説明

電気回路遮断装置

【課題】ヒューズの通電許容電流の低下を防止できる電気回路遮断装置を提供する。
【解決手段】遮断対象である電気回路3に接続される一対の端子412,413を有する第1コネクタ41と、ヒューズ424を収容し、第1コネクタ41に装着することにより端子間にヒューズを電気的に接続する第2コネクタと、一方がヒューズの絶縁部4242に熱的に接触するとともに、他方が少なくとも第2コネクタのハウジング421の外部に露出する放熱体6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気回路遮断装置として、遮断対象たる電気回路配線が接続されたコネクタハウジングに、ヒューズが収容されたコネクタハウジングを装着することにより、電気回路にヒューズを接続するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−250386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電気回路遮断装置では、通電によるヒューズの自己発熱がコネクタハウジング内部にこもってヒューズの温度が上昇するため、当該ヒューズの通電許容電流が低下するという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ヒューズの通電許容電流の低下を防止できる電気回路遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一方がヒューズの絶縁部に熱的に接触するとともに、他方がヒューズを収容したコネクタハウジングの外部に露出する放熱体を設けることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒューズの自己発熱は放熱体を介してコネクタハウジングの外部へ放熱されるので、ヒューズの通電許容電流の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る電気回路遮断装置4を備えた組電池システムを示すブロック図である。同図に示す組電池システムは、組電池ケース1内に、複数の電池が直列に接続されてなる組電池2を収容したものであり、組電池ケース1から露出して設けられた組電池2の両端子21は、たとえばインバータなどの電力変換装置を介して、又は直接、モータなどの各種負荷に接続される。
【0010】
本例の電気回路遮断装置4は、こうした組電池システムの電源回路3の途中に設けられ、組電池ケース1を開けて組電池システムのメンテナンスなどを行う場合には、当該電源回路3を遮断することにより作業の安全を確保する一方で、組電池システムの稼動中は電源回路3の過電流を防止する。
【0011】
すなわち本例の電気回路遮断装置4は、一対のコネクタ41,42を有し、これら一対のコネクタ41,42を嵌合させると、一方のコネクタ41の端子412,413と他方のコネクタ42の端子422,423とがそれぞれ接続され、これにより電源回路3が導通して組電池2の端子間21に所定の電圧が印加される。このとき、他方のコネクタ42の端子間422,423にはヒューズ424が設けられているので、電源回路3に所定値以上の過電流が流れると当該ヒューズ424が切断する。
【0012】
これに対し、一対のコネクタ41,42の嵌合を解くと、一方のコネクタ41の端子412,413間が非導通となり、これにより組電池2の端子間21の電圧がゼロになる。これにより、組電池システムのメンテナンス作業を、より安全に行うことができる。
【0013】
ただし、同図に示す組電池システムは本発明に係る電気回路遮断装置4の一適用例を示すものであって、これ以外の電気回路にも適用することができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る電気回路遮断装置4を示す斜視図であり、図1に示す例でいうと組電池ケース1に取り付けられる第1コネクタ41と、この第1コネクタ41に嵌合させる第2コネクタ42とを有する。図3は、図2に示す第2コネクタ42のハンドル426を起立させた状態を示す斜視図である。
【0015】
第2コネクタ42のハウジング421には、図2に示す倒着位置と図3に示す起立位置との間の約90°だけ回転するハンドル426が取り付けられ、このハンドル426の両側面に先端が開放したカム溝427が形成されている。一方、第1コネクタ41のハウジング411の両側面には、第2コネクタ42のカム溝427に係合するピン414が形成されている。
【0016】
そして、第1コネクタ41に第2コネクタ42を嵌合させる場合は、第2コネクタ42のハンドルを図3に示すように起立させ、この状態で第2コネクタ42のカム溝427の先端から第2コネクタ41のピン414を挿入しつつ、第2コネクタ42のハウジング421を第1コネクタ41のハウジング411に挿入する。第2コネクタ42のハウジング421を第1コネクタ41のハウジング411の奥まで挿入したら、第2コネクタ42のハンドル426を図1に示す倒着位置まで倒して行く。このハンドル426を倒して行く過程で、カム溝427の形状(軌跡)にピン414が倣うことにより、第2コネクタ42がさらに第1コネクタ41に挿入されることになる。
【0017】
図4(A)及び(B)は第2コネクタ42の断面図、図4(C)及び(D)は第1コネクタ41の断面図であり、図4(A)は図2のIVA-IVA線に沿う断面図、図4(B)は図2のIVB-IVB線に沿う断面図、図4(C)は図2のIVC-IVC線に沿う断面図、図4(D)は図2のIVD-IVD線に沿う断面図である。なお、ハンドル426の図示は省略している。
【0018】
図4(C)及び(D)に示す第1コネクタ41は、プラスチックなどの絶縁性材料により所定形状に形成された中空状のハウジング411を備え、内部に導電性材料からなる一対の端子412,413が固定されている。この一対の端子412,413は、図1に示す例でいえば電源回路3の配線にそれぞれ接続され、第2コネクタ42の平板状端子422,423を受容することができるように、弾性を有する形状とされている。
【0019】
第1コネクタ41は、その一部が外部に露出し、残りの部分が組電池ケース1の内部に臨むように、組電池ケース1に取り付けられている。
【0020】
これに対して、図4(A)及び(B)に示す第2コネクタ42は、プラスチックなどの絶縁性材料により所定形状に形成された中空状のハウジング421を備え、上部開口にプラスチックなどの絶縁性材料により形成された蓋体425が着脱可能に取り付けられている。
【0021】
また、ハウジング421の内部には、導電性材料からなる一対の端子422,423が固定されている。この一対の端子422,423は平板状に形成され、上述したように第1コネクタ41の一対の端子412,413に受容される。
【0022】
一対の端子422,423には、ヒューズ424がボルトなどにより着脱可能に取り付けられている。図5は、本実施形態に係るヒューズ424を示す断面図である。本例のヒューズ424は、絶縁性材料からなる円筒状の絶縁部4242の内部に導電性の可溶体4241が埋設され、可溶体4241の両端のそれぞれに絶縁部4242の両端を保持する導電性材料からなるキャップ4243が設けられている。そして、キャップ4243の脚部を一対の端子422,423のそれぞれに接続することで、第2コネクタ42に対するヒューズ424の装着が行われる。
【0023】
なお、可溶体4241は、温度上昇にともなう切断応答性を高めるために、同図の下図に示すように平板の一部に狭隘部4241aが形成されている。
【0024】
特に本実施形態の電気回路遮断装置4では、図4(A)及び(B)に示すように第2コネクタ42のハウジング421に第1放熱体61を固定するとともに、第1コネクタ41のハウジング411に第2放熱体62を固定している。これら第1及び第2放熱体61,62はいずれも熱伝導性および導電性に優れた、たとえば銅やアルミニウム材料で形成することが望ましい。
【0025】
本例の第1放熱体61は、図4(A)及び(B)に示すように、平板の中央にヒューズ424の外面の下半分を受容する断面半円状の接触部611を形成するとともに、接触部611から延在するそれぞれの脚部612をハウジング421の下方に位置させ、さらにそれぞれの先端を内側に折り返して接点613を形成している。ヒューズ424のキャップ4243は電流が流れる可溶体4241と電気的に導通しているので、第1放熱体61の接触部611は、ヒューズ424の絶縁部4242にのみ接触し、キャップ4243には接触しない形状とされている。
【0026】
なお、第1放熱体61は、脚部612の部分においてハウジング421に固定されている。したがって、ハウジング421に固定されたヒューズ424に対し、第1放熱体61の接触部611は、図示する上方向に弾性力を付勢することとなり、これにより第1放熱体61とヒューズ424との熱的接触がより確実になる。この第1放熱体61の接触部611が本発明の弾性部に相当する。
【0027】
これに対し、本例の第2放熱体62は、図4(C)及び(D)に示すように、一対の平板の先端を外側に折り返して接点621を形成し、この接点621は上述した第1放熱体61の接点3と係合する。また、第2放熱体62は接点621の下でハウジング411に固定され、他端の露出部622はハウジング411の外面に露出するよう当該ハウジング411の外面に折り返している。なお、第2放熱体62の露出部622は、ハウジング411の外面に折り返すことなく当該ハウジング411の下面から露出するように下方に向かって垂下させることもできる。
【0028】
図6は、本実施形態に係る電気回路遮断装置4を示す断面図であり、第1コネクタ41に第2コネクタ42を嵌合させた状態を示す。同図に示すように、第2コネクタ42のハウジング421に設けられた第1放熱体61は、接触部611にてヒューズ424の絶縁部4242に接触し、ここからヒューズ424からの熱を伝える。また、第1放熱体61の接点613と、第1コネクタ41のハウジング411に設けられた第2放熱体62の接点621とが係合すると、第1放熱体61と第2放熱体62は熱的及び電気的に接続される。そして、ヒューズ424の熱は第1放熱体61から接点613,621を介して第2放熱体62に伝わり、当該第2放熱体62の露出部622から組電池ケース1の内部に放熱することになる。なお、組電池ケース1の内部は、電池を冷却するための冷却風が流れているので、この冷却風により、より効果的に放熱することになる。
【0029】
ところで、第1コネクタ41に第2コネクタ42が正しく装着されたことを検出し、正しく装着されたら組電池システムの起動許可を出力する一方で、正しく装着されていないときは起動許可を出力しない組電池システムの安全装置があるが、本例の電気回路遮断装置4にこの種の安全装置の機能をもたせることも可能である。
【0030】
具体的には、図6に示すように一対の第2放熱体62,62のそれぞれに対し電源51からの電圧を印加するとともに、この回路中に電流計測機能を備えた装着検出装置5を設ける。第1コネクタ41に第2コネクタ42が装着されていない場合は、一対の第2放熱体62,62は電気的に導通していないので、装着検出装置5は電流を検出しないが、第1コネクタ41に第2コネクタ42が装着されて一対の第2放熱体62,62に第1放熱体61が接触すると、一対の第2放熱体62,62が電気的に導通し、装着検出装置5は電流を検出する。この装着検出装置5が本発明の検出手段に相当する。
【0031】
このように、第1放熱体61と第2放熱体62の接触及び非接触の状態が、第1コネクタ41と第2コネクタ42との嵌合及び非嵌合の状態に相当することを利用することにより、組電池システムに対する起動許可を出力する安全装置を提供することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る電気回路遮断装置4によれば、電源回路3に定常電流が流れることによりヒューズ424の温度が上昇するが、この熱を第1放熱体61及び第2放熱体62を介して組電池ケース1の内部等に放熱することができる。これにより、第2コネクタ42のハウジング421内にヒューズ424の熱が籠もるのが防止でき、ヒューズ424を適切な温度に維持できる。したがって、ヒューズ424の通電許容電流の低下を防止することができる。ちなみに、ヒューズ424に所定値以上の過電流が流れると、第1放熱体61及び第2放熱体62による放熱作用以上の熱が発生するので、当該ヒューズ424の可溶体4241は適切に溶融して切断され、これにより電源回路3は遮断することになる。
【0033】
また、第1放熱体61の接触部611を、ヒューズ424の絶縁部4242に弾性力を付勢する弾性部としているので、ヒューズ424と第1放熱体61との接触がより確実になり、放熱効果をさらに高めることができる。
【0034】
また、第1放熱体61の接触部611を、ヒューズ424の交換に邪魔にならない断面半円状にしているので、第1放熱体61を取り外すことなく、蓋体425を開けてヒューズ424を容易に交換することができる。
【0035】
また、放熱体を、第2コネクタ42に設けた第1放熱体61と、第1コネクタ41に設けた第2放熱体62で構成しているので、それぞれの放熱体61,62がハウジング411,421の内部に収納できる程度のコンパクトな大きさとすることができる。
【0036】
また、放熱体を、第1放熱体61と第2放熱体62に分割することにより、第1コネクタ41と第2コネクタ42との嵌合及び非嵌合の状態を、第1放熱体61と第2放熱体62との導通状態に基づいて検出できるので、組電池システムに対する起動許可を出力する安全装置にも共用することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では放熱体を2分割したが、1つの放熱体により構成することもできる。この場合、たとえば図4(B)に示す第1放熱体61の脚部612を延長し、第2コネクタ62を第1コネクタ41に嵌合したときに第1放熱体61の先端が第1コネクタ41のハウジング411の下面から露出するように形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る電気回路遮断装置を備えた組電池システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電気回路遮断装置を示す斜視図である。
【図3】図2に示す第2コネクタのハンドルを起立させた状態を示す斜視図である。
【図4】(A)は図2のIVA-IVA線に沿う断面図、(B)は図2のIVB-IVB線に沿う断面図、(C)は図2のIVC-IVC線に沿う断面図、(D)は図2のIVD-IVD線に沿う断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るヒューズを示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電気回路遮断装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…組電池ケース
2…組電池
3…電源回路(電気回路)
4…電気回路遮断装置
41…第1コネクタ
411…ハウジング
412,413…端子
42…第2コネクタ
421…ハウジング
422,423…端子
424…ヒューズ
4242…絶縁部
425…蓋体
5…装着検出装置(検出手段)
6…放熱体
61…第1放熱体
611…接触部(弾性部)
612…脚部
613…接点
62…第2放熱体
621…接点
622…露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断対象である電気回路に接続される一対の端子を有する第1コネクタと、
ヒューズを収容し、前記第1コネクタに装着することにより前記端子間に前記ヒューズを電気的に接続する第2コネクタと、
一方が前記ヒューズの絶縁部に熱的に接触するとともに、他方が少なくとも前記第2コネクタのハウジングの外部に露出する放熱体を備えることを特徴とする電気回路遮断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路遮断装置において、
前記放熱体の前記絶縁部との接触部は、前記ヒューズに対して弾性力を付勢する弾性部を有することを特徴とする電気回路遮断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置において、
前記第2コネクタの前記ハウジングは、前記ヒューズを着脱可能とするための蓋体を有し、
前記放熱体の前記絶縁部との接触部は、前記絶縁部の前記蓋体と反対側の外面を受容するように、当該絶縁部の外面に応じた形状に形成されていることを特徴とする電気回路遮断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気回路遮断装置において、
前記放熱体は、
前記第2コネクタに設けられ、前記ヒューズの前記絶縁部に接触する第1放熱体と、
前記第1コネクタに設けられ、一端が前記第1放熱体に接触するとともに他端が当該第1コネクタの外部に露出する第2放熱体と、を有することを特徴とする電気回路遮断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気回路遮断装置において、
前記第1放熱体と前記第2放熱体との接触の有無を検出する検出手段をさらに備えることを特徴とする電気回路遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−211825(P2009−211825A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50854(P2008−50854)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】