説明

電気機器

【課題】電力変換装置を収納するケースにおける電力変換装置の第1の導電部材に締結される第2の導電部材の挿入用の開口部を小さくすることができるとともに切り粉対策を講じることができる電気機器を提供する。
【解決手段】ケース11内にインバータが収納され、インバータはケース11内において延びる内部バスバー25を有する。出力バスバー30がケース11外のモータに繋がっており、出力バスバー30がケース11の開口部11aを通してケース11内に延びている。ケース11内においてボルト40がバスバー25,30を貫通している。ケース11内においてナット収容箱70が電流センサ60に固定され、ナット収容箱70にはナット50が収容され、ナット50にボルト40が螺入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータと他の構造とをバスバーを用いて連結することが行われている(特許文献1等)。
その一例を、図7を用いて説明する。図7(a)に示すように、車両用のパワーコントロールユニット(PCU)においてケース100を有し、ケース100内にインバータが収納されている。インバータによりバッテリからの直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換する。また、ケース100内においてパワーコントロールユニットの内部バスバー101が配置されている。ケース100の外部においてモータ用コネクタ110とバッテリ用コネクタ120が設けられ、モータ用コネクタ110における入出力バスバー130がモータに繋がっているとともにバッテリ用コネクタ120における入出力バスバー130がバッテリに繋がっている。入出力バスバー130には図7(c)に示すように、ナット140が一体的に設けられている。そして、入出力バスバー130を、ケース100に設けた開口部100aからケース100内に挿入し、ケース100内において図7(b)に示すように、内部バスバー101と入出力バスバー130とを重ねるとともに、ボルト150をナット140に螺入して締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−289243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入出力バスバー130側にナット140が設けられているためにケース100の開口部100aの幅Wが大きくなってしまっている。また、切り粉対策のために袋ナットに変更すると、更にケース開口部100aの幅Wが大きくなってしまう。さらに、切り粉対策としてケース100内部において他の部品との間に壁を設けたりカバーを設けるとパワーコントロールユニット自体の大型化を招くとともにコストアップを招いてしまう。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、電力変換装置を収納するケースにおける電力変換装置の第1の導電部材に締結される第2の導電部材の挿入用の開口部を小さくすることができるとともに切り粉対策を講じることができる電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、ケース内に収納され、前記ケース内において延びる第1の導電部材を有する電力変換装置と、前記ケース外に配置された負荷および電源の少なくとも一方に繋がり、前記ケースの開口部を通して前記ケース内に延びる第2の導電部材と、前記ケース内において前記第1の導電部材および前記第2の導電部材を貫通するボルトと、前記ケース内において前記ボルトが螺入されて前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを締結して前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを電気的に接続するナットと、前記ケース内に配置され、前記第1の導電部材に流れる電流を検出する電流センサと、前記ケース内において前記電流センサに固定され、前記ナットを収容するナット収容部材と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、電力変換装置の第1の導電部材がケース内において延びている。ケース外に配置された負荷および電源の少なくとも一方に繋がる第2の導電部材がケースの開口部を通してケース内に延びている。
【0008】
ここで、ケース内において第1の導電部材に流れる電流を検出する電流センサが配置されており、この電流センサにナット収容部材が固定され、ナット収容部材においてナットが収容されている。
【0009】
一方、ケース内においてボルトが第1の導電部材および第2の導電部材を貫通し、ナットにボルトが螺入されて第1の導電部材と第2の導電部材とが締結されて第1の導電部材と第2の導電部材とが電気的に接続されている。
【0010】
その結果、第2の導電部材にナットを設けることなく、電力変換装置を収納するケースにおける電力変換装置の第1の導電部材に締結される第2の導電部材の挿入用の開口部を小さくすることができる。また、ナット収容部材にナットが収容されているので、ボルトのナットへの螺入時に発生する切り粉はナット収容部材から外部に出ることを防止して切り粉対策を講じることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電気機器において、前記電流センサと前記ナット収容部材とを一体化したことを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、電流センサとナット収容部材とが一体化されているので、部品管理が容易となる。
【0012】
請求項3に記載のように、請求項1または2に記載の電気機器において、前記第1の導電部材および前記第2の導電部材は、バスバーであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換装置を収納するケースにおける電力変換装置の第1の導電部材に締結される第2の導電部材の挿入用の開口部を小さくすることができるとともに切り粉対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本実施形態におけるパワーコントロールユニットの一部正面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図2】パワーコントロールユニットの一部下面図。
【図3】パワーコントロールユニットの分解斜視図。
【図4】パワーコントロールユニットの電気的構成を示す回路図。
【図5】(a)はパワーコントロールユニットの内部バスバーの先端部における正面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
【図6】パワーコントロールユニットの内部の一部を示す分解斜視図。
【図7】(a)は背景技術を説明するためのパワーコントロールユニットの分解斜視図、(b)はパワーコントロールユニットの一部断面図、(c)は入出力バスバーの先端部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)には、本実施形態における電気機器としての車両用のパワーコントロールユニット(PCU)10の一部正面図を示す。図1(a)のA−A線での縦断面を図1(b)に示す。図2にはパワーコントロールユニット10の一部下面図を示す。さらに、図3には、パワーコントロールユニット10の分解斜視図を示す。図4には、パワーコントロールユニット10の電気的構成を示す。
【0016】
パワーコントロールユニット10は、電力変換装置としてのインバータ20(図4参照)と、図1に示す3本の出力バスバー30と、3つのボルト40と、3つのナット50と、3つの電流センサ60と、3つのナット収容箱70を備えている。
【0017】
図4に示すようにインバータ20には、バッテリ80と負荷としての三相モータ90が接続され、インバータ20はモータ90を三相交流で駆動する。
また、インバータ20におけるモータ90へのU,V,W相の各出力ラインには電流センサ60がそれぞれ設けられ、制御回路21は電流センサ60によって検出された電流値に基づいて出力を制御する。
【0018】
電力変換装置としてのインバータ20が図1のケース11内に収納されている。ケース11は箱型をなしている。
インバータ20は第1の導電部材としての3本の内部バスバー25を有している。内部バスバー25は、ケース11内において下方に延びている。内部バスバー25は断面が長方形の帯板であり、直線的に延設されている。
【0019】
負荷としてのモータ90がケース11外に配置され、第2の導電部材としての3本の出力バスバー30がモータ90にケーブルやコネクタ等を介して繋がっており、出力バスバー30を用いてケース11内のインバータ20と接続される。出力バスバー30は断面が長方形の帯板であり、直線的に延設されている。
【0020】
図2に示すように、箱型のケース11の底板部には、出力バスバー30を挿入するための開口部11aが形成されている。ケース11の開口部11aは長方形状をなし、短辺の長さ、即ち、開口部11aの幅W1は出力バスバー30の厚さよりも若干大きくなっている。この開口部11aを通して出力バスバー30が下方からケース11内に挿入され、出力バスバー30の先端側がケース11内に延びている。
【0021】
図5,6に示すように、内部バスバー25の先端部にはボルト挿通用の貫通孔25aが形成されている。同様に、図6に示すように、出力バスバー30の先端部にはボルト挿通用の貫通孔30aが形成されている。
【0022】
ケース11内において、ボルト40が出力バスバー30の貫通孔30aおよび内部バスバー25の貫通孔25aを通っている(内部バスバー25および出力バスバー30を貫通している)。ボルト40は、図3等に示すケース11の開口部(ねじ止め用穴)11bを通して後記するナット50に螺入されている。よって、ケース11内において、ボルト40がナット50に螺入されて内部バスバー25と出力バスバー30とが締結され、これにより、内部バスバー25と出力バスバー30とが電気的に接続されている。
【0023】
ケース11内には3つの電流センサ60が配置されている。各電流センサ60は各内部バスバー25の先端部を貫通する状態で配置されている。各電流センサ60はケース11内に配置された部材に支持されている。電流センサ60により内部バスバー25に流れる電流が検出される。
【0024】
ケース11内において、図5に示すように、各電流センサ60にはナット収容部材としてのナット収容箱70がそれぞれ固定されている。ナット収容箱70は樹脂よりなり、直方体をなしている。ナット収容箱70には凹部71が形成され、凹部71は六角形状をなしている。この凹部71に六角ナット50が嵌め込まれ、ナット収容箱70にナット50を収容した構成となっている。凹部71はその深さがナット50の厚さよりも大きくなっている。ナット収容箱70における凹部71の開口部には内部バスバー25が当該凹部71の開口部を塞ぐように配置される。このとき、内部バスバー25の貫通孔25aが凹部71の開口部に位置している。
【0025】
このように電流センサ60に固定されたナット収容箱70にナット50がボルト40を螺入可能な状態で埋め込まれている。また、本実施形態では、電流センサ60とナット収容箱70とは一体化されている。
【0026】
パワーコントロールユニット10の組み立ては次のようになる。
インバータ20の内部バスバー25がケース11内において先端側が下方を向くように延びている。また、ケース11内において内部バスバー25に流れる電流を検出する電流センサ60が配置されている。この電流センサ60にナット収容箱70が固定され、ナット収容箱70においてナット50が収容されている。
【0027】
そして、ケース11外に配置されたモータ90に出力バスバー30がケーブルやコネクタ等を介して繋がっており、出力バスバー30がケース11の開口部11aを通してケース11内に挿入される。さらに、図6に示すように、ケース11内においてボルト40が出力バスバー30の貫通孔30aおよび内部バスバー25の貫通孔25aを通り(出力バスバー30および内部バスバー25を貫通し)、ナット50に螺入される。これにより、内部バスバー25と出力バスバー30とが締結される。その結果、内部バスバー25と出力バスバー30とが電気的に接続される。
【0028】
このように、出力バスバー30にナットを設ける必要がない。その結果、インバータ20を収納するケース11におけるインバータ20の内部バスバー25に締結される出力バスバー30の挿入用の開口部11aの幅W1(図2参照)を小さくすることができる。
【0029】
また、ボルト40のナット50への螺入時に切り粉が発生するが、凹部71はナット50よりも深く形成されており、切り粉はナット収容箱70の凹部71の内部に溜まる。よって、外に切り粉は出ない。つまり、ナット収容箱70にナット50が収容されているので、ボルト40のナット50への螺入時に発生する切り粉はナット収容箱70から外部に出ることを防止して切り粉対策を講じることができる。
【0030】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)樹脂製のナット収容箱70を作り、このナット収容箱70にナット50を挿入し、ナット収容箱70を電流センサ60に取り付けた。これにより、ケース11における開口部11aの幅W1を縮小することができる。また、切り粉対策としてケース内部において他の部品との間に壁を設けたりカバーを設ける必要がない。これにより、切り粉対策用のコスト低減を図ることができるとともに、切り粉対策分だけのパワーコントロールユニット10のサイズを減らすことができる。
【0031】
(2)電流センサ60とナット収容箱70とは一体化されているので、部品管理が容易である。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0032】
・電流センサ60とナット収容箱70とを一体化したが、別体でもよい。このとき、ナット収容箱70の電流センサ60への取り付けは、ボルト締めでもよいし、他にも、嵌合による固定でもよい。
【0033】
・ナット収容箱70にナット50をインサートして一体成型してもよい。このとき、ナットは袋ナットであってもよい。
・電流センサ60の蓋とナット収容箱70を兼用してもよい。この場合、更にコスト低減を図ることができる。
【0034】
・負荷であるモータ90をインバータ20に接続する場合について説明したが、電源としてのバッテリ80を接続する場合に適用してもよい。他にも、負荷であるモータ90および電源としてのバッテリ80を接続する場合に適用してもよい。要は、第2の導電部材(入出力バスバー)は、ケース11外に配置された負荷および電源の少なくとも一方に繋がり、ケース11の開口部11aを通してケース11内に延びるものであればよい。
【0035】
・上記実施形態ではケース11の下面から出力バスバー30を挿入する構成としたが、これに限ることはなく、ケース11の下面以外、例えば側面から出力バスバー30を挿入する構成としてもよい。
【0036】
・電力変換装置としてインバータを用いた場合に適用したがこれに限るものではない。例えば電力変換装置としてコンバータを用いてもよい。
・電気機器として車両のパワーコントロールユニットに適用したが、車両のパワーコントロールユニット以外の電気機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…パワーコントロールユニット、11…ケース、11a…開口部、20…インバータ、25…内部バスバー、30…出力バスバー、40…ボルト、50…ナット、60…電流センサ、70…ナット収容箱、90…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に収納され、前記ケース内において延びる第1の導電部材を有する電力変換装置と、
前記ケース外に配置された負荷および電源の少なくとも一方に繋がり、前記ケースの開口部を通して前記ケース内に延びる第2の導電部材と、
前記ケース内において前記第1の導電部材および前記第2の導電部材を貫通するボルトと、
前記ケース内において前記ボルトが螺入されて前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを締結して前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを電気的に接続するナットと、
前記ケース内に配置され、前記第1の導電部材に流れる電流を検出する電流センサと、
前記ケース内において前記電流センサに固定され、前記ナットを収容するナット収容部材と、
を備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記電流センサと前記ナット収容部材とを一体化したことを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記第1の導電部材および前記第2の導電部材は、バスバーであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−223775(P2011−223775A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91537(P2010−91537)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】