説明

電気給湯機

【課題】上部ヒータとヒートポンプの加熱運転を条件に応じて切り替えることにより、暖房用熱源を効率よく確保することができる電気給湯機を提供すること。
【解決手段】ヒートポンプ4で加熱する貯湯タンク1の水が予め定めた所定の温度を越えた時点で、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を切り替えるとともに、外気温度が予め定めた所定の温度に低下した時点で、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を切り替える運転切替回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気給湯機に関し、特に、上部ヒータとヒートポンプの加熱運転を条件に応じて切り替えることにより、暖房用熱源を効率よく確保することができる電気給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気給湯機では、水道管から供給される水道水を加熱して貯湯タンク内に貯留し、この貯留した温水を水道水と混合することにより設定温度に調節し、この温度調節した温水を配管を介して浴槽や蛇口に供給するようにしている。
また、この電気給湯機では、貯湯タンク内に、上部の比較的高温となる湯を用いて加熱するようにした熱交換器を配設し、熱交換器内の熱媒を循環させて貯湯タンク内の熱エネルギーを取り出し、暖房等に利用するようにしている。
【0003】
このような電気給湯機では、貯湯タンクの水を加熱するヒートポンプの駆動用電源として安価な深夜電力を用い、深夜のうちに貯湯タンク内に貯湯する一方、前記熱交換器等の作用によって貯湯タンク上部の温度が下がったときは、上部ヒータによって貯湯タンク上部の湯を加熱するようにしている。
この場合、上部ヒータの加熱用電源はヒートポンプと同じであるが、使用時間が深夜ではなくリアルタイムとなるため、昼間の割高な電力を使用してしまうので、結果として電力量料金が高くなるという問題を有している。
【0004】
そこで、本件出願人は、深夜電力時間帯は可能な限り深夜電力を利用するヒートポンプのみに通電するとともに、上部ヒータに融雪用電源等の安価な条件付き商用電源を使用することにより、電力量料金を削減するようにした電気給湯機を提案している。
【0005】
ところで、このような電気給湯機においても、融雪用電源を使用する上部ヒータは単価は安いがCOP(Coefficient Of Performance)=1で効率が悪いため、上部ヒータをなるべく使用せずにヒートポンプの運転で暖房熱源を取りたい。
しかしながら、ヒートポンプで沸かした湯(90℃貯湯)を熱交換器を介して暖房に使うと、タンク内全体の温度が低下し、それを補うためにヒートポンプ運転をするとヒートポンプは比較的高温の40℃〜50℃の水を沸き上げなければならなくなる。
ヒートポンプは、通常は給湯に湯を使うとタンク下部に水が入り、その低温の水を沸き上げるためCOPは3〜4と高く運転できるが、給湯をせずに暖房ばかり使ってタンク全体の温度が40℃〜50℃に低下してしまうと、ヒートポンプはこの低下した比較的高温の水を沸き上げることになるため、熱交換の効率が悪くなってCOPが大幅に低下するとともに、ヒートポンプが過負荷運転状態となり寿命が短くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の電気給湯機が有する問題点に鑑み、上部ヒータとヒートポンプの加熱運転を条件に応じて切り替えることにより、暖房用熱源を効率よく確保することができる電気給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電気給湯機は、貯湯タンクと、該貯湯タンクに設けられた給水管と、貯湯タンクの上部に設けられた給湯管と、貯湯タンクの水を加熱するヒ
ートポンプと、貯湯タンク内の上部に設けられた上部ヒータと、貯湯タンクの温水との間で熱交換を行う暖房用熱交換器とを備えた電気給湯機において、ヒートポンプで加熱する貯湯タンクの水が予め定めた所定の温度(例えば、40℃)を越えた時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替える運転切替回路を備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、運転切替回路が、外気温度が予め定めた所定の温度(例えば、−10℃)に低下した時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替えることもできる。
【0009】
また、前記上部ヒータの加熱用電源に、所定の時刻に通電を遮断するように予め設定された商用電源(本明細書において、「条件付き商用電源」という。)を用いるとともに、上部ヒータの制御用電源並びにヒートポンプの駆動用電源及び制御用電源に通常の商用電源を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気給湯機によれば、貯湯タンクと、該貯湯タンクに設けられた給水管と、貯湯タンクの上部に設けられた給湯管と、貯湯タンクの水を加熱するヒートポンプと、貯湯タンク内の上部に設けられた上部ヒータと、貯湯タンクの温水との間で熱交換を行う暖房用熱交換器とを備えた電気給湯機において、ヒートポンプで加熱する貯湯タンクの水が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、40℃)を越えた時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替える運転切替回路を備えることから、暖房運転でタンク全体の温度が40℃〜50℃になり、ヒートポンプのCOPが低下した場合でも、加熱運転を自動的に上部ヒータに切り替えることができ、これにより、貯湯タンク内に暖房用熱源を効率よく確保することができるとともに、ヒートポンプの過負荷運転も防止できるため、その寿命・信頼性において優れたものとなる。
【0011】
この場合、運転切替回路が、外気温度が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、−10℃)に低下した時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替えることにより、外気温度の低下によりヒートポンプのCOPが1より低下する状態になれば、加熱運転を自動的に上部ヒータに切り替えることができ、これにより、貯湯タンク内に暖房用熱源を効率よく確保することができる。
【0012】
また、前記上部ヒータの加熱用電源に、所定の時刻に通電を遮断するように予め設定された商用電源を用いるとともに、上部ヒータの制御用電源並びにヒートポンプの駆動用電源及び制御用電源に通常の商用電源を用いることにより、例えば、融雪用電源等の安価な電源を上部ヒータの加熱用電源として用いることができ、これにより、上部ヒータの電力量料金を削減して、熱交換器を介した暖房等を安価に行うことができ、低ランニングコストで電気給湯機の運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電気給湯機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の電気給湯機の一実施例を示す。
この電気給湯機は、所要の容量を有する円筒状の貯湯タンク1と、該貯湯タンク1の下部に設けられた給水管2と、貯湯タンク1の上部に設けられた給湯管3と、貯湯タンク1の水を加熱するヒートポンプ4と、貯湯タンク1内の上部に設けられた上部ヒータ5と、該上部ヒータ5の近傍に設けられ貯湯タンク1の温水との間で熱交換を行って室内暖房用の放熱器7を加温するための暖房用熱交換器6とを備えている。
なお、暖房用熱交換器6は、貯湯タンク1の外部に配備してもよく、これにより、暖房
用熱交換器6の配管が損傷した場合でも、暖房用熱交換器6の熱媒の貯湯タンク1内への漏出を完全に防止することができる。
【0015】
そして、この電気給湯機は、ヒートポンプ4で加熱する貯湯タンク1の水が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、40℃)を越えた時点で、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を切り替えるとともに、外気温度(ヒートポンプユニットの設置場所の温度)が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、−10℃)に低下した時点で、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を切り替える運転切替回路(図示省略)を備えている。
上部ヒータ5とヒートポンプ4の切替は、貯湯タンク下部の温度、ヒートポンプ4の吸込温度又は外気温度と色々の条件を選択することができる。
外気温度に関しては、外気温度の低下によりCOP=1より低下する状態になれば、ヒートポンプ4を運転するメリットがない。
よって、図2に示すように、その分岐温度t1まではヒートポンプ運転を優先し、それ以下では上部ヒータ5による運転に切り替えることにより、低ランニングコストの最適条件を生み出すことが可能となる。
なお、ヒートポンプ4でのみ沸き上げするシステムではなく上部ヒータ5を組み合わせたメリットは、上部ヒータ5の容量調節が容易であることと、上部ヒータ5がヒートポンプ4に比べて抵抗負荷のみであるため、故障する確率が低く信頼性に優れることにもある。
【0016】
一方、この電気給湯機は、上部ヒータ5の加熱用電源に、所定の時刻に通電を遮断するように予め設定された商用電源を用いるとともに、上部ヒータ5の制御機器を稼動するための制御用電源並びにヒートポンプ4の駆動用電源及びヒートポンプ4の制御機器を稼動するための制御用電源に通常の商用電源を用いるようにしている。
なお、この電気給湯機は、上記の暖房用室内機の放熱器7の加温の用途のほか、風呂、蛇口への給湯等、従来、電気給湯機が用いられている用途と併用されるものである。
また、この電気給湯機は、貯湯タンク1の温水との間で熱交換を行うことにより風呂の追い焚きを行う追い焚き用熱交換器8を、暖房用熱交換器6に隣接するように設置している。
【0017】
ところで、上部ヒータ5の加熱用電源として使用する安価な条件付き商用電源としては、例えば、北海道などにおける融雪用電源等がある。
この融雪用電源としては、例えば、16時〜21時までのピーク時間内で、遮断時間の合計が2時間となるようにタイムスイッチによって断続的に通電を遮断する北海道電力の「ホットタイム22」等のシステムがある。
このシステムでは、ほぼ1日中電力を使用可能とするが、上記のように合計時間で2時間通電を遮断するとともに、各家庭において通電の遮断時刻をずらすことにより、電力消費のピークを平均化し、かつ電力量料金の低減を図っている。
【0018】
次に、本実施例の電気給湯機の使用方法の一例を説明する。
ヒートポンプ4の制御機器と上部ヒータ5の制御機器は、貯湯タンク1内の温度を検知し、予め設定した温度以下になったときに通電を開始する。
融雪用電源等の条件付き商用電源と通常の商用電源(深夜料金)とでは料金単価に差があるため、できるだけ夜間は融雪用電源等の条件付き商用電源を使用せずに深夜料金の商用電源だけを使用することが好ましい。
ただ、夜間に融雪用電源等の条件付き商用電源を停止してしまうと、暖房能力に不足が生じる場合も考えられるので、タンク上部温度が一定温度を保つように条件付き商用電源を使用する上部ヒータ5によってタンク上部の水を加熱する。
タンク下部温度は夕刻を過ぎた頃から急激に低下し、深夜電力を利用できる時間帯にヒ
ートポンプ4を安い深夜料金の商用電源で通電する。
【0019】
午前7時を過ぎて深夜電力が使えなくなった後、給湯機の使用などによって再びタンク内温度が低下し始め、タンク上部温度が所定値に達したとき、制御機器がそれを感知し、融雪用電源等の条件付き商用電源から上部ヒータ5に通電を開始する。
このように、深夜電力を利用できる時間帯においては、最初は融雪用電源等の条件付き商用電源と深夜料金の商用電源を同時に利用することによって上部ヒータ5とヒートポンプ4に通電し、タンク内温度全体を沸き上げる。
【0020】
一方、このように沸き上げた湯を暖房用熱交換器6を介して暖房に使うと、タンク内全体の温度が低下し、それを補うためにヒートポンプ運転をするとヒートポンプ4は比較的高温の40℃〜50℃の水を沸き上げなければならなくなる。
ヒートポンプ4は、通常は給湯に湯を使うとタンク下部に水が入り、その低温の水を沸き上げるためCOPは3〜4と高く運転できる。
しかし、給湯を使わずに暖房ばかり使ってタンク全体の温度が40℃〜50℃に低下してしまうと、ヒートポンプ4はこの低下した比較的高温の水を沸き上げることになるため、熱交換の効率が悪くなってCOPが大幅に低下する。
【0021】
そこで、ヒートポンプ4で加熱する貯湯タンク1の水が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、40℃)を越えた時点で、運転切替回路により、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を自動的に切り替える。
これにより、暖房運転でタンク全体の温度が40℃〜50℃になり、ヒートポンプ4のCOPが低下した場合でも、加熱運転を自動的に上部ヒータ5に切り替えることにより、貯湯タンク内に暖房用熱源を効率よく確保することができるとともに、ヒートポンプの過負荷運転も防止でき、その寿命延命にも効果がある。
【0022】
また、運転切替回路は、外気温度が予め定めた所定の温度(特に限定されるものではないが、例えば、−10℃)に低下した時点でも、ヒートポンプ4から上部ヒータ5に加熱運転を切り替えることができる。
外気温度の低下によりヒートポンプ4のCOPが1より低下する状態になれば、加熱運転を自動的に上部ヒータ5に切り替える。これにより、貯湯タンク内に暖房用熱源を効率よく確保することができる。
【0023】
以上、本発明の電気給湯機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の電気給湯機は、上部ヒータとヒートポンプの加熱運転を、ヒートポンプのCOP条件に応じて切り替えることにより、暖房用熱源を効率よく確保することから、新設の電気給湯機に用いることができるほか、例えば、既存の電気給湯機に対しても容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の電気給湯機の一実施例を示す回路図である。
【図2】ヒートポンプと上部ヒータの外気温度による運転切替を示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 給湯管
4 ヒートポンプ
5 上部ヒータ
6 暖房用熱交換器
7 暖房用放熱器
8 追い焚き用熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、該貯湯タンクに設けられた給水管と、貯湯タンクの上部に設けられた給湯管と、貯湯タンクの水を加熱するヒートポンプと、貯湯タンク内の上部に設けられた上部ヒータと、貯湯タンクの温水との間で熱交換を行う暖房用熱交換器とを備えた電気給湯機において、ヒートポンプで加熱する貯湯タンクの水が予め定めた所定の温度を越えた時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替える運転切替回路を備えたことを特徴とする電気給湯機。
【請求項2】
運転切替回路が、外気温度が予め定めた所定の温度に低下した時点で、ヒートポンプから上部ヒータに加熱運転を切り替えることを特徴とする請求項1記載の電気給湯機。
【請求項3】
前記上部ヒータの加熱用電源に、所定の時刻に通電を遮断するように予め設定された商用電源を用いるとともに、上部ヒータの制御用電源並びにヒートポンプの駆動用電源及び制御用電源に通常の商用電源を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気給湯機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−241114(P2008−241114A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81669(P2007−81669)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】