説明

電気自動車の前部車体構造

【課題】前方からの衝撃荷重の入力時にも、電装ユニットの固定箇所の離反を防止することのできる電気自動車の前部車体構造を提供する。
【解決手段】電装ユニット11を保持するユニットフレーム12は、電装ユニットの側部に固定される側部フレーム部12a,12bと、各側部フレーム部から下方に延出する前部側支持脚部12e,12fと、電装ユニットの後方側で、かつ電装ユニットよりも高い位置で車幅方向に延出する後部フレーム部12cと、後部フレーム部の両端部から下方に延出する後部側支持脚部12g,12hと、各後部側支持脚部上で前記側部フレーム部が分岐接続される分岐部12mと、を備えた構造とする。後部フレーム部の中央領域に、車両後方側に突出して、前方からの衝撃荷重の入力時に、突出端側がダッシュボード21に当接する屈曲誘起ブラケット20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の電装部品が車室前方のモータルーム内に配置される電気自動車の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のモータルームでは、車幅方向の両側において、車体前後方向に延出する一対のサイドフレームが設けられ、DC−DCコンバータやインバータ等の電装部品や、車両駆動のための駆動モータが専用のフレーム部材を介して一対のサイドフレームに架設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の前部車体構造は、DC−DCコンバータやインバータを搭載する部品搭載フレームが設けられ、その部品搭載フレームが、前端側と後端側において、車幅方向左右のサイドフレームに結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−20627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スペース効率向上や部品点数削減を考えると、モータルーム内にDC−DCコンバータやインバータ等の複数の電装部品を搭載するに際して、これらの電装部品を一つのユニットケース内に集約して収納し、こうして構成された電装ユニットを、専用フレームを介して左右のサイドフレームに架設した方が良い。
この場合、引用文献1の技術をそのまま適用して、電装ユニットを、部品搭載フレームであるユニットフレームを介して左右のサイドフレームに架設することが考えられる。
【0006】
しかし、引用文献1の技術をそのまま適用した場合には、大型で重量の重い電装ユニットがユニットフレームにボルト締結等によって数箇所で固定されることになるため、前方からの衝撃荷重の入力によってサイドフレームが変形したときに、ユニットフレームと電装ユニットの固定箇所に離反方向の過大な荷重が作用することが懸念される。
【0007】
特に、両側のサイドフレームが車室の前部下方側から上方に湾曲して車体前方に延出する形状である場合には、前方から衝撃荷重が入力されたときに、サイドフレームの湾曲部分よりも前方側が上方に持ち上がり、ユニットフレームの前部側がサイドフレームの前縁部とともに上方側に持ち上がる一方で、ユニットフレームの後部側がサイドフレームの付根部側とともに下方位置に取り残されることになる。このため、このときユニットフレームの後部側をサイドフレームの付根部側に引っ張る力が働き、この力が電装ユニットとユニットフレームの固定箇所に離反方向の過大な荷重として作用する可能性が考えられる。
【0008】
そこでこの発明は、前方からの衝撃荷重の入力時にも、電装ユニットの固定箇所の離反を防止することのできる電気自動車の前部車体構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電気自動車の前部車体構造では、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
請求項1に係る発明は、複数の電装部品をユニットケース(例えば、実施形態のユニットケース10)内に収納して成る電装ユニット(例えば、実施形態の電装ユニット11)が車室前方のモータルーム(例えば、実施形態のモータルーム4)内に配置される電気自動車の前部車体構造であって、前記モータルームの車幅方向両側には、前記車室の前部下方側から上方に上がって車体前方に延出する一対のサイドフレーム(例えば、実施形態のサイドフレーム5)が設けられ、前記一対のサイドフレームの間には、前記電装ユニットを保持するユニットフレーム(例えば、実施形態のユニットフレーム12)が設けられ、前記ユニットフレームは、前記電装ユニットの車幅方向両側部で車体前後方向に延出して前記電装ユニットの対応する側部に固定される一対の側部フレーム部(例えば、実施形態の側部フレーム部12a,12b)と、前記各側部フレーム部の前端部から下方に延出して、対応するサイドフレームの前記上方に上がった部分よりも前方側に固定される前部側支持脚部(例えば、実施形態の前部側支持脚部12e,12f)と、前記電装ユニットの後方側で、かつ少なくとも中央領域が当該電装ユニットの後縁部上面よりも高い位置となるように車幅方向に延出する後部フレーム部(例えば、実施形態の後部フレーム部12c)と、前記後部フレーム部の両端部からそれぞれ下方に延出して、対応するサイドフレームの付根部側に固定される後部側支持脚部(例えば、実施形態の後部側支持脚部12g,12h)と、前記各後部側支持脚部の上下方向の中間領域に、対応する前記側部フレーム部の後端部が結合された分岐部(例えば、実施形態の分岐部12m)と、を備え、前記後部フレーム部の中央領域には、車両後方側に突出して、前方からの衝撃荷重の入力時に、突出端側が車室側の壁部材(例えば、実施形態のダッシュボード21)に当接する屈曲誘起ブラケット(例えば、実施形態の屈曲誘起ブラケット20)が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、車両の前方から衝撃荷重が入力され、サイドフレームの上方に上がった部分よりも前方側が後方側に潰れ変形しつつ上方に持ち上がり、電装ユニットとユニットフレームが車両後方側に変位すると、屈曲誘起ブラケットの突出端側が車室側の壁部材に当接する。このとき、屈曲誘起ブラケットに入力される反力が後部フレーム部の中央領域を車両前方側に屈曲させ、こうして後部フレーム部にできた屈曲部が電装ユニットの後縁部上面に当接するようになる。この結果、サイドフレームの前縁部側が持ち上がる一方で付根部側が取り残されることにより、ユニットフレームの後部側支持脚部の下端が相対的に下方に引き込まれても、後部フレーム部が前記屈曲部で電装ユニットの上面に係止されることにより、後部側支持脚部上の側部フレーム部の分岐部が下方に引き込まるのを抑制される。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る電気自動車の前部車体構造において、前記ユニットフレームは、前記電装ユニットの前方側で車幅方向に延出して両端部が対応する前部側支持脚部に結合される前部フレーム部(例えば、実施形態の前部フレーム部12d)をさらに備え、前記電装ユニットは、前部側で前記前部フレーム部に固定されるとともに、後部側では前記後部フレーム部に対して非固定とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、前方からの衝撃荷重の入力時に、ユニットフレームの後部側支持脚部の下端が相対的に下方に引き込まれても、屈曲誘起ブラケットが車室側の壁部材に当接して後部フレーム部上にできる屈曲部が電装ユニットの後縁部上面に係止されるため、後部側支持脚部上の側部フレーム部の分岐部が下方に引き込まれるのを規制し、電装ユニットの側部と側部フレーム部との固定箇所が離反するのを確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、ユニットフレームが側部フレーム部と前部フレーム部で電装ユニットに固定される一方で、後部フレーム部では電装ユニットに対して非固定とされているため、前方からの衝撃荷重の入力時に、屈曲誘起ブラケットが車室側の壁部材に当接したときに、後部フレーム部を前方側により容易に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態の電気自動車の図2のA−A断面に対応する模式的な断面図である。
【図2】この発明の一実施形態の電気自動車のモータルームの模式的な平面図である。
【図3】この発明の一実施形態の電気自動車のモータルームを前部斜め上方側から見た骨格部の模式的な斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態の電気自動車の電装ユニットをユニットフレームとともに車両左側の斜め上方側から見た斜視図である。
【図5】この発明の一実施形態の電気自動車の電装ユニットをユニットフレームとともに車両右側の斜め上方側から見た斜視図である。
【図6】この発明の一実施形態の電気自動車の、衝撃荷重の入力時における図2のA−A断面に対応する模式的な断面図である。
【図7】この発明の一実施形態の電気自動車の、衝撃荷重の入力時におけるモータルームの一部の模式的な平面図である。
【図8】この発明の一実施形態の電気自動車の衝撃荷重の入力前の模式的な側面図(A)と、衝撃荷重の入力後の模式的な側面図(B)を併せて記載した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で用いる図面において、矢印FRは車両の前方を指し、矢印UPは車両の上方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、前,後や上,下は、車両に対しての前,後や上,下を意味するものとする。
図1は、この実施形態に係る電気自動車1の車体前部側の縦断面であり、図2は、電気自動車1の車体前部の平面図である。
この電気自動車1は、車室2の前方に駆動モータ3を収容するモータルーム4が設けられている。モータルーム4には、駆動モータ3の他に図示しない前輪側のサスペンション部品や電装部品、補機類等が収容されている。この実施形態の駆動モータ3は、モータ本体部と減速機構が一体に組み付けられてモータユニットとして構成されている。
【0016】
モータルーム4の車幅方向両側には、車室2の前部下方側から上方に湾曲して車体前方に延出する一対のサイドフレーム5,5が設けられ、この一対のサイドフレーム5,5の間に駆動モータ3が配置されている。両サイドフレーム5,5の後端部は、図示しないフロアフレームやサイドシル等の車体の前後方向中央のフレーム部材に結合されている。両サイドフレーム5,5の車室2に近接する付根部側(湾曲部分5aの近傍)には、後部側横梁部材であるサブフレーム6が車幅方向に沿って架設され、両サイドフレーム5,5の湾曲部分5aよりも前方側には、前部側横梁部材であるフロントビーム7が車幅方向に沿って架設されている。このように両サイドフレーム5,5に架設されたサブフレーム6とフロントビーム7は、車両の上下方向について、フロントビーム7側がサブフレーム6側よりも高い位置に配置されている。
【0017】
サブフレーム6は、左右両側の前端部と後端部が対応するサイドフレーム5,5の下面の前後に離間した2位置に結合され、その左右両側の前後の結合部間に図示しない前輪のロアアームが揺動可能に支持されるようになっている。また、フロントビーム7は矩形断面の中空フレームによって構成され、両端部が対応するサイドフレーム5の下縁部に結合されている。
【0018】
前述した駆動モータ3は、フロントビーム7とサブフレーム6の間に配置され、前端部側が防振ゴムを内蔵するマウント部材8を介してフロントビーム7の下面に連結されるとともに、後端部側が同様のマウント部材9を介してサブフレーム6の上面に連結されている。したがって、駆動モータ3は、マウント部材8,9を介してフロントビーム7とサブフレーム6とに支持されている。
なお、こうしてフロントビーム7とサブフレーム6に支持された駆動モータ3は、車両前方視で、上端側領域がフロントビーム7と上下方向でラップし、下端側領域がサブフレーム6と上下方向でラップするように設定されている。
【0019】
また、モータルーム4内の駆動モータ3のほぼ直上位置には、DC−DCコンバータやインバータ機能を持つパワーモジュール、平滑コンデンサ等の複数の高圧電装部品をユニットケース10内に収納した電装ユニット11が設置されている。電装ユニット11(ユニットケース10)は、車幅方向に長い横長の略直方体状に形成され、その電装ユニット11を保持するユニットフレーム12を介して左右両側のサイドフレーム5,5に固定されている。ユニットフレーム12は、この実施形態の場合、複数の金属製パイプを結合して構成されている。
【0020】
図3は、ユニットフレーム12とサイドフレーム5との結合状態を示す図であり、図5,図6は、電装ユニット11をユニットフレーム12とともに示す図である。
ユニットフレーム12は、電装ユニット11の車幅方向両側部で車体前後方向に延出する一対の側部フレーム部12a,12bと、電装ユニット11の後部側で車幅方向に延出する後部フレーム部12cと、電装ユニット11の前部側で車幅方向に延出する前部フレーム部12dと、を備えている。両側の側部フレーム部12a,12bの前端部には、下方に屈曲して対応する(車幅方向の左右について同じ側の)サイドフレーム5の湾曲部分5aよりも前部側領域に結合される前部側支持脚部12e,12fが延設され、この各前部側支持脚部12e,12fの上下方向の中間領域に前部フレーム部12dの左右の各端部が結合されている。
【0021】
また、後部フレーム部12cの両端部には、下方に屈曲してそれぞれ対応するサイドフレーム5の湾曲部分5aの近傍領域に結合される後部側支持脚部12g,12hが延設され、この各後部側支持脚部12g,12hの上下方向の中間領域に、対応する側の側部フレーム部12a,12bの後端部が結合されている。この後部側支持脚部12g,12h上の側部フレーム部12a,12bとの結合部を分岐部12mと呼ぶものとする。なお、車両の幅方向の右側に位置される後部側支持脚部12hと側部フレーム12bの結合部は、別体のサブパイプ12kが追加されて上下に二箇所設けられている。したがって、車幅方向右側の分岐部12mは上下に二箇所存在している。
【0022】
ユニットケース10の両側の側面部と前面部にはそれぞれ締結フランジ13が突設され、各締結フランジ13がユニットフレーム12の上部に重合されてボルト締結によって固定されている。具体的には、ユニットケース10の両側部の締結フランジ13は、側部フレーム部12a,12bの上面にボルト締結によって固定され、ユニットケース10の前面部の締結フランジ13は、前部フレーム部12dの上面にボルト締結によって固定されている。なお、図中の符号bは、締結フランジ13を固定するためのボルトである。
なお、後部フレーム部12cは、電装ユニット11のユニットケース10に対して非固定とされている。
【0023】
ところで、後部フレーム部12cは、電装ユニット11のユニットケース10の後方側で、かつ少なくも車幅方向の中央領域がユニットケース10の後縁部の上面よりも高い位置に配置されている。そして、この後部フレーム部12cの中央領域には、車両後方側の斜め上に向かって突出する屈曲誘起ブラケット20が取り付けられている。
【0024】
この屈曲誘起ブラケット20は、後部フレーム部12cの軸方向に離間した2位置から、後部フレーム部12cの軸心と略直交して車両後方側斜め上に向かって突出する一対の側部プレート部20a,20bと、側部プレート部20a,20bの突出端同士を連結する端面プレート部20cと、両側の側部プレート部20a,20bと端面プレート部20とを下端側で連結する補強プレート部20dと、を備えている。屈曲誘起ブラケット20の端面プレート部20dは、車室側の壁部材であるダッシュボード21の前面に設定隙間をもって対向している。
【0025】
図6は、車両の前方側から衝撃荷重が入力されたときのモータルーム4内の変形挙動を示す断面図であり、図7は、車両の前方側から衝撃荷重が入力されたときのユニットフレーム12の変形挙動を示す平面図、図8は、衝撃荷重の入力前の状態(A)と入力後の状態(B)を併せて記載した模式的な側面図である。
これらの図に示すように、屈曲誘起ブラケット20は、車両の前方側から衝撃荷重が入力されてユニットフレーム12が後方に変位したときに、ダッシュボード21の前面に対して端面プレート部20cで当接する。屈曲誘起ブラケット20は、このときダッシュボード21の前面から大きな反力を受け、それによって後部フレーム部12cの中央領域を車両前方側に屈曲変形させる。なお、図中の符号12pは、こうしてできた後部フレーム部12c上の屈曲部である。
また、図面においては省略されているが、ダッシュボード21のうちの、屈曲誘起ブラケット20の当接する領域には強度の高い補強部材が接合されている。
【0026】
次に、車両の前方から衝撃荷重が入力されたときにおけるモータルーム4内の変形挙動について説明する。
この電気自動車1に前方側から衝撃荷重が入力されると、モータルーム4内のサイドフレーム5が前端側から押圧され、それによってサイドフレーム5の前方側領域が後方側に潰れ変形するようになる。このとき、フロントビーム7を介して駆動モータ3の上端側領域に入力される衝撃荷重は、駆動モータ3の下端側領域に当接するサブフレーム6からの反力とともに、駆動モータ3全体を上方側に回転させようとするモーメントとして作用する。そして、この駆動モータ3に作用するモーメントは、サイドフレーム5の湾曲部分5aよりも前方側領域を、サイドフレーム5の付根部側を中心として上方に回動変位させようとする。この結果、サイドフレーム5の湾曲部分5aよりも前方側領域は、図6に示すように、後方側に潰れ変形しつつ上方側に持ち上がる。
【0027】
このとき、ユニットフレーム12を介してサイドフレーム5に固定された電装ユニット11は、サイドフレーム5の変形に伴って上方に持ち上がりつつ車体後方側に変位する。こうして、電装ユニット11とユニットフレーム12が車体後方側に変位すると、図8(B)にも示すように、ユニットフレーム12の後部フレーム部12cに取り付けられた屈曲誘起ブラケット20が端面プレート部20cでダッシュボード21に当接し、さらなる後方変位によって後部フレーム部12cの中央領域に前述のようにして屈曲部12pができ、その屈曲部12pが電装ユニット11(ユニットケース10)の後縁部の上面に当接する。
【0028】
また、サイドフレーム5の湾曲部分5aよりも前方側領域が、前述のようにサイドフレーム5の付根部側を中心として上方側に回動変位するときには、ユニットフレーム12の前部側支持脚部12e,12fがサイドフレーム5の前方側領域とともに上方に持ち上がり、その一方でユニットフレーム12の後部側支持脚部12g,12hがサイドフレーム5の付根部側とともに取り残されることになる。したがって、このときユニットフレーム12の後部側支持脚部12g,12hの下端には、図8(B)中の下向きの白抜き矢印で示すように、下方に引き込もうとする力が相対的に作用する。
【0029】
このとき、ユニットフレーム12の後部フレーム部12cには、屈曲誘起ブラケット20がダッシュボード21に当接することによって前述の屈曲部21pが先にでき、その屈曲部12pが電装ユニット11の後縁部の上面に当接するため、後部側支持脚部12g,12hの上部には、図8(B)中の上向きの白抜き矢印で示すように、上記の引き込み力に抗する上向きの反力が働くことになる。このため、このとき各後部側支持脚部12g,12h上の分岐部12mには大きな引き込み荷重が急激に作用しなくなる。
【0030】
したがって、この実施形態に係る前部車体構造においては、車両前方からの衝撃荷重の入力時に、ユニットフレーム12の後部側支持脚部12g,12h上の分岐部12mに大きな引き込み荷重が急激に作用するのを阻止することができるため、その引き込み荷重が、分岐部12mを通して側部フレーム部12a,12bと電装ユニット11の側部(締結フランジ13)との固定箇所に離間方向の力として作用するのを未然に防止できる。
よって、この前部車体構造を採用した場合には、衝撃荷重の入力時にも電装ユニット11とユニットフレーム12の結合状態を安定的に維持することができる。
【0031】
また、この実施形態の前部車体構造は、ユニットフレーム12の側部フレーム部12a,12bと前部フレーム部12dが電装ユニット11の両側の側面部と前面部にボルト結合される一方で、ユニットフレーム12の後部フレーム部12cが電装ユニット11に対して非固定とされているため、前方からの衝撃荷重の入力時に、屈曲誘起ブラケット20を介して後部フレーム部12cを前方側により容易に変形させることができる、という利点がある。
【0032】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…電気自動車
4…モータルーム
5…サイドフレーム
10…ユニットケース
11…電装ユニット
12…ユニットフレーム
12a,12b…側部フレーム部
12c…後部フレーム部
12d…前部フレーム部
12e,12f…前部側支持脚部
12g,12h…後部側支持脚部
12m…分岐部
20…屈曲誘起ブラケット
21…ダッシュボード(車室側の壁部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電装部品をユニットケース内に収納して成る電装ユニットが車室前方のモータルーム内に配置される電気自動車の前部車体構造であって、
前記モータルームの車幅方向両側には、前記車室の前部下方側から上方に上がって車体前方に延出する一対のサイドフレームが設けられ、
前記一対のサイドフレームの間には、前記電装ユニットを保持するユニットフレームが設けられ、
前記ユニットフレームは、
前記電装ユニットの車幅方向両側部で車体前後方向に延出して前記電装ユニットの対応する側部に固定される一対の側部フレーム部と、
前記各側部フレーム部の前端部から下方に延出して、対応するサイドフレームの前記上方に上がった部分よりも前方側に固定される前部側支持脚部と、
前記電装ユニットの後方側で、かつ少なくとも中央領域が当該電装ユニットの後縁部上面よりも高い位置となるように車幅方向に延出する後部フレーム部と、
前記後部フレーム部の両端部からそれぞれ下方に延出して、対応するサイドフレームの付根部側に固定される後部側支持脚部と、
前記各後部側支持脚部の上下方向の中間領域に、対応する前記側部フレーム部の後端部が結合された分岐部と、を備え、
前記後部フレーム部の中央領域には、車両後方側に突出して、前方からの衝撃荷重の入力時に、突出端側が車室側の壁部材に当接する屈曲誘起ブラケットが設けられていることを特徴とする電気自動車の前部車体構造。
【請求項2】
前記ユニットフレームは、前記電装ユニットの前方側で車幅方向に延出して両端部が対応する前部側支持脚部に結合される前部フレーム部をさらに備え、
前記電装ユニットは、前部側で前記前部フレーム部に固定されるとともに、後部側では前記後部フレーム部に対して非固定とされていることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103590(P2013−103590A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248171(P2011−248171)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】