説明

電気式加熱体及びこの電気式加熱体を用いた熱風排出装置及び電気式冷熱サイクルシミュレータ。

【課題】本発明は、長手状螺旋体よりなる発熱体を筒状断熱体内の円筒硬質断熱体に巻付けることにより、1000℃以上の熱風を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による電気式加熱体は、螺旋状に加工された長手状螺旋体よりなる発熱体(3)が円筒硬質断熱体(2)に螺旋状に巻回された構成であり、この電気式発熱体(3)を複数個用いて熱風排出装置(20)及び電気式冷熱サイクルシミュレータ(30)を形成する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式加熱体及びこの電気式加熱体を用いた熱風排出装置及び電気式冷熱サイクルシミュレータに関し、特に、発熱体自体を長手状螺旋体とし、この発熱体を筒状断熱体内の円筒硬質断熱体に少なくとも1回以上巻付けることにより、1000℃以上の熱風を得ることができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の電気式加熱体及び熱風排出装置としては、例えば、特許文献1等に開示されている熱疲労試験機における加熱ガスを得る加熱手段としては、一般に、図9及び図10で示される筒状の電気式加熱体が採用されている。
【0003】
すなわち、図9及び図10において符号1で示されるものは、全体形状が筒状をなす筒状断熱体であり、この筒状断熱体1の内孔1a内には長手形状の支え治具2が設けられ、この支え治具2の外周2aには、ワイヤ状の発熱体3が螺旋状に巻回され、この発熱体3の両端部3a、3bが前記筒状断熱体1の両端部1A、1B側から外部に導出されている。
【0004】
図9の電気式加熱体10の断面形状は、図10で示される通りであり、前記発熱体3を有する支え治具2の外周と前記筒状断熱体1の内周1bとの間には空間11が形成されている。
前述の電気式加熱体10において、前記発熱体3に通電することにより、前記空間11内が加熱され、前記一端部1A側から図示しない送風機により送風することにより、前記発熱体3との熱交換によって加熱された空気は他端部1B側から高温気体として吹き出される。
【0005】
【特許文献1】実開平5−55046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電気式加熱体及び熱風排出装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、この方式での熱交換は、図10で示されるように、発熱体が流路上で直線的に配置されているため、基本的には発熱体の表面積に大きく依存していた。このため、径の細い発熱体を複数挿入して表面積を大きくしたり、流路に対する発熱体面積を大きくしたりして熱交換率を高くする工夫がなされている。しかし、この方式では、流路上での熱交換率に限界があるため、電気式の発熱体においては約900℃までの熱風を得ることが限界であり、例えば、自動車のエンジンの排気ガスを想定した1000℃以上の熱風を得ることは困難であった。このため自動車の排ガス材料における熱疲労や高温疲労のシミュレーションを実施しようとしても排ガス温度が不足し、実態に合った試験が実施できないと云う課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電気式加熱体は、筒状断熱体内に設けられた円筒硬質断熱体の外周に少なくとも一周以上巻きつけられた発熱体を有する電気式加熱体において、前記発熱体は、螺旋状に加工された長手状螺旋体よりなる構成であり、また、前記発熱体は、前記円筒硬質断熱体の外周に螺旋状に配設されている構成であり、また、本発明による電気式加熱体を用いた熱風排出装置は、請求項1又は2記載の電気式加熱体を用いて熱風を排出させる構成であり、また、前記電気式加熱体を複数個用いて900℃以上の熱風を排出させる構成であり、また、本発明による電気式加熱体を用いた電気式冷熱サイクルシミュレータは、請求項1又は2記載の電気式加熱体を用い、加熱/冷却を繰り返すことによりエンジンの排気ガス温度を再現する構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電気式加熱体及びこの電気式加熱体を用いた熱風排出装置及び電気式冷熱サイクルシミュレータは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒状断熱体内に設けられた円筒硬質断熱体の外周に少なくとも一周以上巻きつけられた発熱体を有する電気式加熱体において、前記発熱体は、螺旋状に加工された長手状螺旋体よりなることにより、筒状断熱体内の流路内における発熱体の表面積が従来よりも飛躍的に大きくなり、流路内で発熱体と熱交換されない空気の流路が従来よりも軽減されて熱交換効率が向上し、1000℃以上の熱風供給を行うことができる。
また、前記発熱体は、前記円筒硬質断熱体の外周に螺旋状に配設されていることによりさらに、発熱体の表面積を大きくすることができる。
また、請求項1又は2記載の電気式加熱体を用いて熱風を排出させることにより高温の熱風を排出できる熱風排出装置を得ることができる。
また、前記電気式加熱体を複数個用いて900℃以上の熱風を排出させることができる。
また、請求項1又は2記載の電気式加熱体を用い、加熱/冷却を繰り返すことによりエンジンの排気ガス温度を再現することにより、電気式冷熱サイクルシミュレータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、発熱体自体を長手状螺旋体とし、この発熱体を筒状断熱体内の円筒硬質断熱体に少なくとも1回以上巻付けることにより、1000℃以上の熱風を得ることができるようにした電気式加熱体及びこの電気式加熱体を用いた熱風排出装置及び電気式冷熱サイクルシミュレータを提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による電気式加熱体及びこの電気式加熱体を用いた熱風排出装置及び電気式冷熱サイクルシミュレータの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において符号1で示されるものは全体形状が筒状をなす筒状断熱体であり、この筒状断熱体1の内孔1a内には、円筒硬質断熱体2がこの内孔1aの軸心位置に配設されている。
【0011】
前記円筒硬質断熱体2の外周2aには、図2で示される発熱体3が少なくとも1周以上巻付けられており、この発熱体3は図2で示されるように構成されている。
すなわち、前記発熱体3は、それ自体が図2で示されるように螺旋状に巻かれて長手状螺旋体3Aとして加工形成されている。
【0012】
前記発熱体3は、前記円筒硬質断熱体2の外周2aに対して、図1の透視斜視図にて示されるように、少なくとも1周以上(実際には複数回)、螺旋状に巻付けられており、そのため、図3で示す軸方向からみた側面図においては、内孔1aの空間11内で発熱体3が軸方向に重合し、この空間内を通過する空気との接触面積が従来よりも大幅に増大し、熱交換効率を大幅に向上させることができる。
【0013】
次に、実施例として本発明例及び比較例における試験条件と試験結果を表1の第1表に示す。試験にはφ1.6mmの12,000mm長さで0.721Ω/mのカンタル線を、外径9.7mm、内径6.0mmに巻いたものを使用した。カンタル線は、図6、7に示すように、内径16mmの石英管にらせん状のカンタル線をセラミックス製等の支え治具2に通して真直ぐに挿入したものを用意した。一方、本発明例は、図1、3に示すようなφ17mmで一方封じされたアルミナ管よりなる円筒硬質断熱体2に巻きつけ、内径37mm、長さ約400mmの石英管よりなる筒状断熱体1に挿入した。
加熱試験は0.5m/分の空気を通風し、両発熱体の入り側と出側の石英管中心に熱電対を装着し、入り側の温度に対する出側温度の温度上昇量を測定した。なお、入り側の排ガスには、市販の加熱体(図示せず)を使用して約800℃にコントロールした熱風を用い、最終的な出側温度の温度上昇量を測定した。
これらの試験結果を表1の第1表に示す。本発明例のA1〜A3は発熱体流体がらせん状になっているため、900℃及び1000℃以上の出側排ガス温度が得られているのに対し、比較例のストレート状の発熱体3では出側排ガス温度が900℃未満であり、900℃以上の排ガス温度が得られていてないことがわかる。
【0014】
【表1】

【0015】
次に、図4から図6で示される構成は、本発明による前記電気式加熱体10を四個用いて四気筒用として構成した熱風排出装置20であり、この熱風排出装置20は、全体形状が箱型をなす筐体21と、前記筐体21内に設けられエアフィルタ22と送風機23からなる四個の送風体24と、前記筐体21の上面25上に並設された周知の四個のカルタル線ヒータ26と、前記上面25に設けられ前記各カンタル線ヒータ26に直列接続された図1の四個の電気式加熱体10と、から構成され、前記各電気式加熱体10の出口10aは、エンジンのエキゾーストマニホールド(図示せず)に接続できるような形状となるように、筐体21の中心線10bに向けて互いに寄る状態で構成されている。
【0016】
前述の熱風排出装置20において、前記各電気式加熱体10の出口10aに、工場又は試作で生産されたエンジンのエキゾーストマニホールド(図示せず)を接続し、各カンタル線ヒータ26及び各電気式加熱体10に通電した状態で前記各送風機23を作動させると、各送風機23から送られた空気は、各エアーフィルタ22を介して各カンタル線ヒータ26で加熱された後に各電気式加熱体10で加熱され、1000℃以上の高温状態で各出口10aから前記エキゾーストマニホールドへ供給されて、加熱耐久試験が行われる。
【0017】
次に、図7及び図8で示される構成は、本発明による前記電気式加熱体10を四個用いて四気筒用として構成した電気式冷熱サイクルシミュレータ30であり、この電気式冷熱サイクルシミュレータ30は、全体形状が箱型をなす筐体31と、前記筐体31内に設けられた図1の四個の電気式加熱体10と、前記筐体31の背面31aに並設された周知の四個のカンタル線ヒータ26と、から構成され、前記各カンタル線ヒータ26は前記各電気式加熱体10に直列接続され、各電気式加熱体10の各出口10aは、エンジンのエキゾーストマニホールド(図示せず)に接続できるような形状となるように、筐体21の中心10bに向けて互いに寄る状態で構成されている。
【0018】
前述の電気式冷熱サイクルシミュレータ30において、前記各出口10aに、工場又は試作で生産されたエンジンのエキゾーストマニホールド(図示せず)を接続し、各カンタル線26及び各電気式加熱体10に通電した状態で、図示しない各送風機を作動させると、各送風機から送られた空気は、各カンタル線ヒータ26で加熱された後に各電気式加熱体10で加熱され、1000℃以上の高温状態で各出口10aから前記エキゾーストマニホールドへ供給され、この加熱と、各カンタル線ヒータ26及び電気式加熱体10の通電をオフとすることによって、常温の空気で各出口10aから前述のエキゾーストマニホールドに送られ、このエキゾーストマニホールドが冷却される。
【0019】
従って、前述の加熱と冷却状態を、例えば、繰り返すことにより、前記電気式冷熱サイクルシミュレータ30の冷熱サイクルを行うことができ、この電気式冷熱サイクルシミュレータ30に接続されたエキゾーストマニホールドの実車における稼動状態に近い加熱及び冷却状態を再現して繰り返す試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による電気式加熱体を示す透過斜視図である。
【図2】図1の発熱体を示す正面図である。
【図3】図1の横断面図である。
【図4】図1の電気式加熱体を組込んだ熱風排出装置を示す正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】図1の電気式加熱体を組込んだ電気式冷熱サイクルシミュレータを示す平面図である。
【図8】図7の正面図である。
【図9】従来の電気式加熱体を示す透過斜視図である。
【図10】図9の横断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 筒状断熱体
2 円筒硬質断熱体
3 発熱体
3A 長手状螺旋体
10 電気式加熱体
10a 出口
11 空間
20 熱風排出装置
21 筐体
22 エアフィルタ
23 送風機
24 送風体
25 上面
26 カンタル線ヒータ
30 電気式冷熱サイクルシミュレータ
31 筐体
31a 背面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状断熱体(1)内に設けられた円筒硬質断熱体(2)の外周に少なくとも一周以上巻きつけられた発熱体(3)を有する電気式加熱体において、
前記発熱体(3)は、螺旋状に加工された長手状螺旋体(3A)よりなることを特徴とする電気式加熱体。
【請求項2】
前記発熱体(3)は、前記円筒硬質断熱体(2)の外周に螺旋状に配設されていることを特徴とする請求項1記載の電気式加熱体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気式加熱体(10)を用いて熱風を排出させることを特徴とする電気式加熱体を用いた熱風排出装置。
【請求項4】
前記電気式加熱体(10)を複数個用いて900℃以上の熱風を排出させることを特徴とする請求項3記載の電気式加熱体を用いた熱風排出装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の電気式加熱体(10)を用い、加熱/冷却を繰り返すことによりエンジンの排気ガス温度を再現することを特徴とする電気式加熱体を用いた電気式冷熱サイクルシミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−43809(P2010−43809A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209781(P2008−209781)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】