説明

電気機器梱包構造

【課題】キャビネットの4隅のコーナ部に緩衝体を嵌合させて梱包箱に収容した電気機器梱包構造において、緩衝体の嵌合状態の安定性を損なうことなく、キャビネットの表面のプレッシャーマークの現れる範囲(領域)を狭い範囲に制限すること、キャビネットの表面を緩衝体が擦傷するという事態を発生しにくくすること、を解決課題とする。
【解決手段】梱包箱40と、電気機器Aのキャビネット10の4隅のコーナ部に嵌合される緩衝体20と、を備える。緩衝体20に、上壁部21と、下壁部22と、立上り壁部23とが備わっている。緩衝体20の上壁部21の下面に凹所を形成して下向き凸条部27を形作り、その下向き凸条部27だけをキャビネット10の天板上面11に当接させる。上壁部21の上面側に上向き凸条部28を形成する。上向き凸条部28は、下向き凸条部27に対して横方向に位置ずれした位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器梱包構造、特に、電気機器の箱形のキャビネットに加わる衝撃を緩衝体で吸収させる場合に、緩衝体をキャビネットのコーナ部に着脱する際にそのキャビネットの表面を擦傷したり、緩衝体がキャビネットの表面に押圧痕(プレッシャーマーク)を残してキャビネットの外観品位を低下させるという事態の発生を抑制するための対策を講じた電気機器梱包構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来例による電気機器梱包構造の要部を示した概略斜視図である。同図のように、従来例による電気機器梱包構造では、電気機器の箱形のキャビネット10のコーナ部に発泡スチロールなどの樹脂発泡体でなるブロック形の緩衝体20が嵌合されている。この緩衝体20には、キャビネット10の天板上面11に当接する上壁部21と、キャビネット10の底板下面12に当接する下壁部22と、キャビネット10のコーナ部を形作っている外周側板13に対峙する平面視L形状の立上り壁部23とが備わっていて、立上り壁部23の上端部及び下端部に上記した上壁部21と下壁部22とがそれぞれ連設されている。
【0003】
そして、図7のようにキャビネット10のコーナ部に嵌合している緩衝体20については、その上壁部21や下壁部22がキャビネット10の天板上面11や底板下面12にそれらを押圧した状態で当接しているか(押圧下の当接状態)、その上壁部21や下壁部22がキャビネット10の天板上面11や底板下面12に押圧力を生じない状態でただ単に当接しているか(非押圧下の当接状態)、のいずれかになっている。したがって、キャビネット10のコーナ部に対する緩衝体20の嵌合状態は、その上壁部21と下壁部22とがキャビネット10のコーナ部を弾圧状態又は非弾圧状態で挟んでいることによって維持されている。
【0004】
また、図示していないけれども、従来例による電気機器梱包構造は、箱形のキャビネット10の4隅の各コーナ部に上記の構成を有する緩衝体20を嵌合させた電気機器を梱包箱に収容させてなる。梱包箱は、厚紙でなり、四角筒形の胴体部にその上下の開口を塞ぐ底蓋及び天蓋が連設されていて、その梱包箱の底蓋及び天蓋の相互間に緩衝体20が挟まれて、キャビネット10が梱包箱の内部で容易に動くことがないように位置決めされている。この構造を採用している梱包は段積みして運搬されたり保管されたりするけれども、運搬中や保管中に起こり得る不慮の落下などに起因する衝撃が緩衝体20によって吸収されるので、その衝撃が電気機器のキャビネット10に直接に伝わって電気機器が損傷を受けるという事態が抑制される。
【0005】
図8は従来例による電気機器梱包装置によって起こり得る現象を示した要部の垂直断面図、図9は従来例による電気機器梱包装置によって起こり得る問題点を示した要部の平面図である。
【0006】
図8のように、電気機器が梱包箱40に収容されている状態では、梱包箱40の天蓋41、底蓋42及び胴体部43が、キャビネット10のコーナ部に嵌合されている緩衝体20の上壁部21、下壁部22及び立上り壁部23にそれぞれ当接している。
【0007】
この梱包形態において、緩衝体20の上壁部21がキャビネット10の天板上面11に対して上記した「押圧下の当接状態」になっているときには、緩衝体20の上壁部21がその下面の全体でキャビネット10の天板上面11を長時間に亘って矢印fのように押圧することになるので、その押圧痕(プレッシャーマーク)がキャビネット10の天板上面11に残留することがある。図9に例示したように、このプレッシャーマークMは、キャビネット10の天板上面11での緩衝体20の上壁部21との重なり領域Zの全体又はその大部分に亘って発生することが多い。
【0008】
これに対し、緩衝体20の上壁部21がキャビネット10の天板上面11に対して上記した「非押圧下の当接状態」になっているときには、通常、図9に例示した重なり領域ZにプレッシャーマークMが生じることはない。
【0009】
しかしながら、梱包を段積みして運搬したり保管したりすると、下段側の梱包に、その上に段積みされている梱包の重量に起因する積載荷重が付加される。そのため、図8に示したように、積載荷重Fが梱包箱40の天蓋41を介して緩衝体20の上壁部21に伝わり、それに伴って緩衝体20の上壁部21がキャビネット10の天板上面11を長時間に亘って矢印fのように押圧することになる。そのため、上記同様に、プレッシャーマークM(図9参照)がキャビネット10の天板上面11に残留することがある。
【0010】
一方、先行例には、電気機器の梱包に電源コードのプラグを動かないように収納したり、リモコンを落下衝撃から防護したりするために、キャビネットのコーナ部に嵌合した緩衝体を利用することが開示されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。また、製品の隅部とその製品を収納している外箱との相互間に介在させた緩衝材に、積載荷重を受け止めさせる緩衝突起を具備させ、その緩衝突起を外箱に当接させておくことにより、積載荷重を緩衝突起で受け止めさせるようにした梱包形態が開示されている(たとえば、特許文献3参照)。この特許文献3の梱包形態によると、緩衝突起によって受け止められた積載荷重が緩衝材を介して製品の上面で受け止められる構成になっている。そのため、製品の上面には、積載荷重を受け止めた緩衝材が強く押圧されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−46154号公報
【特許文献2】実用新案登録第3132417号公報
【特許文献3】特開2010−173667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、近時のDVD(デジタルバーサタイルディスク)やBD(ブルーレイディスク)を取り扱うディスク装置などの電気機器では、そのキャビネットに、高度の表面艶を呈する黒色などのカラー鋼板を採用してその外観品位を高めているものが多い。そのため、たとえば高度の表面艶を有する黒色のカラー鋼板を加工することによって作られているキャビネットでは、上記したような状況下で、緩衝体20の上壁部21によりキャビネット10の天板上面11が長時間に亘って矢印fのように押圧されると、図9に示した重なり領域Zに白っぽく変色したプレッシャーマークMが現れやすい。このプレッシャーマークMは、押圧力が解放された後の数分間程度の経時によって自然に消滅するものではある。
【0013】
しかしながら、開梱後に電気機器を梱包箱40から取り出したときに、そのキャビネット10の上記重なり領域Zの広い範囲にプレッシャーマークMが現れていると、そのプレッシャーマークMが目立ち、ユーザに印象付けられる電気機器の外観品位が低下してしまうという問題があった。
【0014】
また、従来例の電気機器梱包構造では、図7のように緩衝体20の上壁部21の下面の全体がキャビネット10の天板上面11に当接しているので、キャビネット10のコーナ部に対して緩衝体20を着脱するときに、キャビネット10の高度の表面艶を有する天板上面11に緩衝体20の上壁部21が擦れて、その天板上面11を傷付けるおそれがあるという問題もあった。この点に関し、キャビネット10は一般的に薄い樹脂フィルムで作られた保護袋に入れられて保護されているけれども、そのようなものでも、キャビネット10に対して緩衝体20を着脱するときに、キャビネット10の高度の表面艶を有する天板上面11を、緩衝体20の上壁部21によって押し付けられた保護袋が擦って傷付けてしまうおそれがあるという問題があった。
【0015】
本発明は、以上の問題点を改善することを目的としてなされたものであり、キャビネットの4隅のコーナ部に緩衝体を嵌合させて梱包箱に収容した電気機器梱包構造であって、キャビネットのコーナ部での緩衝体の嵌合状態の安定性を損なうことなく、キャビネットの表面のプレッシャーマークの現れる範囲(領域)を狭い範囲に制限することが可能であり、しかも、キャビネットに対して緩衝体を着脱するようなときに、キャビネットの表面を緩衝体が擦傷するという事態を発生しにくくすることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る電気機器梱包構造は、四角筒形の胴体部にその上下の開口を塞ぐ底蓋及び天蓋が連設された厚紙でなる梱包箱と、この梱包箱に収容された電気機器の箱形のキャビネットの4隅のコーナ部に嵌合されて、上記梱包箱の底蓋及び天蓋の相互間に挟まれて上記キャビネットを上記梱包箱の内部で位置決めする樹脂発泡体でなる緩衝体と、を備えている。また、キャビネットの上記コーナ部に嵌合された緩衝体に、上記キャビネットの天板上面に当接する上壁部と、上記キャビネットの底板下面に当接する下壁部と、これらの上壁部と下壁部とが上端部及び下端部に連設されて、上記キャビネットのコーナ部を形作っている外周側板に対峙する平面視L形状の立上り壁部と、が備わり、上記上壁部と下壁部とによって上記キャビネットに対する当該緩衝体の嵌合状態が維持されるように構成されている。
【0017】
そして、上記緩衝体の上壁部の下面に凹所を形成することにより、その上壁部の下面の凹所形成箇所を除く部分に形作られた下向き凸条部の下面だけを上記キャビネットの天板上面に当接させてあると共に、上記上壁部の上面側には、上記下向き凸条部に上下方向で重ならないように横方向に位置ずれした箇所で上記立上り壁部の高さ方向上部に上向き凸条部が形成され、上記梱包箱の天蓋がその上向き凸条部の上面だけに当接して重なり合っている。
【0018】
この構成を備えた電気機器梱包構造によると、緩衝体の上壁部の下面の凹所形成箇所を除く部分に形作られた下向き凸条部の下面だけがキャビネットの天板上面に当接しているので、プレッシャーマークの現れる範囲(領域)が、下向き凸条部の下面の面積に見合う狭い範囲だけに限定される。そのため、キャビネットの天板上面にプレッシャーマークが現れたとしても、そのプレッシャーマークが目立ちにくくなる。
【0019】
加えて、緩衝体の上壁部の上面側に形成されている上向き凸条部が、上記下向き凸条部に上下方向で重ならないように横方向に位置ずれした箇所に位置して、その上向き凸条部の上面だけに梱包箱の天蓋が当接して重なり合っていることにより、当該梱包を段積みしたときの積載荷重が、梱包箱の天蓋及び上記上向き凸条部を介して緩衝体の立上り壁部によって受け止められる。そのため、その積載荷重によって上記下向き凸条部の下面がキャビネットの天板上面に押し付けられることが抑制されるようになり、そのことが、上記したプレッシャーマークの現出を抑制することに役立つ。
【0020】
また、キャビネットに対して緩衝体を着脱するときには、キャビネットの天板上面の狭い範囲で緩衝体の上記下向き凸状が擦れ合うだけであって、緩衝体の上壁部の下面全体がキャビネットの天板上面と擦れ合うことにはならないので、キャビネットの天板上面を傷付けるおそれがなくなるか、そのおそれが少なくなる。
【0021】
本発明では、上記上向き凸条部が、上記上壁部の上面に凹所を形成することによって形作られていることが望ましい。この構成であると、上向き凸条部を上壁部の上面に突設する場合に比べて、緩衝体を成形する際の樹脂材料を削減してその歩留りを向上させることができるだけでなく、緩衝体の高さが上向き凸条部を形成することによって高くならないので、緩衝体の大形化を回避することが可能になり、梱包のコンパクト化が損なわれない。
【0022】
本発明では、上記下向き凸条部の下面が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに当接していることが望ましい。この構成によれば、キャビネットの天板上面にプレッシャーマークが現れたとしても、その範囲がキャビネットの天板上面のコーナ部端縁を含む細幅領域に限定されてしまって目立ちにくくなるという利点がある。
【0023】
本発明では、上記下向き凸条部が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁に沿って連続するL字形に形成されている、という構成を採用することが望ましい。これによれば、上記した利点、すなわち、キャビネットの天板上面に現れたプレッシャーマークが目立ちにくいという利点が得られるほか、キャビネットのコーナ部での緩衝体の嵌合状態安定性の低下が抑制されることになる。これと同様の作用は、上記下向き凸条部が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁に沿って断続的にL字形に並んでいる複数の下向き凸部によって形成されている、という構成を採用することによっても発揮される。
【0024】
これらの各発明によると、キャビネットのコーナ部での緩衝体の嵌合状態安定性を損なわずに、プレッシャーマークの現出を抑制したりプレッシャーマークを目立ちにくくしたりする作用、キャビネットに緩衝体を着脱するときに、緩衝体がキャビネットの天板上面を擦傷しにくくなるという作用、などが発揮されるようになる。
特に、上記細幅領域での上記下向き凸条部の下面とキャビネットの天板上面との掛り幅の寸法が10mm以下に定められているという構成を採用したり、上記緩衝体の上壁部の下面の凹所形成箇所の表面が平坦面に形成されていて、その凹所形成箇所を除く部分に形作られた下向き凸条部の上記平坦面からの出幅が1mm以下に定められている、という構成を採用しておくと、上記した嵌合状態安定性が確実に発揮されることが判っている。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、緩衝体の形状ないし構成を改変するだけで、従来例に比べてキャビネットのコーナ部での緩衝体の嵌合状態安定性を損なうことなく、キャビネットの表面でのプレッシャーマークの現出を抑制したり、仮にプレッシャーマークが現出したとしてもそのプレッシャーマークを目立ちにくくしたり、緩衝体をキャビネットに着脱するときに緩衝体がキャビネットの天板上面に擦傷痕を残すといった事態が起こりにくくなる。そのため、キャビネットの外観品位を低下させるおそれのない電気機器梱包構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る電気機器梱包構造を示した分解斜視図である。
【図2】図1の梱包構造の横断平面図である。
【図3】緩衝体を斜め上方から見て説明的に示した概略斜視図である。
【図4】緩衝体を斜め下方から見て説明的に示した概略斜視図である。
【図5】変形例による緩衝体を斜め下方から見て説明的に示した概略斜視図である。
【図6】電気機器梱包構造の要部を垂直断面図によって示した作用説明図である。
【図7】従来例による電気機器梱包構造の要部を示した概略斜視図である。
【図8】従来例によって起こり得る現象を示した要部の垂直断面図である。
【図9】従来例によって起こり得る問題点を示した要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る電気機器梱包構造を示した分解斜視図、図2は同梱包構造の横断平面図である。
【0028】
図1において、梱包箱40は1枚の厚紙に曲げ加工を施すことによって製作されていて、横長四角筒形に形成されている胴体部43に、底蓋42と天蓋41とが連設されている。天蓋41は、胴体部43の4つの上辺のそれぞれに連設されている4枚のフラップ41a,41b,41c,41dを折り畳んで平板状に保形することによって形成される。底蓋42についても、天蓋41と同様に、胴体部43の4つの下辺のそれぞれに連設されている4枚のフラップを折り畳んで平板状に保形することによって形成される。天蓋41と底蓋42とは、胴体部43の上下の開口を塞ぐことに役立つ。
【0029】
梱包箱40には、電気機器A、4つのブロック形の緩衝体20…、取扱説明書などの付属品70などが収容される。電気機器Aは、偏平な矩形箱形形状のキャビネット10を有していて、DVDやBDを取り扱うディスク装置がそれに該当する。そして、キャビネット10は、高度の表面艶を有する黒色やその他の色に着色されたカラー鋼板を加工することによって製作されている。一般的には、電気機器Aや付属品50は、樹脂フィルムで作られた保護袋61,62に収容されている。そして、電気機器Aのキャビネット10の4隅の各コーナ部に、樹脂発泡体でなる緩衝体20…が各別に嵌合される。付属品50には取扱説明書のほか、たとえば電気コードなどの各種の必要な小物部品を含ませることがある。
【0030】
図1又は図2によって判るように、電気機器Aを梱包するときには、保護袋62に入っている付属品50が梱包箱40の底蓋42の中央部に置かれ、その上から、キャビネット10の4隅のコーナ部に緩衝体20…が嵌め込まれた電気機器Aが保護袋61に入ったまま挿入される。そして、4つの緩衝体20…が、梱包箱40の胴体部43の4隅のコーナ部に動かないように嵌め込まれる。また、4つのフラップ41a,41b,41c,41dが折り畳まれて天蓋41が形成され、その天蓋41によって胴体部12の上側の開口が塞がれる。梱包状態では、梱包箱40の胴体部43と電気機器Aのキャビネット10とにより4つの緩衝体20…が挟まれて、電気機器Aが梱包箱40の内部で前後、左右に位置決めされ、また、梱包箱40の天蓋41と底蓋42とにより4つの緩衝体20…が挟まれて、電気機器Aが梱包箱40の内部で高さ方向に位置決めされている。
【0031】
ところで、電気機器Aは、キャビネット10の4隅のコーナ部に緩衝体20…を嵌合させた状態のまま梱包箱40にその上側の開口から押し込み挿入されるので、その挿入時に、緩衝体20がキャビネット10から容易に脱落しないようになっている必要がある。そのため、緩衝体20には、キャビネット10のコーナ部に対する一定の嵌合安定性が要求されている。この要求を満足するためには、キャビネット10の天板上面11や底板下面12とキャビネット10のコーナ部に嵌合させた緩衝体20との重なり部分の面積を広く確保することが有益である。そこで、図8に参照して説明した従来例では、緩衝体20の上壁部21の下面とキャビネット10の天板上面11とが当接する範囲を広く確保して接触面積を広く確保している。しかしながら、そのように緩衝体20の上壁部21の下面とキャビネット10の天板上面11との接触面積を広くすると、それだけ図9に示した重なり領域Zが広くなり、その重なり領域Zに現れるプレッシャーマークMが目立ちやすくなることになる。また、緩衝体20をキャビネット10に着脱するときに緩衝体10がキャビネット10の天板上面11に擦傷痕を残すといった事態が起こりやすくなる。
【0032】
そこで、この実施形態では、図3及び図4に示した緩衝体20の構成を適用することによって、嵌合安定性を低下させることなく、プレッシャーマークMや擦傷痕の発生を抑制している。以下に緩衝体20の構成を図3及び図4、又は、図5を参照して説明し、その作用を図6を参照して説明する。
【0033】
図3は緩衝体20を斜め上方から見て説明的に示した概略斜視図、図4は緩衝体20を斜め下方から見て説明的に示した概略斜視図、図5は変形例による緩衝体を斜め下方から見て説明的に示した概略斜視図である。また、図6は電気機器梱包構造の要部を垂直断面図によって示した作用説明図である。
【0034】
図3及び図4に示した緩衝体20は、上壁部21と、下壁部22と、それらの上壁部21と下壁部22とが上端部及び下端部に連結された平面視L形状の立上り壁部23とを一体に備えた樹脂発泡体でなる。この緩衝体20は、上壁部21と下壁部22と立上り壁部23とによって形作られている凹入部25にキャビネット10のコーナ部が相対的に嵌合される(図2参照)。
【0035】
上壁部21や下壁部22は、それらの下面の面積を十分に広く定めてある。具体的には、図7を参照して説明した従来例の緩衝体20のそれらと同程度の面積に定めてあり、その程度の面積を確保しておくことによって、上記した嵌合安定性の低下を防ぐことを意図している。
【0036】
図4に明確に示したように、上壁部21の下面には、比較的広い領域に亘る凹所26が形成されている。この凹所26はその表面(上壁部21の下面の一部を形成している)が平坦面に形成されている。そして、凹所26の形成箇所を除く部分に下向き凸条部27が形成されている。図例では、この下向き凸条部27が、上壁部21と立上り壁部23とによって形作られている入隅箇所に、連続するL字型ないし略L字形の細幅線状突起として形成されていて、凹所26の形成箇所の表面からの下向き凸条部27の出幅(段差)寸法Hは1mm程度、好ましくは1mm以下に定めてある(図6拡大部分参照)。また、下向き凸条部27はその長さ方向全体に亘って同一又は略同一の幅寸法W1を有している。
【0037】
これに対し、上壁部21の上面側には、その上壁部21の上面に凹所29を形成することによって上向き凸条部28が形作られている。図例では、この上向き凸条部28が、上壁部21の外縁に沿う部分に、連続するL字型ないし略L字形のリブ状突起として形成されている。上向き凸条部28の幅寸法W2は、後述する積載荷重によって上向き凸条部28が押し潰されない程度の耐圧縮強度を当該上向き凸条部28に付与しておくのに十分な値に定められている。しかも、上向き凸条部28は、上記した下向き凸条部27に上下方向で重ならないように横方向に寸法X(図6拡大部分参照)だけ位置ずれした箇所に位置している。
【0038】
図3及び図4に示した緩衝体20のサイズは、従来例に採用されている緩衝体20(図7又は図8参照)のサイズを基本として定められている。そして、図3及び図4に示した緩衝体20は、その全体高さ及び縦横の各幅が、図7又は図8に示した緩衝体20の全体高さ及び縦横の各幅と同一になっていると共に、上壁部21の厚さも図7又は図8に示した緩衝体20の上壁部21の厚さと同一になっている。そのため、上壁部21の下向き凸条部27を形成するための手段として、上壁部21の下面に凹所26を形成することによって、その凹所26の形成箇所を除く部分に下向き凸条部27を形作るという手段を採用している。また、上壁部21の上向き凸条部28を形成するための手段として、上壁部21の上面に凹所29を形成することによって上向き凸条部28を形作るという手段を採用している。これらの手段によって下向き凸条部27や上向き凸条部28を形成しておくと、この緩衝体20を採用する梱包箱40として従来例に採用した梱包箱40をそのまま用いることが可能であり、しかも、緩衝体20の成形用金型も、従来例に採用した緩衝体20の成形用金型に一定の修正を加えるだけで済むという利点がある。
【0039】
次に、図1、図2又は図6を参照してこの実施形態に係る電気機器梱包構造の作用などを説明する。
【0040】
図1又は図2によって判るように、梱包状態では、電気機器Aのキャビネット10の4隅に嵌合されている4つの緩衝体20…が、梱包箱40の胴体部43とキャビネット10とにより挟まれることにより、キャビネット10が梱包箱40の内部で前後、左右に位置決めされる。また、梱包箱40の天蓋41と底蓋42とによりそれぞれの緩衝体20が挟まれて、キャビネット10が梱包箱40の内部で高さ方向に位置決めされている。また、キャビネット10のコーナ部を形作っている外周側板13に緩衝体10の立上り壁部23が対峙している。
【0041】
そして、緩衝体20については、上壁部20の下面に形成されている下向き凸条部27が下面27aだけがキャビネット10の天板上面11に当接していて、上壁部20の下面に形成されている凹所26の表面(平坦面)は、通常は天板上面11との間に隙間を形成している。上記したように、凹所26の形成箇所の表面からの下向き凸条部27の出幅(段差)寸法Hは1mm程度、好ましくは1mm以下に定めてあるので、上記隙間の間隔寸法は最大でも出幅寸法Hと同じ寸法になる。しかしながら、実際上は、緩衝体20の上壁部21が、キャビネット10の天板上面11に対して上記した「押圧下の当接状態」になっていることがあり、その場合には、下向き凸条部27が少し圧潰されて出幅寸法Hよりも短くなる。また、積載荷重Fによっても、上壁部21がキャビネット10の天板上面11に対して「押圧下の当接状態」になっていることがあるので、その場合にも、下向き凸条部27が少し圧潰されて出幅寸法Hよりも短くなる。さらに、場合によっては、下向き凸条部27が圧潰されて凹所26の平坦な表面がキャビネット10の天板上面11に対して「非押圧下の当接状態」になることもあり得る。
【0042】
また、図6のように、この実施形態では、緩衝体20の立上り壁部43とキャビネット10の外周側板13とを間隔Sを隔てて対峙させておくことによって、下向き凸条部27の下面27aとキャビネット10の天板上面11との掛り幅(重なり幅)Cを10mm程度、好ましくは10mm以下に限定してあり、そうすることによって、下向き凸条部27の下面27aをキャビネット10の天板上面11のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに当接させている。
【0043】
また、図6のように、緩衝体20の上壁部21は、その上面の全体が梱包箱40の天蓋41に当接しているのではなく、上向き凸条部28の上面28aだけに当接して重なり合っている。
【0044】
以上のように構成されている電気機器梱包構造によれば、緩衝体20の上壁部21の下向き凸条部27が矢印fのようにキャビネット10の天板上面11を押圧して上記した「押圧下の当接状態」で当接している場合であっても、下向き凸条部27による押圧箇所が、キャビネット10の天板上面11のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに限定される。そのため、キャビネット10の天板上面11にプレッシャーマークが現れないか、現れたとしても天板上面11のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに限定されて目立ちにくくなる。
【0045】
また、梱包を段積みしたときの積載荷重Fが、梱包箱40の天蓋41及び緩衝体20の上壁部21に付加されたとしても、その積載荷重Fが緩衝体20の上壁部21の上向き凸条部28によって受け止められ、しかも、その上向き凸条部29が、下向き凸条部27に上下方向で重ならないように横方向に寸法Xだけ位置ずれした箇所に位置しているために、その積載荷重Fは主に緩衝体20の立上り壁部23によって受け止められるようになり、上壁部21の下向き凸条部28をキャビネット10の天板上面11に押し付ける力としては作用しないか、あるいは、ほとんど作用しない。そのため、積載荷重Fにより下向き凸条部28の下面がキャビネット10の天板上面11に押し付けられてプレッシャーマークが現れるという事態は起こらない。
【0046】
それにもかかわらず、緩衝体20の上壁部21や下壁部22の全体の大きさは、従来例のそれと同程度になっている。しかも、上壁部21の下向き凸条部27の出幅寸法Hが1mm程度、好ましくは1mm以下というきわめて短い寸法に定められているために、上壁部21の凹所26の平坦な表面とキャビネット10の天板上面11との間にはきわめて微細な隙間が存在しているに過ぎない。そのため、キャビネット10のコーナ部からの緩衝体20の脱落は、緩衝体20の上壁部21又は下壁部22の全体によって阻止されることになり、そのことが、キャビネット10のコーナ部に対する緩衝体20の嵌合安定性の低下を防ぐことに役立っている。
【0047】
さらに、キャビネット10のコーナ部に対して緩衝体20を着脱するときにキャビネット10の天板上面11に主に擦れ合うのは、緩衝体20の上壁部21の下面全体ではなく、その上壁部21の下面に形成されている下向き凸条部27の下面だけである。そのため、キャビネット10のコーナ部に対して緩衝体20を着脱するときに、その上壁部21の下面全体がキャビネット10の天板上面11に擦れて擦傷痕を残すといった事態が生じにくい。また、仮に擦傷痕が残ったとしても、その痕跡が、天板上面11のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに限定されて残るだけでなってほとんど目立たず、外観品位を低下させることにはならない。
【0048】
以上説明した実施形態では、緩衝体20の上壁部21に設けられる下向き凸条部27が、キャビネット10の天板上面11のコーナ部端縁に沿って連続するL字形に形成されている事例を説明した。しかし、この点は、図5に変形例として示したように、緩衝体20の上壁部21に設けられる下向き凸条部27が、断続的にL字形に並んでいる複数の下向き凸部31によって形成されていてもよい。この変形例による緩衝体20についても、図6を参照して説明したところと同様に、その下向き凸条部27の下面27aだけがキャビネット10の天板上面11のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに当接する。
【0049】
なお、図3及び図4、並びに図5に示した緩衝体20では、下壁部22の下面側に、その下壁部22の下面に凹所を形成することによって下向き凸条32を形成してある。そして、梱包を段積みしたときには、その下向き凸条32が、下段側梱包の梱包箱40の天蓋41を挟んで、下段側梱包の梱包箱40に収容されている緩衝体20の上壁部21の上向き凸条部28の真上に位置するようになっている。こうしておくと、梱包を段積みしたときの積載荷重Fの全体が下段側梱包の緩衝体20の立上り壁部23によって受け止められるようになり、積載荷重Fにより下向き凸条部28の下面がキャビネット10の天板上面11に押し付けられてプレッシャーマークが現れるという事態は起こらない。
【符号の説明】
【0050】
A 電気機器
10 キャビネット
11 キャビネットの天板上面
13 キャビネットの外周側板
20 緩衝体
21 上壁部
22 下壁部
23 立上り壁部
26 上壁部の下面の凹所
27 下向き凸条部
27a 下向き凸条部の下面
28 上向き凸条部
28a 上向き凸条部の上面
29 上壁部の上面の凹所
31 下向き凸部
40 梱包箱
41 天蓋
42 底蓋
43 胴体部
C 下向き凸条部の下面とキャビネットの天板上面との掛り幅
H 下向き凸条部の出幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角筒形の胴体部にその上下の開口を塞ぐ底蓋及び天蓋が連設された厚紙でなる梱包箱と、この梱包箱に収容された電気機器の箱形のキャビネットの4隅のコーナ部に嵌合されて、上記梱包箱の底蓋及び天蓋の相互間に挟まれて上記キャビネットを上記梱包箱の内部で位置決めする樹脂発泡体でなる緩衝体と、を備え、
キャビネットの上記コーナ部に嵌合された緩衝体に、上記キャビネットの天板上面に当接する上壁部と、上記キャビネットの底板下面に当接する下壁部と、これらの上壁部と下壁部とが上端部及び下端部に連設されて、上記キャビネットのコーナ部を形作っている外周側板に対峙する平面視L形状の立上り壁部と、が備わり、上記上壁部と下壁部とによって上記キャビネットに対する当該緩衝体の嵌合状態が維持されるように構成されている電気機器梱包構造において、
上記緩衝体の上壁部の下面に凹所を形成することにより、その上壁部の下面の凹所形成箇所を除く部分に形作られた下向き凸条部の下面だけを上記キャビネットの天板上面に当接させてあると共に、上記上壁部の上面側には、上記下向き凸条部に上下方向で重ならないように横方向に位置ずれした箇所で上記立上り壁部の高さ方向上部に上向き凸条部が形成され、上記梱包箱の天蓋がその上向き凸条部の上面だけに当接して重なり合っていることを特徴とする電気機器梱包構造。
【請求項2】
上記上向き凸条部が、上記上壁部の上面に凹所を形成することによって形作られている請求項1に記載した電気機器梱包構造。
【請求項3】
上記下向き凸条部の下面が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁を含む細幅領域だけに当接している請求項1に記載した電気機器梱包構造。
【請求項4】
上記下向き凸条部が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁に沿って連続するL字形に形成されている請求項3に記載した電気機器梱包構造。
【請求項5】
上記下向き凸条部が、上記キャビネットの天板上面のコーナ部端縁に沿って断続的にL字形に並んでいる複数の下向き凸部によって形成されている請求項3に記載した電気機器梱包構造。
【請求項6】
上記細幅領域での上記下向き凸条部の下面とキャビネットの天板上面との掛り幅の寸法が10mm以下に定められている請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載した電気機器梱包構造。
【請求項7】
上記緩衝体の上壁部の下面の凹所形成箇所の表面が平坦面に形成されていて、その凹所形成箇所を除く部分に形作られた下向き凸条部の上記平坦面からの出幅が1mm以下に定められている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載した電気機器梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−188153(P2012−188153A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54794(P2011−54794)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】