説明

電気集塵装置

【課題】粒子状物質含有ガスの濃度が一時的に高まる場合でも電気集塵機で粒子状物質の補集を確実に行うことができる電気集塵装置を提供する。
【解決手段】内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態でコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させて補集する電気集塵機4を備えた電気集電装置であって、前記電気集塵機4の上流側に前記粒子状物質含有ガスを一時的に蓄積可能なバッファ機構3を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質(PM:Particulate Matter)を含有する例えば内燃機関の排気ガス等の粒子状物含有ガス中から粒子状物質を除去するようにした電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスには、NOx、SOxの他、炭素を主成分とする粒子状物質などの有害物質が含まれている。人間が呼吸により粒子状物質を体内に吸い込むと様々な健康被害が発生することが知られており、粒子状物質を効率良く除去する粒子状物質除去装置の開発が望まれている。
このような粒子状物質除去装置として、排気ダクト中に、フィルタを設置する方法があるが、フィルタは目詰まりし易く、圧力損失が大きいなどの課題がある。これに対して電気集塵機は、目詰まりせず、圧力損失が小さいため、内燃機関の排気ダクトに取り付けるには有効である。しかしながら、ディーゼルエンジン等の内燃機関の始動時や負荷変動時に排出される高ダスト濃度の排ガスを電気集塵機で処理することは困難である。
【0003】
このため、従来、電気集塵方式の粒子状物質除去装置としては、例えばケーシング内の電気集塵部上流側に、ガス入口からの含塵ガスの流れに対して略直角な衝突板とこの衝突板の状態から下流側に向け略水平に延びる整流板とからなる逆L字状断面のルーバを、上段ルーバに対して下段ルーバが順次下流側に後退し、且つ上段ルーバの衝突板が下段ルーバの衝突板の上流側で重複するよう適宜な相互間隔を隔てて多段に配置し、ガス入口から導入された含塵ガス中のダストの一部を各ルーバの衝突板に衝突させて払い落とし、その直後に含塵ガスを各整流板相互の間を通過させて整流するようにした電気集塵機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、排気流れに関して異なる位置に上流側ディーゼル粒子状物質除去フィルタ(以下、DPFと称す)と、下流側DPFとを配置し、上流側DPF及び下流側DPF間に帯電装置を接続し、この帯電装置を、粒子状物質を帯電させる帯電用電極と帯電用電極の排気下流側に設けられ、接地された補集部とで構成し、補集部で上流側DPFから帯電装置に送られた粒子状物質の少なくとも一部を、静電的に大きな塊状に集結させた状態で補集可能とした排気浄化装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、断熱冷却方式の水冷装置を内部に備えた電気集塵機を脱硫装置の前段に配設し、SO3をミスト化することにより除去し、電気集塵機の外筒に断熱冷却用水のpHを制御する制御装置を配設し、アンモニアを吸収可能とした燃焼排ガス処理装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらにまた、舶用ディーゼルエンジンの排気煙道に沿って放電電極と集電電極からなる電気集塵手段と、排ガス中の固体粒子を補集するフィルタ手段とを配置し、電気集塵手段の全多段には海水噴霧手段を設け、排ガス温度を検出して電気集塵手段の入口における排ガス温度が酸露点温度となるように海水噴霧手段による噴霧量を制御して温度調整する温度制御手段を設けた舶用排ガス処理装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−155335号公報
【特許文献2】特開2009−74438号公報
【特許文献3】特開2002−71120号公報
【特許文献4】特開2009−52440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、電気集塵部の上流側で、高濃度の含塵ガスを衝突板に当てて、濃度を低減させるようにしているが、含塵ガスの粒子径が大きい場合に効果があるが、ディーゼルエンジン始動時や負荷変動時に一時的に生じる高濃度の排ガスを効率よく処理することはできないという未解決の課題がある。
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、帯電装置の上流側にディーゼル粒子状物質除去フィルタを配置しているので、このフィルタが目詰まりし易いとともに、圧力損失が大きくなるという未解決の課題がある。
【0009】
さらに、上記特許文献3及び4に記載の従来例にあっては、電気集塵部の上流側で水冷装置によって排ガスを酸露点温度に冷却してSO3をミスト化して除去するようにしているが、粒子状物質については効果はなく、排ガス濃度の一時的な変化による粒子状物質の濃度が高まる場合には対処できないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、粒子状物質含有ガスの濃度が一時的に高まる場合でも電気集塵機で粒子状物質の補集を確実に行うことができる電気集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電気集塵装置は、内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態でコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させて補集する電気集塵機を備えた電気集電装置である。そして、前記電気集塵機の上流側に前記粒子状物質含有ガスを一時的に蓄積可能なバッファ機構を配設したことを特徴としている。
【0011】
この構成によると、例えば内燃機関の始動時や負荷変動時に一時的に粒子状物質含有ガスの濃度が高くなる場合に、電気集塵機の上流側に配設したバッファ機構で、一時的に蓄積して粒子状物質含有ガスの濃度を希釈して電気集塵機に供給することができ、電気集塵機を一定運転したまま粒子状物質を確実に補集することができる。
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記バッファ機構は、前記粒子状物質含有ガスの流入管の容積に対して大きな容積のバッファタンクで構成され、一時的に高濃度となる前記粒子状物質含有ガスを蓄積して希釈することを特徴としている。
【0012】
この構成によると、バッファ機構がバッファタンクで構成され、このバッファタンクの容積が粒子状物質含有ガスの流入管の容積に対して大きな容積に設定されているので、このバッファタンクで粒子状物質含有ガスの濃度を確実に希釈することができる。
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記バッファタンクは、前記流入管に連通された筒部周壁に多数の開口が形成されたガス拡散管が内部に突出形成されていることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、流入管からバッファタンクに導入される粒子状物質含有ガスをガス拡散管でバッファタンク内に拡散するので、バッファタンク内の粒子状物質含有ガスの濃度分布を均一化することができる。
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記バッファ機構は、前記粒子状物質含有ガスに液体を噴霧し、且つ流入ガス容積に対して大きな容積を有するスクラバ装置で構成されていることを特徴としている。
この構成によると、スクラバ装置をバッファ機構として採用するので、粒子状物質含有ガスに噴霧する液体によってガス温度を低下させ粒子状物質含有ガスの体積を収縮させることができ、電気集塵機での粒子状物質の補集効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粒子状物質含有ガスをバッファ機構に供給してから電気集塵機に供給するので、例えば内燃機関の始動時や負荷変動時に一時的に粒子状物質含有ガスの濃度が高まる場合に、バッファ機構で一時的に蓄積して濃度を希釈してから電気集塵機に供給するので、電気集塵機で高濃度の粒子状物質含有ガスに対する特別な制御を行うことなく、粒子状物質を効率よく補集することができる。
このとき、バッファ機構としてスクラバ装置を適用する場合には、粒子状物質含有ガスの希釈効果に加えて、粒子状物質含有ガスに液体を噴霧して冷却することにより、粒子状物質含有ガスの体積を収縮させて電気集塵機の粒子状物質補集効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電気集塵装置の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1のバッファタンクを示す断面図である。
【図3】図1の電気集塵機の構成を示す外筒を一部除去して示す斜視図である。
【図4】電気集塵機の要部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す全体構成図である。
【図6】図5のスクラバ装置を示す断面図である。
【図7】図6のスクラバ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示す全体構成図である。
図中、1は例えば内燃機関特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる炭素を主成分とする粒子径が100μm以下の粒子状物質(PM:Particulate Matter)、特に粒子径が10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)を補集可能な電気集塵装置である。
【0017】
この電気集塵装置1は、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスが供給されるディーゼルエンジン2の上方に配置されたバッファ機構としてのバッファタンク3と、このバッファタンク3の上方に配置されてバッファタンク3から流出する粒子状物質含有ガスが供給される電気集塵機4とで構成されている。
バッファタンク3は、図2に示すように、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスが流入管5を介して流入され、流入する粒子状物質含有ガスを希釈するために、流入管5の容積に対して十分に大きい容積に選定されている。
【0018】
そして、バッファタンク3の流入管5の接続部には、流入管3に連通し、且つ筒部周壁に多数の開口6を有する有底の拡散管7がバッファタンク3の内部に突出形成されている。この拡散管7によって、流入管3から流入される粒子状物質含有ガスをバッファタンク3内に拡散して流入させ、バッファタンク3内の粒子状物質含有ガスの濃度分布を均一化する。この拡散管7の開口の形状としては図2に示すような円周方向に延長する長円形や円形その他の任意の形状を適用することができる。
【0019】
ここで、バッファタンク3内の容積をVB、バッファタンク3内の粒子状物質含有ガスの初期濃度をCBとし、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時の粒子状物質含有ガスの容積をVG、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時の粒子状物質含有ガスの濃度をCGとし、バッファタンク3から排出される粒子状物質含有ガスの容積をVE、バッファタンク3から排出される粒子状物質含有ガスの濃度CEとすると、このバッファタンク3から排出される粒子状物質含有ガスの濃度CEは下記(1)式で表すことができる。
E=(VB・CB+VG・CG)/(VB+VG) …………(1)
【0020】
このとき、バッファタンク3内の容積をVB=2m3とし、バッファタンク3内の粒子状物質含有ガスの初期濃度をCB=50mg/m3としたときに、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時に排出される粒子状物質含有ガスの容積VG=0.2m3、濃度CG=200mg/m3とすると、バッファタンク3から排出される粒子状物質含有ガスの濃度CEは、
E=(2×50+0.2×200)/(2+0.2)=63.6mg/m3
となる。このため、電気集塵機4の上流側(前段)にバッファタンク3を設置することにより、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時に排出される粒子状物質含有ガスの濃度CG=200mg/m3がバッファタンク3から排出される際には、63.6mg/m3となり、濃度が約1/3に希釈される。
【0021】
この希釈された粒子状物質含有ガスが電気集塵機4に供給される。
電気集塵機4は、図3に示すように、方形筒状の導電性の外部ケース11と、この外部ケース11の軸方向端面に配設された端板12a及び12bとで筐体13が形成されている。この筐体13内に仕切板14によって4分割された電極収納部15a〜15dが形成されている。
【0022】
各電極収納部15a〜15dのそれぞれは、図4に示すように、バッファタンク3から供給される粒子状物質含有ガスを導入する裁頭角錐筒状のガス案内部16と、このガス案内部16の下流側に形成された粒子状物質含有ガスを旋回流として送り出す旋回流形成部17と、この旋回流形成部17の下流側に配置された例えば断面が12面体の放電電極18を支持する電極支持部19と、この電力支持部19の下流側に配置された放電電極18を半径方向に所定距離を保って覆う例えばステンレス製で円筒状の筒状電極20と、この筒状電極20を囲んで支持する仕切板14及び外部ケース11で構成されるケーシング電極21と、最下流側に配置された放電電極支持部23とを備えている。
【0023】
ここで、放電電極18は、外周面に円周方向に90°間隔で4つの針状電極18aを形成した電極群が3組軸方向に所定間隔を保ち各電極群で円周方向に30°ずれた関係で多数形成されている。
また、筒状電極20の外周面には、放電電極20の針状電極部20aと対向する位置に、粒子状物質の粒子径より十分に大きい幅(例えば数mm程度)を有する長円形の貫通孔20aが多数形成されている。この貫通孔20aの形状は、長円形とする場合に限らず、円形としてパンチングパイプを適用するようにしてもよい。
【0024】
そして、放電電極18と筒状電極20及びケーシング電極21との間に放電電極18を負極側とし、筒状電極20及びケーシング電極21を正極側とする103〜105ボルト程度の直流高電圧源を接続し、さらに正極側を接地する。これにより、放電電極18と筒状電極20の間に粒子状物質含有ガスを旋回気流として供給すると、粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質はコロナ放電を浴びて帯電する。そして、放電電極18と筒状電極20間の電界により粒子状物質にクーロン力が働き、粒子状物質が筒状電極20へ向けて運動を始める。粒子状物質は質量を持つために、慣性力によってそのまま筒状電極20の貫通孔20aを通過して筒状電極20及びケーシング電極21間の半閉空間である補集空間に導かれる。
【0025】
この補集空間22では、流れ場は非常に緩やかなため、粒子状物質は流れ場の影響を受けにくく、粒子状物質は自分自身の電荷と筒状電極20及びケーシング電極21間の電位差による電気影像力を受けて、筒状電極20の外周面及びケーシング電極21の内周面に移動付着して補集される。なお、数値解析によれば、筒状電極20内のガス流路における粒子状物質含有ガス主流の流速に比べ、補集空間22の大部分で約1/20〜1/10程度、局所的に1/4程度の流速となることが確認されている。
【0026】
この電気集塵機4によると、単に放電電極18及び筒状電極20間のガス流路に粒子状物質含有ガスを通流させるだけで、抽気手段としての送風機等を設ける必要がない。また、粒子状物質含有ガスの流れを妨げるダンパ等を設ける必要もないので、粒子状物質含有ガスの圧力損失を少なくすることができる。さらに、筒状電極20に形成した貫通孔20aの径を粒子状物質の粒子径にかかわらず大きな径に形成することができるので、この分の圧力損失も小さく抑制することができる。さらに、粒子状物質が補集空間22を構成する筒状電極20の外周面やケーシング電極21の内周面で補集するので、両電極20及び21の表面積に応じた多量の粒子状物質の補集を許容することができるとともに、貫通孔20aは極めて目詰まりしにくく、目詰まりによる補集障害を生じることを確実に防止することができる。さらにまた、補集空間22の流れ場が小さいために、一度補集した粒子状物質の再飛散が生じにくい。また、ダンパや送風機等の可動部が存在しないために、故障の可能性が極めて低い。
【0027】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
ディーゼルエンジン2から排気される粒子状物質含有ガスは、一旦バッファタンク3に供給される。このバッファタンク3では、上述したように、流入管5の容積に比較して十分に大きな容積とされているので、ディーゼルエンジン2の始動時も負荷変動時に高濃度CGの粒子状物質含有ガスが一次的に排出された場合でも、この高濃度の粒子状物質含有ガスがバッファタンク3で希釈され、しかも、拡散管7によってバッファタンク3内に均一な濃度で拡散されるので、このバッファタンク3から排出される粒子状物質含有ガス濃度CEが流入する粒子状物質含有ガスの1/3程度に希釈される。
【0028】
この希釈された粒子状物質含有ガスが電気集塵機4に供給され、各電極収納部15a〜15dのガス導入部16から旋回流形成部17で旋回気流として筒状電極20内に流される。粒子状物質含有ガスは、筒状電極20を通過する際に、前述したように、粒子状物質がコロナ放電によって帯電され、帯電された粒子状物質がクーロン力によって筒状電極20の貫通孔20aを通じて筒状電極20の外側の補集領域22に移動し、筒状電極20の外周面及びケーシング電極21の内周面に付着補集される。
【0029】
このため、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時に高濃度の粒子状物質含有ガスが排出された場合でも、これをバッファタンク3で希釈してから電気集塵機4に供給するので、電気集塵機4に一定高電圧を与える通常駆動状態を維持しながら、粒子状物質を確実に補集することができる。この際に、バッファタンク3を設けるだけで別途フィルタを使用する必要がないので、圧力損失を生じことがなく、簡易な構成で粒子状物質を確実に補集することができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態を図5〜図7について説明する。
この第2の実施形態では、バッファ機構としてバッファタンクに代えてスクラバ装置を適用したものである。
すなわち、第2の実施形態によると、図5に示すように、前述した第1の実施形態におけるバッファタンク3を省略し、これに代えてスクラバ装置31を適用している。
【0031】
このスクラバ装置31は、図6及び図7に示すように、垂直方向に延長する円筒状のケーシング32を有し、このケーシング32内の中心部に液体を噴霧する液体噴霧機構33が配置されている。この液体噴霧機構33は、外部の液体供給源(図示せず)から供給される液体が液体導入管34を通じてケーシング32の中心部に導入され、この液体導入管34に接続された液体導入管34の内径より細い内径を有し、軸方向に上方に延長する垂直管35に供給される。この垂直管35には、軸方向に所定間隔を保ってノズル部36が所定数例えば6段形成され、各ノズル部36は円周方向に180°の間隔で垂直管35に連通されて半径方向に延長する2本の分岐管37と、各分岐管37の先端に形成された時計方向端面から例えば90°〜30°の扇状に液体を噴霧する噴霧ノズル38とを有する。そして、隣接するノズル部36同士が分岐管37を軸方向に90°異ならせて配置されている。
【0032】
また、ケーシング32には、下部側にディーゼルエンジン2から粒子状物質含有ガスが供給されるガス導入部39がケーシング32の接線方向に延長して形成され、粒子状物質含有ガスが旋回しながら上方に向かい、ノズル部36の噴霧ノズル38から噴霧される液体で冷却されてケーシング32の上方に形成されたガス排出口40から電気集塵機4に排出される。
【0033】
ここで、スクラバ装置31は、前述した第1の実施形態におけるバッファタンク3と同様に粒子状物質含有ガスが流入されるガス導入部39の容積に対して十分広い容積に設定されており、流入される粒子状物質含有ガスを希釈することができる。
また、液体導入管34に導入する液体としては、ディーゼルエンジン2が舶用エンジンである場合には海水を使用し、陸上または陸上を走行する車両に設置される場合には水が使用される。なお、噴霧された液体は、ケーシング32の下部に形成された排液管41から排液される。
【0034】
このスクラバ装置31では、ディーゼルエンジン2から供給される粒子状物質含有ガスに対して液体を噴霧することにより、粒子状物質含有ガスに含まれるSOXを除去することができるとともに、容積が大きいことにより、ディーゼルエンジンの始動時や負荷変動時の高濃度の粒子状物質含有ガスを希釈することができ、さらにディーゼルエンジン2から供給される高温の粒子状物質含有ガスを噴霧液体によって冷却することにより、粒子状物質含有ガスの体積を収縮することが可能となり、粒子状物質含有ガスの流量を減少させて電気集塵機4に供給することができる。
【0035】
すなわち、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスの温度をT1、流量をQ1とし、スクラバ装置31での冷却後の粒子状物質含有ガスの温度をT2、流量をQ2としたとき、冷却後の流量Q2は、
2=(T1/T2)Q1 …………(2)
で表され、例えば、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスの温度T1=300℃、流量Q1=5m3/sとし、冷却後の温度T2を100℃とすると、
2={(100+278)/(200+278)}5=3.3m3/s
となり、粒子状物質含有ガスの流量を6割程度に減少させることができる。
【0036】
したがって、この第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、ディーゼルエンジン2の始動時や負荷変動時の高濃度の粒子状物質含有ガスをスクラバ装置31のバッファ機能によって希釈して電気集塵機4に供給することができる。しかも、この場合、スクラバ装置31で粒子状物質含有ガスに液体を噴霧することにより、粒子状物質含有ガスに含まれるSOXを除去することができるとともに、粒子状物質含有ガスを冷却してその体積を収縮させ、ガス流量を減少させて電気集塵機4に供給することができるので、この電気集塵機4でより確実に粒子状物質を補集することができる。
【0037】
なお、上記第2の実施形態においては、スクラバ装置31のケーシング32が円筒状に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意形状の筒状とすることができる。また、液体噴霧機構33の構成も上記構成に限定されるものではなく、ノズル部36を液圧を利用して円周方向に回転させるようにしてもよく、さらには、ケーシング32の内周面側に液体噴霧機構を配置するようにしてもよい。
【0038】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質を除去する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の内燃機関や産業機械等から排出される任意の粒子状物質含有ガスから粒子状物質を除去することができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、電気集塵機4のケーシング電極21が角筒状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、筒状電極20を、半閉空間の補集空間22を形成して覆うことができればよく、円筒状、多角筒状等の任意の形状とすることができる。
【0039】
同様に、筒状電極20についても円筒状に限定されるものではなく、放電電極18の針状電極18aと対向する内周面と針状電極18aとの間の距離を等しくすれば任意の形状とすることができる。すなわち、上記のように断面12面体の放電電極18を使用する場合には12角筒状に形成するようにしてもよく、針状電極の突出数に合わせた任意の形状とすることができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、放電電極18の針状電極18aを軸方向でずらして突出させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、針状電極28aの突出方向を同一方向とするようにしてもよい。
【0040】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、電気集塵機4について、筒状電極20及びケーシング電極21間の半閉空間で粒子状物質を補集する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、同一空間中に放電電極と集塵電極とを設け、放電電極により粒子状物質を帯電させて、集塵電極により除去するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、旋回流形成部17により粒子状物質含有ガスが旋回流として導入される場合について説明したが、旋回流形成部17による圧力損失を低減したい場合には、旋回流形成部17を設けずに、粒子状物質含有ガスをそのまま通流させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…電気集塵装置、2…ディーゼルエンジン,3…バッファタンク、4…電気集塵機、5…流入管、6…貫通孔、7…拡散管、11…外部ケース、12a,12b…端板、13…筐体、14…仕切板、15a〜15d…電極収納部、16…ガス導入部、17…旋回流形成部、18…放電電極、18a…針状電極、19…電極支持部、20…筒状電極、20a…貫通孔、21…ケーシング電極、22…補集空間、23…電極支持部、31…スクラバ装置、32…ケーシング、33…液体噴霧機構、39…ガス導入部、40…ガス排出部、41…排液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態でコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させて補集する電気集塵機を備えた電気集電装置であって、
前記電気集塵機の上流側に前記粒子状物質含有ガスを一時的に蓄積可能なバッファ機構を配設したことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記バッファ機構は、前記粒子状物質含有ガスの流入管の容積に対して大きな容積のバッファタンクで構成され、一時的に高濃度となる前記粒子状物質含有ガスを蓄積して希釈することを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記バッファタンクは、前記流入管に連通された筒部周壁に多数の開口が形成されたガス拡散管が内部に突出形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記バッファ機構は、前記粒子状物質含有ガスに液体を噴霧し、且つ流入ガス容積に対して大きな容積を有するスクラバ装置で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192361(P2012−192361A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59289(P2011−59289)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】