説明

電気化学的処理のための装置内の給電ユニット

電気化学的処理のための装置において、処理材料(1)のための給電ユニットの給電装置(2,3)を金属堆積から保護するために、処理材料(1)の電気化学的処理中に、給電装置(2,3)を液体内に特定の長さまで浸漬した場合、給電装置のブランク部分上に0.04mm以上の金属が堆積しないように、処理材料と接触するための接触手段(12)からスタートして特定の長さにわたり、少なくとも1つの給電装置(2,3)を取り囲む少なくとも1つの電気絶縁シェル(7,8)の設置が提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的処理のための装置内における、特に亜鉛メッキシステムまたはエッチングシステム内における処理材料のための給電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性層の電解用途(亜鉛メッキ)の場合には、処理材料は、給電装置および固定手段を介して直流電源の負の電極に接続される。それ故、この場合はアノードである対向電極は、直流電源の正の電極に電気が流れるように接続される。アノードおよび処理材料は両方とも、供給される材料の正に帯電したイオンを含む電解質内に位置する。アノードと処理材料の間に形成される電界のために、これらのイオンは処理材料に向かって移動し、そこに堆積する。
【0003】
それ故、電解質エッチングの際には極性は反対になり、次に、処理材料は電流源の正の電極に接続される。
少なくとも処理材料に隣接する端部上においては、通常、給電装置は、端子クリップ、トング、またはクランプの形をしている接触手段として設計され、よって、給電装置は処理材料を保持することができる。そのため、この接触手段を含む少なくとも全給電装置の内部は、導電性材料からなり、実際に使用する大きな電流を、僅かな電力損失および発熱だけで、処理材料に供給することができるような大きさのものでなければならない。給電装置の正確な大きさは、使用する導電性材料に依存し、例えば、より導電性の低い材料の場合には、より大きな導電性断面を必要とされる。
【0004】
それ故、給電装置は、亜鉛メッキ工程中に、すなわち金属が処理材料上に堆積する際に、大量の金属が給電装置上に堆積するのを防止するために、表面上をできるだけ電気的に絶縁しなければならない。このような場合、金属のこのような堆積により、給電装置の接触手段から処理材料への電流の流れとの起こりうる干渉を避けるために、以降の脱金属工程中に給電装置から金属を除去しなければならない。実際に、処理材料の表面と比較した場合、給電装置のブランク部分上には、約2〜10倍の量の金属が堆積する。それというのも、直流電源から処理材料への仮想抵抗回路において、給電装置がこの直流電源の近くに位置していて、そのため対応する電位がさらに高くなり、そのためそこに電界線が集中し、より多くの金属が堆積するからである。
【0005】
このようなブランク給電装置は、また、処理材料に対していわゆるラバーカソードとしての働きをする。より詳細に説明すると、給電装置のすぐ近くにおいては、給電装置上に望ましくない金属の堆積が起こると、処理材料上の金属層の厚さが薄くなる。例えば、非常に均一な層が重要な意味を持つプリント基板をコーティングする場合、このように金属層の厚さが薄くなると、以降のエッチングステップにおいてプリント基板が使用に適さなくなる。
【0006】
この問題を避けるために、例えば、接触エリアのような処理材料と電気的に接触させるために使用する接触手段のこれらの部分は別として、電解質と接触する恐れがある給電装置のすべての表面を電気的に絶縁することは周知である。何故なら、亜鉛メッキ中、電気的に絶縁した表面上には金属は堆積することができないからである。
【0007】
この絶縁は、高い化学的安定性、高い熱的安定性および高い耐磨耗性を有する特種なプラスチックにより通常行われる。この特殊なプラスチック絶縁体層は、層の以降の硬化の際に浸漬またはスプレーにより塗布される。例えば、接触エリアのような接触手段も、このような浸漬またはスプレー工程中に絶縁すると、例えば、研磨またはフライス加工により、硬化の後で機械的に露出させなければならない。絶縁強度に対するより厳しい要件のためにより厚い層を塗布しなければならない場合には、それぞれの場合に以降の硬化の際に浸漬またはスプレー工程を反復しなければならない。
【0008】
この塗布した絶縁体層を給電装置によく接着させるために、給電装置は、コーティングの前に完全に清掃しなければならず、多くの場合、接着を改善するために、例えば、研磨またはサンドブラスティングにより、余分な処理を行う必要がある。
【0009】
念入りな処理を行っても、またHalar(商標)のような高品質の特殊なプラスチックを使用しても、このような絶縁体層は、処理する縁部の鋭い材料により何回も損傷し、特に亜鉛メッキ装置のために自動コーティングユニットを使用する場合には何回も損傷する。これらの損傷の時点で絶縁が破壊され、金属が堆積する。多くの場合、短時間しか経過していなくても、この金属は、安価な電解質脱金属化ではもはや除去することができない。何故なら、この方法を使用すると、損傷の通常比較的小さなエリアの点への導電性接続が、多くの場合、すべての堆積した金属を溶解する前に破断するからである。この場合、関連する給電装置を化学的に取外し、脱金属化しなければならない。この方法を非常に短い間隔で行わなければならない場合には、給電装置を新しいものと交換することになる。給電装置のために高価な金属を使用する場合には、溶解、焼却または機械的処理により非導電性のプラスチック絶縁体層を除去する念入りな処理を行う必要があり、金属表面が再度処理され、給電装置がプラスチック絶縁体層により再度コーティングされる。これらすべての作業ステップは、手間がかかり、非常に高価なものである。
【0010】
図8は、このような給電装置の一例を示す。この場合、上部給電装置2および下部給電装置3は、それぞれ接触素子12まで延びる。例えば、下部給電装置3は、電解槽内で周回するチェーンまたは歯付きベルトに固定されていて、対応する駆動装置により図面の面内に進入または退出する。上部給電装置2は、矢印で示すように垂直方向に移動可能に装着され、圧縮スプリングにより下方に押圧されている。それ故、給電装置2および3はクランプを形成し、上部給電装置2はクランプの上部を形成し、下部給電装置3はクランプの下部を形成する。それ故、処理材料1は2つの接点12間に固定される。
【0011】
上部給電装置2上のスラストブロック(図示せず)により、また給電装置の上部給電装置上の傾斜面により、亜鉛メッキ領域に入った場合、このようにして形成したクランプを閉じることができ、この領域から出た場合には再度開くことができる。それ故、閉じた場合、クランプは処理材料1と係合することができ、電源の対応する電極と電気的に接続される。亜鉛メッキ領域から出た場合、給電装置は再度開き、処理材料1はローラ経路によりさらに遠くに移動される。
【0012】
金属製の上部および下部給電装置2、3が、亜鉛メッキされて、ラバーカソードとしての働くことを防止するために、これらの給電装置は、少なくとも亜鉛メッキ槽の液面21の上に、すでに説明したように上記の薄いプラスチック絶縁体層を備える。この絶縁層は、接点12の側面まで延びる。
【0013】
特許文献1が、他の解決アプローチを開示している。この場合、ブランク導電性材料からなるとともに、プラスチック絶縁体層を含まない給電装置が使用される。給電装置上への金属の過度な堆積を防ぐために、給電装置が使用される亜鉛メッキセル全体に沿って広く配置されているマスクが使用される。この場合、マスクは、亜鉛メッキセルのハウジングまたはアノードに確実に固定される。マスクは、少なくともその表面上においては電気絶縁材料からなり、マスクは、亜鉛メッキの際に、電解質内に含まれているイオン、特に金属イオンが僅かしか給電装置に対して移動しないように配置されている。何故なら、これらのイオンは、電気的に絶縁されているマスクを貫通することができず、給電装置を通して電流が流れないからである。代わりに、イオンは、この場合は処理材料への経路である抵抗が最も少ない経路を通る。この場合、マスクによる電解質内の電界線の遮蔽も行われる。
【0014】
この場合、マスク内のギャップは、装置が設計される処理材料の最大の厚さが、これらのギャップを通ることはできるが、マスクとは接触しないように配置されなければならない。
【0015】
薄い処理材料、すなわち最大の厚さより薄い厚さを有する材料が、システム内で処理される場合には、処理材料とマスク間の隙間が広くなる。大量のイオンが接触素子に移動することができるので、マスクがあるにもかかわらず、パス当たり約0.1mmまたはそれ以上の厚さを有する比較的厚い金属層がギャップ近くの給電装置上に堆積する可能性がある。その後では、これらの金属層は、すでに説明したように、次のパス前に使用できる時間中に以降の電解質脱金属化によりもはや除去することはできない。
【0016】
プリント基板を最大約0.04mmの厚さで銅メッキするための水平亜鉛メッキシステムにおいては、動作中、接触素子の上または内部のこのような望ましくない金属層を容易に除去することができる。望ましくない金属層の厚さが約0.05mm〜0.1mmを超えると、システムの構成により、もはやこの層を接触素子のすべての点からうまく除去することができなくなる。以降のパス中、これらの層が堆積するので、動作を中止して念入りに除去しなければならない。この層のパス当たりの層の厚さが0.1mmを超えると、生産に支障を来すことが予想される。
【0017】
この実施形態の他の欠点は、図8のように配置されている給電装置の場合、マスクを給電装置の係合運動と一緒に動かすことができないことである。
特許文献2は、浸漬亜鉛メッキにより亜鉛メッキされるプリント基板のような対象物を解放できるように保持するためのクランプ状の保持装置を開示している。この保持装置は、第1のバー、第2のバー、第1および第2のバーの下端領域で、プリント基板と接触し、これを固定するために相互に対向する接触ピンを備える。例えば、蛇腹の形をしている接触ピンの軸方向に弾性により変形することができるスリーブが、各接触ピンに固定されていて、弛緩した状態で接触ピンの接触エリアを超えて延びる。クランプがプリント基板を保持している場合には、スリーブの自由端部はプリント基板の表面上に確実に存在していて、そのため、接触エリア上に金属が堆積するのを防止するために接触エリアが亜鉛メッキ槽と接触することが防止される。
【0018】
特許文献3は、亜鉛メッキされる被加工物が、電解質を通して水平方向に送られる亜鉛メッキ装置を開示している。通過する被加工物とのカソードの接触は、この場合、端側面上の望ましくない金属の堆積を防止するために、接触ホイールの端側面に塗布されている絶縁材料のカバーを含む回転可能な接触ホイールにより行われる。
【0019】
また、特許文献4は、亜鉛メッキ装置を開示している。この場合、処理材料との接触は、帯状の接触素子により行われる。例えば、接触素子による接触片の望ましくない金属化を防止するために、一部が加硫処理された電気絶縁材料が使用される。
【0020】
同様に、特許文献5は、処理材料と接触させるために接触片を使用する。接触片は、実際の接触エリアを除いて接触片を完全にカバーする接触絶縁体を有する。
特許文献6は、接触片を望ましくない金属化から保護する絶縁シャフトを含む電気的接触片が、電気絶縁シャフト内に組み込まれている他の亜鉛メッキ装置を開示している。
【特許文献1】独国特許第19735352号明細書
【特許文献2】国際公開第99/29931号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第4211253号明細書
【特許文献4】独国特許第10043815号明細書
【特許文献5】独国特許第10065643号明細書
【特許文献6】国際出願公開第03/071009号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の1つの目的は電気化学的処理用の装置内における処理材料のための給電ユニットを提供することにあり、特に、給電装置が、金属の堆積からできるだけ効果的に保護されていて、容易に製造することができ、保守が簡単で安価な給電ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1に記載の給電ユニットにより達成される。従属請求項は、本発明の好適なまたは有利な例示としての実施形態を定義している。
本発明によれば、給電ユニットは、少なくとも一部がブランク導電性材料からなる少なくとも1つの給電装置と、少なくとも1つの給電装置の一方の端部に設けられるとともに処理材料と電気的に接触するための接触手段とを含む。給電ユニットは、電気化学的処理中に給電装置を液体に浸漬した場合、0.04mm以上の金属堆積がブランク導電性材料上に形成されないように、接触手段からスタートして、特定の長さにわたって少なくとも1つの給電装置を囲んでいる少なくとも1つの着脱可能な電気絶縁シェルを有する。
【0023】
本発明は、金属イオンは電解質内を非常にゆっくりと移動するという事実に基づいている。それ故、高性能の亜鉛メッキ槽内の強力な電解質の流れにより、金属イオンを処理材料に絶えず供給する必要がある。そうでない場合には、電解質内の金属イオンが不足し、金属の堆積がなくなるか、または僅かな堆積が起こるだけである。代わりに、電流によりカソードに水素が発生する。
【0024】
このことは、亜鉛メッキ工程中に給電装置の金属コーティングを防止するために、完全な密閉エンクロージャを必ずしも必要としないことを意味する。金属イオンがブランク材に逆に移動するのを単に防止するだけでよい。
【0025】
すなわち、本発明による給電ユニットは、給電装置の周囲にほぼ形状が適合しているシェルを使用する。これにより、金属イオンがブランク導電性材料に逆に移動することが防止される。
【0026】
これらのシェルは、給電装置とは別に作ることができ、例えば、ネジまたはクリップのような固定手段により給電装置に固定することができる。そのため、一方では製造が容易になり、他方では損傷したシェルを容易に交換することができる。この場合、少なくとも1つのシェルを、射出成型、予め作ったモールド内の深絞り、0.2mm〜8mmの壁部の厚さを有するプラスチックの自動モールド切断または選択的レーザ焼結により作ることが好ましい。
【0027】
この場合、少なくとも1つのシェルを、シールまたは相互固定部分により相互に接続している、複数の部材により形成することができる。そうすることにより、電解質を通してイオンが逆に移動することを十分に防止することができ、そのため0.04mm以上の厚さの金属の望ましくないおよび問題になる堆積が防止される。より詳細に説明すると、このようなシェルは、少なくとも1つの給電装置の機械的応力を受ける部分のために使用することができ、一方、機械的応力を受けない部分に絶縁コーティングを行うこともできる。より詳細に説明すると、給電ユニットは、相互に移動することができ、そのため処理材料を保持するためのクランプとして使用することが可能な、好適には硬質および/またはL字形の2つの給電装置を備えることができる。この目的のためにバネ機構を使用することもできる。
【0028】
この場合、給電装置自身は、チタンまたはステンレス鋼で作ることが好ましい。何故なら、これらの金属は、亜鉛メッキ方法で従来から使用されている化学薬剤と反応を起こさないからである。しかし、適当な電解質においては、銅のようなより導電性の高い材料を給電装置用の材料として使用することもできる。給電装置からシェルまでの距離は、0.1〜4mmの範囲内であることが好ましい。そのため、給電装置とシェルとの間の電解質の堆積は非常に少なくなる。
【0029】
本発明による給電ユニットを種々試験した結果、処理材料の近くに追加のプラスチックシールを使用しなくても、ブランク導電性材料上の金属の堆積は、平均パス当たり約0.005mmに過ぎなかった。すなわち0.04mmという限界よりも少なかった。冒頭で説明したラバーカソード効果による、処理材料上の金属層の喪失はなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
好適な例示としての実施形態により、また添付の図面を参照しながら本発明について以下にさらに詳細に説明する。
図1は、冒頭で説明した図8と同じ方向から見た本発明による給電ユニットの例示としての実施形態である。相互に対応する素子には同じ参照番号を使用している。処理材料1が保持され、上部給電装置すなわちクランプ上部2、および下部給電装置すなわちクランプ下部3により形成されているクランプにより、それぞれ高い導電性を有するブランク材からなるクランプ上部2およびクランプ下部3と電気的接触が行われる。孔部内を垂直方向に移動することができるように、バネガイド11が装着されているガイドブロック4が、クランプ上部2に強固に固定される。クランプ下部3は、バネガイド11が確実に係合する強固に固定されたバネブロック5を有する。2つのブロック4および5の間のバネガイド11上にバネが配置されていて、クランプ上部2をクランプ下部3に対して押圧している。クランプ上部2およびクランプ下部3の前端部で、接触手段すなわち接触素子12は、それぞれ電気を通すことができるようにクランプ上部および下部に導電的に接続されている。処理材料1は、これらの接触素子12間で係合し、電流をクランプ上部2およびクランプ下部3から処理材料1に流すことができる。処理材料1の係合も、電流を流すために使用することができる。
【0031】
接触素子12からスタートして、そこから短い距離を隔ててクランプ下部3を囲んでいるシェル部分8は、クランプ下部3に固定される。シェル部分8は、この場合、電気化学的処理装置内の電解質の液面21の少なくとも上を延びるように設計されている。シェル部分8は、例えば、プラスチックネジまたはシェル部分8上に形成されているクリップ10およびクランプ下部3の内縁の背後のラッチにより、クランプ下部3に固定することができる。シェル部分8は、金属イオンが、クランプ下部3を囲んでいる電解質からクランプ下部3の外側に逆に移動するのを防止する。冒頭で説明したように、これは同時に、アノード(図示せず)と処理材料または給電装置の間に形成される電界線を遮蔽することになる。この例の場合には、シェル部分8は、クランプ上部に面している側面上で開く。しかし、原則的には、クランプ下部3を完全に囲んでいる閉鎖設計も使用することができる。
【0032】
同じような方法で、シェル部分7とクランプ上部2との間の電解質のすべての起こりうる堆積を最小限度に低減するために、シェル部分7をクランプ上部2に固定して、少なくとも外側上、すなわちクランプ下部3に対向する側面上のクランプ上部2上にしっかり保持する。この例の場合、シェル部分7は、プラスチックネジ9により、クランプ上部に固定される。シェルが十分確実に保持されている場合には、1つのプラスチックネジ9による固定で十分である。
【0033】
シェル部分8に類似のシェル部分7は、クランプ下部3に対向する領域内に開いている。
クランプ上部2およびクランプ下部3からなるクランプが開閉すると、シェル部分7および8の接触点に形成されている滑り面22が、相互に強く滑りあい、その結果、この場合も、良い電気絶縁、金属イオンの逆流を防止する液体シール、および電界線の優れた遮蔽が確保される。下部7および8が合流する水平部分が、閉鎖面23として形成される。必要な限りは、これらの閉鎖面23は、処理材料1を確実に固定し、それと接触することができるように処理材料1が保持され、それと接触する領域の前部内に凹状に形成される。クランプが閉鎖している場合には、シェル部分7、8の凹状面は処理材料1の近くに位置するが、処理材料とは接触しない。そのため、この場合も比較的優れた密封状態が得られる。必要な場合には、残りの狭い隙間も、以下に説明するように軟らかいプラスチックシールで塞ぐことができる。そこにある中間の空間を塞ぐために、処理材料に対向するシェル部分7および8の他の面に対しても同じことを行う。
【0034】
それ故、シェル部分7および8は、シェルの外側に位置する電解質から金属イオンが実質的に逆に移動しないように、接触素子12からスタートして給電装置2および3を取り囲むシェルを形成する。
【0035】
図1は、90度左に水平方向に回転した方向から見た図1の給電ユニットを示す。クランプ上部2およびクランプ下部3が形成するクランプも閉じており、例えば、プリント基板のような処理材料1を保持している。次に、処理材料1は、優れた電気的接続を行う圧縮バネ6により、クランプ上部2およびクランプ下部3の間で接触素子12と係合する。図2は、すでに説明したように、処理材料1を確実に保持することができる、シェル部分7、8の少なくとも一部内の前端部の凹部を明瞭に示す。シェル部分7、8はクランプ部分2、3に確実に固定されるので、開閉の際にはクランプ部分と一緒に移動する。それ故、約0.05〜0.3mmである処理材料からの凹部面の短い距離は、処理材料1の厚さとは無関係にいつでも同じである。
【0036】
すでに説明したように、滑り面22および閉鎖面23は、確実に優れた密封状態を保持するためにできるだけ一緒に閉鎖される。密封状態をさらに改善する方法については以下に説明する。
【0037】
これに関連して、図3は、シェル部分7の可能な構成を示し、図4は、シェル部分8の可能な構成を示し、図5は、このようにして構成したシェル部分7および8の相互作用を示す。図3a、図4aおよび図5aは、図2の詳細Aをそこに示す方向から見たものであり、図2の図面の平面内の詳細Aを示す。図3b、図4bおよび図5bは、対応する側面図であり、図3c、図4cおよび図5cは、図a、すなわち平面図にそれぞれ関連する各B−B’線に沿った断面図である。これらの図に示すように、例えば、シェル部分7はホゾ孔18を有し、シェル部分8はホゾ19を有する。もちろん、これらの構成は逆にすることもできる。図5cに示すように、シェル部分8のホゾ19は、シェル部分7のホゾ孔18と係合する。この相互係合は、滑り面22の付近で常に得られる。閉鎖面23に対してこの構成を使用する場合には、クランプが閉じている時にホゾ19およびホゾ孔18は相互に挿入され、開いている時には、再度、分離する。このような構成により、シェル部分7および8の間をさらによく密封することができる。それ故、実際には、電解質はクランプ上部2またはクランプ下部3に達することはない。
【0038】
接触素子12のすぐ近くではこのような構成にすることは不可能である。何故なら、処理材料1がそこで係合しているからである。この場合、例えば、密封は図5dに示すように行われる。この場合、シェル部分7およびシェル部分8の両方がホゾ孔18を有し、その内部で、プラスチックシール片20において係合、適合または接着剤により接着される。クランプを閉じると、プラスチックシール片20が処理材料1に圧着され、そのためこの領域内の接触面が閉鎖されるが、処理材料1との確実な電気的接触はほとんど劣化しない。このような密封には、柔らかなプラスチック、柔らかなゴムまたはフォーム材料が適している。電解質内に含まれている化学薬品に対する安定性を確保するように留意されたい。
【0039】
別の方法としては、最適な密封または遮蔽を確実に行う平らなまたは丸いシールを、シェル部分7および8の接触領域内に設置することができる。
多くの場合、クランプを閉鎖する工程は、クランプが電解質内に浸漬されるまで行われない。それ故、シェルの内部は電解質で満たされる。電界線の比較的優れた遮蔽、および密封により、またそれによる金属イオンの移動の低減により、金属の堆積は少なくなり、電気化学的に容易に除去することができる。
【0040】
原則的には、シェル部分7および8が形成するシェルは、例えば、処理材料1の供給及び取り出しを行う場合、シェル部分の損傷が予想される領域内にのみ設置することができる。損傷が起こる恐れのない他の領域内には従来のプラスチックコーティングを行うことができる。
【0041】
本発明の他の例示としての実施形態について以下に説明する。
図6は、いわゆる垂直浸漬浴亜鉛メッキシステムで処理される平らな材料1を亜鉛メッキするために使用する製品支持レール17および細長いフレームロッド15を含む製品サポートを詳細に示す。フレームロッド15は、導電性材料からなり、すべての側面上に、少なくとも電解槽の液面21の上に延びる絶縁層を備えている。
【0042】
各フレームロッド15は、良好な導電状態で金属フレームロッド15に接続している端部バネ14を備える。図7aは、図6の破断円Cの詳細な拡大図である。図を見れば分かるように、端部バネ14は、フレームロッド15にネジ止め、溶接またはリベット止めされている長方形の金属プレートからなる。これらのバネ要素14のうちの2つは、それぞれの場合、フレームロッド15上に相互に正確に対向して固定され、それ故、その縁部16で処理材料1と係合することができる。この例の場合には、製品サポートレール17、フレームロッド15および端部バネ14は、処理材料への給電装置を構成する。従来、これらの端部バネは、また、プラスチックコーティングを有し、端部位置の狭い領域内で電流を流すためにブランク状態に維持されているのみである。この場合も、冒頭で説明した欠点が生じる。
【0043】
図7cは、図7aのD−D’線に沿って切断したフレームロッドの断面図である。この場合も、本発明によれば、シェル部分7および8は、少なくとも端部バネ14の近くに位置する。シェル部分7および8は相互にシールされ、図3〜図5に記載のように、処理材料1からシールされる。
【0044】
それ故、この例示としての実施形態の場合には、端部バネの接触点は、図1〜図5の例示としての実施形態の接触素子12に対応し、端部バネ14の残りは給電装置2および3に対応する。
【0045】
フレームロッド15は通常600mm以上の長さを有しているので、この場合は、シェル部分7、8を複数の部材に分け、上記方法でジョイントを形成すると有利である。この場合も、非導電性材料からなるネジ9により固定することができる。
【0046】
もちろん、本発明の適用は本明細書に記載する例示としての実施形態に限定されない。特に、種々の形状およびタイプの給電装置を本発明による方法で堆積から保護することができる。
【0047】
本発明を亜鉛メッキ装置の例を参照しながら説明してきたが、本発明による給電ユニットは、冒頭で説明したエッチングのような他のタイプの電気化学的処理に対しても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】2つのシェル部分を含む本発明による給電ユニット。
【図2】90度回転した方向から見た図1の給電ユニット。
【図3】(a)から(c)は前面、側面から見た、および、上から見た断面としての、図1の詳細A内の図1および図2のシェル部分の好ましい実施形態。
【図4】(a)から(c)は図3a〜図3cと同じ方向から見た図1の他のシェル部分の好ましい実施形態。
【図5】(a)から(d)は相互に組合わせた図4a〜図4cおよび図5a〜図5cのシェル部分。
【図6】本発明による給電ユニットを使用することができる垂直動作亜鉛メッキシステムの製品サポートの詳細図。
【図7】図6の細長い給電装置上の本発明による給電ユニットの拡大図。
【図8】従来技術の給電ユニット。
【符号の説明】
【0049】
1…処理材料、2…上部給電装置すなわちクランプ上部、3…下部給電装置すなわちクランプ下部、4…ガイドブロック上部、5…スプリングブロック下部、6…圧縮バネ、7、8…シェル部分、9…固定ネジ、10…クリップ、11…バネガイド、12…接触素子、14…端部バネ、15…フレームロッド、16…縁部、17…製品サポートレール、18…ホゾ孔、19…ホゾ、20…シール、21…液面、22…滑り面、23…閉鎖面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部がブランク導電性材料からなる少なくとも1つの給電装置(2,3;14)と、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)の1つの端部から供給される処理材料(1)と電気的接触を行うための接触手段(12;14)とを有し、電気化学的処理のための装置における処理材料(1)のための給電ユニットであって、
前記給電ユニットは、前記給電装置(2,3;14)が前記処理材料(1)の電気化学的処理中に液体内に特定の長さまで浸漬された時、前記導電性材料のブランク部分上に0.04mm以上の金属が堆積しないように、前記接触手段(12;14)からスタートして前記特定の長さにわたり、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)を取り囲む少なくとも1つの着脱可能な電気絶縁シェル(7,8)を備えることを特徴とする給電ユニット。
【請求項2】
前記給電装置を電解質液に浸漬し、電圧を前記給電装置(2,3;14)に供給した時、前記シェルの外側から前記導電性材料の前記ブランク部分にイオンの実質的な移動が起こらないように、前記少なくとも1つのシェル(7,8)が、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)を取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の給電ユニット。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシェルを、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)に固定するために固定手段(9,10)を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の給電ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)に実質的に適合する形状を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)の壁部の厚さは、0.2mm〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項6】
前記給電装置(2,3)から前記シェル(7,8)までの距離は、0.1〜4mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、射出成型、予め作ったモールド内での深絞り、自動モールド切断、または選択的レーザ焼結により作られることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、プラスチック材料からなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項9】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、少なくとも2つの部分(7,8)から形成されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項10】
前記少なくとも2つの部分(7,8)間の接続は、シールにより行われることを特徴とする請求項9に記載の給電ユニット。
【請求項11】
前記少なくとも2つの部分(7,8)間での接続は、前記少なくとも2つの部分の相互固定部分により行われることを特徴とする請求項9または10に記載の給電ユニット。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、実質的な柔軟性を有さないことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)は、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)の機械的応力を受ける部分を取り囲み、一方、前記少なくとも1つの給電装置(2,3;15)の機械的応力を受けない部分は、絶縁コーティングを備えていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの給電装置(2,3)は、L字形設計であることを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項15】
前記少なくとも1つのシェル(7,8)と、前記接触手段(12)により接触が行われる前記処理材料(1)との間の中間空間を密閉状態に閉鎖するためのシール(20)は、前記接触手段(12)が前記少なくとも1つの給電装置と接続される部分内の前記少なくとも1つのシェル(7,8)内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項16】
前記少なくとも1つの給電装置(2,3)は、第1の接触手段(12)を含む第1の給電装置(2)と、第2の接触手段(12)を有する第2の給電装置(3)とを備え、
前記第1の給電装置(2)および前記第2の給電装置(3)は、相互に移動可能であり、前記処理材料(1)を前記第1および第2の接触手段(12)の間に保持することが可能であることを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項17】
前記第1の給電装置(2)および前記第2の給電装置(3)を、バネ機構(4,5,6,11)により相互に移動できるようにしたことを特徴とする請求項16に記載の給電ユニット。
【請求項18】
前記少なくとも1つの給電装置(2,3;14)が、チタン、ステンレス鋼または銅からなることを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの給電装置(2,3)は、実質的な柔軟性を有さないことを特徴とする請求項1乃至18の何れか一項に記載の給電ユニット。
【請求項20】
処理材料を電気化学的に処理するための装置であって、
前記装置は、前記処理材料(1)に対する請求項1乃至19の何れか一項に記載の給電ユニットを備えることを特徴とする装置。
【請求項21】
前記装置は、前記処理材料(1)を亜鉛メッキするように設計されていることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記装置は、前記処理材料を連続的に処理するように設計されていることを特徴とする請求項20または21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−504359(P2007−504359A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525062(P2006−525062)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009272
【国際公開番号】WO2005/028718
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】