説明

電気集塵装置

【課題】従来の電機集塵装置は、多数の部品を複雑に加工して製作しなくてはならず、製造コストが高いという課題があった。
【解決手段】コの字型の断面の接地側電極板3を複数積層し固定することで複数の通風口5を形成する筐体2と、通風口5内に接地側電極板3と空間を保って配置される印加側電極板7を備え、印加側電極板7の上流側に複数の棘状の放電部9を備え、直流電圧を印加する電源6を備える電気集塵装置1とすることで、部品点数の少ない簡素な構造で、低コストで製造できる電気集塵装置1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において、電気的な作用により空気中の塵埃や汚染物質を捕集する電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気集塵装置は、主にコロナ放電により空気分子をイオン化し、空気中に含まれる塵埃や汚染物質を帯電させるとともに、帯電させた塵埃や汚染物質をクーロン力により捕集するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その集塵装置について図9、10を参照しながら基本的構成及び動作原理について説明する。この例の電気集塵装置は、針先101の回りにコロナ放電102を起こして、装置内を流れる空気中の汚染物質である炭素微粒子103を帯電させるためのニードル電極104と、帯電された炭素微粒子103を静電気力で捕集するための捕集電極105と、帯電された炭素微粒子103に捕集電極105へ向かう偏向力を付与するための偏向電極106と、ニードル電極104と捕集電極105との間及び偏向電極106と捕集電極105との間に所定の直流高電圧を印加するための高圧直流電源107とを備えて構成されている。ニードル電極104は角棒状の偏向電極106の先端部に溶接やカシメ等で固着され、互いに略共通の軸心を持つニードル電極104と偏向電極106との電極結合体であるニードル偏向結合電極108が形成されている。捕集電極105はハニカム状に形成されており、捕集電極の各通路に、針先101が通路の中心に位置するようにニードル変更結合電極108が配設されている。
【0004】
上記構成において、高圧直流電源107から発生する高電圧をニードル偏向結合電極108に出力すると、ニードル電極104と偏向電極106は高電位となるが、特に、ニードル電極104の針先101に電界が集中するので、針先101の回りにコロナ放電102が持続的安定的に発生する。それゆえ、炭素微粒子103は、そこを通過する際に、比較的イオン化エネルギの低い気体分子が電離してプラスイオンになり、これが炭素微粒子103に付着して粒子自身にプラスイオンの電荷を持たせることとなる。このようにして帯電された炭素微粒子103は、捕集電極105に近いものは、負電位の捕集電極105の極板に吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2698804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の電気集塵装置では、捕集電極105を製作するために多数の板材を加工して組み立ててハニカム状に形成する必要があり、また多数のニードル偏向結合電極108が必要であり、またニードル偏向結合電極108の製作は板材を角棒状の偏向電極106に組み立てた後ニードル電極104を固着する必要があるなど、多数の部品を複雑に加工して製作しなくてはならず、製造コストが高いという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、部品点数の少ない簡素な構造で、低コストで製造できる電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明は、コの字型の断面を延伸した形状の電極板Aを複数積層し固定することで複数の通風口を形成する直方体状の筐体と、筐体のそれぞれの複数の通風口の上流側から下流側まで電極板Aと空間を保って配置される電極板Bを備え、電極板Bはその上流側にコロナ放電を発生させるための複数の棘状の放電部を備え、電極板Aと電極板B間に直流電圧を印加する電源を備え、通風口の上流側から下流側へ流れる空気中の塵埃を捕集する電気集塵装置としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数の少ない簡素な構造で、低コストで製造できる電気集塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の電気集塵装置の斜視図
【図2】同電気集塵装置の接地側電極板の斜視図
【図3】同電気集塵装置の印加側電極板の斜視図
【図4】同電気集塵装置の分解図
【図5】同電気集塵装置の側断面図
【図6】同電気集塵装置の上面断面部分拡大図
【図7】本発明の実施の形態2の電気集塵装置の分解図
【図8】同電気集塵装置の側断面図
【図9】従来の電気集塵装置の構成図
【図10】従来の電気集塵装置の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の請求項1記載の発明は、コの字型の断面を延伸した形状の電極板Aを複数積層し固定することで複数の通風口を形成する直方体状の筐体と、筐体のそれぞれの複数の通風口の上流側から下流側まで電極板Aと空間を保って配置される電極板Bを備え、電極板Bはその上流側にコロナ放電を発生させるための複数の棘状の放電部を備え、電極板Aと電極板B間に直流電圧を印加する電源を備え、通風口の上流側から下流側へ流れる空気中の塵埃を捕集するという構成を有する。これにより、筐体の通風口内に設置される電極板Bの上流側の放電部と電極板Aとの間のコロナ放電により空気中の塵埃を帯電する帯電部を形成し、また電極板Bの下流側と電極板Aの間の電界により集塵部を形成することができるので、構造を簡素化でき、また電極板Aの間隔を保つ部材を不要にすることができるので構造を簡素化でき、低コストで製造することができるという効果を奏する。
【0012】
また、積層された電極板Aを通風口を塞がないように囲む導電性の外郭で固定する構成にしても良い。これにより、電極板A同士の接続を不要にでき、また複数の電極板Aを外郭を介して容易に電源と接続することができ、構造を簡素化し低コストで製造できるという効果を奏する。
【0013】
また、電極板Aがセラミックスで、電極板Aの上流側端面に電源と導通する導電部を設けた構成にしても良い。これにより、それぞれの電極板Bのそれぞれの棘状の放電部の先端から導電部までの距離をほぼ一様にできるため、コロナ放電にむらが生じず均一に放電させることができ、捕集効率が向上するという効果を得ることができる。これは、セラミックスは導電性ではないため、放電部の先端から導電部までの距離によって抵抗値が変わり、コロナ放電の強度が変わってくるからである。またセラミックスは抵抗により電流が抑制され、スパーク発生時のような大電流は流れないため、スパークが発生しない。このことにより、印加電圧を高く設定することができ、捕集性能を向上させることができるという効果を奏する。
【0014】
また、電極板Aの表面抵抗率を10〜1013Ω/□とした構成にしても良い。これにより、スパークが発生する時に流れる大電流を抑制することができるため、スパークの発生を抑えられるという効果を奏する。表面抵抗率が10Ω/□より低いと電流を抑制する効果が少ないため、スパークの発生を抑えられない。また表面抵抗率が1013Ω/□より高いとコロナ放電自体が発生しなくなり、電気集塵としての機能を発揮できなくなる。
【0015】
また、電極板Aの表面に無機物質より成る半導電層を設け、その表面抵抗率を10〜1010Ω/□とした構成にしても良い。これにより、セラミックスの電極板Aの表面抵抗率が10より小さい場合や、1013Ω/□より大きい場合であっても、表面に設ける半導電層により、表面抵抗率を調整することが可能となり、より望ましい表面抵抗率である10〜1010Ω/□に設定することができるという効果を奏する。
【0016】
また、電極板Aの上流側端面に設けた導電部を絶縁物で被覆した構成にしても良い。これにより、放電部と導電部との間での火花放電や短絡などを確実に防ぐことができるという効果を奏する。
【0017】
また、筐体を上流側と下流側に分割した構成にしても良い。これにより、上流側でコロナ放電によって流れる電流が流出側に流れることにより表面電位の絶対値が高くなって電界強度が弱くなることを抑制し、捕集効率の低下を抑制できるという効果を奏する。
【0018】
また、上流側の筐体と下流側の筐体の間に絶縁体を備える構成にしても良い。これにより、筐体の流入側と流出側を電気的に確実に絶縁することができ、筐体の上流側から流出側への電流を抑制する効果をより確実に発揮させることができるという効果を奏する。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1から図6に示すように、電気集塵装置1の筐体2は、長さ96mm、幅12mm、板厚3mmのコの字型の断面を90mm延伸した形状の接地側電極板3を8枚積層して外周を外郭4で囲んで固定し形成される。接地側電極板3の断面はコの字型であるため通風口5が形成され、処理空気は通風口5の一方から流入し他方から流出し、外郭4は通風口5を塞がないよう4面のみ囲む。また外郭4の材質は導電性を備え(例えばステンレス)、電気的に接地されている。
【0021】
それぞれの通風口5には電源6により高電圧が印加される導電性の材質(例えばステンレス)の印加側電極板7が接地側電極板3と所定の距離(本実施の形態では4mm)を保って挿入され、筐体2より下流に配置された保持部材8により保持されている。印加側電極板7の上流側は棘状に加工された放電部9を備える。
【0022】
接地側電極板3の材質は表面抵抗率が10〜1013Ω/□のセラミックス(例えばコージェライト)であり、また上流側端面10に外郭4と電気的に導通する導電性材質(例えば銀)からなる導電部11を設けている。導電部11は絶縁物12(例えば絶縁ガラス)で被覆している。
【0023】
上記構成において、電源6により印加側電極板7に高電圧(たとえば−7kV)を印加すると、筐体2の各々の通風口5内の印加側電極板7と接地側電極板3との間には電位差が発生する。これにより、通風口5の上流側では、印加側電極板7の上流側の放電部9に電界が集中し、放電部9付近の空気が絶縁破壊を起こし、コロナ放電が生じる(図5に示す、各々の通風口5内の破線で囲んだ部分を帯電部13と称す)。また、通風口5の下流側では、放電現象は起きないが、印加された電圧によって印加側電極板7と接地側電極板3の間で電界が生じている(図5に示す、各々の通風口5内の破線で囲んだ部分を集塵部14と称す)。
【0024】
図6に示すように、処理空気が帯電部13に流入し通過する際に、空気中に含まれる塵埃15は印加側電極板7に印加した電圧と同じ極性(本実施の形態ではマイナス)に帯電される。帯電された塵埃15は空気の流れに沿って帯電部13の下流側の集塵部14へ流入するが、集塵部14の電界の作用により、帯電した塵埃15が通過する際に電界によるクーロン力が働き、帯電した塵埃15が接地側電極板3上に捕集される。
【0025】
このように、複数の接地側電極板3を積層し導電性の外郭4で固定した筐体2の通風口5内に放電部9を備えた印加側電極板7を設置することにより帯電部13、集塵部14を形成することができるので、構造を簡素化でき、低コストで製造することができる。
【0026】
また、接地側電極板3の上流側端面10に導電部11を設けているので、それぞれの印加側電極板7の棘状の放電部9の先端から導電部11までの距離をほぼ一様にできるため、コロナ放電にむらが生じず均一に放電させることができ、効率よく塵埃15を帯電させることができ、捕集効率を向上させることができる。
【0027】
これは、セラミックスは導電性ではないため、放電部9の先端から導電部11までの距離によって抵抗値が変わり、コロナ放電の強度が変わってくるからである。またセラミックスは抵抗により電流が抑制され、スパーク発生時のような大電流は流れないため、スパークが発生しない。このことにより、印加電圧を高く設定することができ、捕集性能を向上させることができる。
【0028】
また、接地側電極板3の表面抵抗率を10〜1013Ω/□としているので、スパークが発生する時に流れる大電流を抑制することができるため、スパークの発生を抑えられるという効果を奏する。表面抵抗率が10Ω/□より低いと電流を抑制する効果が少ないため、スパークの発生を抑えられない。また表面抵抗率が1013Ω/□より高いとコロナ放電自体が発生しなくなり、電気集塵としての機能を発揮できなくなる。
【0029】
また、接地側電極板3の上流側端面10に設けた導電部11を絶縁物12で被覆しているので、印加側電極板7の放電部9と導電部11との間での火花放電や短絡などを確実に防ぐことができる。
【0030】
なお、接地側電極板3の表面に無機物質より成る半導電層を設け、その表面抵抗率を10〜1010Ω/□とすれば、セラミックスの接地側電極板3の表面抵抗率が10Ω/□より小さい場合や、1013Ω/□より大きい場合であっても、表面に設ける半導電層により、表面抵抗率を調整することが可能となり、より望ましい表面抵抗率である10〜1010Ω/□に設定することができるので、なお良い。
【0031】
なお、接地側電極板3の材質の他の例としては、ムライト・磁器・アルミナが挙げられる。また導電部11の材質の他の例としては、カーボン・銅・アルミ・ステンレスが挙げられる。絶縁物12の材質は樹脂系の絶縁体でもよい。
【0032】
なお、接地側電極板3の断面をコの字型としたが、さらに分割したL字型でも同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、印加側電極板7の放電部9はステンレスやタングステンなどの金属製の針を固着したものでも良い。
【0034】
(実施の形態2)
図7、8において、図1〜図6と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
図7、8に示すように筐体2を上流側筐体16と下流側筐体17に分割し、上流側筐体16と下流側筐体17の間に材質が絶縁性樹脂の接続部18を備えている。印加側電極板7の放電部9は上流側筐体16の通風口5内に位置し、上流側筐体16は帯電部13、下流側筐体17が集塵部14となっている。
【0036】
上記構成により、帯電部13である上流側筐体16と集塵部14である下流側筐体17を確実に絶縁することができるため、帯電部13である上流側筐体16でコロナ放電によって流れる電流が集塵部14である下流側筐体17に流れることにより表面電位の絶対値が高くなって電界強度が弱くなることを抑制し、捕集効率の低下を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明にかかる電気集塵装置は、産業用電気集塵機や家庭用空気清浄機、給気型換気扇等居住空間用空調設備の集塵装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 電気集塵装置
2 筐体
3 接地側電極板
4 外郭
5 通風口
6 電源
7 印加側電極板
8 保持部材
9 放電部
10 上流側端面
11 導電部
12 絶縁物
13 帯電部
14 集塵部
15 塵埃
16 上流側筐体
17 下流側筐体
18 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コの字型の断面を延伸した形状の電極板Aを複数積層し固定することで複数の通風口を形成する直方体状の筐体と、前記筐体のそれぞれの複数の前記通風口の上流側から下流側まで前記電極板Aと空間を保って配置される電極板Bを備え、前記電極板Bはその上流側にコロナ放電を発生させるための複数の棘状の放電部を備え、前記電極板Aと前記電極板B間に直流電圧を印加する電源を備え、前記通風口の上流側から下流側へ流れる空気中の塵埃を捕集する電気集塵装置。
【請求項2】
積層された前記電極板Aを前記通風口を塞がないように囲む導電性の外郭で固定する請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記電極板Aがセラミックスで、前記電極板Aの上流側端面に前記電源と導通する導電部を設けた請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記電極板Aの表面抵抗率を10〜1013Ω/□とした請求項3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記電極板Aの表面に無機物質より成る半導電層を設け、その表面抵抗率を10〜1010Ω/□とした請求項3または4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記電極板Aの上流側端面に設けた前記導電部を絶縁物で被覆した請求項3〜5のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記筐体を上流側と下流側に分割した請求項3〜6のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項8】
上流側の前記筐体と下流側の前記筐体の間に絶縁体を備える請求項7に記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−125733(P2012−125733A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281598(P2010−281598)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】