説明

電気化学送出システムの電圧調整

【課題】ゼロ電流輸送を大幅に低減した電気浸透セルを提供する。
【解決手段】ゼロ電流輸送を大幅に低減することのできる電気浸透セルを開示し、このセルは、第1半セル及び第2半セルを有し、かつこれらの半セル間にイオン選択膜を有するセル筐体と、前記第1半セル内に配置された第1電極と、前記第2半セル内に配置された第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極と通電する電解液と、前記第1電極と前記第2電極とを電気的に接続する配線装置とを具え、この配線装置は、前記電気浸透セル内の濃度増加に対抗するために用いる1つ以上の構造を有する。こうしたセルは電気浸透流体送出装置内で、流体入口、前記電気浸透セルに隣接したピストン部材、及びこのピストン部材に隣接した薬剤貯蔵器と共に使用することができ、この薬剤貯蔵器は出口ポートを有する密封区画を具えている。こうした装置を使用する方法も同様に開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は一般に電気化学流体送出装置に関するものであり、特に改善された電気浸透流体送出装置に関するものである。
【0002】
2.従来技術の状況
流体送出装置は現在技術において既知であり、加圧流体送出装置から機械的流体送出装置、電気化学流体送出装置まで、及びそれ以外の範囲に及ぶ。特に興味深い流体送出システムの1つは、送出ポンプに結合された電気浸透セルであり、電気浸透ポンプを形成する。これらの単純なポンプは、電気化学セルとイオン選択膜との組み合わせによって流体送出用の駆動力を発生する。
【0003】
しかし、従来の電気浸透ポンプには、従来技術では今のところ対応していない多数の問題がある。定流量(定レート)の流体送出用途では1つの特別な問題が生じている。装置の動作がある期間にわたって継続すると共に、陽極(アノード)と陰極(カソード)との間の電流を定率に維持しても送出流量が一定しないということが観測される。一般に、電気浸透セルでは2種類の浸透が同時に発生している。主要かつ最も優勢な種類の浸透は電気浸透であり、これにより、セルが動作している間に帯電したイオン(塩)がイオン交換膜を通され、これにより、この径路に沿って水分子が引かれる。二次的でこれほど優勢でない輸送の形態は、環境条件による浸透である。浸透とは障壁を通る溶媒の移動であり、一般に、より低い溶質濃度の領域からより高い濃度の領域に移動する。通常のセル動作条件であるものとすれば、環境駆動の浸透は電気浸透に比べれば無視できる。
【0004】
しかし、電気浸透送出装置の半セル(半電池)内の塩の相対濃度が変化すると共に、送出される流量の大幅な変化が観測される。装置の動作が継続すると共に、装置の膜をイオン(塩)が通過することが一方の半セル内の塩濃度の増加を生じさせて、この膜を通る溶媒の浸透流の増加を生じさせるものと考えられている。従って、環境的な浸透がより優勢になり、セルの予測性及び信頼性に悪影響する。流体移動が一方の半セルに含まれる総流体量の増加を生じさせて、流体の送出流量を増加させる。
【0005】
上述した効果は、セル内の電流の動作が停止した後にも継続し得る。陽極と陰極との間の通電をなくしても、半セル間の濃度差は残る。従って、追加的な電解液/溶媒が膜を通って輸送され続けて、セルが動作を停止した後にも流体送出装置に流体を送出させ続ける。この追加的な流体送出は「ゼロ電流輸送」と称され、特に定流量の流体送出装置の長期使用にとっては許容できないものと考えられている。
【0006】
従って本発明の目的は、この不所望なゼロ電流輸送を解消するか、あるいは大幅に低減することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、装置内の半セル間の濃度差が軽減あるいは回避された、改善されたセル設計を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、装置の送出流量の信頼性及び一貫性を向上させることにある。
【0009】
これら及び他の目的は、本明細書及びこれに添付した特許請求の範囲及び図面を参照すれば、通常の当業者にとって明らかになる。
【0010】
(発明の概要)
本明細書に開示する本発明は、動作電流がなくなった後にセル動作を停止させるための改善されたメカニズムを有する電気浸透セルを教示している。この電気浸透セルは、イオン交換膜によって分離された第1半セル及び第2半セルを有するセル筐体を具えている。各セル内には電極が存在し、即ち第1半セル内に第1電極、第2半セル内に第2電極が存在する。この電気浸透セルは、これらの第1電極及び第2電極と通電する電解液、及びこれらの第1電極と第2電極とを電気的に接続する配線装置も具えている。これらの要素のすべてによって電気浸透セルの通常の動作が保証される。しかし、これに加えて、前記電気浸透セルは、前記配線装置に結合された電気浸透セル内の塩濃度増加の効果の少なくとも一部に対抗する手段も具えている。この対抗手段は、セルの動作が停止した後に、従来の電気浸透セルに見られるゼロ電流輸送を最小化できることを保証する。
【0011】
前記電気浸透セル内で使用する電解液は、Na+及び/またはCl-を含むあらゆる溶液とすることができることが好ましく、例えば周囲組織から埋込型流体送出装置に送出可能な人体からの流体(溶媒が水であり、電解質がナトリウム及び塩素イオンのような天然塩イオン)である。あるいはまた、他の多くの電気化学的に互換性のある体液(例えば、リンゲル液、腎臓透析溶液、PBS、等)も同様に使用することができる。
【0012】
本発明の好適例では、前記電気浸透セルの前記配線装置が順方向配線ループ及び逆方向配線ループを具えている。この好適例では、これらの順方向配線ループ及び逆方向配線ループが共に、ループの電気接続を可能にするためのスイッチを有する。特に、前記順方向配線ループに関連するスイッチを閉じて、電流を前記第1電極から前記第2電極へ流すことができる。あるいはまた、前記逆方向配線ループに関連するスイッチを閉じて、電流を前記第2電極から前記第1電極へ流すことができる。さらに、前記逆方向配線ループ内に電流を流すことを可能にするために、前記電気浸透セルの対抗手段が前記逆方向配線ループに関連する電源を具えて、この配線ループ内に電流を駆動させる。これに加えて、前記逆方向配線ループが、このループ内の電流の大きさ及び/または時間的挙動(タイムコース)を制御可能な制御素子を具えていることが好ましい。
【0013】
他の好適例では、前記電気浸透セルの前記第1及び第2電極が、順方向電極及び逆方向電極の両方から成る。前記第1電極及び前記第2電極の両方の前記順方向電極が、前記順方向配線ループ内に接続されている。同様に、前記第1及び第2電極の前記逆方向電極は、前記逆方向ループ内に接続されている。従って、この好適例では、前記順方向ループと前記逆方向ループとを分離した配線構造で構成することができる。
【0014】
さらに、この好適例の電気浸透セルは、前記第1及び/または第2半セル内の少なくとも一種類のイオン濃度のようなパラメータを検出するセンシング(検出)手段を具えることができる。このセンシング手段は、例えば、前記第1及び/または第2半セル内の導電率を検出すること、あるいは前記第2電極の電位を検出することによって濃度を検出することができる。このセンシング手段は、独立したセンサで構成するか、あるいは必要に応じて、前記順方向の第2電極と前記逆方向の第2電極とを接続するセンシング回路、前記順方向の第1電極と前記逆方向の第1電極とを接続するセンシング回路、または前記順方向の第1電極と前記順方向の第2電極とを接続するセンシング回路で構成することができる。
【0015】
前記第1電極が陽極であり、前記第2電極が陰極であり、前記膜が陰イオン選択膜であることが好ましい。あるいはまた、前記第1電極を陰極にし、前記第2電極を陽極にし、前記膜を陽イオン選択膜にすることもできる。陽極材料は、所定の電解反応において陰イオンが移動するあらゆる適切な材料とすることができ、そして炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀を含むことができる。陰極材料はとりわけ、炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀を含むことができる。双電極の好適例のように、単一の第1電極及び単一の第2電極は、前記セル内のイオン濃度を検出するためのセンシング手段を具えていることが好ましい。
【0016】
こうした電気浸透セルは、電気浸透流体送出装置内で有益に利用することができる。上述したセルは、このセルのすべての好適例と共に、セルを流体入口、電気浸透セルに隣接したピストン部材のような可動壁、及びこのピストン部材/可動壁に隣接した薬剤貯蔵器と組み合わせることによって流体を送出することができ、この薬剤貯蔵器は、出口ポートを有する密封区画を具えている。前記流体入口は、(浸透膜のような)膜、あるいは流体導管で構成することが好ましい。また、前記ピストン部材/可動壁は摺動可能なピストンあるいは可撓性(フレキシブル)ダイアフラムで構成することが好ましい。
【0017】
こうした装置は、電気浸透送出装置から出る不所望な流体の流れを制御する方法において有益に使用することができる。この方法は、(1)内部に電気浸透セルを有する電気浸透流体送出装置を用いて流体を送出して、この電気浸透セル内の塩濃度の増加を生じさせるステップと、(2)前記電気浸透セル内の塩濃度を検出するステップと、(3)送出を停止するステップと、(4)検出した塩濃度に比例して(直線的に、あるいはより複雑な比例関係で)電流を逆流させることによって、増加した濃度に対抗して不所望なゼロ電流輸送を低減して、流体送出装置から出る不所望な流体送出を低減するステップとを具えている。前記検出のステップは、順方向第1電極、順方向第2電極、逆方向第1電極、及び逆方向第2電極のうち少なくとも2つの導電率の差を検出するステップを具えていることが好ましく、前記順方向及び逆方向の第1電極は前記電気浸透セルの第1半セル内に位置し、前記順方向及び逆方向の第2電極は前記電気浸透セル第2半セル内に位置する。
【0018】
本発明のさらに他の好適例では、前記電気浸透セルが順方向の第1及び第2電極、及びこれらの電極どうしを接続する制御回路を具えている。この制御回路内には、電量回路素子が含まれる。前記半セル内の塩の増加は、通過した電荷の関数となる。送出を停止するために、前記電量素子によって測定した通過電荷にもとづく時間及び大きさだけ電流を逆流させる。この好適例は、反転した前記第1及び第2電極を具えることができる。前記電量素子は複合型にすることができ、そして順方向及び逆方向の電流を共に検出することができ、前記制御素子はこれらのデータを複合的な方法で利用して、逆流電流を供給することができる。
【0019】
(実施例の詳細な説明)
本発明は多くの異なる形の実施例が可能であるが、いくつかの特定実施例を図示して詳細に説明し、本明細書の開示は本発明の原理の好適例として考えるべきものであり、本発明を例示した実施例に限定することを意図したものではない。
【0020】
図1に、電気浸透ポンプを具えた従来技術の電気化学装置100を示し、この装置は流体入口101、電気浸透(または電気化学)セル102、及び流体出口104を具えている。流体入口101は一対の流体導管108として示し、新鮮な生理的食塩水を必要に応じてセル102に供給し、そして戻す。電気浸透セル102は一般に、第1半セル112、膜114、及び第2半セル116から成る。図1に示すもののような従来の装置は一般に、流体を第1半セル112内に導入して、この流体の一部分を膜114を通して吸い出すことによって動作し、この吸い出しは、イオンが膜114を通る電気化学的移動による。第2半セル116内に導入される流体は蓄積して、第2セル116内に含まれる流体を流体出口104経由でセル102外に送出する。
【0021】
流体送出装置に使用可能なこうした従来技術の電気浸透は一般に、多くの欠点を有する。こうした装置は電気浸透輸送によって流体を送出するのに有効であるが、流体送出の一貫性及び予測可能性は、装置の動作停止中及びその後の浸透輸送によって影響され得る。セルの動作中に、従来のセルは、セル自体の内部の塩濃度の増加が見られる。この塩濃度の増加はセルの動作に影響することがあり、特に、セル内の不所望な浸透輸送の駆動力として作用し得る。この効果は、電気浸透輸送の停止の後にも及ぶことがあり、セル電流が遮断された後にも浸透輸送を生じさせる。この種の事後動作的な浸透輸送はゼロ電流輸送と称される。
【0022】
本発明の流体送出装置はとりわけ、これらの問題を克服すべく働く。図2に、本発明の流体送出装置30を示し、この装置は概ね、細長い円筒形の装置から成る。本発明の教示は、広範な流体送出装置に利用することができる。本発明のポンプ技術の特に有用な応用の一つは、埋込型医療ポンプである。これらのポンプは、長期間にわたる患者への薬剤送出用に患者の体内に埋め込まれる。本発明の教示を、こうした埋込可能な装置に関して説明する。なお、装置30は埋込可能な装置に関連して示しているが、本明細書及び特許請求の範囲に含まれる教示は、本明細書の開示の範囲を逸脱することなしに他の装置及び用途に移行させることができる。
【0023】
図2に示す流体送出装置30の流体入口32は一般に、流体送出装置30の端部33に結合された多孔質、浸透性、半透性の膜(多孔質膜、透析膜、半透膜)を具えている。流体送出装置30は水が豊富な環境にあり、例えば人体内に埋め込まれ、動作中に、水が入口32を通ってセル34内に入ることができることが好ましい。あるいはまた、図1に示すように、流体入口32は、流体をセル34内に送出するための1つ以上の導管で構成することができる。多くの場合に、特定の装置の流体入口は、一定かつ即座の流体供給を電気浸透セルに対して行って、進行性及び一貫性のある動作を保証すべきである。
【0024】
図2に示す電気浸透セル34は第1半セル38及び第2半セル46から成り、これらの間にイオン選択性の膜54を有する。図に示す流体入口32は第1半セル38に結合されて、流体送出装置30の周囲環境からセル34内に流体を受け入れる。図3に示すように、第1半セル38及び第2半セル46内には電極があり、即ち第1半セル38内の第1電極40及び第2半セル46内の第2電極48である。以下の動作の章でさらに説明するように、第1電極40及び第2電極48はそれぞれ、陽極(アノード)及び陰極(カソード)を構成する。あるいはまた、これらの電極及び膜54用に選択した材料、及び流体送出装置30の動作次第では、第1電極40が陰極を構成し、第2電極48が陽極を構成することもできる。従ってこれらの電極は、第1電極40及び第2電極48及び膜54に使用する特定材料に応じて、セル34の第1半セル38内と第2半セル46内とで交換可能である。
【0025】
多くの材料を第1電極40及び第2電極48に共に用いることができるが、これらの材料は互いに電気化学的な互換性があり、セルの動作中にイオン及び電子の流れを可能にしなければならない。代表的な電極材料の対はとりわけ、Zn/Ag/AgCl、Pt/Pt、Ag/AgCl/Pt、Zn/Pt、Pt/Ag/AgCl、Ag/AgCl/Ag/AgCl、及びZn/AgClである。1つの好適な具体例では、第1電極40が亜鉛電極から成り、第2電極48がAg/AgCl電極から成る。
【0026】
セル34の膜54は一般に、イオン選択膜あるいはイオン交換膜から成り、これらは第1半セル38と第2半セル46との間の保全性をほぼ維持しつつ、イオンの通過を可能にする。膜54用に選択する特定材料は、選択した電極材料及び流体送出装置30の所望のポンピング・レート(送出流量)によって決まる。しかし、代表的な材料は、NAFION
(登録商標)、CMI7000(登録商標)、Membranes International C/R(登録商標)、Ameridia社のCMB及びCCG-F、Ameridia社のAM-1(登録商標)、AM-3(登録商標)、及びAM-X、及びPCA GmBH社のPC-200Dを含む。
【0027】
本発明の装置の電気浸透セル34に関連する教示は必ずしも、流体送出装置に限定する必要はない。本発明のセル34の拡張的な使用法及び一貫性のある動作の応用は、流体送出技術を超えて、あらゆる物質の、温度または圧力の影響を最小にする方法での被制御の放出を含むことができる。従って、本明細書の開示は流体送出装置に関連して示しているが、上述したように、本明細書の電気化学的セルの教示は、本明細書の開示から外れることなしに他の装置に移植することができる。
【0028】
ピストン78は第2半セル46の末端37に結合され、流体送出装置30の当該部分を薬剤貯蔵器80から封じ切っている。ピストン78は流体送出装置30内に摺動可能な方法で収容され、第2半セル46内の流体の体積が増加または減少すると共に、ピストン78はこれに応じて動き、即ち薬剤貯蔵器80内に入り、薬剤貯蔵器80から出る。このプロセス(過程)より、薬剤貯蔵器80内に含まれる流体が送出用に押し出されるか、あるいは流体送出装置30の動作が引き込みであれば引き込まれる。他の構造も同様に利用して、代案の構造で同じ機能的作業を実行することができる。例えばピストン78を、ダイアフラム及び可動部分、あるいは、各区画の保全性を維持しつつ圧力の増加を1つの区画から他の区画に伝えることが可能な他の同様の構造で構成することができる。
【0029】
薬剤貯蔵器80は、図2に概略的に示すように、流体送出装置30の密閉された部分であり、貯蔵器80から外に出る出口ポート84に結合されている。薬剤貯蔵器80は密封区画82を具えていることが好ましい。密封区画82は、貯蔵器80内に密閉すべき薬剤または他の流体用の安全な包含システムを提供する。密封区画82は少なくとも開口83を有して、出口ポート84を通って密封区画82から周囲環境に出る流体の流れを可能にしなければならない。
【0030】
出口ポート84は、貯蔵器80と周囲環境との間の開口から成ることが好ましい。図には示していないが、出口ポート84は追加的に、ノズル、バルブのような流体送出制御装置、あるいは、流体送出装置30から出る流体の流量(フローレート)を調整するための他の制御装置を任意数具えることができる。しかし、出口ポート84の最も単純かつ好適な形態では、出口ポート84は単なる静止した開口であり、貯蔵器80から出る流体の送出流量(レート)は電気浸透セル34の動作によって完全に決まる。
【0031】
図2に示す配線装置は、順方向配線ループ60、逆方向配線ループ68、及びゼロ電流輸送制御手段58を具え、これらが協働して膜54を通るイオン流(イオンフロー)の向き及び流量(レート)を制御して、流体送出装置30から出る流体の流れを制御する働きをする。順方向配線ループ60及び逆方向配線ループ68は、第1電極40と第2電極48との間の電気接続を提供し、第1半セル38及び第2半セル46内に含まれる電解液との組み合わせで、膜54を通るこれらの電極間の電気的ループを完結して、電気セル34の動作を可能にする。従って、両方の配線ループに従来の配線材料を利用することができる。順方向配線ループ60及び逆方向配線ループ68は、単一の電気配線接続で構成するか、あるいは図2に示すように、第1電極40及び第2電極46への単一接続に、一方が順方向配線接続60を構成し他方が逆方向配線接続68を構成する2つの別個の配線接続を加えて構成することができる。
【0032】
通常のセル動作を促進するために、順方向配線ループ60はスイッチ62を追加的に具え、そして電源64を追加的に具えることができる。スイッチ62が閉じられると、電源64が、第1電極40によって生成されるイオンを、第1半セル38から膜54を通って第2半セル46内の第2電極48まで移動させるのに必要なポテンシャル・エネルギーを供給する。あるいはまた、電源64を省略して、セル自体の電気化学的なポテンシャルがシステムの動作を行わせることができる。さらに、順方向配線ループ60が追加的に制御素子66を具えて、制御素子66が、順方向配線ループ60内の電流用の調整メカニズム(機構)を提供することができ、この調整メカニズムは電流の大きさ及び時間的挙動(タイムコース)の少なくとも一方を制御することができる。制御素子66は、抵抗器のような単純なメカニズム、及びマイクロプロセッサ制御の電流制御器のようなより複雑なデバイスを含む従来の電流制御器を任意数具えることができる。順方向配線ループ60はセル34の通常動作中に利用される。
【0033】
逆方向配線ループ68も、順方向配線ループ60と類似の構造を具えている。図2に示す逆方向配線ループ68は、スイッチ70及び(バッテリとして示す)制御素子72を具えている。順方向配線ループ60と同様に、スイッチ70が閉じられると、逆方向配線ループ68は、第2電極48から第2半セル46内に出て膜54を通り第1半セル38内に入り第1電極40に至る電流の流れを可能にする。ここでも制御素子72が、この電流の大きさ及び/または時間的挙動の調整を行う。これに加えて、逆方向配線ループ68は必要に応じて、(制御素子72自体が電源でなければ)逆方向配線ループ68内の電流のポテンシャル駆動力に寄与する電源を追加的に具えることができる。逆方向配線ループ68は、以下に説明するように、セル34の濃度対抗動作中に利用される。
【0034】
制御部材66または制御部材72は追加的にセンシング(検出)手段74を具えることができる。センシング手段74は、流体送出装置30が動作を開始すると、第2半セル46内のイオンの形成を監視する働きをする。センシング手段74は、第1電極40と第2電極48とを接続するセンシング回路76を具えていることが好ましく、センシング回路76は、第2半セル46内のイオン形成を測定する働きをし、そして追加的に独立したセンサを具えることができる。例えば、センシング回路76は、特定種類の濃度測定値の差分を測定することができ、あるいは、第1半セル38と第2半セル46との間のイオン導電率の差を測定することができる。同様に、センシング回路76は特定種類の濃度、あるいは特定の半セルのイオン導電率を測定して、演算素子(図示せず)及び既知の変数を利用して、2つの半セル間のイオン導電率/濃度の差を計算することができる。こうするために、センシング回路76は従来のイオンセンサまたは特定種類用の検体センサ、例えばナトリウム・イオンセンサ、Ag/AgCl塩素イオンセンサ、導電率計、等を任意数具えている。こうした差の情報が一旦定まると、制御部材66または制御部材72はこの情報を利用して、電流の大きさ/時間的挙動を変化させて、流体送出装置30を適切に動作させることができる。
【0035】
図3に示す本発明の他の実施例では、第1電極40が2つの電極、即ち順方向第1電極42及び逆方向第1電極44から成る。さらに、第2電極48は、順方向第2電極50及び逆方向第2電極52で構成できることが好ましい。順方向第1電極42と順方向第2電極50とは順方向配線ループ60によって電気的に接続することができ、逆方向第1電極44と逆方向第2電極52とは逆方向配線ループ68によって電気的に接続することができる。以下の動作の章で説明するように、こうした実施例は、電極材料のより広範な選択を可能にする、というのは、第1電極40及び第2電極46は電気化学的に可逆の材料で製造する必要がないからである。以上で強調した電極材料の組み合わせの範囲が実用上利用可能であるが、図3の好適な実施例では、順方向第1電極42が亜鉛電極から成り、逆方向第1電極44がプラチナ電極から成り、順方向第2電極50がAg/AgCl電極から成り、逆方向第2電極52がAg/AgCl電極から成る。
【0036】
あるいはまた、他の好適な実施例では、単一電極が単一半セル内の順方向電極及び逆方向電極の両方として作用することができる。例えば、図3に示す実施例では、第2半セル46内に2つの分離した電極が存在し、即ち順方向第2電極50及び逆方向第2電極52である。しかし、順方向第2電極50及び逆方向第2電極52は共に、Ag/AgClのような電気化学的に可逆の材料性の単一の第2電極48で構成することができる。こうした実施例では、順方向配線ループ60及び逆方向配線ループ68が、順方向第1電極42及び逆方向第1電極44を単一の第2電極に接続する。もちろん、システム全体を反転させることもでき、即ち、第1電極40を単一電極で構成し、第2電極を順方向及び逆方向の電極で構成し、このことは一部の通常の当業者にとって既知である。いずれの場合にも、多くの異なる配線及び電極の構成が、本明細書に記載の機能を本発明にもたらす。
【0037】
図3に示す実施例では、センシング手段74が、流体送出装置30の2つ以上の電極を接続するセンシング回路76を具えている。好適な実施例では、センシング回路76が順方向第2電極50と逆方向第2電極52とを具えている。あるいはまた、センシング回路76が、順方向第1電極42と逆方向第2電極52、順方向第1電極42と順方向第2電極50、あるいは他のいずれかの類似の組み合わせの接続を行う。これに加えて、3つ以上の電極をセンシング手段74によって相互接続することができる。あるいはまた、独立したセンシング回路をチャンバ(室)46及び38内に挿入することができる。
【0038】
動作中には、図2に示す流体送出装置30をまず、人体のような流体が豊富な環境内に配置して、この周囲環境からの流体が流体入口32を通ってセル34内に吸収され、第1半セル38を満たすようにする。あるいはまた、第1半セル38を使用の直前に、あるいは製造中でも事前に満たしておく。一旦(上記環境内に)埋め込むと、あるいは埋込の直前に、順方向配線ループ60上のスイッチ62を閉じて第1電極40におけるイオンの生成を行わせて、これらのイオンは膜54を通って第2半セル46内に向かって移動される。これらのイオンが膜54を通過する際に、これらのイオンは小量の水を取り込んでこの水に溶けて、第2半セル46内の流体の総体積を増加させる。
【0039】
第2半セル46内の体積が増加すると共に、ピストン78が薬剤貯蔵室80の密封区画82内に押し込まれて、この部分(区画)の体積を内方に、流体送出装置30の出口ポート84に向かって押し縮める。密封区画82が押し縮められると共に、その内部に含まれる流体を、一貫して安定した方法で周囲環境に送出する。装置の通常動作は、第1電極40が消耗するまで、すべての流体が送出されるまで、あるいはオペレータが装置の通常動作を停止する決定を行うまで、同様の方法で継続する。
【0040】
装置の通常動作が継続すると共に、第1半セル38及び/または第2半セル46内のイオン濃度が変化し続ける。例えば、1つの好適なセル34では、即ち、上述したZn/Ag/AgClの実施例では、スイッチ62が閉じられると、第1半セル38内に亜鉛イオンが生成され、そしてナトリウムイオンが膜54を通過して第2半セル46内に入る。これらのイオンは長時間にわたって形成され、第2半セル46内のイオン濃度の増加を生じさせて、第1半セル38と第2半セル46との間にイオン濃度差を生じさせる。この差は、部分的には、従来の電気浸透セル内のゼロ電流輸送の原因である。
【0041】
ゼロ電流輸送の問題に対処するために、本発明の装置のオペレータは、ゼロ電流輸送制御手段58を用いることによって電気浸透セル内の塩濃度増加に対抗しなければならない。制御手段58は、配線装置56とセンシング手段74との組み合わせを具えていることが好ましく、この組み合わせはセルの動作の停止時に有益に利用される。一旦、セル34の通常動作を停止する決定を行うと、センシング手段74を用いて、第1半セル38と第2半セル46との間のイオン濃度差の度合いを測定する。図2に示す本発明の実施例では、センシング回路76は第1電極40と第2電極46との間のイオン濃度差を検出する。そしてこの情報は、逆方向配線ループ68の制御素子72に伝送されて、制御素子72において評価される。制御素子72は、イオン濃度差の効果に対抗するために必要な電流の適正な大きさ及び時間的挙動を決定する。一旦、この大きさ及び時間的挙動を決定すると、スイッチ62を開放してスイッチ70を閉じて、制御素子72は、セル内の塩濃度増加に対抗するのに十分な電流の逆流を命令して、セル34の動作を停止させて流体送出装置30からの流体の送出を完全に停止させる。
【0042】
同様に、図3に示す本発明の実施例では、セルの通常動作期間中のセル34の動作は、順方向配線ループ上のスイッチ62を閉じて、順方向第1電極42と順方向第2電極50とを電気的に接続することによって開始される。一旦、この接続が行われると、順方向第1電極42が第1半セル38内にイオンを生成して、これらのイオンは膜54を通して第2半セル46内に移動される。上述した実施例と同様に、膜54を通るイオンの移動は、第1半セル38と第2半セル46との間のイオン濃度差を生じさせて、このイオン濃度差は、セルの通常動作の停止時にゼロ電流輸送を生じさせる。
【0043】
ゼロ電流輸送を防止するために、セルの通常動作の停止時に、センシング手段74は第1半セル38と第2半セル46とのイオン濃度差を検出する。センシング手段74はセンシング回路76を用いて、順方向第2電極50と逆方向第2電極52との対、順方向第1電極42と逆方向第1電極44との対、及び順方向第1電極42と順方向第2電極50との対(、あるいは他の電極の組み合わせ)のうちの一対間の濃度差を検出する。この濃度差は逆方向配線ループ68の制御素子72に転送されて、スイッチ62が開放されてスイッチ70が閉じられると、不所望なゼロ電流輸送なしにセル34の通常の流体送出動作を停止することができる。
【0044】
図4に代案の実施例を示す。こうした実施例では、流体送出装置30は、上述した図2及び図3に示す実施例と同じ要素の大部分を具えている。装置30は第1半セル38及び第2半セル46を具え、順方向配線ループ60及び逆方向配線ループ68が1つ以上の第1電極40と1つ以上の第2電極48とを接続する。しかし本実施例では、センシング手段74が存在しない。図4の装置は単一の動作セッションを意図したものであり、この装置は1回起動され、そして装置の動作の終わりに機能を完全に停止する。図4の装置30の動作寿命は既知であるかあるいは限られているので、制御制御素子72は既知の所定の電流プログラムを実行して、動作の停止時にセル34の電流動作を反転させることができる。この既知の電流プログラムは、図4に示す1回使用の実施例について、流体送出装置30のほぼ即座の停止を可能にする。
【0045】
以上の記述は単に本発明を説明及び例示したものであり、本発明はこの記述に限定されず請求項によって限定され、本明細書の開示を見た当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の電気化学流体送出装置の破断側面図である。
【図2】本発明の流体送出装置の破断側面図である。
【図3】本発明の流体送出装置の代案実施例の破断側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半セル及び第2半セルを有し、これらの半セル間にイオン選択膜を有するセル筐体と;
前記第1半セル内に配置された第1電極と;
前記第2半セル内に配置された第2電極と;
前記第1電極及び前記第2電極と通電する電解液と;
前記第1電極と前記第2電極とを電気接続する配線装置とを具えて、
前記配線装置が、前記電気浸透セル内のゼロ電流輸送を防止する手段を具えていることを特徴とする電気浸透セル。
【請求項2】
前記配線装置が順方向配線ループ及び逆方向配線ループを具え、前記順方向配線ループ及び前記逆方向配線ループが共に当該ループに関連するスイッチを具えて、前記順方向配線ループに関連する前記スイッチが閉じられると、少なくとも1つの前記第1電極から少なくとも1つの前記第2電極へ電流が流れることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項3】
前記防止する手段が、前記逆方向配線ループに関連する電源を具えて、前記逆方向配線ループに関連する前記スイッチが閉じられると、少なくとも1つの前記第2電極から少なくとも1つの前記第1電極へ電流が流れることを特徴とする請求項2に記載の電気浸透セル。
【請求項4】
前記逆方向配線ループが、前記逆方向配線ループを流れる電流の大きさ及び時間的挙動の少なくとも一方を制御する制御素子を追加的に具えていることを特徴とする請求項3に記載の電気浸透セル。
【請求項5】
少なくとも1つの前記第1電極及び少なくとも1つの前記第2電極の少なくとも一方が、順方向及び逆方向の電極を具えていることを特徴とする請求項3に記載の電気浸透セル。
【請求項6】
少なくとも1つの前記第1電極及び少なくとも1つの前記第2電極が共に、順方向及び逆方向の電極を具え、順方向の前記第1電極である順方向第1電極と順方向の前記第2電極である順方向第2電極とが前記順方向配線ループによって接続され、逆方向の前記第1電極である逆方向第1電極と逆方向の前記第2電極である逆方向第2電極とが前記逆方向配線ループによって接続されていることを特徴とする請求項5に記載の電気浸透セル。
【請求項7】
さらにセンシング手段を具えて、該センシング手段が、前記順方向第1電極、前記逆方向第1電極、前記順方向第2電極、及び前記逆方向第2電極のうちの2つ以上の間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項6に記載の電気浸透セル。
【請求項8】
前記センシング手段が、前記順方向第2電極と前記逆方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項7に記載の電気浸透セル。
【請求項9】
前記センシング手段が、前記順方向第1電極と前記逆方向第1電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項7に記載の電気浸透セル。
【請求項10】
前記センシング手段が、前記順方向第1電極と前記順方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項7に記載の電気浸透セル。
【請求項11】
前記センシング手段が、前記逆方向第1電極と前記逆方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項7に記載の電気浸透セル。
【請求項12】
前記電気浸透セルが、前記第1半セル内及び前記第2半セル内の少なくとも一方の、少なくとも一種類のイオンの濃度を検出する手段を追加的に具えていることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項13】
前記センシング手段が、前記第1半セル及び前記第2半セルの少なくとも一方の導電率を検出して、少なくとも一種類のイオンの濃度を測定することができることを特徴とする請求項12に記載の電気浸透セル。
【請求項14】
少なくとも1つの前記第1電極が陽極を構成し、少なくとも1つの前記第2電極が陰極を構成することを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項15】
前記陽極が、炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀から成るグループから選択した材料を具えていることを特徴とする請求項14に記載の電気浸透セル。
【請求項16】
前記陰極が、炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀から成るグループから選択した材料を具えていることを特徴とする請求項14に記載の電気浸透セル。
【請求項17】
少なくとも1つの前記第1電極が陰極を構成し、少なくとも1つの前記第2電極が陽極を構成することを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項18】
前記電気浸透セルが、前記第1半セル内及び前記第2半セル内の少なくとも一方の、少なくとも一種類のイオンの濃度を検出する手段を追加的に具えていることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項19】
前記センシング手段が、前記第1半セル及び前記第2半セルの少なくとも一方の導電率を検出して、少なくとも一種類のイオンの濃度を測定することができることを特徴とする請求項18に記載の電気浸透セル。
【請求項20】
前記センシング手段が、少なくとも1つの前記第1電極と少なくとも1つの前記第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項18に記載の電気浸透セル。
【請求項21】
前記電解液が水から成ることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項22】
前記電解液が、体液をほとんど模擬した合成溶液から成ることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項23】
前記電解液が等張の生理的食塩水から成ることを特徴とする請求項1に記載の電気浸透セル。
【請求項24】
流体入口と;
前記流体入口と流体が通じる電気浸透セルと;
前記電気浸透セルに隣接した可動壁と;
前記可動壁に隣接し、出口ポートを有する密封区画を具えた薬剤貯蔵器とを具えて、
前記電気浸透セルが、
第1半セル及び第2半セルを有し、これらの半セル間にイオン選択膜を有するセル筐体と;
前記第1半セル内に配置された第1電極と;
前記第2半セル内に配置された第2電極と;
前記第1電極及び前記第2電極と通電する電解液と;
前記第1電極と前記第2電極とを電気接続する配線装置とを具えて、
前記配線装置が、前記電気浸透セル内のゼロ電流輸送を防止する手段を具えている
ことを特徴とする電気浸透流体送出装置。
【請求項25】
前記配線装置が順方向配線ループ及び逆方向配線ループを具え、前記順方向配線ループ及び前記逆方向配線ループが共に当該ループに関連するスイッチを具えて、前記順方向配線ループに関連する前記スイッチが閉じられると、少なくとも1つの前記第1電極から少なくとも1つの前記第2電極へ電流が流れることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項26】
前記防止する手段が、前記逆方向配線ループに関連する電源を具えて、前記逆方向配線ループに関連する前記スイッチが閉じられると、少なくとも1つの前記第2電極から少なくとも1つの前記第1電極へ電流が流れることを特徴とする請求項25に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項27】
前記逆方向配線ループが、前記逆方向配線ループを流れる電流の大きさ及び時間的挙動の少なくとも一方を制御する制御素子を追加的に具えていることを特徴とする請求項26に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項28】
少なくとも1つの前記第1電極及び少なくとも1つの前記第2電極の少なくとも一方が、順方向及び逆方向の電極を具えていることを特徴とする請求項26に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項29】
少なくとも1つの前記第1電極及び少なくとも1つの前記第2電極が共に、順方向及び逆方向の電極を具え、順方向の前記第1電極である順方向第1電極と順方向の前記第2電極である順方向第2電極とが前記順方向配線ループによって接続され、逆方向の前記第1電極である逆方向第1電極と逆方向の前記第2電極である逆方向第2電極とが前記逆方向配線ループによって接続されていることを特徴とする請求項29に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項30】
さらにセンシング手段を具えて、該センシング手段が、前記順方向第1電極、前記逆方向第1電極、前記順方向第2電極、及び前記逆方向第2電極のうちの2つ以上の間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項29に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項31】
前記センシング手段が、前記順方向第2電極と前記逆方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項30に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項32】
前記センシング手段が、前記順方向第1電極と前記逆方向第1電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項30に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項33】
前記センシング手段が、前記順方向第1電極と前記順方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項30に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項34】
前記センシング手段が、前記逆方向第1電極と前記逆方向第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項30に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項35】
前記電気浸透セルが、前記第1半セル内及び前記第2半セル内の少なくとも一方の、少なくとも一種類のイオンの濃度を検出する手段を追加的に具えていることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項36】
前記センシング手段が、前記第1半セル及び前記第2半セルの少なくとも一方の導電率を検出して、少なくとも一種類のイオンの濃度を測定することができることを特徴とする請求項35に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項37】
少なくとも1つの前記第1電極が陽極を構成し、少なくとも1つの前記第2電極が陰極を構成することを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項38】
前記陽極が、炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀から成るグループから選択した材料を具えていることを特徴とする請求項37に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項39】
前記陰極が、炭素、プラチナ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、銀、及び銀/塩化銀から成るグループから選択した材料を具えていることを特徴とする請求項37に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項40】
少なくとも1つの前記第1電極が陰極を構成し、少なくとも1つの前記第2電極が陽極を構成することを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項41】
前記電気浸透セルが、前記第1半セル内及び前記第2半セル内の少なくとも一方の、少なくとも一種類のイオンの濃度を検出する手段を追加的に具えていることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項42】
前記センシング手段が、前記第1半セル及び前記第2半セルの少なくとも一方の導電率を検出して、少なくとも一種類のイオンの濃度を測定することができることを特徴とする請求項41に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項43】
前記センシング手段が、少なくとも1つの前記第1電極と少なくとも1つの前記第2電極との間にセンシング回路を具えていることを特徴とする請求項41に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項44】
前記電解液が水から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項45】
前記電解液が、体液をほとんど模擬した合成溶液から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項46】
前記電解液が等張の生理的食塩水から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項47】
前記流体入口が膜から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項48】
前記流体入口が多孔質材料から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項49】
前記流体入口が流体導管から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項50】
前記可動壁がピストンから成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項51】
前記ピストンが摺動可能なピストンから成ることを特徴とする請求項51に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項52】
前記可動壁が可撓性ダイアフラムから成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項53】
前記可動壁が可動仕切から成ることを特徴とする請求項24に記載の電気浸透流体送出装置。
【請求項54】
流体入口と;
前記流体入口と流体が通じる電気浸透セルと;
前記電気浸透セルに隣接した可動壁と;
前記可動壁に隣接し、出口ポートを有する密封区画を具えた薬剤貯蔵器とを具えて、
前記電気浸透セルが、
第1半セル及び第2半セルを有し、これらの半セル間にイオン選択膜を有するセル筐体と;
前記第1半セル内に配置された第1電極と;
前記第2半セル内に配置された第2電極と;
前記第1電極及び前記第2電極と通電する電解液と;
前記第1電極と前記第2電極とを電気接続する配線装置とを具えて、
前記配線装置が、セルの動作が停止した後に所定期間だけ、前記第1電極と前記第2電極との間の電流を所定の大きさで逆流させる手段を具えている
ことを特徴とする使い切りの電気浸透流体送出装置。
【請求項55】
電気浸透流体送出装置における不所望な流体の流れを制御する方法において、この方法が、
内部に電気浸透セルを有する電気浸透流体送出装置を用いて流体を送出するステップを具えて、前記送出するステップが、前記電気浸透セル内の塩濃度を増加させるステップを具えて;
前記方法がさらに、
前記電気浸透セル内の塩濃度を検出するステップと;
前記送出するステップを停止するステップと;
前記検出した塩濃度に比例して電流を逆流させて前記流体送出装置からの不所望な流体送出を大幅に低減することによって、増加した塩濃度によるゼロ電流輸送を防止するステップと
を具えていることを特徴とする液流制御方法。
【請求項56】
前記塩濃度を検出するステップが、順方向の第1電極、順方向の第2電極、逆方向の第1電極、及び逆方向の第2電極のうち少なくとも2つの間の導電率の差を検出するステップを具えて、前記順方向及び逆方向の第1電極が前記電気浸透セルの第1半セル内に配置され、前記順方向及び逆方向の第2電極が前記電気浸透セルの第2半セル内に配置されていることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
電気浸透流体送出装置における不所望な流体の流れを制御する方法において、この方法が、
内部に電気浸透セルを有する電気浸透流体送出装置を用いて所定量の流体を送出するステップを具えて、前記送出するステップが、前記電気浸透セル内の塩濃度をほぼ所定レベルまで増加させるステップを具えて;
前記方法がさらに、
前記送出するステップを停止するステップと;
所定期間だけ所定量の電流を逆流させて前記流体送出装置からの不所望な流体送出を大幅に低減することによって、増加した塩濃度によるゼロ電流輸送を防止するステップと
を具えていることを特徴とする液流制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−513031(P2006−513031A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568055(P2004−568055)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041664
【国際公開番号】WO2004/069390
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505284862)マイクロリン エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】