説明

電気銅めっき浴及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法

【課題】スルーホールとビアホールが混在した基板に対して、スルーホールへの付きまわり性が良好で、かつビアホールへの穴埋め性が良好な電気銅めっき浴及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法を提供する。
【解決手段】水溶性銅塩、硫酸、及び塩化物イオンを主構成成分とし、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物を加熱処理することによって生成したポリアミドポリアミンをレベラーとして含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気銅めっき浴及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法に関し、特に、ビアホールとスルーホールが混在する基板に良好に適用することができる電気銅めっき浴、及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化が進み、集積度を高くする要求に伴って、パッケージも周辺端子実装、エリア端子実装から三次元実装へと移行している。このため、半導体チップやインターポーザーも貫通電極による導通や接合が実用化に向けて研究されている。貫通電極は銅ダマシンやプリント配線板のビアフィリングと同様に電気銅めっきによりビアホールを銅めっき皮膜で充填することが求められている。
【0003】
また、プリント配線板においても、孔内壁面に銅めっき皮膜を形成するスルーホールと、穴内に銅めっきを充填する(ビアフィリング)ブラインドビアホールが混在したものが用いられるようになり、ビアフィリングとスルーホールめっきを同時に実施することが必要となってきた。
【0004】
しかしながら、ビアフィリングを目的とした従来のめっき浴は、これを用いてスルーホールめっきを行うと、スルーホールのコーナー部の膜厚が異常に薄くなり、コーナークラックの一因となるため、スルーホールめっきに用いることができなかった。また、例えば特許文献1に記載の技術のようなスルーホールめっきを目的としためっき浴は、ビアホールの内底部の膜厚が薄くなり、銅めっき析出物でビアホールを充填することは困難であった。このため、ビアホールとスルーホールを同時にめっきし得るめっき浴が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−321792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ビアホールとスルーホールとが混在した基板に対して、ビアホールへの穴埋め性が良好で、かつスルーホールへの付きまわり性が良好なめっき処理を行うことができる電気銅めっき浴及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した問題に対して鋭意検討を重ねた結果として見出されたものであり、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物を加熱処理することによって生成した化合物であって、直鎖構造で4級窒素及び3級アミド構造を含まないポリアミドポリアミン化合物をレベラーとして添加した電気銅めっき浴を用いることによって、スルーホールへの付きまわり性が良好で、かつビアホールへの穴埋め性も良好にめっき処理することができるという知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る電気銅めっき浴は、水溶性銅塩、硫酸、及び塩化物イオンを主構成成分とし、かつ下記式(1)
【化1】

〔式(1)中、Rは下記式(2)又は(3)
【化2】

で表され、Rは、下記式(4)
【化3】

で表される。lは0以上の整数を示し、mは1であり、nは0以上の整数を示す。〕
で表される化合物を添加してなる。
【0009】
また、上記式(1)で表される化合物は、下記式(5)
【化4】

で表される化合物を加熱処理することによって生成される。
【0010】
また、上記式(5)で表される化合物は、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物である。
【0011】
さらに、下記式(6)〜(9)
【化5】

〔式中のR,R及びRは各々炭素数1〜5のアルキル基、Mは水素原子又はアルカリ金属、aは1〜8の整数、b,c及びdは各々0又は1を示す。〕
から選ばれる硫黄含有化合物を添加してなる。
【0012】
またさらに、下記式(10)
【化6】

〔式中のRは炭素数2又は3のアルキレン基、eは4以上の整数を示す。〕
で表されるポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体を添加してなる。
【0013】
上記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体である。
【0014】
また、本発明に係る電気めっき方法は、スルーホールとビアホールとを有する被めっき物を、上記電気銅めっき浴に浸漬し、該被めっき物を陰極として電気めっきを行い、上記スルーホール内とビアホール内を同時にめっきする電気銅めっき方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電気銅めっき浴及びその電気銅めっき浴を用いた電気めっき方法によれば、ビアホールとスルーホールとが混在した基板に対して、ビアホールへの穴埋め性に優れ、かつスルーホールへの付きまわり性に優れためっき処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】15時間加熱処理した化合物のHSQC−TOCSYとHSQCの重ね書きスペクトル図である。
【図2】無処理化合物のHSQC−TOCSYとHSQCの重ね書きスペクトル図である。
【図3】15時間加熱処理した化合物のHMBCスペクトル図である。
【図4】無処理化合物のHMBCスペクトル図である。
【図5】15時間加熱処理した化合物の15N−NMRチャート図である。
【図6】無処理化合物の15N−NMRチャート図である。
【図7】ビア窪み量の評価における皮膜の膜厚測定箇所を示すビアホールの断面図である。
【図8】スローイングパワーの評価における皮膜の膜厚測定箇所を示すスルーホールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る電気銅めっき浴について詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴は、水溶性銅塩、硫酸、及び塩化物イオンを主構成成分として含む。そして、この電気銅めっき浴は、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物を加熱処理することによって生成した、直鎖構造で、4級窒素及び3級アミド構造を含まないポリアミドポリアミン化合物をレベラーとして含む。
【0019】
水溶性銅塩は、銅イオン供給源として含まれ、例えば硫酸銅、塩化銅、酸化銅、炭酸銅、ピロリン酸銅、ホウフッ化銅、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等の銅化合物塩が挙げられる。これらの銅化合物は、1種単独あるいは2種以上を併せて用いることができる。銅めっき浴における水溶性銅塩の濃度は、例えば硫酸銅の場合、硫酸銅5水塩として30〜300g/Lであることが好ましい。
【0020】
また、電気銅めっき浴には、硫酸、及び塩化物イオンが含まれおり、硫酸は30〜300g/Lの濃度で含有され、塩化物イオンは5〜150mg/L、好ましくは20〜100mg/Lで含有される。塩素イオン濃度が150mg/Lより多い場合、アノード表面に塩化銅が生成してアノードの不動態化が起こるおそれがある。一方で、5mg/Lより少ない場合には、抑制作用が部分的に働くようになって段地めっきになるおそれがある。
【0021】
上述のように、本実施の形態に係る電気銅めっき浴は、上述の主構成成分に加え、レベラー(レベリング剤)を添加してなっている。ここで、レベラーとは、含窒素化合物からなる添加剤であり、酸性のめっき浴中においてカチオンとして働いて、電流密度の高い部分、例えば被めっき物のviaやスルーホールの表面側に電気的に集中して活性化過電圧を増加させ、銅の析出を抑制する。一方で、レベラーは、微細溝や穴の底等においてはその吸着量が少なくなり、銅の析出を優先させてボトムアップの析出状態とすることによって、レベリング性を発揮する。
【0022】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴に含有されるレベラーは、下記式(1)で表されるポリアミドポリアミン化合物である。
【0023】
【化7】

【0024】
なお、式(1)中、Rは下記式(2)又は(3)で表され、Rは、下記式(4)で表される。lは0以上の整数を示し、mは1であり、nは0以上の整数を示す。
【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
このレベラーとして含有されるポリアミドポリアミン化合物は、上記式(1)で表されるように、直鎖構造であり、4級窒素及び3級アミド構造を有さず、3級アミン構造と2級アミド構造を有する化合物である。そして、上記式(1)で表されるポリアミドポリアミン化合物は、下記式(5)で表される化合物に対して加熱処理を施すことによって生成される。
【0028】
【化10】

【0029】
上記式(5)で表される化合物は、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物をエピクロロヒドリンによって変性処理することによって生成される、エピクロロヒドリン変性物である。
【0030】
このエピクロロヒドリン変性物は、具体的に以下のようにして生成される。すなわち、ジエチレントリアミンとアジピン酸とを、ε−カプロラクタムの存在下で縮合させることによって、ポリアミドアミンを生成する。そして、生成したポリアミドアミンとエピクロロヒドリンとを水溶液中で混和し、エピクロロヒドリンを付加することによって、エピクロロヒドリン変性物であるポリアミドポリアミン化合物を生成する。
【0031】
このように、エピクロロヒドリン変性物は、例えば二段階の反応で生成する。第一段階では、上述したアジピン酸1モル当たり、1〜4モルのジエチレントリアミンを縮合させる。この縮合反応は、ε−カプロラクタムの存在下で行い、反応温度を70〜150℃とする。
【0032】
そして第二段階として、エピクロロヒドリンと、第一段階で生成したポリアミドアミンを水溶液中で混和し、エピクロロヒドリンを付加することによってエピクロロヒドリン変性物を生成する。なお、エピクロロヒドリンは、好適にはポリアミドアミン1モルに対して、0.2モルから3モルの割合で用いて反応させる。
【0033】
この第二段階の反応溶液のpH値は、pH2.0〜7.0とすることが好ましく、pH2.0〜5.0とすることがより好ましい。pH値を調整するために、有機酸又は無機酸を添加してもよい。pH値を調整するための有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、エタン酸、プロピオン酸、シュウ酸等を挙げることができる。また、無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。
【0034】
また、第二段階の反応温度は約100℃までとし、好ましくは約20〜50℃に調整して行う。
【0035】
さらに、第二段階の反応は、エピクロロヒドリンをポリアミドアミンの水溶液中に加えることによって行われ、さらにその溶液に無機酸又は有機酸を加えもよい。ポリアミドアミンの濃度は、20〜60重量%であることが好ましい。
【0036】
この第二段階の反応は、未反応のエピクロロヒドリンが存在しなくなるまで行う。反応時間は、使用される反応体の種類によって適宜変更し、例えば約5分〜約3時間とする。
【0037】
本実施の形態における電気銅めっき浴に含有されるレベラーは、上述のようにして生成した上記式(5)で表される重縮合物のエピクロロヒドリン変性物に対して加熱処理を施すことによって生成される。
【0038】
このようにして上記式(5)で表される化合物に対して加熱処理を施すことによって、上記(1)乃至(4)に示されるように、化合物(5)の3級アミド構造の部位が3級アミン構造に変化し、分子量が小さくなる変性が起こる。すなわち、3級アミド構造と2級アミド構造とを有する化合物(5)を加熱処理することによって、3級アミン構造と2級アミド構造とを有する化合物(1)が生成される。
【0039】
加熱処理は、溶媒を沸騰させる還流処理や、溶媒の沸点温度より低い一定の温度で上述したエピクロロヒドリン変性物を加熱する方法であれば特に限定されないが、加熱処理中に溶媒である水が蒸発により失われるのを防ぐために周知の還流処理装置を用いて行うことが好ましい。
【0040】
加熱処理における処理温度は、特に限定されないが、相対的に加熱処理温度を高くするほど加熱処理時間を短くすることができる。したがって、加熱処理の処理温度としては、約93℃以上とすることが好ましく、約96℃以上とすることがより好ましい。加熱処理の処理温度が約93℃より低い場合には反応速度が遅く、加熱処理時間を長くする必要が生じてしまう。なお、加熱処理温度の上限は、溶媒が沸騰する還流処理となる温度となる。
【0041】
また、加熱処理の処理時間としては、約10〜20時間とすることが好ましい。加熱(または還流)処理時間が約10時間より短い場合、エピクロロヒドリン変性物において3級アミド構造の部位が残っており、ビアホールに対する穴埋め性が低下してしまう。一方で、加熱処理時間が約20時間より長い場合、反応はすべて終了しておりビアホールに対する穴埋め性はそれ以上向上せず、処理に無駄が生じて効率が悪くなる。
【0042】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴は、このように、3級アミド構造を有する上記化合物(5)で表されるエピクロロヒドリン変性物を加熱処理することによって、その3級アミド構造を3級アミン構造とした上記化合物(1)をレベラーとして用いる。このようにして構造変化した化合物(1)は、カチオン性が増すとともに、その分子構造が網目状から線状となり、化合物(1)からなるレベラーは、例えば基板表面部や凸部、viaの入り口付近等の電流密度の高い部分に対する銅析出の抑制効果が向上することとなる。これにより、化合物(1)をレベラーとして含有する本実施の形態に係る電気銅めっき浴は、ビアホールへの埋め込み性を向上させることができる。
【0043】
また、この電気銅めっき浴によれば、ビアホールとスルーホールの両方を有する基板(ビアホール・スルーホール混在基板)に対して、ビアの穴埋めとスルーホールめっきを同時に行う際に、好適に用いることができる。すなわち、ビアホールの埋め込み性を向上させることができるとともに、スルーホールに対しても良好な付きまわり性を発揮させることができる。
【0044】
ビアホール・スルーホール混在基板に対してめっき処理を施す場合においても、対象とするビアホールの径及びアスペクト比は特に限定されるものではない。例えば、径が1μm以上、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmであり、かつアスペクト比[ホール深さ/ホール径]が0.3以上、好ましくは0.5〜1であるビアホール・スルーホール混在基板のめっきに好適に用いることができる。
【0045】
なお、対象とするビアホールの形状も特に限定されず、開口が円形状、楕円形状、四角形等の多角形状のものを対象とすることができるが、アスペクト比を規定する場合の径は、開口面の重心を通り、開口の外周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最短のものの長さを対象とする。
【0046】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴中において、上記式(1)で表されるレベラーの濃度は、0.01〜10000mg/Lとすることが好ましく、特に1〜100mg/Lとすることがより好ましい。レベラーの濃度が0.01mg/Lより低い場合には、表面側における銅析出の抑制効果が不足してしまい、一方でレベラーの濃度が10000mg/Lより高い場合には、via底へのレベラー吸着量が多くなって銅析出の抑制効果が生じてしまい、良好なビアフィリングを実現することができない。
【0047】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴には、さらに、核発生の促進剤であるブライトナーを添加することが好ましい。レベラーとブライトナーとを併用することにより、レベラーによるビアホール基板表面側(ビアホール側面上端部)のめっき抑制作用とブライトナーによるビアホール中央部のめっき促進作用との相乗作用により、ビアホール底面側からのめっき成長が優先的に進行し、これによりボイドを発生させることなく確実にビアホールを銅めっきで充填することができる。ブライトナーは、下記式(6)乃至(9)で示される硫黄含有化合物から選ばれる1種又は2種以上を含有していることが好ましい。
【0048】
【化11】

【0049】
なお、上記式中のR,R及びRは各々炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基であり、R,R及びRの各々は同一であっても異なっていてもよい。また、Mは水素原子又はナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、aは1〜8の整数、好ましくは1〜5の整数、特に好ましくは3であり、b,c及びdは各々0又は1を示す。
【0050】
ブライトナーとしては、具体的に、下記式(11)〜(14)で表されるものが挙げられる。
【0051】
【化12】

【0052】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴中のブライトナーの濃度としては、0.01〜100mg/Lとすることが好ましく、特に0.1〜30mg/Lとすることがより好ましい。
【0053】
さらに、本実施の形態に係る電気銅めっき浴においては、レベラー、ブライトナーに加えて、核成長の抑制剤であるキャリアーを添加することが好ましい。キャリアーを添加することにより、キャリアーによる抑制効果によってレベラーの濃度範囲を大きくとることができる。具体的には、レベラー濃度を低くしても、ビアホール底面側からのめっき成長が優先的に進行し、これによりボイドを発生させることなく確実にビアホールを銅めっきで充填することができる。キャリアーは、下記式(10)で示されるポリアルキレングリコールを含有していることが好ましい。
【0054】
【化13】

【0055】
なお、上記式中のRは炭素数2又は3のアルキレン基(エチレン基又はプロピレン基)であり、Rは同一であっても異なっていてもよい。また、eは4以上、好ましくは10〜250の整数を示す。
【0056】
上述したポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体の何れでもよく、平均分子量(重量平均分子量)が200以上、特に500〜15000のものが好ましい。
【0057】
本実施の形態に係る電気銅めっき浴中のキャリアーの濃度としては、0.001〜2000mg/Lとすることが好ましく、特に50〜500mg/Lとすることがより好ましい。
【0058】
本実施の形態においては、上述した電気銅めっき浴を用いて、被めっき対象である基板上に形成されたビアホール及びスルーホールをめっきする。なお、被めっき対象となる基板は、特に限定されるものではなく、銅張りポリイミド基板、銅張りポリエステル基板、銅張りポリエーテルイミド基板、銅張り液晶ポリマー基板、ガラスクロス、ガラスマット、合成繊維などの基材と熱硬化性樹脂からなる銅張りフェノール基板、銅張り紙エポキシ基板、銅張り紙ポリエステル基板、銅張りガラスポリイミド基板等、いずれの基板に対しても好適に利用することができる。また、両面プリント基板ではなく、多層プリント配線板を使用してもよい。
【0059】
電気めっき処理の条件としては、従来公知の条件を適用することができるが、陰極電流密度は0.05〜5A/dm2、特に0.5〜3A/dm2とすることが好ましい。また、撹拌は、一般的に用いられている手法、例えばエアーレーション、噴流、スキージ等を用いて行うことができる。また、陽極は公知のものでよく、銅板等の可溶性アノードも不溶性アノードも用いることができ、まためっき温度は15〜35℃、特に22〜28℃とすることが好ましい。
【0060】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0061】
また、上述の説明において記載しためっき浴の組成や、めっき処理等における温度や時間等の処理条件に関しては、その一例を示したものであって当然にそれらに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0063】
≪エピクロロヒドリン変性物及び当該変性物の加熱処理後の化合物の構造解析≫
以下に詳述するようにして生成したエピクロロヒドリン変性物及び当該変性物を加熱処理することによって生成した化合物の構造を解析した。まず、エピクロロヒドリン変性物は、以下のようにして合成した。
【0064】
すなわち、水9.7gを常温(20〜30℃)で容器に入れ、攪拌しながらε−カプロラクタム58gを加えて30〜35℃に加熱した。次に、この溶液に、アジピン酸37.8gを攪拌しながら加え、約115〜122℃に加熱して還流し、2時間保持した。その後、浴温度を約100℃(100〜110℃)に冷却し、その温度を維持しながら1時間以内にジエチレントリアミン52.9gを加えた。このようにして各化合物を配合することによって、低粘度で僅かに黄色に濁った溶液を生成した。そして、生成した溶液を128〜130℃で還流し、1時間保持した。1時間保持後、約70℃(65〜75℃)に冷却した。
【0065】
続いて、生成した溶液に、15分以内にアジピン酸74.8gを攪拌しながら加えた。その後、128〜130℃の温度条件で1時間還流し、黄褐色の粘性を有する溶液を生成して、これを約105℃(100〜115℃)に冷却した。
【0066】
続いて、生成した溶液に、ジエチレントリアミン26.4gを100〜115℃の温度条件で1時間以内に混和させた。
【0067】
生成した混合溶液を蒸留装置に投入し、125〜140℃の温度で、100〜500mbarの減圧下において、留出がなくなるまで蒸留物を留去した。なお、最終的に、37gの蒸留物が得られた。この蒸留処理によって得られた37gの蒸留物に水72.6gを加え、15分以内に元の容器に移して温度を約100℃に下げた。そして、約90℃(80〜90℃)の温度条件で、1時間に亘って攪拌した。その後、室温にて冷却した。なお、得られた溶液の重量は321gであった。
【0068】
続いて、得られた321gの溶液に水739gを加えた。なお、この混合物は黄色に僅かに濁った溶液となっていた。この溶液に、エピクロロヒドリン92.8gを3時間以内に、約25℃(20〜35℃)の温度条件で混和させ、6時間に亘って、45〜50℃の温度条件で攪拌した。
【0069】
続いて、貯蔵安定性の溶液を得るために、水839gと濃硫酸8.1gを加えた。このとき、溶液のpH値がpH4.9であったため、濃硫酸11.2gを用いてpH2〜2.5に調整し、攪拌しながら常温に冷却して、エピクロロヒドリン変性物を合成した。なお、生成したエピクロロヒドリン変性物の重量は、1987gであった。
【0070】
以上のようにして生成したエピクロロヒドリン変性物、換言すると加熱処理無しの化合物について、構造解析を行った。
【0071】
一方、上述のようにして生成したエピクロロヒドリン変性物(50wt%水溶液)を以下のようにして15時間加熱処理し、その加熱処理して生成した化合物について、同様に構造解析を行った。すなわち、生成したエピクロロヒドリン変性物を三口フラスコに入れ、フラスコに還流管、温度計を取り付けた。96℃のウォーターバスに三口フラスコを入れて、スターラー撹拌した。フラスコの中の水溶液が96℃になってから15時間、反応温度96℃を維持して、撹拌しながら加熱した。15時間経過すると、直ちにフラスコを冷水に入れて、フラスコ中の水溶液が25℃となるまで冷却した。このようにして、エピクロロヒドリン変性物を加熱処理して生成した化合物について構造解析した。
【0072】
(原料由来構造の帰属)
加熱処理した化合物及び加熱処理しなかった化合物のそれぞれについて、原料由来構造の帰属に関して、HSQC−TOCSYとHSQCスペクトルの重ね書きにより解析した。
【0073】
以下の表1にケミカルシフトを示し、図1に15時間加熱処理した化合物、図2に無処理化合物のそれぞれのHSQC−TOCSYとHSQCの重ね書きスペクトル図を示す。なお、各原料の帰属番号は、下記の化学式(1)乃至(3)、(5)、(4)’中に記載した番号に対応する。
【0074】
【表1】

【0075】
【化14】

【0076】
【化15】

【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
(原料由来構造同士の結合解析)
また、加熱処理した化合物及び加熱処理しなかった化合物のそれぞれについて、HMBCスペクトル及び15N−NMRにより、原料由来構造同士の結合解析を行った。
【0080】
図3及び図4にHMBCスペクトルの解析結果を示し、図5及びに図6に15N−NMRの解析結果を示す。また、下記表2に、15N−NMRにおけるδNの積分値を示す。なお、15N−NMRは、試料0.5mlを凍結乾燥後、DMSO-d6 0.6mlを添加し、日本電子株式会社製JNM-ECA400を用いて測定した。
【0081】
【表2】

【0082】
図3及び図5に示されるように、エピクロロヒドリン変性物を15時間加熱処理した後の化合物の場合、HMBCスペクトルでアジピン酸の帰属23の炭素C(173.3ppm)とカプロラクタムの帰属A(7.83ppm)のプロトンとの間で相関が確認された。このことから、アジピン酸由来構造の両端に結合するのはNHRであることがわかる。
【0083】
また、HMBCスペクトルでジエチレントリアミンの帰属C(8.24ppm)のプロトンとアジピン酸の帰属23(173.3ppm)もしくはカプロラクタムの帰属6(172.1ppm)の炭素Cとの間で相関が確認された。このことから、ジエチレントリアミン由来構造の両端Nに結合するのはC=Oであることがわかる。
【0084】
また、HMBCスペクトルでエピクロロヒドリンの52.9ppmのプロトンとジエチレントリアミンの帰属42(3.2ppm)の炭素Cとの間で相関が確認された。このことから、ジエチレントリアミン由来構造の中心のNに結合するのは、エピクロロヒドリン由来構造で、中心Nは3級アミンであることがわかる。なお、15N−NMRスペクトルで、108ppm付近にピークは観られなかった。
【0085】
一方で、図4及び図6に示されるように、加熱処理無しのエピクロロヒドリン変性物の場合、HMBCスペクトルでアジピン酸の帰属23の炭素C(173.3ppm)とカプロラクタムの帰属A(7.83ppm)のプロトンとの間で相関が確認された。このことから、アジピン酸由来構造の両端に結合するのはNHRであることがわかる。
【0086】
また、HMBCスペクトルでジエチレントリアミンの帰属C(8.24ppm)のプロトンとアジピン酸の帰属23(173.3ppm)もしくはカプロラクタムの帰属6(172.1ppm)の炭素Cとの間で相関が確認された。このことから、ジエチレントリアミン由来構造の両端Nに結合するのはC=Oであることがわかる。
【0087】
また、HMBCスペクトルでエピクロロヒドリンの52.9ppmのプロトンとジエチレントリアミンの帰属52(2.86ppm)の炭素Cとの間で相関が観られなかった。このことから、ジエチレントリアミン由来構造の中心のNに結合するのはエピクロロヒドリン由来構造ではないことがわかる。さらに、15N−NMRスペクトルでアミド由来の108ppm付近にピークが観られた。このことから、ジエチレントリアミン由来構造の中心のNに結合するのはC=Oで、中心Nは3級アミドであることがわかる。
【0088】
以上の構造解析の結果から、エピクロロヒドリン変性物を加熱処理することによって、上記化学式(1)で表される、3級アミン構造を有した化合物が生成されると判断することができる。
【0089】
(加熱処理時間と分子量について)
次に、加熱処理時間と生成された化合物の分子量との関係について検討した。
【0090】
上述と同様にしてエピクロロヒドリン変性物を生成し、生成したエピクロロヒドリン変性物(50wt%水溶液)を上述と同様にして、所定時間加熱処理した。すなわち、生成したエピクロロヒドリン変性物を三口フラスコに入れ、フラスコに還流管、温度計を取り付け、96℃のウォーターバスに三口フラスコを入れて、スターラー撹拌した。フラスコ中の水溶液が96℃になってから所定時間、反応温度96℃を維持して、撹拌しながら加熱した。所定時間が経過すると、直ちにフラスコを冷水に入れて、フラスコ中の水溶液が25℃となるまで冷却し、試料とした。なお、所定時間として、0(加熱処理無し)、3、6、10、15時間とした。
【0091】
生成したエピクロロヒドリン変性物に対して、3、6、10、15時間の各時間加熱処理を行って生成した各化合物と、加熱処理を行わなかったエピクロロヒドリン変性物の、それぞれの化合物の分子量を測定した。測定は、GPC(gelpermeation chromatography)により以下の条件で行った。表3に、測定結果を示す。
【0092】
[測定条件]
GFC:日本分光社製 PU-2085plus型システム
カラム:Shodex社製 Asahipak GF-7M HQ (7.5mmI.D×300mmL)
溶離液:0.1M NaCl水溶液/メタノール=60/40
流速:0.5mmL/min
検出器:RI(40℃)
注入量:10μL
標準試料:ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレングルコール(EG)
試料調整:試料溶液を乾固し、溶離液を用いて1%水溶液を調整した。
【0093】
【表3】

【0094】
この表3に示すGPC測定の結果からわかるように、より長時間加熱処理することによって、化合物の分子量が小さくなることが明確にわかる。上述した15N−NMR測定の結果も勘案すると、加熱処理することによって、エピクロロヒドリン変性物の網状化合物の3級アミドが3級アミンに変化し、分子量が低下したと判断することができる。
【0095】
≪加熱処理時間及び温度と、ビアホール・スルーホール混在基板に対するめっき処理≫
次に、ビアホール・スルーホール混在基板に対して、エピクロロヒドリン変性物を所定条件で加熱処理して生成した化合物をレベラーとして添加しためっき浴と、エピクロロヒドリン変性物を加熱処理せずにそのまま添加させためっき浴とで、via窪み量とスルーホールのスローイングパワー(TP)について評価した。
【0096】
(加熱処理時間について)
エピクロロヒドリン変性物に対する加熱処理条件として、反応温度を96℃とし、加熱処理時間を0(加熱処理無し)、3、6、10、15、20時間の各処理時間条件で6種類のレベラーを生成した。この6種類のレベラーを1種ずつ添加した合計6種類の電気銅めっき浴を用いて、ビアホール・スルーホール混在基板におけるvia窪み量並びにスルーホールのスローイングパワー(TP)及びスルーホールコーナー(TH corner:TH−C)部の付きまわり性について検討した。表4に、測定結果を示す。なお、レベラーの濃度は10mg/Lとし、その他の電気めっき処理条件並びにTP及びTH−C部の付きまわり性の評価方法は、下記に示す通りである。なお、ここで、ビアホールのvia窪み量とは、図7に示すX部測定量をいう。
【0097】
[電気めっき条件]
硫酸銅5水塩:250g/L
硫酸:25g/L
塩化物イオン:50mg/L
ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(二ナトリウム塩)(SPS):1.0mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量6000)(PEG):300mg/L
めっき温度:25℃
Dk(陰極電流密度):1.0ASD
めっき時間:90分(20μm)
【0098】
[TP評価]
図8に示されるようにスルーホール及びその周囲の断面を切出し、断面観察によりa〜fで示されるめっき皮膜の膜厚を各々測定し、その結果から下記式により算出した。
TP(%)=2(e+f)/(a+b+c+d)×100
なお、図7、8中、11はビアホール、12はめっき皮膜、13は表面積層銅箔、14は樹脂層、15は内部銅箔、16はスルーホールである。また、図8中のe、fで示されるめっき皮膜の膜厚は、スルーホール16の略中央付近の膜厚である。
【0099】
[TH−C部の付きまわり性評価]
図8に示されるようにスルーホール及びその周囲の断面を切出し、断面観察によりa〜jで示されるめっき皮膜の膜厚を各々測定し、その結果から下記式により算出した。なお、図8におけるg〜jで示されるめっき皮膜の膜厚は、スルーホールのコーナー部に形成されためっき皮膜の膜厚(スルーホール側面に対して135°の位置における厚さ)である。
TH corner(%)=(g+h+i+j)/(a+b+c+d)×100
【0100】
【表4】

【0101】
この表4に示されるように、加熱処理しなかった化合物をレベラーとして添加しためっき浴の場合には、35.4μmものvia窪み量となった。一方、加熱処理を行うことによって生成した化合物を添加しためっき浴の場合、加熱処理時間が3時間であっても25.1μmのvia窪み量となり、加熱処理なしの場合と比較して10μm以上のも差が表れた。そして、加熱処理時間を長くするほど、via窪み量は小さくなり、加熱処理なしの場合と比較した差も著しく大きくなった。特に、10時間以上の加熱処理を行って生成したレベラーを添加させた場合には、via窪み量を8.9μm以下とすることができた。
【0102】
なお、スルーホールのスローイングパワー(TP)については、加熱処理時間によって殆んど変化はなかったが、何れの処理時間においてもスルーホールに対して良好な付きまわり性を示した。また、スルーホールコーナー部においても、加熱処理時間によって殆んど変化はなく、良好な付きまわり性を示した。
【0103】
(加熱処理温度について)
次に、加熱処理時間10時間及び15時間のそれぞれにおいて、加熱処理温度と、ビアホール・スルーホール混在基板におけるvia窪み量(μm)並びにスルーホールのスローイングパワー(TP)及びスルーホールコーナー(TH−C)部の付きまわり性との関係について検討した。加熱処理温度は、80、90、93、96℃のそれぞれについて検討し、電気めっき処理条件は上記と同様にした。表5に、加熱処理時間10時間としたときの測定結果を示し、表6に、加熱処理時間15時間としたときの測定結果を示す。
【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
この表5及び表6に示されるように、加熱処理時間10時間、15時間のそれぞれの場合において、加熱処理温度が高いほど、via窪み量を小さくすることができることがわかった。
【0107】
具体的に、加熱処理時間10時間の場合、加熱処理温度80℃以上で29.5μm以下とすることができ、表4に示した加熱処理なしの場合と比較しても、大幅にvia窪み量を小さくすることができた。そして、特に、加熱処理温度を96℃としたときには8.9μmという小さいvia窪み量とすることができた。
【0108】
一方で、加熱処理時間が15時間の場合、加熱処理温度80℃以上で25.3μm以下とすることができ、表5に示した加熱処理なしの場合と比較しても、大幅にvia窪み量を小さくすることができた。そして、特に、加熱処理温度93℃で9.1μm、96℃で8.7μmという小さいvia窪み量とすることができた。
【0109】
このことから、加熱処理時間を10時間とした場合には96℃以上の処理温度で、また加熱処理時間を15時間とした場合には93℃以上の処理温度で、加熱処理を行うことによって、10μm以下のvia窪み量とすることができることがわかった。そして、特に、96℃の温度条件で加熱処理することにより、処理時間10時間という短い時間で、効率的に、via埋め込み性を向上させることが可能なレベラーを生成できることがわかった。
【0110】
なお、スルーホールのスローイングパワー(TP)については、加熱処理温度によって殆んど変化はなかったが、何れの処理温度においてもスルーホールに対して良好な付きまわり性を示した。また、スルーホールコーナー部においても、加熱処理温度によって殆んど変化はなかったが、何れの処理温度においても良好な付きまわり性を示した。
【0111】
(比較例について)
以下の比較例について、ビアホール・スルーホール混在基板におけるvia窪み量並びにスルーホールのスローイングパワー(TP)及びスルーホールコーナー(TH−C)部の付きまわり性を測定した。
【0112】
比較例1として、電気めっき浴に2級アミンと3級アミンのコポリマーであるポリエチレンイミン(平均分子量600)0.1mg/Lをレベラーとして含有させたこと以外は、電気めっき条件は上記と同様にして電気銅めっき処理を行った。なお、このポリエチレンイミンは、株式会社日本触媒製 エポミンSP-006を使用した。
【0113】
比較例2として、電気めっき浴にポリ2級アミドであるポリグルタミン酸10mg/Lをレベラーとして含有させたこと以外は、電気めっき条件は上記と同様にして電気銅めっき処理を行った。なお。このポリグルタミン酸は、MP Biomedicals製のものを使用した。
【0114】
比較例3として、電気めっき浴にポリ3級アミンであるPO変性ポリエチレンイミン10mg/Lをレベラーとして含有させたこと以外は、電気めっき条件は上記と同様にして電気銅めっき処理を行った。なお、PO変性ポリエチレンイミンは、株式会社日本触媒製 エポミンPP01を使用した。
【0115】
また、比較例4として、下記の電気めっき条件のvia埋め込み用電気めっき浴を用いて、ビアホール・スルーホール混在基板におけるvia窪み量並びにスルーホールのスローイングパワー(TP)及びスルーホールコーナー(TH−C)部の付きまわり性を測定した。表8に、測定結果を示す。
【0116】
[電気めっき条件]
硫酸銅5水塩:250g/L
硫酸:25g/L
塩化物イオン:50mg/L
ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(二ナトリウム塩)(SPS):1.0mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量6000)(PEG):300mg/L
ヤヌスグリーンブラック(JGB):1.0mg/L
めっき温度:25℃
Dk(陰極電流密度):1.0ASD
めっき時間:90分(20μm)
【0117】
表7に、各比較例におけるvia窪み量の測定結果を示す。
【0118】
【表7】

【0119】
この表7に示すように、比較例1〜3のそれぞれにおいては、via窪み量が45μm以上となってしまい、ビアホールに対して良好にめっきを埋め込むことができなかった。また、スルーホールに対するめっき皮膜の付きまわり性についても、比較例1でスローイングパワー(TP)が70%と比較的高い値であったものの、比較例1乃至3に係るめっき浴を用いた場合では、表4乃至表6に示した本発明に係るめっき浴を用いた場合に比して、付きまわり性は劣っていることがわかる。また、スルーホールコーナー部の付きまわり性についても、比較例1乃至3において45〜57%と、本発明に係るめっき浴を用いた場合と比べて、非常に低い値となった。
【0120】
また、比較例4においては、via窪み量は7.5μmとなり、via埋め込み性は良好であったが、スルーホールに対しては、スローイングパワー(TP)が21%と非常に低く、スルーホールコーナー部に対する付きまわり性もわずか5%となった。したがって、比較例4において用いた電気めっき浴では、ビアホール・スルーホール混在基板に対して、ビアホールにめっきを良好に埋め込むことができても、スルーホールに対しては良好なつきまわり性を実現することができず、不良な基板が形成されてしまうことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性銅塩、硫酸、及び塩化物イオンを主構成成分とし、かつ下記式(1)
【化1】

〔式(1)中のRは、下記式(2)又は(3)
【化2】

で表され、Rは、下記式(4)
【化3】

で表される。lは0以上の整数を示し、mは1であり、nは0以上の整数を示す。〕
で表される化合物を添加してなる電気銅めっき浴。
【請求項2】
上記式(1)で表される化合物は、下記式(5)
【化4】

で表される化合物を加熱処理して生成したものである請求項1記載の電気銅めっき浴。
【請求項3】
上記式(5)で表される化合物は、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε−カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物である請求項2記載の電気銅めっき浴。
【請求項4】
さらに、下記式(6)〜(9)
【化5】

〔式中のR,R及びRは各々炭素数1〜5のアルキル基、Mは水素原子又はアルカリ金属、aは1〜8の整数、b,c及びdは各々0又は1を示す。〕
から選ばれる硫黄含有化合物を添加してなる請求項1乃至3の何れか1項記載の電気銅めっき浴。
【請求項5】
さらに、下記式(10)
【化6】

〔式中のRは炭素数2又は3のアルキレン基、eは4以上の整数を示す。〕
で表されるポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体を添加してなる請求項4記載の電気銅めっき浴。
【請求項6】
上記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体である請求項5記載の電気銅めっき浴。
【請求項7】
スルーホールとビアホールとを有する被めっき物を、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電気銅めっき浴に浸漬し、該被めっき物を陰極として電気めっきを行い、上記スルーホール内とビアホール内を同時にめっきする電気銅めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−63843(P2011−63843A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215026(P2009−215026)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】