説明

電気式ヒータ

【課題】発熱素子、電極板、放熱フィンを密着させて熱伝導量や電流量の低下を防止する。
【解決手段】3列以上の発熱素子2、発熱素子2に電気的に接触する電極板3、放熱フィン4を重ねたユニットを複数段積層した積層発熱体5と、積層発熱体5の上下端部に装着される上下フレーム6、7と、積層発熱体5の両側端部で上下フレーム6、7及び積層発熱体5を把持する一対の押圧スプリング8、9とを備えた電気式ヒータであって、上フレーム6、下フレーム7には配列位置の発熱素子2に対応する位置以外の部位に積層方向外側に突出た膨出部6a、7aを形成すると共に、上フレーム6、下フレーム7を積層発熱体5の上下端部における配列位置の発熱素子2に対応する位置に当接させ、一対の押圧スプリング8、9により上フレーム6、下フレーム7の膨出部6a、7aの中央を積層方向外側から押圧し、発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4を積層方向に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPTC等の発熱素子を用いた電気式ヒータに関するもので、自動車の室内の即暖房装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の発熱素子を用いた電気式ヒータの構造は、図5に示す如く、絶縁性樹脂保持具1に発熱素子2を装着し、発熱素子2の表面に電力を供給する電極板3を重ね、電極板3及び発熱素子2に放熱フィン4を重ね、これら保持具1、発熱素子2、電極板3、放熱フィン4を1ユニットとして複数段積層して積層発熱体5を構成している。なお、電極板3はプラス(+)とグランド(G)で交互に積層されている。
【0003】
積層発熱体5の積層方向の上下端部には断面凹部形状の上フレーム6及び下フレーム7が取り付けられ、積層発熱体5の両側端部から一対の押圧スプリング8、9を上、下フレーム6、7の凹部に通し、積層発熱体5の各ユニットが正面方向にズレないように積層発熱体5を把持している構造である。さらに一対のスプリング8、9の両側からはカバー10、11が装着される。
【0004】
図5に示した積層発熱体5においては、発熱素子2は3列(図の水平方向の配列)配置で4段(図示の上下方向の積段)積層され、さらに最上段にフィン4(フィン4は5段積)が配置されている。この3列配置、4段積層の発熱素子2は、電極板3及びフィン4と電気的伝導及び熱的伝導を確実に行うため確実に接触させる必要があるため、発熱素子2の配列位置に押圧点が作用するように一対のスプリング8、9が装着されている。従って一対のスプリング8、9は積層発熱体5を把持すると共に、発熱素子2と電極板3とフィン4とを接触させる押圧作用も行っている。
【0005】
しかしながら、従来の上述した電気式ヒータは、一対にスプリング8、9で積層発熱体5の両外側(1列目と3列目)に配列された発熱素子2と電極板3とフィン4とを接触押圧させる構造であるため、積層発熱体5の両端部での発熱素子2と電極板3とフィン4との押圧力は保たれるが、積層構造体5の中央部(2列目)では押圧力が低下し、すべての配列位置の発熱素子2と電極板3とフィン4との電気的、熱的接触を保つことができない。従って、従来構造のものでは発熱素子2の配列位置の数は2列配置が限度であり、高出力を得るために発熱素子の配列位置の数を増やすことが困難であった。
また、下記特許文献1にも電気式ヒータが記載されているが、やはり上記した同様の問題点がある。
【特許文献1】特開2005−108808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、上フレーム、下フレームにおいて、前記列配置された発熱素子に対応する位置以外の部位に積層方向外側に突出た膨出部を形成し、他の部位に前記列配置された発熱素子に対応する位置に当接され、前記一対の押圧スプリングにより前記上フレーム、下フレームの膨出部を積層方向外側から押圧把持させることにより、配列位置の発熱素子、電極板及び放熱フィンを積層方向に押圧し発熱素子、電極板及び放熱フィンを密着させることができ、発熱素子、電極板及び放熱フィン間の熱伝導量や電流量の低下を防止できる電気式ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、3列以上に配列位置された発熱素子と、前記発熱素子に電気的に接触し外部から電力を供給するための電極板と、前記発熱素子によって発生した熱を放熱する放熱フィンを重ねたユニットを複数段積層した積層発熱体と、前記積層発熱体の積層方向の上端部、下端部に装着される上フレーム、下フレームと、前記積層発熱体の両側端部で外側から前記上フレーム、下フレーム及び前記積層発熱体を把持して前記発熱素子、前記電極板及び前記放熱フィンを積層方向に押圧する一対の押圧スプリングとを備えた電気式ヒータであって、
前記上フレーム、下フレームには前記積層発熱体の前記配列位置の発熱素子に対応する位置以外の部位に積層方向外側に突出た膨出部を形成すると共に、前記積層発熱体の前記配列位置の発熱素子に対応する位置に前記上フレーム、下フレームを当接させ、前記一対の押圧スプリングにより前記上フレーム、下フレームの膨出部を積層方向外側から押圧把持することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、前記一対の押圧スプリングにより前記上フレーム、下フレームの空間部を積層方向外側からの押圧によって前記上フレーム、下フレームの空間部でない他の部位が前記配列位置の発熱素子、電極板及び放熱フィンを積層方向に押圧し発熱素子、電極板及び放熱フィンを密着させることができる。従って、発熱素子、電極板及び放熱フィン間の熱伝導量や電流量の低下を防止できる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記上フレーム、下フレームにおける前記膨出部と前記配列位置の発熱素子に対応する位置に当接する前記上フレーム、下フレームとの境界部を、前記配列位置の発熱素子のほぼ中央部に位置させることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記一対の押圧スプリングによる押圧力が作用する前記境界部を前記配列位置の発熱素子のほぼ中央部に位置させているから、当該押圧力を最も効率的に前記発熱素子の配列位置に作用させることができ、確実に前記発熱素子、電極板及び放熱フィンを密着させることができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記発熱素子の配列位置の数は3列又4列であることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、前記発熱素子の配列位置の数が3列又4列であれば前記膨出部の列数は2つとなり、一対の押圧スプリング即ち2つのスプリングにより確実に前記膨出部を押圧把持できるから、前記発熱素子、前記電極板及び前記放熱フィンを積層方向に確実に密着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。まず、図1、図2により電気式ヒータの全体構成を説明する。なお、図1においては本発明の特徴構造については省略し、後述する図3、4で本発明の特徴構造を詳述する。図1は本発明電気式ヒータの全体構成断面図、図2は図1のX部の拡大断面図である。
【0014】
絶縁性樹脂で作製された保持具1にPTC等の発熱素子2が装着され、発熱素子2の表面に電力を供給する電極板3が重ねられ、電極板3及び発熱素子2にフィンプレート4aがロウ付けされた放熱フィン4を重ね、これら保持具1、発熱素子2、電極板3、放熱フィン4を1ユニットとして複数段積層して積層発熱体5を構成している。なお、電極板3はプラス(+)とグランド(G)で交互に積層されている。
【0015】
積層発熱体5の積層方向の上下端部には断面凹部形状の上フレーム6及び下フレーム7が取り付けられ、積層発熱体5の両側端部から一対の押圧スプリング8、9を上、下フレーム6、7の凹部に通し、積層発熱体5の各ユニットが正面方向にズレないように積層発熱体5を把持している構造である。この場合、一対のスプリング8、9は積層発熱体5において、4列の配列位置の発熱素子2における両外側(1列目と4列目)の配列位置の発熱素子2を積層方向に押圧している。さらに一対のスプリング8、9の両側からはカバー10、11が装着される。
【0016】
積層発熱体5においては、発熱素子2は4列(図の水平方向の配列)配置で4段(図示の上下方向の積段)積層され、さらに最上段にフィン4(フィン4は5段積)が配置されている。発熱素子2は本例では4列×4段で16個の発熱素子2を備えている。本例では発熱素子2は保持具1にすべて装着されているが、電気式ヒータの必要とする発熱量に応じ発熱素子を減らし、その保持具1の空間部に発熱素子と同寸法(幅、高さ、奥行)の絶縁性のダミーを装着して発熱量を調節してもよい。また、ダミーの位置も必要に応じてその配置を設定すればよい。
【0017】
以下本発明の特徴構造の実施形態を図3、4により説明する。 図3において、本発明の第1実施形態の具体的構成を説明する。図において上記カバー10、11は省略している。図3において、積層発熱体5の上、下端部の放熱フィン4は水平で平行状態を呈しており、発熱素子2は4列の配列で4段の積層である。
【0018】
上フレーム6及び下フレーム7の放熱フィン4と当接する側(内側)には、積層方向外側に突出た膨出部6a、7aがそれぞれ2箇所設けてある。この膨出部6a、7aの形成位置は積層発熱体5の発熱素子2の配列位置以外に対応しており、膨出部6a、7aの中央位置は発熱素子2の配列位置以外の部分の中央位置に一致している。
【0019】
また、上フレーム6及び下フレーム7は積層発熱体5の発熱素子2の配列位置の部分に当接しており、この上フレーム6及び下フレーム7が積層発熱体5に当接している部分と膨出部6a、7aとの境界部6b、7bは各配列位置に発熱素子2に中央部に位置しているように設定されている。
【0020】
また、1つの膨出部6a、7aはその両端の境界部6b、7b(それぞれ2箇所)で2箇所の発熱素子2の配列位置に跨っており、従って、配列方向の2つの膨出部6a、7aで4箇所の発熱素子2の配列位置に対応している。
【0021】
そして上記した膨出部6a、7aが設けられた上フレーム6及び下フレーム7が積層発熱体5の上端部及び下端部に装着され、図示するように積層発熱体5の両側端部で上フレーム6及び下フレーム7の外側から一対のスプリング8、9が膨出部6a、7aの中央外側に装着される。
【0022】
一対のスプリング8、9の装着により、矢印Aで示す押圧力が膨出部6a、7aの中央に作用し、このスプリング押圧力Aが分散し境界部6b、7bにおいて矢印Bで示す分散押圧力となり、この分散押圧力Bがすべての配列位置(1〜4列目)の発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4を積層方向に押し圧する。そのため発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4間が密着し熱伝導量や電気量の低下を防止できる。
【0023】
また、上フレーム6及び下フレーム7に設けた境界部6b、7bは各配列位置の発熱素子2の中央部に位置させているから、分散押圧力Bが最も効率的に発熱素子2の配列位置に作用させることができ、より確実に発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4を密着させることができる。
【0024】
図4は本発明の第2実施形態を示す。図において上記カバー10、11は省略している。図4において、積層発熱体5の上、下端部の放熱フィン4は水平で平行状態を呈しており、発熱素子2は3列の配列で4段の積層である。
【0025】
図4に示す第2実施形態においても図3の第2実施形態と同様に上フレーム6及び下フレーム7の放熱フィン4と当接する側(内側)には、積層方向外側に突出た膨出部6a、7aがそれぞれ2箇所設けてある。この空間部6a、7aの形成位置は積層発熱体5の発熱素子2の配列位置以外に対応しており、膨出部6a、7aの中央位置は発熱素子2の配列位置以外の部分の中央位置に一致している。
【0026】
また、上フレーム6及び下フレーム7は積層発熱体5の発熱素子2の配列位置の部分に当接しており、この上フレーム6及び下フレーム7が積層発熱体5に当接している部分と膨出部6a、7aとの境界部6b、7bは各配列位置に発熱素子2のほぼ中央部に位置しているように設定されている。なお、発熱素子2のほぼ中央部とは、発熱素子2の中央に対応する位置から両外側方向に発熱素子2の長さの50%の範囲内に対応する積層発熱体5の部分に当接していればよい。
【0027】
また、1つの膨出部6a、7aはその両端の境界部6b、7b(それぞれ2箇所)で2箇所の発熱素子2の配列位置に跨っているが、本例では配列位置が3列であるため2つの膨出部6a、7aのそれぞれ内側の境界部6b、7bが共通となるなめ、境界部6b、7bの数は上、下それぞれ3箇所となる。従って、配列方向の2つの膨出部6a、7aで3箇所の発熱素子2の配列位置(1〜3列目)に対応している。
【0028】
そして上記した膨出部6a、7aが設けられた上フレーム6及び下フレーム7が積層発熱体5の上端部及び下端部に装着され、図示するように積層発熱体5の両側端部で上フレーム6及び下フレーム7の外側から一対のスプリング8、9が膨出部6a、7aの中央外側に装着される。
【0029】
一対のスプリング8、9の装着により、矢印Aで示す押圧力が膨出部6a、7aの中央に作用し、このスプリング押圧力Aが分散し境界部6b、7bにおいて矢印Bで示す分散押圧力となり、この分散押圧力Bがすべての配列位置(1〜4列目)の発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4を積層方向に押し圧する。そのため発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4間が密着し熱伝導量や電気量の低下を防止できる。
【0030】
なお、図4の第2実施形態に示す3列の配列位置構造の場合では、一対のスプリング8、9による押圧力で3列(箇所)配置の発熱素子2、電極板3及び放熱フィン4を押圧するだけでよく、4列配置構造に比べて中央部(2列目)の配列位置に作用する押圧力が他の位置より大きくなる。従って、従来構造において、積層発熱体5の中央部領域での押圧力が低下する問題を確実に解決できる。
【0031】
上述の結果から、本発明は発熱素子2が3列あるいは4列に配列される構造の電気式ヒータにおいて、最も効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明になる電気式ヒータの全体構成断面図である。
【図2】図1のX部の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の説明に供する一部省構成断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の説明に供する一部省略構成断面図である。
【図5】従来の電気式ヒータの説明に供する断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 保持具
2 発熱素子
3 電極板
4 放熱フィン
5 積層発熱体
6 上フレーム
6a 上フレーム6の膨出部
6b 上フレーム6の境界部
7 下フレーム
7a 上フレーム7の膨出部
7b 上フレーム7の境界部
8、 9 一対のスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3列以上に配列位置された発熱素子と、前記発熱素子に電気的に接触し外部から電力を供給するための電極板と、前記発熱素子によって発生した熱を放熱する放熱フィンを重ねたユニットを複数段積層した積層発熱体と、
前記積層発熱体の積層方向の上端部、下端部に装着される上フレーム、下フレームと、
前記積層発熱体の両側端部で外側から前記上フレーム、下フレーム及び前記積層発熱体を把持して前記発熱素子、前記電極板及び前記放熱フィンを積層方向に押圧する一対の押圧スプリングとを備えた電気式ヒータであって、
前記上フレーム、下フレームには前記積層発熱体の前記配列位置の発熱素子に対応する位置以外の部位に積層方向外側に突出た膨出部が形成されると共に、前記積層発熱体の前記配列位置の発熱素子に対応する位置に前記上フレーム、下フレームが当接され、前記一対の押圧スプリングにより前記上フレーム、下フレームの膨出部を積層方向外側から押圧把持されていることを特徴とする電気式ヒータ。
【請求項2】
前記上フレーム、下フレームにおける前記膨出部と前記配列位置の発熱素子に対応する位置に当接する前記上フレーム、下フレームとの境界部は、前記配列位置の発熱素子のほぼ中央部に位置することを特徴とする請求項1記載の電気式ヒータ。
【請求項3】
前記発熱素子の配列位置の数は3列又4列であることを特徴とする請求項1又2記載の電気式ヒータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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