説明

電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物、その製造方法、重合性組成物及びイオン伝導性高分子電解質

【課題】イオン伝導性の高いイオン伝導性高分子電解質を製造することができる重合性ホウ素化合物及びその高分子を提供すること。
【解決手段】式(1)で示される重合性ホウ素化合物と電解質塩とを含む電気化学デバイス用高分子電解質。
【化6】


式(1)で示される電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物。
式中、Bはホウ素原子、Zは重合性官能基、Xは2価の炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xが存在しない場合にはZはBに直接結合する。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはオキシアルキレン基の付加モル数で各々独立に2以上6未満であり、RおよびRは炭素数1〜12の炭化水素基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物、その製造方法、重合性組成物及びイオン伝導性高分子電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池、キャパシター、センサーなどの電気化学デバイスを構成する電解質は、イオン伝導性の点から、液状の電解質が用いられている。しかしながら、液漏れによる機器の損傷の恐れがあるなどの問題があった。
【0003】
これに対し、最近では、無機結晶性物質、無機ガラス、有機高分子などの固体電解質を用いた二次電池が提案されている。これら固体電解質を用いることで、従来のカーボネート系溶媒を用いた液状の電解質を用いた場合に比べ、カーボネート系溶媒の液漏れが無く、電解質への着火性低減が可能になることから、デバイスの信頼性、安全性が向上する。
【0004】
また、有機高分子は、一般に加工性、成形性に優れ、得られる電解質が柔軟性、曲げ加工性を有し、応用されるデバイスの設計の自由度が高くなるなどの点からその進展が期待されている。
【0005】
しかし、上述したような有機高分子、例えばポリエチレンオキシドに特定のアルカリ金属塩を含有させた高分子電解質は、液系電解質に比べイオン伝導度が低く、液状電解質より劣っているのが現状である。(たとえば文献1)
さらに高分子電解質は、含有させたアルカリ金属塩がカチオン部とアニオン部に解離し、それぞれのイオンが移動するが、その選択性も重要となる。特に、高分子電解質をリチウムイオン電池に適用する際、リチウムイオン輸率が高いことが望ましい。しかし、リチウムイオン輸率を向上させようとすると、イオン伝導度が低くなり、リチウムイオン電池に適用するのが困難となる。(例えば文献2)
【非特許文献1】Z. Stoeva et al.J. Am. Chem. Soc. 2003、 125、4619
【非特許文献2】M. A. Mehta et al. J. Power Sources 1999、81-82、724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イオン伝導度とリチウムイオン輸率の両立したイオン伝導性高分子電解質、およびイオン伝導性高分子電解質の原料として有用な新規な重合性ホウ素化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(1)で示される重合性ホウ素化合物およびイオン伝導性高分子電解質を提供するものである。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
上記化合物、またはこの化合物を含む重合性組成物を重合させて得られる重合体を含むイオン伝導性高分子電解質を用いると、オキシアルキレン基の付加モル数が少なく、エーテル酸素に配位結合したリチウムイオンが容易に移動でき、イオン伝導度が高くなる。また、ホウ素原子がポリマーマトリックスに固定されているため、カチオン輸率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
式(1)中のZは重合性官能基であり、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基などの重合性二重結合を有する基が挙げられる。重合性二重結合を有する基を選択することによって、これを重合させてイオン伝導性高分子や高分子電解質を得ることができる。これらのうち、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が、ラジカル重合により簡便に重合体を形成できることから好ましい。
【0011】
上記電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物は、式(2)の化合物に式(3)および式(4)で示される化合物を反応するに拠って製造することができる。
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
式中、Bはホウ素原子、Zは重合性官能基、Xは存在してもしていなくとも良く、Xは2価の炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xが存在しない場合にはZはBに直接結合する。R、Rは各々独立に炭素数1〜24の炭化水素基または水素である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mおよびnは各々独立に2以上6未満であり、RおよびRは炭素数1〜12の炭化水素基である。式(3)と式(4)は異なっていても、同一であっても良い。
【0015】
また、上記製造方法において、式(2)の化合物1モルに対して式(3)及び式(4)の化合物の総量が1.5〜2.1モルであり、反応温度が0〜100℃である条件を選択することが好ましい。
【0016】
式(1)、式(3)または式(4)中のR、Rは炭素数1〜12の炭化水素基である。炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の脂肪族炭化水素基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基などが挙げられる。これらのうち炭素数4以下の炭化水素基が、電解質塩の溶解性を大きくできる点から好ましく、炭素数1であるメチル基がより好ましい。RおよびRはそれぞれ異なっていてもよく、同じであっても良い。
【0017】
式(1)または式(2)中のXは炭素数1〜12の炭化水素基である。Xが存在しないときはBとZが直結する。炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ジメチルエチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基などの脂肪族炭化水素基、シクロヘキシレン基、ジメチルシクロヘキシレン基などの脂環式炭化水素基、フェニレン基、2−メチルフェニレン基、2、6−ジメチルフェニレン基、2−エチルフェニレン基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。ホウ素濃度を高くしてカチオン輸率を高める目的からは、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。
【0018】
式(1)、式(3)または式(4)中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基が挙げられる。オキシエチレン基またはオキシプロピレン基を用いることが、イオン伝導性を高くすることができる点から好ましい。
【0019】
式(1)、式(3)または式(4)中のmおよびnはオキシアルキレン基の付加モル数であり、各々独立に2以上6未満である。mまたはnが6を超えるとエーテル酸素によるカチオンとの相互作用が大きくなり、イオン伝導性が低下する。
【0020】
式(1)の重合性ホウ素化合物は以下の方法によって製造することができる。式(2)で示される重合性官能基を有するホウ素化合物に、式(3)または式(4)で示されるポリアルキレングリコールモノエーテルを加えて、乾燥空気または窒素通気下で反応することで、式(1)で示される本発明の重合性ホウ素化合物を得ることができる。
【0021】
式(2)で示される重合性官能基を有するホウ素化合物1.0モルに対する、式(3)および式(4)で示されるポリアルキレングリコールモノエーテルの総量は1.5〜2.1モルであり、本発明の式(1)の重合性ホウ素化合物を収率良く得る目的からは、式(3)および式(4)で示されるポリアルキレングリコールモノエーテルの総量は1.8〜2.1モルであることが好ましい。
【0022】
式(1)の化合物は、式(2)の化合物と式(3)及び式(4)の化合物との反応によって製造するが、前記反応は平衡反応のため、式(5)の反応副生成物を除去することにより反応が進行する。脱離する化合物が水の場合(R、R:H)、トルエンを反応溶媒に使用し、トルエンと水の共沸を利用し除去することができる。脱離する化合物がアルコールの場合(R、R:炭化水素基)、その沸点の差を利用して共沸混合系において真空引きにより揮発させて反応系より除去することができる。また、脱離する化合物がアルコールの場合においても、トルエン等の反応溶媒を使用することもできる。反応温度は0〜100℃であり、熱履歴による重合性官能基の重合の開始を避ける目的からは0〜80℃とすることが好ましい。
【0023】
【化4】

【0024】
式(2):重合性官能基を有するホウ素化合物(Bはホウ素原子、Zは重合性官能基、Xは2価の炭素数1〜12の炭化水素基またはフェニレン基であり、Xが存在しない場合にはZはBに直接結合する。R、Rは各々独立に炭素数1〜24の炭化水素基または水素である。)
式(3)、(4):ポリアルキレングリコールモノエーテル(AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、m、nは各々独立に2以上6未満であり、RおよびRは炭素数1〜12の炭化水素基である。式(3)と式(4)は異なっていても、同一であっても良い。)
式(1):重合性ホウ素化合物
式(5):水またはアルコール
式(1)の重合性ホウ素化合物を重合させる方法は、従来から知られているバルク重合、溶液重合、乳化重合のいずれによっても良い。また、その他の重合性化合物を併用しても良く、その他の重合性化合物としては(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基などの基を有する化合物が挙げられ、取扱いの容易さやイオン伝導性への寄与の点からは(メタ)アクリレート化合物やポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。重合に際しては重合開始剤を用いても用いなくても良く、取扱いの容易さの点からはラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0025】
ラジカル重合開始剤を用いた重合方法は、通常行われている温度範囲および重合時間で行うことができる。電気化学デバイスに用いられる部材を損なわない目的から、分解温度および速度の指標である10時間半減期温度範囲として、30〜90℃のラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。なお、前記10時間半減期温度とはベンゼン等のラジカル不活性溶媒中濃度0.01モル/リットルにおける未分解のラジカル重合開始剤の量が10時間で1/2となるのに必要な温度を指すものである。本発明における開始剤配合量は、前記重合性官能基1molに対し0.01mol%以上10mol%以下である。好ましくは0.1mol%以上5mol%以下である。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1、1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、2、2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、t−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、2、5−ジメチルヘキサン−2、5−ジハイドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α、α′−ビス(t−ブチルペルオキシm−イソプロピル)ベンゼン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシソプロピルカーボネート等の有機過酸化物や、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル、2、2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2′−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2′−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2、4−ジメチル−バレロニトリル、2、2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2、2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[N−ヒドロキシフェニル]−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2メチル−Nー(2−フ゜ロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2、2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(4、5、6、7−テトラヒドロ−1H−1、3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(3、4、5、6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3、4、5、6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2、2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2、2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2、2′−アゾビス{2−メチル−N−[1、1−ヒ゛ス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2、2′−アゾビス{2メチル−N−[1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2、2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2、2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2、2′−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)、2、2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル、2、2′−アゾビスイソブチレート、4、4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2、2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ化合物が挙げられる。
【0027】
本発明において用いられる電解質塩としては、本発明の重合性ホウ素化合物およびその化合物を重合させた高分子に可溶のものならば特に問わないが、以下に挙げるものが好ましい。即ち、金属陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルフォニドイミド酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7、7、8、8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、及び低級脂肪族カルボン酸イオンから選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。金属陽イオンとしてはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属がある。
【0028】
電解質濃度はイオン伝導性高分子のオキシアルキレン基に含まれるエーテル酸素原子の総モル数に対して、モル比(電解質塩のモル数)/(オキシアルキレン基に含まれるエーテル酸素原子の総モル数)の値が0.0001〜1、好ましくは0.001〜0.5の範囲がよい。この値が1を超えると加工性、成形性及び得られた高分子電解質の機械的強度が低下する。
【0029】
本発明における可塑剤とは、リチウム電池用電解液に用いられているジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトロヒドロフラン、ジメトキシエタン等の有機溶媒、または、ホウ酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの化合物をイオン伝導性高分子電解質に加えることで電解質の物性を適宜制御することができる。
【0030】
本発明における補強材とは、繊維状のガラス繊維を用いたガラスクロス、ポリオレフィン、ポリエステル等で作製した不織布、リチウムイオン電池用セパレータ等、リチウム電池に悪影響を及ぼさない補強材なら材質は問わない。補強材を用いることにより機械的強度が高くなり、イオン伝導性高分子電解質の薄膜化が可能になる。
【0031】
本発明の高分子電解質は、特に二次電池用電解質、とりわけリチウム二次電池用電解質として有用である。
【0032】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例では、全てアルゴン雰囲気下で試料調製およびイオン伝導度評価を行った。また、各実施例および各比較例において電解質塩配合濃度はイオン伝導性高分子内オキシアルキレン基中エーテル酸素原子の総モル数に対して、モル比(電解質塩のモル数)/(オキシアルキレン基中エーテル酸素原子の総モル数)の値が0.03になるよう調整した。また、本発明における実施例および比較例一覧表を表1に示した。
【0033】
評価方法
<イオン伝導度>:イオン伝導度の測定は、25℃において高分子電解質をステンレス鋼電極で挟み込むことで電気化学セルを構成し、電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。
【0034】
<リチウムイオン輸率>:下記実施例1〜7及び比較例1〜2について、高分子電解質をリチウム金属で挟み、J.Evans et al、Polymer、28、p.2324(1987)に記載された方法で測定した。その結果を表1に示した。
(実施例1)
ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル504g(2.0mol)に、蒸留し重合禁止剤を取り除いたビニルホウ酸ジブチル(Aldrich社製)184g(1.0mol)を加え室温下30分攪拌し、その後系内を0.4kPaに減圧した後に55℃に昇温し、3時間攪拌を継続することで脱離するブタノールを除去して式(1)に示した(X=無し、m、n=5、R、R=メチル基)重合性ホウ素化合物A432gを得た。赤外吸光分析による3300cm−1付近の水酸基に由来する吸収帯を観測したところ、これが消失していたことにより、化合物Aが得られていることを確認した。
【0035】
次に、重合性ホウ素化合物A5.40g(10mmol)と、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル5.40mg、および電解質塩としてLiN(CFSOを混合し、重合性組成物を得た。続いて、この溶液をポリテトラフロロエチレン製ボート中に流し込み、80℃で3時間保持することで厚さ0.1mmの高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.5mS/cmであった。
【0036】
(実施例2)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル328g(2.0mol)に、蒸留し重合禁止剤を取り除いたビニルホウ酸ジブチル(Aldrich社製)184g(1.0mol)を加え室温下30分攪拌し、その後系内を0.4kPaに減圧した後に60℃に昇温し、3時間攪拌を継続することで脱離するブタノールを除去して式(1)に示した(X=無し、m、n=3、R、R=メチル基)重合性ホウ素化合物C273gを得た。赤外吸光分析による3300cm−1付近の水酸基に由来する吸収帯を観測したところ、これが消失していたことにより化合物Bが得られていることを確認した。
【0037】
次に、重合性ホウ素化合物B3.64g(10mmol)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル3.64mg、および電解質塩としてLiN(CFSOを混合し、重合性組成物溶液を得た。続いて、この溶液をポリテトラフロロエチレン製ボート中に流し込み、80℃で3時間保持することで厚さ0.1mm高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は1.0mS/cmであった。
【0038】
(実施例3)
ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル504g(2.0mol)に、4−ビニルフェニルホウ酸(Aldrich社製)148g(1.0mol)を加え、溶媒としてトルエンを加えた。その後8kPaに減圧後、55℃に昇温し、トルエン還流下5時間攪拌を継続することにより反応副生成物である水を除去した。その後、溶媒のトルエンを留去することで式(1)に示した(X=フェニレン、m、n=5、R、R=メチル基)重合性ホウ素化合物C246gを得た。赤外吸光分析による3300cm−1付近の水酸基に由来する吸収帯を観測したところ、これが消失していたことにより、化合物Cが得られていることを確認した。
【0039】
次に、重合性ホウ素化合物C6.16g(10mmol)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル6.16mg、および電解質塩としてLiN(CFSOを混合し、重合性組成物溶液を得た。続いて、この溶液をポリテトラフロロエチレン製ボート中に流し込み、100℃で3時間保持することで厚さ1mmの高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.08mS/cmであった。
【0040】
(実施例4)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル328g(2.0mol)に、4−ビニルフェニルホウ酸(Aldrich社製)148g(1.0mol)を加え、溶媒としてトルエンを加えた。その後8kPaに減圧後、55℃に昇温し、5時間攪拌を継続することにより反応副生成物である水を除去した。その後、溶媒のトルエンを留去することで式(1)に示した(X=フェニレン、m、n=3、R、R=メチル基)重合性ホウ素化合物D220gを得た。赤外吸光分析による3300cm−1付近の水酸基に由来する吸収帯を観測したところ、これが消失していたことにより、化合物Dが得られていることを確認した。
【0041】
次に、重合性ホウ素化合物D4.40g(10mmol)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル4.40mg、および電解質塩としてLiN(CFSOを混合し、重合性組成物溶液を得た。続いて、この溶液をポリテトラフロロエチレン製ボート中に流し込み、100℃で3時間保持することで厚さ1mmの高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.05mS/cmであった。
【0042】
(実施例5)
実施例4と同様に重合性化合物D4.40g(10mmol)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル4.40mg及びLiN(CFSOを混合した溶液にプロピレンカーボネート0.5gを加え、重合性組成物溶液を得た。続いて、この溶液をポリテトラフロロエチレン製ボート中に流し込み、100℃で3時間保持することで厚さ1mmの高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.4mS/cmであった。
【0043】
(実施例6)
実施例4と同様に、重合性ホウ素化合物D4.40g(10mmol)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル4.40mg、および電解質塩としてLiN(CFSOを混合し、重合性組成物溶液を得た。続いて、この溶液を補強材として用いるガラスクロス(厚さ50μm)に含浸させ、100℃で3時間保持することで厚さ70μmの高分子電解質を得た。このようにして得られた電解質の膜を直径1cmの円盤状に切り抜き、これを一対のステンレス電極に挟み込んだ後、25℃で前記のイオン伝導度測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.04mS/cmであり、強度の優れた電解質膜が作製できた。
【0044】
(実施例7)
補強材としてポリオレフィン不織布(厚さ50μm)を使用すること以外は実施例6と全く同様に行い、厚さ60μmの高分子電解質を得、同様な測定法によりイオン伝導度を求めた。イオン伝導度は0.04mS/cmであり、強度の優れた電解質膜が作製できた。
【0045】
(比較例1)
ポリエチレンオキシド(Fluka製、98%、平均分子量1000)を30℃、1.3kPaの減圧下で4日間静置することで乾燥し、その後同重量のアセトニトリルに溶解させポリマー溶液を作製した。前記ポリマー溶液に、LiPFをポリエチレンオキシドのエーテル酸素原子の総モル数に対して、モル比(電解質塩のモル数)/(ポリエチレンオキシドのエーテル酸素の総モル数)が0.17になるように加えた。前記溶液から、アセトニトリルを留去し、ポリエチレンオキシドにLiイオンが配位した粉体を得た。前記粉体をプレスすることにより電解質膜を作製し、イオン伝導度を測定したところ、25℃で6.3×10−8S/cmであった。いずれの実施例よりもイオン伝導度は低い。
【0046】
(比較例2)
3molの無水ホウ酸に対し、分子量350のポリエチレングリコールモノメチルエーテル770g(2.2mol)(Aldrich製)、テトラエチレングリコール310g(1.6mol)(Aldrich製)及び塩化リチウムを加え、加熱することにより副生成物である水を除去し式6に示すボロキシン環を有するポリマー電解質を得た。塩化リチウムは生成するボロキシン化合物に対し、モル比が(塩化リチウム/ボロキシン環)=0.5/1になるように調節した。前記ポリマー電解質のイオン伝導度を測定すると、25℃で3.3×10−8S/cmであり、Liイオン輸率は0.88であった。いずれの実施例よりもイオン伝導度は低い。
【0047】
以上説明した実施例および比較例について整理すると、表1のとおりである。本発明による高分子電解質は、特に二次電池等電解質として有効であり、とりわけリチウム二次電池の電解質として有用である。
【0048】
【化5】

【0049】
【表1】

【0050】
リチウム二次電池における、リチウムを可逆的に吸蔵放出する正極としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などの層状化合物、あるいは一種以上の遷移金属を置換したもの、あるいはマンガン酸リチウム(Li1+xMn2−x(ただしx=0〜0.33)、Li1+xMn2−x−y(ただし、MはNi、Co、Cr、Cu、Fe、Al、Mgより選ばれた少なくとも1種の金属を含み、x=0〜0.33、y=0〜1.0、2−x−y>0)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn2−x(ただし、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、Taより選ばれた少なくとも1種の金属を含み、x=0.01〜0.1)、LiMnMO(ただし、MはFe、Co、Ni、Cu、Znより選ばれた少なくとも1種の金属を含み))、銅−リチウム酸化物(LiCuO)、あるいはLiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物、あるいは化学式ジスルフィド化合物、あるいはFe(MoOなどを含む混合物が挙げられる。
【0051】
また、リチウム二次電池における、リチウムを可逆的に吸蔵放出する負極としては、天然黒鉛、石油コークスや石炭ピッチコークス等から得られる易黒鉛化材料を2500℃以上の高温で熱処理したもの、メソフェーズカーボン或いは非晶質炭素、炭素繊維、リチウムと合金化する金属、あるいは炭素粒子表面に金属を担持した材料が用いられる。例えばリチウム、銀、アルミニウム、スズ、ケイ素、インジウム、ガリウム、マグネシウムより選ばれた金属あるいは合金である。また、該金属または該金属の酸化物を負極として利用できる。
【0052】
本発明のリチウムイオン二次電池の用途は、特に限定されないが、例えばICカード、パーソナルコンピュータ、大型電子計算機、ノート型パソコン、ペン入力パソコン、ノート型ワープロ、携帯電話、携帯カード、腕時計、カメラ、電気シェーバ、コードレス電話、ファックス、ビデオ、ビデオカメラ、電子手帳、電卓、通信機能付き電子手帳、携帯コピー機、液晶テレビ、電動工具、掃除機、バーチャルリアリティ等の機能を有するゲーム機器、玩具、電動式自転車、医療介護用歩行補助機、医療介護用車椅子、医療介護用移動式ベッド、エスカレータ、エレベータ、フォークリフト、ゴルフカート、非常用電源、ロードコンディショナ、電力貯蔵システムなどの電源として使用することが出来る。また、民生用のほか、軍需用、宇宙用としても用いることが出来る。
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例では、特に断りの無い限り、アルゴン雰囲気下で試料調整およびイオン伝導度評価を行った。また、各実施例および各比較例において電解質塩配合濃度はイオン伝導性高分子内オキシアルキレン基中エーテル酸素原子の総モル数に対して、モル比(電解質塩のモル数)/(オキシアルキレン基中エーテル酸素原子の総モル数)の値が0.03になるよう調整した。
【0054】
なお、実施例8から13において使用された高分子電解質は、実施例1〜7で製造されたものであり、電解質塩は実施例1〜6で用いられたものと同じである。従って、実施例1は実施例8に、実施例2は実施例9に、以下実施例3〜6は、それぞれ実施例10〜13に対応する。また、比較例3で用いた高分子電解質は比較例1で製造された高分子電解質である。比較例3の電解質塩は比較例1の電解質塩と同じである。
1.電極の作製例
<正極>:セルシード(日本化学工業社製コバルト酸リチウム)、SP270(日本黒鉛社製黒鉛)及びKF1120(呉羽化学工業社製ポリフッ化ビニリデン)とを80:10:10重量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。該スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、150g/mであった。合剤カサ密度が3.0g/cmになるようにプレスし、1cm×1cmに切断して正極を作製した。
【0055】
<負極>:カーボトロンPE(呉羽化学工業社製非晶性カーボン)及びKF1120
(呉羽化学工業社製ポリフッ化ビニリデン)とを90:10重量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。該スラリーを厚さ20μmの銅箔にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、70g/mであった。合剤カサ密度が1.0g/cmになるようにプレスし、1.2cm×1.2cmに切断して負極を作製した。
1.評価方法
<電池充放電条件>:充放電器(東洋システム社製TOSCAT3000)を用い、25℃において電流密度0.5mA/cmで充放電を行った。4.2V まで定電流充電を行い、電圧が4.2Vに達した後、12時間定電圧充電を行った。さらに放電終止電圧3.5Vに至るまで定電流放電を行った。最初の放電で得られた容量を、初回充放電容量とした。上記条件での充電・放電を1サイクルとして、初回充放電容量の70%以下に至るまで充放電を繰り返し、その回数をサイクル特性とした。また、電流密度1mA/cmで4.2Vまで定電流充電を行い、電圧が4.2Vに達した後、12時間定電圧充電を行った。さらに放電終止電圧3.5Vに至るまで定電流放電を行った。得られた容量と、前述の充放電サイクルで得られた初回サイクル容量と比較して、その比率を高速充放電特性とした。
【0056】
(実施例8)
実施例1で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、80℃で6時間保持することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.5mAhであり、サイクル特性は50回であった。また、高率放電特性は81%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0057】
(実施例9)
実施例2で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、80℃で6時間保持することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.7mAhであり、サイクル特性は70回であった。また、高率放電特性は90%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0058】
(実施例10)
実施例3で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、80℃で6時間保持することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.3mAhであり、サイクル特性は30回であった。また、高率放電特性は50%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0059】
(実施例11)
実施例4で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、80℃で6時間保持することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.45mAhであり、サイクル特性は40回であった。また、高率放電特性は75%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0060】
(実施例12)
実施例5で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、80℃で6時間保持することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.5mAhであり、サイクル特性は50回であった。また、高率放電特性は80%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0061】
(実施例13)
実施例6で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、圧力が0.4kPa、温度が80℃の雰囲気で6時間保持して、溶媒のアセトニトリルを留去することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の初回充放電容量は0.5mAhであり、サイクル特性は50回であった。また、高率放電特性は80%であった。また、作製した電池のアルミラミネートフィルムを剥がした結果、電池内部での電解液の流動性は見られなかった。
【0062】
(比較例3)
比較例1で得た重合性組成物溶液を前記の方法で作製した正極および負極上にキャストし、圧力が0.4kPa、温度が80℃の雰囲気で6時間保持して、溶液のアセトニトリルを留去することで、正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに、これら正極及び負極を重ねあわせ、0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持して貼り合わせた。次いで、図1に示すように、正極1および負極2にステンレス端子5、6を取り付け、袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池の25℃での充放電評価は不可能であった。
【0063】
【表2】

【0064】
なお、本発明は、下記のようなリチウム二次電池に適用すると、極めて有用である。
(1)リチウムを可逆的に吸蔵放出する正極および負極と、イオン伝導性物質と電解質塩とを含む電解質を備えたリチウム二次電池において、前記イオン伝導性物質が、式(1)に示す重合性ホウ素化合物からなるリチウム二次電池。
(2)電解質が式(1)で示される重合性ホウ素化合物を重合させて得られる重合体からなるリチウム二次電池。
(3)電解質が、式(1)で示される重合性ホウ素化合物を重合させて得られる重合体及び可塑剤を含むリチウム二次電池。
(4)電解質塩がLiPF、LiN(CFSO、LiClO、LiBF、LiAsF、LiI、LiBr、LiSCN、Li10Cl10、LiCFCOの少なくとも1つであるリチウム二次電池。
(5)電解質が、補強材に保持されたリチウム二次電池。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の高分子電解質を用いた試験用リチウム二次電池の構成を示す展開斜視図。
【符号の説明】
【0066】
1…正極、2…負極、5…正極ステンレス端子、6…負極ステンレス端子、7…アルミラミネートフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

式(1)で示される電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物。
式中、Bはホウ素原子、Zは重合性官能基、Xは2価の炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xが存在しない場合にはZはBに直接結合する。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはオキシアルキレン基の付加モル数で各々独立に2以上6未満であり、RおよびRは炭素数1〜12の炭化水素基である。
【請求項2】
請求項1記載の重合性ホウ素化合物及び電解質塩を含む電気化学デバイス用重合性組成物。
【請求項3】
請求項2記載の重合性組成物を重合させて得られる電気化学デバイス用高分子電解質。
【請求項4】
請求項3記載の高分子電解質が、可塑剤を含むことを特徴とする電気化学デバイス用高分子電解質。
【請求項5】
請求項3または4記載の高分子電解質において、前記電解質塩がLiPF、LiN(CFSO、LiClO、LiBF、LiAsF、LiI、LiBr、LiSCN、Li10Cl10、LiCFSOの少なくとも1つである電気化学デバイス用高分子電解質。
【請求項6】
請求項3記載の高分子電解質が、補強材に保持されたことを特徴とする電気化学デバイス用高分子電解質。
【請求項7】
請求項3、4、5、6いずれか一項に記載の高分子電解質を用いることを特徴とする二次電池。
【請求項8】
式(2)の化合物に式(3)および式(4)で示される化合物を反応することを特徴とする請求項1記載の電気化学デバイス用重合性ホウ素化合物の製造方法。
【化2】

【化3】

式中、Bはホウ素原子、Zは重合性官能基、Xは2価の炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xが存在しない場合にはZはBに直接結合する。R、Rは各々独立に炭素数1〜24の炭化水素基または水素である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mおよびnは各々独立に2以上6未満であり、RおよびRは炭素数1〜12の炭化水素基である。式(3)と式(4)は異なっていても、同一であっても良い。
【請求項9】
式(2)の化合物1モルに対して式(3)及び式(4)の化合物の総量が1.5〜2.1モルであり、反応温度が0〜100℃であることを特徴とする請求項8記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−172982(P2006−172982A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365760(P2004−365760)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】