説明

電気湯沸し器

【課題】 電気ポットその他の電気湯沸し器において、蓋部から外方への直接的な蒸気の排出をなくす。
【解決手段】 液体を入れる内容器および該内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆う蓋部とからなる電気湯沸し器であって、上記蓋部には当該蓋部から外部に向けて蒸気を排出する蒸気口を設けないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヒータ等の電気的な加熱手段により液体容器内の液体を加熱沸とうさせるようにした電気湯沸し器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような電気湯沸し器は、一般に液体を入れる内容器および該内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆う蓋部とからなり、上記蓋部上面には沸とう時に外部に蒸気を排出する蒸気排出口が設けられている。
【0003】
この蒸気口は、蓋部内面側の蒸気導入口部分から蒸気を導入し、転倒止水弁を介した蒸気排出通路を通して、上面側スリット状の蒸気排出口から室内空間上方に吐出させるようになっている(例えば特許文献1の構成を参照)。
【0004】
この結果、沸とう時における上記液体容器内の圧力は低下し、同容器内の湯はスムーズな形で安全に沸とうし、所定の時間内沸とうが継続された後に、必要に応じて保温状態に移行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−189519号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような電気湯沸し器の場合、床面上に置いて使用されるケースもあり、そのような場合、子供などが上記蒸気口から吐出される蒸気に触れる可能性がある。
【0007】
また、多量の蒸気が出ると、室内の湿度が高くなり、ふすまや壁紙等が湿るし、必要以上に沸とう状態を続けると、消費電力も大きくなる等の問題がある。
【0008】
したがって、何らかの方法で、蒸気自体を外部に出なくするか、または蒸気発生量そのものを低減することが好ましい。
【0009】
しかるに、これまでのところ、電気湯沸し器において、そのような対策を取ったものは見られず、有効な対策が求められている。
【0010】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、蓋部そのものから外部に蒸気を吐出する蒸気口をなくすることによって、蓋部から蒸気を出さないようにした電気湯沸し器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
(1) 請求項1の発明
この発明は、液体を入れる内容器および該内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆う蓋部とからなる電気湯沸し器であって、上記蓋部には当該蓋部から外部に向けて蒸気を排出する蒸気口が設けられていないことを特徴としている。
【0013】
このような構成によると、蓋部には蓋部から外部に蒸気を排出する蒸気口が設けられていないことから、従来のように蓋部から直接外部に蒸気が吐出されることがなくなる。
【0014】
したがって、子供などが上記蒸気口から吐出される蒸気に触れる、室内の湿度が高くなり、ふすまや壁紙等が湿る等の従来の問題が確実に解消される。
【0015】
(2) 請求項2の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、容器本体の側壁部に蒸気冷却用カートリッジが設けられているとともに、該蒸気冷却用カートリッジは、その上端側蒸気流入口部分が蓋部側の蒸気排出口部分に連通せしめられていることを特徴としている。
【0016】
このように、容器本体の側壁部に蒸気冷却用カートリッジが設けられており、該蒸気冷却用カートリッジの上端側蒸気流入口部分が蓋部側蒸気排出口部分に連通せしめられていると、容器本体の液体容器内で発生した蒸気が蓋部側蒸気排出通路下流の蒸気排出口部を介して蒸気冷却用カートリッジ内の蒸気冷却室に導入され、外部温度との温度差により効率良く冷却されて液体に凝縮される。
【0017】
その結果、蒸気冷却用カートリッジから外部に排出される蒸気は殆んどなくなり、蒸気レスタイプの電気湯沸し器が実現される。
【0018】
(3) 請求項3の発明
この発明は、上記請求項1又は2の発明の構成において、蒸気冷却用カートリッジは、容器本体に対して着脱可能となっていることを特徴としている。
【0019】
このように、蒸気冷却用カートリッジが、容器本体に対して着脱可能となっていると、冷却凝縮された液体を排出したり、カートリッジ内を洗浄するのに便利となる。
【0020】
(4) 請求項4の発明
この発明は、上記請求項1,2又は3の発明の構成において、蓋部側の蒸気排出口から蒸気冷却用カートリッジの蒸気流入口部までの間には、蒸気の発生を検知する蒸気センサーが設けられていることを特徴としている。
【0021】
このように、蓋部側の蒸気排出口部分から蒸気冷却用カートリッジの蒸気流入口部までに蒸気の発生を検知する蒸気センサーが設けられていると、液体容器内で沸とうが始まったことを一早く検知して、外部に蒸気が出る前に湯沸し用の加熱手段を停止させることができ、より確実な形で蒸気レス機能を実現することができる。
【0022】
また沸とう時、可及的早期に湯沸し用の加熱手段を停止させることができるので、不必要に沸とうを継続させなくて済み、消費電力も小さく、省エネ性能が向上する。
【発明の効果】
【0023】
以上の結果、本願発明によると、蒸気レスで、安全かつ省エネ性の高い電気湯沸し器を、低コストに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の実施の形態1に係る電気ポットの全体構造を示す縦断面図である。
【図2】同電気ポット全体の背面図である。
【図3】同電気ポットの要部の拡大断面図である。
【図4】同電気ポットの蒸気冷却用カートリッジの構成を示す背面図である。
【図5】同電気ポットの蒸気冷却用カートリッジの構成を示す図4のA−A断面図である。
【図6】本願発明の実施の形態2に係る電気ポットの全体構造を示す縦断面図である。
【図7】同電気ポット全体の背面図である。
【図8】同電気ポットの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<実施の形態1>
以下、添付の図面を参照して、本願発明の実施の形態1に係る電気湯沸し器の構成について説明する。
【0026】
この実施の形態では、本願発明の電気湯沸し器の一例として、湯沸しおよび保温機能を備えた電気ポットの場合を示している。
【0027】
添付した図面の図1は該電気ポットの全体縦断面図、図2は同電気ポットの背面図、図3は同電気ポットの要部の拡大断面図、図4は同電気ポットの蒸気冷却用カートリッジ部分の背面図、図5は同電気ポットの蒸気冷却用カートリッジ部分の断面図(図4のA−A断面図)である。
【0028】
先ず、本願発明の実施の形態1の電気ポットのポット本体部分の構成から説明する。
【0029】
(電気ポット本体部分の構成)
図1〜図3に示す電気ポットは、湯沸しおよび貯湯用の内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部側開口部を開閉する蓋体2と、上記内容器3を湯沸し時において加熱する加熱手段である湯沸しヒータ4Aと、上記内容器3を保温時において加熱する加熱手段である保温ヒータ4Bと、上記内容器3内の湯を外部へ給湯注出するための給湯通路(湯注出通路)5と、AC電源が接続されている状態において上記給湯通路5を介して上記内容器3内の湯を外部に注出する電動式の給湯ポンプ6とを備えて構成されている。
【0030】
上記容器本体1は、外側面部を構成する金属製又は鋼板製の筒状の外ケース7と、内側面部を構成する上記内容器3と、上記外ケース7と内容器3とを上部側で一体に結合固定する合成樹脂製の環状の肩部材8と、底面部を構成する合成樹脂製の皿状の底部材9とからなっている。
【0031】
上記内容器3は、ステンレス製の有底円筒形状の内筒3Aと、同じくステンレス製で底部のない円筒形状の外筒3Bとを、上端側3bおよび下端側3c部分で相互に接合し、それら内筒3Aと外筒3Bとの間に真空断熱空間を設けた保温性能の高い真空二重壁構造の断熱構造体からなっており、その底部3aには、外周側上記内筒3Aと外筒3Bとの接合部までを除いて上記内筒3Aの底面部のみにより構成された1枚板部3eが形成されている。該1枚板部3eは若干上方に高く突出して成形されていて、その下面側には、上記湯沸しヒータ4Aと保温ヒータ4B(例えば雲母板にワット数の異なる2組の発熱体を保持させたマイカヒータよりなる)が取り付けられている。
【0032】
上記内容器3の上端部3b手前には、上記内筒3A側の上端部を中心軸方向に向けて断面半円形状の凸部とする絞り加工を施したヒートキープ構造の給水用の開口部3dが形成されている。また、符号12は、同じく内筒3Aの背面側の一部を部分的に内側に突出させた上記内容器3内の満水位レベルを表示する凸状の満水位表示部である。
【0033】
上記蓋体2は、合成樹脂製の上板13と、該上板13に対し、中板14を介して外周縁同士が相互に結合された合成樹脂製の下板15とからなっており、上記肩部材8の後端部に設けられたヒンジ受け部8aに対してヒンジピン17およびヒンジロック16を介して上下方向に開閉自在且つ着脱自在に支持されている。なお、符号10は、当該蓋体2の上板13と中板14との間に形成された断熱空間、また符号11は、当該蓋体2の開閉状態を規制する蓋開閉レバーである。
【0034】
また、上記蓋体2の下部には、下板15側から中板14側に向けて相互に連通した蒸気排出通路21a〜21cが設けられており、該蒸気排出通路21a〜21cは、上記蓋体2の下板15の背面側縦壁部上部にある最下流側通路21cの終端部分が蓋体2から外部への蒸気排出口21dとなっている。そして、符号22は同蒸気排出通路21a〜21cの上流側蒸気導出通路21aの途中に配設された転倒止水弁である。
【0035】
また、上記蓋体2における下板15の下面側には、上記蒸気排出通路21a内への蒸気導入口23aを備えた金属製の内カバー部材23が固定されており、該内カバー部材23の外周縁(全周)には、上記蓋体2の閉蓋時において上記内容器3上端部の給水用開口部3dの上部面に圧接される耐熱ラバー製のシールパッキン24が設けられている。
【0036】
一方、この実施の形態の場合、上記蓋体2の上部側中板14および上板13部分には、従来のように蒸気排出通路21a〜21cから外部に向けて連通開放する蒸気導出口および蒸気口部分は全く設けられておらず、その代りに上記容器本体1の背面側に後述する蒸気排出パイプ(連結パイプ)45を介して連通する蒸気冷却用カートリッジ30が設けられており、該蒸気冷却用カートリッジ30の第1,第2の蒸気冷却通路32b,32c部分に上記蒸気排出通路21a〜21cからの蒸気が導入されて冷却液化されるようになっている。
【0037】
この蒸気冷却用カートリッジ30は、例えば図4および図5に示されるように、薄形で上下方向に長い直方体形状のカセットケース31の中に上方から下方に向けてコ字状および縦方向の仕切壁31c,31dと、上下に所定の間隔を置いて左右両方向から相互に対向し合う斜め横方向の仕切壁31a,31a・・・,31b,31b・・・とを設けて、左側から右側にコの字状に蒸気口33cを迂回した後、右側から左側、左側から右側に、またその逆に順次ジグザグ状に曲成した第1の蒸気冷却通路32bと該第1の蒸気冷却通路32bの冷却通路の側方を下方から上方にUターンして外部への蒸気口33cに向かう第2の蒸気冷却通路32cとを形成するとともに、その上端側中央部の前面側に蒸気流入口33a、同じく中央部背面側に外部に開放された上記蒸気口33cを形成したものであり、下端側前面には容器本体1側底部材9の蒸気冷却用カートリッジ係合溝34a中に挿入係合される板状の係合片34bが、また上記上端側蒸気流入口33a部分には同蒸気流入口33a部分から外方に向けて突出し、容器本体1側連結口部45b内に嵌合される筒状の連結口部33bが設けられている。
【0038】
一方、上記容器本体1の肩部材8に対応する蓋体2の上記蒸気排出通路21a〜21c下流端の蒸気排出口21d部分からは、上記容器本体1の肩部材8背面側蒸気冷却用カートリッジ30の連結口部33bおよび蒸気流入口33a部分に向けて上方から下方にクランク状に曲成された蒸気排出パイプ(連結パイプ)45が配設されている。
【0039】
この蒸気排出パイプ(連結パイプ)45は、その上流端側連結口部45aを上記蒸気排出通路21a〜21c下流端の蒸気排出口21dに連結している一方、下流端側連結口部45b内に上記蒸気冷却用カートリッジ30の蒸気導入用連結口部33bが着脱可能に嵌合されるようになっている。これによって蒸気冷却用カートリッジ30の上端側が上記容器本体1に対して固定される。
【0040】
そして、沸とう開始後、蓋体2下部の上述した蒸気導入口23aおよび蒸気排出通路21a〜21cを介して排出されてくる内容器3からの蒸気は、先ず上述の蒸気排出パイプ45を通って上方から下方向にクランク状に流れ、所定レベルの冷却作用を受けた後、上記連結口部33bおよび蒸気流入口33aから蒸気導入空間(蒸気口迂回通路)32aに導入された後、上記第1の蒸気冷却通路32b部分を、仕切壁31a,31a・・・,31b,31b・・・により遮ぎられながら、図示のように扁平な状態でジグザグ状に時間をかけて流れることにより、効果的に冷却凝縮されて、液化し、底部の液留め部35部分に留められる。
【0041】
他方、液化しなかった残りの蒸気は、さらに上述した第2の蒸気冷却通路32cを介して冷却されながら、今度は下方から上方に流れ、さらに液化される。そして、ここで液化した液体は、壁面等から下方に流下し、やはり液留め部35部分に留められる。
【0042】
第2の蒸気冷却通路32cの下流端は、上述した蒸気口33c部分に対応する位置となっているが、同下流端部分は、上記コ字状の仕切壁31cにより広く囲まれた拡大スペース32dとなっており、同部分で排出される残留蒸気の圧力が有効に拡散され、漏れ出る程度の状態となって蒸気口33cから排出される。
【0043】
この結果、蒸気口33c部分から外部に排出される蒸気は殆どなくなり、あったとしても、わずかな量のものだけが、緩やかに排出されるだけとなる。
【0044】
さらに、上記給湯通路5の上流端側である上記内容器3の底部3aの前端位置には、内容器3側湯導入筒6a、給湯ポンプ側湯吸入口6bを介して、例えば軸シール型の直流電動式の給湯ポンプ6が配設されており、この給湯通路5においては上記湯導入筒6aを介して湯吸込口6bより吸入された湯が当該電動式給湯ポンプ6のポンピング作用により、その吐出口6cから吐出され、同給湯通路5の下部側接続部5aおよび直管部5bを経て、転倒止水弁18側連結パイプ5cから外部への湯注出口5dに導かれて注出される。
【0045】
なお、符号25は後述する各種スイッチ類の操作面や液晶表示手段の表示面を備えた操作パネル部、26はマイコン(制御部)や各種スイッチ類、液晶表示手段の駆動部等を備えたマイコン基板である。
【0046】
上記操作パネル部25には、そのON操作によって上記給湯ポンプ6の駆動モータに電源を入れて駆動する給湯スイッチ、同給湯スイッチのON操作をタイマーロックし、ON操作によって同ロック状態を解除する給湯ロック解除スイッチ、再沸騰/保温選択スイッチ、おやすみタイマースイッチ、再沸騰表示用LED、保温動作表示用LED、給湯ロック解除表示用LED、液晶表示部等が設けられている。
【0047】
上記液晶表示部の表示面には、例えば時刻/時間/湯温/作動状態等兼用表示部、保温設定温度表示部、まほうびん保温表示部等が設けられており、各種の便利な情報表示がなされるようになっている。
【0048】
ところで、上記肩部材8部分に設けた蒸気排出パイプ(連結パイプ)45の蒸気排出通路21a〜21c側蒸気排出口21dとの連結口部45a部分(水平方向に延びる所定長さの部分)の通路径は、その通路底壁面45c部分を入口側から出口側にかけて次第に高さが高くなるように傾斜させることによって、同通路底壁面45c部分を凝縮水が戻る前下りの傾斜面とし、同部分では液滴の停滞がないようにしているとともに、同連結口部45a部分では、通路径が上流側から下流側にかけて次第に縮小するようにしている。しかし、同部分の下流端(下方に向けて通路方向が曲成される部分)以降の各部の通路径は、当該蒸気排出パイプ45の連結口部45b、蒸気冷却用カートリッジ30の連結口部33bおよび蒸気流入口33a、蒸気導入空間(蒸気口迂回通路)32a、第1,第2の蒸気冷却通路32b,32c、蒸気口33cの何れとも、当該下流端部分の通路径φと等しいか、又は当該下流端部分の通路径φよりも大きく(好ましくは順次大きく)形成されている。そして、それによって、上記蒸気排出パイプ(連結パイプ)45の上記蒸気排出口21dとの連結口部45a部分下流端の通路径φで上記内容器3内の沸とう時の内部圧力を、上述した給湯通路5を介して上記内容器3内の湯が外部に突出しない安全な内圧レベルにリリーフ規制できるようにしている。
【0049】
そして、上記蒸気排出パイプ(連結パイプ)45の上流側から下流側にかけて高さが高くなるように前下りに傾斜させ、液化した凝縮水が停滞しないようにした上述の底壁面部45cには、蒸気センサ25の蒸気検知部25aが通路内に突出する形で設置されている。この蒸気センサ25の蒸気検知信号は、所定のハーネス26を介して上述した操作パネル部25下方のマイコン(制御部)に入力されるようになっている。
【0050】
すなわち、上記蒸気センサ25は、上述した内容器3内の水が沸とうを始めた時の最初の蒸気(80℃程度)を、内容器3上方の上記蓋体2下部の蒸気導入口23a、蒸気排出通路21a〜21c、蒸気排出口21dのみの極めて短かい通路を介して可及的短時間で検出し、該蒸気発生の検知信号を速やかに上述したようにマイコン(制御部)に送る。
【0051】
すると、マイコン(制御部)は、直ちに上述した湯沸しヒータ4Aへの通電を停止して湯沸し動作を終え、予じめ設定された目標保温温度への低下を待って保温ヒータ4Bを使用した保温加熱制御に移行させる。
【0052】
したがって、上記の構成の場合、上記沸とう後速かに湯沸しヒータ4AがOFFにされることから、沸とう時の蒸気発生量が極めて応答性良く抑制され、生じる蒸気は余熱により発生する少量のものだけが中心となる。
【0053】
しかも、これら最少量の蒸気が、当該蒸気排出パイプ(連結パイプ)45、蒸気流入口33aを介して、上述した蒸気冷却用カートリッジ30内の蒸気導入空間(蒸気口迂回通路)32aおよび第1,第2の蒸気冷却通路32b,32cに導入され、その前後両壁面側から効果的に冷却されて、凝縮液滴化され、同凝縮された液滴が上記各通路32b,32cの前後両壁面を伝わって流下し、下方側カセットケース31内底部の液留め部35部分に留められる。
【0054】
このようにして、殆んどの発生蒸気が液化され、液留め部35部分に水として回収され、ほんの一部の残留蒸気のみがグリル構造の蒸気口33cを通して外部に緩やかに排出される。
【0055】
このため、以上の構成によると、殆んど蒸気レスタイプの電気ポットを、きわめて低コストに提供することが可能となる。
【0056】
なお、この場合において、上記容器本体1背面側の蒸気冷却用カートリッジ30設置部には、カセットケース31の前面壁側との間に、例えば図1、図3に示すような十分な幅の前後方向の空気流通空間Sが設けられており、可能な限りカセットケース31前面側の冷却効果を高く維持するように構成されているが、その場合において、さらに必要であれば、容器本体1側蒸気冷却用カートリッジ設置用凹部の側壁部とカセットケース31の側部との間に必要な隙間を設けることによって、空気の流通を可能とすることもできる。
【0057】
また、上記カセットケース31は、例えば図示の断面構造から理解されるように、前面側ユニット31Bと背面側ユニット31Aとの2つの分割可能なユニットよりなり、それらを外周壁部および仕切壁31a,31b,31c,31d部分で相互に着脱可能に嵌合できる構造として一体化するように構成しており、必要に応じて相互に分割することにより、内部の洗浄が可能となっている。
【0058】
さらに、また上記前面側ユニット31Bの液留め部35位置には、例えば図5に示すように、ゴム製のドレンキャップ40を備えたドレン排出口40aが設けられており、ドレンキャップ40を外して、留められた凝縮水を捨てることができるようになっている。
【0059】
<実施の形態2>
以下、添付の図面を参照して、本願発明の実施の形態2に係る電気湯沸し器の構成について説明する。
【0060】
この実施の形態でも、本願発明の電気湯沸し器の一例として、湯沸しおよび保温機能を備えた電気ポットの場合を示している。
【0061】
そして、添付した図面の図6は該電気ポットの全体縦断面図、図7は同電気ポットの背面図、図8は同電気ポットの要部の拡大断面図である。
【0062】
この実施の形態の電気ポットは、上述した蒸気排出パイプ45部分に蒸気センサ25を備えた上述の実施の形態1の構成の電気ポットにおいて、さらに蒸気冷却用カートリッジ30内蒸気冷却通路終端の蒸気口33c内側部分(拡大スペース32d部分)に第2の蒸気センサ27の蒸気検知部27aを設け、上記蒸気排出パイプ45側第1の蒸気センサ25に故障等が生じたような場合にも、蒸気口33c側第2の蒸気センサ27で蒸気を検知し、湯沸しヒータ4AをOFFにできるようにしたことを特徴とするものである。その他の構成は、全て上述した実施の形態1のものと同様であり、同様の作用を奏する。
【0063】
この場合、該第2の蒸気センサ27の検知感度(基準温度)は、例えば外気温を考慮した50℃程度に設定されている。
【0064】
すなわち、この実施の形態では、上述した容器本体1の外ケース7背面側の蒸気冷却用カートリッジ30設置部の上端側蒸気排出パイプ45下部部分には、所定の大きさのセンサホルダー嵌合用の開口を設けて蒸気センサ嵌装用の蒸気センサホルダー37が嵌合係止されており、同蒸気センサホルダー37部分に後部側支持ブラケット38および前部側支持ブラケット39各々の筒状部により前後方向から包み込む形で、上述した第1の蒸気センサ25と同じ構造の第2の蒸気センサ27を設けており、上記前部側支持ブラケット39の筒状部外周側の環状のスリット部39aおよび第2の蒸気センサ27の検知部27a部分を後方に向けて所定の長さ突出させる形で固定されている。
【0065】
一方、蒸気冷却用カートリッジ30のカセットケース31背面側の蒸気口33cに対応する前面壁側には、上記容器本体1の外ケース7から後方に向けて突出している前部側支持ブラケット39の環状のスリット部39a部分に所定のシール部材を介して液密に嵌合するスリーブ状の嵌合口(筒状部)36が設けられており、同嵌合口36を上記環状のスリット部39a部分に着脱可能に嵌合(圧入)することによって、上記第2の蒸気センサ27の蒸気検知部27aが蒸気口33c内に位置せしめられるようになっている。
【0066】
これにより、同蒸気口33c部分における蒸気の到来が検知される。
【0067】
そして、同検知された検知信号は、ハーネス28を介して上記第1の蒸気センサ25の場合と同様に、上述した操作パネル25の下方のマイコン(制御部)部分に入力されて、湯沸しヒータ4AのOFF制御信号として使用される。
【0068】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態1,2の構成では、本願発明の電気湯沸し器の一例として電気ポットの場合について説明したが、これは、例えば保温機能のない電気ケトルなどの電気湯沸し器に変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1は容器本体、2は蓋体、3は内容器、4Aは湯沸しヒータ、4Bは保温ヒータ、5は給湯通路(湯注出通路)、6は電動式の給湯ポンプ、11は蓋開閉レバー、13は上板、14は中板、15は下板、21a〜21cは蒸気排出通路、21dは蒸気排出通路終端の蒸気排出口、30は蒸気冷却用カートリッジ、31はカセットケース、31a,31b,31c,31dは仕切壁、32aは蒸気導入空間(蒸気口迂回通路)、32bは第1の蒸気冷却通路、32cは第2の蒸気冷却通路、33aは蒸気流入口、33bは蒸気排出パイプ45への連結口部、33cは蒸気口、35は液留め部、45は蒸気排出パイプ(連結パイプ)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れる内容器および該内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆う蓋部とからなる電気湯沸し器であって、上記蓋部には当該蓋部から外部に向けて蒸気を排出する蒸気口が設けられていないことを特徴とする電気湯沸し器。
【請求項2】
容器本体の側壁部に蒸気冷却用カートリッジが設けられているとともに、該蒸気冷却用カートリッジは、その上端側蒸気流入口部分が蓋部側の蒸気排出口部分に連通せしめられていることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項3】
蒸気冷却用カートリッジは、容器本体に対して着脱可能となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の電気湯沸し器。
【請求項4】
蓋部側の蒸気排出口から蒸気冷却用カートリッジの蒸気流入口部までの間には、蒸気の発生を検知する蒸気センサーが設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気湯沸し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196311(P2012−196311A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62225(P2011−62225)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】