説明

電気部品およびこれを用いた電気部品の接続部

【課題】フラッシオーバー耐電圧の低下の防止を図る。
【解決手段】本発明の電気部品としてのポリマー套管1は、中心に配設される導体引出棒2と、導体引出棒2の外周に設けられる硬質の絶縁筒3と、絶縁筒3の外周に設けられるポリマー被覆体4と、絶縁筒3とポリマー被覆体4との界面に後述する小径絶縁筒3bの後端部(低圧側)から先端部(高圧側)近傍に跨って設けられる電界緩和層5とを備えている。
電界緩和層5は、小径絶縁筒3bの外周側に小径絶縁筒3bの後端部(低圧側)から先端部(高圧側)近傍に跨って設けられる内側電界緩和層51と、この内側電界緩和層51の外周に設けられる外側電界緩和層52とを備えており、内側電界緩和層51のスイッチングポイントの値は外側電界緩和層52のスイッチングポイントの値よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気部品およびこれを用いた電気部品の接続部に係わり、特に、ポリマー套管のフラッシオーバー耐電圧の低下を防止することができる電気部品およびこれを用いた電気部品の接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポリマー套管として、図8に示すように、中心に導体引出棒100を有し後端部にケーブル端末の受容口200を有するエポキシ樹脂から成る絶縁筒300と、絶縁筒300の外周に設けられそれ自身の外周に多数の襞部400が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体500と、絶縁筒300とポリマー被覆体500との界面に設けられた電界緩和層600とを備えたポリマー套管が知られている(特許文献1)。
【0003】
ここで、絶縁筒300の絶縁材料としては電気絶縁特性および剛性に優れたエポキシ樹脂が使用されており、また、当該エポキシ樹脂はそれ自体で電界緩和機能を有していないことから、エポキシ樹脂に酸化亜鉛(ZnO)粉末を充填することで電界緩和層600が形成されている。
【0004】
このような構成のポリマー套管においては、上記の酸化亜鉛粉末の結晶粒界に形成された障壁によってバリスター特性が発現され、当該酸化亜鉛粉末のバリスター特性によりポリマー套管の表面電界の緩和が図られ、ひいては絶縁筒300の厚さを薄くすることができ、ポリマー套管の軽量化およびスリム化が可能となる。
【0005】
しかしながら、このような構成のポリマー套管を例えば110kV級以上の超高圧線路に適用すると、酸化亜鉛粉末の電流−電圧(I−V)特性に起因して電界の集中する部分が発熱しポリマー套管の電気的特性が低下する虞があった。電界緩和層の電流―電圧(I−V)特性を図9に示す。すなわち、ポリマー套管の表面電界が弱い場合には、図9のA部に示すように22〜33kV程度の印加電圧では酸化亜鉛粉末の結晶粒界が抵抗として作用することから、電界緩和層600に殆ど電流が流れないものの、ポリマー套管の表面電界が強くなると、例えば図9のB部に示すように急激に酸化亜鉛粉末の抵抗が低下することから(以下、酸化亜鉛粉末の抵抗が急激に変化するポイントを「スイッチングポイント」という。)、電界緩和層600に電流が流れ当該電流により電界緩和層600が発熱する虞があった。また、超高圧線路への適用に伴って、ポリマー套管の表面電界が高くなると、電化緩和層600の先端付近に電界が集中し、導体引出棒100の先端部と絶縁筒300の後端部側に配設した支持金具700との間でフラッシオーバーを生ずる虞があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−117806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、ポリマー套管のフラッシオーバー耐電圧の低下を防止することができる電気部品およびこれを用いた電気部品の接続部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である電気部品は、中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、絶縁筒とポリマー被覆体の界面には絶縁筒の低圧側から絶縁筒の高圧側に跨って電界緩和層が設けられ、電界緩和層は、絶縁筒の外周側に設けられる内側電界緩和層と、内側電界緩和層の外周に設けられる外側電界緩和層とを備えるものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様である電気部品において、外側電界緩和層の軸方向の長さは内側電界緩和層の軸方向の長さよりも長く設定され、外側電界緩和層の高圧側の端部は内側電界緩和層の高圧側の端部よりも絶縁筒の高圧側に向かって延出されているものである。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である電気部品において内側電界緩和層のスイッチングポイントの値は、外側電界緩和層のスイッチングポイントの値よりも大きくされているものである。
【0011】
本発明の第4の態様である電気部品は、中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、絶縁筒とポリマー被覆体の界面には絶縁筒の低圧側から絶縁筒の高圧側に跨って電界緩和層が設けられ、電界緩和層は、絶縁筒の低圧側の外周に設けられる低圧側電界緩和層と、絶縁筒の高圧側の外周に設けられる高圧側電界緩和層とを備え、高圧側電界緩和層の低圧側の端部は、低圧側電界緩和層の高圧側の端部に連設されているものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第4の態様である電気部品において、高圧側電界緩和層のスイッチングポイントの値は、低圧側電界緩和層のスイッチングポイントの値よりも大きくされているものである。
【0013】
本発明の第6の態様である電気部品は、中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、絶縁筒とポリマー被覆体の界面には絶縁筒の低圧側から絶縁筒の高圧側に跨って亜鉛酸化粉末を含有する電界緩和層が設けられ、亜鉛酸化粉末の含有量は、電界緩和層の低圧側から高圧側に向かって漸次少なくされているものである。
【0014】
本発明の第7の態様である電気部品の接続部は、第1の態様乃至第6の態様の何れかの態様である電気部品を備え、電気部品を構成する高電圧の接続部には、他の電気部品の充電部が接続されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様乃至第7の態様の電気部品およびこれを用いた電気部品の接続によれば、電界緩和層を多層化し各層に含有される酸化亜鉛粉末の種類を変えることなどで、電界緩和層のI−V特性のスイッチングポイントをコントロールすることができ、ひいてはポリマー套管の表面電界を緩和することで、フラッシオーバー耐電圧の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の電気部品およびこれを用いた電気部品の接続部の好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、導体引出棒、絶縁筒(大径絶縁筒、小径絶縁筒)、ポリマー被覆体およびポリマー套管の「先端部」とは、それぞれ導体引出棒、絶縁筒(大径絶縁筒、小径絶縁筒)、ポリマー被覆体およびポリマー套管の高圧側の端部をいい、図中では上方向に相当する。また、導体引出棒、絶縁筒(大径絶縁筒、小径絶縁筒)、ポリマー被覆体およびポリマー套管の「後端部」は、先端部と反対側の端部をいい、図中では下方向に相当する。
[実施例1]
図1は、本発明の電気部品としてのポリマー套管の一部断面図を示している。
【0017】
同図において、本発明の電気部品としてのポリマー套管1は、中心に配設される導体引出棒2と、導体引出棒2の外周に設けられる硬質の絶縁筒3と、絶縁筒3の外周に設けられるポリマー被覆体4と、絶縁筒3とポリマー被覆体4との界面に後述する小径絶縁筒3bの後端部(低圧側)から先端部(高圧側)近傍に跨って設けられる電界緩和層5とを備えている。
【0018】
ここで、導体引出棒2はアルミニウム合金棒若しくは銅合金棒で形成され、絶縁筒3は電気絶縁特性が良好でかつポリオレフィン系の絶縁材料と比較して剛性の強いエポキシ樹脂やFRP樹脂などで形成されている。また、ポリマー被覆体4は電気絶縁特性が良好な例えばシリコーンポリマーなどの高分子絶縁材料で形成され、さらに、電界緩和層5は例えばエポキシ樹脂にそれ自身の結晶粒界に形成された障壁によってバリスター特性が発現する亜鉛酸化粉末を充填したもので形成されている。なお、これらの導体引出棒2、絶縁筒3、電界緩和層5およびポリマー被覆体4はモールドにより一体的に形成されている。
【0019】
導体引出棒2の先端部は絶縁筒3の先端部から突出され、また導体引出棒2の後端部には例えば導体挿入孔2aが設けられており、当該導体挿入孔2aの奥壁の中央部分には円柱状のボス2bが開口部に向かって導体挿入孔2aと同心状に突設されている。なお、この実施例では導体挿入孔2aやボス2bが本発明の高電圧の接続部を構成している。
【0020】
絶縁筒3は、導体引出棒2の後端部の外周部、すなわち導体挿入孔2aと対応する部分の外周部に設けられる大径絶縁筒3aと、この大径絶縁筒3aの上部に連設され、導体引出棒2の先端部を除く部分の外周部に設けられる小径絶縁筒3bとを備えており、大径絶縁筒3aと小径絶縁筒3bの連設部分には電界緩和用の環状の埋込金具6が絶縁筒3と同心状に埋設されている。また、大径絶縁筒3aの後端部には後述する他の電気部品としてのケーブル端末部を構成するストレスコーンを受容するコーン状の受容口3cが絶縁筒3と同心状に設けられており、この受容口3cは導体引出棒2の導体挿入孔2aと連通している。なお、この実施例においては、導体挿入孔2aと対応する部分を小径絶縁筒3bよりも大径化しているが、この部分を小径絶縁筒3bと同径にしてもよい。
【0021】
ポリマー被覆体4は小径絶縁筒3bの外周部に設けられ、その外周部には多数個の襞部4aがポリマー被覆体4の長手方向に沿って離間して形成されている。
【0022】
電界緩和層5は、小径絶縁筒3bの外周側に小径絶縁筒3bの後端部(低圧側)から先端部(高圧側)近傍に跨って設けられる内側電界緩和層51と、この内側電界緩和層51の外周に設けられる外側電界緩和層52とを備えており、内側電界緩和層51のスイッチングポイントの値は外側電界緩和層52のスイッチングポイントの値よりも大きく設定されている。具体的には、内側電界緩和層51および外側電界緩和層52の軸方向の長さはそれぞれ小径絶縁筒3bの軸方向の長さの2/3程度とされ、これらの内側電界緩和層51および外側電界緩和層52の厚さは共に2mm程度とされている。また、内側電界緩和層51のスイッチングポイント(SP)の値は900〜1500V/mm程度、外側電界緩和層52のスイッチングポイント(SP)の値は300〜800V/mm程度とされている。なお、内側電界緩和層51および外側電界緩和層52の後端部(低圧側)は埋込金具6と電気的に接触している。
【0023】
埋込金具6は大径絶縁筒3aと小径絶縁筒3bの連設部分の外周部から水平に延出する環状の支持金具7に連設されて支持金具7と同電位とされている。
【0024】
図2は、本発明の電気部品(ポリマー套管)を用いた電気部品の接続部としてのケーブル終端接続部の一部縦断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0025】
図2において、先ず、電気部品としてのポリマー套管1を支持金具7の下面に配設した支持碍子8を介して支持架台9に取り付ける。次に、ケーブル端末を段剥処理して露出させたケーブル絶縁体11の外周にストレスコーン12を装着し、ケーブル導体10の先端部に導体端子13を取り付ける。ここで、ストレスコーン12はエチレンプロピレンゴム(EPゴム)等のゴム状弾性を有するプレモールド絶縁体などから成り、このストレスコーン12の先端部には受容口3cの内壁面に装着される先細り状のコーン状部が設けられている。
【0026】
このような構成のケーブル端末部をポリマー套管1に装着し、予めケーブル端末部側に配設した押し金具14を受容口3c側に向けて圧縮する。これにより、ストレスコーン12のコーン状部が受容口3cの内壁面に押し付けられ、受容口3cの内壁面とコーン状部の外周面間における界面の絶縁性能が確保される。
【0027】
なお、図中、符号15はボス2bに配設された径方向に伸縮する導体接続子、16はシール部、17は下部金具、18は接地線、19はスプリング、20は押し金具フランジを示している。
【0028】
図3は、本発明の電気部品としてのポリマー套管の表面電界の分布を比較例と共に示す模式図である。ここで、図3中、縦軸は小径絶縁筒3bの長さ(L)、横軸はポリマー套管の表面電界の値を示している。
【0029】
同図から、比較例としてのポリマー套管の表面電界は電界緩和層600(図8参照)の先端部近傍部位で第1のスイッチングポイント(SP1)の値(500V/mm)から急峻に立ち上がり尖頭状の波形を呈しているのに対して、実施例としてのポリマー套管の表面電界は電界緩和層5(図1参照)の中間部部位で第1のスイッチングポイント(SP1)の値(500V/mm)から第2のスイッチングポイント(SP2)の値(1000V/mm)まで緩やかに立ち上がりこの状態から先端部近傍部位に跨って台形状の波形を呈していることが分かる。すなわち、実施例としてのポリマー套管の表面電界の最大値(Pb)は比較例としてのポリマー套管の表面電界の最大値(pa)よりも低くなっており、実施例としてのポリマー套管が比較例としてのポリマー套管よりもフラッシオーバー耐電圧特性が向上していることが分かる。具体的には、比較例としてのポリマー套管のACフラッシオーバー電圧が290kVであるのに対し、実施例としてのポリマー套管のACフラッシオーバー電圧が360kVまで向上し、また、比較例としてのポリマー套管のインパルスフラッシオーバー電圧が700kVであるのに対し、実施例としてのポリマー套管のインパルスフラッシオーバー電圧が800kVまで向上していることが分かる。
[実施例2]
図4は、本発明の他の電気部品としてのポリマー套管に係る一部縦断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
この実施例においては、図1に示す電界緩和層(以下「径方向2層型」という。)5に代えて、異種の電界緩和層を長手方向に連設した電界緩和層5aが設けられている。この実施例における電界緩和層5aは、小径絶縁筒3bの後端部側(低圧側)の外周に設けられる低圧側電界緩和層51aと、小径絶縁筒3bの先端部側(高圧側)の外周に設けられる高圧側電界緩和層52aとを備えており、高圧側電界緩和層52aの後端部は低圧側電界緩和層51aの先端部に連設され、低圧側電界緩和層51aの後端部(低圧側)は埋込金具6と電気的に接触している。また、高圧側電界緩和層52aのスイッチングポイント(SP)の値は低圧側電界緩和層51aのスイッチングポイント(SP)の値よりも大きく設定されている。具体的には、低圧側電界緩和層51aおよび高圧側電界緩和層52aの軸方向の長さはそれぞれ小径絶縁筒3bの軸方向の長さの1/3程度とされ、これらの低圧側電界緩和層51aおよび高圧側電界緩和層52aの厚さはそれぞれ4mm程度とされている。また、低圧側電界緩和層51aのスイッチングポイントの値は500V/mm程度、高圧側電界緩和層52aのスイッチングポイントの値は1000V/mm程度とされている。
【0031】
図5は、第2の実施例としてのポリマー套管の表面電界の分布を比較例と共に示す模式図である。なお、同図において、図3と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
図5から、第2の実施例としてのポリマー套管の表面電界は電界緩和層5a(図4参照)の中間部部位で第1のスイッチングポイント(SP1)の値(500V/mm)から第2のスイッチングポイント(SP2)の値(1000V/mm)まで立ち上がりこの状態から先端部近傍部位に跨って台形状の波形を呈していることが分かる。すなわち第2の実施例におけるポリマー套管の表面電界の最大値(Pc)が比較例におけるポリマー套管の最大値(pa)よりも低くなっており、第2の実施例におけるポリマー套管が比較例としてのポリマー套管よりもフラッシオーバー耐電圧特性が向上していることが分かる。具体的には、比較例としてのポリマー套管のACフラッシオーバー電圧が290kVであるのに対し、実施例としてのポリマー套管のACフラッシオーバー電圧が380kVまで向上し、また、比較例としてのポリマー套管のインパルスフラッシオーバー電圧が700kVであるのに対し、実施例としてのポリマー套管のインパルスフラッシオーバー電圧が850kVまで向上していることが分かる。
[実施例3]
図6は、本発明の他の電気部品としてのポリマー套管に係る一部縦断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
この実施例においては、図1に示す内側電界緩和層51に代えて、当該内側電界緩和層51よりも軸方向の長さが短く設定された短尺の内側電界緩和層51bが設けられている。具体的には、内側電界緩和層51bの軸方向の長さは小径絶縁筒3bの軸方向の長さの1/3程度、外側電界緩和層52の軸方向の長さは小径絶縁筒3bの軸方向の長さの2/3程度とされ、外側電界緩和層52bの高圧側の端部は内側電界緩和層51bの高圧側の端部よりも絶縁筒3の高圧側に向かって延出されている。なお、内側電界緩和層51bおよび外側電界緩和層52bのスイッチングポイント(SP)の値は、第1の実施例と同様に、それぞれ900〜1500V/mm、300〜800V/mm程度とされ、その厚さも共に2mm程度とされている。
【0034】
この実施例においても、ポリマー套管の表面電界(最大値)を比較例におけるポリマー套管の表面電界(最大値)よりも低くすることができ、フラッシオーバー耐電圧特性を向上させることができる。
[実施例4]
図7は、本発明の他の電気部品としてのポリマー套管に係る一部縦断面図を示している。なお、同図において、図4と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
この実施例においては、図4に示す電界緩和層(以下「長手方向連設型の電界緩和層」という。)5aに代えて、単層構成でかつそれ自身に含有される亜鉛酸化粉末の濃度に勾配を設けた電界緩和層5cが設けられている。
【0036】
この実施例における電界緩和層5cにおいては、電界緩和層5cに含有される亜鉛酸化粉末の含有量が電界緩和層5cの後端部から先端部に向かって漸次少なくされている。
【0037】
なお、この実施例における電界緩和層5cの軸方向の長さは小径絶縁筒3bの軸方向の長さの2/3程度とされ、その厚さは4mm程度とされている。また、電界緩和層5cの後端部(低圧側)は埋込金具6と電気的に接触している。
【0038】
この実施例においても、ポリマー套管の表面電界(最大値)を比較例におけるポリマー套管の表面電界(最大値)よりも低くすることができ、フラッシオーバー耐電圧特性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
前述の実施例においては、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、次のようにしてもよい。
【0040】
第1に、電界緩和層は絶縁筒の外周部を構成するエポキシ樹脂に亜鉛酸化粉末を含有したものに限定されず、ポリマー被覆体の内周部を構成するシリコーンポリマーに亜鉛酸化粉末を含有したもの、若しくは絶縁筒とポリマー被覆体との界面に別体の電界緩和層を設けたもので構成してもよい。
【0041】
第2に、電気部品としてのポリマー套管を構成する高電圧の接続部は、導体引出棒の後端部に導体挿入孔を設けたものに限定されず、導体引出棒の後端部に例えば半球状の接続子を連設し、当該接続子を構成する平滑部を外方に向けて絶縁筒の後端部より露出させて高電圧の接続部としてもよい。なお、この場合には、露出させた高電圧の接続部(平価粒)に他の電気部品の充電部が接続されることになる。
【0042】
第3に、前述の実施例においては、径方向2層型の電界緩和層について説明しているが、当該径方向2層型の電界緩和層を構成する外側電界緩和層の外周に更に他の電界緩和層を設けてもよい。
【0043】
第4に、前述の実施例においては、長手方向連設型の電界緩和層について説明しているが、当該長手方向連設型の電界緩和層を構成する高圧側電界緩和層の高圧側に更に他の電界緩和層を連設してもよい。
【0044】
第5に、ポリマー套管は、I字状のものに限定されず、その中間部に略L字状の折曲部や半円状の折曲部を設けたものでもよい。
【0045】
第6に、導体引出棒の外周に設けられる絶縁筒は、導体引出棒と別体で設けてもよい。
【0046】
第7に、ケーブル端末の受容口は下方若しくは水平方向に向けるものに限定されず、例えば斜めに向けて形成してもよい。
【0047】
第8に、ケーブル終端接続部は、気中終端接続部に限定されず、ガス・油中終端接続部などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明における電気部品としてのポリマー套管の縦断面図。
【図2】図1に示すポリマー套管を用いた電気部品の接続部としてのケーブル終端接続部の一部縦断面図。
【図3】図1に示すポリマー套管の表面電界の分布を模式的に示す説明図。
【図4】本発明の他の実施例に係る電気部品としてのポリマー套管の縦断面図。
【図5】図4に示すポリマー套管の表面電界の分布を模式的に示す説明図。
【図6】本発明の他の実施例に係る電気部品としてのポリマー套管の縦断面図。
【図7】本発明の他の実施例に係る電気部品としてのポリマー套管の縦断面図。
【図8】従来の電気部品としてのポリマー套管の縦断面図。
【図9】電界緩和層の電流―電圧(I―V)特性図。
【符号の説明】
【0049】
1・・・ポリマー套管
2・・・導体引出棒
2a・・・導体挿入孔(高電圧の接続部)
3・・・絶縁筒
4・・・ポリマー被覆体
4a・・・襞部
5、5a、5b、5c・・・電界緩和層
51・・・内側電界緩和層
52・・・外側電界緩和層
51a・・・低圧側電界緩和層
52a・・・高圧側電界緩和層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、 前記絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、
前記絶縁筒と前記ポリマー被覆体の界面には前記絶縁筒の低圧側から前記絶縁筒の高圧側に跨って電界緩和層が設けられ、
前記電界緩和層は、前記絶縁筒の外周側に設けられる内側電界緩和層と、前記内側電界緩和層の外周に設けられる外側電界緩和層とを備えることを特徴とする電気部品。
【請求項2】
前記外側電界緩和層の軸方向の長さは前記内側電界緩和層の軸方向の長さよりも長く設定され、前記外側電界緩和層の高圧側の端部は前記内側電界緩和層の高圧側の端部よりも前記絶縁筒の高圧側に向かって延出されていることを特徴とする請求項1記載の電気部品。
【請求項3】
前記内側電界緩和層のスイッチングポイントの値は、前記外側電界緩和層のスイッチングポイントの値よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気部品。
【請求項4】
中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、
前記絶縁筒と前記ポリマー被覆体の界面には前記絶縁筒の低圧側から前記絶縁筒の高圧側に跨って電界緩和層が設けられ、
前記電界緩和層は、前記絶縁筒の低圧側の外周に設けられる低圧側電界緩和層と、前記絶縁筒の高圧側の外周に設けられる高圧側電界緩和層とを備え、
前記高圧側電界緩和層の低圧側の端部は、前記低圧側電界緩和層の高圧側の端部に連設されていることを特徴とする電気部品。
【請求項5】
前記高圧側電界緩和層のスイッチングポイントの値は、前記低圧側電界緩和層のスイッチングポイントの値よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の電気部品。
【請求項6】
中心に導体引出棒を有し、後端部に高電圧の接続部を有する硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備える電気部品において、
前記絶縁筒と前記ポリマー被覆体の界面には前記絶縁筒の低圧側から前記絶縁筒の高圧側に跨って亜鉛酸化粉末を含有する電界緩和層が設けられ、
前記亜鉛酸化粉末の含有量は、前記電界緩和層の低圧側から高圧側に向かって漸次少なくされていることを特徴とする電気部品。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の電気部品を備え、
前記電気部品を構成する高電圧の接続部には、他の電気部品の充電部が接続されていることを特徴とする電気部品の接続部。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−324070(P2007−324070A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155637(P2006−155637)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】