説明

電気製錬炉

【課題】ZnO含有量が多い酸化物からなる原料を溶融還元する場合であっても、火炎噴き出し現象の発生を極小化して安全に且つ効率よく所望の溶湯を得ることができる酸化物原料溶融・還元用の電気製錬炉を提供する。
【解決手段】炉本体12と、炉蓋14と、下流端が前記炉蓋14に開設された原料投入口14aに嵌挿された投原管16と、炉蓋14を上下方向に貫通して配置された電極18と、投原管16の中間部に設けられたロストルダンパー42とを備えた電気製錬炉10であって、炉蓋14に開設された排ガス出口14cには、排ガス出口14cから炉本体12内へ向けて打撃シャフト48が進退し、炉本体12内に形成された酸化物原料の棚tを打撃する棚落とし装置20が設けられると共に、ロストルダンパー42には、ロストルダンパー42の開度を遠隔操作するロストルダンパー遠隔操作装置22が取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼副生物の溶融、還元に使用される電気製錬炉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源などの観点から、製鋼工程で発生する製鋼ダスト、焼鈍工程で発生するスケール、及び酸洗工程で発生する廃酸スラッジ等を原料(酸化物原料)として用い、これをブリケット状に成形した材料(以下、単に「ブリケット」とも云う。)を電気製錬炉で溶融還元してNi,Cr,Fe,Mn等の有価金属を回収することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、このような有価金属の回収に用いられる従来の電気製錬炉1を示す概略図である。この図が示すように電気製錬炉1は、大略、炉本体3、炉蓋4、投原管5及び電極7で構成されている。
【0004】
炉本体3は、被加熱物であるブリケットmが供給され且つ溶融される上部開口容器であり、この炉本体3の上部開口を密閉する炉蓋4には、ブリケットmなどの原料を投入するための投原管5の下流端が嵌挿されている。また、この炉本体3には、炉蓋4を貫通し、その先端が炉本体3内に配置されると共に、電極昇降装置9によって昇降可能に支持された黒鉛からなる複数の電極7が取り付けられている。そして、この電極7に電力を供給することによって炉本体3内の電極7を通してブリケットmに電流が流れてジュール熱が発生し、該ブリケットmを加熱溶融するようになっている。
【0005】
この電気製錬炉1を用いて製鋼ダスト、スケール及び廃酸スラッジ等の酸化物からなる原料のブリケットmから有価金属を回収する際には、当該ブリケットmに必要に応じて炭材や、生成スラグの流動性を調整する調整材(例えば石灰など)を配合した後、これらを炉本体3内に投入して加熱する。すると、ブリケットmを構成する酸化物原料が溶融すると共にブリケットmに内在する或いは炭材として添加されたC(炭素)によって還元され、メタル分とスラグ分とに分離し、Ni,Cr,Fe,Mn等の有価金属が回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−240138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の電気製錬炉1では、炉蓋4に嵌挿されている投原管5の内部は、原料が常に充填された状態になっている。即ち、炉内原料層は投原管5の下端まであり、電気加熱により原料が溶融して体積が減少した分だけ炉上の原料ホッパーHより投原管5を介して常に原料が補充される構造となっている。従って、炉内原料層の厚みは、炉内への投原管5の挿入長さに依存し、炉内状況に応じて変化させることは出来ない。
【0008】
ところで、酸化物からなる原料のブリケットmを溶融還元する際に、ある頻度で溶湯Sの突沸現象が発生する。特に、ブリケットm中のZnO(酸化亜鉛)含有量が多い場合には、以下のようなメカニズムで火炎噴き出し現象が起こり易くなる。
【0009】
すなわち、ブリケットm中のZnOは、Cで還元されるとZnとなり900℃程度で蒸発する。すると、蒸発したZnが炉本体3内の空気中の酸素によって再び酸化されてZnOになると共に、炉本体3内の上部に存在するブリケットmに付着して固化する。
【0010】
ここで、炉蓋4の天井部に開設された排ガス出口4aの近傍では、周囲の2次空気取込口(図示せず)から取り入れた空気中の酸素によって再び酸化されたZnOがブリケットmに付着して固化する際に、隣接するブリケットm同士を接合させて、原料層内に棚tを形成させる。
【0011】
そして、このブリケットmとZnOとからなる棚tが或る大きさにまで成長し自重に耐えられなくなって溶湯S中に落下すると、Cによる急激な還元反応によってCO(一酸化炭素)が発生すると共に、ブリケットmの残留水分が急激に気化して溶湯S内で小爆発が起こり、2次空気取込口から火炎が噴き出すようになる。
【0012】
このような火炎噴き出し現象が起こると、電気製錬炉1周辺の作業環境が危険に曝されるようになるのに加え、炉本体3や炉蓋4が損傷すると共に、回収される有価金属の配合割合や歩留まりにも変化が生じるようになるという問題もあった。
【0013】
ここで、従来の電気製錬炉1では、炉本体3内に挿入された投原管5の挿入長さが短いと、炉内原料層が厚くなる結果、当該原料層の上下での温度差が大きくなり、棚tが成長しやすくなる。一方、棚tの成長を抑制する為には投原管5の挿入長さを長くすればよいが、そうすると、炉内原料層が薄くなる結果、当該原料層上面まで高温となり、エネルギーロスが大きくなるだけでなく、投原管5の先端部が高温に曝され、投原管5の寿命が著しく短くなる。従って、最良の操業形態としては、棚tが成長した際には炉内原料層を薄くして棚tの成長を抑え、操業が安定している時は炉内原料層を厚くし、エネルギーロスや耐火物への負荷を抑制することが望ましいのであるが、従来の電気製錬炉1では、このような操業中に炉内原料層の厚みを変化させることは出来なかった。
【0014】
なお、整備などのために炉本体3内への原料供給をストップさせたり、逆に、供給をスタートさせる際には、投原管5の中間部に設けられたロストルダンパー5a(図3参照)を操業員が手動で開閉操作することが可能になっている。しかし、操業中に原料供給量を制御して火炎噴き出し現象を抑える目的で、ロストルダンパー5aを操作することは危険であり、安全上問題であった。そのため、従来、上記火炎噴き出し現象を回避する方法としては、例えば、原料中のZnO含有量を制限する等の対策が行なわれていたが、この方法は、投入原料の前処理のため、コストアップになるという問題があった。
【0015】
それゆえに、本発明の主たる課題は、ZnO含有量が多い酸化物からなる原料を溶融還元する場合であっても、火炎噴き出し現象の発生を極小化して安全に且つ効率よく所望の溶湯を得ることができる酸化物原料の溶融・還元用の電気製錬炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載した発明は、
(a)内部で酸化物原料を溶融させる炉本体12と、前記炉本体12の上部を閉塞するように設けられた炉蓋14と、下流端が前記炉蓋14に開設された原料投入口14aに嵌挿され、前記炉本体12内に酸化物原料を導入する投原管16と、前記炉蓋14を上下方向に貫通して配置された電極18とを備えた電気製錬炉10であって、
(b)前記炉蓋14に開設された排ガス出口14cには、前記排ガス出口14cから前記炉本体12内へ向けて打撃シャフト48が進退し、前記炉本体12内に形成された酸化物原料の棚tを打撃する棚落とし装置20が設けられている
ことを特徴とするものである。
【0017】
この発明では、炉蓋14に開設された排ガス出口14cの近傍に、該排ガス出口14cから炉本体12内へ向けて打撃シャフト48が進退する棚落とし装置20が設けられているので、ZnO含有量が多い酸化物原料を溶融還元する際、排ガス出口14cの近傍に形成される酸化物原料の棚t(図3参照)が自重で溶湯S中に落下して火炎噴き出し現象を生じさせる大きさに成長する前に、当該棚tを溶湯S中に叩き落して安全に溶融させることができる。
【0018】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の電気製錬炉10において、
(c)前記投原管16の中間部にロストルダンパー42が設けられると共に、
(d)前記ロストルダンパー42には、当該ロストルダンパー42の開閉を遠隔操作して、前記炉本体12内に形成される酸化物原料の棚tの成長を抑制するように、前記炉本体12内へと投入される酸化物原料の量を自在にコントロールするロストルダンパー遠隔操作装置22が取り付けられている
ことを特徴とするものである。
【0019】
この発明では、投原管16の中間部に設けられたロストルダンパー42に、当該ロストルダンパー42の開閉を遠隔操作するロストルダンパー遠隔操作装置22が取り付けられているので、操業中にロストルダンパー42の開閉を遠隔操作して炉本体12内に投入する酸化物原料の供給量を制御し、炉内原料層の厚みを自在にコントロールすることができる。このように炉内原料層の厚みをコントロールすることで、該原料層の温度を棚tが生成しにくい温度にして、棚tの成長を抑えることができると共に、仮に火炎噴き出し現象が生じたとしても、ロストルダンパー42を遠隔から閉操作して炉本体12内に投入する酸化物原料を絞り、火炎噴き出し現象を抑えることができる。なお、このようなロストルダンパー遠隔操作装置22を設けることによって、操業員が炉上のロストルダンパー42の所まで出向いて当該ダンパー42を手動操作する必要がないので、火炎噴き出し現象が生じた場合であっても極めて安全にロストルダンパー42を操作することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電気製錬炉の火炎噴き出し現象を極小化することができるので、電気製錬炉周辺の作業環境が危険に曝されることや、炉本体が損傷するのを効果的に抑制することが出来ると共に、溶湯中に回収される有価金属の配合割合や歩留まりに変化が生じるのを低減することができる。
【0021】
したがって、ZnO含有量が多い酸化物からなる原料を溶融還元する場合であっても、火炎噴き出し現象の発生を極小化して安全に且つ効率よく所望の溶湯を得ることができる酸化物原料の溶融・還元用の電気製錬炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例の電気製錬炉の概要を示す構成図である。
【図2】棚落とし装置の一例を示す斜視図である。
【図3】従来の電気製錬炉の概要を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明における一実施例の電気製錬炉10の概要を示す構成図である。この図が示すように、本実施例の電気製錬炉10は、大略、炉本体12,炉蓋14,投原管16(及びこれに付帯するロストルダンパー42),電極18,棚落とし装置20及びロストルダンパー遠隔操作装置22で構成されている。
【0024】
炉本体12は、カーボンスタンプなどの耐火物24で構成され、その内部で酸化物原料を溶融させて溶湯Sを得る上部開口容器である。この炉本体12の炉底部側壁には、該側壁を貫通して炉本体12内で溶融させた酸化物原料の溶湯Sを取り出すための出湯路12aが設けられており、出湯路12aの側壁外面側の開口部分、すなわちタップ口12bには、当該タップ口12bを開閉するタップ口開閉装置25が取り付けられている。また、タップ口12bの上方には、タップ口12bから溶湯Sを吐出させる際に生じるダストを取り除くためのタップ口集塵機26が取り付けられており、このタップ口集塵機26には、ダンパー28を介して図示しないサイクロン集塵機や有害ガス除去装置などが接続されている。さらに、炉本体12の炉底外面には、空冷ジャケット12cが取り付けられており、空冷ファンFから送給される空気によって炉底が冷却されるようになっている。そして、この炉本体12の上部は、炉蓋14によって密閉されている。
【0025】
なお、図1中の符号30a及び30bは、タップ口12bから取り出された溶湯Sを案内する出湯樋であり、符号32は取鍋、符号34はスラグ受けである。また、符号36aは炉本体12の炉底の温度を計測する熱電対であり、符号36bは、炉本体12の側壁の温度を計測する熱電対である。
【0026】
炉蓋14は、ステンレスなどの金属で形成された外皮14aの内側をアルミナ系耐火物などの耐火物38で被覆して形成された蓋体である。
【0027】
この炉蓋14の略中央部には、1又は複数の原料投入孔14aが開設されており、この原料投入孔14aのそれぞれに後述する投原管16の下流端が嵌挿されている。また、炉蓋14の略中央部における原料投入孔14a近傍の位置には、後述する電極18が挿通される1又は複数の電極挿通孔14bが開設されている。さらに、炉蓋14の外周部には、1又は複数の排ガス出口14cや点検口兼2次空気取込口(図示せず)が開設されており、このうち排ガス出口14cには、フランジなどの取付手段を介してT管継手40が取り付けられている。なお、図1中の符号36cは、炉蓋14が取り付けられた炉本体12の内部空間上部の温度を計測する熱電対である。
【0028】
そして、炉本体12に取り付けられた炉蓋14の上方には、予め有価金属の配合割合が所定のものとなるように調整されたブリケットmなどの酸化物原料を貯える原料ホッパーHが1又は複数設置されている。この各原料ホッパーHには、原料ホッパーH内に貯えた酸化物原料の重量変化を検出するロードセル41が取り付けられており、このロードセル41が検出した原料ホッパーH内の重量変化の検出信号は、図示しない信号線を介して後述する制御手段64へと与えられるようになっている。
【0029】
投原管16は、原料ホッパーHに貯えられたブリケットmなどの酸化物原料を炉本体12内へと案内するための配管であり、上述したようにその下流端が炉蓋14に設けられた原料投入孔14aに嵌挿されている。
【0030】
この投原管16の中間部分には、投原管16の内部を横切るように設置された複数のシャフト(図示せず)を出し入れすることによって投原管16の内部を通過させ炉本体12内に投入する原料金属の量を制御するロストルダンパー42が取り付けられている。
【0031】
電極18は、主として黒鉛によって構成され、炉本体12内に投入された酸化物原料を加熱溶融するために、供給された電力により、酸化物原料に高温のジュール熱を発生させるものである。この電極18は、電極昇降装置42によって昇降可能に支持されると共に、その先端が炉蓋14に設けられた電極挿通孔14bに挿入され炉本体12内に配置されるようになっている。
【0032】
ここで、電極18に供給される電力として三相交流を使用する場合には、この電極18が3本設けられることになる。一方、電力として直流のものを使用する場合には、この電極18が1又は複数本設けられると共に、炉本体12の炉底に図示しない底部電極が設けられることになる。
【0033】
棚落とし装置20は、ZnO含有量が多い酸化物原料を溶融還元する際に排ガス出口14c近傍に生じる酸化物原料の棚を打撃して溶湯S内に叩き落す装置であり、図2に示すように、大略、支持フレーム44,ガイドレール46,打撃シャフト48及び駆動装置50などで構成されている。
【0034】
支持フレーム44は、炉蓋14近傍の天井面やラックなどに吊設されてガイドレール46を支持するものであり、その下端部には、ガイドレール46が連結されるガイドレール連結部材52の一端が揺動可能に取り付けられている。
【0035】
ガイドレール46は、打撃シャフト48をその進退方向に案内する水平断面略H字状のレール部材で、その長手方向一端(図2における下端)の背面側(図2における手前側)がガイドレール連結部材52の他端に軸着されている。また、ガイドレール46の長手方向一端の正面側(図2における奥側)には、打撃シャフト48が挿通され、該打撃シャフト48の進退をガイドするガイドセル54が取り付けられると共に、ガイドレール46の長手方向他端(図2における上端)には、駆動装置50が取り付けられている。そして、このガイドレール46の背面中間部に設けられた中間連結部56とガイドレール連結部材52とがガイドセル左右シリンダー58によってリンク結合されており、これによりガイドレール46(更に云えば打撃シャフト48の軸)がガイドレール連結部52の揺動方向と交差する方向に左右10°ずつ揺動できるようになっている。
【0036】
打撃シャフト48は、ステンレスなどの金属材料で構成された棒状の部材で、その下端側がガイドセル54に挿通されると共に、その上端側が後述する駆動装置50のエアブレーカー60を介してガイドレール46の正面側に取り付けられている。
【0037】
駆動装置50は、打撃シャフト48をガイドレール46に沿って進退駆動させる装置で、ガイドレール46の正面側にて該ガイドレール46に沿って移動可能に取り付けられ且つ前記打撃シャフト48の上端が接続されると共に、該打撃シャフト48に打撃力を与えるエアブレーカー60と、打撃シャフト48と共にガイドレール46下端側に移動したエアブレーカー60を図示しないチェーンフィードによりホームポジションであるガイドレール46の上端側へと引き上げるエアフィードモーター62とを有する。
【0038】
以上のように構成された棚落とし装置20は、図1に示すように、炉蓋14の排ガス出口14cの近傍に配置され、打撃シャフト48がT管継手40の上部開口40aから排ガス出口14cを通過して炉本体12内へと進入するように設置される。なお、T管継手40の側面開口40bは、排ガスの通流路(図示せず)に接続されている。
【0039】
ロストルダンパー遠隔操作装置22は、投原管16の中間部に設けられたロストルダンパー42の開閉を遠隔操作するためのもので、ロストルダンパー42を開閉操作するエアシリンダー22aを有する。このエアシリンダー22aには、信号線L1等を介して遠隔に設置した制御手段64から所定の制御信号等が与えられるようになっており、当該信号等によってエアシリンダー22aが所定の動作を行ないロストルダンパー42が開閉操作される。
【0040】
なお、この制御手段64には、信号線L2等を介して棚落とし装置20にも所定の制御信号等が与えられるようになっている。つまり、棚落とし装置20もロストルダンパー42と同様に制御手段64によって遠隔操作できるようになっている。
【0041】
次に、以上のように構成された電気製錬炉10の作用について説明する。電気製錬炉10を用いて製鋼ダスト、スケール及び廃酸スラッジ等の酸化物からなる酸化物原料を溶融還元して有価金属を回収する際には、まず始めに前記酸化物原料を図示しないブリケット製造装置に投入し、該原料のブリケットmを造粒する。このブリケットmには必要に応じて炭材や生成スラグの流動性を調整する調整材を配合した後、これらを炉本体12内に投入する。
【0042】
続いて、電極18に電力を投入してジュール熱を発生させ、ブリケットmを加熱する。炉本体12内を概ね1500℃程度の高温まで加熱することにより、ブリケットmを構成する酸化物原料が溶融すると共にブリケットmに内在する或いは炭材として添加されたC(炭素)によって還元され、メタル分とスラグ分とに分離し、Ni,Cr,Fe,Mn等の有価金属が回収される。
【0043】
ここで、本実施例の電気製錬炉10では、炉蓋14に開設された排ガス出口14cの近傍に、該排ガス出口14cから炉本体12内へ向けて打撃シャフト48が進退する棚落とし装置20が設けられているので、ZnO含有量が多い酸化物原料を溶融還元する際、冷気の入り口となる排ガス出口14cの近傍に形成される酸化物原料の棚tが自重で溶湯S中に落下して火炎噴き出し現象を生じさせる大きさに成長する前に、当該棚tを溶湯S中に叩き落として安全に溶融させることができる。
【0044】
また、炉上の原料ホッパーHにはロードセル41が設置されており、該原料ホッパーH内の原料の重量変化を検出することができる。そして、投原管16の中間部に設けられたロストルダンパー42に、ロストルダンパー42の開閉を遠隔操作するロストルダンパー遠隔操作装置22が取り付けられているので、原料ホッパーH内の酸化物原料の重量を見ながらロストルダンパー42を遠隔操作することにより、炉内原料層の厚みを自在にコントロールすることができる。このように炉内原料層の厚みをコントロールすることで、該原料層の温度を棚tが生成しにくい温度にして、棚tの成長を抑えるとともに、仮に火炎噴き出し現象が生じたとしても、ロストルダンパー42を遠隔から閉操作して炉本体12内に投入する酸化物原料を絞り、火炎噴き出し現象を抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…電気製錬炉
12…炉本体
14…炉蓋
16…投原管
18…電極
20…棚落とし装置
22…ロストルダンパー遠隔操作装置
22a…エアシリンダー
42…ロストルダンパー
44…支持フレーム
46…ガイドレール
48…打撃シャフト
50…駆動装置
m…ブリケット
S…溶湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で酸化物原料を溶融させる炉本体と、前記炉本体の上部を閉塞するように設けられた炉蓋と、下流端が前記炉蓋に開設された原料投入口に嵌挿され、前記炉本体内に酸化物原料を導入する投原管と、前記炉蓋を上下方向に貫通して配置された電極とを備えた電気製錬炉であって、
前記炉蓋に開設された排ガス出口には、炉本体内へ向けて打撃シャフトが進退し、炉本体内に形成された酸化物原料の棚を打撃する棚落とし装置が設けられていることを特徴とする電気製錬炉。
【請求項2】
前記投原管の中間部にロストルダンパーが設けられると共に、
前記ロストルダンパーには、当該ロストルダンパーの開閉を遠隔操作して、前記炉本体内に形成される酸化物原料の棚の成長を抑制するように、前記炉本体内へと投入される酸化物原料の量を自在にコントロールするロストルダンパー遠隔操作装置が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の電気製錬炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−270963(P2010−270963A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123107(P2009−123107)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(591085123)日本金属工業株式会社 (24)
【出願人】(391051326)ヤマモトロックマシン株式会社 (17)
【出願人】(000217583)株式会社タナベ (11)
【Fターム(参考)】