電気浸透駆動平面クロマトグラフィーに基づく分離プラットフォーム
【解決課題】本発明は一次元あるいは二次元的電気浸透駆動平面クロマトグラフィーによるタンパク質、ペプチドおよびグリカンの分離のためのシステムおよび方法に関する。
【解決手段】分離は両親媒性高分子膜、両親媒性薄膜クロマトグラフィーあるいはその他の平面両親媒性表面を固定相として、また有機性および水性あるいはそのいずれかの緩衝液を移動相として使って行われる。固定相支持体、移動相緩衝液および操作条件を系統的に選択することにより、本発明をプロテオミクス、質量分析、薬剤開発および薬学科学における広範囲の応用に適用できる。
【解決手段】分離は両親媒性高分子膜、両親媒性薄膜クロマトグラフィーあるいはその他の平面両親媒性表面を固定相として、また有機性および水性あるいはそのいずれかの緩衝液を移動相として使って行われる。固定相支持体、移動相緩衝液および操作条件を系統的に選択することにより、本発明をプロテオミクス、質量分析、薬剤開発および薬学科学における広範囲の応用に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電気浸透駆動平面クロマトグラフィーを用いたタンパク質、ペプチド、グリカンの分離に関する。本発明はまた平面電気クロマトグラフィーを用いた生体分子分離のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトプロテオームは約30,000の異なる遺伝子を含むことが知られている。しかし翻訳後修飾およびmRNAスプライシングのため、個別のタンパク質の総数はおそらく100万個に近い。複雑さのレベルに加えて相異なるタンパク質の種類が豊富なためその分離技術は独特の難しい課題である。何千というタンパク質の発生量、配置、修飾、一時的な変化、相互作用の同時定量的な分析に対する分析法はプロテオミクスにとって重要である。 タンパク質組成の異なる物理化学的特性に基づく二次元あるいは多次元タンパク質分離は、分画の追加次元によって得られる分離度の増加のため、プロテオミクスにおいて一次元分離よりも有利である。二次元分離システムは次元間のインタフェースのタイプにより分類することができる。「ハートカッティング」法においては関心のある領域を一次元目から選択し、選択した領域を二次元目の分離にかける。一次元目の全てを二次元目の分離に掛けるシステム、あるいはその代わりに一次元目から溶出液を一定の間隔で抜き取り、二次元目で続けて行う分画のために一定量を供給するシステムは、「網羅的」方法と呼ばれる。
【0003】
現在使われている主流のタンパク質分離技術は高分離度二次元ゲル電気泳動法(2DGE)である。高分離度2DGEは、一次元目でそれらの電荷に従った等電点電気泳動法による分離と、二次元目でそれらの相対的移動度に従ったドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法による、タンパク質の分離を含む。この技術は何千ものポリペプチドをスポットの布置パターンとして同時に分解することができ、タンパク質合成、解糖、グルコース新生、ヌクレオチド生合成、アミノ酸生合成、脂質代謝およびストレス反応のような代謝プロセスの大域解析に使用することができる。この技術はまた、シグナル伝達経路の解析、シグナル伝達事象の全体的な変化の検出、ならびに翻訳後修飾によって起こる変化に起因するタンパク質発現の変動とデグラデーションとの違いの検出に用いることができる。
【0004】
ポリアクリルアミドゲルは機械的に脆弱で、取扱中に伸長および破断しやすい。2DGEを使った解析では、ぶるぶるした、たるんだゼラチン様の厚板の上に浸みた水っぽいインクスポットのランダムパターンができる。その他の制限事項としては、分離プロセスの自動化が困難、試料のスループットが低い、また、低発生量、極端な塩基性、強い疎水性、非常に大きい分子量あるいは非常に小さい分子量のタンパク質の検出が困難、などがある。ゲル中で標識した抗体あるいはレクチンを用いたタンパク質の直接検出は完成しているが、この方法は一般にどの抗原にも適用できるのではなく、また比較的感度が悪い。したがってタンパク質は通常特定のターゲットを同定する前に電気泳動によって高分子膜に移動させる。ポリアクリルアミドゲルはまた質量分析法のような微量化学特性化技術によるタンパク質の同定の際に困難をもたらす、というのは、このゲルは浸軟し洗浄しなければならず、タンパク質はタンパク質分解酵素を用いてインキュベーションしなければならず、ペプチドは同定の前に逆相カラムを用いて選択的に取り出し、濃縮する必要があるからである。
【0005】
膜内在性タンパクはシグナル伝達に重要な役割を演じ、したがってまた製薬産業が追究する主要な薬品ターゲットである。このタンパク質は一般に脂質二分子膜の疎水性部分を混ぜた、1つあるいは複数の疎水性の膜貫通領域を含む。この2DGE技術は疎水性タンパク質、特に2つあるいはそれ以上のαらせん膜貫通領域を含むタンパク質の分画にあまり適さない、というのはこの技術が水性緩衝液および親水性のポリマーに基づくからである。
【0006】
二次元液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(2D LC/MS/MS)がそれに変わるタンパク質分離の解析的手法として用いられている。2D LC/MS/MSでは複雑なタンパク質試料のタンパク消化物が、2つの独立したクロマトグラフィー相、強力な陽イオン交換体および逆相物質を搭載したマイクロキャピラリーカラムに充填される。ペプチドは反復して直接タンデム質量分析計に溶離され、発生したスペクトルはタンパク質あるいはDNAのデータベースから得られた理論的質量スペクトルと相関させる。プロテオミクスへのこのペプチドベースの手法は試料からLC-MSシステムの解析能力を超過する多数のペプチドを発生する。したがって複雑な消化物から、システイン残基あるいはヒスチジン残基だけを含むトリプシンのペプチドのような僅かなパーセント(3-5%)のペプチドを取り出すストラテジーが開発された。残りの95-98%のペプチドは捨てられ、このようにして試料の包括的な解析を防ぐことができる。さらにこのような方法では分解プロセス自身から生じる配列有効範囲の不足と配列の混乱の双方により、プロテオーム中に現れる、差別的なmRNAスプライシングおよび翻訳後修飾から生じるいろいろなタンパク質のイソ型を区別することが不可能である。
【0007】
ペプチドおよびタンパク質の解析に適用されるその他の技術としてキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)があるが、その用途はモデル検体の1-Dキャピラリー分離に限定されている。CECはキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に組み合わせた複合分離技術である。CECにおいて、クロマトグラフィーと電気泳動の両方のプロセスが検体の総合的な移動の割合の大きさを決定する主な力が水圧流であるHPLCとは違って、CECにおける駆動力は電気浸透流である。高電圧が印加されると、陽イオンはカラム充填剤中の粒子の電気二重層に蓄積し、自身と共に液相を引きずりながら陰極に向かって移動する。CECにおける分離機構は動力学的プロセス(動電学的移動)と熱力学的プロセス(分配)の両方に基づいている。この組み合せは帯の拡大を低減し、それによって高い分離効率を得る。
【0008】
電気浸透流は表面電荷密度、電界強度および電気二重層の厚さおよび温度に依存する分離媒体の粘度に依存する。電気浸透流は用いるpH、緩衝液濃度(イオン強度)、有機調節剤および固定相のタイプに大きく依存する。CEC分離は定組成溶離で行うことができ、これによって勾配溶離が不要となるので装置に対する要求が簡単になる。
【0009】
タンパク質分離のその他の技術として、親水性のセルロースベースの濾紙を固定相として使用し、また薄い水性リン酸塩緩衝液を電極緩衝液として使用する電気的駆動のセルロースフィルタ紙ベースタンパク質分離のような、平面電気泳動法および膜電気泳動法がある。この技術を使って、血漿タンパク質を一次元目は電気泳動法により、また二次元目では濾紙クロマトグラフィーにより分離できよう。セルロースポリマーは、タンパク質を固相表面にしっかり結合するには親水性すぎる。このように水性媒体の中でタンパク質が濾紙と相互作用を持つことは少なく、印加していた電流を除去すると、拡散にため分離パターンは急速に劣化する。酢酸セルロース膜の場合、電気浸透は三フッ化ホウ素のような作用物質によるアセテート部分の化学修飾によりしばしば非常に少なくなり、その後の分離は従来の等電点電気泳動により行われる。酢酸セルロース膜は臨床環境において診断に適用するには著しく脆弱であると考えられており、尿タンパク質および血清タンパク質のような非常に親水性のタンパク質の生成パターンは、ポリアクリルアミドゲルを用いて生成したものに比べて貧弱である。
【0010】
その他の電気駆動高分子膜ベースの分離プロセスに、電導性の微量汚染がない4つあるいはそれ以上の有機溶媒からなる複雑な非水移動相を用いる緩衝液電気分子推進(EMP)がある。
【特許文献1】本特許出願は2004.3.19付け米国仮特許出願No.60/521,250の利益を請求するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの態様は、電気泳動およびクロマトグラフィー機構の組み合せまたはそのいずれかによる生物学的種の分画を容易にするために、固相支持体と有機移動相および水性移動相との簡単の組み合せを用いた、高分離度のタンパク質、ペプチドおよびグリカン分離システムを提供することである。本分離システムは、分離媒体の機械的安定性、検体の分離後の同定技術(免疫検出、質量分析)へのアクセス可能性、疎水性検体および大きな分子複合体の分画能力を含み、また試料の消費、手動操作の回数、実際の分画を行う時間スケジュールを最少にする。
【0012】
本発明の1つの態様は生体分子の分離方法を提供することである。この方法は、1つあるいは複数の生体分子からなる試料の供給、試料の平面固定相への搭載、ここにこの固定相は親水性である、この固定相の第1の液体移動相への接触、この固定相の相対する端にある第1および第2の電極への電気接続の供給、第1の液体移動相を固定相の長さにわたって移動させるための、第1電極と第2電極との間の電界の発生、それによって1つあるいは複数の生体分子が分離される、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つあるいは複数の実施例において、この生体分子は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子から成るグループから選択される。1つあるいは複数の実施例において、移動相のpH、イオン強度および水/有機成分は電気浸透駆動分離を促進するように選択される。
【0014】
1つあるいは複数の実施例において、この液体移動相は水混和性の有機液体を含む水性混合物である。この液体移動相は、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0015】
1つあるいは複数の実施例において、親水性平面固定相はイオン基で化学修飾された疎水性ポリマーを含む。このイオン基は、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンおよび四級アンモニウム残基から1つあるいは複数を選択する。この疎水性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリクロロトリフルオロエチレンを含むグループから選択する。化学修飾された疎水性ポリマーは粒子状であってもよい。
【0016】
1つあるいは複数の実施例において、この平面固定相は、シリカ、アルミナあるいはチタニアベースの、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾された薄層クロマトグラフィー樹脂を含む。この平面固定相は、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾されたシリカ、アルミナあるいはチタニア粒子を含むことができる。
【0017】
1つあるいは複数の実施例において、この平面固定相は、直径約30ナノメートルから約100ナノメートルのポアを含む。この平面固定相は、直径約3ミクロンから約50ミクロンの粒子から出来ていてもよい。
【0018】
1つあるいは複数の実施例において、この分離方法はさらに第2の液体移動相を固定相の長さにわたって第2の方向に進め、これによって1つあるいは複数の生体分子が分離されるように、第1の電極と第2の電極の間に第2の電位を印加する工程を含む。移動相のpH、イオン強度および水/有機成分は第1および第2の両方の方向で電気浸透駆動分離を促進するように選択できる。その代わりに、この移動相のpH、イオン強度および水/有機成分を、1つの方向で電気浸透駆動分離を促進するようにまた他の方向でクロマトグラフィーによる分離を促進するように、選択できる。
【0019】
1つあるいは複数の実施例において、この第1の移動相と第2の移動相は異なるpHを有する。ある実施例において、第1の移動相のpHは酸性であり、第2の移動相のpHは塩基性である。また他の実施例では第1の移動相のpHは塩基性であり、第2の移動相のpHは酸性である。
【0020】
1つあるいは複数の実施例において、第1の移動相と第2の移動相は異なる有機物成分を有する。ある実施例において、第1の液体移動相は第2の液体移動相より大きい有機溶媒濃度を有する。また他の実施例においては、第1の液体移動相は第2の液体移動相より小さい有機溶媒濃度を有する。
【0021】
1つあるいは複数の実施例において、この第1および第2の移動相は異なるイオン強度を有する。
【0022】
1つあるいは複数の実施例において、この分離法はさらに分離した生体分子を検出する工程を含む。検出法は蛍光発光、質量分析、化学発光、放射能、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射からなるグループから選択される。この生体分子は分離の前あるいは後に検出剤で標識する。この検出剤は、色素染料、蛍光染料、化学発光染料、ビオチン化標識、放射性標識、アフィニティー標識、質量タグおよび酵素からなるグループから選択される。
【0023】
1つあるいは複数の実施例において、この分離法はタンパク質発現変動および翻訳後修飾変動の示差分析のための生体分子の質量タグを含む。
【0024】
本発明の他の態様において、生体分子分離用の電気クロマトグラフィーシステムが、少なくとも平面電気クロマトグラフィー領域を定義する底と側面を有し、そのチャンバ内の第1の領域が液体移動相を含み、そのチャンバ内の第2の領域が液体移動相を含むチャンバと、チャンバ内の第1と第2の領域との間に置かれ、液体移動相と接触している平面両親媒性固定相と、平面両親媒性固定相の相対する側に電気的接触ができる第1および第2の電極と、平面電気クロマトグラフィーを行うために第1と第2の電極との間に印加する電位を発生することができる電源とを含む。
【0025】
1つあるいは複数の実施例において、第1および第2の電極と平面固定相が平面の芯状支持体に接触している。この芯状支持体は、セルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、および湿らせたペーパータオルから成るグループから選択される。ある実施例において、芯状支持体の端が第1の領域にある液層に接触し、芯状支持体の他方の端が第2の領域にある液層に接触している。
【0026】
ある実施例において、第1の芯状支持体が第1の領域にある液層に接触し、第2の芯状支持体が第2の領域にある液層に接触している。他の実施例において、この固定相の第1の端が高速の芯状支持体および第1電極に接触し、固定相の相対する端が第2の芯状支持体および第2電極に接触している。
【0027】
1つあるいは複数の実施例において、この固定相は機械的締め具により2つのホルダーの間に保持されている。このホルダーは固定相を液体移動相に接触させるために中央に開口がある枠である。このホルダーはチャンバ内で機械的手段により2つのホルダーの間に保持されている固定相の位置決めをするための位置合わせ手段を含む。この位置合わせ手段は、孔、スロット、ピン、データム面およびデータム形体から成るグループから選択される。
【0028】
1つあるいは複数の実施例において、このシステムはさらに試料を平面固定相に分注するためのディスペンサーを含む。このディスペンサーは手動式あるいは自動式である。この手動式ディスペンサーはピペット、圧電電気分注チップ、固体ピンおよびクイルピンから成るグループから選択される。この自動式ディスペンサーは自動式ピペットディスペンサーあるいは試薬スポッティングあるいは試薬印刷装置である。
【0029】
1つあるいは複数の実施例において、このシステムはさらに電源ユニットを制御するためのコントローラーを含むが、ここに制御手段はコンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサーおよびタイマーから成るグループから選択される。
【0030】
本発明の他の態様において、電気クロマトグラフィーを行うためのキットを提供する。このキットは1つあるいは複数の生体分子から成る試料を置くための平面両親媒性固定相、少なくとも1つの緩衝液、および平面電気クロマトグラフィーを使って2つあるいはそれ以上の生体分子を含む試料の分離のためにこのキットをどのように使うかの説明を記述した取扱説明書を含む。
【0031】
1つあるいは複数の実施例において、このキットはさらに芯状支持体を含み、ここにこの芯状支持体はセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲルおよび湿らせた紙タオルから成るグループから選択される。
【0032】
1つあるいは複数の実施例において、このキットはさらに固定相を覆うための不浸透性の隔壁を含み、この不浸透性の隔壁はガラス板あるいはシリコーンオイルである。
【0033】
本発明の他の態様においてカセットを装備しており、このカセットは、底と側面とを有しまた液体を導入および排出するための流入口と流出口を有する枠と、この枠に支持されている固定相とを含むが、この固定相には両親媒性固定相を含む。このカセットは、さらにカバーと一体でありまたこの枠の第1の相対する側面に位置する一対の電極を含むことができる。このカセットはさらにカバーと一体でありまたこの枠の第2の相対する側面に位置する一対の電極を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
電気浸透駆動平面クロマトグラフィーを用いた生体分子、たとえばタンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子の分離のためのシステムおよび方法を説明する。電気泳動駆動平面クロマトグラフィーにおいて両親媒性高分子膜、両親媒性薄膜クロマトグラフィープレートあるいは同様の平面基板は分離プラットフォームに対する固定相を提供する。平面基板表面は、荷電基(イオン交換基)、非共有結合基(対イオン)、および検体、たとえばタンパク質あるいはペプチド、との化学的相互作用を容易にする非荷電基の組み合せによって特性が決まる。平面電気クロマトグラフィーシステムを用いた生体分子の分離方法において、電気泳動流は混和性有機溶媒-水性緩衝液移動相が存在するところで平面支持体の両端に電圧を加えることにより発生する。荷電イオンは固相支持体の電気二重層に集まり、自身とともに液体移動相を引きずりながら反対の電荷の電極に向かって移動する。荷電した生体分子は、液相と固相支持体との間の分配と、エレクトロマイグレーションの差の効果との両方によって分離される。
【0035】
本発明の1つあるいは複数の実施例に従って、1つの方向の分離、たとえば一次元目の分離が完了すると、固相を洗浄し、第2の有機溶媒-水性緩衝液移動相中でインキュベーションし、それから元の分離の方向とは異なる方向(たとえば二次元目の分離)に分画する。一般には第2の方向は第1の方向に対して垂直である。1つあるいは複数の実施例において、両方の次元は液相と固相支持体との間の分配効果とエレクトロマイグレーションの効果によって分離される。pH、イオン強度および有機溶媒濃度の調節により、一次元目の分離が電気泳動による分離が得られ、二次元目の分離がクロマトグラフィーにより得られる。
【0036】
ここで説明したシステムおよび方法はどのような荷電分子についても使用できるが、本発明はタンパク質、ペプチドおよびグリカンの分離に関して説明する。このような説明は便宜のためだけであり、本発明を制限することを意図するものではない。説明するこのシステムおよび方法を他の分子に適用できることは以下の説明から明らかである。
【0037】
図1は、本発明の1つの実施例に従って、第1の移動相と接触している平面固定相の中心近くにスポットされた試料と、第1の方向に印加された電界を示す。図1を参照すると、特に膜の形をした平面固定相1は、膜の周りの水溜まりとして示されている第1の移動相3によって濡れている。少量の試料2は固定相の上の中心近くにたとえば手によって分注あるいはスポットされる。他の実施例において、スポットはピペット、圧電分注チップ、固体あるいはクイルピンを使って分注することで行う。スポットするのは膜のどこでもよく、その位置は部分的に試料の電気マイグレーションの予想する方向と大きさによって決めることができる。他の実施例において、1つの位置あるいは配列として自動的にスポットすることができるMiniprobe液体取扱いロボット(PerkinElmer)を使って、正確な位置にスポットすることができる。正極4の電位および負極5の電位で特性化される電界を固定相1の第1の方向8に印加する。印加した電位7および電位を印加する長さの寸法6が電界の大きさを決定する。
【0038】
図2は一次元目8で分離を行ったあとの平面元固定相1上の試料2を示す。試料2はあるものは別個であり、あるものは重なっている複数のスポット11に分離されている。この一次元目の分離は印加した電位7の方向の線に沿って起こる。
【0039】
図3は一次元目8での分離および二次元目9での分離の両方を行ったあとの、平面固定相1上の分離した試料を示す。二次元目の分離に先だって、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。正極13および負極14の電位により特性化される第2の電界が二次元目9で固定相に印加される。
【0040】
図4は本発明を実施するための装置の配置図である。図4を参照すると、平面固定相1は治具あるいは支持体16の上に置かれており、移動相(示されていない)が固定相1に加えられている。支持体16は固体、多孔性であってもよく、あるいは分離の際に固定相を濡らしておくための移動相の供給を維持するためタンク室あるいは空洞を含むことができる。支持体の材料の例としてはPTFE(テフロン(登録商標))、Macor機械加工可能セラミック、ガラスあるいはその他の互換性のある材料を含む。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21が電極を電源22に接続されている。ある実施例においてこの電極は反応性のない材料でできている。反応性のない材料の例としては白金、パラジウムあるいは金がある。この電極の形は長方形のバー、線、棒、あるいは固定相の幅を充分に張ることができる長さを持つどのような形でもよい。本発明に従ったある実施例において電源22は高電圧直流電源である。電源22はより再現性のある結果を得るために分離条件を正確に制御するため、コンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサー、タイマーあるいは同様のもので制御することができる。
【0041】
ある実施例において、電極17および18の長さ全体にわたって連続的な電気接続を確保するため接続パッド19および20を電極と固定相との間に置いている。本発明の他の実施例において、接続パッド19および20は濾紙でできている。
【0042】
1つあるいは複数の実施例において、平面固定相1は、一次元目8での分離のあと二次元目9でのもうひとつの分離を容易にするために、たとえば約90°回転されている。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21がこの電極を電源22に接続している。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0043】
他の実施例において、電極17および18は、一次元目8での分離のあと二次元目9に沿って平面固定相1の上部に置かれる。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を取り除き、第2の移動相12を固定相に適用する。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0044】
図5は本発明の別の実施例を示しており、ここでは芯状支持体23が平面固定相1の下に置かれている。芯状支持体23は少なくとも分離方向9で固定相1と同じ幅があり、分離方向8で固定相1よりも長い。芯状支持体23は固定相の端から突出しており、追加の液体移動相を含むタンク室24および25に入っている。毛管作用が移動相をタンク室から芯状支持体23に引き揚げ、芯状支持体とそれに隣接する固定相1を分離のあいだ中ずっと液体移動相に浸しておく。電極17および18は固定相1の上部に置かれている。ある実施例において、芯状支持体23は濾紙でできている。
【0045】
別の実施例において、平面固定相1および芯状支持体23は、一次元目8での分離のあと二次元目9でのもうひとつの分離を容易にするために、たとえば約90°回転される。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21がこの電極を電源22に接続している。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0046】
図6は本発明による分離装置の別の実施例を示しており、ここでは平面固定相1は支持体16の上に直接置かれている。短い芯状支持体26および27が電極17および18と固定相1との間に置かれている。芯状支持体26および27は電極17および18の下から移動相タンク室24および25に延びている。芯状支持体26および27は固定相1の中心方向に向かって電極17および18を越えない。芯状支持体26および27の毛管作用が移動相をタンク室24および25から固定相1に引き揚げるが、固定相1に分離領域にわたって平行な電気伝導経路は提供しない。
【0047】
図7は本発明に従った分離装置のもう1つの実施例を示す。図7を参照して、固定相27は芯状支持体なしで支持体16の上に置かれている。固定相27の長さは、固定相27の端が移動相タンク室24および25の中に移動相の表面より下まで突出する長さである。固定相27の毛管作用が液体移動相をタンク室24および25から固定相27の残りの部分まで引き揚げる。電極17および18は固定相27の上部に置かれている。
【0048】
本発明の他の実施例において、電極17および18はタンク室24および25の中に置かれている。電極17および18は移動相に完全に接触しており、この移動相が電流を固定相に伝導する。
【0049】
図8は本発明の1つあるいは複数の実施例に従った分離装置で固定相を保持するための他の手段を示す。図8を参照すると、固定相36は剛体あるいは半剛体のホルダー28と29の間に保持されている。ホルダー28および29は中央に大きな開口を持つ枠の形をしており、そこで固定相は試料、移動相、芯状支持体、接触パッドあるいは電極の適用のため露出している。この大きな開口はまた固定相に光学的なアクセスを容易にし、これによって分離が完了したあと固定相の撮像が可能となる。この固定相は2つのホルダーの間でサンドイッチ状に挟まれており、2つのホルダーを一緒に固定するために鋲、鳩目、ねじ、スナップ留め金、熱かしめあるいはその他の機械的手段が使われている。本発明の1つあるいは複数の実施例に従って、孔、スロット、ピンあるいは同様の位置合わせ機構30および31を分離装置の上にある固定相36の位置合わせをするために使用することができる。この位置合わせ機構により、撮像装置、スポット切り出し装置、質量分析計などのような他の装置と正確な位置合わせができる。位置合わせ機構30および31により、1つの装置を使って分離したスポットの正確な座標を他の装置に与えることができる。
【0050】
この平面固定相支持体は固定相を支持するための枠とこの固定相をこの枠に確保するための締め具とを含む。この枠は平面固定相の表面を露出するために中央が開口しており、この開口中央部は平面固定相の緩衝液および他の液体への接触を最適化するために実質的に平面固定相の大きさである。この枠は平面固定相を受けるための凹みを含んでいてもよい。この平面固定相は高分子膜あるいはシリカ、アルミナまたはチタニアベースの薄層クロマトグラフィー樹脂のいずれであってもよい。
【0051】
この平面固定相支持体は2つの相対する枠であってよく、その場合この枠は固定相を相対する枠の間に確保するように構成される。この平面固定相支持体は機械的締め具によって枠に確保されてもよい。機械的締め具の例には鋲、鳩目、ねじ、スナップ、タブ、クランプおよびガスケットを含む。この平面固定相はまた枠の一部を平面固定相の縁の上へ折り曲げるあるいは折り畳むことを用いて確保してもよい。この平面固定相は熱溶接、熱かしめ、結合剤あるいは接着剤のような化学的留め具により枠に確保してもよい。
【0052】
この平面固定相は既定の位置に対するこの平面固定相の位置合わせを含む。位置合わせは機構の位置合わせあるいはこの枠を既定位置に固定することにより達成される。このような機構あるいは固定手段はこの枠の縁あるいはこの枠の面にある。この枠は、相補的な凹みあるいは突起を用いて位置決めできる凹みあるいは突起を用いて、位置合わせすることができる。突起あるいは凹みの例には孔、スロットおよびピンを含む。この位置合わせ手段は、この枠を基準位置に対して繰り返し置くように位置決めできるばねのセットであってもよい。
【0053】
図9および図10は本発明に従った他の実施例を示しており、ここでは試料32および33が平面固定相1の上にスポットされ、同時に2次元(2D)の分離パターン34および35に分離されている。同様の移動相、電界、温度、およびその他の操作条件が複数の試料に適用されるとき、図10に示すように、複数の分離パターンが得られる。この技術により異なるタンパク質発現の評価ができ、たとえば分離パターンの違いが試料間のタンパク質成分の差に対応する。
【0054】
図11は平面電気クロマトグラフィー分離装置で使用できる携帯用カセット50を示す。このカセットはベース52および側面53を有する枠51を含む。平面固定相(示されていない)は枠の中に支持される。この枠は、緩衝液あるいは洗浄液のような液体をカセット内部に導入したり排出したりするための流入口55および流出口56を備えている。このカセット50はさらにカバー60を含む。このカバー60は、リアルタイムで、あるいは固定相をカセットから取り外さずに撮像あるいは検出できるように透明であってもよい。このカバー60はまた電極の対58、58’および59,59’をカバーと一体化した部品として含んでいてもよい。この電極はカセットに組み込まれており、枠の相対する側面近くに位置する。この電極は固定相と可逆的に用いることができるように、ばね仕掛けあるいはその他の方法で取り付けることができる。この機構により電界を2つの直交する方向に確立することができる。このカバーはまた試料導入口61を含むことができる。
【0055】
他の実施例においてカセット50は図12および図13に示すように半自動プロセスに集積されている。図12はカセット50とポンプステーション62とを含む試薬導入および洗浄ステーションを示す。ポンプステーション62は、導管63を通してタンク室64からカセットにたとえば緩衝液や洗浄液のような液体を供給するための、自動化ポンプ(示されていない)を含む。
【0056】
液体は導管66を通って出て行き、容器(示されていない)に保存される。このように、緩衝液の導入、固定相の洗浄およびその他の液体の移送は平面固定相の移動あるいは移送なしに実行される。
【0057】
図13は第1の電極対59、59’に接続することによってカセット50に集積されている電気クロマトグラフィー分離ステーション65を示す。試薬導入ステーション62(示されていない)は流入および排出部品55,59によってカセットに接続されている。動作の際には試料を手動でカセットにある平面固定相の上に導入口61を通して負荷し、またポンプが第1の緩衝液あるいは液体移動相をカセットの適切な口に注入する。それから電圧を加え、一次元目の分離を行う。それからポンプステーションが最初の緩衝液を除去するために平面固定相を洗浄し、第2の緩衝液あるいは液体移動相を注入する。カセットは電気クロマトグラフィー分離ステーション65で位置を動かし、第2の電極対58、58’を使って接続される。それから第2の方向で第2の分離を行い、第2の緩衝液あるいは移動相を除去するため平面固定相を洗浄する。それから固定相を手動で染色するか、あるいはそのほかの検出のための処理をする。
【0058】
1つあるいは複数の実施例において、この分離システムはカバーを含む。第1および第2の電極はカバーと一体化され、チャンバの第1の相対する側面に置かれている。第3および第4の電極はカバーと一体化されていてもよく、チャンバの第2の相対する側面に置かれている。
【0059】
自動化したプロテオミクスシステムの機構を組み入れた全自動システムもまた考慮されている。
【0060】
ここで使われているように、「両親媒性固定相」とは検体、たとえばタンパク質、グリカンあるいはペプチドと非極性および有極性の両方の相互作用を示す固体支持固定相を呼ぶ。両親媒性固定相は本質的に非イオン性および疎水性またはそのいずれかの領域、相あるいは範囲、ならびに強い有極性および好ましくはイオン性の領域、相あるいは範囲を含む。このイオン性の領域は正極あるいは負極に荷電していてもよい。疎水基は分離の際にタンパク質の相互作用および保持に有利に働くが、一方イオン基は動電分離に使用される荷電した電気二重層の形成を促進する。ある実施例において、タンパク質分画のための両親媒性固定相が検体との化学的相互作用を容易にする荷電基(イオン交換体)、非共有結合基および非イオン基を有する。他の実施例において、両親媒性固定相の大部分は疎水性であるが、一部はイオン性である。
【0061】
タンパク質分離に使用できる両親媒性固定相の例は、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンあるいは四級アンモニウム残基あるいは同様のもので化学修飾された疎水性の固定相支持体を含む。スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチルあるいはリン酸残基で化学修飾された疎水性平面支持体は陰極の電気浸透流を可能にするが、一方ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンあるいは四級アンモニウム残基で化学修飾された疎水性平面支持体は陽極の電気浸透流を可能にする。膜、粒子状薄膜クロマトグラフィー基板、ラージポアの中程度の多孔性基板、グラフトしたギガポア基板、ゲル充填ギガポア基板、無孔逆相充填材料および高分子モノリスが考慮されている。
【0062】
膜には平面固定相の両親媒特性を提供するために随意的に化学修飾されたポリマーシートを含む。タンパク質およびペプチドの、膜をベースにした電気クロマトグラフィー用の疎水性膜の例には、Perfluorosulfonic NafionR 117膜(Dupont Corporation)、部分的にスルホン化したPVDF膜、ポリスチレンでグラフトしたスルホン化ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンでグラフトしたポリクロロトリフルオロエチレンあるいは同様のものを含む。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のスルホン化は適度な高温でスルホン酸にインキュベーションすることにより達成することができる。スルホン化の程度は意図的に変化させることができ、その際に0.25 meq/gのイオン交換能力が「適度の」スルホン化と考えられる。これらの膜による分離は、基板におけるタンパク質の、芳香族残基との疎水的な相互作用と組み合わせた、スルホン化した残基の静電的な相互作用に依存する。約pH 2.0から約pH 11.0の範囲のpHで、タンパク質上のプロトン化した第1アミン基は膜上のスルホン化した残基と相互作用するはずである。この相互作用はpH 11.0より大きいpHでは減少する。スルホン化した残基は約pH 2.0未満のPHでプロトン化され、分離の電気浸透駆動力の減衰につながる。
【0063】
ある実施例において、ゲル電気泳動により分離されたタンパク質の電気ブロッティングによる隔離に使われるPVDF膜は、両親媒性膜を生成するために陽性官能基で化学修飾できる(たとえばImmobilon-CDタンパク質配列解析膜(Millipore Corporation))。たとえばPVDF膜は0.5MアルコールKOHでエッチし、続いてアルカリ性条件でポリアリルアミンと反応させることができる。他の例で、PVDF膜はジエチルアミノエチルあるいは四級アンモニウム残基で化学修飾することができる。
【0064】
いくつかの実施例では膜は支持されない。他の実施例では膜は支持されるかあるいは半支持されている。たとえばこの膜を2つの剛体あるいは大きな開口を中央に持つ枠の形をした半剛体のホルダーの間に保持することができる。この膜はまた中実の支持体、たとえばガラス板の上に支持することもできる。膜は実質的に無孔性であってもよい。この場合移動相は膜の上を移動する。他の実施例において、この膜は多孔性であってよく、この場合移動相は孔および膜のチャネルまたはそのいずれかを通って移動する。分離はタンパク質と膜の疎水性表面あるいは隙間のある表面との選択的相互作用により起こる。
【0065】
他の実施例において、タンパク質の分離に有用な平面固定相はアリキル基(たとえばC3-C18界面化学)、芳香族フェニール残基、シアノプロピル残基あるいは同様のもので化学修飾されたシリカ薄層クロマトグラフィー板を含む。これらの場合、シラノール基が両親媒性支持体のイオン交換特性を提供し、またpH 8で脱プロトン化が可能で、これが電気浸透に導き、それによって両親媒性支持体のイオン交換特性を提供する。pH 3より下では電気浸透の減少あるいは停止が起こる。いくつかの実施例において、疎水性の基、たとえばアルキル基と荷電基、たとえばスルホン酸基との両方を同じシリカ粒子に付加することができる。さらに別の例のように、平面電気クロマトグラフィーによるペプチドおよびタンパク質の分離のための固定相支持体は、薄層クロマトグラフィー板のシリカ支持体に付加されたガンマグリシドキシプロピルトリメトキシシランの副層を含む。それからスルホン化層が副層とオクタデシル最上層との間に共有的に添加される。シリカベースの固定相を使って10から100 kDaの範囲におけるタンパク質の分離のために、それぞれC8およびC4基による化学修飾を使用できると予想される。フェニールの官能性はC4の官能性よりも少し疎水性が少なく、おそらくある種のポリペプチドの分離に対して有利である。
【0066】
この平面固定相はタンパク質が妨げられずに移動できる大きさのポアあるいは連結された通路を含む。シリカ薄層クロマトグラフィー板あるいは粒子状物質ベースの高分子膜のような粒子状固定相について、この固定相は直径が約30-100ナノメータのポアを形成する粒子から成るが、分子量が2,000 daltonあるいはそれより小さい、いくつかのより小さなペプチドに対しては10ナノメータのポアがおそらく使用できる。薄層クロマトグラフィー用に市場で得られる一般的な吸収体は、タンパク質分離に対して効果的な使用を不可能にする僅か1-6 nmのポアサイズを形成する粒子からできている。この粒子は3-50ミクロンの直径を持つことができるが、より小さな直径の粒子は一般により高い解像度のタンパク質分離を生じる。より大きいタンパク質負荷に対しては大きい粒子の吸収体が好ましい。このことはタンパク質の準備規模の分離に対して特に有利である。粒子のサイズ分布は比較的狭いことが必要であり、また粒子は不規則な形状よりも球状が好ましい。粒子の基本材料はシリカ、ポリスチレンジビニルベンゼン(あるいは前記の疎水性高分子のどれでも)のような合成高分子もまた適当であると思われる。
【0067】
液体移動相は一般的に有機相および水性相を含む。移動相の例にはメタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、プロピレン炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液システムあるいは同様のものを含む。電気クロマトグラフィーの基本原理は固定相支持体、移動相緩衝液および操作条件の系統的な選択に対する基礎を提供し、また技術をプロテオミクス、新薬開発および薬学科学における広範囲の応用に適応させる。CECのように有機修飾物質が豊富な移動相は比較的少ないクロマトグラフィックな保持を示し、有機修飾物質が少ない移動相においてはクロマトグラフィックな保持が分離プロセスを支配する。
【0068】
本発明の1つの実施例において、液体移動相中の有機修飾物質の濃度が約0%から約60%の範囲である。他の実施例では液体移動相のイオン強度は約2 mMから約150 mMである。液体移動相の処方の例としては20 mM 酢酸アンモニウム、pH 4.4、20% アセトニトリル;2.5 mM 酢酸アンモニウム、pH 9.4、50% アセトニトリル; 25 mM トリス塩酸、pH 8.0/アセトニトリル(40/60 混合); 10-25 mM 酢酸ナトリウム、pH 4.5、55% アセトニトリル; 60 mM リン酸ナトリウム、pH2.5/30% アセトニトリル; 5 mM ホウ酸塩、pH 10.0、50% アセトニトリル; 5-20 mM リン酸ナトリウム、pH 2.5, 35-65% アセトニトリル; 30 mM リン酸カリウム、pH 3.0、60% アセトニトリルおよび10 mM 四ホウ酸ナトリウム、30% アセトニトリル、0.1% トリフルオロ酢酸; 20% メタノール、80% 10 mM MES、pH 6.5、5 mM 硫酸ドデシルナトリウム; 20% メタノール、80% 10 mM MES、pH 6.5、5 mM リン酸ナトリウム、pH 7.0/メタノール(4:1, v/v); 4 mM トリス、47 mM グリシン、pH 8.1; 20mM リン酸ナトリウム、pH 6.0、150mM NaCl; 20 mM トリス塩酸、pH 7.0、150 mM NaCl; 5 mM ホウ酸ナトリウム、pH 10.0; あるいは同様のものを含む。
【0069】
いくつかの実施例においてタンパク質の分離に対する不連続な緩衝系として異なる陰極緩衝液と陽極緩衝液を使用することができよう。これらの実施例のあるものにおいては、両親媒性固定相を成分がどちらの電極緩衝液とも異なる緩衝液中にインキュベーションすることができよう。両性担体のような添加剤を、固定相をインキュベーションする緩衝液に含むことができる。他の実施例において、タンパク質の分離を容易にするような組成勾配を提供するために、移動相の組成を一時的に変更することができよう。
【0070】
平面電気クロマトグラフィーを用いた両親媒性固定相上のタンパク質の二次元分離において、タンパク質試料は膜の中央に置かれ(乾燥状態あるいは移動相で予め湿らせて)、それからこの固定相は移動相中にインキュベーションされる。タンパク質を電気浸透によって1つの方向に分離すると、平面固定相を洗浄し、第2の移動相中にインキュベーションし、それから最初の方向とは垂直な方向に電気浸透によって分離する。本発明に従った1つの実施例において、液体移動相は、両親媒性基板上でタンパク質の二次元分離を容易にするために、異なるpH値、有機溶媒濃度、およびイオン強度に調節できる。たとえば、ある移動相は酸性pH(約pH 4.5)であり、他の移動相は塩基性pH(約pH 8.5)である。緩衝液のpHは個々のタンパク質種の全電荷に影響を与え、それによってその動電的移動に影響する。液体移動相中の有機溶媒濃度の変化はタンパク質と固定相の疎水性成分との相互作用の強さに影響する。最後に、緩衝液のイオン強度は二次元におけるタンパク質の分離特性を変化させる。pH、イオン強度および有機溶媒濃度を操作することによって、1つの次元における分離が電気泳動的に、また他の次元においてはクロマトグラフィー的に起こり得る。
【0071】
タンパク質の試料はまずそのタンパク質を移動相あるいは弱いイオン強度の溶媒に溶かして準備する。いくつかの実施例ではGoodの緩衝液のような「生理的緩衝液」を試料の準備に使用する。これらの生理的緩衝液は無機塩類よりも低い電流を生じ、それによって高い試料濃度および高い電界強度の使用を可能にする。Goodの緩衝液の例には、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸 (ACES)、N-(2-アセトアミド)イミノジ酢酸 (ADA)、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエタンスルホン酸 (BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(BIS-TRIS)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸 (EPPS)、2-[4-(2 ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-プロパンスルホン酸モノハイドレート(HEPPSO)、2-モルホリノエタンスルホン酸モノハイドレート(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)、1.5ナトリウム塩(PIPESの1.5ナトリウム塩)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)デハイドレート(POPSO)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノ プロパンスルホン酸(TAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-ヒドロキシ-3-アミノ プロパンスルホン酸(TAPSO)、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、およびN-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(TRICINE)などがある。塩類をタンパク質試料の抽出および隔離を容易にするために使用する場合、平面電気クロマトグラフィーによる試料の分画に先だって、逆相樹脂を使って有機溶媒ベースのタンパク質の沈澱あるいは試料透析によって、タンパク質試料の脱塩を行うことができる。
【0072】
いくつかの実施例において、タンパク質試料はまずタンパク質をHPLC溶媒システムに溶かして準備し、これによってタンパク質溶解のために界面活性剤、攪乱剤および強い有機酸を使用することが避けられる。HPLC溶媒システムにはメタノールあるいはアセトニトリルのような有機溶媒を含む緩衝化した溶液を含み、生体学的試料の準備に適用することができる。たとえば 60% メタノールあるいはアセトニトリル、0.1%のギ酸を含む40%の水、あるいは 60% メタノールあるいはアセトニトリル、40% 50mM 炭酸アンモニウム、pH 8.0 は適切な試料可溶化緩衝液である。1つの実施例において、可溶化緩衝液中の最終タンパク質濃度は約0.05mg/mlから約5mg/mlである。1つの実施例において、可溶化緩衝液中の最終タンパク質濃度は約0.4mg/mlから約0.6mg/mlである。タンパク質の抽出および可溶化は断続的な渦流と音波処理によって容易にすることができる。界面活性剤は質量分析においてペプチドのイオン化を抑制し、またクロマトグラフィー分離、特に逆相液体クロマトグラフィーを妨げることがよく知られている。有機溶媒を含む緩衝化した溶液は液体クロマトグラフィーおよび質量分析にさらに相性が良く、それによって平面電気クロマトグラフィー後のタンパク質同定を容易にする。緩衝化溶液抽出処置の他の重要な利点は、膜貫通ヘリックスを含有するタンパク質を含む膜内在性タンパク質の可溶化、分離および同定を容易にすることである。
【0073】
ペプチドおよびタンパク質の平面電気クロマトグラフィーは電界を直接に膜あるいは薄層クロマトグラフィー板にわたって印加することにより行われる。ある実施例において平面表面は、緩衝用ストリップとも呼ばれる芯状支持体を使用することにより、電気システムと結合することができる。芯状支持体は平面固定相と水平電気泳動装置の電極との均一な電気経路を確立するために使用される、固体あるいは半固体の媒体である。たとえば芯状支持体はセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルあるいは同様のものから構成することができる。
【0074】
電気クロマトグラフィーシステムにおける電界の印加はジュール加熱を生じ、これが膜あるいは板表面からの液体移動相の蒸発につながることがある。この移動相の蒸発は、電流の減少、表面の乾燥、およびそれに続く分離品質の低下を引き起こすことがある。本発明に従ったある実施例において、ジュール加熱の結果起こる移動相の蒸発を低減するために、平面固定相をガラス板、シリコーンオイルあるいはその他の不浸透性のバリアで覆っている。さらに膜あるいは板上の移動相の前方への流れが妨げられることがあり、これが電気浸透流による液体移動相を膜あるいは板の表面へ駆動を引き起こす。その結果、分離度の低い分離が起こり、また電気泳動装置のアーク放電を引き起こすことがある。移動相のpHあるいはイオン強度を調整することは電気的に駆動する分離の条件を最適化するのを助ける。ある実施例において、タンパク質あるいはペプチド分離のための動作電流は約10μAから約500mAであり、また分離に印加される電界強度は約50ボルト/cmから約900ボルト/cmである。他の実施例において、この分離に印加される電界強度は200ボルト/cmから約600ボルト/cmである。本発明のいくつかの実施例において、タンパク質の分離は一定電圧、一定電流あるいは一定電力モードで行うことができ、最後のモードではシステムにおけるジュール加熱が一定量になる。
【0075】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーは、固相化メタルアフィニティー電気クロマトグラフィー、イミュノアフィニティクロマトグラフィー、ゾーン電気泳動法、帯電分子推進分離法、動電クロマトグラフィー、等電点電気泳動法、非平衡pH電気泳動法、および ミセル動電クロマトグラフィーのような他の種類の電気泳動法と共に使用することができる。いくつかの実施例において、2成分あるいは二重相平面基板を作ることができる。たとえば固相化メタルアフィニティー電気クロマトグラフィーに続いて逆相電気クロマトグラフィーを行うことも可能であろう。平面支持体の1つの端、たとえば膜の1つの側に沿った1 cmのストリップ、を金属キレート基(たとえばイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸)で化学修飾することができ、一方で膜の残りはスルホン酸塩イオン交換特性を有するようにできよう。この膜は Ni(II)、Cu(II)、Ca(II)、Fe(III) あるいはGa(III)のような金属イオンで荷電され、またこのキレート基がこれらの金属イオンを選択的に保持するであろう。タンパク質試料は膜上に個別のスポットとして加え、結合に適切な緩衝液を用いて、修飾したストリップの長さに沿って電気クロマトグラフィーの分離を行うことができる。ある実施例において、Fe(III)- あるいは Ga(III)-荷電膜ストリップ、20 mM酢酸ナトリウム、pH 4.0を使うことができる。最初の分画が完成すると、膜を第2の緩衝液中で濯ぎ、最初の分離の方向と垂直の方向に電気クロマトグラフィーを行う。説明した膜を用いて生成したプロファイルを金属キレートストリップのない膜から生成したプロファイルと比較することにより、移動がこの2つのプロファイルの間で変更されているスポットとして金属結合タンパク質が表される。陽イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相電気クロマトグラフィーを含む、分離のその他の組み合わせた様相が想定される。
【0076】
技術の専門家に良く知られているいろいろな検出の種類を使って、平面電気クロマトグラフィーのあとタンパク質、ペプチドおよびグリカンを検出することができる。一般的なタンパク質の検出に使われる方法の例には、有機染料染色法、銀染色法、放射能標識、蛍光標識(前標識、後染色)、化学発光標識、質量分析ベースの手法、逆染色法、接触検出法、タンパク質の内在蛍光の直接測定、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射あるいは同様のものを含む。逆染色法において、タンパク質は無標識のままであるが、平面表面の占拠されていない場所は染色される。接触検出法においては、基質を吸収させた別の膜あるいは濾紙を平面表面に接触させて置き、平面固定相上にあるタンパク質試料は基質分子と相互作用して生成物を作る。タンパク質の内在蛍光の直接測定においては内在蛍光の少ない固相支持体を使用する。翻訳修飾後のタンパク質解析に適当な検出法の例には、糖タンパク質、リンタンパク質、タンパク質分解修飾、S-ニトロシル化、アルギニンメチル化、およびADP-リボシル化の検出法を含む。さまざまなレポーター酵素およびエピトープタグの検出法の例には、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、オリゴヒスチジンタグ、および緑色蛍光タンパク質を視覚化する方法を含む。これらの検出技術の性能を最適化するために固有蛍光が低い固相支持体の使用が必要である。
【0077】
平面電気クロマトグラフィーを受けたタンパク質試料はストリップ上の個別のスポットとして現れ、染色あるいは免疫標識ならびにいろいろは検出方法による解析のためにアクセスできる。検出方法の例には質量分析、エドマン法によるタンパク質配列解析あるいはその他の微細構造解析技術を含む。ある実施例において膜表面に結合したタンパク質は、抗体、ペプチド抗体様物質、オレゴヌクレオチドアプタマー、量子ドット、Luminex ビーズあるいは同様の試薬によって標識される。
【0078】
いくつかの実施例において、化学発光法による平面表面上のタンパク質検出を平面電気クロマトグラフィーによる分画の前あるいは後に使用することができる。ある実施例において、タンパク質をビオチニル化し、それからセイヨウワサビペルオキシターゼ(HRP)ストレプタビジンコンジュゲートおよびWestern Lightning Chemiluminescenceキット(PerkinElmer)を使って検出できる。他の実施例では、タンパク質を蛍光染料により染色あるいは標識し、続いて蛍光染料をビス (2,4,6-トリクロロフェニール)オキサレート(TCPO)-H2O2反応のような、非酵素的な手段で化学的に励起する。
【0079】
本発明の1つあるいは複数の実施例に従う方法を使ったタンパク質の分離は短い所要時間で達成できる。タンパク質は平面基板上でスポット状にして、一次元目の分離にかけ、洗浄し、二次元目の分離にかけるが、これによって検出のため固定相表面のタンパク質およびペプチドにアクセスすることができる。ある実施例では SYPRO Ruby protein blot stain (Molecular Probes)により表面上のタンパク質検出が約15分間で可能である。さらに平面支持体自身は機械的に強い支持体として役立つので、分離プロファイルのアーカイビングをゲルの真空乾燥なしに行える。
【0080】
本発明のいくつかの実施例において、平面電気クロマトグラフィーを非常に大きいタンパク質、非常に小さなタンパク質、高度に酸性のタンパク質、高度に塩基性のタンパク質および疎水性タンパク質の分画に使用できる。いくつかの実施例では大きなマルチサブユニット複合体を膜表面で分画できる。ある実施例において高濃度の有機溶媒を含む移動相が疎水性膜内在性タンパク質の分離に使用されている。他の実施例において、「電気泳動的に静かな」突然変異体の分離に平面電気クロマトグラフィーを使うことができ、その場合タンパク質およびペプチドは荷電されていないアミノ酸残基によってのみ異なる。さらに別の実施例において、平面電気クロマトグラフィーシステムを無傷のタンパク質の分画に使用できる。このことは翻訳修飾後あるいは差異的なスプライシングから発生するイソ型タンパク質の解析に関して有利である。
【0081】
プロテオミクスの研究はしばしば異なるタンパク質プロファイルの比較に基づいている。ディファレンシャルディスプレイプロテオミクスの中心目的は多重解析によってプロテオミクス研究の情報内容を増加させることである。現在ディファレンシャルディスプレイプロテオミックスへの2つの主要なゲルベースの手法、すなわちディファレンシャルゲル電気泳動法(DIGE)およびマルチプレックスプロテオミクス(MP)が活発に研究されている。本発明に従う1つの実施例において、マルチプレックスプロテオミクス解析によるプロテオミクス研究の情報内容を増加させるために、平面電気クロマトグラフィーをディファレンシャルゲル電気泳動法(DIGE)と一緒に使用することができる。シアニン染料のサクシニミジルエステル(たとえばCy2、Cy3およびCy5)を、混合しDIGEを用いて同じ2Dゲルに同時にかける前に、3つの異なる複合タンパク質母集団に蛍光標識として適用できる。2Dゲルのイメージは3つの異なる励起/放射フィルタ組み合せを用いて得られ、異なる色の蛍光シグナルの比を試料中のタンパク質の違いを見出すのに使用できる。DIGEにより2つから3つの試料を同一の電気泳動条件の元で分離できるので、ゲルイメージの登録およびマッチングのプロセスを簡単化できる。DIGEは2つの試料の違いを調べるのに使用できる(たとえば薬品処理した細胞対基準細胞あるいは病気の組織対健康な組織)。DIGEに関する本開示に詳細説明した平面電気クロマトグラフィーの主な利点は、タンパク質の分離がより早く達成でき、また試料がプロファイルの差異を決定したあと質量分析によりさらに容易に評価できることである。DIGEの1つの要件は標識したタンパク質の可溶性が電気泳動の間保持されるように、タンパク質中のリシン残基の約1%から約2%が蛍光的に修飾されることである。分離が平面電気クロマトグラフィーにより行われるとき、有機溶媒が移動相および試料緩衝液に使われているという事実により、非常に高度の標識を達成することができる。高度の標識はまたDIGE技術を用いた検出感度を劇的に向上させるはずである。
【0082】
他の実施例において、多重解析によってプロテオミクス研究の情報内容を増加させるため、平面電気クロマトグラフィーをマルチプレックスプロテオミクスに使用することができる。マルチプレックスプロテオミクス(MP)プラットフォームはタンパク質発現ならびに糖鎖形成のレベル、リン酸化のレベル、薬物との結合能力あるいは薬物代謝能力のようなタンパク質の官能属性の平行した決定ができるように設計されている。このMP技術プラットフォームは2DGEデータベースにあるすべてのゲルについてタンパク質を測定するため同じ蛍光体を使用し、分離した種類の特定の官能属性を強調するために異なる励起および放射またはそのいずれかを持つ追加の蛍光体を適用する。薬物結合能力あるいは特有の翻訳後修飾のようないくつかのタンパク質の官能的属性を明らかにするため、MPプラットフォームを使って2Dゲルのセットを蛍光的に染色し、イメージを得る。それから蛍光全タンパク質染色を使って同じゲル中のタンパク質発現レベルを明らかにする。ディファレンシャルディスプレイ比較をZ3プログラム(Compugen, Tel Aviv, Israel)のようなイメージ解析ソフトウエアを使ってコンピュータで行う。同じ励起/放射フィルタセットを使ってすべてのゲルのイメージを作り、それからプロセスを容易にするためいくつかの手動のアンカーポイントを加えるオプションを使ってそのイメージを自動的にマッチングする。その後どの2つのイメージでも1つの疑似カラー図として再表示できる。さらに、定量的情報が計算した差分表現データを用いた表形式で得られる。ゲルイメージングプラットフォームを使って、全タンパク質パターンのような異なったゲルからの類似のプロファイルをコンピュータでマッチさせるが、一方全タンパク質パターンと糖タンパク質のような同じゲルからの異なるパターンを重畳し、コンピュータでマッチさせる。MPにおいて、染色を順番に行うとポリアクリルアミドゲル中にその前にあったものを隠蔽するので、このゲルの染色とイメージ取得は直列に行う必要がある。ある実施例において、MPが発生したプロファイルについて複数のシグナルの同時イメージングするのを助けるために、平面電気クロマトグラフィーを使うことができる。蛍光染料は、高分子膜上で互いに隠蔽するような、同様の強い傾向を有しない。
【0083】
別の実施例において平面電気クロマトグラフィーをタンパク質の直接解析のためMALDI-TOF MS と一緒に使うことができる。この実施例においてタンパク質は固相支持体の上で分画され、続いてMALDI-TOFレーザーで直接プロービングを行う。ある実施例において、本発明に従う平面電気クロマトグラフィーシステムを直交MALDI-TOF質量分析計(たとえばPrOTOF 2000 PerkinElmer, Boston, MA, USA/MDS Sciex, Concord, ON, Canada)と共に使用できる。このprOTOF 2000 MALDI O-TOF 質量分析計は直交飛行時間法を用いたMS MALDI である。prOTOFの新しい設計により従来のリニアあるいは軸ベースのシステムに比べて向上した装置の安定性、分離度、および広い質量範囲にわたって質量の精度が得られる。 prOTOF 2000によって達成されるより正確で完全なタンパク質同定により Q-TOF および TOF-TOFのようなさらに複雑なタンデム質量分析技術を使ったペプチド配列解析に対する必要性を低減する。この装置は、MALDIソースがTOF解析機から切り離されているので、特に平面電気クロマトグラフィーに好適である。その結果固相表面トポグラフィーあるいは表面からの試料の差動電離から発生する食い違いは試料が実際に検出器に供給される前に除去される。固相表面に結合されたタンパク質が提示されるので、質量分析による解析に先立って、汚染する緩衝液種の除去およびタンパク質開裂試薬(たとえばトリプシン)への露出を容易にする。分画プロセスにおけるHPLCベースの緩衝液の使用により、質量分析を使用した解析の間の界面活性剤および攪乱剤による川下への干渉に対する可能性を最小になる。
【0084】
両性担体等電点電気泳動ゲル、固相化pH勾配等電点電気泳動ゲル、ネイティブポリアクリルアミドゲル、およびSDSポリアクリルアミドゲルを直接MALDI-TOF MSを使って表面走査することにより、タンパク質のレーザー脱着がサブピコモルの検出感度で達成できる。しかし現在この処理は非常に遅く、ゲルを行うのに1日、それを乾燥させるのに2日、スペクトルを得るのに2日を要する。本発明のある実施例において、タンパク質を便宜上固相支持体に固定して提供し、これによってMALDI-TOFレーザーにより直接プロービングするのに好都合なように提示することにより、タンパク質の直接解析のため平面電気クロマトグラフィーをMALDI-TOF MSと一緒に使用できる。「仮想的」2Dプロファイルを1D平面電気クロマトグラフィー分離により発生でき、続いてMALDI-TOF質量分析を使って平面基板から直接にタンパク質を脱着するが、事実上質量分析がSDSポロアクリルアミドゲル電気泳動の代わりをする。得られた解析データは2Dゲルタイプのように見えるコンピュータで生成したイメージとして提示できる。他の実施例において平面電気クロマトグラフィーを、既定のインゲル消化法トリプシンのマイクロディスペンシングによりスポットのいろいろな領域で複数の化学反応が行われ、たとえばペプチドのマスプロファイルおよびグリコシル化の同定が同じスポットから達成できる、高スループットペプチドマスフィンガープリンティングおよび圧電パルス印加のような化学プリンティング技術を使ったグリコシル化解析に対する開始点として使用できる。トリプシンおよびMALDI-TOFマトリックス溶液の既定のマイクロディスペンシングは、通常インゲル消化法で遭遇する複数の液体取扱い工程を迂回し、これによってタンパク質同定法を簡素化する。
【0085】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、いろいろな生物試料のタンパク質の相対存在量が生理学上の変化と関連づけられているディファレンシャルディスプレイプロテオミクスに対する質量タグ法技術と一緒に使うことができる。たとえば同位体コードアフィニティタグ(ICAT)ペプチド標識法は同位体比を用いて2つの母集団間の区別をするのに有用な技術の1つである。ICAT試薬はタンパク質およびペプチドにあるシステイン残基のチオール基に対して特異的な反応官能性を用いる。2つの異なる同位体タグを8個の水素原子(d0、軽い試薬)あるいは8個の重水素原子(d8、重い試薬)を含むリンカーを使って発生する。1つのタンパク質試料から還元したタンパク質混合物をICAT試薬の同位体的に軽いバージョンで被覆し、一方で他の還元タンパク質試料はICAT試薬の同位体的に重いバージョンで被覆する。次に2つの試料を組み合せ、ペプチドの断片を生成するためにトリプシンあるいはLys-Cを使ってタンパク質分解的に消化する。この組み合わせた試料を平面電気クロマトグラフィーで分画することができる。8ダルトンずつ異なる同位体分子量のピークの比は、質量分析で見られるように、原試料からの各タンパク質の相対量の尺度を与える。その他の質量タグ法の手法には、14Nあるいは15N強化培地での細胞の増殖、試料のGlu-Cタンパク質分解中の溶媒として普通の水(H216O)および重水(H218O)の使用、ペプチド中の第1級アミノ基をアセチル化するために酢酸塩(d0)およびトリドイテロ酢酸塩(d3)の使用、普通のメタノール(d0)あるいはトリドイテロメタノール(d3)を用いたアスパラギン酸塩およびグルタミン酸残基のメチルエステル化、N末端をヨードアセチル化した、12Cおよび13C標識を付けたトリアミンペプチド、および 試料中のO-リン酸化サイト間の差異をβ脱離化学を使って測定するための、1,2-エタンジチオール(d0)およびテトラアルキルドイテル化1,2-エタンジチオール(d4)の使用を含む。
【0086】
最近2DGEとICAT標識技術の利点を単一のディファレンシャルディスプレイプラットフォームと組み合わせることができるということが示された。
2つの異なる試料からのタンパク質を重いICAT試薬と軽いICAT試薬で標識し、組み合せ、それから2DGEによって分離する。ゲル分離したタンパク質は敏感なタンパク染料で検出し、励起し、プロテーゼで処理をし、ペプチドマスプロファイリングで同定する。さらに選択したペプチドを衝突誘起解離(CID)および配列データベース検索を使って評価することができる。2DゲルにおけるICATディファレンシャルディスプレイの重要な応用の1つは、翻訳後修飾から起こる、タンパク質イソ型の相対存在量の評価に対するものである。本発明のある実施例において、2D平面電気クロマトグラフィーをICAT標識と組み合せ、ICAT試薬を使ったディファレンシャルディスプレイプロテオミクス用の単一プラットフォームを作ることができる。分離はずっと速く、またこのタンパク質は下流の質量分析に基づく解析にさらに敏感に反応する。
【0087】
ICATストラテジーと同じ基本原理に基づく質量タグ法の手法には14Nあるいは15N強化培地での細胞の増殖、および試料のGlu-Cタンパク質分解中の溶媒としての普通の水(H216O)および重水(H218O)の使用を含み、これにより各タンパク質分解断片のC末端部分中の2つの18O原子あるいは2つの16O原子が取り込まれる。この結果は対のペプチド間の質量で4ダルトンの差となる。酢酸塩(d0)およびトリドイテロ酢酸塩(d3)をペプチド中の一級アミノ基をアセチル化するのに用いることができる。同様に、普通のメタノール(d0)あるいはトリドイテロメタノール(d3)を使ったアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩のメチルエステル化を同位体タグ標識ストラテジーとして使用できる。質量タグ法実験のためN末端にヨードアセチル化した 12Cおよび13C標識したトリアラニンペプチド。最後にβ脱離化学を使って試料中のO-リン酸化サイト間の差異を測定するため、1,2-エタンジチオール(d0)およびテトラアルキルドイテル化1,2-エタンジチオール(d4)を使用できる。このスルフヒドリル側基はそれからビオチン ヨードアセトアミジル-3,6-ジオキサオクタンジアミンと反応させる。本発明のある実施例において、タンパク質発現変化および翻訳後修飾変化の示差分析のための分離プラットフォームとして、2D平面電気クロマトグラフィーを質量タグ法技術と一緒に使用できる。
【0088】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、平面電気クロマトグラフィーによる分画に続くセレン含有タンパク質、亜鉛金属酵素、カドミウム結合タンパク質、シスプラチン結合薬剤標的およびミオグロビンのような金属タンパク質の微量元素分析のために、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)と一緒に使用できる。 レーザーアブレーションICP-MSは、紫外線レーザー光線の空間分解能を最新のICP-MSの質量分解能および元素感度と組み合わせることによって微量元素分析を可能にする。波長193-266 nmで生じる紫外線レーザー光線は試料表面に合焦して試料のアブレーションを生じる。15-20ミクロンのアブレーションクレーターは器械使用によって日常的に作られる。この処理に試料の特別な準備の必要はない。アブレーションされた材料はアルゴンキャリアガス中で直接に高温誘導結合プラズマに移送され、その結果生じるイオンはそれから検出および計数のため質量分析計に引き入れられる。質量フィルタが粒子の電荷/質量比に基づいて粒子を選択し、特定の同位体だけがフィルタを通って質量分析計(四重極質量分析計、磁場型質量分析計あるいは飛行時間型質量分析計)の端に取り付けられた電子増倍検出器に入ることができる。個々の同位体の検出されたシグナルは同位体比に変換でき、あるいは未知物質とともに基準物質を測定しているときは、実際の元素濃度に変換できる。
【0089】
レーザーアブレーションICP-MSは、電気ブロッティング膜上のリンタンパク質から放出されるm/z 31シグナルとしてリンを直接測定するのに使用できる。レーザーアブレーションICP-MSを使って、16ピコモルの五リン酸化したベータカゼインを高分子膜の上で検出できる。他の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、放射能標識あるいはPro-Q Diamond phosphoprotein stain (Molecular Probes)のようなサロゲート染料を使用せずに、タンパク質リン酸化を直接分析するためのプラットフォームとして使用できる。
【0090】
低濃度のリンの検出は、アルゴンICP中のイオン化が貧弱であり、質量31(15N16Oおよび14N16O1H)には直接に、また質量32(16O2および32S)には間接に、妨害高分子種が存在するために、ICP-MSにとって分析するのが容易でない。リンの第一イオン化電位は10.487電子ボルトである(Wilbur and McCurdy, 2001)。これはリン(P)原子を誘導結合プラズマ中でP+イオンに変換するのが難しいことを意味する。これは最適化したICP-MS中でP原子からP+イオンに6%変換を意味し、ICP-MSにとって比較的低いレスポンスファクターである。技術の専門家にとってタンパク質およびペプチド中のリン酸基がアルミニウム(III)、ガリウム(III)および鉄(III)のようないくつかの三価金属イオンと容易に結合することが知られている。ICP-MSを使えば1 ppb (10億分の1)という僅かなこれらの金属イオンを検出できる。5.986電子ボルトの第一イオン化ポテンシャルを持つアルミニウムのイオン化変換はリンについて説明したのと同一実行条件のもとで99%である。このようにリンの代わりにアルミニウムを検出すれば検出を16倍向上させる。さらに三価金属イオンに限定した検出は検出ウインドウを前述の生物学的バックグラウンドシグナルから離れたところに移動する。アルミニウム、ガリウムおよび鉄の原子質量はそれぞれ26.98、69.7および55.85である。これらの三価金属イオンの中で、鉄イオンはICP-MSの界面領域でArN、ArOおよびArOHから生じる多原子干渉による問題を引き起こす。ガリウムが提案している応用に対しておそらく最も適した金属イオンである。69Gaおよび71Gaの両方のシグナルがこの方法により定量化でき、他の分子種からのシグナルと重畳する確率を最小にできよう。
【0091】
ICP-MSベースの検出手順を使ったタンパク質の検出には次の工程が含まれる。本発明の1つの実施例に従って説明したように、まずタンパク質を2D平面電気クロマトグラフィーによって分離する。次にこの平面基板を1 mMの塩化ガリウム、50 mMの酢酸ナトリウム、pH4.5、50 mMの塩化マグネシウム中にインキュベーションする。次に過剰な金属イオンを除去するため平面基板を50 mMの酢酸ナトリウム、pH 4.5、50 mMの塩化マグネシウム中で繰り返し洗浄する。平面表面上の個々のスポットをレーザーアブレーションICP-MS法で処理するが、ここではリンのシグナルではなくガリウムのシグナルを定量化する。その代わりにガリウム溶液にインキュベーションせずにリンのシグナルを読むこともできる。標本抽出は単一あるいは多スポット分析、直線走査あるいはラスター化により行うことができる。スポット選択を容易にするために、ガリウムイオンにインキュベーションする前に、平面基板上のタンパク質を全タンパク質染料で染色することができる。
【0092】
1つあるいは複数の実施例において、タンパク質発現プロファイリングおよびタンパク質の機能研究のため平面電気クロマトグラフィーをタンパク質マイクロアレイと一緒に使用できる。平面電気クロマトグラフィーはタンパク質マイクロアレイを作る比較的簡単な方法を提供するのに使用できる。小さな表面を既定のタンパク質混合物でスポットし、続いてこれを2D平面電気クロマトグラフィーによって分画する。構成要素のタンパク質はこうして生成されたスポットの直交マトリックスの予め決められた座標に明示的に割り当てられないが、スポットの同定は、質量分析、免疫検出あるいは続いて行う分離における混合物から各タンパク質を系統的に削除することによって簡単に決定される。一度プロファイルにおける各タンパク質の位置が判ると、自己免疫疾患における自己免疫反応のプロファイリングおよび他のタンパク質-タンパク質、受容体リガンド、酵素基質、酵素阻害物質あるいはタンパク質-DNA相互作用のスクリーニングのための、従来のタンパク質アレイとして使用できる。アレイを使う手法の利点は、専用のピンを使ったあるいは圧電によるスポット装置を必要とせず、また前述のようにこの膜アレイがフィルタを使ったタンパク質マイクロアレイ技術に敏感であることにある。たとえばタンパク質チップの多段積み重ねができる濾過手法が特定試薬を使った同時プロービングに使用できる。
【0093】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、血漿、尿、リンパ液、痰およびその他の生物の体液中にある特定タンパク質に関連するバイオマーカーの検査に使用できる。特に血清アルブミンは、多数の外因性および内因性の循環物質に対する貯蔵および輸送タンパク質として役立つ、幅広い結合能力を有する存在度の高い血液タンパク質である。本発明で説明した方法を使って血漿をその構成要素の血清タンパク質成分に分画すると、アルブミン、ハプトグロビン、α2マクログロブリンあるいは免疫グロブリンのような個別のタンパク質に関連するペプチドを選択的に溶離し、質量分析によって同定することができる。このペプチドは0.2%のトリフルオロ酢酸を使って酸溶離でき、続いて分析に先立って逆相樹脂を使って濃縮できる。この技術を使えば、非共有結合ペプチドをhsp 70、hsp 90およびgrp 96のようないろいろなタンパク質から隔離できる。本発明に従った1つの実施例の利点は、このペプチドを分子量カットオフ膜によってタンパク質から分離する必要性がなくなることである。その代わりに標的タンパク質は電気クロマトグラフィー基板に固定されたままであり、ペプチドはそれから溶離する。
【0094】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを複雑なオリゴ糖類、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンおよび蛍光体で予め化学装飾されたオリゴ糖類(たとえば8-アミノナフタリン-1,3,6-トリスルホン酸(ANTS)および2-アミノアクリドン(AMAC)のような)の分画に使用できる。タンパク質グリコシル化は悪性転換および腫瘍形成に関連する生化学的変化に対して使用される。人間の癌腫のグリコシル化変化は、ある種の発癌事象の下流で観察される悪性の表現形の一因となる。オリゴ糖の分枝形成、シアル酸化および硫酸化に関する複合糖質のイソ型を迅速にプロファイルできる技術は臨床の癌試料の悪性評価にとって貴重な道具である。
【0095】
本発明の多くの特徴および利点は詳細な明細書から明らかであり、これによって本発明の真の精神と範囲内に入る発明のこのようなすべての特徴および利点を含むことを意図している。さらに技術の専門にとって、多数の修正や変形が容易に起こり得るので、本発明を表示しまた説明したそのままの構造および走査に限定することを望んでいないし、したがってすべての適切な修正および同等物は本発明の範囲に入るとすることができる。前述の発明は好ましい実施態様の図示と例を使って詳細に説明したが、多様な修正、置き換えおよび変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に従って、第1の移動相と接触しており、中心近くにスポットされた試料を有し、第1の方向に電界が印加された、平面固定相の配置図である。
【図2】本発明に従って1次元に分離された試料を示す。
【図3】本発明の1つあるいは複数の実施例に従って2次元に分離された試料を示す。
【図4】本発明の1つあるいは複数の実施例に従った装置の配置図である。
【図5】本発明の1つの実施例に従った装置の配置図である。
【図6】本発明の第2の実施例に従った装置の配置図である。
【図7】本発明の第3の実施例に従った装置の配置図である。
【図8】本発明の1つあるいは複数の実施例に従って位置合わせ形体に対して固定相を支持するための手段を示す。
【図9】ほぼ同じ条件で同時に分離する前に固定相の上にスポットされた2つの試料を示す。
【図10】2つの試料に2次元分離法を適用した結果得られた2つの同時分離を示す。
【図11】平面固定相と電極対を含むカセットを示す。
【図12】分離プロセスを半自動化するためにカセットと併せて使用することができる試薬の導入および洗浄ステーションを示す。
【図13】分離プロセスを半自動化するためにカセットと共に使用することができる平面電気クロマトグラフィー分離ステーションを示す。
【符号の説明】
【0097】
1 平面固定相
2 試料
3 移動相
4 正極
5 負極
6 長さ
7 印加電位
8 一次元目
9 二次元目
11 複数のスポット
16 支持体
17 電極
18 電極
19 接続パッド
20 接続パッド
21 リード線
22 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電気浸透駆動平面クロマトグラフィーを用いたタンパク質、ペプチド、グリカンの分離に関する。本発明はまた平面電気クロマトグラフィーを用いた生体分子分離のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトプロテオームは約30,000の異なる遺伝子を含むことが知られている。しかし翻訳後修飾およびmRNAスプライシングのため、個別のタンパク質の総数はおそらく100万個に近い。複雑さのレベルに加えて相異なるタンパク質の種類が豊富なためその分離技術は独特の難しい課題である。何千というタンパク質の発生量、配置、修飾、一時的な変化、相互作用の同時定量的な分析に対する分析法はプロテオミクスにとって重要である。 タンパク質組成の異なる物理化学的特性に基づく二次元あるいは多次元タンパク質分離は、分画の追加次元によって得られる分離度の増加のため、プロテオミクスにおいて一次元分離よりも有利である。二次元分離システムは次元間のインタフェースのタイプにより分類することができる。「ハートカッティング」法においては関心のある領域を一次元目から選択し、選択した領域を二次元目の分離にかける。一次元目の全てを二次元目の分離に掛けるシステム、あるいはその代わりに一次元目から溶出液を一定の間隔で抜き取り、二次元目で続けて行う分画のために一定量を供給するシステムは、「網羅的」方法と呼ばれる。
【0003】
現在使われている主流のタンパク質分離技術は高分離度二次元ゲル電気泳動法(2DGE)である。高分離度2DGEは、一次元目でそれらの電荷に従った等電点電気泳動法による分離と、二次元目でそれらの相対的移動度に従ったドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法による、タンパク質の分離を含む。この技術は何千ものポリペプチドをスポットの布置パターンとして同時に分解することができ、タンパク質合成、解糖、グルコース新生、ヌクレオチド生合成、アミノ酸生合成、脂質代謝およびストレス反応のような代謝プロセスの大域解析に使用することができる。この技術はまた、シグナル伝達経路の解析、シグナル伝達事象の全体的な変化の検出、ならびに翻訳後修飾によって起こる変化に起因するタンパク質発現の変動とデグラデーションとの違いの検出に用いることができる。
【0004】
ポリアクリルアミドゲルは機械的に脆弱で、取扱中に伸長および破断しやすい。2DGEを使った解析では、ぶるぶるした、たるんだゼラチン様の厚板の上に浸みた水っぽいインクスポットのランダムパターンができる。その他の制限事項としては、分離プロセスの自動化が困難、試料のスループットが低い、また、低発生量、極端な塩基性、強い疎水性、非常に大きい分子量あるいは非常に小さい分子量のタンパク質の検出が困難、などがある。ゲル中で標識した抗体あるいはレクチンを用いたタンパク質の直接検出は完成しているが、この方法は一般にどの抗原にも適用できるのではなく、また比較的感度が悪い。したがってタンパク質は通常特定のターゲットを同定する前に電気泳動によって高分子膜に移動させる。ポリアクリルアミドゲルはまた質量分析法のような微量化学特性化技術によるタンパク質の同定の際に困難をもたらす、というのは、このゲルは浸軟し洗浄しなければならず、タンパク質はタンパク質分解酵素を用いてインキュベーションしなければならず、ペプチドは同定の前に逆相カラムを用いて選択的に取り出し、濃縮する必要があるからである。
【0005】
膜内在性タンパクはシグナル伝達に重要な役割を演じ、したがってまた製薬産業が追究する主要な薬品ターゲットである。このタンパク質は一般に脂質二分子膜の疎水性部分を混ぜた、1つあるいは複数の疎水性の膜貫通領域を含む。この2DGE技術は疎水性タンパク質、特に2つあるいはそれ以上のαらせん膜貫通領域を含むタンパク質の分画にあまり適さない、というのはこの技術が水性緩衝液および親水性のポリマーに基づくからである。
【0006】
二次元液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(2D LC/MS/MS)がそれに変わるタンパク質分離の解析的手法として用いられている。2D LC/MS/MSでは複雑なタンパク質試料のタンパク消化物が、2つの独立したクロマトグラフィー相、強力な陽イオン交換体および逆相物質を搭載したマイクロキャピラリーカラムに充填される。ペプチドは反復して直接タンデム質量分析計に溶離され、発生したスペクトルはタンパク質あるいはDNAのデータベースから得られた理論的質量スペクトルと相関させる。プロテオミクスへのこのペプチドベースの手法は試料からLC-MSシステムの解析能力を超過する多数のペプチドを発生する。したがって複雑な消化物から、システイン残基あるいはヒスチジン残基だけを含むトリプシンのペプチドのような僅かなパーセント(3-5%)のペプチドを取り出すストラテジーが開発された。残りの95-98%のペプチドは捨てられ、このようにして試料の包括的な解析を防ぐことができる。さらにこのような方法では分解プロセス自身から生じる配列有効範囲の不足と配列の混乱の双方により、プロテオーム中に現れる、差別的なmRNAスプライシングおよび翻訳後修飾から生じるいろいろなタンパク質のイソ型を区別することが不可能である。
【0007】
ペプチドおよびタンパク質の解析に適用されるその他の技術としてキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)があるが、その用途はモデル検体の1-Dキャピラリー分離に限定されている。CECはキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に組み合わせた複合分離技術である。CECにおいて、クロマトグラフィーと電気泳動の両方のプロセスが検体の総合的な移動の割合の大きさを決定する主な力が水圧流であるHPLCとは違って、CECにおける駆動力は電気浸透流である。高電圧が印加されると、陽イオンはカラム充填剤中の粒子の電気二重層に蓄積し、自身と共に液相を引きずりながら陰極に向かって移動する。CECにおける分離機構は動力学的プロセス(動電学的移動)と熱力学的プロセス(分配)の両方に基づいている。この組み合せは帯の拡大を低減し、それによって高い分離効率を得る。
【0008】
電気浸透流は表面電荷密度、電界強度および電気二重層の厚さおよび温度に依存する分離媒体の粘度に依存する。電気浸透流は用いるpH、緩衝液濃度(イオン強度)、有機調節剤および固定相のタイプに大きく依存する。CEC分離は定組成溶離で行うことができ、これによって勾配溶離が不要となるので装置に対する要求が簡単になる。
【0009】
タンパク質分離のその他の技術として、親水性のセルロースベースの濾紙を固定相として使用し、また薄い水性リン酸塩緩衝液を電極緩衝液として使用する電気的駆動のセルロースフィルタ紙ベースタンパク質分離のような、平面電気泳動法および膜電気泳動法がある。この技術を使って、血漿タンパク質を一次元目は電気泳動法により、また二次元目では濾紙クロマトグラフィーにより分離できよう。セルロースポリマーは、タンパク質を固相表面にしっかり結合するには親水性すぎる。このように水性媒体の中でタンパク質が濾紙と相互作用を持つことは少なく、印加していた電流を除去すると、拡散にため分離パターンは急速に劣化する。酢酸セルロース膜の場合、電気浸透は三フッ化ホウ素のような作用物質によるアセテート部分の化学修飾によりしばしば非常に少なくなり、その後の分離は従来の等電点電気泳動により行われる。酢酸セルロース膜は臨床環境において診断に適用するには著しく脆弱であると考えられており、尿タンパク質および血清タンパク質のような非常に親水性のタンパク質の生成パターンは、ポリアクリルアミドゲルを用いて生成したものに比べて貧弱である。
【0010】
その他の電気駆動高分子膜ベースの分離プロセスに、電導性の微量汚染がない4つあるいはそれ以上の有機溶媒からなる複雑な非水移動相を用いる緩衝液電気分子推進(EMP)がある。
【特許文献1】本特許出願は2004.3.19付け米国仮特許出願No.60/521,250の利益を請求するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの態様は、電気泳動およびクロマトグラフィー機構の組み合せまたはそのいずれかによる生物学的種の分画を容易にするために、固相支持体と有機移動相および水性移動相との簡単の組み合せを用いた、高分離度のタンパク質、ペプチドおよびグリカン分離システムを提供することである。本分離システムは、分離媒体の機械的安定性、検体の分離後の同定技術(免疫検出、質量分析)へのアクセス可能性、疎水性検体および大きな分子複合体の分画能力を含み、また試料の消費、手動操作の回数、実際の分画を行う時間スケジュールを最少にする。
【0012】
本発明の1つの態様は生体分子の分離方法を提供することである。この方法は、1つあるいは複数の生体分子からなる試料の供給、試料の平面固定相への搭載、ここにこの固定相は親水性である、この固定相の第1の液体移動相への接触、この固定相の相対する端にある第1および第2の電極への電気接続の供給、第1の液体移動相を固定相の長さにわたって移動させるための、第1電極と第2電極との間の電界の発生、それによって1つあるいは複数の生体分子が分離される、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つあるいは複数の実施例において、この生体分子は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子から成るグループから選択される。1つあるいは複数の実施例において、移動相のpH、イオン強度および水/有機成分は電気浸透駆動分離を促進するように選択される。
【0014】
1つあるいは複数の実施例において、この液体移動相は水混和性の有機液体を含む水性混合物である。この液体移動相は、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0015】
1つあるいは複数の実施例において、親水性平面固定相はイオン基で化学修飾された疎水性ポリマーを含む。このイオン基は、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンおよび四級アンモニウム残基から1つあるいは複数を選択する。この疎水性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリクロロトリフルオロエチレンを含むグループから選択する。化学修飾された疎水性ポリマーは粒子状であってもよい。
【0016】
1つあるいは複数の実施例において、この平面固定相は、シリカ、アルミナあるいはチタニアベースの、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾された薄層クロマトグラフィー樹脂を含む。この平面固定相は、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾されたシリカ、アルミナあるいはチタニア粒子を含むことができる。
【0017】
1つあるいは複数の実施例において、この平面固定相は、直径約30ナノメートルから約100ナノメートルのポアを含む。この平面固定相は、直径約3ミクロンから約50ミクロンの粒子から出来ていてもよい。
【0018】
1つあるいは複数の実施例において、この分離方法はさらに第2の液体移動相を固定相の長さにわたって第2の方向に進め、これによって1つあるいは複数の生体分子が分離されるように、第1の電極と第2の電極の間に第2の電位を印加する工程を含む。移動相のpH、イオン強度および水/有機成分は第1および第2の両方の方向で電気浸透駆動分離を促進するように選択できる。その代わりに、この移動相のpH、イオン強度および水/有機成分を、1つの方向で電気浸透駆動分離を促進するようにまた他の方向でクロマトグラフィーによる分離を促進するように、選択できる。
【0019】
1つあるいは複数の実施例において、この第1の移動相と第2の移動相は異なるpHを有する。ある実施例において、第1の移動相のpHは酸性であり、第2の移動相のpHは塩基性である。また他の実施例では第1の移動相のpHは塩基性であり、第2の移動相のpHは酸性である。
【0020】
1つあるいは複数の実施例において、第1の移動相と第2の移動相は異なる有機物成分を有する。ある実施例において、第1の液体移動相は第2の液体移動相より大きい有機溶媒濃度を有する。また他の実施例においては、第1の液体移動相は第2の液体移動相より小さい有機溶媒濃度を有する。
【0021】
1つあるいは複数の実施例において、この第1および第2の移動相は異なるイオン強度を有する。
【0022】
1つあるいは複数の実施例において、この分離法はさらに分離した生体分子を検出する工程を含む。検出法は蛍光発光、質量分析、化学発光、放射能、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射からなるグループから選択される。この生体分子は分離の前あるいは後に検出剤で標識する。この検出剤は、色素染料、蛍光染料、化学発光染料、ビオチン化標識、放射性標識、アフィニティー標識、質量タグおよび酵素からなるグループから選択される。
【0023】
1つあるいは複数の実施例において、この分離法はタンパク質発現変動および翻訳後修飾変動の示差分析のための生体分子の質量タグを含む。
【0024】
本発明の他の態様において、生体分子分離用の電気クロマトグラフィーシステムが、少なくとも平面電気クロマトグラフィー領域を定義する底と側面を有し、そのチャンバ内の第1の領域が液体移動相を含み、そのチャンバ内の第2の領域が液体移動相を含むチャンバと、チャンバ内の第1と第2の領域との間に置かれ、液体移動相と接触している平面両親媒性固定相と、平面両親媒性固定相の相対する側に電気的接触ができる第1および第2の電極と、平面電気クロマトグラフィーを行うために第1と第2の電極との間に印加する電位を発生することができる電源とを含む。
【0025】
1つあるいは複数の実施例において、第1および第2の電極と平面固定相が平面の芯状支持体に接触している。この芯状支持体は、セルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、および湿らせたペーパータオルから成るグループから選択される。ある実施例において、芯状支持体の端が第1の領域にある液層に接触し、芯状支持体の他方の端が第2の領域にある液層に接触している。
【0026】
ある実施例において、第1の芯状支持体が第1の領域にある液層に接触し、第2の芯状支持体が第2の領域にある液層に接触している。他の実施例において、この固定相の第1の端が高速の芯状支持体および第1電極に接触し、固定相の相対する端が第2の芯状支持体および第2電極に接触している。
【0027】
1つあるいは複数の実施例において、この固定相は機械的締め具により2つのホルダーの間に保持されている。このホルダーは固定相を液体移動相に接触させるために中央に開口がある枠である。このホルダーはチャンバ内で機械的手段により2つのホルダーの間に保持されている固定相の位置決めをするための位置合わせ手段を含む。この位置合わせ手段は、孔、スロット、ピン、データム面およびデータム形体から成るグループから選択される。
【0028】
1つあるいは複数の実施例において、このシステムはさらに試料を平面固定相に分注するためのディスペンサーを含む。このディスペンサーは手動式あるいは自動式である。この手動式ディスペンサーはピペット、圧電電気分注チップ、固体ピンおよびクイルピンから成るグループから選択される。この自動式ディスペンサーは自動式ピペットディスペンサーあるいは試薬スポッティングあるいは試薬印刷装置である。
【0029】
1つあるいは複数の実施例において、このシステムはさらに電源ユニットを制御するためのコントローラーを含むが、ここに制御手段はコンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサーおよびタイマーから成るグループから選択される。
【0030】
本発明の他の態様において、電気クロマトグラフィーを行うためのキットを提供する。このキットは1つあるいは複数の生体分子から成る試料を置くための平面両親媒性固定相、少なくとも1つの緩衝液、および平面電気クロマトグラフィーを使って2つあるいはそれ以上の生体分子を含む試料の分離のためにこのキットをどのように使うかの説明を記述した取扱説明書を含む。
【0031】
1つあるいは複数の実施例において、このキットはさらに芯状支持体を含み、ここにこの芯状支持体はセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲルおよび湿らせた紙タオルから成るグループから選択される。
【0032】
1つあるいは複数の実施例において、このキットはさらに固定相を覆うための不浸透性の隔壁を含み、この不浸透性の隔壁はガラス板あるいはシリコーンオイルである。
【0033】
本発明の他の態様においてカセットを装備しており、このカセットは、底と側面とを有しまた液体を導入および排出するための流入口と流出口を有する枠と、この枠に支持されている固定相とを含むが、この固定相には両親媒性固定相を含む。このカセットは、さらにカバーと一体でありまたこの枠の第1の相対する側面に位置する一対の電極を含むことができる。このカセットはさらにカバーと一体でありまたこの枠の第2の相対する側面に位置する一対の電極を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
電気浸透駆動平面クロマトグラフィーを用いた生体分子、たとえばタンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子の分離のためのシステムおよび方法を説明する。電気泳動駆動平面クロマトグラフィーにおいて両親媒性高分子膜、両親媒性薄膜クロマトグラフィープレートあるいは同様の平面基板は分離プラットフォームに対する固定相を提供する。平面基板表面は、荷電基(イオン交換基)、非共有結合基(対イオン)、および検体、たとえばタンパク質あるいはペプチド、との化学的相互作用を容易にする非荷電基の組み合せによって特性が決まる。平面電気クロマトグラフィーシステムを用いた生体分子の分離方法において、電気泳動流は混和性有機溶媒-水性緩衝液移動相が存在するところで平面支持体の両端に電圧を加えることにより発生する。荷電イオンは固相支持体の電気二重層に集まり、自身とともに液体移動相を引きずりながら反対の電荷の電極に向かって移動する。荷電した生体分子は、液相と固相支持体との間の分配と、エレクトロマイグレーションの差の効果との両方によって分離される。
【0035】
本発明の1つあるいは複数の実施例に従って、1つの方向の分離、たとえば一次元目の分離が完了すると、固相を洗浄し、第2の有機溶媒-水性緩衝液移動相中でインキュベーションし、それから元の分離の方向とは異なる方向(たとえば二次元目の分離)に分画する。一般には第2の方向は第1の方向に対して垂直である。1つあるいは複数の実施例において、両方の次元は液相と固相支持体との間の分配効果とエレクトロマイグレーションの効果によって分離される。pH、イオン強度および有機溶媒濃度の調節により、一次元目の分離が電気泳動による分離が得られ、二次元目の分離がクロマトグラフィーにより得られる。
【0036】
ここで説明したシステムおよび方法はどのような荷電分子についても使用できるが、本発明はタンパク質、ペプチドおよびグリカンの分離に関して説明する。このような説明は便宜のためだけであり、本発明を制限することを意図するものではない。説明するこのシステムおよび方法を他の分子に適用できることは以下の説明から明らかである。
【0037】
図1は、本発明の1つの実施例に従って、第1の移動相と接触している平面固定相の中心近くにスポットされた試料と、第1の方向に印加された電界を示す。図1を参照すると、特に膜の形をした平面固定相1は、膜の周りの水溜まりとして示されている第1の移動相3によって濡れている。少量の試料2は固定相の上の中心近くにたとえば手によって分注あるいはスポットされる。他の実施例において、スポットはピペット、圧電分注チップ、固体あるいはクイルピンを使って分注することで行う。スポットするのは膜のどこでもよく、その位置は部分的に試料の電気マイグレーションの予想する方向と大きさによって決めることができる。他の実施例において、1つの位置あるいは配列として自動的にスポットすることができるMiniprobe液体取扱いロボット(PerkinElmer)を使って、正確な位置にスポットすることができる。正極4の電位および負極5の電位で特性化される電界を固定相1の第1の方向8に印加する。印加した電位7および電位を印加する長さの寸法6が電界の大きさを決定する。
【0038】
図2は一次元目8で分離を行ったあとの平面元固定相1上の試料2を示す。試料2はあるものは別個であり、あるものは重なっている複数のスポット11に分離されている。この一次元目の分離は印加した電位7の方向の線に沿って起こる。
【0039】
図3は一次元目8での分離および二次元目9での分離の両方を行ったあとの、平面固定相1上の分離した試料を示す。二次元目の分離に先だって、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。正極13および負極14の電位により特性化される第2の電界が二次元目9で固定相に印加される。
【0040】
図4は本発明を実施するための装置の配置図である。図4を参照すると、平面固定相1は治具あるいは支持体16の上に置かれており、移動相(示されていない)が固定相1に加えられている。支持体16は固体、多孔性であってもよく、あるいは分離の際に固定相を濡らしておくための移動相の供給を維持するためタンク室あるいは空洞を含むことができる。支持体の材料の例としてはPTFE(テフロン(登録商標))、Macor機械加工可能セラミック、ガラスあるいはその他の互換性のある材料を含む。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21が電極を電源22に接続されている。ある実施例においてこの電極は反応性のない材料でできている。反応性のない材料の例としては白金、パラジウムあるいは金がある。この電極の形は長方形のバー、線、棒、あるいは固定相の幅を充分に張ることができる長さを持つどのような形でもよい。本発明に従ったある実施例において電源22は高電圧直流電源である。電源22はより再現性のある結果を得るために分離条件を正確に制御するため、コンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサー、タイマーあるいは同様のもので制御することができる。
【0041】
ある実施例において、電極17および18の長さ全体にわたって連続的な電気接続を確保するため接続パッド19および20を電極と固定相との間に置いている。本発明の他の実施例において、接続パッド19および20は濾紙でできている。
【0042】
1つあるいは複数の実施例において、平面固定相1は、一次元目8での分離のあと二次元目9でのもうひとつの分離を容易にするために、たとえば約90°回転されている。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21がこの電極を電源22に接続している。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0043】
他の実施例において、電極17および18は、一次元目8での分離のあと二次元目9に沿って平面固定相1の上部に置かれる。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を取り除き、第2の移動相12を固定相に適用する。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0044】
図5は本発明の別の実施例を示しており、ここでは芯状支持体23が平面固定相1の下に置かれている。芯状支持体23は少なくとも分離方向9で固定相1と同じ幅があり、分離方向8で固定相1よりも長い。芯状支持体23は固定相の端から突出しており、追加の液体移動相を含むタンク室24および25に入っている。毛管作用が移動相をタンク室から芯状支持体23に引き揚げ、芯状支持体とそれに隣接する固定相1を分離のあいだ中ずっと液体移動相に浸しておく。電極17および18は固定相1の上部に置かれている。ある実施例において、芯状支持体23は濾紙でできている。
【0045】
別の実施例において、平面固定相1および芯状支持体23は、一次元目8での分離のあと二次元目9でのもうひとつの分離を容易にするために、たとえば約90°回転される。二次元目9での分離に先立って、第1の移動相3を除去し、第2の移動相12を固定相に適用する。電極17および18は固定相1の上部に置かれ、リード線21がこの電極を電源22に接続している。第2の電界を二次元目9で固定相にわたって印加する。
【0046】
図6は本発明による分離装置の別の実施例を示しており、ここでは平面固定相1は支持体16の上に直接置かれている。短い芯状支持体26および27が電極17および18と固定相1との間に置かれている。芯状支持体26および27は電極17および18の下から移動相タンク室24および25に延びている。芯状支持体26および27は固定相1の中心方向に向かって電極17および18を越えない。芯状支持体26および27の毛管作用が移動相をタンク室24および25から固定相1に引き揚げるが、固定相1に分離領域にわたって平行な電気伝導経路は提供しない。
【0047】
図7は本発明に従った分離装置のもう1つの実施例を示す。図7を参照して、固定相27は芯状支持体なしで支持体16の上に置かれている。固定相27の長さは、固定相27の端が移動相タンク室24および25の中に移動相の表面より下まで突出する長さである。固定相27の毛管作用が液体移動相をタンク室24および25から固定相27の残りの部分まで引き揚げる。電極17および18は固定相27の上部に置かれている。
【0048】
本発明の他の実施例において、電極17および18はタンク室24および25の中に置かれている。電極17および18は移動相に完全に接触しており、この移動相が電流を固定相に伝導する。
【0049】
図8は本発明の1つあるいは複数の実施例に従った分離装置で固定相を保持するための他の手段を示す。図8を参照すると、固定相36は剛体あるいは半剛体のホルダー28と29の間に保持されている。ホルダー28および29は中央に大きな開口を持つ枠の形をしており、そこで固定相は試料、移動相、芯状支持体、接触パッドあるいは電極の適用のため露出している。この大きな開口はまた固定相に光学的なアクセスを容易にし、これによって分離が完了したあと固定相の撮像が可能となる。この固定相は2つのホルダーの間でサンドイッチ状に挟まれており、2つのホルダーを一緒に固定するために鋲、鳩目、ねじ、スナップ留め金、熱かしめあるいはその他の機械的手段が使われている。本発明の1つあるいは複数の実施例に従って、孔、スロット、ピンあるいは同様の位置合わせ機構30および31を分離装置の上にある固定相36の位置合わせをするために使用することができる。この位置合わせ機構により、撮像装置、スポット切り出し装置、質量分析計などのような他の装置と正確な位置合わせができる。位置合わせ機構30および31により、1つの装置を使って分離したスポットの正確な座標を他の装置に与えることができる。
【0050】
この平面固定相支持体は固定相を支持するための枠とこの固定相をこの枠に確保するための締め具とを含む。この枠は平面固定相の表面を露出するために中央が開口しており、この開口中央部は平面固定相の緩衝液および他の液体への接触を最適化するために実質的に平面固定相の大きさである。この枠は平面固定相を受けるための凹みを含んでいてもよい。この平面固定相は高分子膜あるいはシリカ、アルミナまたはチタニアベースの薄層クロマトグラフィー樹脂のいずれであってもよい。
【0051】
この平面固定相支持体は2つの相対する枠であってよく、その場合この枠は固定相を相対する枠の間に確保するように構成される。この平面固定相支持体は機械的締め具によって枠に確保されてもよい。機械的締め具の例には鋲、鳩目、ねじ、スナップ、タブ、クランプおよびガスケットを含む。この平面固定相はまた枠の一部を平面固定相の縁の上へ折り曲げるあるいは折り畳むことを用いて確保してもよい。この平面固定相は熱溶接、熱かしめ、結合剤あるいは接着剤のような化学的留め具により枠に確保してもよい。
【0052】
この平面固定相は既定の位置に対するこの平面固定相の位置合わせを含む。位置合わせは機構の位置合わせあるいはこの枠を既定位置に固定することにより達成される。このような機構あるいは固定手段はこの枠の縁あるいはこの枠の面にある。この枠は、相補的な凹みあるいは突起を用いて位置決めできる凹みあるいは突起を用いて、位置合わせすることができる。突起あるいは凹みの例には孔、スロットおよびピンを含む。この位置合わせ手段は、この枠を基準位置に対して繰り返し置くように位置決めできるばねのセットであってもよい。
【0053】
図9および図10は本発明に従った他の実施例を示しており、ここでは試料32および33が平面固定相1の上にスポットされ、同時に2次元(2D)の分離パターン34および35に分離されている。同様の移動相、電界、温度、およびその他の操作条件が複数の試料に適用されるとき、図10に示すように、複数の分離パターンが得られる。この技術により異なるタンパク質発現の評価ができ、たとえば分離パターンの違いが試料間のタンパク質成分の差に対応する。
【0054】
図11は平面電気クロマトグラフィー分離装置で使用できる携帯用カセット50を示す。このカセットはベース52および側面53を有する枠51を含む。平面固定相(示されていない)は枠の中に支持される。この枠は、緩衝液あるいは洗浄液のような液体をカセット内部に導入したり排出したりするための流入口55および流出口56を備えている。このカセット50はさらにカバー60を含む。このカバー60は、リアルタイムで、あるいは固定相をカセットから取り外さずに撮像あるいは検出できるように透明であってもよい。このカバー60はまた電極の対58、58’および59,59’をカバーと一体化した部品として含んでいてもよい。この電極はカセットに組み込まれており、枠の相対する側面近くに位置する。この電極は固定相と可逆的に用いることができるように、ばね仕掛けあるいはその他の方法で取り付けることができる。この機構により電界を2つの直交する方向に確立することができる。このカバーはまた試料導入口61を含むことができる。
【0055】
他の実施例においてカセット50は図12および図13に示すように半自動プロセスに集積されている。図12はカセット50とポンプステーション62とを含む試薬導入および洗浄ステーションを示す。ポンプステーション62は、導管63を通してタンク室64からカセットにたとえば緩衝液や洗浄液のような液体を供給するための、自動化ポンプ(示されていない)を含む。
【0056】
液体は導管66を通って出て行き、容器(示されていない)に保存される。このように、緩衝液の導入、固定相の洗浄およびその他の液体の移送は平面固定相の移動あるいは移送なしに実行される。
【0057】
図13は第1の電極対59、59’に接続することによってカセット50に集積されている電気クロマトグラフィー分離ステーション65を示す。試薬導入ステーション62(示されていない)は流入および排出部品55,59によってカセットに接続されている。動作の際には試料を手動でカセットにある平面固定相の上に導入口61を通して負荷し、またポンプが第1の緩衝液あるいは液体移動相をカセットの適切な口に注入する。それから電圧を加え、一次元目の分離を行う。それからポンプステーションが最初の緩衝液を除去するために平面固定相を洗浄し、第2の緩衝液あるいは液体移動相を注入する。カセットは電気クロマトグラフィー分離ステーション65で位置を動かし、第2の電極対58、58’を使って接続される。それから第2の方向で第2の分離を行い、第2の緩衝液あるいは移動相を除去するため平面固定相を洗浄する。それから固定相を手動で染色するか、あるいはそのほかの検出のための処理をする。
【0058】
1つあるいは複数の実施例において、この分離システムはカバーを含む。第1および第2の電極はカバーと一体化され、チャンバの第1の相対する側面に置かれている。第3および第4の電極はカバーと一体化されていてもよく、チャンバの第2の相対する側面に置かれている。
【0059】
自動化したプロテオミクスシステムの機構を組み入れた全自動システムもまた考慮されている。
【0060】
ここで使われているように、「両親媒性固定相」とは検体、たとえばタンパク質、グリカンあるいはペプチドと非極性および有極性の両方の相互作用を示す固体支持固定相を呼ぶ。両親媒性固定相は本質的に非イオン性および疎水性またはそのいずれかの領域、相あるいは範囲、ならびに強い有極性および好ましくはイオン性の領域、相あるいは範囲を含む。このイオン性の領域は正極あるいは負極に荷電していてもよい。疎水基は分離の際にタンパク質の相互作用および保持に有利に働くが、一方イオン基は動電分離に使用される荷電した電気二重層の形成を促進する。ある実施例において、タンパク質分画のための両親媒性固定相が検体との化学的相互作用を容易にする荷電基(イオン交換体)、非共有結合基および非イオン基を有する。他の実施例において、両親媒性固定相の大部分は疎水性であるが、一部はイオン性である。
【0061】
タンパク質分離に使用できる両親媒性固定相の例は、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンあるいは四級アンモニウム残基あるいは同様のもので化学修飾された疎水性の固定相支持体を含む。スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチルあるいはリン酸残基で化学修飾された疎水性平面支持体は陰極の電気浸透流を可能にするが、一方ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンあるいは四級アンモニウム残基で化学修飾された疎水性平面支持体は陽極の電気浸透流を可能にする。膜、粒子状薄膜クロマトグラフィー基板、ラージポアの中程度の多孔性基板、グラフトしたギガポア基板、ゲル充填ギガポア基板、無孔逆相充填材料および高分子モノリスが考慮されている。
【0062】
膜には平面固定相の両親媒特性を提供するために随意的に化学修飾されたポリマーシートを含む。タンパク質およびペプチドの、膜をベースにした電気クロマトグラフィー用の疎水性膜の例には、Perfluorosulfonic NafionR 117膜(Dupont Corporation)、部分的にスルホン化したPVDF膜、ポリスチレンでグラフトしたスルホン化ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンでグラフトしたポリクロロトリフルオロエチレンあるいは同様のものを含む。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のスルホン化は適度な高温でスルホン酸にインキュベーションすることにより達成することができる。スルホン化の程度は意図的に変化させることができ、その際に0.25 meq/gのイオン交換能力が「適度の」スルホン化と考えられる。これらの膜による分離は、基板におけるタンパク質の、芳香族残基との疎水的な相互作用と組み合わせた、スルホン化した残基の静電的な相互作用に依存する。約pH 2.0から約pH 11.0の範囲のpHで、タンパク質上のプロトン化した第1アミン基は膜上のスルホン化した残基と相互作用するはずである。この相互作用はpH 11.0より大きいpHでは減少する。スルホン化した残基は約pH 2.0未満のPHでプロトン化され、分離の電気浸透駆動力の減衰につながる。
【0063】
ある実施例において、ゲル電気泳動により分離されたタンパク質の電気ブロッティングによる隔離に使われるPVDF膜は、両親媒性膜を生成するために陽性官能基で化学修飾できる(たとえばImmobilon-CDタンパク質配列解析膜(Millipore Corporation))。たとえばPVDF膜は0.5MアルコールKOHでエッチし、続いてアルカリ性条件でポリアリルアミンと反応させることができる。他の例で、PVDF膜はジエチルアミノエチルあるいは四級アンモニウム残基で化学修飾することができる。
【0064】
いくつかの実施例では膜は支持されない。他の実施例では膜は支持されるかあるいは半支持されている。たとえばこの膜を2つの剛体あるいは大きな開口を中央に持つ枠の形をした半剛体のホルダーの間に保持することができる。この膜はまた中実の支持体、たとえばガラス板の上に支持することもできる。膜は実質的に無孔性であってもよい。この場合移動相は膜の上を移動する。他の実施例において、この膜は多孔性であってよく、この場合移動相は孔および膜のチャネルまたはそのいずれかを通って移動する。分離はタンパク質と膜の疎水性表面あるいは隙間のある表面との選択的相互作用により起こる。
【0065】
他の実施例において、タンパク質の分離に有用な平面固定相はアリキル基(たとえばC3-C18界面化学)、芳香族フェニール残基、シアノプロピル残基あるいは同様のもので化学修飾されたシリカ薄層クロマトグラフィー板を含む。これらの場合、シラノール基が両親媒性支持体のイオン交換特性を提供し、またpH 8で脱プロトン化が可能で、これが電気浸透に導き、それによって両親媒性支持体のイオン交換特性を提供する。pH 3より下では電気浸透の減少あるいは停止が起こる。いくつかの実施例において、疎水性の基、たとえばアルキル基と荷電基、たとえばスルホン酸基との両方を同じシリカ粒子に付加することができる。さらに別の例のように、平面電気クロマトグラフィーによるペプチドおよびタンパク質の分離のための固定相支持体は、薄層クロマトグラフィー板のシリカ支持体に付加されたガンマグリシドキシプロピルトリメトキシシランの副層を含む。それからスルホン化層が副層とオクタデシル最上層との間に共有的に添加される。シリカベースの固定相を使って10から100 kDaの範囲におけるタンパク質の分離のために、それぞれC8およびC4基による化学修飾を使用できると予想される。フェニールの官能性はC4の官能性よりも少し疎水性が少なく、おそらくある種のポリペプチドの分離に対して有利である。
【0066】
この平面固定相はタンパク質が妨げられずに移動できる大きさのポアあるいは連結された通路を含む。シリカ薄層クロマトグラフィー板あるいは粒子状物質ベースの高分子膜のような粒子状固定相について、この固定相は直径が約30-100ナノメータのポアを形成する粒子から成るが、分子量が2,000 daltonあるいはそれより小さい、いくつかのより小さなペプチドに対しては10ナノメータのポアがおそらく使用できる。薄層クロマトグラフィー用に市場で得られる一般的な吸収体は、タンパク質分離に対して効果的な使用を不可能にする僅か1-6 nmのポアサイズを形成する粒子からできている。この粒子は3-50ミクロンの直径を持つことができるが、より小さな直径の粒子は一般により高い解像度のタンパク質分離を生じる。より大きいタンパク質負荷に対しては大きい粒子の吸収体が好ましい。このことはタンパク質の準備規模の分離に対して特に有利である。粒子のサイズ分布は比較的狭いことが必要であり、また粒子は不規則な形状よりも球状が好ましい。粒子の基本材料はシリカ、ポリスチレンジビニルベンゼン(あるいは前記の疎水性高分子のどれでも)のような合成高分子もまた適当であると思われる。
【0067】
液体移動相は一般的に有機相および水性相を含む。移動相の例にはメタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、プロピレン炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液システムあるいは同様のものを含む。電気クロマトグラフィーの基本原理は固定相支持体、移動相緩衝液および操作条件の系統的な選択に対する基礎を提供し、また技術をプロテオミクス、新薬開発および薬学科学における広範囲の応用に適応させる。CECのように有機修飾物質が豊富な移動相は比較的少ないクロマトグラフィックな保持を示し、有機修飾物質が少ない移動相においてはクロマトグラフィックな保持が分離プロセスを支配する。
【0068】
本発明の1つの実施例において、液体移動相中の有機修飾物質の濃度が約0%から約60%の範囲である。他の実施例では液体移動相のイオン強度は約2 mMから約150 mMである。液体移動相の処方の例としては20 mM 酢酸アンモニウム、pH 4.4、20% アセトニトリル;2.5 mM 酢酸アンモニウム、pH 9.4、50% アセトニトリル; 25 mM トリス塩酸、pH 8.0/アセトニトリル(40/60 混合); 10-25 mM 酢酸ナトリウム、pH 4.5、55% アセトニトリル; 60 mM リン酸ナトリウム、pH2.5/30% アセトニトリル; 5 mM ホウ酸塩、pH 10.0、50% アセトニトリル; 5-20 mM リン酸ナトリウム、pH 2.5, 35-65% アセトニトリル; 30 mM リン酸カリウム、pH 3.0、60% アセトニトリルおよび10 mM 四ホウ酸ナトリウム、30% アセトニトリル、0.1% トリフルオロ酢酸; 20% メタノール、80% 10 mM MES、pH 6.5、5 mM 硫酸ドデシルナトリウム; 20% メタノール、80% 10 mM MES、pH 6.5、5 mM リン酸ナトリウム、pH 7.0/メタノール(4:1, v/v); 4 mM トリス、47 mM グリシン、pH 8.1; 20mM リン酸ナトリウム、pH 6.0、150mM NaCl; 20 mM トリス塩酸、pH 7.0、150 mM NaCl; 5 mM ホウ酸ナトリウム、pH 10.0; あるいは同様のものを含む。
【0069】
いくつかの実施例においてタンパク質の分離に対する不連続な緩衝系として異なる陰極緩衝液と陽極緩衝液を使用することができよう。これらの実施例のあるものにおいては、両親媒性固定相を成分がどちらの電極緩衝液とも異なる緩衝液中にインキュベーションすることができよう。両性担体のような添加剤を、固定相をインキュベーションする緩衝液に含むことができる。他の実施例において、タンパク質の分離を容易にするような組成勾配を提供するために、移動相の組成を一時的に変更することができよう。
【0070】
平面電気クロマトグラフィーを用いた両親媒性固定相上のタンパク質の二次元分離において、タンパク質試料は膜の中央に置かれ(乾燥状態あるいは移動相で予め湿らせて)、それからこの固定相は移動相中にインキュベーションされる。タンパク質を電気浸透によって1つの方向に分離すると、平面固定相を洗浄し、第2の移動相中にインキュベーションし、それから最初の方向とは垂直な方向に電気浸透によって分離する。本発明に従った1つの実施例において、液体移動相は、両親媒性基板上でタンパク質の二次元分離を容易にするために、異なるpH値、有機溶媒濃度、およびイオン強度に調節できる。たとえば、ある移動相は酸性pH(約pH 4.5)であり、他の移動相は塩基性pH(約pH 8.5)である。緩衝液のpHは個々のタンパク質種の全電荷に影響を与え、それによってその動電的移動に影響する。液体移動相中の有機溶媒濃度の変化はタンパク質と固定相の疎水性成分との相互作用の強さに影響する。最後に、緩衝液のイオン強度は二次元におけるタンパク質の分離特性を変化させる。pH、イオン強度および有機溶媒濃度を操作することによって、1つの次元における分離が電気泳動的に、また他の次元においてはクロマトグラフィー的に起こり得る。
【0071】
タンパク質の試料はまずそのタンパク質を移動相あるいは弱いイオン強度の溶媒に溶かして準備する。いくつかの実施例ではGoodの緩衝液のような「生理的緩衝液」を試料の準備に使用する。これらの生理的緩衝液は無機塩類よりも低い電流を生じ、それによって高い試料濃度および高い電界強度の使用を可能にする。Goodの緩衝液の例には、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸 (ACES)、N-(2-アセトアミド)イミノジ酢酸 (ADA)、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエタンスルホン酸 (BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(BIS-TRIS)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸 (EPPS)、2-[4-(2 ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-プロパンスルホン酸モノハイドレート(HEPPSO)、2-モルホリノエタンスルホン酸モノハイドレート(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)、1.5ナトリウム塩(PIPESの1.5ナトリウム塩)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)デハイドレート(POPSO)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノ プロパンスルホン酸(TAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-ヒドロキシ-3-アミノ プロパンスルホン酸(TAPSO)、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、およびN-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(TRICINE)などがある。塩類をタンパク質試料の抽出および隔離を容易にするために使用する場合、平面電気クロマトグラフィーによる試料の分画に先だって、逆相樹脂を使って有機溶媒ベースのタンパク質の沈澱あるいは試料透析によって、タンパク質試料の脱塩を行うことができる。
【0072】
いくつかの実施例において、タンパク質試料はまずタンパク質をHPLC溶媒システムに溶かして準備し、これによってタンパク質溶解のために界面活性剤、攪乱剤および強い有機酸を使用することが避けられる。HPLC溶媒システムにはメタノールあるいはアセトニトリルのような有機溶媒を含む緩衝化した溶液を含み、生体学的試料の準備に適用することができる。たとえば 60% メタノールあるいはアセトニトリル、0.1%のギ酸を含む40%の水、あるいは 60% メタノールあるいはアセトニトリル、40% 50mM 炭酸アンモニウム、pH 8.0 は適切な試料可溶化緩衝液である。1つの実施例において、可溶化緩衝液中の最終タンパク質濃度は約0.05mg/mlから約5mg/mlである。1つの実施例において、可溶化緩衝液中の最終タンパク質濃度は約0.4mg/mlから約0.6mg/mlである。タンパク質の抽出および可溶化は断続的な渦流と音波処理によって容易にすることができる。界面活性剤は質量分析においてペプチドのイオン化を抑制し、またクロマトグラフィー分離、特に逆相液体クロマトグラフィーを妨げることがよく知られている。有機溶媒を含む緩衝化した溶液は液体クロマトグラフィーおよび質量分析にさらに相性が良く、それによって平面電気クロマトグラフィー後のタンパク質同定を容易にする。緩衝化溶液抽出処置の他の重要な利点は、膜貫通ヘリックスを含有するタンパク質を含む膜内在性タンパク質の可溶化、分離および同定を容易にすることである。
【0073】
ペプチドおよびタンパク質の平面電気クロマトグラフィーは電界を直接に膜あるいは薄層クロマトグラフィー板にわたって印加することにより行われる。ある実施例において平面表面は、緩衝用ストリップとも呼ばれる芯状支持体を使用することにより、電気システムと結合することができる。芯状支持体は平面固定相と水平電気泳動装置の電極との均一な電気経路を確立するために使用される、固体あるいは半固体の媒体である。たとえば芯状支持体はセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルあるいは同様のものから構成することができる。
【0074】
電気クロマトグラフィーシステムにおける電界の印加はジュール加熱を生じ、これが膜あるいは板表面からの液体移動相の蒸発につながることがある。この移動相の蒸発は、電流の減少、表面の乾燥、およびそれに続く分離品質の低下を引き起こすことがある。本発明に従ったある実施例において、ジュール加熱の結果起こる移動相の蒸発を低減するために、平面固定相をガラス板、シリコーンオイルあるいはその他の不浸透性のバリアで覆っている。さらに膜あるいは板上の移動相の前方への流れが妨げられることがあり、これが電気浸透流による液体移動相を膜あるいは板の表面へ駆動を引き起こす。その結果、分離度の低い分離が起こり、また電気泳動装置のアーク放電を引き起こすことがある。移動相のpHあるいはイオン強度を調整することは電気的に駆動する分離の条件を最適化するのを助ける。ある実施例において、タンパク質あるいはペプチド分離のための動作電流は約10μAから約500mAであり、また分離に印加される電界強度は約50ボルト/cmから約900ボルト/cmである。他の実施例において、この分離に印加される電界強度は200ボルト/cmから約600ボルト/cmである。本発明のいくつかの実施例において、タンパク質の分離は一定電圧、一定電流あるいは一定電力モードで行うことができ、最後のモードではシステムにおけるジュール加熱が一定量になる。
【0075】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーは、固相化メタルアフィニティー電気クロマトグラフィー、イミュノアフィニティクロマトグラフィー、ゾーン電気泳動法、帯電分子推進分離法、動電クロマトグラフィー、等電点電気泳動法、非平衡pH電気泳動法、および ミセル動電クロマトグラフィーのような他の種類の電気泳動法と共に使用することができる。いくつかの実施例において、2成分あるいは二重相平面基板を作ることができる。たとえば固相化メタルアフィニティー電気クロマトグラフィーに続いて逆相電気クロマトグラフィーを行うことも可能であろう。平面支持体の1つの端、たとえば膜の1つの側に沿った1 cmのストリップ、を金属キレート基(たとえばイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸)で化学修飾することができ、一方で膜の残りはスルホン酸塩イオン交換特性を有するようにできよう。この膜は Ni(II)、Cu(II)、Ca(II)、Fe(III) あるいはGa(III)のような金属イオンで荷電され、またこのキレート基がこれらの金属イオンを選択的に保持するであろう。タンパク質試料は膜上に個別のスポットとして加え、結合に適切な緩衝液を用いて、修飾したストリップの長さに沿って電気クロマトグラフィーの分離を行うことができる。ある実施例において、Fe(III)- あるいは Ga(III)-荷電膜ストリップ、20 mM酢酸ナトリウム、pH 4.0を使うことができる。最初の分画が完成すると、膜を第2の緩衝液中で濯ぎ、最初の分離の方向と垂直の方向に電気クロマトグラフィーを行う。説明した膜を用いて生成したプロファイルを金属キレートストリップのない膜から生成したプロファイルと比較することにより、移動がこの2つのプロファイルの間で変更されているスポットとして金属結合タンパク質が表される。陽イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相電気クロマトグラフィーを含む、分離のその他の組み合わせた様相が想定される。
【0076】
技術の専門家に良く知られているいろいろな検出の種類を使って、平面電気クロマトグラフィーのあとタンパク質、ペプチドおよびグリカンを検出することができる。一般的なタンパク質の検出に使われる方法の例には、有機染料染色法、銀染色法、放射能標識、蛍光標識(前標識、後染色)、化学発光標識、質量分析ベースの手法、逆染色法、接触検出法、タンパク質の内在蛍光の直接測定、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射あるいは同様のものを含む。逆染色法において、タンパク質は無標識のままであるが、平面表面の占拠されていない場所は染色される。接触検出法においては、基質を吸収させた別の膜あるいは濾紙を平面表面に接触させて置き、平面固定相上にあるタンパク質試料は基質分子と相互作用して生成物を作る。タンパク質の内在蛍光の直接測定においては内在蛍光の少ない固相支持体を使用する。翻訳修飾後のタンパク質解析に適当な検出法の例には、糖タンパク質、リンタンパク質、タンパク質分解修飾、S-ニトロシル化、アルギニンメチル化、およびADP-リボシル化の検出法を含む。さまざまなレポーター酵素およびエピトープタグの検出法の例には、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、オリゴヒスチジンタグ、および緑色蛍光タンパク質を視覚化する方法を含む。これらの検出技術の性能を最適化するために固有蛍光が低い固相支持体の使用が必要である。
【0077】
平面電気クロマトグラフィーを受けたタンパク質試料はストリップ上の個別のスポットとして現れ、染色あるいは免疫標識ならびにいろいろは検出方法による解析のためにアクセスできる。検出方法の例には質量分析、エドマン法によるタンパク質配列解析あるいはその他の微細構造解析技術を含む。ある実施例において膜表面に結合したタンパク質は、抗体、ペプチド抗体様物質、オレゴヌクレオチドアプタマー、量子ドット、Luminex ビーズあるいは同様の試薬によって標識される。
【0078】
いくつかの実施例において、化学発光法による平面表面上のタンパク質検出を平面電気クロマトグラフィーによる分画の前あるいは後に使用することができる。ある実施例において、タンパク質をビオチニル化し、それからセイヨウワサビペルオキシターゼ(HRP)ストレプタビジンコンジュゲートおよびWestern Lightning Chemiluminescenceキット(PerkinElmer)を使って検出できる。他の実施例では、タンパク質を蛍光染料により染色あるいは標識し、続いて蛍光染料をビス (2,4,6-トリクロロフェニール)オキサレート(TCPO)-H2O2反応のような、非酵素的な手段で化学的に励起する。
【0079】
本発明の1つあるいは複数の実施例に従う方法を使ったタンパク質の分離は短い所要時間で達成できる。タンパク質は平面基板上でスポット状にして、一次元目の分離にかけ、洗浄し、二次元目の分離にかけるが、これによって検出のため固定相表面のタンパク質およびペプチドにアクセスすることができる。ある実施例では SYPRO Ruby protein blot stain (Molecular Probes)により表面上のタンパク質検出が約15分間で可能である。さらに平面支持体自身は機械的に強い支持体として役立つので、分離プロファイルのアーカイビングをゲルの真空乾燥なしに行える。
【0080】
本発明のいくつかの実施例において、平面電気クロマトグラフィーを非常に大きいタンパク質、非常に小さなタンパク質、高度に酸性のタンパク質、高度に塩基性のタンパク質および疎水性タンパク質の分画に使用できる。いくつかの実施例では大きなマルチサブユニット複合体を膜表面で分画できる。ある実施例において高濃度の有機溶媒を含む移動相が疎水性膜内在性タンパク質の分離に使用されている。他の実施例において、「電気泳動的に静かな」突然変異体の分離に平面電気クロマトグラフィーを使うことができ、その場合タンパク質およびペプチドは荷電されていないアミノ酸残基によってのみ異なる。さらに別の実施例において、平面電気クロマトグラフィーシステムを無傷のタンパク質の分画に使用できる。このことは翻訳修飾後あるいは差異的なスプライシングから発生するイソ型タンパク質の解析に関して有利である。
【0081】
プロテオミクスの研究はしばしば異なるタンパク質プロファイルの比較に基づいている。ディファレンシャルディスプレイプロテオミクスの中心目的は多重解析によってプロテオミクス研究の情報内容を増加させることである。現在ディファレンシャルディスプレイプロテオミックスへの2つの主要なゲルベースの手法、すなわちディファレンシャルゲル電気泳動法(DIGE)およびマルチプレックスプロテオミクス(MP)が活発に研究されている。本発明に従う1つの実施例において、マルチプレックスプロテオミクス解析によるプロテオミクス研究の情報内容を増加させるために、平面電気クロマトグラフィーをディファレンシャルゲル電気泳動法(DIGE)と一緒に使用することができる。シアニン染料のサクシニミジルエステル(たとえばCy2、Cy3およびCy5)を、混合しDIGEを用いて同じ2Dゲルに同時にかける前に、3つの異なる複合タンパク質母集団に蛍光標識として適用できる。2Dゲルのイメージは3つの異なる励起/放射フィルタ組み合せを用いて得られ、異なる色の蛍光シグナルの比を試料中のタンパク質の違いを見出すのに使用できる。DIGEにより2つから3つの試料を同一の電気泳動条件の元で分離できるので、ゲルイメージの登録およびマッチングのプロセスを簡単化できる。DIGEは2つの試料の違いを調べるのに使用できる(たとえば薬品処理した細胞対基準細胞あるいは病気の組織対健康な組織)。DIGEに関する本開示に詳細説明した平面電気クロマトグラフィーの主な利点は、タンパク質の分離がより早く達成でき、また試料がプロファイルの差異を決定したあと質量分析によりさらに容易に評価できることである。DIGEの1つの要件は標識したタンパク質の可溶性が電気泳動の間保持されるように、タンパク質中のリシン残基の約1%から約2%が蛍光的に修飾されることである。分離が平面電気クロマトグラフィーにより行われるとき、有機溶媒が移動相および試料緩衝液に使われているという事実により、非常に高度の標識を達成することができる。高度の標識はまたDIGE技術を用いた検出感度を劇的に向上させるはずである。
【0082】
他の実施例において、多重解析によってプロテオミクス研究の情報内容を増加させるため、平面電気クロマトグラフィーをマルチプレックスプロテオミクスに使用することができる。マルチプレックスプロテオミクス(MP)プラットフォームはタンパク質発現ならびに糖鎖形成のレベル、リン酸化のレベル、薬物との結合能力あるいは薬物代謝能力のようなタンパク質の官能属性の平行した決定ができるように設計されている。このMP技術プラットフォームは2DGEデータベースにあるすべてのゲルについてタンパク質を測定するため同じ蛍光体を使用し、分離した種類の特定の官能属性を強調するために異なる励起および放射またはそのいずれかを持つ追加の蛍光体を適用する。薬物結合能力あるいは特有の翻訳後修飾のようないくつかのタンパク質の官能的属性を明らかにするため、MPプラットフォームを使って2Dゲルのセットを蛍光的に染色し、イメージを得る。それから蛍光全タンパク質染色を使って同じゲル中のタンパク質発現レベルを明らかにする。ディファレンシャルディスプレイ比較をZ3プログラム(Compugen, Tel Aviv, Israel)のようなイメージ解析ソフトウエアを使ってコンピュータで行う。同じ励起/放射フィルタセットを使ってすべてのゲルのイメージを作り、それからプロセスを容易にするためいくつかの手動のアンカーポイントを加えるオプションを使ってそのイメージを自動的にマッチングする。その後どの2つのイメージでも1つの疑似カラー図として再表示できる。さらに、定量的情報が計算した差分表現データを用いた表形式で得られる。ゲルイメージングプラットフォームを使って、全タンパク質パターンのような異なったゲルからの類似のプロファイルをコンピュータでマッチさせるが、一方全タンパク質パターンと糖タンパク質のような同じゲルからの異なるパターンを重畳し、コンピュータでマッチさせる。MPにおいて、染色を順番に行うとポリアクリルアミドゲル中にその前にあったものを隠蔽するので、このゲルの染色とイメージ取得は直列に行う必要がある。ある実施例において、MPが発生したプロファイルについて複数のシグナルの同時イメージングするのを助けるために、平面電気クロマトグラフィーを使うことができる。蛍光染料は、高分子膜上で互いに隠蔽するような、同様の強い傾向を有しない。
【0083】
別の実施例において平面電気クロマトグラフィーをタンパク質の直接解析のためMALDI-TOF MS と一緒に使うことができる。この実施例においてタンパク質は固相支持体の上で分画され、続いてMALDI-TOFレーザーで直接プロービングを行う。ある実施例において、本発明に従う平面電気クロマトグラフィーシステムを直交MALDI-TOF質量分析計(たとえばPrOTOF 2000 PerkinElmer, Boston, MA, USA/MDS Sciex, Concord, ON, Canada)と共に使用できる。このprOTOF 2000 MALDI O-TOF 質量分析計は直交飛行時間法を用いたMS MALDI である。prOTOFの新しい設計により従来のリニアあるいは軸ベースのシステムに比べて向上した装置の安定性、分離度、および広い質量範囲にわたって質量の精度が得られる。 prOTOF 2000によって達成されるより正確で完全なタンパク質同定により Q-TOF および TOF-TOFのようなさらに複雑なタンデム質量分析技術を使ったペプチド配列解析に対する必要性を低減する。この装置は、MALDIソースがTOF解析機から切り離されているので、特に平面電気クロマトグラフィーに好適である。その結果固相表面トポグラフィーあるいは表面からの試料の差動電離から発生する食い違いは試料が実際に検出器に供給される前に除去される。固相表面に結合されたタンパク質が提示されるので、質量分析による解析に先立って、汚染する緩衝液種の除去およびタンパク質開裂試薬(たとえばトリプシン)への露出を容易にする。分画プロセスにおけるHPLCベースの緩衝液の使用により、質量分析を使用した解析の間の界面活性剤および攪乱剤による川下への干渉に対する可能性を最小になる。
【0084】
両性担体等電点電気泳動ゲル、固相化pH勾配等電点電気泳動ゲル、ネイティブポリアクリルアミドゲル、およびSDSポリアクリルアミドゲルを直接MALDI-TOF MSを使って表面走査することにより、タンパク質のレーザー脱着がサブピコモルの検出感度で達成できる。しかし現在この処理は非常に遅く、ゲルを行うのに1日、それを乾燥させるのに2日、スペクトルを得るのに2日を要する。本発明のある実施例において、タンパク質を便宜上固相支持体に固定して提供し、これによってMALDI-TOFレーザーにより直接プロービングするのに好都合なように提示することにより、タンパク質の直接解析のため平面電気クロマトグラフィーをMALDI-TOF MSと一緒に使用できる。「仮想的」2Dプロファイルを1D平面電気クロマトグラフィー分離により発生でき、続いてMALDI-TOF質量分析を使って平面基板から直接にタンパク質を脱着するが、事実上質量分析がSDSポロアクリルアミドゲル電気泳動の代わりをする。得られた解析データは2Dゲルタイプのように見えるコンピュータで生成したイメージとして提示できる。他の実施例において平面電気クロマトグラフィーを、既定のインゲル消化法トリプシンのマイクロディスペンシングによりスポットのいろいろな領域で複数の化学反応が行われ、たとえばペプチドのマスプロファイルおよびグリコシル化の同定が同じスポットから達成できる、高スループットペプチドマスフィンガープリンティングおよび圧電パルス印加のような化学プリンティング技術を使ったグリコシル化解析に対する開始点として使用できる。トリプシンおよびMALDI-TOFマトリックス溶液の既定のマイクロディスペンシングは、通常インゲル消化法で遭遇する複数の液体取扱い工程を迂回し、これによってタンパク質同定法を簡素化する。
【0085】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、いろいろな生物試料のタンパク質の相対存在量が生理学上の変化と関連づけられているディファレンシャルディスプレイプロテオミクスに対する質量タグ法技術と一緒に使うことができる。たとえば同位体コードアフィニティタグ(ICAT)ペプチド標識法は同位体比を用いて2つの母集団間の区別をするのに有用な技術の1つである。ICAT試薬はタンパク質およびペプチドにあるシステイン残基のチオール基に対して特異的な反応官能性を用いる。2つの異なる同位体タグを8個の水素原子(d0、軽い試薬)あるいは8個の重水素原子(d8、重い試薬)を含むリンカーを使って発生する。1つのタンパク質試料から還元したタンパク質混合物をICAT試薬の同位体的に軽いバージョンで被覆し、一方で他の還元タンパク質試料はICAT試薬の同位体的に重いバージョンで被覆する。次に2つの試料を組み合せ、ペプチドの断片を生成するためにトリプシンあるいはLys-Cを使ってタンパク質分解的に消化する。この組み合わせた試料を平面電気クロマトグラフィーで分画することができる。8ダルトンずつ異なる同位体分子量のピークの比は、質量分析で見られるように、原試料からの各タンパク質の相対量の尺度を与える。その他の質量タグ法の手法には、14Nあるいは15N強化培地での細胞の増殖、試料のGlu-Cタンパク質分解中の溶媒として普通の水(H216O)および重水(H218O)の使用、ペプチド中の第1級アミノ基をアセチル化するために酢酸塩(d0)およびトリドイテロ酢酸塩(d3)の使用、普通のメタノール(d0)あるいはトリドイテロメタノール(d3)を用いたアスパラギン酸塩およびグルタミン酸残基のメチルエステル化、N末端をヨードアセチル化した、12Cおよび13C標識を付けたトリアミンペプチド、および 試料中のO-リン酸化サイト間の差異をβ脱離化学を使って測定するための、1,2-エタンジチオール(d0)およびテトラアルキルドイテル化1,2-エタンジチオール(d4)の使用を含む。
【0086】
最近2DGEとICAT標識技術の利点を単一のディファレンシャルディスプレイプラットフォームと組み合わせることができるということが示された。
2つの異なる試料からのタンパク質を重いICAT試薬と軽いICAT試薬で標識し、組み合せ、それから2DGEによって分離する。ゲル分離したタンパク質は敏感なタンパク染料で検出し、励起し、プロテーゼで処理をし、ペプチドマスプロファイリングで同定する。さらに選択したペプチドを衝突誘起解離(CID)および配列データベース検索を使って評価することができる。2DゲルにおけるICATディファレンシャルディスプレイの重要な応用の1つは、翻訳後修飾から起こる、タンパク質イソ型の相対存在量の評価に対するものである。本発明のある実施例において、2D平面電気クロマトグラフィーをICAT標識と組み合せ、ICAT試薬を使ったディファレンシャルディスプレイプロテオミクス用の単一プラットフォームを作ることができる。分離はずっと速く、またこのタンパク質は下流の質量分析に基づく解析にさらに敏感に反応する。
【0087】
ICATストラテジーと同じ基本原理に基づく質量タグ法の手法には14Nあるいは15N強化培地での細胞の増殖、および試料のGlu-Cタンパク質分解中の溶媒としての普通の水(H216O)および重水(H218O)の使用を含み、これにより各タンパク質分解断片のC末端部分中の2つの18O原子あるいは2つの16O原子が取り込まれる。この結果は対のペプチド間の質量で4ダルトンの差となる。酢酸塩(d0)およびトリドイテロ酢酸塩(d3)をペプチド中の一級アミノ基をアセチル化するのに用いることができる。同様に、普通のメタノール(d0)あるいはトリドイテロメタノール(d3)を使ったアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩のメチルエステル化を同位体タグ標識ストラテジーとして使用できる。質量タグ法実験のためN末端にヨードアセチル化した 12Cおよび13C標識したトリアラニンペプチド。最後にβ脱離化学を使って試料中のO-リン酸化サイト間の差異を測定するため、1,2-エタンジチオール(d0)およびテトラアルキルドイテル化1,2-エタンジチオール(d4)を使用できる。このスルフヒドリル側基はそれからビオチン ヨードアセトアミジル-3,6-ジオキサオクタンジアミンと反応させる。本発明のある実施例において、タンパク質発現変化および翻訳後修飾変化の示差分析のための分離プラットフォームとして、2D平面電気クロマトグラフィーを質量タグ法技術と一緒に使用できる。
【0088】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、平面電気クロマトグラフィーによる分画に続くセレン含有タンパク質、亜鉛金属酵素、カドミウム結合タンパク質、シスプラチン結合薬剤標的およびミオグロビンのような金属タンパク質の微量元素分析のために、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)と一緒に使用できる。 レーザーアブレーションICP-MSは、紫外線レーザー光線の空間分解能を最新のICP-MSの質量分解能および元素感度と組み合わせることによって微量元素分析を可能にする。波長193-266 nmで生じる紫外線レーザー光線は試料表面に合焦して試料のアブレーションを生じる。15-20ミクロンのアブレーションクレーターは器械使用によって日常的に作られる。この処理に試料の特別な準備の必要はない。アブレーションされた材料はアルゴンキャリアガス中で直接に高温誘導結合プラズマに移送され、その結果生じるイオンはそれから検出および計数のため質量分析計に引き入れられる。質量フィルタが粒子の電荷/質量比に基づいて粒子を選択し、特定の同位体だけがフィルタを通って質量分析計(四重極質量分析計、磁場型質量分析計あるいは飛行時間型質量分析計)の端に取り付けられた電子増倍検出器に入ることができる。個々の同位体の検出されたシグナルは同位体比に変換でき、あるいは未知物質とともに基準物質を測定しているときは、実際の元素濃度に変換できる。
【0089】
レーザーアブレーションICP-MSは、電気ブロッティング膜上のリンタンパク質から放出されるm/z 31シグナルとしてリンを直接測定するのに使用できる。レーザーアブレーションICP-MSを使って、16ピコモルの五リン酸化したベータカゼインを高分子膜の上で検出できる。他の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、放射能標識あるいはPro-Q Diamond phosphoprotein stain (Molecular Probes)のようなサロゲート染料を使用せずに、タンパク質リン酸化を直接分析するためのプラットフォームとして使用できる。
【0090】
低濃度のリンの検出は、アルゴンICP中のイオン化が貧弱であり、質量31(15N16Oおよび14N16O1H)には直接に、また質量32(16O2および32S)には間接に、妨害高分子種が存在するために、ICP-MSにとって分析するのが容易でない。リンの第一イオン化電位は10.487電子ボルトである(Wilbur and McCurdy, 2001)。これはリン(P)原子を誘導結合プラズマ中でP+イオンに変換するのが難しいことを意味する。これは最適化したICP-MS中でP原子からP+イオンに6%変換を意味し、ICP-MSにとって比較的低いレスポンスファクターである。技術の専門家にとってタンパク質およびペプチド中のリン酸基がアルミニウム(III)、ガリウム(III)および鉄(III)のようないくつかの三価金属イオンと容易に結合することが知られている。ICP-MSを使えば1 ppb (10億分の1)という僅かなこれらの金属イオンを検出できる。5.986電子ボルトの第一イオン化ポテンシャルを持つアルミニウムのイオン化変換はリンについて説明したのと同一実行条件のもとで99%である。このようにリンの代わりにアルミニウムを検出すれば検出を16倍向上させる。さらに三価金属イオンに限定した検出は検出ウインドウを前述の生物学的バックグラウンドシグナルから離れたところに移動する。アルミニウム、ガリウムおよび鉄の原子質量はそれぞれ26.98、69.7および55.85である。これらの三価金属イオンの中で、鉄イオンはICP-MSの界面領域でArN、ArOおよびArOHから生じる多原子干渉による問題を引き起こす。ガリウムが提案している応用に対しておそらく最も適した金属イオンである。69Gaおよび71Gaの両方のシグナルがこの方法により定量化でき、他の分子種からのシグナルと重畳する確率を最小にできよう。
【0091】
ICP-MSベースの検出手順を使ったタンパク質の検出には次の工程が含まれる。本発明の1つの実施例に従って説明したように、まずタンパク質を2D平面電気クロマトグラフィーによって分離する。次にこの平面基板を1 mMの塩化ガリウム、50 mMの酢酸ナトリウム、pH4.5、50 mMの塩化マグネシウム中にインキュベーションする。次に過剰な金属イオンを除去するため平面基板を50 mMの酢酸ナトリウム、pH 4.5、50 mMの塩化マグネシウム中で繰り返し洗浄する。平面表面上の個々のスポットをレーザーアブレーションICP-MS法で処理するが、ここではリンのシグナルではなくガリウムのシグナルを定量化する。その代わりにガリウム溶液にインキュベーションせずにリンのシグナルを読むこともできる。標本抽出は単一あるいは多スポット分析、直線走査あるいはラスター化により行うことができる。スポット選択を容易にするために、ガリウムイオンにインキュベーションする前に、平面基板上のタンパク質を全タンパク質染料で染色することができる。
【0092】
1つあるいは複数の実施例において、タンパク質発現プロファイリングおよびタンパク質の機能研究のため平面電気クロマトグラフィーをタンパク質マイクロアレイと一緒に使用できる。平面電気クロマトグラフィーはタンパク質マイクロアレイを作る比較的簡単な方法を提供するのに使用できる。小さな表面を既定のタンパク質混合物でスポットし、続いてこれを2D平面電気クロマトグラフィーによって分画する。構成要素のタンパク質はこうして生成されたスポットの直交マトリックスの予め決められた座標に明示的に割り当てられないが、スポットの同定は、質量分析、免疫検出あるいは続いて行う分離における混合物から各タンパク質を系統的に削除することによって簡単に決定される。一度プロファイルにおける各タンパク質の位置が判ると、自己免疫疾患における自己免疫反応のプロファイリングおよび他のタンパク質-タンパク質、受容体リガンド、酵素基質、酵素阻害物質あるいはタンパク質-DNA相互作用のスクリーニングのための、従来のタンパク質アレイとして使用できる。アレイを使う手法の利点は、専用のピンを使ったあるいは圧電によるスポット装置を必要とせず、また前述のようにこの膜アレイがフィルタを使ったタンパク質マイクロアレイ技術に敏感であることにある。たとえばタンパク質チップの多段積み重ねができる濾過手法が特定試薬を使った同時プロービングに使用できる。
【0093】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを、血漿、尿、リンパ液、痰およびその他の生物の体液中にある特定タンパク質に関連するバイオマーカーの検査に使用できる。特に血清アルブミンは、多数の外因性および内因性の循環物質に対する貯蔵および輸送タンパク質として役立つ、幅広い結合能力を有する存在度の高い血液タンパク質である。本発明で説明した方法を使って血漿をその構成要素の血清タンパク質成分に分画すると、アルブミン、ハプトグロビン、α2マクログロブリンあるいは免疫グロブリンのような個別のタンパク質に関連するペプチドを選択的に溶離し、質量分析によって同定することができる。このペプチドは0.2%のトリフルオロ酢酸を使って酸溶離でき、続いて分析に先立って逆相樹脂を使って濃縮できる。この技術を使えば、非共有結合ペプチドをhsp 70、hsp 90およびgrp 96のようないろいろなタンパク質から隔離できる。本発明に従った1つの実施例の利点は、このペプチドを分子量カットオフ膜によってタンパク質から分離する必要性がなくなることである。その代わりに標的タンパク質は電気クロマトグラフィー基板に固定されたままであり、ペプチドはそれから溶離する。
【0094】
1つあるいは複数の実施例において、平面電気クロマトグラフィーを複雑なオリゴ糖類、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンおよび蛍光体で予め化学装飾されたオリゴ糖類(たとえば8-アミノナフタリン-1,3,6-トリスルホン酸(ANTS)および2-アミノアクリドン(AMAC)のような)の分画に使用できる。タンパク質グリコシル化は悪性転換および腫瘍形成に関連する生化学的変化に対して使用される。人間の癌腫のグリコシル化変化は、ある種の発癌事象の下流で観察される悪性の表現形の一因となる。オリゴ糖の分枝形成、シアル酸化および硫酸化に関する複合糖質のイソ型を迅速にプロファイルできる技術は臨床の癌試料の悪性評価にとって貴重な道具である。
【0095】
本発明の多くの特徴および利点は詳細な明細書から明らかであり、これによって本発明の真の精神と範囲内に入る発明のこのようなすべての特徴および利点を含むことを意図している。さらに技術の専門にとって、多数の修正や変形が容易に起こり得るので、本発明を表示しまた説明したそのままの構造および走査に限定することを望んでいないし、したがってすべての適切な修正および同等物は本発明の範囲に入るとすることができる。前述の発明は好ましい実施態様の図示と例を使って詳細に説明したが、多様な修正、置き換えおよび変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に従って、第1の移動相と接触しており、中心近くにスポットされた試料を有し、第1の方向に電界が印加された、平面固定相の配置図である。
【図2】本発明に従って1次元に分離された試料を示す。
【図3】本発明の1つあるいは複数の実施例に従って2次元に分離された試料を示す。
【図4】本発明の1つあるいは複数の実施例に従った装置の配置図である。
【図5】本発明の1つの実施例に従った装置の配置図である。
【図6】本発明の第2の実施例に従った装置の配置図である。
【図7】本発明の第3の実施例に従った装置の配置図である。
【図8】本発明の1つあるいは複数の実施例に従って位置合わせ形体に対して固定相を支持するための手段を示す。
【図9】ほぼ同じ条件で同時に分離する前に固定相の上にスポットされた2つの試料を示す。
【図10】2つの試料に2次元分離法を適用した結果得られた2つの同時分離を示す。
【図11】平面固定相と電極対を含むカセットを示す。
【図12】分離プロセスを半自動化するためにカセットと併せて使用することができる試薬の導入および洗浄ステーションを示す。
【図13】分離プロセスを半自動化するためにカセットと共に使用することができる平面電気クロマトグラフィー分離ステーションを示す。
【符号の説明】
【0097】
1 平面固定相
2 試料
3 移動相
4 正極
5 負極
6 長さ
7 印加電位
8 一次元目
9 二次元目
11 複数のスポット
16 支持体
17 電極
18 電極
19 接続パッド
20 接続パッド
21 リード線
22 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程から成る生体分子の分離方法であって、
1つあるいは複数の生体分子から成る試料を供給し、
平面固定相上に試料を負荷し、ここに前記固定相は両親媒性であり、
前記固定相を第1の液体移動相に接触させ、
第1および第2の電極に固定相の相対する端で電気的接触を供給し、さらに第1の液体移動相が固定相の長さ方向に進行するように第1電極と第2電極との間に電界を発生しこれによって1つあるいは複数の生体分子が分離する、前記方法。
【請求項2】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子から成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の液体移動相が約 2 mMから約 150 mMのイオン強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の液体移動相が、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液、およびこれらの混合物から成るグループから選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
両親媒性の固定相がイオン基で化学修飾された疎水性の高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン基が、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンおよび四級アンモニウム残基から1つあるいは複数を選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリクロロトリフルオロエチレンからなるグループから選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
平面固定相が、シリカ、アルミナあるいはチタニアベースの、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾された薄層クロマトグラフィー樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
平面固定相が、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾されたシリカ、アルミナあるいはチタニア粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
平面固定相がイオン基で化学修飾された粒子状の疎水性の高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
平面固定相が、直径約30ナノメートルから約100ナノメートルのポアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
平面固定相が直径約3ミクロンから約50ミクロンの粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1移動相のpH、イオン強度および水/有機成分を電気浸透駆動による分離を促進するように選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分離方法が、さらに第2の液体移動相を固定相の長さにわたる第2の方向に移動させ、これによって1つあるいは複数の生体分子が分離されるように、第1の電極と第2の電極の間に第2の電位を印加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1の液体移動相を固定相の長さにわたり進行させることによる分離が動電学的に起こり、第2の液体移動相を固定相の長さにわたり進行させることによる分離がクロマトグラフィー的に起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1および第2の液体移動相が、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液、およびこれらの混合物から成るグループから選択されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1移動相と第2移動相が異なるpHを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第1の移動相のpHが酸性であり、第2の移動相のpHが塩基性である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第1の移動相のpHが塩基性であり、第2の移動相のpHが酸性である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
第1移動相と第2移動相が異なる有機成分を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
第1の移動相が第2の移動相よりも高い有機溶媒濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
第1の移動相が第2の移動相よりも低い有機溶媒濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
第1移動相と第2移動相が異なるイオン強度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸 (ACES)、N-(2-アセトアミド)イミノジ酢酸 (ADA)、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエタンスルホン酸 (BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン (BICINE)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン (BIS-TRIS)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸 (CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸 (CHES)、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (DIPSO)、3-[4-(2- ヒドロキシエチル )-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸 (EPPS)、2-[4-(2 ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸 (HEPES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-プロパンスルホン酸モノハイドレート(HEPPSO)、2-モルホリノエタンスルホン酸モノハイドレート(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)、1.5ナトリウム塩(PIPESの1.5ナトリウム塩)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)デハイドレート(POPSO)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノ プロパンスルホン酸 (TAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-ヒドロキシ-3-アミノ プロパンスルホン酸 (TAPSO)、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、およびN-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(TRICINE)から成るグループから選択された緩衝液に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が緩衝化した有機溶媒に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記電界によって生じる電流が10マイクロアンペアから5ミリアンペアの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記電界が約50ボルト/cmから約900ボルト/cmの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記電界が約200ボルト/cmから約600ボルト/cmの範囲にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
さらに分離した生体分子を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
検出法が蛍光発光、質量分析、化学発光、放射能、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射からなるグループから選択されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
検出方法がMALDI-TOF質量分析および誘導結合プラズマ質量分析から成るグループから選択されている、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
分離に先立って生体分子に検出剤で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
分離の後に生体分子に検出剤で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記検出剤が色素染料、蛍光染料、化学発光染料、ビオチン化した標識、放射性標識、親和性標識、質量タグおよび酵素からなるグループから選択されている、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
さらにタンパク質発現変化および翻訳後修飾変化の示差分析のため前記生体分子に質量タグ法を実施する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記質量タグ法が前記生体分子のタンパク質分解断片のカルボキシル中の末端部分に2個の18Oあるいは2個16O原子の組込みを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記質量タグ法がペプチド中の一級アミノ基のトリアセテートおよびトリドイテロアセテートによるアセチル化を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記質量タグ法がアスパラギン酸およびグルタミン酸残基のメタノールおよびトリドイテロメタノール(d3)によるメチルエステル化を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記質量タグ法が12Cおよび13C標識したトリアラニンペプチドのN末端をヨードアセチル化することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記質量タグ法が、試料中のO-リン酸化部位間の差異を測定するために、1,2エタンジチオールおよびテトラアルキルドイテル化1,2エタンジチオールの使用を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
さらにタンパク質発現レベルあるいはタンパク質のその他の属性を平行して決定するための多重化の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質発現レベルがグリコシル化のレベル、リン酸化のレベルを含み、タンパク質の前記属性が薬剤結合能力および薬剤代謝能力を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体分子分離のための電気クロマトグラフィーシステムであって、少なくとも平面電気クロマトグラフィー領域を定義する底と側面を有するチャンバと、前記チャンバ内に液体移動相を含むための第1の領域と、前記チャンバ内に液体移動相を含むための第2の領域と、前記チャンバ内の第1と第2の領域との間に置かれ前記液体移動相と接触している平面両親媒性固定相と、前記平面両親媒性固定相に電気的接触が可能な第1および第2の電極と、平面電気クロマトグラフィーを行うために前記第1と第2の電極との間に印加する電位を発生することができる電源とを備える、前記システム。
【請求項44】
前記第1電極、前記第2電極および前記固定相が平面の芯状支持体に接触している、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記芯状支持体の第1の端が前記第1の領域中の前記液相に接触しており、前記芯状支持体の第2の端が前記第2の領域の前記液相に接触している、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記第1の端および前記固定相が第1の芯状支持体に接触しており、前記第2の電極および前記固定相の相対する端が第2の芯状支持体に接触している、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
前記第1の芯状支持体が前記第1のタンク室中の前記液相に接触しており、前記第2の芯状支持体が前記第2のタンク室中の前記液相に接触している、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記固定相が1個あるいは複数のホルダーによって支持されており、前記ホルダーが前記固定相を前記液体移動相に接触させるための開口を中央に持つ枠である、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
前記機械的締め具が鋲、鳩目、ねじ、スナップタブ、熱かしめから成るグループから選択されている、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
さらに前記チャンバ内で機械的手段によって2つのホルダーの間に保持された前記固定相の位置決めのための位置合わせ手段を備え、前記位置合わせ手段が孔、スロット、ピンおよびデータム面から成るグループから選択されている、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
さらに第1と第2の芯状支持体を備え、前記第1と第2の芯状支持体がセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルから成るグループから選択されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項52】
さらに試料を前記固定相に分注するためのディスペンサーを備え、前記ディスペンサーが手動式あるいは自動式である、請求項43に記載のシステム。
【請求項53】
前記手動式ディスペンサーがピペット、圧電分注チップ、固体ピンおよびクイルピンから成るグループから選択されている、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記自動式ディスペンサーがMultiPROBE液体取扱ロボットである、請求項52に記載のシステム。
【請求項55】
さらに電源ユニットを制御するためのコントローラーを含み、前記制御手段がコンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサーおよびタイマーから成るグループから選択されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項56】
さらにカバーを備える請求項43に記載のシステム。
【請求項57】
前記第1および第2の電極がカバーと一体化され、チャンバの第1の相対する側面に置かれている、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
さらに第3および第4の電極がカバーと一体化され、チャンバの第2の相対する側面に置かれている、請求項57に記載のカセット。
【請求項59】
電気クロマトグラフィーを行うためのキットであって、2つあるいはそれ以上の生体分子から成る試料を負荷するための平面両親媒性固定相、少なくとも1つの電極緩衝液、および平面電気クロマトグラフィーを使って1つあるいはそれ以上の生体分子を含む試料の分離のために前記キットをどのように使うかの説明を記述した取扱説明書を備えた、前記キット。
【請求項60】
さらに芯状支持体を備え、前記芯状支持体がセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルから成るグループから選択されている、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
さらに前記平面固定相を覆うための不浸透性の隔壁を備え、前記不浸透性の隔壁がガラス板あるいはシリコーンオイルである、請求項59に記載のキット。
【請求項62】
ベース、側面、カバーから成る枠を備え、液体を導入および排出するための流入口および流出口を有し、固定相が枠に支持され、前記固定相が両親媒性の平面固定相から成る、カセット。
【請求項63】
さらにカバーと一体の、また前記枠の第1の相対する側面に位置する一対の電極を備えた、請求項62に記載のカセット。
【請求項64】
さらにカバーと一体の、また前記枠の第2の相対する側面に位置する第2の対の電極を備えた、請求項63に記載のカセット。
【請求項65】
平面固定相を支持する枠と、前記枠が中央に平面固定相の表面を露出するための開口と、平面固定相を枠に確保するための締め具とを備える平面固定相支持体。
【請求項66】
前記枠が平面固定相を受けるための凹みを備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項67】
前記平面固定相が高分子膜である、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項68】
前記平面固定相がシリカ、アルミナあるいはチタニアベースの薄相クロマトグラフィー樹脂である、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項69】
前記開口中央部が実質上平面固定相の大きさである、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項70】
前記支持体が2つの相対する枠を備え、前記枠が相対する枠の間に平面固定相を確保するように構成されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項71】
前記固定相が機械的締め具により前記枠に確保されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項72】
前記機械的締め具が鋲、鳩目、ねじ、スナップタブ、クランプガスケットから成るグループから選択されている、請求項71に記載の平面固定相支持体。
【請求項73】
前記締め具が、前記平面固定相の縁への、枠の一部の折り曲げあるいは折り畳みを備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項74】
前記固定相が化学的締め具により前記枠に確保されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項75】
前記化学的締め具が熱溶接、熱かしめ、結合剤、接着剤から成るグループから選択されている、請求項74に記載の平面固定相支持体。
【請求項76】
さらに前記平面固定相を予め決められた位置に対して位置決めするための位置合わせ手段を備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項77】
前記位置合わせ手段が前記枠の縁あるいは前記枠の面上に位置する、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【請求項78】
前記位置合わせ手段が凹みあるいは突起を備える、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【請求項79】
前記凹みあるいは突起が、相補的な凹みあるいは突起と組み合わせて位置合わせできる、請求項78に記載の平面固定相支持体。
【請求項80】
前記凹みあるいは突起が孔、スロット、ピン、データム面から成るグループから選択される、請求項78に記載の平面固定相支持体。
【請求項81】
前記位置合わせ手段がばねセットを備える、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【請求項1】
次の工程から成る生体分子の分離方法であって、
1つあるいは複数の生体分子から成る試料を供給し、
平面固定相上に試料を負荷し、ここに前記固定相は両親媒性であり、
前記固定相を第1の液体移動相に接触させ、
第1および第2の電極に固定相の相対する端で電気的接触を供給し、さらに第1の液体移動相が固定相の長さ方向に進行するように第1電極と第2電極との間に電界を発生しこれによって1つあるいは複数の生体分子が分離する、前記方法。
【請求項2】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、グリカンおよび小さな薬物分子から成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の液体移動相が約 2 mMから約 150 mMのイオン強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の液体移動相が、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液、およびこれらの混合物から成るグループから選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
両親媒性の固定相がイオン基で化学修飾された疎水性の高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン基が、スルホン酸、スルホプロピル、カルボキシメチル、リン酸塩、ジエチルアミノエチル、ジエチルメチルアミノエチル、アリルアミンおよび四級アンモニウム残基から1つあるいは複数を選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリクロロトリフルオロエチレンからなるグループから選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
平面固定相が、シリカ、アルミナあるいはチタニアベースの、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾された薄層クロマトグラフィー樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
平面固定相が、アルキル基、芳香族基あるいはシアノアルキル基で化学修飾されたシリカ、アルミナあるいはチタニア粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
平面固定相がイオン基で化学修飾された粒子状の疎水性の高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
平面固定相が、直径約30ナノメートルから約100ナノメートルのポアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
平面固定相が直径約3ミクロンから約50ミクロンの粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1移動相のpH、イオン強度および水/有機成分を電気浸透駆動による分離を促進するように選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分離方法が、さらに第2の液体移動相を固定相の長さにわたる第2の方向に移動させ、これによって1つあるいは複数の生体分子が分離されるように、第1の電極と第2の電極の間に第2の電位を印加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1の液体移動相を固定相の長さにわたり進行させることによる分離が動電学的に起こり、第2の液体移動相を固定相の長さにわたり進行させることによる分離がクロマトグラフィー的に起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1および第2の液体移動相が、メタノール水性緩衝液、アセトニトリル水性緩衝液、エタノール水性緩衝液、イソプロピルアルコール水性緩衝液、ブタノール水性緩衝液、イソブチルアルコール水性緩衝液、炭酸塩水性緩衝液、フルフリルアルコール水性緩衝液、およびこれらの混合物から成るグループから選択されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1移動相と第2移動相が異なるpHを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第1の移動相のpHが酸性であり、第2の移動相のpHが塩基性である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第1の移動相のpHが塩基性であり、第2の移動相のpHが酸性である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
第1移動相と第2移動相が異なる有機成分を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
第1の移動相が第2の移動相よりも高い有機溶媒濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
第1の移動相が第2の移動相よりも低い有機溶媒濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
第1移動相と第2移動相が異なるイオン強度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸 (ACES)、N-(2-アセトアミド)イミノジ酢酸 (ADA)、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエタンスルホン酸 (BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン (BICINE)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン (BIS-TRIS)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸 (CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸 (CHES)、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (DIPSO)、3-[4-(2- ヒドロキシエチル )-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸 (EPPS)、2-[4-(2 ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸 (HEPES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-プロパンスルホン酸モノハイドレート(HEPPSO)、2-モルホリノエタンスルホン酸モノハイドレート(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4ビス(2エタンスルホン酸)、1.5ナトリウム塩(PIPESの1.5ナトリウム塩)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)デハイドレート(POPSO)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノ プロパンスルホン酸 (TAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-ヒドロキシ-3-アミノ プロパンスルホン酸 (TAPSO)、トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、およびN-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(TRICINE)から成るグループから選択された緩衝液に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が緩衝化した有機溶媒に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記電界によって生じる電流が10マイクロアンペアから5ミリアンペアの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記電界が約50ボルト/cmから約900ボルト/cmの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記電界が約200ボルト/cmから約600ボルト/cmの範囲にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
さらに分離した生体分子を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
検出法が蛍光発光、質量分析、化学発光、放射能、消滅波、無標識質量検出、光吸収および光反射からなるグループから選択されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
検出方法がMALDI-TOF質量分析および誘導結合プラズマ質量分析から成るグループから選択されている、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
分離に先立って生体分子に検出剤で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
分離の後に生体分子に検出剤で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記検出剤が色素染料、蛍光染料、化学発光染料、ビオチン化した標識、放射性標識、親和性標識、質量タグおよび酵素からなるグループから選択されている、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
さらにタンパク質発現変化および翻訳後修飾変化の示差分析のため前記生体分子に質量タグ法を実施する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記質量タグ法が前記生体分子のタンパク質分解断片のカルボキシル中の末端部分に2個の18Oあるいは2個16O原子の組込みを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記質量タグ法がペプチド中の一級アミノ基のトリアセテートおよびトリドイテロアセテートによるアセチル化を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記質量タグ法がアスパラギン酸およびグルタミン酸残基のメタノールおよびトリドイテロメタノール(d3)によるメチルエステル化を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記質量タグ法が12Cおよび13C標識したトリアラニンペプチドのN末端をヨードアセチル化することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記質量タグ法が、試料中のO-リン酸化部位間の差異を測定するために、1,2エタンジチオールおよびテトラアルキルドイテル化1,2エタンジチオールの使用を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
さらにタンパク質発現レベルあるいはタンパク質のその他の属性を平行して決定するための多重化の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質発現レベルがグリコシル化のレベル、リン酸化のレベルを含み、タンパク質の前記属性が薬剤結合能力および薬剤代謝能力を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
生体分子分離のための電気クロマトグラフィーシステムであって、少なくとも平面電気クロマトグラフィー領域を定義する底と側面を有するチャンバと、前記チャンバ内に液体移動相を含むための第1の領域と、前記チャンバ内に液体移動相を含むための第2の領域と、前記チャンバ内の第1と第2の領域との間に置かれ前記液体移動相と接触している平面両親媒性固定相と、前記平面両親媒性固定相に電気的接触が可能な第1および第2の電極と、平面電気クロマトグラフィーを行うために前記第1と第2の電極との間に印加する電位を発生することができる電源とを備える、前記システム。
【請求項44】
前記第1電極、前記第2電極および前記固定相が平面の芯状支持体に接触している、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記芯状支持体の第1の端が前記第1の領域中の前記液相に接触しており、前記芯状支持体の第2の端が前記第2の領域の前記液相に接触している、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記第1の端および前記固定相が第1の芯状支持体に接触しており、前記第2の電極および前記固定相の相対する端が第2の芯状支持体に接触している、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
前記第1の芯状支持体が前記第1のタンク室中の前記液相に接触しており、前記第2の芯状支持体が前記第2のタンク室中の前記液相に接触している、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記固定相が1個あるいは複数のホルダーによって支持されており、前記ホルダーが前記固定相を前記液体移動相に接触させるための開口を中央に持つ枠である、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
前記機械的締め具が鋲、鳩目、ねじ、スナップタブ、熱かしめから成るグループから選択されている、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
さらに前記チャンバ内で機械的手段によって2つのホルダーの間に保持された前記固定相の位置決めのための位置合わせ手段を備え、前記位置合わせ手段が孔、スロット、ピンおよびデータム面から成るグループから選択されている、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
さらに第1と第2の芯状支持体を備え、前記第1と第2の芯状支持体がセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルから成るグループから選択されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項52】
さらに試料を前記固定相に分注するためのディスペンサーを備え、前記ディスペンサーが手動式あるいは自動式である、請求項43に記載のシステム。
【請求項53】
前記手動式ディスペンサーがピペット、圧電分注チップ、固体ピンおよびクイルピンから成るグループから選択されている、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記自動式ディスペンサーがMultiPROBE液体取扱ロボットである、請求項52に記載のシステム。
【請求項55】
さらに電源ユニットを制御するためのコントローラーを含み、前記制御手段がコンピュータ、プログラマブル・コントローラー、マイクロプロセッサーおよびタイマーから成るグループから選択されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項56】
さらにカバーを備える請求項43に記載のシステム。
【請求項57】
前記第1および第2の電極がカバーと一体化され、チャンバの第1の相対する側面に置かれている、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
さらに第3および第4の電極がカバーと一体化され、チャンバの第2の相対する側面に置かれている、請求項57に記載のカセット。
【請求項59】
電気クロマトグラフィーを行うためのキットであって、2つあるいはそれ以上の生体分子から成る試料を負荷するための平面両親媒性固定相、少なくとも1つの電極緩衝液、および平面電気クロマトグラフィーを使って1つあるいはそれ以上の生体分子を含む試料の分離のために前記キットをどのように使うかの説明を記述した取扱説明書を備えた、前記キット。
【請求項60】
さらに芯状支持体を備え、前記芯状支持体がセルロースベースの濾紙、レーヨン繊維、緩衝液を浸み込ませたアガロースゲル、湿らせた紙タオルから成るグループから選択されている、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
さらに前記平面固定相を覆うための不浸透性の隔壁を備え、前記不浸透性の隔壁がガラス板あるいはシリコーンオイルである、請求項59に記載のキット。
【請求項62】
ベース、側面、カバーから成る枠を備え、液体を導入および排出するための流入口および流出口を有し、固定相が枠に支持され、前記固定相が両親媒性の平面固定相から成る、カセット。
【請求項63】
さらにカバーと一体の、また前記枠の第1の相対する側面に位置する一対の電極を備えた、請求項62に記載のカセット。
【請求項64】
さらにカバーと一体の、また前記枠の第2の相対する側面に位置する第2の対の電極を備えた、請求項63に記載のカセット。
【請求項65】
平面固定相を支持する枠と、前記枠が中央に平面固定相の表面を露出するための開口と、平面固定相を枠に確保するための締め具とを備える平面固定相支持体。
【請求項66】
前記枠が平面固定相を受けるための凹みを備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項67】
前記平面固定相が高分子膜である、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項68】
前記平面固定相がシリカ、アルミナあるいはチタニアベースの薄相クロマトグラフィー樹脂である、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項69】
前記開口中央部が実質上平面固定相の大きさである、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項70】
前記支持体が2つの相対する枠を備え、前記枠が相対する枠の間に平面固定相を確保するように構成されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項71】
前記固定相が機械的締め具により前記枠に確保されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項72】
前記機械的締め具が鋲、鳩目、ねじ、スナップタブ、クランプガスケットから成るグループから選択されている、請求項71に記載の平面固定相支持体。
【請求項73】
前記締め具が、前記平面固定相の縁への、枠の一部の折り曲げあるいは折り畳みを備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項74】
前記固定相が化学的締め具により前記枠に確保されている、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項75】
前記化学的締め具が熱溶接、熱かしめ、結合剤、接着剤から成るグループから選択されている、請求項74に記載の平面固定相支持体。
【請求項76】
さらに前記平面固定相を予め決められた位置に対して位置決めするための位置合わせ手段を備える、請求項65に記載の平面固定相支持体。
【請求項77】
前記位置合わせ手段が前記枠の縁あるいは前記枠の面上に位置する、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【請求項78】
前記位置合わせ手段が凹みあるいは突起を備える、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【請求項79】
前記凹みあるいは突起が、相補的な凹みあるいは突起と組み合わせて位置合わせできる、請求項78に記載の平面固定相支持体。
【請求項80】
前記凹みあるいは突起が孔、スロット、ピン、データム面から成るグループから選択される、請求項78に記載の平面固定相支持体。
【請求項81】
前記位置合わせ手段がばねセットを備える、請求項76に記載の平面固定相支持体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−529755(P2007−529755A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504167(P2007−504167)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/009210
【国際公開番号】WO2005/092013
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506284924)パーキンエルマー エルエーエス,インク. (3)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/009210
【国際公開番号】WO2005/092013
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506284924)パーキンエルマー エルエーエス,インク. (3)
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