説明

電気音響変換器及びイヤースピーカ装置

【課題】充分な低音を含む高品質な再生音をリスナに聴取させ得るようにする。
【解決手段】イヤースピーカ装置1は、内部ダクト9AL及び9BL、小空間4CL及び4DL、並びに管状ダクト8Lでなるダクト部DCLが設けられ、リスナの頭部100に装着された際、電気音響変換部2Lのスピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に位置させると共に管状ダクト8Lが外耳道入口102Lへ向けて延長された状態で再生音を出力することにより、バスレフダクトとして作用するダクト部DCLの管状ダクト8Lの孔部8ALから中高音を減衰させた低音を十分な音圧レベルで鼓膜103に伝達することができるので、自然な音像定位を与え比較的低音域まで充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに聴取させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気音響変換器及びイヤースピーカ装置に関し、例えば頭部装着型のウェアラブルスピーカ装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部装着型のウェアラブルスピーカ装置の一例であるヘッドホン装置においては、リスナの頭部に装着された状態でCD(Compact Disc)の再生音声等を表す電気信号を音(以下、これを再生音と呼ぶ)に変換し、当該リスナに聴取させるようになされたものが広く普及している。
【0003】
一般的なヘッドホン装置では、音を発生させるスピーカユニットがリスナの外耳道入口の正面付近に位置するようになされており、当該スピーカユニットから鼓膜に対して直接的に音を到達させ音質を向上し得るものの、音像をリスナの頭内に定位させることになり当該リスナに不自然な印象を与えてしまっていた。
【0004】
このためヘッドホン装置の中には、スピーカユニットを外耳道入口(耳孔)からやや離隔させ前頭部側に位置させることにより、一般的な据置型のスピーカを用いた場合のように音像を頭外に定位させ不自然感を払拭させると共に、リスナの耳の周囲に密閉空間を形成する密閉型とすることにより充分な低音を聴取させ得るよう図られたものが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3054295号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、かかる構成のヘッドホン装置に対して、充分な低音を含む良好な音質を維持しながら開放型とすることによりリスナに開放感を与えたいという要望があるものの、スピーカユニットが耳孔から離隔されているため、単純に密閉型を開放型としただけでは低音域が不足し音質を悪化させてしまい、かかる要望に応じ得ないという問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、自然な音像定位を与え充分な低音を含む高品質な再生音をリスナに聴取させ得る電気音響変換器及びイヤースピーカ装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の電気音響変換器においては、リスナの頭部に対する所定位置に装着された内部に空間を有する筐体部と、筐体部の一面に取り付けられ、筐体部がリスナの頭部に装着された際、リスナの外耳道入口との間に所定の距離が設けられるスピーカユニットと、筐体部の内部空間に生じさせた音から音響フィルタにより中高域成分を低減しリスナの外耳道入口近傍まで到達させるよう延長されたダクト部とを設けるようにした。
【0008】
これにより、外耳道入口との間に所定の距離が設けられたスピーカユニットから放射する中高音を外耳道内へ到達させ得ると共に、ダクト部を介してリスナの外耳道入口近傍から中高音が殆ど含まれない低音も効率良く外耳道内へ到達させ得るので、自然な音像をリスナの頭外に定位させ得る中高音と音圧レベルが高められた低音とを合わせて当該リスナに聴取させることができる。
【0009】
また本発明のイヤースピーカ装置においては、リスナの頭部に対する所定位置に装着された内部に空間を有する筐体部と、筐体部の一面に取り付けられ、筐体部がリスナの頭部に装着された際、リスナの外耳道入口との間に所定の距離が設けられるスピーカユニットと、筐体部の内部空間に生じさせた音から音響フィルタにより中高域成分を低減しリスナの外耳道入口近傍まで到達させるよう延長されたダクト部とを有する電気音響変換器と、スピーカユニットとリスナの外耳道入口との間に所定距離が設けられるよう電気音響変換器をリスナの頭部に装着させる装着部とを設けるようにした。
【0010】
これにより、外耳道入口との間に所定の距離が設けられたスピーカユニットから放射する中高音を外耳道内へ到達させ得ると共に、ダクト部を介してリスナの外耳道入口近傍から中高音が殆ど含まれない低音も効率良く外耳道内へ到達させ得るので、自然な音像をリスナの頭外に定位させ得る中高音と音圧レベルが高められた低音とを合わせて当該リスナに聴取させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外耳道入口との間に所定の距離が設けられたスピーカユニットから放射する中高音を外耳道内へ到達させ得ると共に、ダクト部を介してリスナの外耳道入口近傍から中高音が殆ど含まれない低音も効率良く外耳道内へ到達させ得るので、自然な音像をリスナの頭外に定位させ得る中高音と音圧レベルが高められた低音とを合わせて当該リスナに聴取させることができ、かくして自然な音像定位を与え充分な低音を含む高品質な再生音をリスナに聴取させ得る電気音響変換器及びイヤースピーカ装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)イヤースピーカ装置の構成
図1、図2及び図3において、イヤースピーカ装置1は、全体としてポータブルCD(Compact Disc)プレーヤやDMP(Digital Music Player)の再生処理等により生成された電気信号を音に変換しリスナに聴取させるようになされている。
【0014】
イヤースピーカ装置1は、一般的な箱形のスピーカ装置とは異なり、ヘッドホン装置と同様にリスナの頭部に装着されることを前提としており、大きく分けて電気信号を音(以下、これを再生音と呼ぶ)に変換する電気音響変換部2L及び2Rと、当該電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部に装着して固定させるためのバンド部3とにより構成されている。
【0015】
電気音響変換部2L及び2Rは、球体が垂直方向に4等分されたような形状でなる筐体部4L及び4Rを中心に構成されている。筐体部4L及び4Rは、それぞれ後面側及び左右内側に平面部分が形成されており、左右内側にはリスナの頭部に対する側圧を和らげるためのパッド部5L及び5Rが取り付けられている。
【0016】
筐体部4L及び4Rの後面側における平面部分であるバッフル板4AL及び4ARには、電気信号を音に変換するスピーカユニット7L及び7Rが取り付けられている。このスピーカユニット7L及び7Rは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル6を介して供給される電気信号に応じて、振動板を振動させることにより放音するようになされている。
【0017】
また筐体部4L及び4Rのバッフル板4AL及び4ARには、所定太さを有する中空の部材が側面略U字状に曲げられた外部ダクトとしての管状ダクト8L及び8Rが取り付けられている。この管状ダクト8L及び8Rは、図1に示したように、後端側がそれぞれ左右内側方向に曲げられており、さらに後側先端部のほぼ中央にそれぞれ孔部8AL及び8ARが設けられている。
【0018】
バンド部3は、中央部3Aを中心に一般的な人間の頭部の形状に合わせて上に凸の略アーチ型に形成されていると共に、当該中央部3Aに対して伸縮自在に摺動し得るアジャスト部3BL及び3BRによりバンド部3全体の長さを調整し得るようになされている。
【0019】
またバンド部3は、一般的な人間の頭部の形状よりも小さい径のアーチ型に形成されると共に弾性力を有しており、リスナに装着される際に筐体部4L及び4Rを左右に広げながら装着されると、装着後に当該弾性力の作用によって元の形状に戻ろうとするため、筐体部4L及び4Rを当該リスナの頭部に対して当接させた状態で保持することができる。
【0020】
なお、イヤースピーカ装置1は、図1〜図3に示したようにほぼ左右対称に構成されているため、以下では主に左側の電気音響変換部2Lを例に説明する。
【0021】
実際上、イヤースピーカ装置1は、図4に左側面図を示すように、バンド部3における長さが調整された上でリスナの頭部100に装着されることにより、アジャスト部3BL及び3BRの下端側に取り付けられた電気音響変換部2Lをリスナの頭部における耳介101Lよりもやや前方に位置させるようになされている。
【0022】
これによりイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから放射された中高音を直接リスナの外耳道内部へ到達させると共に、当該リスナの頬や耳介101L等で反射された反射音も外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合と同様の、自然な音像定位を与えることができる。
【0023】
このときイヤースピーカ装置1は、リスナに正常に装着された際、スピーカユニット7Lが耳介101L及び外耳道入口102Lのやや前方に位置し、管状ダクト8Lの孔部8ALが外耳道入口102Lの近傍に位置するようになされている。
【0024】
因みに管状ダクト8Lは、側面略U字状に形成されているため、リスナの外耳道内へ入り込まないようになされている。これによりイヤースピーカ装置1は、当該リスナが装着時等に誤って管状ダクト8Lにより当該外耳道内を傷つけてしまうことを未然に防止し得るようになされている。
【0025】
ここで、図4におけるQ1−Q2断面図及びQ3−Q4断面図を図5及び図6に示し、また図5におけるQ5−Q6断面を図7に示す。この図5〜図7に示すように、筐体部4Lは、全体としてほぼ密閉された空間を形成しており、さらに内部に設けられた内部隔壁4TL及び4ULにより区切られた小空間4CL及び4DLを形成している。
【0026】
この小空間4CL及び4DLは、管状ダクト8Lがバッフル板4ALを貫通することにより当該管状ダクト8L内の空間と繋げられており、また前方へ向けて設けられた管状の内部ダクト9AL及び9BLを介して筐体部4L内の空間とも繋げられている。
【0027】
すなわち筐体部4Lは、内部ダクト9AL及び9BL、小空間4CL及び4DL、並びに管状ダクト8Lにより構成される2系統のダクト(以下、これをダクト部DCLと呼ぶ)が設けられていることになる。
【0028】
ここで、ダクト部DCLの各系統は、図8に示すように、その音響回路を電気的な等価回路により表すことができる。この図8において、コイルL1は、内部ダクト9LA(または9LB)に相当し、当該内部ダクト9LA(または9LB)内の空気の等価質量を表す。同様にコイルL2は、管状ダクト8Lのうち1系統分に相当し、当該管状ダクト8L内の空気の等価質量を表す。一方、小空間4CL(または4DL)は、コンデンサC1に相当し、当該小空間4CL(または4DL)のコンプライアンス(容積)を表す。
【0029】
この図8に示した等価回路は、全体としてLCフィルタを構成しており、音声信号に含まれる所定周波数以上の中高域成分を遮断し、低域成分のみを通過することになる。すなわちダクト部DCL(図6)は、系統ごとに音響フィルタとして作用することにより、筐体部4L内の空間から伝達される音のうち中高域成分を減衰させ、主に低域成分を管状ダクト8Lの孔部8ALから放出することになる。
【0030】
因みに小空間4CL及び4DLは、減衰させる中高域成分の周波数等に応じてその容積や断面積等が適宜調整されることにより、所望の音響特性を得られるようになされている。同様に内部ダクト9LA及び9LBは、減衰させる中高域成分の周波数等に応じてその長さ及び内径等が適宜設定されることにより、所望の音響特性を得られるようになされている。
【0031】
またダクト部DCLは、各系統がスピーカユニット7Lに対する共振回路としても作用する。すなわち電気音響変換部2Lは、ダクト部DCLを2系統のバスレフダクトとして作用させることにより、全体としてバスレフ型のスピーカとして動作するようになされている。因みに管状ダクト8Lは、内端部8BL(図6)から孔部8AL(図5)までの有効な長さが調整されることにより、適切な共振周波数等に設定されるようになされている。
【0032】
なお、右側の電気音響変換器2Rには、ダクト部DCLとほぼ左右対称のダクト部DCR(図示せず)が設けられている。
【0033】
ところで、一般的なバスレフ型スピーカでは、ダクトが筐体の内部のみに設けられ、外部へは延長されないようになされている。そこで、電気音響変換部2Lとの比較用に、図5と対応する図9に示すような電気音響変換部12Lを想定する。この電気音響変換部12Lは、一般的なバスレフ型スピーカと同様に構成されており、筐体部4の内側のみに電気音響変換部2Lにおけるダクト部DCLに代えて2本の管状ダクト18L及び19Lを有している。
【0034】
この電気音響変換部12Lの場合、スピーカユニット7Lの位置を仮想的な音源の位置(以下、これを仮想音源位置と呼ぶ)PMと見なしたときの、当該スピーカユニット7Lから放射された中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMと、孔部18AL及び19ALを仮想音源位置PL2と見なしたときの、管状ダクト18L内及び19L内を伝わり当該孔部18AL及び19ALから放射された低音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL2とを比較すると、経路長EM≒経路長EL2となっている。
【0035】
ここで、電気音響変換部12Lにより鼓膜103Lに到達する音の周波数特性を図10に示す。この図10に示すように、一般的なバスレフ型の電気音響変換部12Lは、スピーカユニット7Lから放射される、特性曲線SMに示すような周波数特性でなる中高音と、管状ダクト18L内及び19L内を伝わり孔部18AL及び19ALから放射される、特性曲線SL2に示すような周波数特性でなる低音とを合わせてリスナの鼓膜103Lまで到達させることになる。
【0036】
これにより電気音響変換部12Lは、特性曲線SM及び特性曲線SL2が合成された特性曲線SG2に示すように、特性曲線SMにおける低音域の音圧レベルがある程度上昇された再生音をリスナに聴取させることができる。
【0037】
一方、本発明による電気音響変換部2L(図5)では、スピーカユニット7Lを仮想音源位置PMとみなしたときの、当該スピーカユニット7Lから放射された中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMと、孔部8ALを仮想音源位置PL1と見なしたときの、内部ダクト9AL及び9BL並びに小空間4CL及び4DLを介して管状ダクト8L内を伝わり当該孔部8ALから放射された低音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL1とを比較すると、経路長EM>経路長EL1となっている。
【0038】
ここで、電気音響変換部2Lにより鼓膜103Lに到達する音の周波数特性を図11に示す。電気音響変換部2Lは、上述したようにバスレフ型スピーカの一種であるため、図10に示した場合と同様、スピーカユニット7Lから放射される、特性曲線SMに示すような周波数特性でなる中高音と、ダクト部DCL内を伝わり孔部8ALから放射される、特性曲線SL1に示すような周波数特性でなる低音とを合わせてリスナの鼓膜103Lまで到達させることになる。
【0039】
ところで、一般に音源からの距離と音圧レベルとは反比例の関係にある。ここで電気音響変換部2L(図5)と電気音響変換部12L(図9)との経路長を比較すると、経路長EL1<経路長EL2の関係となる。すなわち電気音響変換部2L(図5)は、仮想音源位置PL1が電気音響変換部12L(図9)の仮想音源位置PL2よりもリスナの外耳道入口102L近傍に位置しているため、ダクト部DCL内を伝わり孔部8AL(仮想音源位置PL1)から放射される低音を、電気音響変換部12Lの場合よりも高い音圧レベルで鼓膜103Lまで到達させることができる。
【0040】
すなわち図12に特性曲線を重ねて示すように、ダクト部DCLによる低音の特性曲線SL1は、経路長EL1<経路長EL2の関係により、管状ダクト18L及び19Lによる低音の特性曲線SL2と比較して全体的な音圧レベルが高くなる。
【0041】
この結果、本発明による電気音響変換部2Lは、特性曲線SM及び特性曲線SL1が合成された特性曲線SG1に示すように、特性曲線SMにおける低音域の音圧レベルが電気音響変換部12Lの場合(特性曲線SG2)よりも上昇された、比較的低い周波数帯まで十分な音圧レベルの再生音をリスナに聴取させることができる。
【0042】
ここで特性曲線SG1と特性曲線SG2とを比較すると、特性曲線SG2では低音域側へ進むに連れて比較的急峻に音圧レベルが低下しているのに対して、特性曲線SG1では低音域側へ進むに連れてける音圧レベルの低下度合いが緩やかになっていることがわかる。
【0043】
すなわち電気音響変換部2Lは、電気音響変換部12Lと比較して、広い周波数帯域に渡って高い音圧レベルでなる、すなわち充分な低音域が含まれる良好な再生音をリスナの鼓膜103に伝達して聴取させることができる。
【0044】
この場合、電気音響変換部2Lは、図4及び図5に示したように、リスナの外耳道入口102Lの近傍に管状ダクト8Lの後端側を位置させており、当該外耳道入口102Lを完全には閉塞しない。このため電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから出力する中高音及び管状ダクト8Lの孔部8ALから放射する低音を合わせた再生音に加えて、リスナの周囲で発生した音(以下これを周囲音と呼ぶ)を遮断することなく当該リスナの鼓膜103Lまで到達させ聴取させることができる。
【0045】
また電気音響変換部2Lは、ダクト部DCLを音響フィルタとして作用させることにより、管状ダクト8Lの孔部8ALから再生音の中高域成分が放射されてしまうことを防止することができる。
【0046】
この電気音響変換部2L及び電気音響変換部12Lについて、人間の耳介及び外耳道を模した測定用治具を用いて実際の周波数特性を測定したところ、図13に示すような特性曲線SG11(電気音響変換部2Lの場合)及び特性曲線SG12(電気音響変換部12Lの場合)が得られた。
【0047】
この図13では、図12に示した理論的な周波数特性と同様、およそ500[Hz]以下の低音域において、電気音響変換部2Lの特性曲線SG11が電気音響変換部12Lの特性曲線SG12よりも高い音圧レベルとなっている。すなわち、電気音響変換部2Lが実際にリスナに充分な低音を含む良好な再生音を聴取させ得ることが示されている。
【0048】
このようにイヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着された際、スピーカユニット7Lをリスナの外耳道入口102Lからやや離れた場所に位置させ再生音の中高音を放射すると共に、筐体部4Lから当該外耳道入口102Lの近傍まで延長されバスレフダクトとして作用するダクト部DCLを介して管状ダクト8Lの孔部8ALから再生音の中高音を低減させた低音を放射することにより、自然な音像定位を与え充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させることができる。
【0049】
(2)他のイヤースピーカ装置の構成例
ところでイヤースピーカ装置1は、図1〜4に示したように、装着部としてのバンド部3により電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に装着するようになされているが、このバンド部3に代えて他の種々の装着部を用いることにより電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に装着するようにしても良い。
【0050】
なお、以下では、上述したイヤースピーカ装置1の場合と同様、主に左側の電気音響変換部2Lを例に説明するが、右側の電気音響変換部2Rについては、当該左側の電気音響変換部2Lと左右対称に構成されているものとする。
【0051】
例えば図14に示すイヤースピーカ装置20は、いわゆるイヤークリップ型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、リスナの耳介101Lに引っ掛けるためのイヤークリップ21Lが電気音響変換部2Lの筐体部4Lに取り付けられている。また筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト8Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0052】
このイヤースピーカ装置20は、イヤークリップ21Lがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0053】
また図15に示すイヤースピーカ装置30は、所謂アンダーチン型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部31が筐体部4Lに取り付けられている。このバンド部31の中央部31Aは、下に凸の略アーチ状に形成され、リスナの顎の下を通って左右に渡されることを前提としている。また筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト8Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0054】
このイヤースピーカ装置30(図15)は、バンド部31の耳掛部31BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0055】
さらに図16に示すイヤースピーカ装置40は、所謂ショルダーホールド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの肩部から支持するショルダーアーム41が筐体部4Lに取り付けられている。このショルダーアーム41の中央部41Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの首の後ろから肩の上部に引っ掛けて左右に渡されることを前提としている。また筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト8Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0056】
このイヤースピーカ装置40(図16)は、リスナの両肩に渡って引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0057】
さらに図17に示すイヤースピーカ装置50は、所謂ネックバンド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに掛けるためのバンド部51が筐体部4Lに取り付けられている。このバンド部51の中央部51Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの後頭部の後ろ側で渡されることを前提としている。また筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト8Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0058】
このイヤースピーカ装置50(図17)は、バンド部51の耳掛部51BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0059】
さらに図18に示すイヤースピーカ装置60は、図17に示したイヤースピーカ装置50における電気音響変換部2Lをリスナの耳介101よりも後方に位置させると共に、管状ダクト8Lに代えて略L字状でなる管状ダクト68Lがリスナの耳介101Lの後方に位置する筐体部4Lから外耳道入口102Lの近傍まで延長されている。また左右の電気音響変換部2L及び2Rは、リスナの首の後ろ側で渡されるバンド部61により接続されている。さらに筐体部4L内には、小空間4CL及び内部ダクト9ALが設けられ(図示せず)、管状ダクト68Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0060】
このイヤースピーカ装置60(図18)は、管状ダクト68Lがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0061】
さらに図19に示すイヤースピーカ装置70は、電気音響変換部2Lに加えて、上述した電気音響変換部12L(図9)と同様の構成でなる後方電気音響変換部72Lを有しており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代わるバンド部71により、電気音響変換部2Lを耳介101Lの前方に位置させると共に、後方電気音響変換部72Lを当該耳介101Lの後方に位置させるようになされている。また筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト8Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0062】
因みに、後方電気音響変換部72Lには、4チャンネルや5.1チャンネル等のマルチチャンネル音源におけるリアチャンネル用の音声信号が供給されるようになされている。
【0063】
このイヤースピーカ装置70(図19)は、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部2L及び後方電気音響変換部72Lを当該リスナの頭部100に装着することができ、電気音響変換部2L及び後方電気音響変換部72Lの間に耳介101Lを挟み込んだ状態で、自然な音像定位を与えながら、サラウンド音でなり充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
【0064】
またこの場合、イヤースピーカ装置70(図19)では、バンド部71に加振器75を取り付け、例えば5.1チャンネル音源における重低音成分に応じた振動をリスナの頭部100に加えるようにしても良い。
【0065】
なおイヤースピーカ装置70(図19)は、電気音響変換部2Lから管状ダクト8Lをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長する以外にも、イヤースピーカ装置60(図18)と同様、後方用電気音響変換部72Lから管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにし、或いは電気音響変換部2L及び後方用電気音響変換部72Lの両方から管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにしても良い。
【0066】
さらに図20に示すイヤースピーカ装置80は、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの頬よりも前側に位置させるためのバンド部81が筐体部4Lに取り付けられている。
【0067】
また筐体部4Lには、管状ダクト8Lに代えて筐体部4Lからリスナの外耳道入口102L近傍まで延長された管状ダクト88Lが設けられている。なお、管状ダクト88Lは、再生音における良好な低音を孔部88ALから放射するべく、その内径や音の経路長等が適切に計算されている。さらに筐体部4L内には、小空間4CL及び4DL並びに内部ダクト9AL及び9BLが設けられ(図示せず)、管状ダクト88Lと合わせてダクト部DCLを構成するようになされている。
【0068】
このイヤースピーカ装置80(図20)は、リスナの頭部100に装着されることにより、筐体部4Lを当該リスナの頬よりも前方に位置させることができる。この場合、スピーカユニット7Lから放射された中高音は、当該リスナの頬等において反射されることによりその特性が変化するため、イヤースピーカ装置1の場合と比較して、一般的な据置型のスピーカから放射された音に一層近づけられることになる。これによりイヤースピーカ装置80は、一段と自然な定位感を与え得る再生音をリスナに聴取させることができる。
【0069】
このように本発明では、イヤースピーカ装置1のバンド部3(図1〜図4)以外にも、イヤースピーカ装置20〜80(図14〜図20)のような種々の方式でなる装着部により、電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に対して装着させるようにしても良い。
【0070】
(3)動作及び効果
以上の構成において、イヤースピーカ装置1は、筐体部4Lに内部ダクト9AL及び9BL、小空間4CL及び4DL並びに管状ダクト8Lにより構成される2系統のダクト、すなわちダクト部DCLが設けられ、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部2Lの筐体部4Lに設けられたスピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に位置させると共に、管状ダクト8Lの後側における先端部分を外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で、所定のアンプから供給される音声信号に基づいた再生音を出力する。
【0071】
このときイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2L(図5)は、スピーカユニット7Lから放射される中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMよりも、管状ダクト8Lの孔部8ALから放射される低音が当該鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL1を短くすることになるため、特性曲線SM(図7)に示したような中高音に対して、特性曲線SL1に示したように比較的音圧レベルが高い低音を当該鼓膜103Lに到達させることができる。
【0072】
従ってイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから放射された中高音を当該リスナの頬や耳介101L等で反射させて鼓膜103Lに到達させることができるので、一般的なスピーカを介して再生音を聴取する場合と似た特性の再生音を当該リスナに聴取させることができ、音像が頭外に位置しているような自然な定位感を与えることができる。
【0073】
さらにイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、管状ダクト8Lがリスナの外耳道入口102L近傍まで延長されていることにより、特性曲線SG1(図9)及び特性曲線SG11(図10)に示したような、比較的低音域まで充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに聴取させることができる。
【0074】
この場合、イヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、管状ダクト8Lがリスナの外耳道入口102L近傍まで延長されているため、一般的なバスレフ型の電気音響変換部2L(図9)において管状ダクト18L及び19Lから出力される特性曲線SL2(図10)のような低音と比較して、特性曲線SL1(図10)のような音圧レベルが大きい低音をリスナの鼓膜103Lに到達させることができ、スピーカユニット7Lの口径が比較的小さく外耳道入口102Lからやや離れていることにより不足しがちな低音を、十分な音圧レベルでリスナに聴取させることができる。
【0075】
またイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、ダクト部DCLを音響フィルタとして作用させることにより、管状ダクト8Lの孔部8ALから再生音の中高域成分が放射されてしまうことを防止することができるので、スピーカユニット7Lから出力される中高音により形成される音像定位を崩すことなく、リスナに自然な定位感を与えることができる。
【0076】
さらにイヤースピーカ装置1は、低音の再生音量を上げるのではなく、低音の放射口を鼓膜103Lに近づけることによりリスナの鼓膜103L(図5)に充分な低音を到達させているため、例えば大口径のスピーカやサブウーファー等を用いて低音を再生するような場合と比較して、周囲に漏れる低音や振動をほぼ皆無とすることができる。従って、例えばリスナが深夜にイヤースピーカ装置1を介して再生音を聴取する場合等に、近隣や周囲への迷惑を殆ど気にすることなく、充分な低音が含まれる良好な再生音を堪能することができる。
【0077】
さらに管状ダクト8Lは、リスナの外耳道入口102Lを塞がないため、再生音と共に、当該リスナの周囲で発生した周囲音を遮断することなく鼓膜103Lに到達させ聴取させることができる。
【0078】
これにより、イヤースピーカ装置1は、リスナが歩行するときやスポーツを行うときなど、リスナが周囲の音も聴取する必要がある場合にも、良好な再生音に加えて周囲音を聴取させることができる。
【0079】
またイヤースピーカ装置1は、リスナの耳介101L等を覆うことがないため、一般的なヘッドホンを装着したリスナが感じるような閉塞感や蒸れといった不快感を与えることがない。さらに密閉空間を形成しないため、密閉型ヘッドホンを使用した場合に生じ得る、外耳道における共振周波数の変化を生じることもなく、リスナに違和感を与えることもない。
【0080】
そのうえイヤースピーカ装置1は、低音の放射口を鼓膜103Lに近づけることによりリスナに十分な音量レベルの低音を聴取させ得るため、スピーカユニット7Lの口径を不必要に大きくする必要が無く、筐体部4の大きさを必要最小限に止めることができる。これにより、イヤースピーカ装置1全体の大きさや重量を必要最小限に抑えることができるので、リスナがイヤースピーカ装置1を装着した際の大きさや重さによる煩わしさを極力抑えることができる。
【0081】
以上の構成によれば、イヤースピーカ装置1は、内部ダクト9AL及び9BL、小空間4CL及び4DL並びに管状ダクト8Lでなるダクト部DCLが設けられ、リスナの頭部100に装着された際、電気音響変換部2Lのスピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に位置させると共に管状ダクト8Lが外耳道入口102Lへ向けて延長された状態で再生音を出力することにより、バスレフダクトとして作用するダクト部DCLの管状ダクト8Lの孔部8ALから中高音を減衰させた低音を十分な音圧レベルで鼓膜103に伝達することができるので、自然な音像定位を与え比較的低音域まで充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに聴取させることができる。
【0082】
(4)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、小空間4CL及び4DLの内部に何も設けず単なる空間とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図6との対応部分に同一符号を付した図21に示すように、イヤースピーカ装置120の電気音響変換部122Lにおける小空間4CL内に、音響抵抗部材(例えばスポンジ等)でなる吸音材SAを設けるようにしても良い。
【0083】
電気音響変換部122Lのダクト部DCLは、吸音材SAにより小空間4CL内で共振した中高音が吸収されるため、電気音響変換部2L(図6)と比較して、孔部8ALから放射される不要な中高音を一段と減衰させることができる。なお吸音材SAの形状や分量等は、小空間4CLの形状や共振による周波数特性等に応じて適宜調整すれば良い。
【0084】
また上述した実施の形態においては、内部ダクト9AL及び9BL、小空間4CL及び4DL並びに管状ダクト8Lでなるダクト部DCLを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図5との対応部分に同一符号を付した図22に示すように、イヤースピーカ装置130における電気音響変換部132Lの筐体部134L内に内部隔壁134TL及びパッシブラジエータ139Lにより区切られた小空間134CLを設け、これと管状ダクト8Lとを組み合わせてダクト部DCLを構成するようにしても良い。
【0085】
パッシブラジエータ139Lは、一般にはドローンコーンとも呼ばれ、略円盤状の軽い材料でなる振動板139CLがエッジ139ELを介して内部隔壁134TLに取り付けられており、スピーカユニット7Lの振動板(図示せず)の振動に応じて筐体部134L内の圧力が変化する際、その圧力変化に応じて振動板139CLを振動させるようになされている。
【0086】
これによりパッシブラジエータ139L及び小空間134CLは、電気音響変換部2L(図5)における内部ダクト9AL及び9BL並びに小空間4CL及び4DLと同様の効果を有し、中高音を減衰させて主に低音を管状ダクト8Lに伝達することができる。この結果、電気音響変換部132Lは、電気音響変換部2Lと同様に、管状ダクト8Lの孔部8ALから放射される中高音を大幅に低減させることができ、中高音と低音とのバランスを適正に保つと共に、スピーカユニット7Lから放射される中高音を乱すことなく自然な音像定位をリスナに与えることができる。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、イヤースピーカ装置1がリスナの頭部100に装着された際、管状ダクト8Lの孔部8ALがリスナの鼓膜103Lの方向へ向くように当該孔部8ALを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図5との対応部分に同一符号を付した図23に示すように、イヤースピーカ装置140の電気音響変換部142Lにおける管状ダクト148Lの孔部148ALを、リスナの鼓膜103Lと異なる方向(例えば後方)に向けて設けるようにしても良い。
【0088】
この場合、中高音の指向性は比較的強く低音の指向性は弱い、といった音の一般的な性質により、管状ダクト148Lの孔部148ALから放射される中高音をリスナの鼓膜103Lへ殆ど到達させないようにすると共に、仮想音源位置PL3を仮想音源位置PL1(図5)とほぼ同位置として経路長EL3を経路長EL1(図5)とほぼ同等とし、当該孔部148ALから放射される低音を殆ど低減させることなくリスナの鼓膜103Lへ十分に伝えることができる。この結果、電気音響変換部142Lも、電気音響変換部2Lと同様に、スピーカユニット7Lから放射される中高音により自然な音像定位をリスナに与えることができる。
【0089】
また上述した実施の形態においては、小空間4CL及び4DLをほぼ直方体状とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば略円柱状や略三角錐状等の種々の形状であっても良く、要は所定の容積を有することによりダクト部DCL全体として中高音を減衰し得るようになされていれば良い。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、2系統のダクト部DCLを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1系統や3系統以上のダクト部DCLを設ける等しても良く、このとき管状ダクト8Lの後端部分は互いに接続され或いは分離されていても良い。
【0091】
例えば、図1との対応部分に同一符号を付した図24に示すように、イヤースピーカ装置150の電気音響変換部152Lに1本の管状ダクト158Lを設け、内部に小空間4CL及び内部ダクト9AL(図示せず)を設けるようにしても良い。この場合、管状ダクト158Lの後側先端部には、リスナの外耳道入口102Lを傷つけないためのスポンジ等でなる保護部159Lが取り付けられていても良い。
【0092】
また、管状ダクト8L(図1〜図7)は、金属等の固い材料で形成されていても良く、或いは可撓性を有する樹脂等の柔らかい材料で形成されていても良い。この場合、当該管状ダクト8Lの材料の違いを考慮した上で内径や経路長が設計されていれば良い。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、管状ダクト8Lが筐体部4Lのバッフル板4ALを貫通するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト8Lが当該筐体4Lにおける他の側面を貫通し、小空間4CL及び4DLと繋がるようにしても良い。
【0094】
さらには、図5との対応部分に同一符号を付した図25に示すように、イヤースピーカ装置160の筐体部164Lに対して管状ダクト168Lを自在に着脱し得るようにしても良い。この場合、例えば筐体部164Lのバッフル板164ALに管状ダクト168Lを保持するためのダクト保持部164BLを設け、当該管状ダクト168Lの前側端部に、ダクト保持部164BLと勘合する勘合部168ALを設けておけば良い。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、図7に示したようにダクト部DCLを構成する2系統のダクトをほぼ対称構造とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図7との対応部分に同一符号を付した図26に示すように、イヤースピーカ装置170において、内部ダクト179AL及び179BLの長さ及び内径を互いに異なるようにし、または管状ダクト178Lの前側端部から孔部178ALまでの有効長を不等長とし、あるいは小空間174CL及び174DLの容積や形状を互いに相違させ、さらにはこれらを適宜組み合わせるようにしても良い。
【0096】
この場合、ダクト部DCLの系統ごとに音の中高域成分のうち減衰における周波数特性が互いに異なるため、管状ダクト178Lの孔部178ALから中高音のうち特定の周波数が十分に減衰されずに放射されてしまう可能性を大幅に低減することができる。
【0097】
さらに上述した実施の形態においては、イヤースピーカ装置1が左右の電気音響変換部2L及び2Rを有し、2チャンネルの再生音を出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば左側の電気音響変換部2Lのみを有し1チャンネルの再生音を出力するようにしても良い。
【0098】
さらに上述した実施の形態においては、筐体部4に中高音用のスピーカユニット7Lを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば中音用及び高音用といった2つのスピーカユニットを1つの筐体部4に設けて2ウェイスピーカとするなど、複数のスピーカユニットを筐体部4に設けるようにしても良い。
【0099】
さらに上述した実施の形態においては、球体を垂直方向に4等分したような形状でなる筐体部4L及び4Rを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、筐体部が例えば立方体状や円柱状等の種々の形状であっても良く、要はバスレフ型スピーカのエンクロージャとして機能し得るようなほぼ密閉された空間を内部に有していれば良い。
【0100】
さらに上述した実施の形態においては、筐体部としての筐体部4L及び4Rと、スピーカユニットとしてのスピーカユニット7L及び7Rと、ダクト部としてのダクト部DCLとによって電気音響変換器としての電気音響変換部2L及び2Rを構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体部と、スピーカユニットと、ダクト部とによって電気音響変換器を構成するようにしても良い。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、筐体部としての筐体部4L及び4Rと、スピーカユニットとしてのスピーカユニット7L及び7Rと、ダクト部としてのダクト部DCL及びDCRと、電気音響変換器としての電気音響変換部2L及び2Rと、装着部としてのバンド部3とによってイヤースピーカ装置としてのイヤースピーカ装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体部と、スピーカユニットと、ダクト部と、電気音響変換器と、装着部とによってイヤースピーカ装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、バスレフ型のスピーカ以外にも、バックロードホーン型等の種々のダクトを有するスピーカ装置をリスナの頭部に装着させる種々のイヤースピーカ装置でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】イヤースピーカ装置の全体構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図2】イヤースピーカ装置の全体構成(2)を示す略線的後面図である。
【図3】イヤースピーカ装置の全体構成(3)を示す略線的前面図である。
【図4】イヤースピーカ装置の装着状態(1)を示す略線的側面図である。
【図5】イヤースピーカ装置の装着状態(2)を示す略線的上断面図である。
【図6】イヤースピーカ装置の内部構造(1)を示す略線的上断面図である。
【図7】イヤースピーカ装置の内部構造(2)を示す略線的左断面図である。
【図8】ダクト部の音響回路を示す回路図である。
【図9】一般的なバスレフ型のイヤースピーカ装置を示す略線的上断面図である。
【図10】従来のバスレフ型スピーカにおける周波数特性を示す略線図である。
【図11】本発明によるイヤースピーカ装置の周波数特性を示す略線図である。
【図12】理論的な周波数特性を示す略線図である。
【図13】実測による周波数特性を示す略線図である。
【図14】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(1)を示す略線的側面図である。
【図15】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(2)を示す略線的側面図である。
【図16】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(3)を示す略線的側面図である。
【図17】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(4)を示す略線的側面図である。
【図18】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(5)を示す略線的側面図である。
【図19】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(6)を示す略線的側面図である。
【図20】イヤースピーカ装置の構成及び装着の例(7)を示す略線的側面図である。
【図21】他の実施の形態によるイヤースピーカ装置の構成(1)を示す略線的上断面図である。
【図22】他の実施の形態によるイヤースピーカ装置の構成(2)を示す略線的上断面図である。
【図23】他の実施の形態によるイヤースピーカ装置の構成及び装着状態を示す略線的上断面図である。
【図24】他の実施の形態による管状ダクトの構成例(1)を示す略線的斜視図である。
【図25】他の実施の形態による管状ダクトの構成例(2)を示す略線的斜視図である。
【図26】他の実施の形態による管状ダクトの構成例(3)を示す略線的斜視図である。
【符号の説明】
【0104】
1、120、130、140、150、160、170……イヤースピーカ装置、2L、2R、72L、122L、132L、142L、152L、172L、……電気音響変換部、3……バンド部、4L、4R、134L、164L、174L……筐体部、4CL、4DL……小空間、4TL、4UL……内部隔壁、7L、7R……スピーカユニット、8L、8R、148L、168L、178L……管状ダクト、8AL、8AR、148AL、178AL……孔部、9AL、9BL……内部ダクト、DCL……ダクト部、100……頭部、101L……耳介、102L……外耳道入口、103L……鼓膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リスナの頭部に対する所定位置に装着された内部に空間を有する筐体部と、
上記筐体部の一面に取り付けられ、上記筐体部が上記リスナの頭部に装着された際、上記リスナの外耳道入口との間に所定の距離が設けられるスピーカユニットと、
上記筐体部の内部空間に生じさせた音から音響フィルタにより中高域成分を低減し上記リスナの外耳道入口近傍まで到達させるよう延長されたダクト部と
を具えることを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
上記ダクト部は、
上記内部空間から区切られた小空間と、
上記内部空間に生じた音を当該小空間内に伝える内部ダクトと、
当該小空間内の音を上記リスナの外耳道入口近傍まで到達させるよう延長された外部ダクトと
を具えることを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
上記ダクト部は、
上記小空間及び上記内部ダクトを2組具え、
上記外部ダクトは、
一方の上記小空間から上記リスナの外耳道入口近傍まで延長されると共に他方の上記小空間へ戻る略U字状に形成され、上記リスナの上記外耳道入口近傍に放音用の孔部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
上記ダクト部は、
上記2組の内部ダクトにおける音響特性が互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
上記ダクト部は、
上記2組の小空間における音響特性が互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
上記ダクト部は、
上記外部ダクトにおける上記2組の小空間から上記孔部までの各有効長が互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載の電気音響変換器。
【請求項7】
上記ダクト部は、
上記内部ダクトに代えて上記内部空間に生じた音を当該小空間内に伝えるパッシブラジエータを具える
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項8】
上記ダクト部は、
バスレフ型スピーカのダクトとして作用する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項9】
上記外部ダクトは、
上記孔部が上記外耳道入口と異なる方向に向けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項10】
上記筐体部は、
上記リスナの頭部に装着された際、上記スピーカユニットの放音面をおおよそ上記リスナの外耳道入口の方向へ向けさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項11】
リスナの頭部に対する所定位置に装着された内部に空間を有する筐体部と、上記筐体部の一面に取り付けられ、上記筐体部が上記リスナの頭部に装着された際、上記リスナの外耳道入口との間に所定の距離が設けられるスピーカユニットと、上記筐体部の内部空間に生じさせた音から音響フィルタにより中高域成分を低減し上記リスナの外耳道入口近傍まで到達させるよう延長されたダクト部とを有する電気音響変換器と、
上記スピーカユニットと上記リスナの外耳道入口との間に上記所定距離が設けられるよう上記電気音響変換器を上記リスナの頭部に装着させる装着部と
を具えることを特徴とするイヤースピーカ装置。
【請求項12】
上記装着部は、
上記電気音響変換器を上記リスナの頭部に装着させる際、上記スピーカユニットを上記リスナの外耳道入口よりも前方に位置させると共に、上記リスナの外耳道入口よりも後方に位置させるための所定の後方用スピーカユニットが取り付けられた後方用筐体部を具える
ことを特徴とする請求項11に記載のイヤースピーカ装置。
【請求項13】
上記装着部は、
上記筐体部に加え、上記リスナの頭部に振動を加えるための当該装着部に装着された所定の加振器を具える
ことを特徴とする請求項11に記載のイヤースピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−235929(P2007−235929A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349803(P2006−349803)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】