説明

電気機器及びタイヤ状態監視装置

【課題】電池の電極の表面に対する析出物の付着を抑制して電池の長寿命化を図ることが可能な電気機器及びタイヤ状態監視装置を提供する。
【解決手段】電解質中に、集電体上に正極活物質層が固着された正極と、別の集電体上に負極活物質層が固着された負極とが、セパレータを介して互いに対向するように配置される電池18に対して、強制的に電流を流すリフレッシュ動作を行うリフレッシュ回路17を設ける。リフレッシュ動作後に電池の起電力を計測し、起電力が回復されていない場合には、その旨の報知信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器及びタイヤ状態監視装置に関する。特に本発明は、電気機器に用いられる電池の長寿命化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電気機器に用いられるリチウム電池等の電池の内部には、一対の電極、すなわち正極及び負極が設けられている。各電極は、集電体とその集電体に固着された活物質層とを有している。集電体は活物質層にて発生するキャリアを集めるように機能する。集電体から活物質層が剥離すると、電池の充放電容量が低下して、電池性能の低下を招く。そこで、集電体の表面にクロメート処理やコロナ放電処理を施すことによって集電体と活物質層との接着力を向上させるようにした電池が提案されている(例えば、特許文献1,2)。また、集電体の表面にベーマイト処理を施すことによって該集電体と活物質層との接着力を向上させるようにした電池も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開昭56−57261号公報
【特許文献2】特開平7−135023号公報
【特許文献3】特開2000−48822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記電池においては、時間の経過に従い正極及び負極の各表面に析出物が堆積及び付着して被膜を形成することが知られている。前記析出物が正極及び負極に付着すると、電池の充放電容量が低下する。よって、上記したように集電体に対する活物質層の接着力を向上させたとしても、電池の充放電容量が経時的に低下して電池の寿命が短くなることは避けられない。
【0004】
本発明の目的は、電池の電極の表面に対する析出物の付着を抑制して電池の長寿命化を図ることが可能な電気機器及びタイヤ状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目標を達成するため、本願発明は、一対の電極を有する電池と、該電池によって駆動される負荷装置とを備え、各電極が集電体と活物質層とを有する電気機器において、前記電極に付着する付着物を除去すべく、前記電極間に強制的に電流を流すリフレッシュ動作を実行するリフレッシュ回路を備えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、一対の電極の間に強制的に電流が供給されるため、電極に付着した付着物が除去される。この結果、充放電容量の低下が阻止されるので、電池の長寿命化が図られる。
【0007】
好ましくは、前記リフレッシュ回路は、前記リフレッシュ動作時において、前記電極間に前記負荷装置の駆動時よりも大きな電流を流すように構成される。
これによれば、電極に付着した付着物が効果的に除去される。
【0008】
前記リフレッシュ回路は、前記負荷装置と並列に前記電池に接続される負荷部と、前記負荷部及び前記電池を含む閉回路を形成するように動作するスイッチとを備えていてもよい。
【0009】
これによれば、スイッチを動作させることによって電池に電流が供給されることにより
、電池がリフレッシュされる。
【0010】
前記負荷部は、抵抗または電流回路であってもよい。
これによれば、負荷部が抵抗または定電流回路である場合には、簡単な構成でリフレッシュ回路を実現できる。この結果、電気機器を小型化させることも可能となる。さらに、負荷部として定電流回路を使用した場合では、スイッチを動作させることによって、定電流回路には、リフレッシュ回路の両端にかかる電圧の大きさに関係なく、一定の電流が流れる。
【0011】
前記リフレッシュ回路は、予め定められた条件が成立したときに前記リフレッシュ動作を実行してもよい。
これによれば、予め定められた条件が、例えば予め定められた期間が経過する度に成立されるとした場合、電池は所定期間毎に定期的にリフレッシュされる。この結果、負荷装置が未使用状態であっても、電池の電極に対する付着物の堆積が抑制される。
【0012】
前記リフレッシュ回路は、予め定められた期間が経過する度に定期的に前記リフレッシュ動作を実行してもよい。
これによれば、電池は所定期間毎に定期的にリフレッシュされるので、負荷装置が未使用状態であっても、電池の電極に対する付着物の堆積が抑制される。
【0013】
前記負荷装置の駆動状態において前記電池の起電力を検出する電圧センサをさらに備え、前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記リフレッシュ回路は前記リフレッシュ動作を実行してもよい。
これによれば、電池の起電力が精度良く検出されるので、電池の起電力が負荷装置を駆動可能な値であるか否かを正確に判定することができる。
【0014】
前記リフレッシュ動作の実行後に、前記負荷装置の駆動状態において前記電池の起電力を検出する電圧センサと、前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記電池が容量不足であることを判定する判定部とをさらに備えてもよい。
これによれば、電池のリフレッシュが、必要なときに適切に行われる。
【0015】
本願発明の電気機器は、車両のタイヤの状態を監視するタイヤ状態監視装置における送信機であることを要旨とする。
これによれば、タイヤ状態監視装置に内蔵される電池について、その電極に付着した付着物が除去される。
【0016】
本願発明のタイヤ状態監視装置は、車両のタイヤの内部に配置され、該タイヤの状態を検出するとともに検出したタイヤ状態を示す信号を送信する送信機と、前記車両の車体に搭載され、前記タイヤ状態を示す信号を受信する受信機とを備えるタイヤ状態監視装置において、前記送信機は、一対の電極を有する電池と、該電池によって駆動され、タイヤ状態の検出及び信号の送信を行う負荷装置とを備え、各電極は集電体と活物質層とを有し、前記送信機はさらに、前記電極に付着する付着物を除去すべく、前記電極間に強制的に電流を流すリフレッシュ動作を実行するリフレッシュ回路を備えることを要旨とする。
【0017】
これによれば、車両のタイヤ状態を監視する監視装置の送信機を駆動させる電池について、その電極に付着した付着物が除去される。従って、送信機は、長時間にわたって安定した動作を維持できる。
【0018】
前記送信機は、前記リフレッシュ動作の実行後に、前記負荷装置の駆動状態において前
記電池の起電力を検出する電圧センサを備え、前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記送信機は電池が容量不足であることを示す報知信号を送信し、前記受信機は、前記報知信号の受信に応じて、前記電池の容量不足を報知する報知器を備えてもよい。
これによれば、車両の搭乗者は送信機を交換すべきであることを的確に把握する。
【0019】
前記受信機は、前記リフレッシュ動作の実行を指令する指令信号を送信する送信部を備え、前記送信機は前記指令信号を受信する受信部を備え、該受信部が指令信号を受信したときに前記リフレッシュ回路がリフレッシュ動作を実行してもよい。
【0020】
これによれば、電池のリフレッシュ動作を外部から制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の電気機器をタイヤ状態監視装置の送信機に具体化した一実施形態を、図1〜図6に基づいて説明する。図1に示すように、タイヤ状態監視装置は、車両1の4つのタイヤ2にそれぞれ装着される送信機3と、車両1の車体4に設けられる1つの受信機5とを備えている。
【0022】
各送信機3は、対応するタイヤ2の内部に位置するように、ホイールに固定されている。各送信機3は、対応するタイヤ2の状態、すなわち対応するタイヤ2の内部空気圧及び内部温度を計測して、その計測されたタイヤ状態を示すデータを含む信号を受信機5に無線送信する。なお、タイヤ状態の計測動作は第1の所定時間毎に定期的に行われ、送信動作は前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間毎に定期的に行われる。但し、計測されたタイヤ状態が異常を示す場合(例えば、タイヤ2の内部圧力の異常低下、タイヤ2の内部圧力の急変)、送信機3は定期的な送信動作とは関係無く、直ちに送信動作を行う。受信機5は、各送信機3から無線送信された信号を受信して、その受信信号を処理する。
【0023】
図2に示すように、各送信機3は、圧力センサ11、温度センサ12、電圧センサ13、送信機コントローラ14、受信部としてのLF受信回路15、RF送信回路16及びリフレッシュ回路17を備えている。センサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16は、送信機3に内蔵された電池18によって駆動される負荷装置であり、図示しない配線を介して電池18に接続されている。
【0024】
電池18は、公知の小型リチウム電池であって、図3に示すように、ガスケット19を介して互いに嵌合される正極カバー21と負極カバー22とを備えている。正極カバー21と負極カバー22とで形成される空間23内には、一対の電極、すなわち正極26及び負極29が設けられている。正極26は、正極カバー21に接触する集電体24とその集電体24に固着された正極活物質層25とを有している。負極29は、負極カバー22に接触する集電体27とその集電体27に固着された負極活物質層28とを有している。空間23内には、電解質30が充填されている。また、空間23内には、セパレータ20が配置され、該セパレータ20を介して一対の電極26,29が互いに対向している。正極カバー21には正極端子31が固着されており、負極カバー22には負極端子32が固着されている。端子31,32は、図示しない配線を介してセンサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16に接続され、該センサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16は電池18から供給される電力によって駆動される。
【0025】
図2に示すように、圧力センサ11は、対応するタイヤ2の内部空気圧を計測して、その計測によって得られた空気圧データを送信機コントローラ14に出力する。温度センサ12は、対応するタイヤ2の内部温度を計測して、その計測によって得られた温度データ
を送信機コントローラ14に出力する。電圧センサ13は、電池18の起電力を計測して、その計測によって得られた電圧データを送信機コントローラ14に出力する。図4に示すように、送信機コントローラ14は、判定部としてのCPU40、RAM41、ROM42及びタイマー43を備えている。RAM41には、固有の識別情報であるIDコードが登録されている。このIDコードは、各送信機3を受信機5において識別するために使用されるコードである。送信機コントローラ14は、空気圧データ、温度データ及びIDコードを含むデータを、RF送信回路16に出力する。RF送信回路16は、送信機コントローラ14からのデータを符号化及び変調した後、そのデータを含むRF信号(高周波信号)を、RF送信アンテナPaを介して受信機5に無線送信する。
【0026】
ROM42には、電池18の起電力に関する閾値V1が記憶されている。この閾値V1は、負荷装置11〜16を所定の基準温度下で正常に駆動させるのに必要な電圧の最小値に基づき設定される。電池18の起電力が閾値V1と等しいかまたはそれより小さい場合、電池18が容量不足であって、使用するには適切ではないと判断される。
【0027】
ROM42にはさらに、タイヤ2の内部温度に起因する電池18の起電力の変化を補償するための換算データが記憶されている。この換算データは、電圧センサ13によって計測された電池18の起電力を、温度センサ12によって計測されるタイヤ2の内部温度に基づき前記基準温度に対応した値に換算するために使用される。タイマー43は、時間の計時を行うものである。
【0028】
送信機コントローラ14には、電池18をリフレッシュするための前記リフレッシュ回路17が接続されている。すなわち、電池18の使用に伴い、各電極26,29の表面には析出物(付着物)が堆積及び付着して被膜を形成する。リフレッシュ回路17は、このような付着物を除去すべく、リフレッシュ動作を実行する。
【0029】
図5に示すように、リフレッシュ回路17は、前記負荷装置11〜16に対して並列となるように、電池18に接続されている。リフレッシュ回路17は、負荷部としての抵抗45と、該抵抗45に直列に接続されたスイッチとしてのトランジスタ46とを備えている。抵抗45は、センサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16の各内部抵抗の合計値に比べて十分に小さい抵抗値を有している。
【0030】
トランジスタ46のゲートは、送信機コントローラ14から供給されるHレベル又はLレベルのリフレッシュ信号を入力する。本実施形態のトランジスタ46は、nチャネルFETを使用しているので、トランジスタ46のゲートにHレベルのリフレッシュ信号が入力されると、トランジスタ46はオン状態になる。また、トランジスタ46のゲートにLレベルのリフレッシュ信号が入力されると、トランジスタ46はオフ状態になる。
【0031】
トランジスタ46がオン状態になると、抵抗45及び電池18を含む閉回路が形成される。この結果、電池18の起電力に応じた電流が抵抗45を介して電極26,29の間に流れて、リフレッシュ動作が行われる。抵抗45の抵抗値は、センサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16の各内部抵抗の合計値に比べて十分に小さい値であるので、電極26,29の間には十分に大きな電流が流れる。このようなリフレッシュ動作を行うことにより、電極26,29に付着する析出物(付着物)は除去され、電池18の起電力が回復する。
【0032】
また、トランジスタ46がオフ状態になると、電池18及び抵抗45を含む回路が開放され、抵抗45を通じた電気の流れは生じない。つまり、リフレッシュ回路17を通じた電気の流れは生じない。
【0033】
CPU40は、リフレッシュ動作の実行後に、電池18の起電力が前記閾値より大きな値にまで回復しないと判定した場合には、RF送信回路16へ電池18の容量不足を示す報知信号(警告信号)を出力する。RF送信回路16は、受け取った報知信号を含むRF信号を、RF送信アンテナPaを介して受信機5に無線送信する。
【0034】
図2に示すように、受信機5は、RF受信回路51、送信部としてのLF送信回路52、受信機コントローラ53、表示器54及び報知器としての警報器55を備えている。これら各機器は、車両1に搭載されたバッテリ(図示せず)によって駆動される。RF受信回路51は、各送信機3からの送信信号を、RF受信アンテナPcを介して受信する。RF受信回路51は、受信信号を復調及び復号することによって得られたデータを、受信機コントローラ53に送信する。受信機コントローラ53は、RF受信回路51からのデータに基づき、発信元の送信機3に対応するタイヤ2の内部空気圧及び内部温度を認識する。また、受信機コントローラ53は、送信機3から報知信号を受信した場合には、発信元の送信機3に設けられた電池18が容量不足であることを認識する。
【0035】
受信機コントローラ53はまた、前記内部空気圧及び内部温度に関する情報等を表示器54に表示させる。表示器54は、車両1の搭乗者の視認範囲に配置される。受信機コントローラ53はさらに、内部空気圧及び内部温度の異常や電池18の容量不足を警報器(報知器)55にて報知させる。警報器55としては、例えば、異常を音によって報知する装置や、異常を光によって報知する装置が適用される。勿論、タイヤ2の内部空気圧及び内部温度の異常や電池18の容量不足を、報知器としての表示器54に表示させてもよい。
【0036】
LF送信回路52には、複数の送信機3にそれぞれ対応するLF送信アンテナPdが接続されている。各LF送信アンテナPdは、対応する送信機3の近傍、例えば車体4のホイールハウスに設けられている。受信機コントローラ53は、LF送信回路52及び各LF送信アンテナPdを介して、制御信号(指令信号)としてのLF信号(低周波信号)を送信する。各送信機3の送信機コントローラ14は、LF受信アンテナPb及びLF受信回路15を通じて、対応するLF送信アンテナPdからのLF信号を受信すると、そのLF信号によって示される指令内容に応じた動作を行う。例えば、各送信機コントローラ14はLF信号を受信すると、動作モードの切り替えを行ったり、或いは前記リフレッシュ動作を実行したりする。
【0037】
次に、上記のように構成されるタイヤ状態監視装置によって実行される処理について、図6に基づいて説明する。図6のフローチャートに示すルーチンはROM42に記憶されたプログラムに従って実行される。
【0038】
まずステップS1において、CPU40は、予め定められたリフレッシュ条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、リフレッシュ条件として以下の3つの条件A)〜C)が定められている。
【0039】
A) リフレッシュ動作の実行を指令するLF信号を受信機5から受け取る。
B) 定期的なリフレッシュ動作を行うべき時期に達する。
C) 送信動作時において、電池18の起電力が閾値V1以下になる。
【0040】
条件A)に関して、受信機5は、例えば車両の走行距離が所定距離(例えば3000Km)に達する毎に、或いは車両の使用年数が所定年数に達する毎に、リフレッシュ動作の実行を指令するLF信号を送信する。条件B)に関しては、タイマー43の計時に基づき所定期間(例えば1週間)が経過する度に、定期的なリフレッシュ動作を行うべき時期に達したと判断される。条件C)に関しては、送信動作時において、電池18の起電力が計
測されるとともにタイヤ2の内部温度が計測される。計測された電池18の起電力は換算データに従って換算され、その換算後の起電力の値と閾値V1とが比較される。
【0041】
上記条件A)〜C)の何れかが成立すると、CPU40はステップS2において、リフレッシュ回路17にHレベルのリフレッシュ信号を出力する。
すると、ステップS3において、電池18のリフレッシュ動作が行われる。その後、CPU40は、リフレッシュ回路17にLレベルのリフレッシュ信号を出力する。この結果、電池18のリフレッシュ動作が停止する。
【0042】
続いて、ステップS4,S5において、CPU40は、負荷装置を動作させた状態で電圧センサ13に電池18の起電力の計測を行わせる。本実施形態では、起電力の計測は、送信動作を行わせた状態で、つまりRF送信回路16を駆動させた状態で行われる。次に、ステップS6において、CPU40は、計測された電池18の起電力と前記閾値V1とを比較する。なお、この場合も、計測された電池18の起電力は換算データに従って換算され、その換算後の起電力の値と閾値V1とが比較される。電池18の起電力が前記閾値V1より大きい場合、リフレッシュ動作によって電池18の起電力が回復したものとして、CPU40は本ルーチンを終了して通常の動作に戻る。
【0043】
一方、電池18の起電力が前記閾値V1と等しいかまたは小さい場合、ステップS7において、CPU40はRAM41に設定されるカウント値Nを「1」インクリメントする。ステップS8において、CPU40は、カウント値Nが「5」より小さいか否かを判断する。カウント値Nが「5」より小さい場合、CPU40はステップS3に戻ってリフレッシュ動作を再度実行する。一方、カウント値Nが「5」に達した場合、ステップ9において、CPU40は電池18の容量不足を示す報知信号を無線送信する。受信機5は報知信号を受信すると、電池18の容量不足を報知すべく警報器55を動作させる。つまり、リフレッシュ動作を5回行っても、電池18の起電力が閾値V1以下の場合には、電池18の容量が回復不能であるとして、警報動作が行われる。
【0044】
なお、ステップS3のリフレッシュ動作は例えば0.2m秒の間行われる。そして、このリフレッシュ動作が繰り返される場合、リフレッシュ動作は1秒間隔をおいて行われる。
【0045】
本実施形態は下記の利点を有する。
(1)電解質30中に、集電体24上に正極活物質層25が固着された正極26と、集電体27上に負極活物質層28が固着された負極29とが、セパレータ20を介して互いに対向するように配置される電池18に対して、強制的に電流を流すリフレッシュ動作を行うようにした。この結果、電極26,29に付着した付着物が除去されて、電池18の長寿命化を図ることができる。
【0046】
(2)電池18の起電力が閾値V1と等しいかまたは小さい場合に、電池18はリフレッシュされる。従って、電池18のリフレッシュが、必要なときに適切に行われる。
(3)電池18は所定期間毎に定期的にリフレッシュされるので、例えば送信機3が送信動作を停止した未使用状態で保管されている場合であっても、電池18の電極26,29に対する付着物の堆積を抑制することができる。
【0047】
(4)電池18の起電力が回復しない場合、リフレッシュ動作は複数回繰り返して実行される。そのため、電極26,29から付着物を効果的に除去することが可能となり、電池18の起電力を極力回復させることができる。
【0048】
(5)電池18の起電力は、温度センサ12からのタイヤ2の内部温度に基づいた換算
データに従って換算される。従って、電池18の周囲の温度によって起電力が変動しても、電池18の起電力を適正に判定することができる。
【0049】
(6)抵抗45の抵抗値を、センサ11〜13、送信機コントローラ14、LF受信回路15及びRF送信回路16の各内部抵抗の合計値に比べて十分に小さくした。従って、電極26,29間に大きな電流を供給することができるので、電極26,29に付着する付着物が効果的に除去される。
【0050】
(7)電池18の起電力は、負荷装置を動作させた状態で電圧センサ13によって計測される。従って、電池18の起電力が負荷装置を駆動可能な値であるか否かを正確に判定することができる。
【0051】
(8)リフレッシュ動作によって電池18を効率的に使用することができ、送信機3は、長時間にわたって安定した動作を維持できる。
(9)リフレッシュ動作を行っても電池18の容量不足が解消されない場合、送信機3は報知信号を受信機5に送信する。受信機5は、報知信号を受信すると、電池18の容量不足を警報器55にて報知させる。よって、車両の搭乗者は送信機3を交換すべきであることを的確に把握する。
【0052】
(10)リフレッシュ回路17は、抵抗45と、該抵抗45に直列に接続されたスイッチとしてのトランジスタ46とから構成されている。そして、リフレッシュ回路17は、負荷装置11〜16に対して並列となるように、電池18に接続されている。従って、簡単な構成でリフレッシュ回路17を実現できる。この結果、送信機3の小型化を図ることが可能となる。
【0053】
なお、本発明の実施形態は前記に限定されるものではなく、以下のように変更されてもよい。
・通常、送信機3を外部から制御するための外部制御装置が、例えば車両整備工場にて使用される。この外部制御装置は、受信機5から送信されるLF信号と同様または類似のLF信号を発信可能である。この外部制御装置からはLF信号(指令信号または制御信号)を送信機3に向けて発信して、送信機3がそのLF信号に応答してリフレッシュ動作を行うようにしてもよい。
【0054】
・計測した起電力を基準温度に対応する値に換算する代わりに、閾値V1を温度に応じて変更するようにしてもよい。
・負荷部として抵抗45を定電流回路に代えてもよい。この場合、リフレッシュ回路17には、該リフレッシュ回路17の両端にかかる電圧の大きさに関係なく一定の電流が流れるので、リフレッシュ動作時において電池18に流れるリフレッシュ電流を安定させることが可能となる。
【0055】
・リフレッシュ動作の繰り返し回数は5回に限定されない。リフレッシュ動作の繰り返し回数は5回以上であっても、5回未満であってもよい。
・電池18が高温環境下にある場合には、電極26,29への析出物の付着が進行し易い。そこで、タイヤ2の内部温度が高温(例えば100℃近く)になった後に常温(例えば20℃〜40℃の通常の環境温度)に戻ったときに、リフレッシュ動作を行うようにしてもよい。
【0056】
・車両1としては、4輪の車両に限らず、2輪の自転車やオートバイ、多輪のバスや被牽引車、またはタイヤ2を装備する産業車両(例えばフォークリフト)等に、前記実施形態が適用されても良い。
【0057】
・本発明は、タイヤ状態監視装置の送信機3に限らず、電池を使用する各種の電気機器に適用することができる。また、リフレッシュ動作の対象となる電池もリチウム電池に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるタイヤ状態監視装置を示す概略図。
【図2】図1の装置における送信機及び受信機を示すブロック図。
【図3】図2の送信機に内蔵される電池の構成を示す断面図。
【図4】送信機コントローラ及びリフレッシュ回路を示すブロック図。
【図5】リフレッシュ回路を示す回路図。
【図6】送信機にて実行されるリフレッシュ処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
3…送信機、5…受信機、12…温度センサ、13…電圧センサ、11〜13,14,15,16…負荷装置としてのセンサ、送信機コントローラ、LF受信回路及びRF送信回路、15…受信部としてのLF受信回路、17…リフレッシュ回路、18…電池、26,29…電極、40…判定部としてのCPU、45…負荷部としての抵抗、46…スイッチとしてのトランジスタ、52…送信部としてのLF送信回路、55…報知器としての警報器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する電池と、該電池によって駆動される負荷装置とを備え、各電極が集電体と活物質層とを有する電気機器において、
前記電極に付着する付着物を除去すべく、前記電極間に強制的に電流を流すリフレッシュ動作を実行するリフレッシュ回路を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器において、
前記リフレッシュ回路は、前記リフレッシュ動作時において、前記電極間に前記負荷装置の駆動時よりも大きな電流を流すことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機器において、
前記リフレッシュ回路は、前記負荷装置と並列に前記電池に接続される負荷部と、前記負荷部及び前記電池を含む閉回路を形成するように動作するスイッチと
を備えていることを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機器において、
前記負荷部は、抵抗または定電流回路であることを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気機器において、
前記リフレッシュ回路は、予め定められた条件が成立したときに前記リフレッシュ動作を実行することを特徴とする電気機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電気機器において、
前記リフレッシュ回路は、予め定められた期間が経過する度に定期的に前記リフレッシュ動作を実行することを特徴とする電気機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電気機器において、
前記負荷装置の駆動状態において前記電池の起電力を検出する電圧センサをさらに備え、
前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記リフレッシュ回路は前記リフレッシュ動作を実行することを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電気機器において、
前記リフレッシュ動作の実行後に、前記負荷装置の駆動状態において前記電池の起電力を検出する電圧センサと、
前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記電池が容量不足であることを判定する判定部と
をさらに備えることを特徴とする電気機器。
【請求項9】
前記電気機器は、車両のタイヤの状態を監視するタイヤ状態監視装置における送信機であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の電気機器。
【請求項10】
車両のタイヤの内部に配置され、該タイヤの状態を検出するとともに検出したタイヤ状態を示す信号を送信する送信機と、
前記車両の車体に搭載され、前記タイヤ状態を示す信号を受信する受信機と
を備えるタイヤ状態監視装置において、
前記送信機は、一対の電極を有する電池と、該電池によって駆動され、タイヤ状態の検出及び信号の送信を行う負荷装置とを備え、各電極は集電体と活物質層とを有し、
前記送信機はさらに、前記電極に付着する付着物を除去すべく、前記電極間に強制的に
電流を流すリフレッシュ動作を実行するリフレッシュ回路を備えることを特徴とするタイヤ状態監視装置。
【請求項11】
請求項10に記載のタイヤ状態監視装置において、
前記送信機は、前記リフレッシュ動作の実行後に、前記負荷装置の駆動状態において前記電池の起電力を検出する電圧センサを備え、前記電圧センサによって検出された起電力が予め定められた閾値以下の場合に、前記送信機は電池が容量不足であることを示す報知信号を送信し、
前記受信機は、前記報知信号の受信に応じて、前記電池の容量不足を報知する報知器を備えることを特徴とするタイヤ状態監視装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載のタイヤ状態監視装置において、前記受信機は、前記リフレッシュ動作の実行を指令する指令信号を送信する送信部を備え、
前記送信機は前記指令信号を受信する受信部を備え、該受信部が指令信号を受信したときに前記リフレッシュ回路がリフレッシュ動作を実行することを特徴とするタイヤ状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−293799(P2008−293799A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138210(P2007−138210)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】