説明

電気集塵機

粒子を含む空気流が通過する管路への空気吸入手段と、空気流に対して略垂直に管路内に集束静電界を発生させる手段とを備え、発生手段が、イオン源を含む2次元の表面電極と、接地された対向電極とを備え、空気吸入手段及び表面電極が、管路内における空気流の方向と実質的に反対の方向にイオンを案内するように構成されている、電気集塵機が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境からの浮遊粒子の収集に適している電気集塵機に関する。本発明は、特に、排他的であるわけではないが、環境中に浮遊する生物学的粒子を集塵することができる電気集塵機に向けられる。
【背景技術】
【0002】
空気からの粒子の分析のための収集は、しばしば、非常な高速までの空気の加速によって収集表面に対して粒子を固着することに依存する。しかしながら、そのような固着技術は、小粒子(約1μmの直径を意味する)の収集のためには非効率的であり、しばしば非常に高いエネルギの投入を必要とする。
【0003】
電気集塵による塵埃及び他の粒子の除去は、排ガス又は空気を浄化するための工業規模の用途を見出すよく知られている技術である。
【0004】
しかしながら、分析のための粒子の収集技術として、電気集塵には殆ど注意が払われていなかった。実際に、大部分の電気集塵機は、収集表面が比較的大きく、したがって、希薄な粒子サンプルのみが得られるという点で、環境からの粒子の効率的な収集のためには不適切である。
【0005】
効率的な収集の問題に対する1つのアプローチは、粒子が配設される微細機械加工されたチャネルを有する多くの収集板を備える小型の電気集塵機(InnovaTek社、米国)を利用する。粒子は、最小限の体積の収集流体によって収集される。
【0006】
欧州特許第0239865号明細書は、ガス流から粒子を除去する電気集塵機を開示している。集塵機は、コロナ放電イオン源を備える円筒状の電極装置と、荷電粒子がそれによって対向電極の方に向けられるがその下方に収集される対向電極とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0239865号明細書
【特許文献2】国際特許出願PCT/GB2003/004886号明細書
【特許文献3】オランダ国特許出願第8000042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人によって生み出された同様のアプローチは、1点の表面に対してコロナ放電電界によって荷電された粒子を密に集めることを試みている。本装置は、コロナ放電イオン源と、同軸に取り付けられたピンを備える対向電極の方にそれらを向けるために粒子上に生み出された電荷と同一極性の一連の集束リング電極とを使用している。
【0009】
しかしながら、このアプローチは、粒子の大きさが凝縮によって増加する場合であっても、所望の空気流で粒子に生み出された電荷の程度が不均一であるという点で、粒子の効率的な収集のためには十分ではない。さらにまた、所望の作動電位で粒子に作用している集束電界は、しばしば、抗力効果を克服することができないか、又は荷電電界からの粒子の流出を阻む。したがって、集束電界を通過するある割合の粒子のみが、対向電極に向かって追いやられる。
【0010】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願PCT/GB2003/004886号明細書は、分析のための粒子の収集に適切な電気集塵機を開示している。集塵機は、粒子のさらに均一な荷電を可能とするプラズマイオン源を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はまた、対向電極へ粒子を集束することに関するが、コロナ風の影響を利用することによってこの目的を達成しようとする従来技術と異なっている。
【0012】
したがって、本発明は、粒子を含む空気流が通過する管路への空気吸入手段と、空気流に対して略垂直に管路内に集束静電界を発生させる手段とを備え、発生手段が、イオン源を含む2次元の表面電極と、接地された対向電極とを備え、空気吸入手段及び表面電極が、管路内における空気流の方向と実質的に反対の方向にイオンを案内するように構成されている、電気集塵機を提供する。
【0013】
集束電界は、接地された対向電極に向かってイオン及び粒子を追いやり、空気流と反対の方向に案内されるイオンは対向電極に到達しないということが理解される。
【0014】
好ましい実施形態において、管路及び表面電極は、双方とも、円筒状である。この実施形態において、空気吸入手段は、内部の空気流の方向に対して管路の上部にわたって独立に支持される集塵機のためのハウジングの一部を備えてもよい。空気吸入手段は、管路とともに、ハウジングなしで空気の吸入のための制限された通路を画定することができる。
【0015】
最も好ましくは、ハウジング及び空気吸入手段は、円筒状であり、空気の吸入のための全方向開口をともに画定している。
【0016】
好ましい実施形態において、表面電極は、イオン源が管路の上部内に位置するように管路内に配置されている。最も好ましくは、表面電極は、イオン源が集束部分よりも上方に位置するように配置されている。
【0017】
電極と管路の上部の内面との間に生み出された電界が、対向電極に到達しないイオンを空気吸入手段に向かって移動させる傾向がある、表面電極の横断面直径よりも、管路の横断面直径が大きいことは明らかである。
【0018】
1つの実施形態において、対向電極に到達しないイオンを空気吸入手段に向かって移動させて且つ荷電表面電極から離れるように移動させる傾向もあるように、空気吸入手段は接地されている。
【0019】
好ましくは、管路は、低から中程度の表面抵抗率(1013Ωmオーダー)の材料を備える。最も好ましくは、材料はまた、その内面上の制御された表面荷電と低い電荷漏洩とを確保するように高いバルク導電率(1014S/mオーダー)からなる。
【0020】
好ましい実施形態において、外面は、接地されている、及び/又は、管路の上部は、粒子の堆積を最小化する傾向があるように上端部に向かって内側に先細りしている。先細り角度は、20°が好ましいが、例えば、30°、35°、40°、及び45°等、他の角度も可能である。
【0021】
最も好ましくは、対向電極は、略円形横断面からなる細長い部材を備える。対向電極は、特に、他の装置もまた可能であるが、管路内に同軸に取り付けられるロッド、ワイヤ、又はピンを備えることができる。
【0022】
好ましい実施形態において、対向電極は、導電性材料、好ましくはエラストマー材料からなるベルトを備える。ベルトは、収集面積を最小化するために、略円形横断面からなるのが好ましい。
【0023】
1つの実施形態において、ベルトは、無端であり、駆動手段と関連することができるプーリー装置によって支持されている。好ましくは、ベルト及びプーリー装置は、管路及び空気吸入手段の長手方向の全長に沿ってベルトが延在しているようなものである。
【0024】
ベルトは、特にベルトがそこを通って移動しなければならない液体ウォッシュポットを備えることができる収集手段と結合されるのが好ましい。ウォッシュポットは、ベルトが抜け出るのにともないベルトから大部分の液体を除去するように作動する油圧ロッドシールを含む。
【0025】
全てではないにしても大部分の液体をベルトから除去する油圧ロッドシールの作用は、最低限の液体が収集のために使用されるのを可能とし、したがって、粒子の迅速な集中を提供する。集中は、略円形横断面からなるベルトを用いてさらに改良される。
【0026】
オランダ国特許出願第8000042号明細書を参照すると、浄化集塵機においてベルト及びウォッシュポットを使用することは知られているが、対向電極を清潔に維持するためのみであり、分析のための粒子を収集するためではない。
【0027】
好ましい実施形態において、イオン源は、表面電極上の円形アレイに配置され得る複数のコロナ放電ピンを備える。さらに、各ピンは、電流の平衡とさらにはイオンの分配とを提供するために、高い値の抵抗器と結合されてもよい。
【0028】
あるいは、イオン源は、国際特許出願PCT/GB2003/004886号明細書に記載されているように、1つのプラズマ電極又は複数のプラズマ電極を備えてもよい。
【0029】
本発明の実施は、粒子の大きさ、電位、空気吸入手段、管路、及び表面電極の相対的な寸法及び位置、並びに、空気流の速度等、多数のパラメータの適切な選択にある程度は依存するということが認識される。
【0030】
好ましい実施形態において、条件を満たした電位における1mlの液体(水)及び空気流の速度(空気ポンプ、標準で1分あたり700リットル)に対する小粒子の効率的な収集は、内部の横断面直径が100mmの円筒状の管路と、内部の横断面直径が80mmの円筒状の表面電極と、円形横断面が20mmのベルトと、約30本から40本のコロナピン(長さが5mm、最適には36ピン)を備え且つ管路の上端部の下方60mmに位置したイオン源と、内部の横断面直径及び高さが200mmであって管路の上端部の上方90mmに位置した空気吸入手段とを使用して達成され得た。
【0031】
しかしながら、当業者は、本発明がイオン源の上流にイオン流を追いやるためにコロナ風を利用することを認識するはずである。したがって、本発明は、管路に粒子が入る前に粒子が荷電されるという利点を提供し、その利点により非常に小型であり且つ可搬式の装置を可能とする。
【0032】
本発明は、好ましい実施形態及び以下の図面を参照することにより、ここに説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好ましい実施形態の概略図である。
【図2】表面電極を示しているこの実施形態における管路の一部の断面図である。
【図3】この実施形態が使用される場合に生み出される静電界を一般的に示している断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、図1を考慮すると、一般に符号1で指示されている電気集塵機が示されており、それは、粒子を含む空気流が通過する管路3が中央に配設されている円筒状のハウジング2を備える。
【0035】
ポリ塩化ビニルを含む管路3は、一般に、管状であり、100mmの内部の横断面直径を有する。管路の外面の上部3aは、端部3bに向かって20°で先細りしている。
【0036】
導電性材料を含むハウジング2は、一般に、管路3の上方及び下方において独立に支持されている2つの半円筒状の部分から構成されている。
【0037】
ハウジングの上部は、集塵機に対する空気の吸入のための環状開口を下部とともに画定する空気吸入手段4を備える。空気吸入手段4はまた、管路3の外面とともに、管路3に対する空気の吸入の移動のための制限された通路(矢印によって示された)を形成するように画定している。
【0038】
接地されている空気吸入手段4は、200mmの内部の横断面直径及び高さを有し、その端部が上端部3bから90mmであるように管路3にわたって且つ管路3の上方に配置されている。
【0039】
また、図2も参照すると、表面電極5は、管路の上端部3bの下方60mmに位置した長さが80mmのプラスチック製チューブを備える。この位置は、フラッシュオーバ及び表面トラッキングの可能性を最小にする。チューブには、その上部にイオン源6が設けられ、その下部に銅テープ7が設けられている。イオン源は、36本のコロナピンからなる円形アレイを備える。各ピンは、イオン電流が平衡するのを可能とするように(5μA)、高い値の抵抗器(1GΩ、図示しない)を介して高圧電源(〜10V)に連結されている。
【0040】
空気吸入手段4は、ベルト8がハウジング2の下部において空気吸入手段4及び管路3を通って中央に延在するようにプーリー装置9上に支持されて取り付けられている円形横断面からなる接地された導電性エラストマーベルト8のための開口を、その端部に画定している。
【0041】
一般に符号10で指示されているウォッシュポットは、ベルトもそこを通って中央に延在するように、管路3の下方においてハウジング2の下部に取り付けられている。約1mlの体積を有するウォッシュポットは、収集流体をウォッシュポット内に保持するように作動する油圧ロッドシールを備える。
【0042】
ここで、図3も参照すると、粒子を含む空気流は、空気ポンプ(図示しない)により、静電界に接触する空気吸入手段4に導入される。これからわかるように、静電界は、管路の内面と表面電極との間の領域Xにおいて、外側に先細りしている。その結果、対向電極に到達しないイオンは、空気吸入手段に向かって上方に螺旋状となる。この領域へのイオンの移動は、管路に接近する空気流内の粒子が、管路3に到達する前に、かなりの程度で荷電されることを意味する。
【0043】
また、管路3の上端部3bの領域Yにおける静電界の湾曲もわかる。この領域における電界の形状は、空気流内を移動する粒子が減速し、それにより、管路3の上部の外面上に堆積しにくいことを意味する。
【0044】
粒子の大部分は、電界によって集められ、管路の上部の領域よりも上方又は管路の上部の領域内において、ベルト上に堆積する。プーリー装置によって駆動されるベルト8は、ウォッシュポット10を通って移動し、粒子が水等の収集流体に移される。
【0045】
図1において言及される本発明の好ましい実施形態は、良好な集塵効率で、空気から液体サンプル内に生物学的物質(枯草菌(Bacillus subtilis var.niger)胞子)を収集して回収するように一貫して示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含む空気流が通過する管路への空気吸入手段と、空気流に対して略垂直に管路内に集束静電界を発生させる手段とを備え、発生手段が、イオン源を含む2次元の表面電極と、接地された対向電極とを備え、空気吸入手段及び表面電極が、管路内における空気流の方向と実質的に反対の方向にイオンを案内するように構成されている、電気集塵機。
【請求項2】
空気吸入手段が、接地されている、請求項1に記載の電気集塵機。
【請求項3】
表面電極が、管路の上部内に配置されている、請求項1又は2に記載の電気集塵機。
【請求項4】
表面電極が、管路の直径よりも実質的に小さい直径を有する、請求項3に記載の電気集塵機。
【請求項5】
管路が、1014S/mオーダーのバルク導電率及び1013Ωmオーダーの抵抗率の材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項6】
管路が、接地され且つ上端部に向かって内側に先細りしている外面を備える、請求項6に記載の電気集塵機。
【請求項7】
対向電極が、略円形横断面からなる細長い要素を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項8】
対向電極が、導電性ベルトを備える、請求項7に記載の電気集塵機。
【請求項9】
ベルトから粒子を収集する手段をさらに備える、請求項8に記載の電気集塵機。
【請求項10】
収集手段が、液体槽を備える、請求項9に記載の電気集塵機。
【請求項11】
イオン源が、複数のコロナピンを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項12】
イオン源が、プラズマ電極を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項13】
表面電極及び対向電極が、略円筒状である、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項14】
添付図面を参照して実質的に上述された電気集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501347(P2010−501347A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526161(P2009−526161)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003204
【国際公開番号】WO2008/025954
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】