化合物はイオン伝導性高分子であることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項14】
結着性を有する高分子化合物はフッ素系高分子であることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項15】
前記電子伝導成分はカーボンであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項8乃至15のいずれか一項記載の方法を用いて作製した電気化学デバイス。
【請求項17】
請求項1乃至7又は16のいずれか一項記載の電気化学デバイスを用いた燃料電池。
【請求項18】
前記燃料が炭素数4以下のアルコールであることを特徴とする請求項17に記載の燃料電池。
【請求項19】
前記アルコールはエタノールであることを特徴とする請求項18に記載の燃料電池。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した携帯機器。
【請求項21】
請求項17乃至19のいずれか一項記載の燃料電池を使用した画像形成機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−210130(P2006−210130A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20382(P2005−20382)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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