説明

電気化学電池用剥離システム

電気化学電池、さらに詳しくは電気化学電池作製のための剥離システムが記載されている。特に、電極等の電気化学電池用構成要素の作製を容易にするための、剥離層配置、アセンブリ、方法および組成物が示されている。いくつかの態様では、電極の作製方法は、その上に電極が作製されたキャリア基材から電極部分を分離させるための剥離層の使用を含んでいる。例えば、中間物の電極アセンブリは、電気活性物質層、集電体、剥離層、およびキャリア基材をこの順番で含んでもよい。キャリア基材は、作製時および/または組立時の電極の取り扱いを容易にすることができるが、実際の使用の前に電極から剥離してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2009年8月24日に出願され、名称が「電気化学電池用剥離システム」である米国仮出願第61/236,322号に対して優先権を主張するものであり、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、広く電気化学電池に関し、さらに詳しくは電気化学電池用剥離システムに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な電気化学電池は、電気化学反応に関与するカソードとアノードを有している。電極を作製するために、集電体等の電気化学電池用構成要素の上に電気活性物質を付着させてもよい。次に、集電体を基材に保持させてもよく、該基材は、電極を作製するのに必要なプロセスに耐えることのできる適切な物理的特性および化学的特性(例えば十分な厚さ)を有している。しかしながら、そのような基材のいくつかは、電気化学電池においてほとんどあるいは全く機能を有しておらず、そのため、それら基材を電池に組み込むことは電池の重量をさらに増加させるだけで、特性を実質的に向上させることはない。したがって、電気化学電池の非機能性構成要素を不要とするあるいは該非機能性構成要素の重量を減らすことのできる代替物品または代替方法は、有益である。他の電気化学電池構成要素の作製も、その代替物品および代替方法により利益を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気化学電池、さらに詳しくは電気化学電池用剥離システムが提供される。本発明の主要な特徴は、場合により、相互に関係する製品、特定の課題に対する代替解決案、および/または、1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある一連の態様においては、一連の電極が提供される。ある態様では、電極は、集電体、電気活性物質層、剥離層を含み、集電体は、電気活性物質層と剥離層の間に配置されている。場合により、集電体は剥離層に隣接して配置され、電気活性物質層は集電体に隣接して配置される。剥離層はポリマー材料または他の適切な材料を含んでもよい。
【0006】
別の態様では、電極は、第1の電気活性物質層、該第1の電気活性物質層に隣接する第1の集電体、該第1の集電体に隣接する第1の剥離層、該第1の剥離層に隣接する第2の集電体、および該第2の集電体に隣接する第2の電気活性物質層を含む。
【0007】
ある一連の態様においては、一連の方法が提供される。ある態様として、少なくとも集電体と電気活性物質を含む電極の作製方法は、キャリア基材の表面に剥離層を配置することと、該剥離層の表面に集電体を配置することを含む。該方法は、集電体層に隣接して電気活性物質層を配置することと、キャリア基材から電極を剥離することも含む。
【0008】
別の態様として、ある方法は、第1の電気活性物質層、第1の集電体、および第1の剥離層を含む第1の電極部を用意することを含む。該方法は、第2の電気活性物質層、第2の集電体、および第2の剥離層を含む第2の電極部を用意することを含む。該第1および第2の電極部は積層されて組立品を形成し、該組立品では、該第1および第2の剥離層が対向している。
【0009】
ある一連の態様においては、物品が提供される。ある態様として、ある物品が提供される。ある態様として、物品は、電気活性物質層、該電気活性物質層に隣接する集電体、および該集電体に接する剥離層を含む。該物品は、剥離層と同等または剥離層よりも大きな厚さを有し、剥離層と接するキャリア基材も含み、該キャリア基材は剥離層によって集電体から剥離することができる。
【0010】
ある一連の態様においては、電気化学電池が提供される。ある態様として、電気化学電池は、アノード、電解質、およびカソードを含む。該電気化学電池は、剥離層も含み、該剥離層は、電気化学電池の少なくとも一部をその上に形成する基材に対する接着親和性よりも大きな接着親和性を電気化学電池の少なくとも一つの構成要素に対して有するとともに、電気化学電池に対し、電気化学的特徴、構造的特徴、または活性化的特徴を実質的に与えない。
【0011】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面を参酌することにより、本発明の種々の限定されない態様についての以降の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書と、出典明示により組み入れられた文献との間に、矛盾および/または相反する開示がある場合、本明細書が優先する。もし、出典明示により組み入れられた2つまたはそれを越える文献に、互いに矛盾および/または相反する開示がある場合、後の効力発生日を有する文献が優先する。本明細書に開示されたすべての特許および特許出願は、あらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の限定されない態様は、添付の図面を参照して実施例を用いて記載される。該図面は模式的なものであり、正確な縮尺率で描いたものではない。図面では、それぞれ同じまたはほとんど同じ図示された構成要素は、通常一つの数字を用いて表される。明確性のため、すべての構成要素がすべての図面に表示されるわけではなく、当業者が本発明を理解するのに不要である場合まで、本発明の各態様のすべての構成要素が表示されるものでもない。
【図1A】図1Aはある一連の態様に係るものであり、電気活性物質層、集電体、剥離層、およびキャリア基材を含む電極アセンブリを示す
【図1B】図1Bはある一連の態様に係るものであり、図1Aに示す剥離層とキャリア基材を用いて作製した電極を示す。
【図2A】図2Aはある一連の態様に係るものであり、2つの電極を結合して、電極アセンブリを形成することを示す。
【図2B】図2Bはある一連の態様に係るものであり、図2Aに示された方法により作製された電極アセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、広く電気化学電池に関し、さらに詳しくは電気化学電池作製用の剥離システムに関する。特に、電極等の電気化学電池構成要素の作製を促進する剥離層の配置、組立品、方法および構造が提供される。いくつかの態様では、電極の作製方法は、電極がその上に作製されるキャリア基材から電極部分を分離する剥離層の使用を含む。例えば、中間段階の電極アセンブリは、順番に、電気活性物質層、集電体、剥離層、およびキャリア基材を含んでもよい。該キャリア基材は、作製時および/または組み立て時において、電極の取扱を容易にすることができ、実際の使用に先立って電極から剥離される。
【0014】
現在のある種の電極の作製方法は、基材の上に電極構成要素を付着させることを含み、該基材は、最終的には電気化学電池の中に組み入れられている。電極作製プロセスに十分耐えうるために、基材は、十分な厚さを有し、および/または適切な材料で作製される必要がある。例えば、電気活性物質としてリチウムを含む電極の作製は、比較的高温および高速でのリチウム金属の真空蒸着を含んでもよく、その場合、基材が特定の材料で作製されるか十分な厚さを持たなければ、基材が曲がることもある。しかしながら、そのような作製工程に適したいくつかの基材は、該基材が電池の中に組み入れられると、最後には電池の特性を低下させる。例えば、基材を厚くすると曲がるのを防止でき、それにより電気活性物質の厚い層を付着させることができるが、電池の比エネルギー密度を低下させる。さらに、電気化学電池に組み入れられたある種の基材は、サイクル時に化学種と好ましくない反応を起こすこともある。これらの問題を改善するため、本発明は、ある観点において、キャリア基材から電極部分を分離するために剥離層を用いる電極の作製方法を含み、該作製方法では、電極を電気化学電池に組み入れる間またはその後で該キャリア基材を電極から取り除くことができる。好適には、その方法によれば、基材の自由度を広げることができ、および/または、基材を電気化学電池に組み入れる時の条件に比べて、電極作製時に用いられるプロセス条件としてより厳しい条件を用いることを可能とする。電気化学電池から基材を取り除くことにより、電池のサイクリング時に起こる可能性のある多くの好ましくない反応を減らすこともできる。その方法に関係する発明に係る物品も記載されている。
【0015】
本発明者らは、本発明の過程において、剥離層作製のためのある種の材料と方法が、電気化学電池の作製に使用できる適切な剥離層をもたらすことを見出した。本明細書に記載された剥離層は、組み立てられおよび配置されて、1つまたは複数の以下の特徴を有している:第1の層(例えば、集電体、または他の態様におけるキャリア基材または他の層)に対しては比較的強い接着力を有するが、第2の層(例えば、キャリア基材、または他の態様における集電体または他の層)に対しては比較的軽度または弱い接着力しか有していない;機械的な分解を起こすことなく層間剥離を促進できる高い機械的安定性;高い熱安定性;電池の作製時および/または電池のサイクリング時に電気化学電池または該電池の構成要素に加わる力または圧力に対する耐久力;作製条件に対する適合性(例えば、剥離層を作製するのに用いる技術に対する適合性だけでなく、剥離層の上面への剥離層の付着)。剥離層が電気化学電池の中に組み入れられる場合には、二次電池全体の重量を減らすために、剥離層を薄くしてもよい。剥離層の上面に均一な層が形成され易くするため、剥離層を平滑にし、かつ厚さを均一にする必要がある。さらに、電気化学電池が高い電気化学「容量」または高いエネルギー貯蔵能力(すなわち容量低下の低減)を保持するために、剥離層は電解質中で安定でなければならず、また電極の構造的完全性を妨げてはならない。場合により、以下に詳しく記載されている接着促進剤を必要に応じて用いることにより、2つの電極部分からの剥離層を一体的に接着させてもよい。
【0016】
本明細書に記載された剥離層を、再充電可能なリチウム−硫黄電気化学電池(すなわち、硫黄含有カソードとリチウムアノードを含む電池)を作製するために用いてもよい。しかしながら、リチウム−硫黄電池が記載されている箇所では、種々の適切な二次電池(他のアルカリ金属二次電池、例えばアルカリ金属アノードを有するもの、または非アルカリ金属二次電池も含む)を用いることができることは理解されるべきであり、また本明細書においてカソード活物質として硫黄を含むカソードが記載されている箇所では、種々の適切なカソード活物質を用いることができることは理解されるべきである。また、再充電可能な電池は本発明に利益をもたらすものであるが、充電不可(すなわち一次)の電池も本発明に利益をもたらすものである。さらに、本発明の態様は電極をキャリア基材に接着させるのに特に有用であるが、剥離および/または仮接着が必要とされる他の用途にも本発明は適用可能である。
【0017】
以下の文献は、あらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる:2001年5月23日に出願され、名称が「電気化学電池用リチウムアノード」である米国特許第7,247,408号;1996年3月19日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,648,187号;1997年7月7日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,961,672号;1997年5月21日に出願され、名称が「新規複合カソード、新規複合カソードを含む電気化学電池、およびその作製方法」である米国特許第5,919,587号;2006年4月6日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/400,781号で、名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気二次電池」である米国特許出願公開第2007−0221265号;2008年7月29日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2008/009158号で、名称が「リチウム二次電池の膨潤抑制」である、国際公開第WO/2009017726号;2009年5月26日に出願され、出願番号が米国特許出願第12/312,764号で、名称が「電解質の分離」である、米国特許出願公開第2010/0129699号;2008年10月23日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2008/012042号で、名称が「二次電池電極用プライマー」である、国際公開第WO/2009054987号;2008年2月8日に出願され、出願番号が米国特許出願第12/069,335号で、名称が「エネルギー貯蔵装置用保護回路」である、米国特許出願公開第2009−0200986号;2006年4月6日に出願され、出願願号が米国特許出願第11/400,025号で、名称が「再充電可能なリチウム二次電池を含む、水系および非水系電気化学電池における電極保護」である、米国特許出願公開第2007−0224502号;2007年6月22日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/821,576号で、名称が「リチウム合金/硫黄二次電池」である、米国特許出願公開第2008/0318128号;2005年4月20日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/111,262号で、名称が「リチウム硫黄再充電可能二次電池残量ゲージシステムおよび方法」である、米国特許出願公開第2006−0238203号;2007年3月23日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/728,197号であり、名称が「重合性モノマーと非重合性キャリア溶媒/塩混合物/溶液の共フラッシュ蒸留」である、米国特許出願公開第2008−0187663号;2008年9月19日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2008/010894号で、名称が「リチウム二次電池用添加物および関連する方法」である、国際公開第WO/2009042071号:2009年1月8日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2009/000090号で、名称が「多孔質電極および関連する方法」である、国際公開第WO/2009/089018号;2009年8月4日に出願され、出願番号が米国特許出願第12/535,328号で、名称が「電気化学電池における力の適用」である、米国特許出願公開第2010/0035128号;2010年3月19日に出願され、出願番号が米国特許出願第12/727,862号で、名称が「リチウム二次電池用カソード」;2009年5月22日に出願され、出願番号が米国特許出願第12,471,095号で、名称が「密封サンプルホルダーおよび制御された雰囲気環境下での微量分析の実施方法」;本件と同日に出願された4件の米国特許出願で、それぞれの名称が「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」(該出願は、2009年8月28日に出願され、米国仮出願番号が第61/237,903号であり、名称「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」(スコルディリス−ケリーら)に対して優先権を主張する);本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池」である米国特許出願;本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池用非導電性材料」である米国仮特許出願;2009年8月24日に出願された米国仮出願番号第61/236,322号であり、名称が「電気化学電池用剥離システム」。
【0018】
電気化学電池の作製に用いる剥離層の例をここで示す。
【0019】
図1Aは、本発明のある態様に基づく剥離層を含む電極アセンブリを示す。図1Aの図示された態様に示すように、電極アセンブリ10は、一体的に積層されて電極12(例えばアノードまたはカソード)を形成する複数の層を含んでいる。電極12は、該複数の層をキャリア基材20の上に配置することにより作製することができる。例えば、キャリア基材20の上に1つまたは複数の剥離層24を最初に配置することにより作製してもよい。以下に詳しく記載されているように、キャリア基材が最終的な電気化学電池に組み入れられることのないように、剥離層は続いて電極をキャリア基材から剥離させる。電極を作製するため、集電体26等の電極構成要素を、キャリア基材とは反対側の面上に剥離層に隣接して配置してもよい。次に、電気活性物質層28を、集電体26に隣接して配置してもよい。
【0020】
必要に応じて、電気活性物質層28に隣接して追加の層を配置してもよい。例えば、電解質から電気活性物質を保護する多層構造体30を、電気活性物質層28の表面29の上に配置してもよい。多層構造体は、例えば、ポリマー層34および40、並びに単一イオン導電層38および42を含んでもよい。多層構造体の他の実施例および構成は、2006年4月6日に出願され、名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気二次電池」である、アフィニートらの米国特許出願第11/400,781号に詳細に記載されており、出典明示によりその内容はすべて本明細書に組み入れられる。
【0021】
電極アセンブリ10が作製された後、剥離層24を利用して電極からキャリア基材20を剥離してもよい。剥離層24は、剥離層が最終電極構造体の一部とならないようにキャリア基材と一緒に剥離するか、あるいは図1Bに示すように剥離層が最終電極構造体の一部として残るように剥離することができる。キャリア基材を剥離する間の剥離層の位置は、剥離層の化学的特性および/または物理的特性を調整することにより変化させることができる。例えば、図1Bに示すように、剥離層を最終電極構造体の一部とすることが望ましい場合、剥離層が、キャリア基材20よりも集電体26に対してより大きな接着親和性を持つように剥離層を調整してもよい。一方、剥離層が電極構造体の一部とならない方が望ましい場合、集電体26よりもキャリア基材20に対してより大きな接着親和性を持つように剥離層を調整してもよい。後者の場合、キャリア基材20に(および/または電極に)剥離力が作用した場合、剥離層は集電体26から剥離され、基材20上に留まる。
【0022】
ある態様では、電極作製後においても、電極が電気化学電池の中に組み入れられる前までは、キャリア基材20は、電極アセンブリ10の一部として電極12とともにそのまま残されている。例えば、電極アセンブリ10を包装し、そして製造者まで輸送し、そこで電極12を電気化学電池の中に組み入れてもよい。その態様では、電極アセンブリの1つまたは複数の構成要素の劣化および/または汚染を防止または抑制するために、電極アセンブリ10を、気密性および/または湿密性の包装物の中に挿入してもよい。キャリア基材20を電極12に結合したままにしておくと、電極の取扱と輸送が容易になる。例えば、キャリア基材20が比較的厚く、および比較的高い剛性または剛直性を有していると、取扱時に電極12が変形するのを防止または抑制できる。そのような態様では、電気化学電池を組み立てる前、組み立てる間、または組み立てた後に、製造者がキャリア基材を取り除いてもよい。
【0023】
図1Aでは、剥離層24がキャリア基材20と集電体26との間に配置された例を示したが、他の態様では、電極の他の構成要素の間に剥離層を配置してもよい。例えば、剥離層を、電気活性物質層28の表面29に隣接して配置してもよく、キャリア基材を、電気活性物質層の反対側に配置してもよい(図示せず)。そのいくつかの態様として、キャリア基材の上に1つまたは複数の剥離層を配置することにより電極を作製してもよい。なお、もし多層構造体30のような保護層を含める場合、保護層を1つまたは複数の剥離層の上に配置してもよい。例えば、多層構造体の各層を剥離層の上に別々に配置してもよく、あるいは多層構造体を作製し、剥離層の上に一度に配置してもよい。次に、電気活性物質層を多層構造体の上に配置してもよい。(もちろん、多層構造体のような保護層を電極に含めない場合、剥離層の上に電気活性物質層を直接配置してもよい。)その後、集電体等の他の適切な層を電気活性物質層の上に配置してもよい。電極を作製するため、剥離層によってキャリア基材を保護層(または保護層が用いない場合には電気活性物質層)から取り除いてもよい。剥離層は、電極とともに残ってもよく、あるいはキャリア基材とともに剥離されてもよい。
【0024】
一の部分(例えば、層、構造体、領域)が、別の部分に対して、”上に”、”隣接して”、”より上に”、”の上方に”、”上に置かれる”、”支持されている”の場合、該一の部分は該別の部分の上に直接位置しているか、あるいは介在部分(例えば、層、構造体、領域)が存在してもよいことが理解されるべきである。同様に、一の部分が、別の部分に対して、”より下に”または”真下に”ある場合、該一の部分は該別の部分の下に直接位置しているか、あるいは介在部分(例えば、層、構造体、領域)が存在してもよいことが理解されるべきである。一の部分が別の部分に対して、”直接上に”、”すぐ隣接して”、”接して”、または”直接支持されている”の場合には、介在層が存在しないことを意味している。一の部分が、別の部分に対して、”上に”、”隣接して”、”より上に”、”の上方に”、”上に置かれる”、”接して”、”より下に”、または”支持されている”の場合、該一の部分は該別の部分の全体または一部を覆っているものと理解されるべきである。
【0025】
したがって、図1Aおよび1Bに示された態様並びに本明細書に記載された他の態様において、図面中に示した層の間に1つまたは複数の追加の層を配置してもよい。例えば、1または複数の追加の層を集電体26と剥離層24との間に配置してもよく、および/または1つまたは複数の追加の層を剥離層24とキャリア基材層20との間に配置してもよい。例えば、層間の接着性を向上させるために、1つまたは複数の追加の層を、集電体と電気活性物質層(例えば、正極活物質または負極活物質)の間に配置してもよい。適切なプライマー層の例が、2008年10月23日に出願され、国際出願番号がPCT/US2008/012042で、名称が「二次電池電極用プライマー」である、国際公開第WO2009/054987号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書に組み入れられる。さらに、プラズマ処理層のような1つまたは複数の層を、電気活性物質層28の表面29の上に付着させてもよく、必要に応じて、電気活性物質層と多層構造体30との間に付着させてもよい。
【0026】
図1Aと図1Bでは、電極アセンブリ10の一部として単一の剥離層24を示しているが、適切な数の剥離層を用いてもよい。例えば、剥離システムは、2,3,4またはそれより多い数の層を含んでもよい。剥離システムに用いる層の数は、少なくともいくらかは、剥離層が最終電気化学電池の中に組み入れられるかどうか、または剥離層がキャリア基材とともに取り除かれるかどうかに左右される。例えば、剥離層が電気化学電池の中に組み入れられる態様では、剥離層の数はより少ないことが望ましい(例えば、3より少なく、または2より少ない剥離層)。これは、剥離層の数が少ないと、電気化学電池の全重量を低減できるだけでなく、作製プロセスの複雑性を減らすことができ、それにより電池の比エネルギー密度を増加させることができる。
【0027】
しかしながら、他の態様として、電気化学電池の構成要素を作製するのに1より多い剥離層を用いる。例えば、第1の剥離層をキャリア基材に隣接して配置してもよく、および、例えば、キャリア基材に対して比較的大きな接着親和性を持たせてもよい。ある作製条件に適合するという理由で第1の剥離層を選択してもよいが、第2の表面(例えば、図1Aの集電体26)に対して比較的大きな接着親和性を持つ方がよい。そのような態様では、剥離層はキャリア基材を剥離させない。なお、キャリア基材を確実に剥離できるように、第2の剥離層を第1の剥離層と第2の表面との間に配置してもよい。ある態様として、第2の剥離層は、第1の剥離層に対して比較的高い接着親和性を有するのに対し、第2の表面に対しては比較的低い接着親和性を有する。そのため、力を加えると、キャリア基材と両方の剥離層を第2の表面から取り除くことができる。別の態様では、第2の剥離層が第1の剥離層に対しては比較的低い接着親和性を有するのに対し、第2の表面に対しては比較的高い接着親和性を有する。そのような態様では、力を加えると、キャリア基材と第1の剥離層を取り除くことができ、第2の剥離層と第2の表面はそのままである。剥離層の他の構成も可能である。
【0028】
図1Bに示すように、剥離層24は、最終電極の一部および/または一旦作製した電気化学電池の一部であってもよい。いくつかの態様では、電池の中に組み入れられた後でも、剥離層24は、電気化学電池に対して、電気化学的特徴、構造的特徴および/または活性化特徴を持たない。例えば、いくつかの態様では、剥離層24は、セパレータ、電気活性物質、または電気活性物質の保護層として実質的に作用せず、電気化学電池の機械的安定性に対し実質的に寄与せず、および/または剥離層を通るイオンおよび/または電子の伝導を実質的に促進しない。すなわち、剥離層は、実質的に、非イオン伝導性および/または非電子伝導性でもよい。ある場合には、剥離層は、一旦電気化学電池の中に組み入れられると、電池が使用されるまで、電池の2つの構成要素が接触しないように維持するような活動的な特徴は行わない。そのため、電気化学電池の作製時に、第2の層または構成要素から第1の層または構成要素を分離させるという剥離特性以外の作用を剥離層は実質的に有していない。本明細書に記載されているように、剥離層としての作用以外に実質的に作用を有していない剥離層は、それにも拘わらず電池の中に組み入れられる。その理由は、作製プロセスを容易にすることができるという利点が、剥離層を電池の中に組み入れることによる潜在的な欠点(例えば、電池の比エネルギー密度を低下させる)を上回っているからである。
【0029】
他の態様として、一旦電気化学電池の中に組み入れられると、剥離層は1つまたは複数の機能を持つ。例えば、剥離層は、セパレータ、電気活性物質、または電気活性物質の保護層として作用してもよく、電気化学電池の機械的安定性に寄与してもよく、および/または剥離層を通るイオンおよび/または電子の伝導を促進してもよい。
【0030】
特定の態様として、剥離層は、電気化学電池の2つの構成要素を互いに接着させるという接着作用を有する。その一例を、図2Aおよび2Bに図示した態様により示す。図2Aに示すように、第1の電極部12Aは、1つまたは複数の剥離層24A、集電体26A、および電気活性物質層28Aを含んでもよい。その電極部は、例えば、図1Aおよび1Bに関して前述した方法を用いて、キャリア基材から剥離された後で作製してもよい。同様に、第2の電極部12Bは、剥離層24B、集電体26B、および電気活性物質層28Bを含んでもよい。前述のように、電極部12Aおよび12Bの表面29Aおよび/または29Bの上に追加の層を付着させてもよい。
【0031】
図2Bに図示した態様に示すように、背中合わせの電極アセンブリ13は、例えば剥離層24Aおよび24Bを介在させて、電極部12Aと12Bを結合させて作製してもよい。電極部は、個々に別れていても、独立ユニットまたは同じユニットの一部(例えば、折り畳まれた状態)でもよい。図2Bに示すように、剥離層24Aと24Bは対向している。しかしながら、他の態様では、最終的な配置において剥離層24Aと24Bが対向しないように、連続するように電極部を互いに積層してもよい。
【0032】
1つまたは複数の剥離層を介在させて電気化学電池の2つの構成要素を結合させるために、適切な方法を用いてもよい。いくつかの態様では、互いに比較的高い接着親和性を元々有する(例えば、本質的にまたは活性化された後で)1つまたは複数の材料を用いて剥離層24Aおよび28Bを作製する。いくつかの態様では、2つの構成要素の接着を促進するために、接着促進剤を用いてもよい。例えば、熱および/または光等の外部刺激を加えて剥離層の表面を活性化させてより接着性を強くすることにより、剥離層を形成するのに用いる材料を結合させてもよい。他の態様では、架橋剤等の薬剤の形態をとる接着促進剤を剥離層の表面に適用して別の層との結合を促進させてもよい。以下に詳しく記載されているように、溶媒および/または接着剤の形態をとる接着促進剤を用いてもよい。さらに別の態様では、剥離層が、それを結合させる材料に対して高い接着親和性を本質的に有している場合には、接着促進剤は不要である。2つの構成要素を結合させる時に、必要に応じて圧力を加えてもよい。
【0033】
いくつかの態様では、図2Aの電極部12Aおよび12Bのような電気化学電池の2つの構成要素を、積層プロセスにより互いに結合させる。積層プロセスは、例えば、溶媒等の接着促進剤(必要により他の材料を含む)を、剥離層24Aおよび/または24Bの表面に適用し、剥離層の少なくとも一部を溶媒和させて、剥離層がより接着され易くする。次に、剥離層をまとめて剥離層を結合させる。結合後(または、いくつかの態様では結合前)、必要に応じて、乾燥プロセス等により溶媒を取り除く。いくつかの態様では、例えば、剥離層24Aと24Bが同じ材料で作製されている場合、図2Bに図示された態様に示されているように、剥離層が結合することにより単一層27が得られる。例えば、剥離層24Aおよび24Bがポリマー材料で作製されている場合、剥離層の結合(例えば溶媒和の後)は、一方の剥離層の表面のポリマー鎖を第2の剥離層のポリマー鎖と絡み合わせる。ある場合には、追加の薬剤および/または条件を用いることなく(例えば、接着促進剤を使用することなく)、ポリマー鎖の絡み合いが起きる。別の態様では、以下に詳しく記載されているように、架橋または溶融等のある種の条件をポリマーに適用することによりポリマー鎖の絡み合いを促進させることができる。
【0034】
第1および第2の剥離層を一体的に結合させた時(必要により接着促進剤を用いて)、2つの剥離層の間の接着力を、第1の剥離層と、第2の剥離層に対向する層との間(例えば、第1の剥離層と集電体との間)の接着力よりも大きくしてもよい。別の態様では、2つの剥離層の間の接着力を、第1の剥離層と、第2の剥離層に対向する層との間(例えば、第1の剥離層と集電体との間)の接着力より小さくしてもよい。接着力は、本明細書の記載と組み合わせ、当業者が決定することができる。
【0035】
本明細書に記載されているように、いくつかの態様では、積層が、接着促進剤(例えば、接着剤または溶媒との組み合わせの形態)を、2つの電極を結合させる前に剥離層の表面に適用することを含んでもよい。例えば、接着剤(例えば、ポリマーまたは他の適切な材料)を、溶媒または溶媒の組み合わせに添加して接着促進剤調合物を調製し、次いで、剥離層24A(および/または24B)の表面に均一に適用する。接着促進剤を剥離層に適用する時、接着促進剤は、剥離層の1つのみ、あるいは両方の剥離層に適用してもよい。次いで、接着させる2つの表面を結合させ、必要に応じて、熱、圧力、光、または接着を促進させる他の適切な条件を続いて適用する。
【0036】
以下に詳しく記載されているように、接着促進剤は、結合させる2つの剥離層の間(または結合させるいろいろな2つの構成要素の間)の界面に離散層を形成してもよい。ある場合には、接着促進剤の層は、以下に詳しく記載されているように、非常に薄くてもよい(例えば、0.001ミクロンと3ミクロンの間の厚さ)。好ましくは、薄い接着促進剤層を用いると、厚い接着促進剤層を用いる場合に比べて、電池の比エネルギー密度を増加させることができる。
【0037】
別の態様では、接着促進剤は、2つの剥離層の間の界面では離散層を形成しない。その態様として、接着促進剤は、剥離層の表面を濡らす溶媒または溶媒の組み合わせであり、ポリマーおよび/または他の非溶媒材料を含んでいない。接着促進剤に含まれる溶媒は、一の剥離層の表面部分を溶媒和し、溶解し、および/または活性化し、該一の剥離層と他の剥離層との接着を促進する。
【0038】
別の態様では、接着促進剤は、2つの剥離層の間の界面では離散層を形成せず、接着促進剤調合物は、比較的少量のポリマーとともに(例えば、接着促進剤調合物の5重量%より少ない、4重量%より少ない、3重量%より少ない、2重量%より少ない、または1重量%より少ない)、剥離層の表面を濡らす溶媒または溶媒の組み合わせを含んでもよい。
【0039】
ある場合には、接着促進剤がその調合物の中にポリマー(または他の非溶媒材料)を含む場合、2つの剥離層の間の界面に離散相が形成されないように、ポリマー(または他の非溶媒材料)の種類、量、および分子量を選択してもよい。例えば、接着促進剤が、層または被膜の形態で剥離層の表面に適用された場合であっても、剥離層の結合後、接着促進剤調合物中のポリマーまたは他の非溶媒材料は、剥離層のポリマー鎖と結合してもよく、そして結合したポリマー鎖は、接着促進剤の離散相が形成されないように、剥離層内で再配列してもよい。ある場合には、その再配列および/または移動が、第1および/または第2の剥離層の中に接着促進剤の少なくとも一部を分散させる(例えば、均一にまたは不均一に)。ある態様では、接着促進剤の実質部分(例えば、実質的にすべて)が第1および/または第2の剥離層の中に分散している(例えば、均一にまたは不均一に)。ある態様では、その再配列および/または移動は、電極または電気化学電池の組み立て時に起きる。別の態様では、その再配列および/または移動は、電気化学電池のサイクル時に起きる。
【0040】
電極および/または電池を組み立てた後、接着促進剤のすべてまたは一部を、第1の電気活性物質と第2の電気活性物質の間(例えば、アノード活物質)、第1の集電体と第2の集電体の間、第1の剥離層と第2の剥離層の間に配置してもよく、第1および/または第2の剥離層の中に分散させてもよく、単一の剥離層の中に分散させてもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。
【0041】
さらに、接着促進剤についての説明が、以下に詳しく記載されている。
【0042】
図2Bは、図2Aの2つの剥離層24Aおよび24Bを結合させて形成した単一層27を示しているが、他の構成も可能であることは理解されるべきである。例えば、ある場合には、剥離層24Aと24Bは異なる材料で作製され、そのため、2つの剥離層を結合させると2つの異なる中間層が得られる。さらに、別の態様では、電気化学電池の結合させる一つの構成要素のみが、剥離層を含み、結合させる第2の構成要素は剥離層を含んでいない。例えば、図2Aの電極部12Aは剥離層24Aを含んでもよいが、電極部12Aと結合させる第2の電極部は剥離層を含んでいない。その態様では、剥離層24Aは、第2の電極の構成要素に直接結合できるような十分な接着特性を有していてもよい。第1の電極部(例えば集電体26A)の表面に対して高い接着親和性を有し、かつその上に第1の電極部が形成されるキャリア基材に対して比較的低い接着親和性を有するだけでなく、第2の電極部の表面に対しても比較的高い接着親和性を有するように、その剥離層を設計してもよい。別の態様では、剥離層と第2の電極部の両方に対して高い接着親和性を有する接着促進剤を用いることができる。剥離層および/または接着促進剤として用いるのに適切な材料を選択するための適切な選別試験が、以下に詳しく記載されている。
【0043】
いくつかの態様では、背中合わせに積層された電極部を含む電極アセンブリ(例えば、少なくとも2つの集電体および必要により他の構成要素により分離された少なくとも2つの電気活性物質層)は、全体厚みが比較的薄い剥離層を含んでいる。この構成の剥離層は、本明細書に記載された同一の材料または異なる材料を用いて形成された単一層または結合層(例えば、接着促進剤を用いて一体的に接着させた2つの層)でもよい(例えば図2Bの層27)。この構成の剥離層の全厚みは、例えば、1〜10ミクロンの間、1〜7ミクロンの間、1〜6ミクロンの間、1〜5ミクロンの間、または1〜3ミクロンの間であってもよい。ある態様では、この構成の剥離層の厚さは、約10ミクロン以下、約6ミクロン以下、約7ミクロン以下、約5ミクロン以下、または約3ミクロン以下である。
【0044】
別の態様では、電極部12Aおよび12B等の電気化学電池の2つの構成要素を、剥離層24Aと24Bの両方を取り除いた後で結合させる。例えば、電極作製時に、剥離層をキャリア基材とともに剥離してもよく、集電体26、電気活性物質層28、および必要に応じて電気活性物質層に隣接する追加の層のみが後に残る。接着剤等の接着促進剤を結合させる1つまたは複数の表面に適用することにより、その電極部を、別の電極部および/または電気化学電池の別の構成要素と結合させることができる。別の態様では、2つの電極部は、接着促進剤(例えば接着剤)または剥離層で結合されておらず、以下に詳しく記載されているように、例えば「巻回」の構成で互いに単に向かい合うように置かれている。好ましくは、その態様および他の態様(例えば図2Bに示された)では、集電体および電気活性物質層の支持体は不要であり、電気化学電池は自立している。この構成によれば、電気化学電池の重量を低減でき、それにより、電池のエネルギー密度を増加させることができる。
【0045】
図2Aおよび2Bは、剥離層24Aおよび/または24Bを介在させて2つの電極部を結合させることを示しているが、別の態様では、本明細書に記載された方法および物品は、電極部と、固体セパレータおよび/または保護層等の電気化学電池の異なる構成要素とを結合させるために用いることができる。さらに、図1および2は、電極を形成するための1つまたは複数の剥離層の使用を示しているが、本明細書に記載された方法および物品は、セパレータおよび/または保護層等の電池の他の構成要素を作製するためにも用いることができる。電気化学電池の構成要素の作製に用いられる剥離層は、適切な材料を用いて作製すればよく、少なくとも部分的には、用いられるある種のキャリア基材、剥離層の他の面と接する材料、剥離層が最終的な電気化学電池の中に組み入れられるかどうか、および電気化学電池の中に組み入れられた後で、剥離層が付加的な機能を有するかどうかに依存する。さらに、剥離層を適切な材料で作製して、第1の層(例えば、集電体、または別の態様ではキャリア基材または他の層)に対して比較的高い接着親和性を持ち、第2の層(例えば、キャリア基材、または別の態様では、集電体または他の層)に対しては比較的弱いまたは低い接着親和性を持つようにしてもよい。剥離層は、物理的に分解することなく容易に層間剥離できる高い力学的安定性、および/または高い熱安定性を持ってもよい。剥離層の物性は、ある種の製造条件に適合することも必要である。剥離層が、最終的な電気化学電池の中に組み入れられる場合、電気化学電池が高い電気化学的「容量」またはエネルギー貯蔵容量を持つために(すなわち、容量低下の抑制)、剥離層は電解質の中でも安定であり、かつ電極の構造完全性を阻害しない材料を用いて作製する必要がある。
【0046】
また、ある種の態様では、電気化学電池の構成要素を作製するのに用いる剥離層は、電池の作製時および/またはサイクル時に構成要素に加わる力または圧力に対して耐えられるように設計されている。例えば、本明細書に記載された剥離層は、2009年8月4日に出願され、出願番号が米国特許出願第12/535,328号で、名称が「電気化学電池における力の適用」である米国特許出願公開第2010/0035128号に記載された方法および物品と一致させてもよく、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0047】
本明細書に記載されているように、接着促進剤は調合物を含んでもよく、該調合物は、剥離層と電池の別の構成要素と間の接着を促進するために接着促進剤調合物が接する剥離層の表面を溶媒和し、該剥離層の表面の一部を溶解し、および/または該剥離層の表面を活性化することができる。いくつかの態様では、接着促進剤は、電池の他の構成要素(例えば、集電体、電気活性物質、電解質)に対して比較的不活性である。ある種の態様では、接着促進剤が電池の1つまたは複数の構成要素と反応しないように、接着促進剤の剥離層への浸透をできるだけ抑制するように、接着促進剤を調合または適用するのがよい。ある種の接着促進剤調合物は、例えば、塗工、吹付け塗布、および本明細書に記載された他の方法並びに当業者に公知の方法を用いて、電池の構成要素に容易に適用できるように、設計されてもよい。
【0048】
いくつかの態様では、接着促進剤(例えば、接着剤または溶媒溶液)は、剥離を作製するのに用いる1つまたは複数の材料を含んでもよい。典型的には、接着促進剤は剥離層とは異なる調合を有してもよいが、いくつかの態様では、調合は実質的に同様としてもよい。
【0049】
剥離層および/または接着促進剤は、例えば、金属、セラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせで作製されてもよく、あるいは金属、セラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせを組成の中に含んでもよい。その場合、剥離層および/または接着促進剤は導電性、半導電性、または絶縁性でもよい。
【0050】
いくつかの態様では、剥離層および/または接着促進剤は、ポリマー材料を含む。ある場合には、剥離層および/または接着促進剤のポリマー材料の少なくとも一部が架橋され、別の場合では、ポリマー材料が実質的に非架橋である。接着促進剤の調合物に含有される場合、ポリマーは、電気化学電池の2つの構成要素の間の接着を促進する接着剤として機能してもよい。
【0051】
複数のポリマー鎖の1つの末端でない少なくとも1つの位置で、2つまたはそれを越えるポリマー鎖を互いに結合させる架橋結合が存在する場合、ポリマーの少なくとも一部を架橋させる。例えば、プライマー層が架橋されたポリマー材料を特定の重量%含む場合、該プライマー層の中の該重量%の個々のポリマー鎖は、該プライマー層の中の別のポリマー鎖と、該個々のポリマー鎖の少なくとも1つの中間(例えば、非末端)位置で結合してもよい。いくつかの態様では、架橋結合は共有結合である。別の態様では、架橋結合はイオン結合である。全体として、架橋されたポリマー鎖は、相互に連結された3次元のポリマーネットワークを作る。各ポリマー鎖を別のポリマー鎖と結合させる架橋結合は、紫外線照射、γ線照射、架橋剤、熱刺激、光化学刺激、電子ビーム、自己架橋、フリーラジカル、および当業者の公知他の方法等の方法を用いて、活性化させてもよい。
【0052】
ある場合には、剥離層および/または接着促進剤は、架橋されたポリマー材料を30重量%未満含む(例えば、プライマー層が乾燥された後で決定される)。すなわち、ある層のポリマー材料を形成する30重量%未満の各ポリマー鎖は、該層の中の別のポリマー鎖と、該各ポリマー鎖の少なくとも1つの中間(例えば、非末端)位置で結合してもよい。剥離層および/または接着促進剤は、架橋されたポリマー材料を、例えば、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、または2重量%未満、または0%を含んでもよい。ある態様では、剥離層および/または接着促進剤は、共有結合で架橋されたポリマー材料を30重量%未満含む。例えば、剥離層および/または接着促進剤は、共有結合で架橋されたポリマー材料を、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、または0%含む。1つのある態様では、剥離層および/または接着促進剤は、共有結合で架橋された材料を実質的に含んでいない。
【0053】
場合によって、剥離層は、該剥離層内で異なる架橋度を有する。例えば、剥離層の第1の表面は架橋されたポリマーの量を少なくし、剥離層の第2の表面では、架橋されたポリマーの量を多くしてもよい。該剥離層の中の架橋剤の量に勾配を設けてもよい。他の構成も可能である。
【0054】
いくつかの態様では、剥離層および/または接着促進剤は、実質的に架橋されていないポリマー材料を含む。本明細書で用いているように、「実質的に架橋されていない」という用語は、剥離層、接着促進剤を作製し、および/または関連する電気化学電池を作製するために、ポリマー材料を一般的に処理する時、ポリマー材料を架橋させるための公知の方法、例えば、紫外線(UV)照射や架橋剤の添加は、用いないことを意味する。実質的に架橋されていない材料とは、該ポリマー材料の固有の架橋度を超えない架橋度である限り、架橋された材料を実質的に含まないものである。いくつかの態様では、実質的に架橋されていない材料は、剥離層、接着促進剤を作製し、および/または関連する電気化学電池を作製するために、ポリマー材料を一般的に処理した後、該ポリマー材料の固有の架橋度を超えない架橋度である限り、架橋された材料を実質的に含まない。典型的には、実質的に架橋されていない材料は、架橋されたポリマー材料の10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満である。ある種の態様では、実質的に架橋されていない材料は、共有結合で架橋されたポリマー材料の10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満である。
【0055】
少なくとも1つの架橋結合に含まれる鎖の数に応じて、広い範囲でポリマー材料を架橋させてもよい。ポリマー材料の全質量の中で架橋されたポリマーの重量%は、対象とする全質量に対する、架橋結合に関係するポリマー重量を求めることにより決定されてもよい。その決定は、例えば、FTIRおよび示差走査熱量計(DSC)を含むいろいろな科学的方法を用いて当業者により実施可能である。
【0056】
剥離層および/または接着促進剤は、架橋されたポリマー材料をある割合含有するが(例えば、架橋されたポリマー材料の30重量%未満)、剥離層および/または接着促進剤に含まれるポリマー材料の全量(例えば、架橋されポリマー材料と架橋されていないポリマー材料を合わせた値)は、例えば、剥離層および/または接着促進剤の20〜100重量%を含んでもよい(例えば、30〜90重量%、50〜95重量%、または70〜100重量%)。剥離層および/または接着促進剤を作製するために用いる残りの材料は、例えば、充填剤(例えば、導電性フィラー、半導電性フィラー、または絶縁性フィラー)、架橋剤、界面活性剤、1つまたは複数の溶媒、本明細書に記載された他の材料、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0057】
ある種の態様では、剥離層および/または接着促進剤は、紫外線硬化性材料を含んでもよい。例えば、剥離層または接着促進剤で作製された層の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも80重量%が紫外線硬化性材料でもよい。別の例では、剥離層または接着促進剤で作製された層の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも80重量%が紫外線硬化性材料ではない。ある態様では、剥離層および/または接着促進剤で作製された層の実質的にすべてが紫外線硬化性ではない。
【0058】
いくつかの態様では、本明細書に記載された剥離層および/または接着促進剤は、側鎖水酸基の官能基を含む材料を含んでいる。水酸基は、第1の層に対しては比較的高い接着親和性を持つが、第2の層に対しては比較的弱いまたは低い接着親和性を持ってもよく、あるいは接着促進剤が剥離層と別の構成要素との間(例えば、2つの剥離層の間)の接着を促進させるようにしてもよい。限定されない水酸基含有ポリマーの例には、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびビニルアルコール−メチルメタクリレート共重合体が含まれる。水酸基含有ポリマーは、広い範囲で加水分解を受けていてもよい(それにより、広い範囲で水酸基を含む)。例えば、ポリマー(例えば、ビニル系ポリマー)は50%を越えて、60%を越えて、70%を越えて、80%を越えて、90%を越えて、95%を越えて、または99%を越えて加水分解されていてもよい。大きな加水分解率は、例えば、水酸基含有材料のある種の材料に対する接着性を向上させ、ある場合には、電解質に対してポリマーをより溶解しにくくする。別の態様では、水酸基含有ポリマーは、水酸基の官能基の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満が加水分解されてもよい。
【0059】
いくつかの態様では、本明細書に記載された剥離層および/または接着促進剤はポリビニルアルコールを含む。剥離層および/または接着促進剤に含まれるポリビニルアルコールは、ある場合には架橋されてもよく、別の場合には実質的に架橋されていなくてもよい。ある態様には、キャリア基材に直接隣接する剥離層が、ポリビニルアルコールを含む。別の態様では、剥離層が実質的にポリビニルアルコールから成る。その態様および他の態様におけるポリビニルアルコールは、実質的に非架橋であり、または別の場合、第1の剥離層を作製するために用いられる材料の30%未満が架橋されている。例えば、キャリア基材に直接隣接しポリビニルアルコールを含む剥離層は、架橋されたポリビニルアルコールを、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満含んでもよい。その剥離層は、必要に応じて第2の剥離層に隣接させてもよく、該第2の剥離層は、第1の剥離層とは異なる材料組成を有してもよい。
【0060】
適切な条件下で架橋結合を形成するある種のポリマーが知られている。架橋可能なポリマーの限定されない例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、EPR、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレンビスアクリルアミド(EBA)、アクリレート(例えば、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、エチレンエチルアクリレート(EEA)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ある種のフッ素ポリマー、シリコーンゴム、ポリイソプレン、エチレンビニルアセテート(EVA)、クロロスルホニルゴム、フッ素化ポリ(アリレンエーテル)(FPAE)、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ジエポキシド、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエーテル、ポリグリコールビニルエーテル、ポリグリコールジビニルエーテル、それらの共重合体、およびセパレータ層用の保護被覆層についての共同譲受人であるYingらの米国特許第6,183,901号に記載されたポリマーが含まれる。当業者であれば、本明細書の記載と当業者の技術常識とを組み合わせ、適切な架橋方法だけでなく、架橋可能な適切なポリマーを選択することができる。
【0061】
剥離層および/または接着促進剤の使用に適した他の種類のポリマーには(架橋または非架橋のいずれか)、限定されるものではないが、ポリアミン(例えばポリ(エチレンイミン)とポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε−カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66));ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメルトイミド−1,4−ジフェニルエーテル)(カプトン(登録商標)));ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニルフルオライド)、ポリビニリデンフルオライド(PVFまたはPVDF)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、紫外線硬化性アクリレートまたはメタクリレート);ポリアセタール;ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン−1)、ポリ(n−ペンテン−2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標));ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキサイド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキサイド)(PTMO)、熱硬化性ジビニルエーテル;ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ−1,3−フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ−1,4−フェニレンイミノテレフタロイル);ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT);ポリヘテロ環状化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール−ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2−ポリブタジエン、シスまたはトランス−1,4−ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴム);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS);および無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が含まれる。これらポリマーの力学的特性および物理的特性は公知である。したがって、当業者であれば、それらポリマーの力学的特性および/または電子特性、キャリア基材および/または電池の構成要素に対する接着親和性、ある種の溶媒または電解質に対する溶解性、および本明細書に記載された他の要素に基づいて、例えば、ポリマーブレンドの成分の量を調整したり、架橋度を調整したり(もしあれば)することにより、剥離層および/または接着促進剤に使用できる適切なポリマーを選択することができる。本明細書に記載されたような簡単なスクリーニング試験を用いて、必要な物理的特性/力学的特性を有するポリマーを選択することができる。
【0062】
ポリマーの分子量も接着親和性に影響を与える場合もあり、剥離層および/または接着促進剤においては変化させることができる。例えば、剥離層および/または接着促進剤に用いるポリマーの分子量は、1,000g/molと5,000g/molの間、5,000g/molと10,000g/molの間、10,000g/molと15,000g/molの間、15,000g/molと20,000g/molの間、20,000g/molと30,000g/molの間、30,000g/molと50,000g/molの間、50,000g/molと100,000g/molの間、または100,000g/molと200,000g/molの間であってもよい。別の分子量範囲も可能である。いくつかの態様では、剥離層および/または接着促進剤に用いるポリマーの分子量は、約1,000g/molより大きく、約5,000g/molより大きく、約10,000g/molより大きく、約15,000g/molより大きく、約20,000g/molより大きく、約25,000g/molより大きく、約30,000g/molより大きく、約50,000g/molより大きく、約100,000g/molより大きく、または約150,000g/molより大きくてもよい。別の態様では、剥離層および/または接着促進剤に用いるポリマーの分子量は、約150,000g/molより小さく、約100,000g/molより小さく、約50,000g/molより小さく、約30,000g/molより小さく、約25,000g/molより小さく、約20,000g/molより小さく、約10,000g/molより小さく、約5,000g/molより小さく、または約5,000g/molより小さくてもよい。
【0063】
剥離層および/または接着促進剤は1つまたは複数の架橋剤を含んでもよい。架橋剤は反応部を有する分子であって、1つまたは複数のポリマー鎖との間で架橋結合を形成するようにポリマー鎖の官能基と相互作用するように設計されている。本明細書に記載されている剥離層および/または接着促進剤のために使用されてポリマー材料を架橋させる架橋剤には、限定されるものではないが、以下のものが含まれる:ポリアミドエピクロロヒドリン(ポリカップ172);アルデヒド(例えば、ホルムアルデドおよび尿素−ホルムアルデヒド);ジアルデヒド(例えば、グリオキザール グルタールアルデヒド、およびヒドロキシアジポアルデヒド);アクリレート(例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、メタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート);アミド(例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)アクリルアミド);シラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ジメチルジ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルビニルジ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルビニルジ(シクロヘキサノンオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、およびフェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン;ジビニルベンゼン;メラミン;ジルコニウムアンモニウムカーボネート;ジシクロヘキシルカルボジイミド/ジメチルアミノピリジン(DCC/DMAP);2−クロロピリジニウムイオン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;アセトフェノン ジメチルケタール;ベンゾイルメチルエーテル;アリールトリフルオロビニルエーテル;ベンゾシクロブテン;フェノール樹脂(例えば、ホルムアルデヒドと、メタノール、エタノール、ブタノール、およびイソブタノール等の低級アルコールと、メラミンとの縮合物);ジアルデヒド;および当業者に公知の他の架橋剤。
【0064】
架橋されたポリマー材料と架橋剤を含む態様では、架橋剤に対するポリマー材料の重量比は、いろいろな理由によって変化し、限定されるものではないが、その理由には、ポリマーの官能基含有量、ポリマーの分子量、架橋剤の反応性および機能性、架橋の望ましい速度、ポリマー材料に望まれる剛直性/硬さの程度、および架橋反応が起きる温度が含まれる。ポリマー材料と架橋剤の間の重量比の範囲の限定されない例には、100:1〜50:1、20:1〜1:1、10:1〜2:1、および8:1〜4:1が含まれる。
【0065】
別の態様では、剥離層および/または接着促進剤は、金属または導電性ポリマー等の導電性材料を含む。例えば、電気化学電池の中に組み入れられた後で、剥離層も集電体として働く場合、以下に詳しく記載されているように、集電体として用いるに適した材料で剥離層を作製してもよい。
【0066】
剥離層および/または接着促進剤を、例えば、電気化学電池の構成要素に適用する際に、その最初の調合物の中に、1つまたは複数の溶媒を含有させてもよい。用いられる溶媒または溶媒の組み合わせは、例えば、調合物中の他の材料の種類と量、電池構成要素に調合物を適用する方法、電気化学電池の他の構成要素(例えば、集電体、電気活性物質、電解質)に対する溶媒の不活性さに依存する。例えば、調合物中の他の材料(例えば、ポリマー、充填剤等)を溶媒和するあるいは溶解する能力があるかどうかという観点から、ある種の溶媒または溶媒の組み合わせを選択してもよい。接着促進剤の調合物の場合、該接着促進剤調合物が接する剥離層の一部を溶媒和するあるいは溶解することができるかどうか、および/または接着を促進するために剥離層の表面を活性化する能力があるかどうか、という観点から、溶媒または溶媒の組み合わせを選択してもよい。ある場合、用いられる1つまたは複数の溶媒が剥離層の表面を濡らし(および活性化し)、接着を促進するが、剥離層を横切って浸透することはない。適切な溶媒を選択する際には、その要因と他の要因との組み合わせを考慮してもよい。
【0067】
適切な溶媒の限定されない例には、水性液体、非水系液体、およびそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの態様では、剥離層および/または接着促進剤に用いられる溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびそれらの混合物を用いることができる。非水系液体の追加の例には、限定されるものではないが、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、サルファイト、スルホラン、スルホキシド、脂肪族エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前述の溶媒の置換体、およびそれらの混合物を含む。前述の溶媒のフッ素化誘導体を用いてもよい。もちろん、必要に応じて、他の適切な溶媒を用いることもできる。
【0068】
接着促進剤用の溶媒の組み合わせの使用を含む態様の1つの集団では、該溶媒の組み合わせの第1の溶媒を、接着促進剤調合物が接する剥離層の一部を溶媒和する、溶解する、および/または活性化するために用いてもよく、および接着促進剤調合物を希釈するまたは該調合物の粘度を低下させるために第2の溶媒を用いてもよい。例えば、態様の1つの集団では、側鎖水酸基の官能基を有するポリマー(例えば、PVOH)を含み2つの剥離層の間の接着を促進するのに用いられる接着促進剤は、該2つの剥離層の間の接着を促進する側鎖水酸基の官能基を溶媒和する、溶解する、または活性化する第1の溶媒を含んでもよい。第1の溶媒は、例えば、側鎖水酸基の官能基を有するポリマー(例えば、PVOH)を溶解する、溶媒和する、または活性化するスルホキシドまたは別の適切な溶媒を含んでもよい。接着促進剤は、第1の溶媒と混和する第2の溶媒をさらに含んでもよい。例えば、接着促進剤調合物の粘度を希釈するまたは低下させるために、および/または接着促進剤調合物の蒸気圧を増加させるために第2の溶媒を用いてもよい。溶媒の組み合わせの中に、追加の溶媒(例えば、第3の溶媒、第4の溶媒)を溶媒の組み合わせの中に含有させてもよい。本明細書に記載されているように、溶媒の組み合わせの中の1つまたは複数の溶媒は、電池の他の構成要素(例えば、集電体、電気活性物質、電解質)に対して不活性であることがよい。
【0069】
接着促進剤調合物が接する剥離層の一部を溶媒和する、溶解する、および/または活性化するために用いる第1の溶媒と、少なくとも第2の溶媒(前述の特性を有する溶媒)を含む溶媒の組み合わせは、第1の溶媒の量として、溶媒の組み合わせの全体に対して、1重量%を越える量、約5重量%を越える量、約10重量%を越える量、約20重量%を越える量、約30重量%を越える量、約40重量%を越える量、約50重量%を越える量、約60重量%を越える量、約70重量%を越える量、約80重量%を越える量、または約90重量%を越える量を含んでよい。別の態様では、第1の溶媒は、溶媒の組み合わせの全体に対して、約90重量%未満、約80重量%未満、約70重量%未満、約60重量%未満、約50重量%未満、約40重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約3重量%未満、または約1重量%未満の量が存在する。
【0070】
本明細書に記載されているように、接着促進剤は、その調合物の中に、電気化学電池の2つの構成要素(例えば、剥離層)の間の接着を促進するのに用いることができる1つまたは複数の溶媒を含んでもよい。ある場合には、接着促進剤は、その調合物の中に、溶媒または溶媒の組み合わせは含むが、ポリマーは含んでいない。別の態様では、接着促進剤は、その調合物の中に、ポリマーとともに溶媒または溶媒の組み合わせを含んでおり、該ポリマーは本明細書に記載されており、接着剤として働く。電気化学電池の構成要素に適用される接着促進剤調合物に含まれるポリマーの量は、例えば、接着促進剤調合物の全重量に対して、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約7重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、または約0.1重量%以下でもよい。
【0071】
接着促進剤調合物へのポリマーの使用は、ある例では、すべての他の条件が同じであれば、ポリマーを含まないこと以外は同様の接着促進剤調合物を用いた場合に比べ、電池の構成要素間の接着を促進するに必要な時間を短縮できる。例えば、ポリマーを含む接着促進剤を用いた接着では、ポリマーを含まない接着促進剤を用いた接着よりも、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍速く接着が起きる。しかし、ポリマーを含まない接着促進剤調合物は、接着プロセスを簡単にする。
【0072】
剥離層および/または接着促進剤を用いて作製された層(もし該層が少しでも作製される場合)の厚さは、広い厚さの範囲で変化してもよい。典型的には、剥離層の厚さは、接着促進剤を用いて作製された層の厚さよりも大きい。剥離層の厚さは、例えば、約0.1ミクロン〜約50ミクロンの間で変化してもよく、接着促進剤を用いて作製された層の厚さは、例えば、約0.001ミクロン〜約50ミクロンの間で変化してもよい。ある場合では、接着促進剤を適用しても、実質的な厚さを有する層は形成されない。
【0073】
いくつかの態様では、剥離層および/または接着促進剤層の厚さは、0.001〜1ミクロンの厚さの間、0.001〜3ミクロンの厚さの間、0.01〜3ミクロンの厚さの間、0.01〜5ミクロンの厚さの間、0.1〜1ミクロンの厚さの間、0.1〜2ミクロンの厚さの間、0.1〜3ミクロンの厚さの間、1〜5ミクロンの厚さの間、5〜10ミクロンの厚さの間、5〜20ミクロンの厚さの間、または10〜50ミクロンの厚さの間でもよい。ある態様では、剥離層および/または接着促進剤を用いて作製された層の厚さは、例えば、約10ミクロン以下、約7ミクロン以下、約5ミクロン以下、約3ミクロン以下、約2.5ミクロン以下、約2ミクロン以下、約1.5ミクロン以下、約1ミクロン以下、または約0.5ミクロン以下でもよい。前述のように、剥離層が電気化学電池の中に組み入れられない場合(例えば、剥離層がキャリア基材とともに剥離される場合)には比較的厚い剥離層を用いるのが適しており、電気化学電池の中に剥離層が組み入れられる場合には比較的薄い剥離層が望ましい。
【0074】
本発明者らは、発明の過程において、処理の過程で1つまたは複数の層の組成を変化させることにより、ある種の剥離層が、第1の表面(例えば、キャリア基材)に対して比較的良好な接着性を持つ一方で、第2の表面(例えば、集電体)に対しては比較的弱い接着性を持つことを見出した。ある態様では、接着させる第1の表面に対しては強く作用して接着を促進する一方、第2の表面に対しては弱く作用して剥離を促進する、1つまたは複数の構成要素(例えば、界面活性剤および/または充填剤)を含有させることにより、これは達成される。
【0075】
ある一連の態様では、剥離層(および/または接着促進剤)は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤でもよい。アニオン性界面活性剤の限定されない例には、パーフルオロオクタノエート、パーフルオロオクタノスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および他のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホネート、他の石鹸または脂肪酸塩、およびそれらの誘導体が含まれる。カチオン性界面活性剤の限定されない例には、臭化セチルトリメチルアンモニウム、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロライド、ポリエトキシ化獣脂アミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびそれらの誘導体が含まれる。非イオン性界面活性剤の限定されない例には、アルキルポリ(エチレンオキサイド)(例えば、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール、t−オクチルフェノキシポリトキシエタノール(t-octylphenoxypolythoxyethaol)、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル)、アルキルフェノール ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)とポリ(プロピレンオキサイド)の共重合体、アルキルポリグリコシド(例えば、オクチルグルコシドとデシルマルトシド)、脂肪族アルコール(例えば、セチルアルコールとオレイルアルコール)、コカミドMEAまたはDEA、ポリソルベート(例えば、トゥイーン(Tween)20、トゥイーン(Tween)80)、ドデシルジメチルアミンオキサイド、およびそれらの誘導体を含んでもよい。両性界面活性剤の限定されない例には、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココアンフォグリシナート(coco ampho glycinate)、およびそれらの誘導体を含んでもよい。
【0076】
もし含む場合には、剥離層中の界面活性剤の量は、例えば、剥離層の0.01〜10重量%の範囲(例えば、剥離層から適量の溶媒を除去した後、および/または該層を適宜硬化させた後に測定される)で存在してもよい。
【0077】
いくつかの例では、剥離層(および/または接着促進剤)を作製するために、材料に導電性フィラーが添加されてもよい。導電性フィラーは、剥離層の材料の導電性を増加させることができ、例えば、カーボンブラック(例えば、バルカン(Vulcan)XC72Rカーボンブラック、プリンテックス(Printex)Xe−2、またはアクゾノーベルケッチェン(Akzo Nobel Ketjen)EC−600JD)、グラファイトファイバー、グラファイトフィブリル、グラファイト粉(例えば、フルカ(Fluca)#50870)、活性化カーボンファイバー、カーボン織物、非活性化カーボンナノファイバー等の導電性カーボンを含んでもよい。導電性フィラーの他の限定されない例には、金属被覆ガラス粒子、金属粒子、金属繊維、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤー、金属フレーク、金属粉、金属繊維、金属メッシュが含まれる。
【0078】
いくつかの態様では、導電性フィラーは、導電性ポリマーを含んでもよい。限定されない電気活性な導電性ポリマーの適切な例には、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択された電気活性および電子活性な導電性ポリマーが含まれてもよい。ある種の態様に好ましい導電性ポリマーは、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリアセチレンである。当業者に公知の他の導電性ポリマーも導電性フィラーとして用いることができる。
【0079】
非導電性または半導電性フィラー(例えば、シリカグラファイト)を、剥離層の中に含有させることもできる。
【0080】
存在する場合、剥離層の中のフィラーの量は、例えば、剥離層の5〜10重量%、10〜90重量%または20〜80重量%の範囲で存在してもよい(例えば、剥離層から適量の溶媒を除去した後、および/または該層を適宜硬化させた後に測定される)。例えば、剥離層は、導電性フィラーを、剥離層の20〜40重量%、20〜60重量%、40〜80重量%、60〜80重量%の範囲で含んでもよい。
【0081】
追加的に、剥離層が電気活性物質層と接する場合には、電気活性物質層はある種の化学組成物を含んでもよく、該化学組成物は、剥離層に対して強く相互作用し、乾燥後でも電気活性物質層の中に残る。例えば、電気活性物質層は、剥離層のある種の官能基と相互作用するポリマー材料(例えばバインダー)またはある種の官能基(例えば、水酸基またはエーテル基)を含む他の材料を含んでもよい。1つのある種の態様では、電気活性物質層と剥離層の両方が、互いに架橋する1つまたは複数のポリマーを含んでいる。剥離層が、比較的多い量(例えば、過剰に)の架橋剤を含むように作製されてもよい。電気活性物質を含むスラリーを剥離層に隣接して配置する時、2つの層の界面に存在する架橋剤は、電気活性物質層の中のポリマーと剥離層の中のポリマーとの間で架橋を起こさせる。
【0082】
別の態様では、剥離層が、比較的多い量(例えば、過剰に)の架橋剤を含むように作製されてもよく、接着促進剤を剥離層に隣接して配置すると、2つの層の界面に存在する架橋剤が接着促進剤の中のポリマーと剥離層の中のポリマーとの間で架橋を起こさせる。
【0083】
剥離層および/または接着促進剤の適切な組成、構成(例えば、架橋または実質的に非架橋、加水分解度)および大きさの決定は、当業者であれば過度の実験を行うことなく行うことができる。本明細書に記載されているように、例えば、電解質における不活性さおよび剥離層が電気化学電池の中に組み入れられるかどうかに基づいて剥離層は選択されてもよい。剥離層を作製するのに用いるある種の材料は、例えば、厚さや各層を付着させるために用いられる方法だけでなく、剥離層に隣接して配置される層の材料組成や該配置される層に対する接着親和性に依存してもよい。作製時には適切な剥離性を提供する一方で、電気化学電池の全体重量が軽くなるように、剥離層の大きさが選択されてもよい。
【0084】
剥離層のための適切な材料の選択のため、1つの簡単なスクリーニング試験は、剥離層を作製し、該剥離層を電解質に浸漬し、および比較システムのそれと比較して、阻害的または破壊的な挙動(例えば、層間剥離)が起きていないかどうかを観察することを含んでもよい。同じことを剥離層に接合している他の層(1つまたは複数の導電性支持体、電気活性物質層、接着促進剤、および/または別の剥離層)にも行うことができる。別の簡単なスクリーニング試験は、1つまたは複数の剥離層を含む電極を作製し、該電極を他の電池構成要素の存在下で電池の電解質に浸漬し、電池を放電/充電し、および比較システムのそれと比較して、比放電容量が高いか低いかを観察することを含んでもよい。高い放電容量は、剥離層と電池の他の構成要素との間に有害な反応が起きていないことまたは該反応が最小限であることを示す。
【0085】
剥離層が、一方の表面に対しては適切な接着力を持っているが、他方の表面に対しては、剥離層の剥離が可能なように比較的弱い接着力しか持っていないことを確認するために、単位面積表面から剥離層を取り除くのに必要な接着力または力を測定できる(例えば、N/mの単位で表す)。接着力は、引張り試験装置または別の適切な装置を用いて測定することができる。溶媒および/または構成要素の接着に対する影響を調べるために、溶媒(例えば電解質)または他の構成要素(例えばフィラー)の存在下で、その実験を適宜行うことができる。ある種の態様では、引張り強度または剪断強度の力学的試験を行うことができる。例えば、剥離層を第1の表面の上に配置し、該表面が結合していない状態になるまで反対方向の力を加えることができる。(絶対的な)引張り強度または剪断強度は、引張り時または剪断時に、それぞれの最大負荷を測定し、物品間の界面面積(例えば、物品間の重なり合う表面積)で割ることにより決定される。引張り強度または剪断強度を、それぞれ、物品に適用されている剥離層の質量で割ることにより、標準化された引張り強度または剪断強度が決定される。態様の1つの集団では、「T−剥離試験」が用いられる。例えば、テープ片等の可撓性物品を剥離層の表面上に配置し、次いでテープの一端を持ち上げ、テープが剥がれるまで該一端を別の層の表面に対して概ね垂直の方向に引き上げて別の層の表面からテープを引き剥がすことにより行い、テープは、他の層から分かれる点に対して約90度曲げられた片の状態を絶えず維持している。別の態様では、2つの層の間(例えば、キャリア基材と集電体の間)に剥離層を配置することにより、層間の相対接着力が決定され、表面が結合していない状態になるまで力が加えられる。その態様では、第1の表面には接着しているが、第2の表面からは剥離する剥離層は、剥離層が力学的に層間剥離することなく、電気化学電池の構成要素作製用の剥離層として有益である。2つの表面の接着を促進する接着促進剤の有効性は、同様の方法を用いて試験することが可能である。他の簡単な試験は、公知であり、当業者により実施可能である。
【0086】
剥離層と、該剥離層が接する2つの表面との間の接着強度の「差分百分率」(percent difference)を、これら2つの界面における接着強度の間の差を用いて計算してもよい。例えば、2つの層の間(例えば、キャリア基材と集電体の間)に配置された剥離層に対して、第1の層(例えばキャリア基材)の上の剥離層の接着強度が計算され、第2の層(例えば集電体)の上の剥離層の接着強度が計算される。次いで、小さい方の値を大きい方の値から差し引き、この差を大きい方の値で割って得られた値が、2つの各層と剥離層との間の接着強度の「差分百分率」を決定する。いくつかの態様では、接着強度のこの「差分百分率」は、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、約50%より大きく、約60%より大きく、約70%より大きく、または約80%より大きい。接着強度の「差分百分率」は、例えば、各層に対して適切な材料を選択することにより、本明細書に記載された方法により調整されてもよい。
【0087】
剥離層と電気化学電池の構成要素(第2の剥離層を含む)との間の接着および/または剥離は、吸着、吸収、ファンデルワールス相互作用、水素結合、共有結合、イオン結合、架橋、静電的相互作用、およびそれらの組み合わせ等の関係を含んでもよい。その相互作用の種類および程度は、本明細書に記載された方法により、調整可能である。
【0088】
剥離層は、適切な方法を用いて作製される。いくつかの態様では、剥離層を表面上に付着させるために、熱蒸着、真空蒸着、スパッタリング、ジェット気相蒸着、またはレーザアブレーションを用いることができる。
【0089】
別の態様では、最初に剥離層調合物を作製し、次いで該剥離層調合物を適切な方法で表面の上に配置することにより、剥離層を作製する。ある場合には、剥離層調合物は、スラリーの形態である。スラリーは、剥離層材料(例えばポリマー)を少なくとも部分的に溶解または分散させることの可能な適切な溶媒を含んでもよい。例えば、主に疎水性材料で作製された剥離層はスラリーに有機溶媒を含んでもよく、主に親水性材料で作製された剥離層はスラリーに水を含んでもよい。ある種の態様では、スラリーは、水に加えて、あるいは水の代わりに別の溶媒を含んでもよく、それにより剥離層の成分との好ましい相互作用が得られる。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、またはイソプロパノール等のアルコールを用いることもできる。ある場合には、剥離層のスラリーは、アルコールを、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、または少なくとも40重量%含む。ある種の態様では、有機酸、エステル、グライム、およびエーテル等の他の溶媒を単独または他の溶媒と組み合わせて用いることができる。
【0090】
いろいろな成分の混合は、成分の望ましい溶解、分散、または懸濁が得られる範囲で、公知のいろいろな方法を用いて達成できる。適切な混合方法には、限定されるものではないが、機械的攪拌、粉砕、超音波処理、ボールミル、サンドミル、および衝突ミル(impingement milling)が含まれる。
【0091】
種々の成分の混合はいろいろな温度で起きる。例えば、成分の望ましい溶解または分散を得るための適切な時間を得るには、25℃以上、50℃以上、70℃以上、または90℃以上で、該種々の成分が混合されるのがよい。例えば、ある例として、剥離層に用いるポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)は70℃以上または90℃以上の温度で混合される。別の態様として、成分の望ましい溶解または分散を得るための適切な時間を得るには、ポリマー材料や溶媒等の種々の成分が、50℃以下、70℃以下、または90℃以下の温度で混合されるのがよい。ポリマーが所望の程度に溶解および/または分散するまで、その温度または別の温度で混合がなされてもよい。この溶液/ディスパーションは、例えば、剥離層のスラリーを作製するのに適した温度で、剥離層の他の成分(例えば、導電性フィラー、溶媒、架橋剤等)と必要に応じて混合される。
【0092】
剥離層および/または接着促進剤は、適切な方法により表面上に配置されるのがよい。ある種の態様では、剥離層および/または接着促進剤は、スロットダイ塗布またはリバースロール塗布によって表面の上に配置される。これらの各方法では、剥離層調合物は、スラリーとしてキャリア基材等の表面に供給され、次いで、キャリア/剥離/電極の積層により単一のスタックが作製されるのに先立って、硬化工程、乾燥工程、および/または処理工程等のいくつもの工程を必要に応じて受けてもよい。いくつかの態様では、被膜の厚さ、物理的一体性、および/または被膜の均一性が、用いる被覆方法のパラメータを変化させることにより調整されてもよい。
【0093】
被覆方法のいくつかの態様は、適切な剥離層を作製するために制御可能である。非常に薄い剥離層で被覆する場合には、物理的一体性は、被膜の均一性に依存する。溶液からのある種の汚染および望ましくない沈殿は、最終的な剥離層に力学的特性の低下をもたらす。これらの問題を防ぐために、いくつかの工程を用いることができる。例えば、1つの方法は、静電気が実質的に発生しない剥離層で被覆された状態に表面を維持することを含んでもよく、静電気は該表面に対する剥離層に接着性に影響を与え、さらに好ましくない粒子状汚染物を該表面に引き寄せる。静電糸(static strings)を基材に解いた状態で適用することにより、あるいはコートロールの電子状態を調整することにより(例えば、接地、フローティング、バイアス印加)、静電気は低減または除去される。コーティング溶液から好ましくない沈殿を生成するのを防止するため、例えば、凝固を防止するために、連続して混合する方法を用いることもできる。別の方法も当業者には公知である。
【0094】
ある一連の態様では、表面に剥離層被膜および/または接着促進剤被膜を形成するために、スロットダイコーティングが用いられる。スロットダイコーティングでは、ポンプで流体がダイに供給され、そこでコーティング流体が所望の基材に供給される。ダイは3つの部分、すなわち、上部、底部、および中間シムを通常含んでいる。上部または底部のいずれかが、流体を溜めるとともにダイの幅全体に流体を分散させる窪みまたは貯蔵部を含んでもよい。シムは、コーティングの幅を規定するだけでなく、上部板と底部板の間の隙間の大きさも決定する。
【0095】
この場合、被膜の厚さは、3つの要因に主として依存する:流体がダイに供給される時の速度(ポンプ速度);基材がダイリップを通過する速度(ライン速度);およびダイリップの中の隙間の大きさ(スロット高さ)。厚さは、塗布される溶液自身の特性、例えば、粘度や固形分の割合にもさらに依存する。
【0096】
被膜の均一性は、ダイの中の内部マニホルドが幅全体に流体をいかに十分に分散できるかに依存している。被膜の均一性を調整するために、いくつかの工程を用いることができる。例えば、ダイの幅全体に亘って圧力を均等にするため、貯蔵部の形状が調整されてもよい。流体入口の位置による圧力変動を解消するために内部シムの形状が調整されてもよい。流体入口とダイリップとの間により高いまたはより低い圧力低下が発生するように、内部シムの厚さが調整されてもよい。圧力低下は流体のダイにおける滞留時間を決定し、および被膜の厚さを調整し、ダイの乾燥等の問題を予防するのに用いられる。
【0097】
別の一連の態様では、表面に剥離層被膜および/または接着促進剤を形成するために、リバースロールコーティングが用いられる。ある態様では、3つのロールリバースロールコーター流体が、第1ローラー(調量ローラー)で集められ、制御された方法で第2ローラー(塗布ローラー)に移送され、次いで第2ローラーの流体が基材により通過時に拭き取られる。同様の方法を用いるため、さらに多くのローラーを用いることもできる。コーティング流体がポンプによって貯蔵部に供給される;調量ローラーは、パンが満たされた時、コーティング流体の中に一部が浸漬している。調量ローラーが回転すると、流体が2つのローラーの間に移送されるように塗布ローラーが移動する(または逆)。
【0098】
流体の量、次に剥離層および/または接着促進剤の最終的な被膜厚さは、塗布ローラーに移送される流体の量により部分的には決定される。移送させる流体の量は、ローラー間のギャップを変化させることにより、あるいはプロセスのある時点でドクターブレードを適用することにより変化させることができる。被膜の厚さも、スロットダイコーティングと同様の方法でライン速度により変化させることができる。リバースロールコーティングにおける被膜の均一性は、コートロールとドクターブレードが用いられる場合には、それらの均一性に主として依存してもよい。
【0099】
本明細書に記載された組成物および方法が、剥離層の使用により利益を得るであろう他の用途だけでなく、電極(例えば、アノードとカソード)の作製のための剥離層および/または接着促進剤層を形成するために用いられてもよいということは理解されるべきである。本明細書に記載されているように、電気化学電池の構成要素の作製を促進するために、キャリア基材の上に剥離層を配置させてもよい。種々の適切な材料をキャリア基材として用いることができる。前述のように、キャリア基材の材料(および厚さ)は、少なくともある程度は高温等のある種の作製条件に耐えうる能力に基づいて選択されてもよい。
【0100】
基材材料は、少なくともある程度は、剥離層に対する接着親和性に基づいて選択されてもよい。ある場合には、キャリア基材はポリマー材料である。キャリア基材のすべてまたは一部を作製するのに用いられる適切な材料の例には、剥離層に適した材料として本明細書に記載されているものが含まれ、必要に応じて、分子量、架橋密度、および/または添加剤または他の成分を添加してもよい。ある態様では、キャリア基材はポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエステルを含んでいる。別の場合には、キャリア基材は金属材料またはセラミック材料を含んでいる。キャリア基材は、フィラー、バインダー、および/または界面活性剤等の追加の成分を含んでもよい。
【0101】
また、キャリア基材は、適切な厚さを有する。例えば、キャリア基材の厚さは、約5ミクロン以上、約15ミクロン以上、約25ミクロン以上、約50ミクロン以上、約75ミクロン以上、約100ミクロン以上、約200ミクロン以上、約500ミクロン以上、または約1mm以上としてもよい。ある場合には、キャリア基材は、剥離層と同じまたは剥離層よりも大きな厚さを有する。本明細書に記載されているように、キャリア基材が電気化学電池の中に組み入れられない場合には(例えば、電池作製時に剥離層を用いることによりキャリア基材が剥離される。)、比較的厚いキャリア基材が適している。ある態様では、キャリア基材が電気化学電池の中に組み入れられ、そしてそのような場合には、比較的薄いキャリア基材を用いることが望ましい。
【0102】
電気化学電池は、適切な集電体を含んでもよい。ある例では、集電体が剥離層に直接隣接して配置されている(例えば、キャリア基材の上に配置された剥離層の上面の上に)。剥離層が最終的な電気化学電池の一部として設計されている場合には集電体が剥離層に対して強い接着力を有し、あるいは剥離層がキャリア基材とともに剥離されるように設計されている場合には集電体が剥離層に対して弱い接着力を有するようにしてもよい。
【0103】
集電体は、電極で発生した電流を効率的に集め、かつ外部回路との電気的コンタクトの付着のための優れた表面を提供する点において有用である。多くの集電体が公知である。適切な集電体には、例えば、金属箔(例えばアルミ箔)、ポリマーフィルム、金属被覆ポリマーフィルム(例えば、アルミ被覆ポリエステルフィルム等のアルミ被覆プラスチックフィルム)、導電性ポリマーフィルム、導電性被膜を有するポリマーフィルム、導電性金属被膜を有する導電性ポリマーフィルム、および分散された導電性粒子を有するポリマーフィルムが含まれる。
【0104】
いくつかの態様では、集電体は、アルミニウム、銅、クロム、ステンレス鋼およびニッケル等の1つまたは複数の導電性金属を含む。例えば、集電体は、銅金属層を含んでもよい。必要に応じて、チタン等の別の導電性金属層が銅層の上に配置されてもよい。チタンは、別の材料、例えば電気活性物質層に対する銅層の接着性を促進させる場合がある。別の集電体には、例えば、エキスパンドメタル、金属メッシュ、金属グリッド、エキスパンド金属グリッド、金属ウール、炭素繊維織布、炭素繊維メッシュ、不織カーボンメッシュ、およびカーボンフェルトを含んでもよい。さらに、集電体は電気化学的に不活性である。しかしながら、別の態様では、集電体は電気活性物質を含んでもよい。例えば、集電体は、電気活性物質層として(例えば、本明細書に記載されたアノードまたはカソードとして)用いられる材料を含んでもよい。
【0105】
集電体は、積層、スパッタリング、蒸着等の適切な方法により表面(例えば、剥離層の表面)上に配置される。ある場合には、電気化学電池の構成要素とともに積層される商業的に入手可能なシートとして集電体が提供される。別の場合では、導電性材料を適切な表面上に付着させることにより電極作製時に集電体が作製される。
【0106】
集電体は、適切な厚さを有する。例えば、集電体の厚さは、例えば、厚さ0.1〜0.5ミクロンの、厚さ0.1〜0.3ミクロン、厚さ0.1〜2ミクロン、厚さ1〜5ミクロン、厚さ5〜10ミクロン、厚さ5〜20ミクロン、または厚さ10〜20ミクロンでもよい。ある態様では、集電体の厚さは、例えば、約20ミクロン以下、約12ミクロン以下、約10ミクロン以下、約10ミクロン以下、約7ミクロン以下、約5ミクロン以下、約3ミクロン以下、約1ミクロン以下、約0.5ミクロン以下、または約0.3ミクロン以下である。いくつかの態様では、電極作製時に剥離層を用いることにより、非常に薄い集電体の作製または使用が可能となり、電池の全体重量を減らすことができ、それにより電池のエネルギー密度を増加する。
【0107】
いくつかの態様では、本明細書に記載された剥離層を、カソードを作製するのに用いることができる。剥離層は、最終的な電気化学電池のカソードの1つまたは複数の構成要素に接着してもよく、あるいはいくつかの態様では、キャリア基材とともに剥離層が剥離されてもよい。本明細書に記載された電気化学電池のカソードのカソード活物質として使用するに適した電気活性物質には、限定されるものではないが、電気活性遷移金属カルコゲナイド、電気活性伝導性ポリマー、電気活性硫黄含有ポリマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用されている用語“カルコゲナイド”は、酸素、硫黄、およびセレンの1つまたは複数の元素を含む化合物に属する。適切な遷移金属カルコゲナイドの例には、限定されないが、Mn,V,Cr,Ti,Fe,Co,Ni,Cu,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Hf,Ta,W,Re,Os,およびIrからなる群から選択された遷移金属の電気活性酸化物、電気活性硫化物、および電気活性セレン化物が含まれる。ある態様では、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。ある態様では、カソードは、1つまたは複数の以下の材料を含む:二酸化マンガン、炭素、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀、および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシリン酸銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、ビスマス酸鉛(lead bismuthate)、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガン、および炭素。別の態様では、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーを含む。電気活性伝導性ポリマーの例には、限定されるものではないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択された電気活性ポリマーおよび導電性ポリマーが含まれる。
【0108】
いくつかの態様では、本明細書に記載された電気化学電池のカソード活物質として使用する電気活性物質には、電気活性硫黄含有材料が含まれる。本明細書で用いられる「電気活性硫黄含有材料」は、種々の形態の元素硫黄を含むカソード活物質に関係し、電気化学的活性は、硫黄原子または硫黄部分の酸化または還元を含む。本発明の実施に有用な電気活性硫黄含有材料の特性は、よく知られているように、広い範囲で変化する。例えば、ある態様では、電気活性硫黄含有材料は元素硫黄を含む。別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄と硫黄含有ポリマーの混合物を含む。適切な電気活性硫黄含有材料には、限定されるものではないが、元素硫黄、硫黄原子と炭素原子を含む有機材料が含まれ、ポリマーであってもポリマーでなくてもよい。適切な有機材料には、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合体、および伝導性ポリマーをさらに含む有機材料が含まれる。
【0109】
硫黄含有ポリマーの例には、Skotheimらの米国特許第5,601,947号および5,690,702号、Skotheimらの米国特許第5,529,860号および6,117,590号、2001年3月13日に発行された共通の譲受人であるGorovenkoらの米国特許第6,201,100号、およびPCT国際公開第WO99/33130に記載されたものが含まれる。ポリスルフィド結合を含む他の適切な電気活性硫黄含有材料は、Skotheimらの米国特許第5,441,831号、Perichaudらの米国特許第4,664,991号、Naoiらの米国特許5,723,230号、5,783,330、5,792,575号および5,882,819号に記載されている。電気活性硫黄含有材料のさらなる例には、例えば、Armandらの米国特許第4,739,018号、De Jongheらの米国特許第4,833,048号および4,917,974号、Viscoらの米国特許第5,162,175号および5,516,598号、およびOyamaらの米国特許第5,324,599号に記載されたジスルフィド基を含む材料が含まれる。
【0110】
ある態様では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料は、50重量%より多い硫黄を含んでいる。別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、75重量%より多い硫黄を含んでいる。さらに別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、90重量%より多い硫黄を含んでいる。
【0111】
本明細書に記載されたカソード活性層は、カソード活物質を約20重量%〜約100重量%(例えば、約40重量%〜約100重量%、約60重量%〜約100重量%、または約80重量%〜約100重量%)を含んでもよい(例えば、溶媒の十分な量がカソード活性層から除去された後および/または該層が十分に硬化した後に測定された時)。ある態様では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料の量は、カソード活性層の5〜30重量%の範囲内にある。別の態様では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料の量は、カソード活性層の20〜90重量%の範囲にある。
【0112】
カソード(本明細書に記載された電極の剥離層だけでなく)作製用の適切な液体媒体(例えば溶媒)の限定されない例には、水系液体、非水系液体、およびそれらの混合物が含まれる。ある態様では、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトン、トルエン、キシレン、アエトニトリル、シクロヘキサン、およびそれらの混合物等の液体を用いることができる。もちろん、必要に応じて他の適切な溶媒を用いることもできる。
【0113】
正極層は公知の方法で作製してよい。例えば、1つの適した方法は、以下の工程を含む:(a)本明細書に記載されているように、電気活性硫黄含有材料を液体媒体に分散または懸濁させる工程;(b)工程(a)の混合物に導電性フィラーおよび/またはバインダーを必要に応じて添加する工程;(c)電気活性硫黄含有材料を分散させるために工程(b)で得られた組成物を混合する工程;(d)工程(c)で得られた組成物を適切な基材の上に流延する工程;および(e)工程(d)で得られた組成物からいくらかまたはすべての液体を取り除き、カソード活性層を得る工程。
【0114】
いくつかの態様では、硫黄カソードの作製は、少なくとも硫黄粉末とカーボンブラック(デグサ社により供給されるプリンテックスカーボンブラック等)を、適切な溶媒(水および/またはIPA)とともに混合することを含む。いくつかの態様では、ポリマーバインダーを添加できる。この混合物について1回または複数回の混合または粉砕操作をおこなってもよく、それにより所望の粒径分布と粘度を有するスラリーが得られる。所望の粒径分布と粘度は、最終的に必要とされる皮膜の特性(厚さ、密度、ポアサイズ)、用いるコーティング方法の種類、および用いる乾燥方法の種類に依存する。スラリー中の各成分は、その成分の固有の特性を調整するために、粉砕および混合操作をいくらかまたはすべて受けてもよく、あるいは全く受けなくてもよい。また、各成分は、溶媒と混合される前には、混合または粉砕操作を受けてもよく、あるいは受けなくてもよい。一旦調製されたスラリーは、適切なコーティング方法により基材の上に適用される。基材に適用された後、電池の中に組み入れられる前に、スラリーは乾燥される。すべての溶媒が除去されるまでカソードを乾燥してもよく、あるいはカソードの中に多くの溶媒が残った状態にカソードを保ってもよい。
【0115】
カソード活性層等の電気活性層を、公知の種々の方法のいずれかを用いて付着させ、および必要に応じて公知の方法を用いて乾燥させてもよい。適切な人手を用いたコーティング方法には、限定されるものではないが、コーティングロッドまたはギャップコーティングバーが含まれる。適切な機械コーティング方法には、限定されるものではないが、ローラーコーティング、グラビアコーティング、スロット押し出しコーティング、カーテンコーティング、ビードコーティングが含まれる。ポリマー層を、表面にスピン塗布することもできる。ウェブコーティングも用いることができる。混合物から溶媒/液体をいくらかあるいはすべて除去する必要がある場合、公知のいろいろな方法を用いて達成できる。混合物から溶媒を除去するのに適した方法の例には、限定されるものではないが、熱気対流、熱、赤外線放射、オーブン滞留時間、ガス流通、真空、減圧、抽出、および単なる空気乾燥が含まれる。それらの方法を用いてある種の剥離層も形成できる。
【0116】
乾燥および/または架橋を所定の温度範囲で実施してもよい。適切な温度範囲は、液体媒体が揮発するより高い温度で、通常沸点より高い温度で、かつ適切な基と架橋剤との架橋反応が妥当な速度で起きるような温度を含む。適切な温度は、集電体、例えば金属被覆プラスチックフィルムが、変形または損傷する温度よりも低い温度である。いくつかの態様では、乾燥および/または架橋工程は、約60〜170℃の温度で実施される。
【0117】
アノード活性層として適した負極材料は、本発明のある種の態様から利益を得る場合がある。アノード活性層に適した負極材料の例には、限定されるものではないが、金属リチウムやリチウムイオン等のアルカリ金属材料が含まれる。金属リチウムアノードは、リチウム箔、導電性基材上に沈着させたリチウム、およびリチウム合金(例えば、リチウムーアルミニウム合金やリチウムースズ合金)等のリチウム原料から作製してもよい。ある態様では、アノード活性層は、実質的にリチウムから成るものでもよい。いくつかの例では、2007年6月22日に出願され、名称が「リチウム合金/硫黄電池」である米国特許出願第11/821、576号、出典明示によりそのすべての内容が本明細書の一部となる、に記載されているアノードを、本発明の態様と組み合わせる。亜鉛アノードや銅アノード等の他の電池材料を用いてもよく、および別の種類の電池であっても、本明細書に記載された方法および物品から利益を受けることができることは理解されるべきである。
【0118】
表面(例えば、集電体または剥離層の表面)上に負極材料(例えば、リチウム等のアルカリ金属アノード)を付着させる方法に、熱蒸着(例えば、真空蒸着)、スパッタリング、ジェット蒸着、およびレーザアブレーション等が含まれてもよい。あるいは、アノードがリチウム箔、またはリチウム箔および表面を含む場合、アノード作製法として公知の積層法によりこれらを一体的に積層できる。
【0119】
ある態様では、負極材料層はその表面粗さが小さく、例えば、二乗平均平方根(RMS)表面粗さが約1ミクロンより小さく、約500nmより小さく、約100nmより小さく、約50nmより小さく、約25nmより小さく、約10nmより小さく、約5nmより小さく、または0.5nmより小さい。いくつかの態様では、負極材料の真空蒸着を制御することにより平坦な負極材料層が得られる。負極材料層に必要とされるのと同じまたは同様のRMSを有する平坦な表面(例えば、平坦な集電体層)の上に負極材料を付着させてもよい。その方法または他の方法により、商業的に入手可能なある種の箔よりも少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍も平坦な負極材料を作製することができ、それにより実質的に一様に平坦な表面が得られる。
【0120】
正極および/または負極は、必要に応じて、適切な電解質と良好に相互作用する1つまたは複数の層を含んでもよく、該適切な電解質は、2007年12月4日に出願された、Mikhaylikらの名称が「電解質の分離」である国際特許出願第PCT/US2007/o24805号に記載されており、出典明示によりあらゆる目的のため、その内容は本明細書の一部となる。
【0121】
さらに、いくつかの態様では、電気化学電池は、1つより多い電気活性物質層を含んでもよい。例えば、第1の電気活性物質層材料が安定化層を介して第2の電気活性物質層から分離されてもよく、それについては、2006年4月6日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/400,781号で、Affinitoらの名称が「再充電可能な、リチウム/水、リチウム/空気電池」である米国特許出願公開第2007/0221265号に記載されており、出典明示によりあらゆる目的のため、その内容は本明細書の一部となる。
【0122】
電気活性物質層(例えば、アノードまたはカソードとして使用される)は、適切な厚さを有する。例えば、電気活性物質層の厚さは、例えば、約2〜200ミクロンの範囲で変化してもよい。例えば、電気活性物質層は、厚さが約200ミクロン以下、約100ミクロン以下、約50ミクロン以下、約35ミクロン以下、約25ミクロン以下、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下でもよい。別の例では、電気活性物質層の厚さは、約5ミクロン以上、約15ミクロン以上、約25ミクロン以上、約50ミクロン以上、または約100ミクロン以上である。電池の厚さは、電池の設計パラメータ、例えば、電池の必要なサイクル寿命に依存する場合もある。いくつかの態様では、電気活性物質層の厚さは、約2〜100ミクロンの範囲(例えば、約5〜50ミクロンの範囲、約2〜10ミクロンの範囲、約5〜25ミクロンの範囲、または約10〜25ミクロンの範囲)である。
【0123】
アノードが、1より多いアノード活性層(例えば、1つまたは複数のアノード安定化層の間に分散された複数の蒸着金属リチウム層)を含むある態様では、そのアノード層のそれぞれが比較的薄くてもよく、例えば、厚さ2〜5ミクロンおよび/または厚さ8〜15ミクロンである。態様の1つの集団ではアノードは少なくとも第1および第2のアノード活性層を含み、第1のアノード活性層は集電体に隣接し、第2のアノード活性層は第1の層よりも電解質に対して距離が近く、1つまたは複数の介在層(例えば、ポリマー層、単一イオン導電層、セラミック層)により第1の層から分離されている。いくつかの例では、第1のアノード活性層は、第2のアノード活性層よりもより厚い。別の例では、第2のアノード活性層は、第1のアノード活性層よりも厚い。それらの層の厚さは、変化してもよく、および、例えば前述の厚さの範囲でもよい。
【0124】
好適には、本明細書に記載された1つまたは複数の方法により少なくとも一部が作製されたある種の電気化学電池は、電池の厚さおよび/または重量に対して、比較的薄くあるいは軽量のアノード活性層を有していてもよい。比較的薄いあるいは軽量のアノード活性層が用いられる場合でも、その構成要素が組み入れられた電気化学電池は、同様の構成要素を有するが厚いアノード活性層を有する電池と比較すると、同様のまたはより高いエネルギー密度を達成できる場合がある。本発明以前には、当業者は、電池のサイクリング時の容量を低下させる要因を補うために比較的厚いアノード活性層を用いており、該要因には、アノード活物質の分解、層の中の欠陥を増加させるアノード活性層の中のスルーホールの生成、アノード活物質および/または溶媒の消耗、および/またはデンドライトの生成がある。すなわち、前述の1つまたは複数の問題により電池の寿命期間にアノード活物質がすべて消費されてしまうことはないということを知った上で、当業者は厚いアノード活性層を含有させていた。しかしながら、本明細書に記載された方法は、アノード活物質の過度の消耗を抑制しながら、カソードの要求または容量をよりうまく調和させ、および/または目標の比エネルギー密度を達成するために、当業者がアノード活物質の目標量を電気化学電池の中に組み入れることを可能にしている。
【0125】
例えば、ある態様では、比較的薄くかつ平坦な集電体を付着させることにより(例えば、剥離層の使用により)、薄くかつ平坦なアノード活性層の付着を可能にしている。平坦な集電体は、リチウムを再析出させるための導電性表面を提供するとともに、高いリチウムの放電深度(DoD)における平坦なリチウム形態を促進することを可能とする。これは、放電時または充電時における層の中のスルーホールおよび/または他の欠陥の生成を、例えば、各サイクルにおいて表面粗さを増加させる場合があるランダムな電流変化を低減することにより、抑制または除去できる。その結果、その方法および他の方法を用いないで作製した電池と比較して、電池のサイクリング時におけるエネルギー生成に、アノード活性層のより大きな部分を用いることができる。
【0126】
ある態様では、本明細書に記載された電気化学電池は、比較的薄いアノード活物質と(例えば、組み合わせた厚さが約50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約20ミクロン以下、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下、または約5ミクロン以下)、比較的厚い電池(例えば、厚さが約10ミクロン以上、約50ミクロン以上、約100ミクロン以上、約200ミクロン以上、約500ミクロン以上、約1mm以上、または約2mm以上)を含んでいる。ある態様では、電気化学電池の厚さは、約25ミクロン〜約75ミクロンの間、約50〜約100ミクロンの間、または約75ミクロン〜約150ミクロンの間である。電池の厚さは、アノードの外表面から測定でき、すなわち、カソードから最も遠いアノードの表面から(アノード活物質を支持するおよび/または隣接するすべての層を含み、集電体または剥離層等を含む)、カソードの外表面まで、すなわちアノードから最も遠いカソードの表面まで(カソード活物質を支持するおよび/または隣接するすべての層を含み、集電体または剥離層等を含む)、あるいは積層電池または巻回構成の電池の場合には、電池の繰り返し単位間の距離を測定することにより厚さが決定される(例えば、第1のカソードと第2のカソードとの間の最短距離)。いくつかの例では、1つまたは複数のアノード活物質層の厚さは、電池の厚さの50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%より小さい。必要に応じて、本明細書に記載されたその電気化学電池および他の電気化学電池は、前述の厚さを有する比較的薄い集電体に隣接するアノード活物質を含んでもよい。電気化学電池は、薄い剥離層を必要に応じて含んでもよく、およびある場合には、基材を含まなくてもよい(例えば、電気化学電池が自立型の場合)。本明細書に記載されたその電気化学電池および他の電気化学電池のエネルギー密度(キログラム当たりのワット時(Wh/kg)で表され、あるいは大きさ当たりのエネルギーとして、リッター当たりのワット時(Wh/l)で表される)は、例えば、少なくとも200Wh/kg(またはWh/l)、少なくとも250Wh/kg(またはWh/l)、少なくとも300Wh/kg(またはWh/l)、少なくとも350Wh/kg(またはWh/l)、少なくとも400Wh/kg(またはWh/l)、少なくとも450Wh/kg(またはWh/l)、または少なくとも500Wh/kg(またはWh/l)であってもよい。ある場合では、そのエネルギー密度および他のエネルギー密度は、電池の15回目、25回目、30回目、40回目、45回目、50回目、または60回目の放電時またはその後で達成される。「X回目の放電時またはその後」は、再充電可能な電気化学装置が少なくもX回充電および放電された時点またはその後における時間または回数を意味し、充電は実質的に完全充電を意味し、放電は、全放電の平均して、少なくとも75%放電を意味する。ある場合では、本明細書に記載されたその電気化学電池および他の電気化学電池は、電池の15回目、25回目、30回目、40回目、45回目、50回目、または60回目のサイクルの終了時で、少なくとも1000、1200、1600、または1800mAhの放電容量を有する。さらに、サイクルの終了時には、電池の最大利用可能放電容量の少なくとも半分を維持しながら、少なくとも25回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも200回、または少なくとも500回サイクルできるように設計されてもよい。ある1つの態様では、本明細書に記載された方法で作製され、厚さ10ミクロンのリチウム活性層を含む電気化学電池は、リチウムの放電深度100%で100回から350回のサイクルで高密度/平坦のリチウム表面を有している。
【0127】
本明細書に記載された電気化学電池は、適切な電解質を含む。本明細書に記載された電気化学電池に用いられる電解質は、イオンの貯蔵および移送のための媒体として機能し、固定電解質やゲル電解質のような特別な場合には、これらの材料はアノードとカソードとの間のセパレータとしてもさらに機能する。アノードとカソードに対して該材料が電気化学的および化学的に非反応性である限りは、イオンを貯蔵および移送可能ないろいろな液体、固体、またはゲルを用いてもよく、該材料は、アノードとカソードの間のイオンの移送を促進する。電解質は、アノードとカソードの間の短絡を防ぐために電子的には非導電性であるのがよい。
【0128】
電解質は、イオン導電性を付与する1つまたは複数の電解質塩と、1つまたは複数の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を含むことができる。適切な非水系電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1つまたは複数の材料を含む有機電解質を含んでもよい。リチウム電池用の非水系電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Dornineyによる「リチウム電池、新素材、開発および展望」の第4章、137〜165頁に記載されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Dornineyによる「リチウム電池、新素材、開発および展望」の第3章、99〜136頁に記載されている。本明細書に記載された電池に使用される混成電解質組成物は、2007年12月4日に出願され、出願番号がPCT/US2007/024805号で、Mikhaylikらの名称が「電解質の分離」である、国際公開WO2008/070059号に記載されている。
【0129】
有用な非水系液体電解質溶媒の例には、限定されるものではないが、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前述の溶媒の置換体、およびそれらの混合物が含まれる。前述の溶媒のフッ素化誘導体も液体電解質溶媒として有用である。
【0130】
ある例では、水系溶媒をリチウム電池の電解質として用いることができる。水系溶媒は、水を含み、水はイオン性塩等の他の成分を含むこともできる。ある態様では、電解質は、電解質中の水素イオン濃度を減らすために、水酸化リチウム、または電解質を塩基性にする他の成分を含むこともできる。
【0131】
液体電解質溶媒は、ゲルポリマー電解質、すなわち半固体ネットワークを形成する1つまたは複数のポリマーを含む電解質のための可塑剤としても有用である。有用なゲルポリマー電解質の例は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ化膜(ナフィオン樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの共重合体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物、および必要に応じて1つまたは複数の可塑剤からなる群から選択される1つまたは複数のポリマーを含むゲルポリマー電解質を含んでいる。ある態様では、ゲルポリマー電解質は、体積%で、混成電解質を10〜20%、20〜40%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、または90〜95%含む。
【0132】
ある態様では、1つまたは複数の固体ポリマーが、電解質を形成するために用いられる。有用な固体ポリマー電解質の例には、限定されるものではないが、ポリエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物からなる群から選択された1つまたは複数のポリマーを含むゲルポリマー電解質を含んでいる。
【0133】
電解質溶媒、ゲル化剤、電解質を作製するための公知のポリマーに加えて、電解質は、イオン導電性を増加させるために、公知の1つまたは複数の電解質塩をさらに含んでもよい。
【0134】
本発明の電解質に用いるイオン性電解質塩の例には、限定されるものではないが、LiSCN,LiBr,LiI,LiClO,LiAsF,LiSOCF,LiSOCH,LiBF,LiB(Ph),LiPF,LiC(SOCF,およびLiN(SOCFが含まれる。有用な他の電解質塩には、ポリスルフィド、および有機イオン性ポリスルフィド(LiSR)が含まれ、ここでxは1〜20の整数、nは1〜3の整数、Rは有機基で、Leeらの米国特許第5,538,812号に記載されているものである。
【0135】
いくつかの態様では、電気化学電池は、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータをさらに含んでもよい。セパレータは、固体の非導電性または絶縁性の材料であり、アノードとカソードを互いに分離または絶縁して短絡を防止するとともに、アノードとカソードの間のイオンの移動を可能にする。
【0136】
セパレータまたは固体またはゲル電解質は、適切な厚さを有する。例えば、セパレータまたは電解質は、約2〜約100ミクロンの範囲の厚さを有してもよい(例えば、約5〜約50ミクロンの範囲、約2〜約10ミクロンの範囲、約5〜25ミクロンの範囲、または約10〜約25ミクロンの範囲)。いくつかの例では、電解質に面するアノードの最も外側の面と、電解質に面するカソードの最も外側の面との間の距離は、その厚さを有する。
【0137】
セパレータのポアは、電解質により一部または大部分が満たされていてもよい。セパレータは、多孔質の自立フィルムとして供給されてもよく、該フィルムは電池作製時にアノードとカソードの間に挿入される。あるいは、例えば、CarlsonらのPCT国際公開第WO99/33125号およびBagleyらの米国特許第5,194,341号に記載されているように、セパレータ層が1つの電極の表面に直接適用されてもよい。ある態様では、本明細書に記載された剥離層を用いてセパレータが形成される。
【0138】
種々のセパレータ材料が公知である。適切な固体多孔質セパレータ材料の例には、限定されるものではないが、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラスファイバーろ紙、およびセラミック材料が含まれる。本発明での使用に適したセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、マイクロポーラスなキセロゲル、例えば、マイクロポーラス疑似ベーマイト層を含み、共通の譲受人であるCarlsonらの米国特許第6,153,337号および第6,306,545号に記載されているように、それは自立フィルムとしてまたは電極の1つに直接コーティングすることにより得られる。固体電解質およびゲル電解質は、電解質機能だけでなく、セパレータとして機能してもよい。
【0139】
本明細書に添付された図は、模式的なものに過ぎず、実質的に平坦な電池配置を示している。電気化学電池のすべての配置は、本発明の原則に基づいて、いろいろな構成で組み立てられていること、が理解されるべきである。例えば、図1Aおよび2Bを参照すると、電極12は、構成要素26と28が示されている面と反対の面で、構成要素26および/または28と同様または同一の組み合わせにより被覆されてもよい。この配置では、実質的に鏡像の構造が、電極12を通過する鏡面によって作られている。これは、例えば、「卷回」電池構造に相当し、該構造では、電極層12はその各面が構造体26および/または28(または、本明細書の別の図で示された別の配置層状構造)により囲まれている。アノードの各保護構造の外面上には電解質が配置され、電解質の反対側には、反対の電極(例えば、電極12がカソードの場合にはアノード)が配置されている。卷回配置、またはアノード機能部とカソード機能部が交互に配置された多層構造を含む他の配置においては、構造体は、アノード、電解質、カソード、電解質、アノードを含み、各アノードは本明細書のいずれか、あるいはより詳しくは、2006年4月6日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/400,025号で、名称が「再充電可能なリチウム電池を含む、水系および非水系の両方の電気化学電池における電極保護」であるAffinitoらの米国特許出願公開第2007/0224502号に記載されたアノード安定化構造体を含み、そのAffinitoらの米国特許出願公開は出典明示により、そのすべての内容は本明細書の一部となる。もちろん、そのアセンブリの外側端部には、「端子」アノードまたはカソードが存在する。その層状構造体または卷回構造体を相互接続する電気回路は公知である。
【実施例】
【0140】
以下の実施例は、本発明のある態様を示すことを目的とするものではあり、限定するものと解釈されるべきではなく、および本発明の全範囲を例示するものでもない。以下の実施例では、次の材料はそのまま用いた:セラニーズ社のセルボル(Celvol)425(ポリビニルアルコール、96%加水分解物);セラニーズ社のセルボル325。
【0141】
実施例1
本実施例は、剥離層の作製方法、および剥離層を用いた電気化学電池のアノードの作製方法を記載している。
【0142】
撹拌機、冷却管、および温度計を備えた三口の5Lフラスコの中に、28.3重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を添加し、室温で撹拌した。これに、5.5重量%のセルボル425(セラニーズ社から)ポリビニルアルコール(PVOH)を添加し、撹拌を続けた。この懸濁液に、66.2重量%の水を添加した。PVOHペレットが完全に溶解するまで、得られた懸濁液を、65℃から75℃の間の温度に加熱した。懸濁液をさらに続けて同じ温度で1時間撹拌した。撹拌溶液を室温までゆっくりと冷却した。一旦冷却し、PVOH調合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。次いで冷却したPVOH調合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。得られた混合物を、リバティコーター上の、キャリア基材として用いた厚さ76ミクロンのPET上に塗布した。ウェブ速度、ポンプ速度、および加熱温度は、それぞれ、4ft/min、20ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0143】
塗布後、PVOH剥離層は、PET基材から破断することなく容易に剥離できた。剥離されたPVOH層の厚さは3ミクロンであった。
【0144】
アノードを作製するため、厚さ2ミクロンのPVOH剥離層を、PETキャリア基材の100ftサンプルの表面に形成した。アラモマシン(Alamo machine)内で、銅とチタンを真空蒸着することにより集電体を形成した。次に、集電体の上面に金属リチウム層を付着させた。集電体と金属リチウム層とを合わせた厚さは最大25ミクロンであった。破断することなく、剥離層が銅集電体上に残った状態で、金属被覆アノード剥離層はPET基材から層間剥離した。得られた構造体は、Li/S電池または他の電池でアノードとして使用できる。
【0145】
本実施例は、前述の方法を用いてキャリア基材上に配置された剥離層の上に集電体と電気活性物質層を付着させる、電気化学電池のアノードの作製方法を説明している。剥離層は、アルコール/水溶液に96%加水分解されたPVOHポリマーを溶解させ、次いで65℃〜75℃までゆっくりと加熱して作製したもので、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材には比較的低い接着親和性を持つ。そのようにして、剥離層は電極アセンブリとともに、物理的に分解することなく、PET基材から容易に層間剥離できる。
【0146】
比較例1
磁気撹拌子を備えた5Lフラスコの中に、96.5重量%の蒸留水を添加し、室温で撹拌した。その溶液を70℃と75℃の間の温度に加熱した。この温度で、3.5重量%のPVOH(セラニーズ社のセルボル325)をすべて一度に急いで添加し、得られた懸濁液の撹拌を続け、95℃の温度まで加熱した。撹拌しながら溶液を室温までゆっくりと冷却した。冷却後、96.5重量%の脱イオン水と3.5重量%のPVOHを含む溶液を、キャリア基材として使用される厚さ76ミクロンのPET基材上に、ウェブコーター上で塗布した。塗布時のウェブ速度、ポンプ速度、および加熱領域温度は、それぞれ、4ft/min、16ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0147】
乾燥後、得られたPVOHフィルムはPET基材に対して強い接着力を持ち、層間剥離の際には容易に破断した。PVOHフィルムの上に銅とチタンを付着させた後、次いで金属リチウム層(実施例1のように)を付着させたが、PVOHとPETとの間の強い接着力によってアノード剥離システムは層間剥離しなかった。
【0148】
本比較例は、剥離層を作製するためのある種の方法では、電気化学電池のアノードの作製に有用な適切な剥離層が得られないことを説明している。本例では、96%加水分解されたPVOHポリマーを水溶液に溶解させ、次いで95℃まで加熱して作製した剥離層は、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材にも比較的高い接着親和性を持つ。そのため、物理的に分解させることなく、剥離層をPET基材から容易に層間剥離できなかった。
【0149】
実施例2
本実施例は、剥離層の作製方法、および該剥離層を用いた電気化学電池用アノードの作製方法を記載している。
【0150】
撹拌機、冷却管、および温度計を備えた三口の5Lフラスコの中に、27.7重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を添加し、室温で撹拌した。これに、7.5重量%のセルボル310(セラニーズ社から)ポリビニルアルコール(PVOH)を添加し、撹拌を続けた。この懸濁液に、64.8重量%の水を添加した。PVOHペレットが完全に溶解するまで、得られた懸濁液を、65℃から75℃の間の温度に加熱した。懸濁液をさらに続けて同じ温度で1時間撹拌した。溶液を撹拌しながら室温までゆっくりと冷却した。一旦冷却し、PVOH調合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。次いで冷却したPVOH調合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。得られた混合物を、リバティコーター上の、キャリア基材として用いた厚さ76ミクロンのPET上に塗布した。ウェブ速度、ポンプ速度、および加熱温度は、それぞれ、4ft/min、23ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0151】
塗布後、PVOH剥離層は、PET基材から破断することなく容易に剥離できた。剥離されたPVOH層の厚さは3ミクロンであった。
【0152】
アノードを作製するため、厚さ2ミクロンのPVOH剥離層を、PETキャリア基材の100ftサンプルの表面に前述の方法を用いて形成した。アラモマシン内で、銅とチタンを真空蒸着することにより集電体を形成した。次に、集電体の上面に金属リチウム層を付着させた。集電体と金属リチウム層とを合わせた厚さは最大25ミクロンであった。破断することなく、剥離層が銅集電体上に残った状態で、金属被覆アノード剥離層はPET基材から層間剥離した。得られた構造体は、Li/S電池または他の電池でアノードとして使用できる。
【0153】
本実施例は、キャリア基材上に配置された剥離層の上に集電体と電気活性物質層を付着させる、電気化学電池のアノードの作製方法を説明している。剥離層は、アルコール/水溶液に96%加水分解されたPVOHポリマーを溶解させ、次いで65℃〜75℃までゆっくりと加熱して作製されたもので、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材には比較的低い接着親和性を持つ。そのようにして、剥離層は電極アセンブリとともに、物理的に分解することなく、PET基材から容易に層間剥離できる。
【0154】
比較例2
磁気撹拌子を備えた5Lフラスコの中に、93.5重量%の蒸留水を添加し、室温で撹拌した。その溶液を70℃と75℃の間の温度に加熱した。この温度で、3.5重量%のPVOH(セラニーズ社のセルボル325)をゆっくり添加した。懸濁液を90℃まで加熱しPVOHを溶解した。次に、追加の3重量%のPVOH(セラニーズ社のセルボル325)を溶液に追加した。冷却後、93.5重量%の脱イオン水と6.5重量%のPVOHを含む溶液を、キャリア基材として使用される厚さ76ミクロンのPET基材上に、ウェブコーター上で塗布した。塗布時のウェブ速度、ポンプ速度、および加熱領域温度は、それぞれ、4ft/min、16ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0155】
乾燥後、得られたPVOHフィルムはPET基材に対して強い接着力を持ち、層間剥離の際には容易に破断した。PVOHフィルムの上に銅とチタンを付着させた後、次いで金属リチウム層(実施例1のように)を付着させたが、PVOHとPETとの間の強い接着力によってアノード剥離システムは層間剥離しなかった。
【0156】
本比較例は、剥離層を作製するためのある種の方法では、電気化学電池のアノードの作製に有用な適切な剥離層が得られないことを説明している。本例では、加水分解されたPVOHポリマーを水溶液にゆっくりと溶解させ、次いで95℃まで加熱して作製した剥離層は、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材にも比較的高い接着親和性を持つ。そのため、物理的に分解させることなく、剥離層をPET基材から容易に層間剥離できなかった。
【0157】
実施例3
本実施例は、剥離層の作製方法、および該剥離層を用いた電気化学電池用アノードの作製方法を記載している。
【0158】
撹拌機および温度計を備えた5Lフラスコの中に、74.8重量%の蒸留水を添加し、室温で撹拌した。これに、撹拌しながら、6.5重量%のセルボル425 PVOH(セラニーズ社から)ポリビニルアルコール(PVOH)を添加した。PVOHペレットが完全に溶解するまで、得られた懸濁液を、90℃から95℃の間の温度に加熱した。懸濁液をさらに続けて同じ温度で1時間撹拌した。溶液を撹拌しながら室温までゆっくりと冷却した。この懸濁液に18.7重量%のIPAを撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで冷却したPVOH調合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。一旦冷却し、PVOH調合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。得られた混合物を、リバティコーター上の、キャリア基材として用いた厚さ76ミクロンのPET上に塗布した。ウェブ速度、ポンプ速度、および加熱温度は、それぞれ、6ft/min、16ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0159】
塗布後、PVOH剥離層は、PET基材から破断することなく容易に剥離できた。剥離されたPVOH層の厚さは2ミクロンであった。
【0160】
アノードを作製するため、厚さ2ミクロンのPVOH剥離層を、PETキャリア基材の100ftサンプルの表面に前述の方法を用いて形成した。アラモマシン内で、銅とチタンを真空蒸着することにより集電体を形成した。次に、集電体の上面に金属リチウム層を付着させた。集電体と金属リチウム層とを合わせた厚さは最大25ミクロンであった。破断することなく、剥離層が銅集電体上に残った状態で、金属被覆アノード剥離層はPET基材から層間剥離した。得られた構造体は、Li/S電池または他の電池でアノードとして使用できる。
【0161】
本実施例は、キャリア基材上に配置された剥離層の上に集電体と電気活性物質層を付着させる、電気化学電池のアノードの作製方法を説明している。剥離層は、加水分解されたPVOHポリマーを水溶液に溶解させ、その後次いでアルコール溶液を添加して作製されたもので、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材には比較的低い接着親和性を持つ。そのようにして、剥離層は電極アセンブリとともに、物理的に分解することなく、PET基材から容易に層間剥離できる。
【0162】
実施例4
本実施例は、剥離層の作製方法、および該剥離層を用いた電気化学電池用アノードの作製方法を記載している。
【0163】
撹拌機および温度計を備えた5Lフラスコの中に、72.2重量%の蒸留水を添加し、室温で撹拌した。これに、撹拌しながら、9.8重量%のPVOHを添加した。PVOHペレットが完全に溶解するまで、得られた懸濁液を、90℃から95℃の間の温度に加熱した。懸濁液をさらに続けて同じ温度で1時間撹拌した。溶液を撹拌しながら室温までゆっくりと冷却した。この懸濁液に18重量%のIPAを撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで冷却したPVOH調合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。一旦冷却し、PVOH調合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。得られた混合物を、リバティコーター上の、キャリア基材として用いた厚さ76ミクロンのPET上に塗布した。ウェブ速度、ポンプ速度、および加熱温度は、それぞれ、4ft/min、18ft/min、および70〜114℃であった。この温度で、溶媒は剥離層から蒸発した。
【0164】
塗布後、PVOH剥離層は、PET基材から破断することなく容易に剥離できた。剥離されたPVOH層の厚さは2ミクロンであった。
【0165】
アノードを作製するため、厚さ2ミクロンのPVOH剥離層を、PETキャリア基材の100ftサンプルの表面に前述の方法を用いて形成した。アラモマシン内で、銅とチタンを真空蒸着することにより集電体を形成した。次に、集電体の上面に金属リチウム層を付着させた。集電体と金属リチウム層とを合わせた厚さは最大25ミクロンであった。破断することなく、剥離層が銅集電体上に残った状態で、金属被覆アノード剥離層はPET基材から層間剥離した。得られた構造体は、Li/S電池または他の電池でアノードとして使用できる。
【0166】
本実施例は、キャリア基材上に配置された剥離層の上に集電体と電気活性物質層を付着させる、電気化学電池のアノードの作製方法を説明している。剥離層は、加水分解されたPVOHポリマーを水溶液に溶解させ、その後次いでアルコール溶液を冷却した水溶液に添加して作製されたもので、銅集電体には比較的高い接着親和性を持つ一方、PET基材には比較的低い接着親和性を持つ。そのようにして、剥離層は電極アセンブリとともに、物理的に分解することなく、PET基材から容易に層間剥離できる。
【0167】
実施例5
本実施例は、2つのアノード部を剥離層を介して一体的に接着する方法を記載しており、該剥離層は、各アノード部と結合し、図2Bに示したものと同様の電極アセンブリを形成する。
【0168】
接着促進剤調合物は、2.9gのDMSO(ジメチルスルフォキシド) と2gのTHF(テトラヒドロフラン)の混合物に0.lgのPVOH(セラニーズ社のセルボル425)を添加して作製した。接着促進剤調合物(2重量%ポリマー)の薄層を、実施例1に記載された方法により作製された第1のアノード部の剥離層の上に塗布した。該アノード部は、PVOH剥離層、銅集電体、および金属リチウム層を含んでいた。接着促進剤調合物を用いた剥離層の塗布は、メイヤーロッドコーター(Mayer Rod Coater)(#2.5ケムインスツルメント社)を用いて行った。
【0169】
第1のアノード部の剥離層を接着促進剤調合物で塗布した後、第1のアノード部と実質的に同様な第2のアノード部を第1のアノード部の接着促進剤層に隣接して配置した。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。被膜を室温でさらに5分間乾燥させ、接着促進剤調合物中の溶媒を蒸発させた。
【0170】
接着促進剤の皮膜は剥離層と混ざり合い、電極の厚さを増加させなかった。アノード部と接着促進剤の皮膜の両方からの剥離層の全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約5〜6ミクロンであった。塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0171】
得られたアノードアセンブリはLi/S電池に使用された。
【0172】
本実施例は、接着促進剤調合物を用いて2つのアノード部を一体的に接着させることにより、電気化学電池のアノードアセンブリを作製する方法を説明しており、該方法は、各アノード部と結合した剥離層間の接着を促進する。好適には、PVOH剥離層間に強い接着力を付与する接着促進剤は、アノード部の様々な層(例えば銅集電体および金属リチウム層)に対して化学的に不活性であり、容易に塗布でき、塗布時および力が加わっても物理的に分解することがなく、薄い膜を作製でき、およびアノードの厚さを大きく増加させなかった。
【0173】
比較例3
磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた三口の5Lフラスコの中に、アセトン(85重量%)を添加し、室温で撹拌した。この溶液に、撹拌しながら、15重量%のハードマン(Hardman)エポキシ樹脂(ハークロスケミカルズ(Harcros Chemicals)社)を添加した。磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた3つ首の第2の5Lフラスコの中に、アセトン(85重量%)を添加し、室温で撹拌した。この第2のフラスコに、15重量%ハードマンアミン硬化剤(ハークロスケミカルズ社)を撹拌しながら添加した。これらの2つのフラスコの内容物を一つにして混合物を作製した。得られた混合物を1時間撹拌した後、その得られた混合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。次いでその得られた混合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。樹脂と硬化剤を含むその得られた混合物を接着促進剤として用い、実施例1に記載された方法で作製された第1および第2のアノード部の剥離層の上に塗布した。剥離層への接着促進剤の塗布は、メイヤーロッドコーター(#2.5ケムインスツルメント社)を用いて行った。各塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0174】
剥離層に接着促進剤を塗布した後、第1および第2のアノード部は互いに隣接して配置された。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。接着促進剤のみの全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約10ミクロンであった。
【0175】
実施例6
本実施例は、2つのアノード部を剥離層を介して一体的に接着する方法を記載しており、該剥離層は、各アノード部と結合し、図2Bに示したものと同様の電極アセンブリを形成する。
【0176】
接着促進剤調合物は、2.9gのDMSO(ジメチルスルフォキシド) と2gのTHF(テトラヒドロフラン)の混合物に0.lgのEVALポリマー(ポリ−co―エチレン(27%)−ビニルアルコール)(EVALアメリカズ)を添加して作製した。接着促進剤調合物(2重量%ポリマー)の薄層を、実施例1に記載された方法により作製された第1のアノード部の剥離層の上に塗布した。該アノード部は、PVOH剥離層、銅集電体、および金属リチウム層を含んでいた。接着促進剤調合物による剥離層の塗布は、メイヤーロッドコーター(#2.5ケムインスツルメント社)を用いて行った。
【0177】
第1のアノード部の剥離層を接着促進剤調合物で塗布した後、第1のアノード部と実質的に同様な第2のアノード部を第1のアノード部の接着促進剤層に隣接して配置した。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。皮膜を室温でさらに5分間乾燥させ、接着促進剤調合物中の溶媒を蒸発させた。
【0178】
接着促進剤の被膜は剥離層と混ざり合い、電極の厚さを増加させなかった。アノード部と接着促進剤の被膜の両方からの剥離層の全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約5〜6ミクロンであった。塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0179】
得られたアノードアセンブリはLi/S電池に使用された。
【0180】
本実施例は、接着促進剤調合物を用いて2つのアノード部を一体的に接着させることにより、電気化学電池のアノードアセンブリを作製する方法を説明しており、該方法は、各アノード部と結合した剥離層間の接着を促進する。好適には、PVOH剥離層間に強い接着力を付与する接着促進剤は、アノード部の様々な層(例えば銅集電体および金属リチウム層)に対して化学的に不活性であり、容易に塗布でき、塗布時および力が加わっても物理的に分解することがなく、薄い膜を作製でき、およびアノードの厚さを大きく増加させなかった。
【0181】
比較例4
磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた三口の5Lフラスコの中に、ジエチルエーテル(40重量%)を添加し、室温で撹拌した。この溶液に、撹拌しながら、20重量%の導電性エポキシCW2400(ケムトロニクス社)を添加した。この懸濁液に40重量%蒸留水を添加した。磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた3つ首の第2の5Lフラスコの中に、ジエチルエーテル(40重量%)を添加し、室温で撹拌した。この第2のフラスコに、20重量%の導電性エポキシCW2400硬化剤(ケムトロニクス社)を撹拌しながら添加した。これらの2つのフラスコの内容物を一つにして混合物を作製した。得られた混合物を1時間撹拌した後、その得られた混合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。次いでその得られた混合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。樹脂と硬化剤を含むその得られた混合物を接着促進剤として用い、実施例1に記載された方法で作製された第1および第2のアノード部の剥離層の上に塗布した。しかしながら、塗布後、アノード部に気泡が認められたことから、得られた接着促進剤混合物と金属リチウムとの間に化学反応が起きたことを示している。
【0182】
比較例5
磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた三口の5Lフラスコの中に、アセトン(80.75重量%)を添加し、室温で撹拌した。この溶液に、撹拌しながら、15重量%のハードマンエポキシ樹脂(ハークロスケミカルズ社)を添加した。この懸濁液に4.25重量%の蒸留水を添加した。磁気撹拌子、冷却管、および温度計を備えた三口の第2の5Lフラスコの中に、アセトン(80.75重量%)を添加し、室温で撹拌した。この第2のフラスコに、15重量%ハードマンアミン硬化剤(ハークロスケミカルズ社)を撹拌しながら添加した。この懸濁液に4.25重量%の蒸留水を添加した。これらの2つのフラスコの内容物を一つにして混合物を作製した。得られた混合物を1時間撹拌した後、その得られた混合物の固形分比率、密度および粘度を測定した。次いでその得られた混合物を2次容器の中にロ過し、粒子状汚染物を除去した。樹脂と硬化剤を含むその得られた混合物を接着促進剤として用い、実施例1に記載された方法で作製された第1および第2のアノード部の剥離層の上に塗布した。接着促進剤の剥離層への塗布は、ノズルにより溶液を吹き付けることにより行った。各塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0183】
剥離層に接着促進剤を塗布した後、第1のアノード部と実質的に同様な第2のアノード部を第1のアノード部の接着促進剤層に隣接して配置した。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。接着促進剤のみの全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約10ミクロンであった。
【0184】
実施例7
本実施例は、2つのアノード部を剥離層を介して一体的に接着する方法を記載しており、該剥離層は、各アノード部と結合し、図2Bに示したものと同様の電極アセンブリを形成する。
【0185】
接着促進剤調合物は、1.0gのDMSO(ジメチルスルフォキシド)と4.0gのTHF(テトラヒドロフラン)を混合して作製した。ポリマーを含有しない接着促進剤調合物を、実施例1に記載された方法により作製された第1のアノード部の剥離層の上に塗布した。該アノード部は、PVOH剥離層、銅集電体、および金属リチウム層を含んでいた。接着促進剤調合物による剥離層の塗布は、メイヤーロッドコーター(#2.5ケムインスツルメント社)を用いて行った。
【0186】
第1のアノード部の剥離層を接着促進剤調合物で塗布した後、第1のアノード部と実質的に同様な第2のアノード部を第1のアノード部の接着促進剤層に隣接して配置した。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。皮膜を室温でさらに5分間乾燥させ、接着促進剤調合物中の溶媒を蒸発させた。
【0187】
接着促進剤の被膜は、電極の厚さを増加させることなく、2つのアノード部からの剥離層の接着を可能とした。アノード部と接着促進剤の被膜の両方からの剥離層の全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約5〜6ミクロンであった。塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0188】
得られたアノードアセンブリはLi/S電池に使用された。
【0189】
本実施例は、接着促進剤調合物を用いて2つのアノード部を一体的に接着させることにより、電気化学電池のアノードアセンブリを作製する方法を説明しており、該方法は、各アノード部と結合した剥離層間の接着を促進する。好適には、PVOH剥離層間に強い接着力を付与する接着促進剤は、アノード部の様々な層(例えば銅集電体および金属リチウム層)に対して化学的に不活性であり、容易に塗布でき、塗布時および力が加わっても物理的に分解することがなく、薄い膜を作製でき、およびアノードの厚さを大きく増加させなかった。
【0190】
実施例8
本実施例は、2つのアノード部を剥離層を介して一体的に接着する方法を記載しており、該剥離層は、各アノード部と結合し、図2Bに示したものと同様の電極アセンブリを形成する。本実施例は、得られた電極アセンブリが、ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランを含む電解質に対して安定であることを示している。
【0191】
接着促進剤調合物は、0.5gのDMSO(ジメチルスルフォキシド)と4.0gのTHF(テトラヒドロフラン)を混合して作製した。ポリマーを含有しない接着促進剤調合物を、実施例1に記載された方法により作製された第1のアノード部の剥離層の上に塗布した。該アノード部は、PVOH剥離層、銅集電体、および金属リチウム層を含んでいた。接着促進剤調合物による剥離層の塗布は、メイヤーロッドコーター(#2.5ケムインスツルメント社)を用いて行った。
【0192】
第1のアノード部の剥離層を接着促進剤調合物で塗布した後、第1のアノード部と実質的に同様な第2のアノード部を第1のアノード部の接着促進剤層に隣接して配置した。2kg/cmの圧力を加えた状態で3分間保持して、2つのアノード部を一体的に積層した。皮膜を室温でさらに5分間乾燥させ、接着促進剤調合物中の溶媒を蒸発させた。
【0193】
接着促進剤の被膜は、電極の厚さを増加させることなく、2つのアノード部からの剥離層の接着を可能とした。アノード部と接着促進剤の被膜の両方からの剥離層の全厚さは、Amray1845走査型電子顕微鏡による断面像から測定したところ、約5〜6ミクロンであった。塗布後、金属リチウム層の表面には、浸食、損傷、または反応は観察されなかった。
【0194】
得られたアノードアセンブリを2cm×2cmの大きさの片にカットし、8%LiTFSI、4%LiNO、44%ジメトキシエタンおよび44%1,3−ジオキソランを含む10mLの電解質の中に浸した。その片の電解質に対する反応性を7日間観察した。片を添加した時、電解質は透明で無色であった。7日後、電解質は依然透明で無色であり、アノードアセンブリのその片にも変化はなかった。接着促進剤を用いて一体的に積層された2つのアノード部は引っ張ってもバラバラにすることはできなかった。
【0195】
本実施例は、接着促進剤調合物を用いて2つのアノード部を一体的に接着させることにより、電気化学電池のアノードアセンブリを作製する方法を説明しており、該方法は、各アノード部と結合した剥離層間の接着を促進する。本実施例は、積層後に電解質の中に7日間浸した後でも、2つのアノード部が層間剥離しなかったこと、および電解質が、アノード部の2つの剥離層の間に侵入しなかったことも示している。
【0196】
本明細書には本発明の複数の態様が記載および図示されているが、当業者は、本明細書に記載されている機能を実施でき、および/または結果および/または1つまたは複数の利点を得ることのできるいろいろな他の手段および/または構造を容易に予想でき、およびそのような変形例および/または改良例は本発明の範囲に含まれるものである。さらに一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されているすべてのパラメータ、大きさ、材料、および配置が例示であり、実際のパラメータ、大きさ、材料および/または配置は、本発明の教示が用いられる特定の用途または用途群に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、通常の実験により、本明細書に記載された特定の態様についての多くの等価物を認識でき、あるいは確認できる。したがって、前述の態様は単に例として提示されたものであり、添付の請求の範囲およびそれの等価物の範囲内であれば、特に記載されおよび請求されたものと別のやり方で本発明を実施してもよい。本発明は、本明細書に記載された、それぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関するものである。また、2つまたはそれを超える、それらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、もしそれらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0197】
本明細書で定義され使用されているすべての定義は、辞書の定義、出典明示により本明細書の一部となった文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優先することが理解されるべきである。
【0198】
本書類の明細書および請求の範囲で使用されている不定冠詞の「1つ」および「1つ」は、それと異なると指摘されない限りは、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0199】
本書類の明細書と請求の範囲で使用されている「および/または」という句は、結合した要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきであり、すなわち、ある例では複数の要素が結合して存在し、別の例では複数の要素が分離して存在する。「および/または」で羅列された複数の要素も同様に解釈されるべきであり、すなわち、結合した要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。特に認定された要素に関係するかまたは関係しないかにより、「および/または」の句で特に認定された要素以外の要素も必要に応じて存在してもよい。したがって、限定されない例として、「「含む」のような限定のない表現と一緒に用いられる場合、「Aおよび/またはB」への言及は、ある態様では、Aのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、別の態様では、Bのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、さらに別の態様では、AとBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を意味する。
【0200】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、「または」は、先に定義された「および/または」と同じ意味を有している。例えば、リストの中の用語を分ける時、「または」あるいは「および/または」は、包含的なものと理解されるべきであり、すなわち、多数の要素または要素のリストの少なくとも1つを含むだけでなく、複数も含み、および必要に応じてリストにない追加の要素を含む。反対であると明確に指摘された用語のみ、例えば、「1つのみ」または「厳密に1つの」または、クレームに用いられる場合、「のみから成る」は、多数の要素または要素のリストの中の厳密に1つの要素が含まれることを意味する。一般に、本書類で用いられる「または」の用語は、「いずれか」、「1つの」、「1つのみ」または「厳密に1つの」等の包含的な用語が先立つ場合、包含的な選択(例えば、1つまたは別のもので両方ではない)を意味するものとだけ解釈されるべきである。「実質的に・・から成る」がクレームで用いられる場合、特許法の分野で用いられる通常の意味を有する。
【0201】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、1つまたは複数の要素のリストに関して「少なくとも1つ」の句は、要素のリスト中のいずれか1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであり、要素のリストの中に特に挙げられた各要素およびすべての要素の少なくとも1つを含むことは必ずしも必要ではなく、要素のリストの中の要素の組み合わせを排除するものでもない。この定義では、特に認定されたそれら要素に関係するかあるいは関係しないかに応じて、「少なくとも1つの」の句が言及する要素の中で特に認定された要素以外にも要素が必要に応じて存在することを許容するものである。したがって、限定されるものではないが、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、ある態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含むがBは含まない(および必要に応じてB以外の要素を含む)ことを意味し、また別の態様では、少なくとも1つ、Bを含み、必要に応じて1つより多く含むがAは含まない(および必要に応じてA以外の要素を含む)ことを意味し、さらに別の態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含み、その場合Bを含み(および必要に応じて他の要素を含む)ことを意味する、等である。
【0202】
それと異なると明確に指摘されない限りは、本書類において請求された方法は、1つより多い工程または処置を含み、該方法の工程または処置の順番は、記載されている工程または処置の順番には特に限定されない、と理解されるべきである。
【0203】
上記の明細書だけでなく、特許請求の範囲において、「有する」、「含む」「保持する」、「持つ」、「含有する」、「包含する」、「保有する」、「構成される」等のすべての移行句は、非限定的であると理解されるべきであり、すなわち、含むことを意味するがそれに限定されない。「から成る」および「実質的に・・から成る」の移行句だけは、米国特許庁特許審査便覧2111.3節に規定されているように、それぞれ限定的または半限定的な移行句である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、電気活性物質層、および剥離層を有し、集電体が電気活性物質層と剥離層との間に配置されている電極。
【請求項2】
上記集電体が、剥離層に隣接して配置され、電気活性物質層が集電体に隣接して配置されている請求項1記載の電極。
【請求項3】
上記剥離層がポリマー材料を含む請求項1記載の電極。
【請求項4】
上記剥離層が、ヒドロキシル官能基を有するポリマー材料を含む請求項1記載の電極。
【請求項5】
上記剥離層が、ポリビニルアルコールを含む請求項1記載の電極。
【請求項6】
上記剥離層が、約10ミクロン以下の厚さを有する請求項1記載の電極。
【請求項7】
上記剥離層が、約3ミクロン以下の厚さを有する請求項1記載の電極。
【請求項8】
上記剥離層が、水溶性である請求項1記載の電極。
【請求項9】
上記剥離層が、界面活性剤を含む請求項1記載の電極。
【請求項10】
上記剥離層の少なくとも80重量%が、紫外線硬化性材料ではない請求項1記載の電極。
【請求項11】
上記集電体が、約12ミクロン以下の厚さを有する請求項1記載の電極。
【請求項12】
上記集電体が、金属層である請求項1記載の電極。
【請求項13】
上記集電体が、電気化学的に不活性である請求項1記載の電極。
【請求項14】
上記集電体が、電気化学的に活性な材料を含む請求項1記載の電極。
【請求項15】
上記電気活性物質層が、リチウムを含む請求項1記載の電極。
【請求項16】
上記電気活性物質層が、金属リチウムを含む請求項1記載の電極。
【請求項17】
上記電気活性物質層が、硫黄を含む請求項1記載の電極。
【請求項18】
上記電気活性物質層が、約15ミクロンよりも大きい厚さを有する請求項1記載の電極。
【請求項19】
上記電気活性物質層に隣接して1つまたは複数の保護層をさらに含む請求項1記載の電極。
【請求項20】
第1の電気活性物質層、該第1の電気活性物質層に隣接する第1の集電体、該第1の集電体に隣接する第1の剥離層、該第1の剥離層に隣接する第2の集電体、および該第2の集電体に隣接する第2の電気活性物質層を有する電極。
【請求項21】
第1の剥離層と第2の集電体との間に配置された第2の剥離層をさらに含む請求項20記載の電極。
【請求項22】
第1の集電体と第2の集電体との間に配置された接着促進剤をさらに含む請求項21記載の電極。
【請求項23】
第1の剥離層と第2の剥離層との間に配置された接着促進剤をさらに含む請求項21記載の電極。
【請求項24】
第1の剥離層および/または第2の剥離層の中に分散された接着促進剤をさらに含む請求項21記載の電極。
【請求項25】
上記電気活性物質層が、金属リチウムを含む請求項20記載の電極。
【請求項26】
請求項20記載の電極をアノードとして含み、カソード活物質として硫黄を含むカソードをさらに含む電気化学電池。
【請求項27】
第1の剥離層が、約10ミクロン以下の厚さを有する請求項20記載の電極。
【請求項28】
第1の剥離層が、ポリマー材料を含む請求項20記載の電極。
【請求項29】
第1の剥離層がポリビニルアルコールを含む請求項20記載の電極。
【請求項30】
少なくとも集電体と電気活性物質を含む電極の作製方法であって、
キャリア基材の表面に剥離層を配置し、
該剥離層の表面に集電体を配置し、
該集電体に隣接して電気活性物質層を配置し、および
該キャリア基材から電極を剥離する、電極の作製方法。
【請求項31】
上記キャリア基材が、ポリエチレンテレフタレートを含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
上記キャリア基材が、約50ミクロン以上の厚さを有する請求項30記載の方法。
【請求項33】
上記キャリア基材が、約20ミクロン以上の厚さを有する請求項30記載の方法。
【請求項34】
上記剥離層が、集電体に対してよりもキャリア基材に対して高い接着親和性を有し、
キャリア基材から電極を剥離する時、剥離層はキャリア基材に接着している、請求項30記載の方法。
【請求項35】
上記剥離層が、キャリア基材に対してよりも集電体に対して高い接着親和性を有し、
キャリア基材から電極を剥離する時、剥離層は集電体に接着している、請求項30記載の方法。
【請求項36】
上記剥離層が、約10ミクロン以下の厚さを有する請求項30記載の方法。
【請求項37】
第1の剥離層が、ポリマー材料を含む請求項30記載の方法。
【請求項38】
第1の剥離層が、ポリビニルアルコールを含む請求項30記載の方法。
【請求項39】
剥離後、上記剥離層に隣接して接着促進剤を適用する請求項30記載の方法。
【請求項40】
電気活性物質層、該電気活性物質層に隣接する集電体、該集電体に接する剥離層、および該剥離層と接し、該剥離層の厚さ以上の厚さを有するキャリア基材を有し、該キャリア基材が、該剥離層によって該集電体から剥離可能である物品。
【請求項41】
上記剥離層が、キャリア基材に対してよりも集電体に対して高い接着親和性を有する請求項40記載の物品。
【請求項42】
上記剥離層が、集電体に対してよりもキャリア基材に対して高い接着親和性を有する請求項40記載の物品。
【請求項43】
上記剥離層が、約10ミクロン以下の厚さを有する請求項40記載の物品。
【請求項44】
上記第1の剥離層が、ポリマー材料を含む請求項40記載の物品。
【請求項45】
上記第1の剥離層が、ポリビニルアルコールを含む請求項40記載の物品。
【請求項46】
請求項40記載の物品を含む気密性および湿密性包装物。
【請求項47】
以下の工程を含む方法:
第1の電気活性物質層、第1の集電体、および第1の剥離層を含む第1の電極部を用意し;
第2の電気活性物質層、第2の集電体、および第2の剥離層を含む第2の電極部を用意し;および
第1の電極部と第2の電極部を積層して、第1の剥離部と第2の剥離部が対向するアセンブリを作製する。
【請求項48】
積層工程に先だって、第1の剥離層と第2の剥離層の少なくとも1つに隣接するように接着促進剤を配置することをさらに含む請求項47記載の方法。
【請求項49】
上記接着促進剤が、0.01〜3ミクロンの厚さを有する層の形態を有する請求項48記載の方法。
【請求項50】
第1の剥離層と第2の剥離層の少なくとも1つに上記接着促進剤の少なくとも一部を分散させる請求項48記載の方法。
【請求項51】
第1の剥離層と第2の剥離層の間に上記接着促進剤が離散層を形成しないように、第1の剥離層と第2の剥離層の少なくとも1つに上記接着促進剤の大部分を分散させることを含む請求項48記載の方法。
【請求項52】
上記接着促進剤が、溶媒とポリマーを含む請求項48記載の方法。
【請求項53】
第1の剥離層と第2の剥離層が、側鎖ヒドロキシド基を含み、上記接着促進剤が、スルホキシドを含む溶媒と、側鎖ヒドロキシド基を含むポリマーを含む請求項48記載の方法。
【請求項54】
第1の剥離層と第2の剥離層が側鎖ヒドロキシド基を含むポリマーを含み、上記接着促進剤がスルホキシドを含む溶媒と、側鎖ヒドロキシド基を含むポリマーを含む請求項48記載の方法。
【請求項55】
上記接着促進剤が、溶媒を含むがポリマーを含まない請求項48記載の方法。
【請求項56】
第1の集電体が、第1の電気活性物質層と第1の剥離層の間に配置される請求項47記載の方法。
【請求項57】
第2の集電体が、第2の電気活性物質層と第2の剥離層の間に配置される請求項47記載の方法。
【請求項58】
第1の剥離層と第2の剥離層の少なくとも1つがポリマーを含む請求項47記載の方法。
【請求項59】
上記の積層工程が、第1の剥離層の表面に溶媒を適用し、第1の剥離層の少なくとも一部を溶媒和し、次いで第1の剥離層と第2の剥離層を一体化することを含む請求項47記載の方法。
【請求項60】
上記の積層工程が、第1の剥離層の表面に溶媒を適用し、次いで第1の剥離層と第2の剥離層を一体化することを含む請求項47記載の方法。
【請求項61】
上記の積層工程が、互いに対する接着性を向上させるために、第1の剥離層および/または第2の剥離層の表面を活性化させることを含む請求項47記載の方法。
【請求項62】
キャリア基材の表面に上記剥離層を配置する工程が、以下の工程を含む請求項47記載の方法:
ポリマー材料と、アルコールを含む溶媒との混合物を約90℃よりも低い温度に加熱する工程;
該混合物でキャリア基材の表面を塗布する工程;および
該混合物から溶媒の少なくとも一部を取り除く工程。
【請求項63】
アノード、電解質、カソード、およびその上に電気化学電池の少なくとも一部を作製する基材に対する接着親和性よりも、電気化学電池の少なくとも1つの構成要素に対して高い接着親和性を有し、電気化学電池に対して、電気化学的特徴、構造的特徴、または活性化特徴を実質的に付与しない剥離層を含む電気化学電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2013−502700(P2013−502700A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526721(P2012−526721)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/002326
【国際公開番号】WO2011/028251
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(500287732)シオン・パワー・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】