説明

電気炊飯器

【課題】炊飯中に発生する蒸気を外部に放出処理するのに、複数の処理経路で実行できるようにする。
【解決手段】器体1に収容した施蓋状態の飯器2内で、飯器2を加熱する通電制御と、発生する蒸気3の外部放出と、を伴い炊飯するのに、飯器2内で発生する蒸気3を外部に放出するのに複数の放出端末経路21、22、・・を設けることにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の発生を伴い炊飯を行う電気炊飯器に関する。もっとも、必要に応じ保温などの各種機能を付加することもされる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、空間部を有する二重構造とされ内部に収容した飯器を加熱する加熱手段を有する容器本体と、この容器本体の開口を閉じ、炊飯時に発生する蒸気を蓋体を通じ外部に排出する蒸気放出路を有した蓋体と、を備えた電気炊飯器を開示している。この電気炊飯器は、炊飯時に発生する蒸気を蓋体内を通じ容器本体の空間部に蒸気を導出する蒸気導出路を設ける一方、容器本体における空間部には蒸気導出路の出口側に接続され、かつ蒸気を冷却して水として回収する復水器を配設している。また、容器本体の底壁および外側壁には前記復水器と接触して蒸気を冷却する冷却風の入口および出口を形成し、かつ容器本体の下部には、前記復水器において蒸気から回収された水を貯留するための回収タンクを着脱自在に設けている。
【0003】
このものは、炊飯時に発生する蒸気が復水器において冷却されて水として回収され、外部に放出されないので、子供などが放出蒸気に触れて熱い思いをしたり、やけどをするようなことを防止できる。また、蒸気から回収された水は回収タンクに回収され、外部からの着脱によって処理されるので、水を回収したまま放置されたり、回収した水が溢れ出るような問題は回避される。
【0004】
また、下記特許文献2は、内鍋を収納ケースに収納し、蓋体で閉じて炊飯を行う電気炊飯器をフレーム内に設け、フレームの一側に設けた水容器と内鍋とを蓋体内の蒸気通路を通じ連通させることにより、炊飯時に内鍋内で発生する蒸気を水容器内に導入して水に接触させ、液化する技術を開示している。
【0005】
このものによっても、炊飯時に発生する蒸気が水容器に導入されて水との接触によって液化されるので、子供などが放出蒸気に触れて熱い思いをしたり、やけどをするようなことを防止できるし、まわりが湿度過多になるようなことが解消される。また、液化した水は水容器の外部からの着脱によって処理されるので、放置されたり、溢れ出るような問題は回避される。
【0006】
さらに、下記特許文献3は、内釜を本体に収納し、蓋体で閉じて炊飯を行う電気炊飯器に、炊飯に際し内釜から排出される空気および蒸気を誘導するガス誘導手段と、このガス誘導手段によって誘導された空気および蒸気が注入される水タンクとを有し、水タンクに形成された空気溜まり部に前記誘導される空気および蒸気が注入されるようにした技術を開示している。水タンクは着脱できる。
【0007】
これによれば、簡素な装置構成でありながら、振動や騒音が発生するような問題や、水タンクの放置による水の逆流や溢れ出しの問題が解消される。
【0008】
一方、下記特許文献4は、炊飯器で発生する蒸気を水タンクに導いて冷却水中に放散させることで復水させるのに適用される水位検知装置の場合、蒸気冷却に不可欠な水量の初期水位と容量を超える前の満水位などの複数の水位を検知する必要がある上、水の補充、廃棄の容易さから水タンクの寸法を必要最小限にすると、検知する複数の水位位置が近くなり、光学式水位検知の場合LEDなどのような汎用な発光手段を用いると、隣の発光手段の発した光を誤って受光してしまい、誤検知する課題があったことに対応した技術を開示している。
【0009】
この技術は、水タンクの反射透過部に向けて光を発光する発光手段、および前記反射透過部を通して受光し、光量に応じて出力する受光手段からなる水位検知手段を、高さ方向に沿って複数設け、高さ方向に隣接する水位検知手段の発光手段および受光手段を左右反対に配設している。これにより、複数の水位位置を検知するように上下方向に隣接する各水位検知手段の発光手段および受光手段のそれぞれが左右反対に配置されて、隣接する水位検知手段の発光手段からの光を受光し誤検知するのを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−140836号公報
【特許文献2】特開平10−192134号公報
【特許文献3】特開2009−34163号公報
【特許文献4】特開2010−42196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1〜3に開示のように、炊飯時に発生する蒸気を外部に導出して冷却し水として回収する技術は、蒸気が外部に放出されることによる問題、例えば、周辺空間が過剰湿度になったり、蒸気の放出位置によっては幼児などが熱い思いをしたり、やけどをするような問題を回避することはできる。しかし、それには、蒸気を外部に導出する経路が不可欠な上に、蒸気を冷却して水とし、タンクに回収することが必須となり構造が複雑で高価につく。
【0012】
一方、乾燥環境によっては蒸気を外部に放出しても、却って適度な加湿を確保できたり、通気環境がよく問題にならなかったりする。また、蒸気放出の位置や向きによっては幼児に熱い思いや火傷を負わすような問題も回避できる場合がある。さらに、蒸気を外部に放出した場合に妊婦が炊飯臭として体感するなど耐えにくい環境になることに対しては、消臭、香り付け処理などにて対応することが考えられる。
【0013】
つまり、蒸気を一律に水として回収するのでは不合理である。併せて、蒸気を水として回収する方式の実用は、回収タンクをこれが搭載される炊飯器での最大蒸気放出量に対応する最大容量に設定して装備しておき、炊飯後適宜廃棄するか、最大蒸気発生量未満の容量に設定して満水位になる都度廃棄するかすることが必要となり、いずれにしても面倒である。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑み、炊飯中に発生する蒸気を外部に放出処理するのに、複数の処理経路で実行できる電気炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電気炊飯器は、器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い炊飯する電気炊飯器において、飯器内で発生する蒸気を外部に放出するのに複数の放出端末経路を設けたことを特徴とする。
【0016】
このような構成では、炊飯中に飯器内で発生する蒸気を外部に放出することで、不用意な昇圧を回避しての炊飯を遂行する。特に、飯器内で発生する蒸気は複数の放出端末経路を通じ、分担し合って放出処理できる。
【0017】
上記において、さらに、複数の放出端末経路は、少なくとも異なった放出機能を分担し合い、放出プログラムまたは放出機能の選択に基づき対応する放出端末経路を機能させるようにすることができる。
【0018】
このような構成では、上記に加え、さらに、異なった放出機能を分担し合う複数の放出端末経路を、放出プログラムまたは放出機能の選択に基づき機能させての炊飯ができる。
【0019】
上記において、さらに、放出端末経路の1つは、放出する蒸気を復水器により復水させて水として回収する復水回収機能を有したものとすることができる。
【0020】
このような構成では、上記に加え、さらに、復水回収機能を有する放出端末経路の選択やプログラム設定に基づき、炊飯時に発生する蒸気を水として回収することができ、復水回収機能を有した放出端末経路の、他の機能を有した放出端末経路との同時、異時での分担使用ができる。
【0021】
上記において、さらに、放出端末経路の1つは、放出する蒸気に消臭、香り付けをする臭気処理機能を有したものとすることができる。
【0022】
このような構成では、上記に加え、さらに、臭気処理機能を有する放出端末経路の選択やプログラム設定に基づき、炊飯時に発生する蒸気を外部に放出するが、消臭、香り付け処理をして放出することができ、臭気処理機能を有した放出端末経路の、他の機能を有した放出端末経路との同時、異時での分担使用ができる。
【0023】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。また、本発明の各特徴は、それ自体単独ではもとより、可能な限り複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電気炊飯器によれば、炊飯中に飯器内で発生する蒸気を外部に放出して不用意な昇圧を回避しての炊飯を遂行するのに、飯器内で発生する蒸気は複数の放出端末経路を通じ、分担し合って放出処理するので、蒸気の放出位置の違い、放出蒸気の水としての回収の有無、放出蒸気への消臭、香り付けの有無、など、適宜な機能分担ができる。
【0025】
上記に加え、さらに、異なった放出機能を分担し合う複数の放出端末経路を、放出プログラムや選択した放出機能に対応する放出端末経路を機能させての炊飯ができる。
【0026】
上記に加え、さらに、放出端末経路の1つが復水回収機能を有し、放出プログラムまたは選択の範囲で、復水回収機能を生かした蒸気レス炊飯が、他の機能を有した放出端末経路との同時、異時での分担の基に遂行できる。
【0027】
上記に加え、さらに、放出端末経路の1つが臭気処理機能を有し、放出プログラムまたは選択の範囲で、臭気処理機能を生かした異臭の回避、放出蒸気への香り付けによる環境改善を図っての炊飯が、他の機能を有した放出端末経路との同時、異時での分担の基に遂行できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の実施の形態に係る電気炊飯器の1つの具体例を示す概略断面図。
【図2】同電気炊飯器の別の具体例を示す概略断面図。
【図3】同電気炊飯器の他の具体例を示す概略断面図。
【図4】同電気炊飯器の今1つの例を示す概略断面図。
【図5】同電気炊飯器の複数の放出端末経路を切り替え、選択使用するための選択切り替え機構の1つの例を示す斜視図。
【図6】同電気炊飯器の復水器の1つの具体例を示す斜視図。
【図7】同復水器の一部を分解して示す斜視図。
【図8】複数の放出端末経路の選択切り替え機構の別の例および変形例を示す断面図。
【図9】放出端末経路での回収水を気化しての保温工程への通気構造の主要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態に係る電気炊飯器につき、図1〜図9を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0030】
本実施の形態に係る電気炊飯器は、図1に示すように、器体1に収容した施蓋状態の飯器2内で、飯器2を加熱する通電制御と、発生する蒸気3の外部放出と、を伴い炊飯する。図示例では、中空の器体1に金属製の飯器2をそのフランジ部で吊持ちするように収容し、器体1の中空部内に設けた加熱コイル4からの電磁誘導により飯器2を発熱させ炊飯のための加熱を行う。しかし、炊飯のための加熱は、土鍋など非金属製の飯器2の外面などに設けた発熱体を電磁誘導で発熱させて行ったり、飯器2をヒータで加熱して行うこともできる。また、飯器2の材質によらず電磁誘導加熱とヒータによる加熱を併用することができる。
【0031】
飯器2の施蓋は、器体1に開閉できるように設けられた器体蓋5を閉じて既に知られた種々の方法で閉じ状態にロックすることにより、金属製の内蓋6を飯器2の開口に押し付けて閉じ状態に保つことで行う。しかし、これに限られることはない。炊飯の通電制御は、例えば、マイクロコンピュータ7により、初期設定され、また操作パネル8で選択されたモードにて、飯器2の温度センサ9からの温度情報を基に行う。炊飯後に保温を行う場合も同様である。
【0032】
蒸気3の外部への放出は、少なくとも飯器2内およびその施蓋域内が炊飯中に発生する蒸気3によって異常昇圧が発生しないように行われる。それには蒸気放出路11が施蓋域を飯器2内側から施蓋域外に貫通している必要がある。しかし、その貫通経路は自由に選択できる。図示例では、内蓋6がシール材12を介して閉じている飯器2内から、内蓋6の通気孔13を通じ、内蓋6とこの飯器2をシール部材14を介して閉じている器体蓋5の内面の金属製の放熱板15との間のおねば溜め室16に至り、このおねば溜め室16から器体蓋5を貫通するようにしている。しかし、器体蓋5を貫通した後器体1の側に延びるようにも形成される。なお、器体蓋5の放熱板15には主として保温時に用い、必要に応じ単独でまたは図示しない他のヒータと共に炊飯時の加熱補助として用いられる蓋ヒータ17が設けられ、マイクロコンピュータ7によって通電制御される。
【0033】
本実施の形態では、炊飯中飯器2内で発生する蒸気3を外部に放出し、不用意な昇圧を回避しての炊飯を遂行するのに、特に、図1に示すように複数の放出端末経路21、22、・・を設けている。これにより、飯器2内で発生する蒸気3は複数の放出端末経路21、22、・・を通じ、分担し合って放出処理できる。従って、蒸気3の放出位置の違い、放出蒸気3の水としての回収の有無、放出蒸気3への消臭、香り付けの有無、など、適宜な機能分担ができる。
【0034】
例えば、蒸気放出位置を複数設定し同時放出されるだけでも、乾燥環境への最大限の加湿機能を発揮しながら、各位置での蒸気3の放出量、放出勢力、幼児など特定環境への蒸気放出の影響を複数分の1に減じられ、まわりへの熱的安全が図れる。また、放出位置または、放出位置および向きを異ならせると、いずれかの位置選択によって炊飯場所ごとに異なる特定環境への蒸気放出の影響を防止ないしは回避することができる。
【0035】
また、放出蒸気3の回収の有無の違いの同時分担だけでも、複数放出位置での同時分担の場合に比し、蒸気を水として回収する側では蒸気レスな排気によるまわりへの熱的安全、過剰加湿の回避を図りながら、回収水の総容量を半減させられるうえ、回収水を再蒸気化しての飯器2内のご飯保温域への通気による加湿を図るなど、回収水を有効利用することもできる。回収の有無の個別選択によりそれぞれの機能を異時に分担し合って発揮させられる。
【0036】
また、放出蒸気3への消臭、香り付けの有無の違いの同時分担だけでも、乾燥環境への最大限の加湿機能を発揮しながら、各位置での蒸気3の放出量、放出勢力、妊婦など特定環境への放出蒸気3による臭いの影響を複数分の1に減じられ、まわりへの熱的安全、臭気改善が図れる。また、放出位置または、放出位置および向きを異ならせると、臭気処理なしのいずれかの位置選択によって炊飯場所ごとに異なる特定環境への蒸気放出の臭気影響を回避することができる。臭気処理の有無の個別選択によりそれぞれの機能を異時に分担し合って発揮させられる。
【0037】
ここに、複数の放出端末経路21、22、・・は、少なくとも異なった放出機能を分担し合い、初期設定された放出プログラムまたは操作パネル8での放出機能の選択操作に基づき対応する放出端末経路21、22、・・を機能させるようにすることができる。これにより、異なった放出機能を分担し合う複数の放出端末経路21、22、・・を放出プログラムまたは放出機能の選択に基づき同時または異時に適宜機能させての炊飯ができる。
【0038】
これを、図1に示す例では、放出端末経路21、22が蒸気3を放出するのに機能1、機能2をそれぞれ発揮するものとして代表的に示している。機能1、2の数およびその具体的処理機能の内容については種々に設定できる。また、機能1、2は外部への排気に伴いその処理機能を発揮するものである場合、少なくとも、器体蓋5や器体1の外面に臨む排気口構造部21a、22aをなせばよく、丸洗いなどのメンテナンスのためには外部から着脱できるのが好適である。
【0039】
また、機能1、2が、蒸気の水としての回収機能を発揮するものである場合、そのための復水部および復水後の水を回収するタンクは回収水の廃棄処理のために器体蓋5や器体1の外部から着脱できるか、器体蓋5や器体1の外部に着脱できるように設けられるのが好適である。復水器もその構造によっては洗浄などのメンテナンスのために器体蓋5や器体1の外部から着脱できるか、器体蓋5や器体1の外部に着脱できるように設けられるのが好適である。
【0040】
複数の放出端末経路21、22、・・の選択的な同時、異時の分担機能のためには、蒸気放出路11からそれら放出端末経路21、22、・・を機能1、機能2、・・に向け分岐させる分岐機構部23に、放出端末経路21、22、・・を蒸気放出路11に同時に、また個別に切り替える切り替え機能を付与し、マイクロコンピュータ7により初期設定された放出プログラムまたは操作パネル8での選択操作に従って自動的に切り替え操作できるようにすればよい。
【0041】
図2に示す例では、放出端末経路21、22の機能1を横向き排気、機能2を上向き排気としたもので、いずれも、炊飯中に生じる蒸気をそのまま外部に放出するが、例えば、炊飯位置を壁際や物の際とし、横向き排気の放出方向を際の壁や物に対向させれば、幼児などの特定環境が横向き排気される放出蒸気に触れて、熱い思いをしたり火傷をしたりするのを防止しやすい。従って、機能1を単独に選択、実行すれば熱的安全を十分に図れる。
【0042】
また、上向き排気の方向を厨房の換気扇などによる上向きなどの換気気流域に向け、排気蒸気3を及ばせれば、速やかに屋外などに排出されるので、炊飯環境を過剰に加湿したり、臭気的に影響したりするのを防止しやすくなる。従って、上向き放出の機能2を単独に選択、実行すれば放出蒸気3による過剰加湿、臭気的影響を十分に防止できる。なお、他の構成および奏する作用は図1に示す場合と特に変わるところはない。
【0043】
図3に示す例では、放出端末経路21、22の機能1を香り付け排気口21b、機能2を臭気処理なしの通常排気口22bとしたもので、排気口21bの排気口22bに対する分担率に応じ炊飯環境への放出蒸気による臭気の影響を防止し、また、香り付けによっては特に炊飯環境の芳香性を高められる。逆に、排気口22bの排気口21bに対する分担率に応じ、香り付け機能のための香り付け剤の消耗を抑えられる。
【0044】
これには、同時分担よりも、異時分担が好適であり、異時分担でも、排気口21b単一の選択、実行よりも、炊飯中に生じる蒸気が炊飯環境に臭気的影響を及ぼす間だけ、排気口21bを選択するのが好適である。
【0045】
排気口21b、22bはいずれも、排気通路の途中に排気弁口21c、22cを有し、これら排気弁口21c、22cにはそれぞれ自重でこれらを閉じる弁体21d、22dを設けてある。これにより、排気口21b、22bに排気される蒸気3は、弁体21d、22dの自重に打ち勝って排気弁口21c、22cを押し開くことで排気されることになり、弁体21d、22dの自重による排気抵抗を受ける分だけ飯器2内の圧力が上昇する。つまり、弁体21d、22dの自重に見合って炊飯中の飯器2内の圧力、炊飯域圧力が調整される。
【0046】
弁体21dは、セラミックなどの多孔質材料からなり、香り付けのための香り成分を浸透させて、これが排気される蒸気3に随伴し炊飯環境に発散されるようにしている。しかし、香り付けは、弁体21dとは別に、蒸気3の排気通路に香り付け剤を配置して、排出される蒸気3との接触により香り付けするようにもできる。
【0047】
いずれにしても、排気口21b、22bは、器体蓋5などにシール部材24を介するなどして着脱できるように密嵌合し、放出端末経路21、22に接続され、器体蓋5などからの取り外しと、キャップ21e、22eのねじやヘリコイド嵌合を利用した取り外しによる内部開放にて、丸洗いや弁体21d、22d、香り付け剤の交換といったメンテナンスができるようにしている。他の構成および奏する作用は図1の例の場合と特に変わるところはない。
【0048】
図4に示す例は、放出端末経路21、22の機能1を復水器25により蒸気3から水3aを回収する水回収部26とし、機能2を図3を参照して記述した臭気処理なしの通常排気口22bとしたもので、排気口22bの水回収部26に対する分担率に応じ、水回収部26での復水負荷、回収水容量負荷を軽減し、また、水回収によっては特に排出蒸気3による炊飯環境への影響を軽減することができる。逆に、水回収部26の排気口22bに対する分担率に応じ、排出蒸気の炊飯環境への過剰加湿や臭気的な影響を抑えられる。
【0049】
これには、同時分担よりも、異時分担が好適であり、異時分担でも、水回収部26単一の選択、実行が好適であるが、水回収部26での復水負荷、回収水容量負荷を軽減するには、設計的な所定量、限界量に達した時点で、排気口22bの選択、実行に切り替えるのが好適である。所定量、限界量への到達時点は、定量炊飯、炊飯量と炊飯時間の関係などの相関要素から判定はできる。しかし、特許文献4が開示する技術を始めとする各種の計測技術を利用して判定し、図1の例に示すマイクロコンピュータ7などによって自動的に切り替えるのが好適である。
【0050】
図5に放出端末経路21、22の機能1、機能2としての水回収部26と排気口22bとの選択、切り替え機能を有した分岐機構部23の具体例を示している。分岐機構部23は、放出端末経路21、22の少なくとも分岐域をシリコンゴムなどよりなる可撓チューブ21f、22fにて形成し、これら可撓チューブ21f、22fをそれらに対応するソレノイド機構23a、23bを図1に示すマイクロコンピュータ7などによって電磁操作し、それらのアクチュエータ23a1、23b1により押圧して閉塞し、または押圧を解いて開き、水回収部26と排気口22bとを同時に、または異時に選択できるようにしている。
【0051】
水回収部26は、例えば図6に示すように、ペルチェ素子(例えばアレイ)27とこのペルチェ素子27の吸熱側に熱結合されたヒートシンク28とからなる復水器25を採用しており、ヒートシンク28内に形成した図7に示すような水路29に蒸気3を通すことにより、ペルチェ素子27との熱交換を図って冷却し、水3aとして図示しない回収タンクなどに排出し回収されるようにしている。
【0052】
図8には、前記とは別の切り替え方式を採用した分岐機構部23を示している。図8(a)に示す例では、蒸気放出路11から分岐し機能1、機能2に向かう放出端末経路21、22の途中に、弁口31a、32aと、これらの弁口31a、32aを求心性の傾斜ガイド31b、32bの案内によって弁口31a、32aを自重でのバランスによって閉じる習性を持った弁体31c、32cとからなる開閉弁31、32を設け、それら開閉弁31、32をそれらに対応するソレノイド機構33、34を図1に示すマイクロコンピュータ7などによって電磁操作し、それらのアクチュエータ33a、34aにより弁体31c、32cを側方からダイヤフラム壁33b、34bを介し押圧して閉じ位置から押し開き、または押圧を解いて閉じ位置に復帰させ、水回収部26と排気口22bとを同時に、または異時に選択できるようにしている。
【0053】
図8(b)に示す例は、弁体31c、32cの求心的な閉じ習性が、弁口31a、32aへの自重による落ち込み域に保持するカバー31dを設けることで付与し、ソレノイド機構33、34はそのカバー31dによる弁口31a、32aの落ち込み域内で押し開き、押し開き解除によって弁体31c、32cが弁口31a、32aに自重で落ち込み自閉するようにした点で、図8(a)に示す例と異なり、他は共通している。
【0054】
図9に示す例は、図4に示すような水回収部26などで回収される蒸気3からの復水3aを加熱タンク41により気化させ、飯器2の底部などに設けた通気部42を通じ、飯器2内に通気できるようにしている。この通気は、主として保温中に行うと、保温によるご飯の渇きやそれによる劣化を加湿により防止できる。しかし、これに限られることはない。保温中の加湿には過剰加湿を防止するのが好適で、加熱タンク41には水3aを滴下しながらヒータ43によって瞬間的に気化させ、そのときの気化圧を利用するなどして通気部42を通じ飯器2内に送り込むのが好適である。
【0055】
通気部42は、加熱タンク41から飯器2内に貫通する通気路42aの途中に水、液体を通さず気体だけを通す半透膜、多孔質膜44や図示しない微細な通気孔を設ければよく、本例では多孔質膜44の飯器2内への露出側をねじやヘリコイド嵌合などによる着脱できるようにしたキャップ45で覆い、多孔質膜44よりも低い側方に開いた通気口45aから飯器2内に通気するようにしてあり、飯器2内のおねばが多孔質膜44に及びにくくしている。また、通気路42aの加熱タンク41の側にはスリット42bを形成してある。これにより、通気路42aの多孔質膜44から加熱タンク41側に結露水が溜まっても、スリット42bによる通気を伴いスリット42bを通じ加熱タンク41内に伝い落ち直ちに気化され飯器2内に通気されるようにしている。
【符号の説明】
【0056】
1 器体
2 飯器
3 蒸気
3a 水
4 加熱コイル
5 器体蓋
6 内蓋
7 マイクロコンピュータ
8 操作パネル
9 温度センサ
11 蒸気放出路
12 シール材
13 通気孔
14 シール部材
15 放熱板
16 おねば溜め室
17 蓋ヒータ
21、22 放出端末経路
21a、22a 排気口構造部
21b、22b 排気口
21c、22c 排気弁口
21d、22d 弁体
21e、22e キャップ
21f、22f 可撓チューブ
23 分岐機構部
23a、23b ソレノイド機構
23a1、23b1 アクチュエータ
24 シール部材
25 復水器
26 水回収部
27 ペルチェ素子
28 ヒートシンク
29 水路
31、32 開閉弁
31a、32a 弁口
31b、32b 傾斜ガイド
31c、32c 弁体
31d カバー
33、34 ソレノイド機構
33a、34a アクチュエータ
33b、34b ダイヤフラム壁
41 加熱タンク
42 通気部
42a 通気路
42b スリット
43 ヒータ
44 多孔質膜
45 キャップ
45a 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い炊飯する電気炊飯器において、飯器内で発生する蒸気を外部に放出するのに複数の放出端末経路を設けたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
複数の放出端末経路は、少なくとも異なった放出機能を分担し合い、放出プログラムまたは放出機能の選択に基づき対応する放出端末経路を機能させる請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
放出端末経路の1つは、放出する蒸気を復水器により復水させて水として回収する復水回収機能を有した請求項1、2のいずれか1項に記載の電気炊飯器。
【請求項4】
放出端末経路の1つは、放出する蒸気に消臭、香り付けをする臭気処理機能を有した請求項1、2のいずれか1項に記載の電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−165927(P2012−165927A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30269(P2011−30269)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】