説明

電気音響変換器

【課題】 ヨークの外周部を延長して鍔部を形成するのは加工が困難である。
【解決手段】 ヨーク2の内部に磁石3およびトップレート4を積層して磁気回路部1を構成し、磁気回路部1のヨーク2の側壁の内周部とトッププレート5の外周部との間の空隙g内にボイスコイル5を配置し、磁気回路部1の外方でボイスコイル5を保持する振動板7と、ケース6に保持され、磁気回路部1を保持するサスペンション8とよりなる電気音響変換器で、磁気回路部1に曲げ加工を施したストッパー部材12を配設する。ストッパー部材12は、金属または樹脂部材よりなり、ヨーク2の鍔部下面とヨーク2の外周部に固定されたリング状の錘11との間に挟持される。ストッパー部材12が外部衝撃を吸収し、部品の変形、破損を防止する。ストッパー部材12は別部品のため、加工は容易である。その分、付加質量が加わり振動特性の安定化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDAなどの移動通信機器に組み込まれ、パネルや電話機の筐体等を振動させることにより、着信を知らせる電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPDAなどの移動通信機器には、使用者に着信を知らせるのに、ブザー音やメロディ音を発生したり、音を出さずに機器の筐体を振動させるように切り替えて使用するように構成されている。そのために、小型スピーカに類する音響発生用のスピーカと、偏心重りを小型モータで回転させて振動を発生する振動体を合わせて内蔵する構造が取られてきた。しかし、このようにスピーカと振動体との両方を組込むことは機器の小型化や低価格化の上で不利であった。そこで、近年1個のもので音響と振動の両方を発生させる磁気駆動型アクチュエータである多機能振動アクチュエータ(振動体)が用いられるようになっている。このような、多機能振動アクチュエータは外力によって衝撃を受けた場合、変形したり破損により共振特性が劣化したり、内部の部品同士が接触するなどして、動作中に擦過音を生じたりすることがある。これに対処した多機能型発音体が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2000−278794号(第3頁、図1、図2)
【0004】
上記した特許文献1に開示されている多機能型発音体アクチュエータの構造は、図4で示されるように、プラスチックなどで作られたケース21の下面側にステンレス鋼などの金属の第2振動板22を固定し、これに純鉄やパーマロイなどの磁性材料のヨーク23が点溶接で結合してある。ヨーク23には磁石24が固定され、磁石24の上面に磁性材料のトッププレート25が積層・固着されている。前記磁石24、トッププレート25及びヨーク23で磁気回路部26を構成する。前記ケース21の上面側にはポリイミド、ポリエステルなどで成形した第1の振動板27が取付けられ、その下面にボイスコイル28が固定されている。ボイスコイル28はトッププレート25の外周とヨーク23の内側で作られる磁気ギャップg内に位置している。前記ボイスコイル28に可聴周波数の信号電流を流すと、第1振動板27が振動してブザー音、メロディ、音声など可聴音を発し、それより低い信号を用いると、ヨーク23や磁石24が一体になった第2振動板22が振動し、この振動はケース21を経てこの発音体を組み込んだ携帯機器に伝わる。
【0005】
前記ヨーク23の外周に鍔部29を設け、一方、ケース21の内周に凹部30を設けて、前記鍔部29を前記凹部30内に位置させるように構成する。こうすることにより、発音体が外部から衝撃を受けた時に、ヨーク23が大きく変位しようとしても、鍔部29が前記凹部30の上下の肩部31、32に当接してそれ以上は変位しないので、第2振動板22が変形したり、あるいはヨーク23やトッププレート25が第1振動板27やこれに固定されたボイスコイル28に衝突して、これらの部品を変形させたり破損させたりすることを防止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点としては、上記した特許文献1に開示した多機能型発音体で、
衝撃緩衝部はヨークの外周部を延長した構造にしている。このような構造の場合は形状が
複雑で加工が困難である。などの問題があった。
【0007】
本発明は、上述の欠点を解消するもので、その目的は、磁気回路部にストッパー部材を別部品として配設するため加工が容易であると共に、製品に衝撃が加わった際の磁気回路部の過剰振幅による故障を防止する。また、ストッパー部材を別部品にするため、その分、磁気回路部へ付加質量が加わり振動特性が向上する、薄型で信頼性に優れた電気音響変換器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明における電気音響変換器は、碗形状をしたヨークと、該ヨークの内部に順次積層される板状の磁石およびトッププレートから構成される磁気回路部と、該磁気回路部のヨークの側壁の内周部とトッププレートの外周部との間に形成される空隙内に配置されるボイスコイルと、前記磁気回路部の外方でボイスコイルを保持する振動板と、振動伝達部のケースに保持され、前記磁気回路部を保持するサスペンションとよりなる電気音響変換器において、前記磁気回路部に曲げ加工を施したストッパー部材を配設したことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記磁気回路部に配設したストッパー部材は、金属または樹脂部材であることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記磁気回路部に配設されたストッパー部材は、前記ヨークの碗形状の鍔部下面とヨークの外周部に固定されたリング状の錘との間に挟持されていることを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気音響変換器は、磁気回路部に衝撃吸収材としてのストッパー部材を別部品として配設することにより部品加工が容易である。また、ストッパー部材を別部品にするため、その分、磁気回路部へ付加質量が加わり振動特性の安定化が図られ、信頼性に優れ薄型の電気音響変換器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電気音響変換器について、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係わる電気音響変換器の断面図である。図1において、従来例と同様に、この振動体の磁気回路部1は、略碗形状をしたヨーク2と、該ヨーク2の内部に順次積み重ねられる平板状の磁石3およびトッププレート4から構成される。そして、この磁気回路部1と、ヨーク2の側壁の内周部と平板状のトッププレート4の外周部との間に形成される空隙(ギャップ)g内にボイスコイル5を配設する。該ボイスコイル5は前記磁気回路部1の外方でケース6の上方において、振動板7に固定されている。
【0014】
前記磁気回路部1を構成するヨーク2にはサスペンション8が固着されている。サスペンション8はヨーク2の外側に向かって延びる複数の腕部を有し、この腕部の外端はケース6にインサートモールドなどにより固着されている。従って、磁気回路部1はサスペンション8の腕状部に弾性的に懸架され、一体となって軸方向に振動することができる。上カバー9は前記ケース6の上部に取着され、背面カバー10は下面に取着されたである。
【0015】
前記ヨーク2の外周のリング状の部分には鉄やタングステン合金などの高比重の磁性材料によりなる付加質量(錘)11がヨーク2に一体的に結合固定されている。前記ヨーク2の碗形状の鍔部下面とヨーク2の外周部に固定されたリング状の錘11との間には後述するストッパー部材12が挟持されている。
【0016】
図2(a)は、ストッパー部材の平面図、図2(b)は、図2(a)の断面図、図3(a)は、磁気回路部にストッパー部材を配設した平面図、図3(b)は、図3(a)の断面図である。図2において、ストッパー部材12は、金属薄板をリング状にプレス抜きし、外周部を皿状に折り曲げて形成する。中央部には前記ヨーク2の外周のリング状の部分に嵌合する貫通孔12aと外周部には折り曲げられた鍔部12bが形成されている。図3において、磁気回路部1を構成するヨーク2の碗形状の鍔部下面とヨーク2の外周部に固定されたリング状の錘11との間にストッパー部材12が挟持される。前記ストッパー部材12は樹脂部材で成形しても良い。
【0017】
以上述べた構成の電気音響変換器の作用・効果について説明する。図1において、前記ストッパー部材12の外周部で折り曲げられた鍔部12bは、ケース6の内周の凹部13内に位置させるように構成する。こうすることにより、電気音響変換器が外部から衝撃を受けた時に、ヨーク2が大きく変位しようとしても、鍔部12bが前記凹部13の上下の肩部14(ケース側)、15(背面カバー側)に当接してそれ以上は変位しないので、ヨーク2やトッププレート4が振動板7やこれに固定されたボイスコイル5に衝突して、これらの部品を変形させたり破損させたりすることを防止する。ストッパー部材12を別部品として配設することにより、部品加工が容易である。また、ストッパー部材12を別部品にするため、前記錘11と相乗して、その分、磁気回路部へ付加質量が加わり振動特性の安定化が図られ、信頼性に優れ薄型の電気音響変換器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係わる電気音響変換器の断面図である。
【図2】(a)はストッパー部材の平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図3】(a)は磁気回路部にストッパー部材を配設した平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図4】従来の多機能型発音体の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 磁気回路部
2 ヨーク
3 磁石
4 トッププレート
5 ボイスコイル
6 ケース
7 振動板
8 サスペンション
9 上カバー
10 背面カバー
11 付加質量(錘)
12 ストッパー部材
12a 貫通孔
12b ストッパー部材鍔部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
碗形状をしたヨークと、該ヨークの内部に順次積層される板状の磁石およびトッププレートから構成される磁気回路部と、該磁気回路部のヨークの側壁の内周部とトッププレートの外周部との間に形成される空隙内に配置されるボイスコイルと、前記磁気回路部の外方でボイスコイルを保持する振動板と、振動伝達部のケースに保持され、前記磁気回路部を保持するサスペンションとよりなる電気音響変換器において、前記磁気回路部に曲げ加工を施したストッパー部材を配設したことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記磁気回路部に配設したストッパー部材は、金属または樹脂部材であることを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記磁気回路部に配設されたストッパー部材は、前記ヨークの碗形状の鍔部下面とヨークの外周部に固定されたリング状の錘との間に挟持されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気音響変換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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