説明

電気機器

【課題】HDMI1.4で追加された新機能により発生するユーザーの利用環境に対する影響を回避することにより、視聴品質の低下を防止可能とする。
【解決手段】スピーカー40を接続されたARC対応のアンプ20をHDMI接続されたARC対応のテレビジョン装置10において、機器30〜80の何れかの出力する音声信号がHDMI接続によりアンプ20を経由してテレビジョン装置10に入力される場合であって且つ音声信号を入力している機器がHDMIのバージョン1.4に対応している場合に、テレビジョン装置10へ入力するべくアンプ20に入力された音声信号をテレビジョン装置10へ送信することなくアンプ20から直接にスピーカー40へ出力させるようにアンプ20を制御する制御部11を備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器に関し、特にスピーカーが接続されたアンプをデジタル信号伝送ケーブルを介して接続されており、当該デジタル信号伝送ケーブルを介して上記アンプと双方向で音声を伝送可能な電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電やAV機器における入出力用のインターフェース規格としてHDMI(High-Definition Multimedia Interface)が知られている。このインターフェース規格では1本のケーブルでビデオ信号とオーディオ信号と制御信号とを送受信可能になっている。この規格について、2009年5月28日にHDMIの次世代仕様のHDMI1.4が発表された。HDMI1.4ではHDMI Eathernetチャンネルの追加、オーディオリターンチャンネル(ARC)への対応、3840×2160、4096×2160の解像度への対応、sYCC601への対応、AdobeAGBへの対応、AdobeYCC601への対応、3D映像への対応、MicroHDMIの定義、自動車用接続システムの定義、等の新機能が追加された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−61774号公報
【特許文献2】特開2003−198265号公報
【特許文献3】特開2008−182525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにHDMI1.4により新機能が追加されたため、ユーザーの視聴品質に影響が発生する可能性がある。
本発明では、HDMI1.4で追加された新機能により発生するユーザーの利用環境に対する影響を回避することにより、視聴品質の低下を防止可能な電気機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる発明では、スピーカーが接続されたアンプをデジタル信号伝送ケーブルを介して接続されており、当該デジタル信号伝送ケーブルを介して上記アンプと双方向で音声を伝送可能な電気機器において、上記アンプにデジタル信号伝送ケーブルを介して接続された音声出力装置が上記アンプを経由して当該電気機器に音声を伝送する場合であって、上記アンプと上記電気機器との間を接続する上記デジタル信号伝送ケーブルにおいて同時に双方向に音声が伝送される場合に、上記アンプから当該電気機器へ伝送せずに、上記アンプから直接に上記スピーカーへ出力させるように上記アンプを制御する制御部を備える構成としてある。ここで、双方向で音声を伝送可能とは、上記アンプから当該電気機器へのデジタル化された音声の送信と当該電気機器から上記アンプへのデジタル化された音声の送信とを同時に行うことが可能であることを意味する。
【0006】
また、本発明の選択的な一態様として、上記アンプおよび上記電気機器は外部から入力された音声を上記デジタル信号伝送ケーブルを介して外部へスルー出力する機能を有する構成としてある。
【0007】
また、本発明の選択的な一態様として、上記アンプ、電気機器、および音声出力装置はHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)を有し、上記デジタル信号伝送ケーブルはHDMIケーブルであり、各HDMIはHDMIケーブルを介して接続される構成としてある。
【0008】
また、本発明の選択的な一態様として、上記制御部は、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得した上記音声出力装置の物理アドレスに基づいて、上記音声出力装置と上記電気機器との接続が上記アンプを介して接続されているかを判断する構成としてある。
【0009】
また、本発明の選択的な一態様として、上記制御部は、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して上記音声出力装置のHDMIのバージョン1.4に対する対応状況を取得する構成としてある。
【0010】
また、本発明の選択的な一態様として、上記制御部は、上記音声出力装置が上記アンプを介さずに上記電気機器にHDMI接続されている機器である場合には、当該音声出力装置から上記電気機器に入力された音声を上記ARCを経由して上記アンプへ出力させる構成としてある
【0011】
また、本発明の選択的な一態様として、上記電気機器は、上記アンプを第1のHDMIケーブルにて接続されたARC対応のテレビジョン装置であって、
上記アンプは、デジタル音声をHDMIを介して出力可能な音声出力装置を第2のHDMIケーブルにて接続されつつ第1の信号経路切換部と第2の信号経路切換部とを備えており、上記第1の信号経路切換部は当該音声出力装置から入力されたデジタル音声を第1のHDMIケーブルのTMDSチャンネルを介して上記テレビジョン装置に出力するか上記第2の信号経路切換部に出力するかを切換え可能であり、上記第2の信号経路切換部は上記スピーカーに出力する音声を上記第1のHDMIケーブルのARC(Audio Return Channel)により入力されるデジタル音声とするか上記第1の信号経路切換部から入力されるデジタル音声とするかを切換え可能であり、
上記テレビジョン装置の備える制御部は、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置であるか否かをCEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得した当該音声出力装置の物理アドレスに基づいて判断するとともに、上記音声出力装置がHDMIのバージョン1.4に対応しているか否かをCEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得して判断し、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置であって当該音声出力装置がHDMIのバージョン1.4に対応している場合には、上記アンプに所定のCECコマンドを出力することにより上記音声出力装置から入力されるデジタル音声を上記第2の信号経路切換部に出力するように上記第1の信号経路切換部を切換えさせるとともに上記第1の信号経路切換部から入力されるデジタル音声を上記スピーカーから出力させるように上記第2の信号経路切換部を切換えさせ、上記音声出力装置から上記アンプへ入力されるデジタル音声を上記電気機器へ送信することなく上記アンプから直接に上記スピーカーへ出力させるように上記アンプを制御し、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置でない場合は、上記アンプに所定のCECコマンドを出力することにより上記第1のHDMIケーブルのARC(Audio Return Channel)により入力されるデジタル音声を上記スピーカーに出力するように上記第2の信号経路切換部を切換えさせ、当該音声出力装置から当該テレビジョン装置に入力されるデジタル音声をARCを経由して上記アンプへ出力させる構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、音声再生装置から出力される音声が同じデジタル音声伝送ケーブルを双方向に流れることを防止できるため、デジタル音声の干渉を防止するとともに、同じデジタル音声伝送ケーブルを往復するデジタル音声が相互に影響を受けあう可能性を排除し、信号品質ならびに視聴品質を確保することができる。
また請求項2,3にかかる発明によれば、デジタル音声が同じケーブルのARCとTMDSチャンネルで往復することを防止することができるため、デジタル音声の干渉を防止するとともに、同じHDMIケーブルを往復するデジタル音声が相互に影響を受けあう可能性を排除し、信号品質ならびに視聴品質を確保することができる。
また請求項4にかかる発明によれば、上記音声出力装置の接続関係を容易に把握することができる。
また請求項5にかかる発明によれば、上記音声出力装置のHDMI1.4の対応状況を容易に把握することができる。
また請求項6にかかる発明によれば、上記音声出力装置から上記電気機器に出力される音声がアンプを経由している場合と経由していない場合とで、適切に音声出力経路を切換え可能になる。
また請求項7にかかる発明によれば、以上の効果を奏する映像表示装置を提供することができる。
なお請求項8のような、より具体的な構成において、上述した請求項1〜請求項7の各発明と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】HDMIネットワークの一例を示すブロック図である。
【図2】HDMIネットワークを構成する機器の内部構成を示すブロック図である。
【図3】HDMIネットワークの各機器に割当てられる物理アドレスの一例を示す模式図である。
【図4】HDMIネットワークの機器に割当てられる論理アドレスの一例を示す表である。
【図5】テレビジョン装置へ入力された音声を出力する際の伝送経路のバリエーションを示す図である。
【図6】ARCルーティング処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)ARCルーティング処理:
(3)まとめ:
【0015】
(1)本実施形態の構成:
図1は、本発明にかかる電気機器を含むHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ネットワーク100の一例を示すブロック図である。同図に示すHDMIネットワーク100では、テレビジョン装置10に、アンプ20とセットトップボックス50(STB50)とBD(Blue-Ray Disk)プレーヤ60とがHDMIケーブルC1,C3,C4でそれぞれ接続されている。アンプ20にはスピーカー40が接続されている。またアンプ20にはBDプレーヤ30とBDレコーダ70とDVD(digital versatile disc)レコーダ80とがHDMIケーブルC2,C5,C6でそれぞれ接続されている。このように、HDMIネットワーク100は複数の機器を多段的に接続して構成されている。
【0016】
なお、同図では、テレビジョン装置10が電気機器を構成し、各機器30,50〜90が音声出力装置を構成し、HDMIケーブルC1が第1のHDMIケーブルを構成し、HDMIケーブルC2が第2のHDMIケーブルを構成する。むろん、電気機器はテレビジョン装置10に限るものではなく、HDMI接続可能な映像表示装置であってもよいし、HDMI接続可能であれば様々な電気機器が採用可能である。
【0017】
テレビジョン装置10は、入力された音声信号もしくは内部的に生成した音声信号に基づいて音声を出力することができる。音声信号の入力元としては、各機器50〜90や不図示の外部入力端子等である。内部的生成した音声信号は、例えば、テレビジョン装置10に内蔵されるチューナー(不図示)が取得するテレビ信号から抽出される音声信号等である。また、出力先は、テレビジョン装置10に内蔵されたスピーカー16、アナログ音声出力端子17、デジタル音声出力端子18(16,17,18については図2参照)、アンプ20に接続されたスピーカー40、等であり、ユーザーがリモコンを操作したり設定画面で出力先を選択したりすることにより、適宜選択することが出来る。
【0018】
むろん、テレビジョン装置10は映像を表示する表示部も備えており、映像を表示部の画面に表示することができる。例えば、テレビ信号から抽出した音声をスピーカー等から出力しつつ同テレビ信号から抽出した映像信号に基づく映像を表示したり、各機器50〜90で記録媒体から読取った映像信号に基づく映像を表示したりすることができる。なお、このようにして行うテレビジョン装置10による音声や映像の出力は、テレビジョン装置10から各機器に対して音声信号や映像信号の出力を要求することにより行うこともできるし、逆に、各機器からテレビジョン装置10へ音声や映像の出力を要求するにより行うこともできる。以下、図2を参照しつつ、テレビジョン装置10とアンプ20とBDプレーヤ30とを例にとって、HDMIネットワークを構成する各機器の構成について詳細に説明する。
【0019】
図2は、HDMIネットワークを構成する機器の内部構成を示すブロック図である。同図に示すHDMIネットワーク100は、テレビジョン装置10とアンプ20とをHDMIケーブルC1で接続し、アンプ20とBDプレーヤ30とをHDMIケーブルC2で接続して構成されている。アンプ20にはスピーカー40が接続されている。これら機器は、何れもHDMIのバージョン1.4に対応しているものとする。
【0020】
テレビジョン装置10は、テレビジョン装置10の全体を制御する制御部11と、所定の符号化方式で復号してエンコードされる前の映像信号や音声信号を再生するデコーダ12と、映像信号に基づく映像を画面に表示する表示部13と、HDMI端子を介してHDMI接続された機器との間で行われる通信をHDMI規格に則って制御するHDMI処理部14と、音声信号のデジタル/アナログ変換して出力する音声出力回路15と、スピーカー16と、アナログ音声出力端子17と、デジタル音声出力端子18と、を備えている。
【0021】
HDMI処理部14は、一般的なHDMIポートプロセッサの機能を備えており、CEC(Consumer Electronics Control)メッセージの送受信を制御することができる。例えば、HDMIネットワーク100を構成する機器からテレビジョン装置10宛に送信されたCECメッセージを受信して制御部11に出力したり、制御部11がHDMIネットワーク100を構成する他の機器宛に送信するCECメッセージをHDMIケーブルC1のCECラインから出力したりする。むろん、他の機器からその他の機器宛に送られてきたCECメッセージを中継することもできる。HMDI処理部14は、CECコマンドや音声信号、映像信号等を、HDMIネットワークを構成する機器の間で送受信するときは、物理アドレスや論理アドレスを利用して宛先や送信元を特定する。
【0022】
ここで、物理アドレスと論理アドレスについて簡単に説明する。HDMIネットワーク100の各機器には、物理アドレスと論理アドレスが割当てられる。物理アドレスは、テレビジョン装置10を基準として、当該テレビジョン装置10との接続関係(階層)に応じて各機器に割当てられるユニークな文字列や数値である。例えば、物理アドレスは、4ビットずつ4つに区切られた16ビットの数値を使って表される識別番号とすることが可能であり、“0,0,0,0”のように表すことができる。
【0023】
図3は、HDMIネットワークの各機器に割当てられる物理アドレスの一例を示す模式図である。同図では、図1のHDMIネットワーク構成を例にとって示してある。同図では、テレビジョン装置10にはルートアドレスの“0.0.0.0”が割当てられ、アンプ20には“1.0.0.0”が割当てられ、BDプレーヤ30には“1.1.0.0”が割当てられ、STB50には“2,0,0,0”が割当てられ、BDプレーヤ60には“3,0,0,0”が割当てられ、BDレコーダ70には”1,2,0,0”が割当てられ、DVDレコーダ80には“1,3,0,0”が割当てられている。
【0024】
すなわち、階層の頂点に位置するテレビジョン装置10にはルートアドレスが割当てられ、第1階層に属する機器20,50,60には最初の4ビットを0以外の数値とした値が割当てられ、第2階層に属する機器30,70,80には最初の4ビットを第1階層の接続機器と同様としつつ2番目の4ビットを0以外の数値とした値が割当てられている。第3階層に属する機器90には、最初の8ビットを第2階層の接続機器と同様としつつ3番目の4ビットを0以外の数値とした値が割当てられている。このように、HDMIネットワーク100における物理アドレスは、テレビジョン装置10を基準として数珠繋ぎに階層的に接続された各機器の属する階層と接続関係と表すものとなっている。従って、物理アドレスを取得すれば、各機器の階層と接続関係を判別することができる。
【0025】
図4は、HDMIネットワークの機器に割当てられる論理アドレスの一例を示す表である。論理アドレスは機器の種別を示すアドレスであり、CECライン上の機能1つに対して1つ与えられる。また、機能を複数持つ機器に対しては、機能の種類に応じた複数の論理アドレスを割当てることもできる。例えば、テレビジョン装置10には「TV」デバイスであることを示す論理アドレス「0」、STB50には「Tuner」デバイスであることを示す論理アドレス「3」または「6」,「7」,「10」が割当てられる。論理アドレスは、CEC制御信号の1つであるポーリングメッセージを送信することにより取得することができる。
【0026】
以上のように構成されたHDMIネットワーク100は、各機器がHDMI1.4に対応していることから、HDMI処理部14はARC(オーディオリターンチャンネル)に対応している。そこで、テレビジョン装置10は、信号経路切換部19を備えている。信号経路切換部19は、制御部11の制御に従って、HDMIケーブルC1のTMDSチャンネルを介して入力された音声信号をデコーダ12へ出力するかHDMIケーブルC1のARC経由で返送するかを切替えることができる。むろん、テレビジョン装置10は、ユーザーの操作や設定に基づいて、HDMIケーブルC1以外のHDMIケーブルを経由して入力された音声信号やテレビジョン装置10の内部で生成した音声信号を、HDMIケーブルC1のARC経由でアンプ20に出力することもできる。
【0027】
アンプ20は、アンプ20の全体を制御する制御部21と、入力された映像や音声のデータをHDMI規格に則って所定のデータ構造に変換してHDMIケーブルC1へ出力するHDMIトランスミッタ22と、HDMI規格に則ってHDMIケーブルを介して所定のデータ構造として入力されるストリームデータを復元するHDMIレシーバ23と、音声信号をデジタル/アナログ変換してアナログの音声信号を出力するデジタルシグナルプロセッサ24(DSP24)と、音声のボリュームコントロールを行うオーディオアンプ25と、を備えている。HDMIレシーバ23は、復元した音声信号を、制御部21の制御に従ってDSP24もしくはHDMIトランスミッタ22に出力し、復元した映像信号を、制御部21の制御に従ってHDMIトランスミッタ22に出力する。
【0028】
HDMIトランスミッタ22は、HDMI1.4に対応しているため、HDMIケーブルC1で接続されているテレビジョン装置10からARC経由で音声信号を入力可能になっている。すなわち、アンプ20は、音声信号をHDMIケーブルC2を介してHDMIレシーバ23から入力されることもできるし、HDMIケーブルC2のARCを介してHDMIトランスミッタ22から入力されることもできる。そこで、これらの音声信号の入力経路を適切にルーティングするために、アンプ20は、信号経路切換部26,27を備えている。なお、本実施形態においては、信号経路切換部26が第1の信号経路切換部を構成し、信号経路切換部27が第2の信号経路切換部を構成する。
【0029】
信号経路切換部26は、HDMIレシーバ23から出力される音声信号を入力され、この音声信号を信号経路切換部27とはHDMIトランスミッタ22との何れかに出力する。信号経路切換部26から音声信号を入力されたHDMIトランスミッタ22は、この音声信号をHDMIケーブルC1のTMDSチャンネルを介してテレビジョン装置10へ入力する。
【0030】
信号経路切換部27は、信号経路切換部26とHDMIトランスミッタ22の何れかから音声信号を入力され、この音声信号をDSP24に出力する。信号経路切換部26から信号経路切換部27へ入力される音声信号はHDMIレシーバ23の受信した音声信号であり、HDMIトランスミッタ22から信号経路切換部27に入力される音声信号はHDMIトランスミッタ22がケーブルC1のARC経由で受信した音声信号である。
【0031】
以上のように構成された信号経路切換部26,27は制御部21の制御に従って音声信号の伝送経路を切替えるが、制御部21はCECライン経由で制御部11の制御に従った制御を行うことができる。従って、テレビジョン装置10のユーザーがテレビジョン装置10に対して、以下の音声信号の伝送経路を切替えるための設定を行うことにより、アンプ20の信号経路切換部26,27を切替えることができる。
【0032】
図5は、以上のように構成されたHDMIネットワークにおいてテレビジョン装置10に入力された音声信号を出力する際の伝送経路のバリエーションを示す図である。同図に示すように、アンプ20を介してHDMIネットワーク100を構成する何れかの機器(以下、音声出力装置とする。)からテレビジョン装置10へ音声入力すると、図のA〜Dの伝送経路があり得る。
【0033】
まず、経路Aのように、音声出力装置(BDプレーヤ30)の出力した音声信号がアンプ20からHDMIケーブルC1,C2のTMDSチャンネルを通ってテレビジョン装置10に入力され、再びHDMIケーブルC1のARCを通ってアンプ20に返送され、アンプ20によってスピーカー40に音声出力される経路が考えられる。この経路は、音声出力装置(BDプレーヤ30)からテレビジョン装置10へアンプ20を経由して音声信号が入力される場合であって、テレビジョン装置10の音声出力先がスピーカー40に設定されている場合に起こり得る。
【0034】
次に、経路Bのように、音声出力装置(BDプレーヤ30)の出力した音声信号がアンプ20からHDMIケーブルC1,C2のTMDSチャンネルを通ってテレビジョン装置10に入力され、テレビジョン装置10でデコードされてスピーカー16やアナログ音声出力端子17やデジタル音声出力端子18へ出力される経路が考えられる。この経路は、音声出力装置(BDプレーヤ30)からテレビジョン装置10へアンプ20を経由して音声信号が入力される場合であって、テレビジョン装置10の音声出力先がスピーカー40以外に設定されている場合に起こり得る。
【0035】
次に、経路Cのように、音声出力装置(STB50、BDプレーヤ60)の出力した音声信号がアンプ20を経由せずにHDMIケーブルC3やC4のTMDSチャンネルを通ってテレビジョン装置10に入力され、HDMIケーブルC1のARCを通ってアンプ20に出力され、アンプ20によってスピーカー40に音声出力される経路が考えられる。この経路は、音声出力装置(STB50、BDプレーヤ60)からテレビジョン装置10へアンプ20を経由せずに音声信号が入力される場合であって、テレビジョン装置10の音声出力先がスピーカー40に設定されている場合に起こり得る。
【0036】
そして、経路Dのように、音声出力装置(STB50、BDプレーヤ60)の出力した音声信号がアンプ20からHDMIケーブルC3やC4のTMDSチャンネルを通ってテレビジョン装置10に入力され、テレビジョン装置10でデコードされてスピーカー16やアナログ音声出力端子17やデジタル音声出力端子18へ出力される経路が考えられる。この経路は、音声出力装置(STB50、BDプレーヤ60)からテレビジョン装置10へアンプ20を経由せずに音声信号が入力される場合であって、テレビジョン装置10の音声出力先がスピーカー40以外に設定されている場合に起こり得る。
【0037】
以上の経路の中で、経路Aによって音声信号が伝送されるとHDMIケーブルC1上のTMDSチャンネルではアンプ20からテレビジョン装置10へ音声信号が伝送され、ARCではテレビジョン装置10からアンプ20へ音声信号が伝送されるため、同時に双方向に音声信号が伝送される状況が発生する。ここで、双方向で音声信号が伝送されるとは、アンプ20からテレビジョン装置10へのデジタル化された音声の送信とテレビジョン装置10からアンプ20へのデジタル化された音声の送信とが同時に発声することを意味する。このような伝送を行うと音声信号にビットエラーを発生しやすくなり、音声の視聴品質に影響を及ぼす可能性が懸念される。そこで、経路Aで音声信号が伝送される可能性のある音声信号の入力状況を自動的に判別して、この経路Aでの伝送を回避するために、テレビジョン装置10において後述のARCルーディング処理を実行する。
なお、経路Aでテレビジョン装置10へ音声入力する可能性のある機器は30,70〜90であるが、以下の説明では、BDプレーヤ30からテレビジョン装置10へHDMIを介して音声出力する場合を例にとって説明することにする。
【0038】
(2)ARCルーティング処理:
図6は、テレビジョン装置10の実行するARCルーティング処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す処理は、BDプレーヤ30の出力する音声信号の再生を指示されたときに制御部11において実行される。むろん、BDプレーヤ30の出力する映像信号と音声信号の再生を指示されたときにも実行することができる。
【0039】
制御部11は、音声信号の再生を指示されるとテレビジョン装置10における音声の出力先に関する設定を確認する(S100)。音声の出力先に関する設定は、テレビジョン装置10に備えられている不図示の不揮発性メモリー等に記憶されており、例えば、テレビジョン装置10のメニュー画面から設定することが可能である。ユーザーはリモコンや操作パネルから所定の操作入力を行うことにより、適宜に音声の出力先に関する設定を変更することができる。
【0040】
ステップS100の判断処理において音声の出力先としてスピーカー40以外が設定されていると判断された場合は(S100:No)、ARCルーティング処理を終了する。すなわち、特別なルーティング処理を行うことなく、通常の音声出力を行う。より具体的には、BDプレーヤ30から入力された音声信号をデコーダ12でデコードし、音声の出力先として設定されている出力先(スピーカー16、アナログ音声出力端子17、デジタル音声出力端子18等)へ音声出力することになる。
【0041】
一方、ステップS100の判断処理において音声の出力先としてスピーカー40が設定されていると判断された場合は(S100:Yes)、BDプレーヤ30からテレビジョン装置10への音声信号の伝送経路を確認する(S110)。この確認は、CECリンク経由でBDプレーヤ30やアンプと通信して物理アドレスを取得することにより行うことができる。図3に示す例では、アンプ20の物理アドレスである(1,0,0,0)とBDプレーヤ30の物理アドレスである(1,1,0,0)を取得することになる。むろん、ステップS110では、ユーザーに伝送経路を確認することにより伝送経路の確認を行うことも可能である。
【0042】
ステップS110では、取得した物理アドレスに基づいて、BDプレーヤ30からテレビジョン装置10へ音声信号を伝送する経路でアンプ20を経由しているか確認する。ここで、アンプ20の物理アドレスは最初の4ビットのみに0以外の数値が設定されており、BDプレーヤ30の物理アドレスは最初の8ビットに0以外の数値が設定されていることから、アンプ20の方がBDプレーヤ30よりも上位の階層に位置していることが分かる。また、BDプレーヤ30の物理アドレスの最初の4ビットがアンプ20の物理アドレスの最初の4ビットと一致していることから、BDプレーヤ30はアンプ20を経由してテレビジョン装置10に接続されていることが分かる。
【0043】
ステップS110で伝送経路上にアンプがないと判断された場合は(S110:No)本処理を終了する。当該伝送経路上にアンプがない場合には、同一の音声信号が同一の伝送経路上を同時に逆方向へ流れることは無いからである。例えば、テレビジョン装置10に対して音声出力している機器がBDプレーヤ60やSTB50である場合には、テレビジョン装置10はBDプレーヤ60やSTB50からHDMIケーブルC4を介して入力された音声信号をHDMIケーブルC1を介してアンプ20へ出力する。
【0044】
一方、当該伝送経路上にアンプ20があると判断された場合は(S110:Yes)、アンプ20やBDプレーヤ30がHDMI1.4に対応しているか否かを判断する(S120)。BDプレーヤ30が何れのHDMIバージョンに対応しているかは、CECコマンドにより確認することができる。むろん、ユーザーに確認することによりBDプレーヤ30のHMDI1.4に対する対応状況を確認することも可能である。BDプレーヤ30がHDMI1.4に対応していない場合は(S120:No)処理を終了する。アンプ20やBDプレーヤ30がHDMI1.4に対応していなければ、ARC(Audio Return Channel)が使用できないため、同一経路上に音声信号を同時に逆方向へ流れるという状況が発生しないからである。一方、BDプレーヤ30がHDMI1.4に対応している場合は(S120:Yes)、同一経路上に音声信号を同時に逆方向へ流れるという状況を回避するための処理を実行する(S130)。
【0045】
ステップS130では、アンプ20にCECライン経由で所定のコマンドを出力することにより、信号経路切換部26の出力先を信号経路切換部27に切替えさせるとともに信号経路切換部27の出力先をDSPに切換させる。これらの切替えにより、BDプレーヤ30からテレビジョン装置10へ送られてくる音声信号は、HDMIケーブルC1を経由することなくアンプ20から直接にスピーカー40へ出力される。よって、HDMIケーブルC1において音声信号を同時に双方向に伝送する状況の発生が防止され、ノイズに起因する伝送エラーが音声信号に発生しにくくなり、スピーカー40から出力される音声の視聴品質を向上できる。
【0046】
その後、制御部11は、BDプレーヤ30からの音声出力状況を監視し、BDプレーヤ30からの音声出力が終了したことを検知すると(S140:Yes)、ステップS130でアンプ20に出力したコマンドで行った切替えを解消させるコマンドをアンプ20に出力して(S150)、本処理を終了する。
【0047】
以上の処理をテレビジョン装置10で実行することにより、ユーザーが図1に示すBDプレーヤ30でBDやDVDから読み出した音声信号をテレビジョン装置10に出力することを、各機器30,70〜80に対する操作入力、もしくはテレビジョン装置10に対する操作入力を行うことにより選択すると、音声信号は各機器30,70〜80からアンプ20まで伝送されてきた時点でHDMIケーブルC1を通ってテレビジョン装置10に伝送されること無く、直接にスピーカー40に出力される。よって、HDMIケーブルC1のTMDSチャンネルとARCとに同時に逆方向に音声信号が伝送される状況が回避され、視聴品質の低下を防止できる。
【0048】
(3)まとめ:
以上説明した実施形態によれば、スピーカー40を接続されたARC対応のアンプ20をHDMI接続されたARC対応のテレビジョン装置10において、機器30〜80の何れかの出力する音声信号がHDMI接続によりアンプ20を経由してテレビジョン装置10に入力される場合であって且つ音声信号を入力している機器がHDMIのバージョン1.4に対応している場合に、テレビジョン装置10へ入力するべくアンプ20に入力された音声信号をテレビジョン装置10へ送信することなくアンプ20から直接にスピーカー40へ出力させるようにアンプ20を制御する制御部11を備える構成としてある。よって、機器30〜80のいずれかから出力される音声信号がHDMIケーブルC1のARCとTMDSチャンネルで往復することを防止することにより音声信号の干渉を防止し、お互いにノイズの影響を受ける可能性を排除することにより、信号品質ならびに視聴品質を確保することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0050】
10…テレビジョン装置、11…制御部、12…デコーダ、13…表示部、14…HDMI処理部、15…音声出力回路、16…スピーカー、17…アナログ音声出力端子、18…デジタル音声出力端子、19…信号経路切換部、20…アンプ、21…制御部、22…HDMIトランスミッタ、23…HDMIレシーバ、24…デジタルシグナルプロセッサ、25…オーディオアンプ、26…信号経路切換部、27…信号経路切換部、30…BDプレーヤ、40…スピーカー、50…セットトップボックス、60…BDプレーヤ、70…BDレコーダ、80…DVDレコーダ、100…HDMIネットワーク、A〜D…経路、C1〜C7…HDMIケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーが接続されたアンプをデジタル信号伝送ケーブルを介して接続されており、当該デジタル信号伝送ケーブルを介して上記アンプと双方向で音声を伝送可能な電気機器において、
上記アンプにデジタル信号伝送ケーブルを介して接続された音声出力装置が上記アンプを経由して当該電気機器に音声を伝送する場合であって、上記アンプと上記電気機器との間を接続する上記デジタル信号伝送ケーブルにおいて同時に双方向に音声が伝送される場合に、上記アンプから当該電気機器へ伝送せずに、上記アンプから直接に上記スピーカーへ出力させるように上記アンプを制御する制御部を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
上記アンプおよび上記電気機器は外部から入力された音声を上記デジタル信号伝送ケーブルを介して外部へスルー出力する機能を有する請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
上記アンプ、電気機器、および音声出力装置はHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)を有し、
上記デジタル信号伝送ケーブルはHDMIケーブルであり、
各HDMIはHDMIケーブルを介して接続される請求項1または請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
上記制御部は、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得した上記音声出力装置の物理アドレスに基づいて、上記音声出力装置と上記電気機器との接続とが上記アンプを介して接続されているかを判断する請求項3に記載の電気機器。
【請求項5】
上記制御部は、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して上記音声出力装置のHDMIのバージョン1.4に対する対応状況を取得する請求項3または請求項4に記載の電気機器。
【請求項6】
上記制御部は、上記音声出力装置が上記アンプを介さずに当該電気機器にHDMI接続されている機器である場合には、当該音声出力装置から当該電気機器に入力された音声を上記ARCを経由して上記アンプへ出力させる請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の電気機器。
【請求項7】
上記電気機器が映像表示装置である請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の電気機器。
【請求項8】
上記電気機器は、スピーカーを接続されたARC(Audio Return Channel)対応のアンプを、第1のHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルにて接続されたARC(Audio Return Channel)対応のテレビジョン装置であって、
上記アンプは、デジタル音声をHDMIを介して出力可能な音声出力装置を第2のHDMIケーブルにて接続されつつ第1の信号経路切換部と第2の信号経路切換部とを備えており、上記第1の信号経路切換部は当該音声出力装置から入力されたデジタル音声を第1のHDMIケーブルのTMDSチャンネルを介して上記テレビジョン装置に出力するか上記第2の信号経路切換部に出力するかを切換え可能であり、上記第2の信号経路切換部は上記スピーカーに出力する音声を上記第1のHDMIケーブルのARC(Audio Return Channel)により入力されるデジタル音声とするか上記第1の信号経路切換部から入力されるデジタル音声とするかを切換え可能であり、
上記テレビジョン装置の備える制御部は、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置であるか否かをCEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得した当該音声出力装置の物理アドレスに基づいて判断するとともに、上記音声出力装置がHDMIのバージョン1.4に対応しているか否かをCEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用して取得して判断し、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置であって当該音声出力装置がHDMIのバージョン1.4に対応している場合には、上記アンプに所定のCECコマンドを出力することにより上記音声出力装置から入力されるデジタル音声を上記第2の信号経路切換部に出力するように上記第1の信号経路切換部を切換えさせるとともに上記第1の信号経路切換部から入力されるデジタル音声を上記スピーカーから出力させるように上記第2の信号経路切換部を切換えさせ、上記音声出力装置から上記アンプへ入力されるデジタル音声を上記電気機器へ送信することなく上記アンプから直接に上記スピーカーへ出力させるように上記アンプを制御し、
当該テレビジョン装置に対してデジタル音声を入力する音声出力装置が上記第2のHDMIケーブルにより上記アンプに接続された音声出力装置でない場合は、上記アンプに所定のCECコマンドを出力することにより上記第1のHDMIケーブルのARC(Audio Return Channel)により入力されるデジタル音声を上記スピーカーに出力するように上記第2の信号経路切換部を切換えさせ、当該音声出力装置から当該テレビジョン装置に入力されるデジタル音声をARCを経由して上記アンプへ出力させることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85152(P2012−85152A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230513(P2010−230513)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】