説明

電気機器収納用箱

【課題】扉とラッチ装置との間に防水処理を施す必要がなく、箱本体を壁面等に密着設置することができるラッチ鎖錠式の電気機器収納用箱を提供する。
【解決手段】扉2を閉じると係止片17が箱本体1の係合金具19に係止して自動的に鎖錠され、扉2を開く際にはレバー操作により鎖錠を解除するラッチ装置10を備えた電気機器収納用箱である。本発明では、係止片17と操作部18とが一体化された水平方向に動作するレバーを備えたラッチ装置10を、扉2の正面であって箱本体1の水切垂直板3よりも外側の位置に設けた。なお、ラッチ装置10の本体部11の長手方向位置に、レバー14の動きをロックするシリンダ錠15を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ装置により鎖錠される構造の電気機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤、分電盤、通信機器用ラック等の電気機器収納用箱は、箱本体の前面に扉を設けたものが普通であり、その鎖錠装置としてはハンドル装置とラッチ装置が一般的に用いられている。
【0003】
ハンドル装置は、扉の開閉にそれぞれハンドル操作が必要なものである。またラッチ装置は、扉を開く際にはレバー操作を必要とするが、扉を閉じるときにはレバー操作は不要であり、単に扉を箱本体に押し付けるだけで、常に係合方向に付勢されている係止片が動作して鎖錠が行われるものである。
【0004】
通常、電気機器収納用箱においては扉の右側部に蝶番が設けられ、左側部に鎖錠装置が設けられている。この場合、ラッチ装置は水平方向に回転するレバーによって操作されるのが普通である。
【0005】
従来、上記のようなラッチ装置は、扉のパッキンよりも内側に配置されるタイプと、特許文献1,2に記載されるように、扉の側板に配置されて箱本体の側面に突出するタイプとがあった。
【特許文献1】特開2008−121207号公報
【特許文献2】特開2008−121208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ラッチ装置をパッキンの内側に配置すると、扉とラッチ装置との間に防水処理が必要となり、扉内面への機器取付スペースが小さくなるという問題があった。またラッチ装置を扉の側板に配置し箱本体の側面に突出させると、箱本体の側方にレバーを操作するために指先を挿入できるスペースが必要となり、電気機器収納用箱を壁面等に密着して設置できないという問題があった。
【0007】
したがって本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、扉とラッチ装置との間に防水処理を施す必要がなく、しかも箱本体の側方にレバーを操作するために指先を挿入できるスペースを設ける必要がなく、壁面等に密着設置することができるラッチ鎖錠式の電気機器収納用箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、扉を閉じると係止片が箱本体側の係合金具に係止して鎖錠され、扉を開く際にはレバー操作により鎖錠を解除するラッチ装置を備えた電気機器収納用箱において、係止片と操作部とが一体化された水平方向に動作するレバーを備えたラッチ装置を、扉の正面であって箱本体の水切垂直板よりも外側の位置に設けたことを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、扉を開く際のレバー操作を箱本体の内側から側方に向かって行うようにレバーの操作部を構成し、箱本体側の係合金具を前記水切垂直板よりも外側に配置した構造とすることが好ましい。
【0010】
また請求項3のように、ラッチ装置の本体部の長手方向位置に、レバーの動きをロックするシリンダ錠を設けた構造とすることができ、この場合には請求項4のように、シリンダ錠によって出没するロックプレートを、レバーの側面に係合させて鎖錠する構造とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気機器収納用箱は、係止片と操作部とが一体化された水平方向に動作するレバーを備えたラッチ装置を扉の正面に取り付けたので、扉の正面においてレバー操作が可能となる。このため、箱本体の側方にレバーを操作するために指先を挿入できるスペースを設ける必要がなく、壁面等に密着設置することができる。
【0012】
また本発明の電気機器収納用箱は、ラッチ装置を扉の正面であって箱本体の水切垂直板よりも外側の位置に設けたので、ラッチ装置は防水用のパッキンよりも外側に位置することとなる。このため扉とラッチ装置との間に防水処理を施さなくても完全な防水が可能であるうえ、扉内面への機器取付スペースが小さくなることもない。
【0013】
請求項2のように、扉を開く際のレバー操作を箱本体の内側から側方に向かって行うようにレバーの操作部を構成し、箱本体側の係合金具を前記水切垂直板よりも外側に配置した構造とすることにより、箱本体の最も外側に近い位置でラッチ装置の係止片を箱本体の係合金具と係止させることができ、より確実な鎖錠が可能となる。
【0014】
請求項3のように、ラッチ装置の本体部の長手方向位置にレバーの動きをロックするシリンダ錠を設けた構造とすれば、ラッチ装置の幅を拡大せずに効率よくシリンダ錠を配置することができる。この場合、請求項4のようにシリンダ錠によって出没するロックプレートを、レバーの側面に係合させて鎖錠する構造とすれば、ラッチ装置の内部構造が簡素化され、狭いスペース内に効率よくロック機構を収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は実施形態の電気機器収納用箱の外観斜視図、図2は扉を開いた状態の斜視図である。これらの図面において、1は電気機器収納用箱の箱本体、2はその扉である。扉2は右側端部を蝶番によって支持され、左側端部に設けられたラッチ装置10により鎖錠される。ラッチ装置10の構造については以下に詳述する。なお3と4は箱本体1の前面に突設された水切垂直板と水切水平板である。また5は扉2の裏面に設けられた枠状のパッキンであり、扉2を閉じると水切垂直板3と水切水平板4がパッキン5に密着し、外部から雨水などが箱本体1の内部に浸入することを防止している。
【0016】
図3はラッチ装置10を表側から見た斜視図、図4は裏面側から見た斜視図、図5と図6は水平断面図である。これらの図に示されるように、ラッチ装置10は扉2に固定される縦長の本体部11と、この本体部11から裏面側に突出させた折り曲げ片12にピン13によって枢着されたレバー14と、本体部11の長手方向位置に配置されたシリンダ錠15とを備えている。図5に示されるように、ラッチ装置10は扉2の正面であって、箱本体1の水切垂直板3よりも外側の位置に取付けられている。レバー14の全体はピン13の周囲に設けられたバネ16によって、常に鎖錠方向(図面上の反時計方向)に付勢されている。
【0017】
レバー14は、扉2の裏面に突出する係止片17と扉2の表側に位置する操作部18とを一体に備えたものである。操作部18の先端は扉2の表面から指先が挿入できる程度浮き上がらせてある。係止片17の先端は外向きに屈曲しており、図5に示すように鎖錠状態においては箱本体1側の係合金具19に係合している。この係合金具19も水切垂直板3よりも外側に配置されており、その先端は内向きに屈曲している。
【0018】
このため、図5に示す鎖錠状態では扉2を開くことができず、扉2を開くには図6に示すようにレバー14の操作部18を持ち上げてレバー14を回転させ、係止片17を係合金具19から外す必要がある。このようにラッチ装置10は扉2を開くときにはレバー14の操作を必要とするものであるが、扉2を閉じるときには単に扉2を箱本体1に押し付けるだけで、係止片17の先端が係合金具19の斜面に押され、バネ16に逆らって時計方向に回転しながら図5の状態に至る。
【0019】
上記のように、本発明ではラッチ装置10を箱本体1の水切垂直板3よりも外側の位置に取付け、水切垂直板3よりも外側位置において箱本体1側の係合金具19に係合するようにしたので、ラッチ装置10と扉2との間を防水構造としなくてもよい。すなわち、仮にラッチ装置10の部分から水が浸入しても、水切垂直板3とパッキン5との接触部で遮断され、箱本体1の内部に達することはない。このために扉2の内部にラッチ装置10のための防水手段を必要とせず、機器取付け面積が制約されることがない。
【0020】
また、ラッチ装置10を扉2の正面に設けたことによって、図6に示す扉2を開く際のレバー操作を扉2の正面で行うことができ、ラッチ装置10を扉2の側面に設けた場合のように、箱本体1の端部と壁面等との間に指先を入れるスペースを必要としない。このため、箱本体1を壁面に密着配置することができる。
【0021】
なお、この実施形態では、箱本体1の内側から側方に向かって行うようにレバー14の操作部18を構成してあるので、右利きの人が右手で操作部18と扉2との間に指先を入れ、そのまま手前に引くことによって係止片17を係合金具19から外す動作と、扉2を開く動作とを連続して行うことができる。しかし本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、例えばレバー14の操作方向を逆方向としたり、レバー14をスライド式としたりすることも可能である。
【0022】
次に図3、図4、図7、図8を参照しながらシリンダ錠15について説明する。この実施形態では、ラッチ装置10の本体部11の長手方向位置に、シリンダ錠15が取付けられている。シリンダ錠15自体は公知のものであり、レバー14の操作部18に形成されたキー挿通孔20からキーを差し込んで操作する構造となっている。このシリンダ錠15はキー操作によって上下方向に出没するロックプレート21を備えている。このロックプレート21は上端に突片22を備えており、上昇させると図3、図4に示すようにレバー14の下部側面に形成された孔23に突起22が係合し、レバー14を回転できないように鎖錠する。この状態では扉2を開くことができない。扉2を開くには、この鎖錠状態からシリンダ錠15を操作して図7のようにロックプレート21を下降させ、レバー14の孔23との係合を解除したうえで図8のようにレバー14を回転させればよい。
【0023】
この実施形態のように、レバー14の裏面の位置にシリンダ錠15を設けた場合には、レバー14を大きくすることができるので、美観が向上する。しかし図9に示した他の実施形態のように、ラッチ装置10の本体部11の中央にレバー24を設け、レバー24の上方または下方にシリンダ錠15を露出させて配置してもよい。
【0024】
なお、箱本体1側の係合金具19は、図2、図3に示すように金属板の端部を折り曲げた構造であるが、その上下の折り曲げ片26,27を内側に向かって広がるように傾斜させるとともに、扉2と平行な端部折り曲げ辺を切り欠いた当接部6を設ける。また、ラッチ装置10の係止片17の上下に切欠部28,29を形成し、扉2を閉じたときに上下の折り曲げ片26,27が入り込むようにしておくことが好ましい。これによって扉2の蝶番から遠い端部が箱本体1に対して多少垂れ下がった場合にも、上下の傾斜した折り曲げ片26,27が扉2の当接部6に規制されて扉2に固定されたラッチ装置10が正規の高さに誘導され、扉2の垂れ下がりを防止することができる。
【0025】
なお、この実施形態のように扉2の右側端部に蝶番、左側端部にラッチ装置10を設けたものでは、上部の折り曲げ辺26が作用し、箱を上下逆転させて使用する場合にはもう一方の折り曲げ辺27が上位置となり作用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の電気機器収納用箱の外観斜視図である。
【図2】扉を開いた状態の斜視図である。
【図3】ラッチ装置を表側から見た斜視図である。
【図4】ラッチ装置を裏面側から見た斜視図である。
【図5】ラッチ装置の鎖錠状態における水平断面図である。
【図6】ラッチ装置の開錠状態における水平断面図である。
【図7】ロックプレートが下降した状態の斜視図である。
【図8】レバーを回転させた状態の斜視図である。
【図9】他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 箱本体
2 扉
3 水切垂直板
4 水切水平板
5 パッキン
6 当接部
10 ラッチ装置
11 本体部
12 折り曲げ片
13 ピン
14 レバー
15 シリンダ錠
16 バネ
17 係止片
18 操作部
19 係合金具
20 キー挿通孔
21 ロックプレート
22 突片
23 孔
24 レバー
25 シリンダ
26 折り曲げ片
27 折り曲げ片
28 切欠部
29 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を閉じると係止片が箱本体側の係合金具に係止して鎖錠され、扉を開く際にはレバー操作により鎖錠を解除するラッチ装置を備えた電気機器収納用箱において、係止片と操作部とが一体化された水平方向に動作するレバーを備えたラッチ装置を、扉の正面であって箱本体の水切垂直板よりも外側の位置に設けたことを特徴とする電気機器収納用箱。
【請求項2】
扉を開く際のレバー操作を箱本体の内側から側方に向かって行うようにレバーの操作部を構成し、箱本体側の係合金具を前記水切垂直板よりも外側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の電気機器収納用箱。
【請求項3】
ラッチ装置の本体部の長手方向位置に、レバーの動きをロックするシリンダ錠を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器収納用箱。
【請求項4】
シリンダ錠によって出没するロックプレートを、レバーの側面に係合させて鎖錠する構造とした請求項3に記載の電気機器収納用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−84499(P2010−84499A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258063(P2008−258063)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】