説明

電気接続箱

【課題】ケースとカバーとの間に生じるガタを詰めることにより異音の発生を低減できる電気接続箱を提供する。
【解決手段】電気接続箱は、複数の部品を収容したケースと、ケースに組み付けられて、前記部品に接続された電線を内側に位置付けるとともに該電線の配索方向を規制するカバー1とを備えている。カバー1には、カバー本体11と、カバー本体11からカバー1の組み付け方向に延び、ケースに設けられたロック突起に係止する孔を有するロック部12と、カバー本体11の縁15からカバー1の組み付け方向に突出し、ロック部12の孔がロック突起に係止した状態でケースに弾性接触する突出部13と、が設けられている。カバー本体11における突出部13の両側には一対のスリット14が形成されている。また、カバー本体11における突出部13を含んだ部分は他の部分よりも薄肉に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電気接続箱に関するものであり、詳しくは、複数の部品を収容したケースに組み付けられて、前記部品に接続された電線の配索方向を規制する「カバー」を備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には多種多様な電子機器が搭載されている。これら多種多様な電子機器に電力供給及び信号伝達を行うために、前記自動車には、適宜箇所に電気接続箱が配置されている。また、本発明では、ジャンクションブロック(ジャンクションボックスとも言う。)、ヒューズブロック(ヒューズボックスとも言う。)、リレーブロック(リレーボックスとも言う。)を、総称して以下電気接続箱と呼ぶ。
【0003】
この電気接続箱は、車種によりいろいろな構造のものが用いられているが、例えば、図7に示すように、電線の配索方向を規制する「カバー」を備えたものがある(特許文献1を参照。)。
【0004】
図7に示す電気接続箱210は、複数の部品を収容したケース211と、該ケース211の上下面に被せられるアッパーカバー212及びロアカバーを備えている。前記ロアカバーは、左右に二分割された第1ロアカバー217、及び、上記「カバー」としての第2ロアカバー218で構成されている。すなわち、第2ロアカバー218は、ケース211に収容された部品に接続された電線群Wを内側に位置付けるとともに該電線群Wの配索方向を規制するものである。
【0005】
上記第2ロアカバー218には、ケース211に設けられた被ロック部244に係止する上部ロック部238、及び、第1ロアカバー217に設けられた被ロック部224に係止する側部ロック部239が設けられている。これら上部ロック部238及び被ロック部244は、一方が突起であり、他方が孔である。同様に、側部ロック部239及び被ロック部224も、一方が突起であり、他方が孔である。これら突起と孔とには、製造上の理由及び係止する際の構造上の理由からクリアランスが設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−282320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の電気接続箱210においては、第2ロアカバー218と、第1ロアカバー217及びケース211と、の間にガタが生じていたことから、自動車の走行時等に第2ロアカバー218が振動して異音が発生してしまうという問題があった。また、前記ガタは、上述したロック構造(上部ロック部238と被ロック部244、側部ロック部239と被ロック部224)におけるクリアランスに起因するものである。
【0008】
したがって、本発明は、ケースとカバーとの間に生じるガタを詰めることにより異音の発生を低減できる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、複数の部品を収容したケースと、前記ケースに組み付けられて、前記部品に接続された電線を内側に位置付けるとともに該電線の配索方向を規制するカバーと、を備えた電気接続箱において、前記カバーには、カバー本体と、前記カバー本体に設けられ、前記ケースに係止するロック部と、前記カバー本体の縁から前記カバーの組み付け方向に突出し、前記ロック部が前記ケースに係止した状態で前記ケースに弾性接触する突出部と、が設けられていることを特徴とする電気接続箱である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記カバー本体における前記突出部の両側に一対のスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記カバー本体における前記突出部を含んだ部分が他の部分よりも薄肉に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、前記カバーには、カバー本体と、前記カバー本体に設けられ、前記ケースに係止するロック部と、前記カバー本体の縁から前記カバーの組み付け方向に突出し、前記ロック部が前記ケースに係止した状態で前記ケースに弾性接触する突出部と、が設けられているので、この突出部によってケースとカバーとの間に生じるガタを詰めることができ、そのために、カバーの振動、及び、該振動による異音の発生を低減することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、前記カバー本体における前記突出部の両側に一対のスリットが形成されているので、これら一対のスリット間の部分を撓み易くすることができ、カバーをケースに組み付ける際の挿入力を低減させることができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、前記カバー本体における前記突出部を含んだ部分が他の部分よりも薄肉に形成されているので、前記突出部を含んだ部分を撓み易くすることができ、カバーをケースに組み付ける際の挿入力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電気接続箱を示す平面図である。
【図2】図1に示されたカバーの斜視図である。
【図3】図2に示されたカバーを矢印B方向から見た平面図である。
【図4】図3中のC−C線に沿った断面図である。
【図5】図1中のA部に設けられた突出部の作用効果を説明する説明図であり、ロック部の孔がロック突起に係止する直前におけるA部の状態を示す図である。
【図6】図1中のA部に設けられた突出部の作用効果を説明する説明図であり、ロック部の孔がロック突起に係止している際におけるA部の状態を示す図である。
【図7】従来のカバーを備えた電気接続箱を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態にかかる「電気接続箱」を図1〜6を参照して説明する。
【0017】
本発明の電気接続箱10は、自動車に搭載されて、前記自動車に搭載された電子機器に対して電力供給及び信号伝達を行うものである。この電気接続箱10は、図1に示すように、矩形箱状に形成された合成樹脂製のケース2と、ケース2に収容された基板及び複数の部品と、ケース2に組み付けられて、前記部品に接続された電線5を内側に位置付けるとともに該電線5の配索方向を規制するカバー1と、を備えている。
【0018】
上記電線5は、図1に示すワイヤハーネス6を構成する電線である。ワイヤハーネス6は、複数の電線5と、この電線束の端末に設けられたコネクタ4と、で構成されている。また、本実施形態のカバー1は、ワイヤハーネス6の複数の電線5、すなわち電線束、を内側に位置付けるとともに該電線束の配索方向を規制する。
【0019】
また、図1中の符号3は、ケース2内の基板に取り付けられたコネクタ嵌合部3である。このコネクタ嵌合部3は、前記基板に電気接続された複数の端子と、これら複数の端子を収容した合成樹脂製のハウジングと、で構成されている。前記ハウジングは、その一端部がケース2内に配置され、その他端部がケース2外に配置されている。このコネクタ嵌合部3には、上述したワイヤハーネス6のコネクタ4が差し込まれる。すなわち、ワイヤハーネス6の電線5は、コネクタ4及びコネクタ嵌合部3を介して前記基板に電気接続される。
【0020】
また、前記「基板」、前記「コネクタ嵌合部3」は、特許請求の範囲の「複数の部品」に含まれている。
【0021】
上記カバー1は、合成樹脂で構成されている。図2,3に示すように、このカバー1には、カバー本体11と、カバー本体11からカバー1の組み付け方向に延び、ケース2に設けられたロック突起22に係止する孔12bを有するロック部12と、カバー本体11の縁15からカバー1の組み付け方向に突出し、ロック部12の孔12bがロック突起22に係止した状態でケース2に弾性接触する突出部13と、が設けられている。
【0022】
上記カバー本体11は、図2に示すように、略長方形板状の板壁11aと、板壁11aの外縁から立設した4つの側壁11b,11c,11d,11eと、で構成されている。上記「カバー本体11の縁15」とは、4つの側壁11b,11c,11d,11eにおける板壁11aから最も離れた部位を意味している。また、ワイヤハーネス6の電線束は、カバー本体11の内面に当たることによって配索方向が規制される。
【0023】
上記ロック部12は、カバー本体11の縁15からカバー1の組み付け方向に板状に延びた延設部12aと、延設部12aに貫通形成された孔12bと、で構成されている。前記「カバー1の組み付け方向」とは、板壁11aから縁15に向かう方向である。前記ロック突起22は、ケース2の外表面から凸に形成された突起である。また、本発明では、図1に示すように、孔12b内にロック突起22が位置付けられることを、「ロック部12の孔12bがロック突起22に係止する」と表現する。
【0024】
上記ロック部12は以下のようにしてロック突起22に係止する。すなわち、カバー1の組み付け時に、カバー1がケース2に近付けられることで延設部12aの先端がロック突起22上に一旦乗り上げ、そして、カバー1がさらにケース2に近付けられることで延設部12aの先端がロック突起22を乗り越えて、孔12bがロック突起22に係止する。このようなロック構造においては、延設部12a先端がロック突起22を乗り越えて孔12bがロック突起22に係止することを可能とするために、孔12bの前記「組み付け方向」の寸法が、ロック突起22の前記「組み付け方向」の寸法よりも大きく形成されている必要がある。また、これ以外に部品公差も考慮する必要があり、ロック突起22と孔12bとには所定のクリアランスが設定されている。
【0025】
上述したロック部12は、全部で4つ設けられており、互いに相対する一対の側壁11b,11cの各縁15から2つずつ延設されている。また、本実施形態では、隣り合う2つのロック部12同士が連結されている。これら4つのロック部12の孔12bが各ロック突起22に係止することによってカバー1がケース2に組み付けられる。また、本実施形態のカバー1は、ケース2に組み付けられることで、電線5の配索方向を規制すると同時に、互いに嵌合したコネクタ4及びコネクタ嵌合部3を覆う。
【0026】
上記突出部13は、図3に示すように、側壁11dの縁15から突出している。突出部13は、縁15から離れた先端が尖った三角形状に形成されている。この突出部13は、図5,6に示すように、ロック部12の孔12bがロック突起22に係止した状態でケース2の端面21に弾性接触する。本発明では、このように、突出部13によってケース2とカバー1との間に生じるガタ、特にカバー1の組み付け方向のガタ、を詰めることができ、そのために、カバー1の振動、及び、該振動による異音の発生を低減することができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、カバー本体11における突出部13の両側に一対のスリット14が形成されている。また、図4に示すように、カバー本体11における突出部13を含んだ部分が他の部分よりも薄肉に形成されている。これらのことによって、「一対のスリット14間の部分」及び「突出部13を含んだ部分」を撓み易くすることができる。よって、カバー1をケース2に組み付ける際、すなわち、ロック部12の孔12bをロック突起22に係止させる際の挿入力(カバー1をケース2側に押す力)を低減させることができる。
【0028】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 カバー
2 ケース
5 電線
10 電気接続箱
11 カバー本体
12 ロック部
12b 孔
13 突出部
14 スリット
15 縁
22 ロック突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を収容したケースと、前記ケースに組み付けられて、前記部品に接続された電線を内側に位置付けるとともに該電線の配索方向を規制するカバーと、を備えた電気接続箱において、
前記カバーには、カバー本体と、前記カバー本体に設けられ、前記ケースに係止するロック部と、前記カバー本体の縁から前記カバーの組み付け方向に突出し、前記ロック部が前記ケースに係止した状態で前記ケースに弾性接触する突出部と、が設けられている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記カバー本体における前記突出部の両側に一対のスリットが形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記カバー本体における前記突出部を含んだ部分が他の部分よりも薄肉に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62962(P2013−62962A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200234(P2011−200234)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】