説明

電気機器

【課題】基板本体の小型化を図りつつ充填材の充填作業効率を確保できる配線基板を提供する。
【解決手段】筒状のケース体12の軸方向に沿う溝状保持部23に両側部をそれぞれ保持して基板本体31をケース体12に収納する。溝状保持部23と電子部品32との間に対応する位置にて基板本体31に孔部34を形成する。溝状保持部23と電子部品32との間の基板本体31の両側部のデッドスペースを有効に利用してケース体12に充填する合成樹脂を基板本体31の裏面側から表面側へと回り込ませる。基板本体31の小型化を図りつつ合成樹脂の充填作業効率を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に配線基板が収納され、さらに充填材が充填されるケース体を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を実装した基板本体を、金属製などのケース体に収納する配線基板においては、電子部品の温度低減や外部からの水気の侵入の防止のために、ケース体内に充填材として樹脂を盛り上げ、この樹脂を押し広げるように基板本体をケース体に取り付けた後、この樹脂を熱硬化させる構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−141676号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の電気機器では、基板本体を樹脂に埋没させる際に、基板本体の裏面側に配置された樹脂を表面側へと通過させるために、連通用の孔部などを設けることが考えられる。
【0004】
しかしながら、このような孔部を設けるためには、そのスペースを確保するために基板本体の大きさが大きくなるという問題点を有している。
【0005】
特に、高密度実装をした基板本体では、連通用の孔部を設けるためのスペースを確保することが容易でなく、このような孔部を設けることができない場合には、樹脂の回りが悪化して充填作業の効率が低下したり、望ましくない空気層が形成されてしまったりするおそれがある。
【0006】
しかも、充填する樹脂の絶縁性や硬化性などの性能を高めると、その粘度が高くなるため、より回り込みにくくなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、基板本体の小型化を図りつつ充填材の充填作業効率を確保できる電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の電気機器は、内側に一対の溝状保持部が形成された筒状のケース体と;板状に形成され、前記筒状のケース体の内部の一対の溝状保持部に側部がそれぞれ保持された状態で前記ケース体に収納される基板本体と;前記ケース体内に充填された充填材と;この基板本体に実装された電子部品と;前記ケース体に収納された状態で前記溝状保持部と前記電子部品との間に対応する位置に穿設された孔部と;を具備しているものである。
【0009】
ケース体は、例えば、金属などにより筒状に形成されたものなどが用いられる。
【0010】
充填材は、例えば、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂などの流動性、放熱性および絶縁性に優れた部材が用いられる。
【0011】
基板本体は、例えば、電子部品を両面に実装した両面実装プリント配線基板などが用いられる。
【0012】
孔部は、例えば、基板に形成される開口である。
【0013】
そして、筒状のケース体の軸方向に沿う溝状保持部に側部がそれぞれ保持されてケース体に収納される基板本体に、溝状保持部と電子部品との間に対応する位置にて孔部を形成することで、溝状保持部と電子部品との間の基板本体の側部のデッドスペースを有効に利用してケース体に充填される充填材を基板本体の一面側から他面側へと回り込ませ、基板本体の小型化を図りつつ充填材の充填作業効率が確保される。
【0014】
請求項2記載の電気機器は、請求項1記載の電気機器において、孔部が溝状保持部に沿うスリット状に形成されているものである。
【0015】
そして、孔部を溝状保持部に沿うスリット状に形成することで、側部に集中的に孔部を設けて、孔部の形成が容易になるとともに、基板本体の中央部の剛性が低下しにくくなり、電子部品を自動機により実装する場合などの作業性が低下することがない。
【0016】
請求項3記載の電気機器は、請求項1または2記載の電気機器において、配線基板の電子部品が、ケース体の内面に固着されたスイッチ素子であるものである。
【0017】
そして、電子部品をケース体の内面に固着したスイッチ素子とすることで、スイッチ素子の基板本体側とケース体の内面との間に狭い隙間が形成されるものの、この位置には孔部が位置しているので、この孔部から隙間に充填材が回り込み、確実に充填される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の電気機器によれば、筒状のケース体の軸方向に沿う溝状保持部に側部がそれぞれ保持されてケース体に収納される基板本体に、溝状保持部と電子部品との間に対応する位置にて孔部を形成することで、溝状保持部と電子部品との間の基板本体の側部のデッドスペースを有効に利用してケース体に充填される充填材を基板本体の一面側から他面側へと回り込ませ、基板本体の小型化を図りつつ充填材の充填作業効率を確保できる。
【0019】
請求項2記載の電気機器によれば、請求項1記載の電気機器の効果に加えて、孔部を溝状保持部に沿うスリット状に形成することで、側部に集中的に孔部を設けて、孔部の形成が容易になるとともに、基板本体の中央部の剛性が低下しにくくなり、電子部品を自動機により実装する場合などの作業性が低下することがない。
【0020】
請求項3記載の電気機器によれば、請求項1または2記載の電気機器の効果に加えて、電子部品をケース体の内面に固着したスイッチ素子とすることで、スイッチ素子の基板本体側とケース体の内面との間に狭い隙間が形成されるものの、この位置には孔部が位置しているので、この孔部から隙間に充填材が回り込み、確実に充填できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1ないし図5に第1の実施の形態を示し、図1は電気機器の正面断面図、図2は電気機器を下側から示す平面図、図3は電気機器の側面断面図、図4は電気機器の分解斜視図、図5は電気機器の製造方法の説明図である。
【0023】
図1ないし図4に、電気機器としての放電灯点灯装置11を示し、この放電灯点灯装置11は、ケース体12に配線基板13を収納して構成され、高輝度放電ランプ(HID)などの放電灯を点灯させるものである。
【0024】
ケース体12は、例えば金属などにより角筒状に形成されたケース本体15と、このケース本体15の両端部に取り付けられたシール部材であるパッキン16,17および蓋部18,19とを備えている。
【0025】
ケース本体15は、一端部に開口部である開口部21を備えるとともに、他端部に開口部22を備えている。また、このケース本体15の内側の両側部には、配線基板13の両側部が嵌合される溝状保持部23,23が互いに対向して設けられている。
【0026】
これら溝状保持部23,23は、ケース本体15の軸方向である長手方向に沿って直線状に形成され、両端部が各開口部21,22に臨んでおり、これら溝状保持部23,23間に配線基板13が嵌合保持されることで、ケース本体15内には、配線基板13の一主面である表面側に第1空間部25が区画されるとともに、配線基板13の他主面である裏面側に第2空間部26が区画される。なお、ここでは、第1空間部25が広く、第2空間部26が狭く形成されているものとする。
【0027】
また、開口部21は、パッキン16と蓋部18とにより覆われている。パッキン16は、ケース本体15内に充填される充填材である合成樹脂Pの隙間からの漏れを防止するもので、弾力性および可撓性を有する部材により形成されている。また、蓋部18は、例えばケース本体15と同様の金属により形成され、ねじS1などによりパッキン16とともにケース本体15に固定可能である。
【0028】
ここで、合成樹脂Pは、例えばウレタン樹脂、あるいはシリコーン樹脂などの流動性、絶縁性および放熱性を有する液状原料の部材で、かつ、熱硬化性の部材とする。
【0029】
一方、開口部22は、パッキン17と蓋部19とにより閉塞されている。パッキン17は、パッキン16と同様に、ケース本体15内に充填される合成樹脂Pの隙間からの漏れを防止するもので、弾力性および可撓性を有する部材により形成されている。また、蓋部19は、例えばケース本体15と同様の金属により形成され、ねじS2などによりパッキン17とともにケース本体15に固定可能である。
【0030】
また、配線基板13は、四角形板状の基板本体31と、この基板本体31の表面、あるいは裏面に実装された点灯回路部品である電子部品32とを備えたプリント配線基板である。
【0031】
基板本体31は、例えばガラスエポキシなどの絶縁性の部材により形成され、幅方向の一側近傍に、孔部34が穿設されている。
【0032】
この孔部34は、例えば基板本体31の長手方向に沿って長手状(スリット状)に形成されており、配線基板13の両側を溝状保持部23,23に保持した状態で、溝状保持部23,23の外部の位置している。さらに、この孔部34は、溝状保持部23と電子部品32との間に対応する位置に形成されている。
【0033】
また、電子部品32は、例えばコンデンサ、抵抗器、インダクタ、トランジスタ、あるいはICなどであり、基板本体31上に形成された図示しないパターンなどとともに、所定の回路、ここでは図示しない放電灯を点灯させるインバータを備えた点灯回路を、基板本体31上に形成している。なお、各図において、電子部品32は一部のみを記載し、その配置は任意に設定可能である。
【0034】
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
【0035】
放電灯点灯装置11を組み立てる際には、まず、図5(a)に示すように、開口部22にパッキン17と蓋部19とを固定して開口部22を閉塞したケース本体15を、開口部21を上側とした状態で保持し、各電子部品32を実装した配線基板13の基板本体31の両側部をケース本体15の溝状保持部23,23に嵌合させ、ケース本体15の軸方向へと摺動させて挿入することで、配線基板13をケース本体15内に収納する。
【0036】
この状態で、図5(b)に示すように、ここでは開口部21から合成樹脂PをノズルNにより第1空間部25へと注入すると、この第1空間部25へと流れ込んだ合成樹脂Pの一部が、配線基板13の下端側から図5(c)に示すように孔部34を介して第2空間部26へと回り込む。
【0037】
なお、合成樹脂Pを第2空間部26へと注入した場合でも、同様の作用により合成樹脂Pが孔部34を介して第1空間部25へと回り込む。
【0038】
さらに、図5(d)に示すように、ケース本体15内に合成樹脂Pが充填されると、パッキン16および蓋部18により開口部21を覆い、パッキン16および蓋部18をケース本体15に固定する。
【0039】
そして、この状態で、図5(e)に示すように、ケース体12を所定温度下で所定時間熱処理することで合成樹脂Pを硬化させて、放電灯点灯装置11を完成する。
【0040】
この後、外部から入力された電力を高周波交流電力に変換する点灯回路の出力により放電灯が点灯される。
【0041】
以上のように、上記第1の実施の形態では、角筒状のケース体12の軸方向に沿う溝状の溝状保持部23,23に両側部をそれぞれ保持してケース体12に収納される基板本体31に、溝状保持部23と電子部品32との間に対応する位置にて孔部34を形成する構成とした。一般に、電子部品32は、絶縁性などを考慮して、基板本体31をケース体12の収納した状態で溝状保持部23,23の近傍から離間した位置となるように基板本体31に実装されているため、溝状保持部23と電子部品32との間には基板本体31にデッドスペースが形成されているから、このデッドスペースを有効に利用してケース体12に充填される合成樹脂Pを基板本体31の一面側から他面側へと、すなわち第1空間部25から第2空間部26へと孔部34を介して回り込ませることにより、基板本体31の小型化を図りつつ合成樹脂Pの充填作業効率を確保できる。
【0042】
また、孔部34を基板本体31の長手方向に沿った長孔スリット状とすることで、合成樹脂Pを、より通過させやすくできるとともに、基板本体31の側部に集中的に孔部34を設けて、孔部34の形成が容易になり、かつ、基板本体31の中央部の剛性が低下しにくくなり、電子部品32を例えば自動機などにより実装する場合などの作業性が低下することがない。
【0043】
さらに、上記配線基板13を、両側部を溝状保持部23,23に保持してケース体15に収納することで、このケース体15に合成樹脂Pを充填した際に、この合成樹脂Pが孔部34を介して基板本体31の一面側から他面側へと通過するので、全体の小型化を図りつつ合成樹脂Pの充填作業効率を確保できる。
【0044】
そして、基板本体31は、放電灯を点灯させる点灯回路部品を実装したことで、このような放電灯点灯装置に対しても対応させて用いることができる。
【0045】
次に、図6ないし図9に第2の実施の形態を示し、図6は電気機器の正面断面図、図7は電気機器を下側から示す平面図、図8は電気機器の側面断面図、図9は電気機器の分解斜視図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、図6ないし図9に示すように、電子部品としてのスイッチ素子であるトランジスタ32aに、ねじ36により放熱板であるアルミニウム製の放熱板Hが取り付けられ、トランジスタ32aが、この放熱板Hを介してケース体12の内面に固着されているものである。
【0047】
この放熱板Hは、配線基板13の長手方向に沿って長手状に形成されている。また、この放熱板Hは、孔部34の上方に対向する位置にて、基板本体31の表面から離間された位置に、ねじ36によりケース体12の側面に熱伝導可能に固定されている。
【0048】
そして、合成樹脂Pを注入すると、孔部34から合成樹脂Pが回り込むなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏するとともに、電子部品をケース体12の内面に固着したトランジスタ32aとすることで、トランジスタ32aの基板本体31側とケース体12の内面との間に狭い隙間が形成されるものの、この位置には孔部34が位置しているので、この孔部34から隙間に合成樹脂Pが確実に回り込み、合成樹脂Pを確実に充填できる。
【0049】
また、孔部34は、放熱板Hに沿って長孔状に形成することで、放熱板H全体と基板本体31との隙間に、合成樹脂Pを確実に入り込ませることができる。
【0050】
なお、上記各実施の形態において、孔部34は、スリット状の長孔としたが、配線基板13の耐熱性や機械的な強度およびケース体12内のスペースを考慮して、他の任意の形状としてもよい。
【0051】
さらに、ケース体12に注入する充填材は、充填時に流動性を有し、硬化後に絶縁性および放熱性などを有するものであれば、上記合成樹脂Pに限定されるものではない。
【0052】
そして、電気機器は、放電灯を点灯させる点灯回路部品を用いた放電灯点灯装置に限らず、その他の電力変換装置や、別の電気機器などにも適用することもでき、同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す電気機器の正面断面図である。
【図2】同上電気機器を下側から示す平面図である。
【図3】同上電気機器の側面断面図である。
【図4】同上電気機器の分解斜視図である。
【図5】同上電気機器の製造方法の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す電気機器の正面断面図である。
【図7】同上電気機器を下側から示す平面図である。
【図8】同上電気機器の側面断面図である。
【図9】同上電気機器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
11 電気機器としての放電灯点灯装置
12 ケース体
23 溝状保持部
31 基板本体
32 電子部品
32a 電子部品としてのスイッチ素子であるトランジスタ
34 孔部
P 充填材である合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に一対の溝状保持部が形成された筒状のケース体と;
板状に形成され、前記筒状のケース体の内部の一対の溝状保持部に側部がそれぞれ保持された状態で前記ケース体に収納される基板本体と;
前記ケース体内に充填された充填材と;
この基板本体に実装された電子部品と;
前記ケース体に収納された状態で前記溝状保持部と前記電子部品との間に対応する位置に穿設された孔部と;
を具備していることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
孔部が溝状保持部に沿うスリット状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項3】
配線基板の電子部品が、ケース体の内面に固着されたスイッチ素子である
ことを特徴とする請求項1または2記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−38151(P2009−38151A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199860(P2007−199860)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】