説明

電気接触子及び電気部品用ソケット

【課題】非常に細い場合でも容易に製造できるコンタクトピンを提供する。
【解決手段】導電性板材を円筒状に曲げ加工すると共に上側開口端を縮径することによって筒部20bを形成し、この筒部20bの上側開口端20dよりも小さい径の接触部20gと上側開口端20dよりも大きい径の本体部20hとを有するプランジャ20fを筒部20b内に上下動自在に挿入し、このプランジャ20fを付勢して接触部20gを上側開口端20dから突出させるためのコイルスプリング20iを筒部20b内に挿入し、筒部20bの下側開口端20eに一体に形成された接触片20kをこの下側開口端を塞ぐ方向に曲げ加工することによって形成したコンタクトピン20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品に接続される電気接触子及び、この電気接触子が配設された電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の電気接触子としては、筒体部材の中空部の中に、コイルスプリング及びプランジャを挿入してなるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなものにあっては、電気部品等がプランジャを押すと、コイルスプリングが圧縮され、この圧縮力によって、電気部品とプランジャとが所定の接触圧で接触し、筒体部材と配線基板とが所定の接触圧で接触する。これにより、電気部品と配線基板とが、電気接触子を介して電気的に接続される。
【0004】
従来、このような金属製の筒体部材の中空部は、例えば金属棒をドリルで切削すること等によって、形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−316023号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ICパッケージの端子のピッチが狭くなる傾向にあり、このため、例えば直径0.28mm程度の非常に細い電気接触子が必要な場合もある。
【0007】
しかしながら、このような非常に細い電気接触子において、金属棒を切削することによって筒体部材に中空部を形成するためには、ドリルも非常に細いものを用いなければならないので破損し易く、ある程度の深さを有する中空部を形成することは非常に難しいものである。
【0008】
そこで、この発明は、非常に細い場合でも容易に製造することができる電気接触子及びこれを用いた電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、第1の発明は、導電性板材を円筒状に曲げ加工すると共に一端側の開口端を縮径してなる筒部を有する筒体部材と、該筒部の前記一端側の開口端よりも小さい径の第1接触部と該開口端よりも大きい径の本体部とを有し、該筒部内に上下動自在に挿入された第1接触部材と、該第1接触部材を付勢して前記第1接触部を前記一端側の開口端から突出させるために、該筒部内に挿入されたコイルスプリングと、前記筒部の、他端側の開口端側に該筒部と一体に形成され、該他端側の開口端を塞ぐ方向に曲げ加工された第2接触部とを備える電気接触子としたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記筒部の、前記他端側の開口端側に該筒部と一体に形成され、該他端側の開口端を塞ぐ方向に曲げ加工されて前記コイルスプリングの一端に当接する固定部をさらに備え、前記第2接触部が、弾性変形可能で、弾性変形時に該固定部に当接するように曲げ加工されたことにある。
【0011】
他の特徴は、前記第2接触部が、外側に向けて突出する略半球状の突出部を備えることにある。
【0012】
第2の発明は、配線基板上に配置され、上側に電気部品が収容されるソケット本体と、該ソケット本体に複数設けられ、前記電気部品に前記第1接触部又は前記第2接触部の一方が接触し且つ前記配線基板に前記第1接触部又は前記第2接触部の他方が接触する、第1の発明の電気接触子とを有している電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1、第2の発明によれば、電気接触子の筒部及び第2接触部を、導電性板材を円筒状に曲げ加工すると共に一端側の開口端を縮径し、他端側の開口端側に該筒部と一体に形成された第2接触部を該他端側の開口端を塞ぐ方向に曲げ加工することによって形成したので、電気接触子が非常に細い場合でも容易に製造することができる。
【0014】
他の特徴によれば、コイルスプリングの一端に当接する固定部をさらに設けると共に、第2接触部を弾性変形時に固定部に当接するように曲げ加工したので、固定部と第2接触部とを二枚重ねとすることで強度を向上させることができると共に、この第2接触部に弾性を持たせることにより配線基板等に対して良好な接触を確保でき、しかも、第2接触部を固定部に接触させることで導通性能を向上させることができる。
【0015】
他の特徴によれば、外側に突出する略半球状の突出部を第2接触部に設けたので、第2接触部による接触をほぼ点接触として、良好な接触を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態に係るICソケットの正面図である。
【図2】同実施の形態に係るコンタクトピンを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図3】同実施の形態に係る製造工程を示す部分断面図である。
【図4】同実施の形態に係る動作を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1〜図4には、この発明の実施の形態を示す。
【0019】
まず構成を説明すると、図1中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、配線基板P上に配設されるようになっており、「電気部品」であるICパッケージ12(図4(c)参照)等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージ12の球状端子12aとその配線基板Pとの電気的接続を図るものである。
【0020】
ICソケット11は、図1に示すように、配線基板P上に固定され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14を有している。
【0021】
より詳しくは、そのソケット本体14は、四角形の枠形状の外枠18内にコンタクトモジュール19が配設され、外枠18とコンタクトモジュール19との間にはスプリング21が配設されている。
【0022】
このコンタクトモジュール19には、複数の「電気接触子」であるコンタクトピン20が配設されると共に、上側にICパッケージが収容されるようになっている。このコンタクトモジュール19は、図4に示すように、上側保持部材22、下側保持部材23、フローティングプレート24等を備えている。この上側保持部材22と下側保持部材23とは所定の間隔で保持され、この上側保持部材22の上側には、フローティングプレート24が、図示省略のスプリングにより上方に付勢されている。そして、これら上側保持部材22、下側保持部材23、フローティングプレート24の貫通孔22a、23a、24aにコンタクトピン20が挿通されて配設されている。
【0023】
コンタクトピン20は、図2に示すように、筒体部材20aと、「第1接触部材」としてのプランジャ20fと、コイルスプリング20iとを有し、この筒体部材20aには、筒体20bと、「固定部」としての固定片20jと、「第2接触部」としての接触片20kとが一体に形成されている。
【0024】
筒体部材20aは、導電性板材の両端面が接合面20nで相互に当接するように円筒状に曲げ加工された筒部20bを有し、この筒部20bの上側開口端(一端側の開口端)20d側が縮径されている。この筒部20bの側面には、複数の突起20cが設けられている。
【0025】
プランジャ20fは、筒部20bの上側開口端20dよりも小さい径の接触部20gと、上側開口端20dよりも大きい径の本体部20hとを有し、筒部20b内に上下動自在に挿入される。この接触部20gは、ICパッケージ12の球状端子12aに当接するようになっている。
【0026】
コイルスプリング20iは、筒部20b内に挿入され、プランジャ20fを上方向に付勢して接触部20gを上側開口端20dから突出させる。
【0027】
固定片20jは、図3(e)に示すように略円板形状を呈し、筒部20bの下側開口端(他端側の開口端)20eに筒部20bと一体に形成され、この下側開口端20eを塞ぐ方向に折り曲げられている。これにより、固定片20jの上面は、コイルスプリング20iの下端に当接する。
【0028】
接触片20kは、筒部20bの下側開口端20eに筒部20bと一体に形成され、下側開口端20eを塞ぐ方向に弾性変形可能に折り曲げられている。接触片20kの下面には、下側(外側)に向けて突出する略半球状の突出部20mが設けられている。接触片20kは開口と直角な状態ではなく、少し開いた状態で安定している(図2(b)等参照)。これにより、接触片20kは、弾性変形可能な状態になる。接触片20kは、配線基板Pの電極13に押圧されると弾性変形し、固定片20jに当接する(図4(b)参照)。
【0029】
次に、コンタクトピン20の製造工程について、図3を用いて説明する。
【0030】
まず、打ち抜き加工等により、導電性板材から、筒部20b、固定片20j及び接触片20kとなる部分が一体形成された平板を作製する。
【0031】
さらに、この平板にプレス加工等を施すことで、筒部20bの突起20c及び接触片20kの突出部20mを形成する。
【0032】
そして、この平板を筒状に曲げ加工することにより、図3(a)及び(e)に示したような筒部20bを作製する。
【0033】
次に、プランジャ20f及びコイルスプリング20iを挿入し、その後、図3(b)に示したように、固定片20jとなる部分を、下側開口端20eを塞ぐ方向に折り曲げる。
【0034】
さらに、図3(c)に示したように、接触片20kとなる部分を、下側開口端20eを塞ぐ方向に折り曲げる。この折り曲げ加工では、固定片20jがあるために接触片20kが90゜近傍までしか折り曲げられず、このため、折り曲げ加工の後は、接触片20kが下側開口端20eから少し開いた状態で安定する(図3(d)参照)。
【0035】
次に、かかるICソケット11の使用方法について、図4を用いて説明する。
【0036】
まず、ICソケット11のコンタクトモジュール19を配線基板Pへ配設する前の状態では、図4(a)に示すように、筒部20bの突起20cが下側保持部材23の貫通孔23aの上側外縁部分に係止され、これにより、コンタクトピン20は下側保持部材23に保持される。また、この状態では、接触片20kが下側開口端20eから少し開いた状態になっている。
【0037】
そして、コンタクトモジュール19を配線基板Pへ配設する際には、コンタクトピン20の接触片20kが、配線基板Pの電極13に当接する。その後、さらに上側保持部材22及び下側保持部材23が配線基板Pに接近すると、筒部20bの突起20cが、上側保持部材22の貫通孔22aの下側外縁部分に当接し、この下側外縁部分がコンタクトピン20を下方向に押圧する。これにより、図4(b)に示すように、コンタクトピン20の接触片20kが弾性変形して、固定片20jに押し当てられる。
【0038】
続いて、ICソケット11のフローティングプレート24上にICパッケージ12がセットされ、ICパッケージ12が下方に押圧されると、フローティングプレート24がスプリングの付勢力に抗して下降され、このICパッケージ12の球状端子12aが、プランジャ20fの接触部20gに当接し、この接触部20gを押圧する。これにより、プランジャ20fは、コイルスプリング20iの付勢力に抗して下方に押し下げられ、図4(c)に示したような状態になる。このようにして、ICパッケージ12の球状端子12aと配線基板Pの電極13とが、電気的に接続される。
【0039】
この状態で、ICパッケージ12に電流を流してバーンイン試験等を行う。
【0040】
このように、上記実施の形態では、コンタクトピン20の筒部20b及び接触片20kを、導電性板材を円筒状に曲げ加工すると共に上側開口端20dを縮径すること及び、筒部20bの下側開口端20eに接触片20kを一体に形成して下側開口端20eを塞ぐ方向に曲げ加工することによって、形成した。このため、非常に細いコンタクトピン20を、容易に製造することができる。
【0041】
また、上記実施の形態では、接触片20kが固定片20jを押し当てる構成により、押圧力が固定片20j及び接触片20kに分散するので、接触片20kの強度を向上させることができる。
【0042】
また、接触片20kが固定片20jに当接しているため、筒部20b全体に電流が流れ易くなり、コンタクトピン20の導通性能が向上する。
【0043】
さらには、接触片20kを弾性変形可能に形成したので、配線基板Pの表面の凹凸等を吸収することができ、このため接触片20kと電極13との接触を良好なものにできる。
【0044】
なお、従来においては、上下両端側にプランジャを設けたコンタクトピンが知られている。しかし、両端側にプランジャを設けると、コンタクトピンの全長が非常に長くなってしまい、このためにコンタクトピンの高周波特性が悪化してしまう。コンタクトピンの全長を短くする方法としては、コイルスプリングを短くする方法も考えられるが、あまりに短くすると、接触部の弾性力を十分に大きくすることができない。これに対して、上記実施の形態では、上記一方のプランジャの代りに、接触片20kを、折り曲げ加工により弾性変形可能に形成したので、コイルスプリング20iの全長を従来よりも長くして弾性力を確保できると共に、コンタクトピン20の全長を短くすることができる。
【0045】
上記実施の形態では、「電気部品用ソケット」として、ICソケット11に、この発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。
【0046】
また、上記実施の形態では、プランジャ20fを上側にし且つ接触片20kを下側にした状態で使用したが、接触片20kを上側にし且つプランジャ20fを下側にした状態で使用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ICパッケージ(電気部品)
12a 球状端子
13 電極
14 ソケット本体
18 外枠
19 コンタクトモジュール
20 コンタクトピン(電気接触子)
20a 筒体部材
20b 筒体
20c 突起
20d 上側開口端(一端側の開口端)
20e 下側開口端(他端側の開口端)
20f プランジャ(第1接触部材)
20g 接触部
20h 本体部
20i コイルスプリング
20j 固定片(固定部)
20k 接触片(第2接触部)
20m 突出部
21 スプリング
22 上側保持部材
23 下側保持部材
24 フローティングプレート
22a, 23a, 24a 貫通孔
P 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性板材を円筒状に曲げ加工すると共に一端側の開口端を縮径してなる筒部を有する筒体部材と、
該筒部の前記一端側の開口端よりも小さい径の第1接触部と該開口端よりも大きい径の本体部とを有し、該筒部内に上下動自在に挿入された第1接触部材と、
該第1接触部材を付勢して前記第1接触部を前記一端側の開口端から突出させるために、該筒部内に挿入されたコイルスプリングと、
前記筒部の、他端側の開口端側に該筒部と一体に形成され、該他端側の開口端を塞ぐ方向に曲げ加工された第2接触部と、
を備えることを特徴とする電気接触子。
【請求項2】
前記筒部の、前記他端側の開口端側に該筒部と一体に形成され、該他端側の開口端を塞ぐ方向に曲げ加工されて前記コイルスプリングの一端に当接する固定部をさらに備え、
前記第2接触部が、弾性変形可能で、弾性変形時に該固定部に当接するように曲げ加工された、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気接触子。
【請求項3】
前記第2接触部が、外側に向けて突出する略半球状の突出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気接触子。
【請求項4】
配線基板上に配置され、上側に電気部品が収容されるソケット本体と、
該ソケット本体に複数設けられ、前記電気部品に前記第1接触部又は前記第2接触部の一方が接触し且つ前記配線基板に前記第1接触部又は前記第2接触部の他方が接触する、請求項1乃至3の何れか一つに記載の電気接触子と、
を有していることを特徴とする電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109129(P2012−109129A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257461(P2010−257461)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】