電気音響変換装置、電子機器、及び防水カバー、並びに、電気音響変換装置の通気試験方法
【課題】防水膜を電気音響変換装置に取り付けた状態で、防水膜に気体を通す通気試験を行うことができる電気音響変換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通している。
【解決手段】通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やデジタルカメラ等、高い防水性が要求される電子機器、当該電子機器において用いられる電気音響変換装置、及び当該電気音響変換装置に用いられる防水カバーに関するものであり、特に、マイクロフォン、スピーカー等の電気音響変換装置の通気試験構造及び通気試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レシーバ用筐体内に振動板が設けられて構成されており、前面ケースに形成された複数の音声用の穴部に、筐体が、その開口部側が対向する状態で前面ケースの裏面側に取り付けられた構造が記載されている。また、水滴が穴部を通ってレシーバの内部に浸入することを防止するため、前面ケースとレシーバとの間には音の伝達性能の良好な防水膜が設けられた構造が記載されている。
【0003】
特許文献2には、裏ケースの前側が表ケースによって覆われており、裏ケースの収納凹部には回路基板が収納され、回路基板の前側が防水型キーシート材によって覆われた構成が記載されている。防水型キーシート材の外縁部が裏ケースの外縁部と表ケースの外縁部との間に挟まれている。防水型キーシート材には取付孔が形成され、その取付孔にマイクホルダが挿入される構成が記載されている。また、マイクホルダにはマイクロフォンが取り付けられ、マイクホルダの端面には防水膜が張り付けられ、マイクホルダの小開口が防水膜によって閉塞されている。
【特許文献1】特開平8−79865号公報(図1等)
【特許文献2】特開2006−262262号公報(図2〜4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、スピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換部品を備える電子機器に、例えば水深1M程度の防水性が要求される場合には、防水膜に微小な破れ等の損傷がないか否か、すなわち所定の防水機能が発揮されるかどうかの試験を行わなければならない。この試験には、防水膜に気体を通す通気試験(気体漏れ試験)を行うことが有効である。
【0005】
しかしながら、特許文献1の図1に示されるように、防水膜がレシーバ筐体に取り付けられた状態では、閉空間(筐体内部)に対しては気体を流入させることができないため、通気試験を実施することができない。
【0006】
一方、特許文献2の図2に示されたように、マイクホルダ等、防水膜を支持する部品、表ケース、裏ケース、回路基板、マイクロフォン等を各々最終組み立て工程において取り付ける方法では、表ケースに防水膜を取り付けた状態で通気試験を行うことができる。防水膜を表ケースに取り付けるのは、マイクホルダと防水膜を接着した後では、防水膜自体の防水性が評価できないからである。
【0007】
しかしながら、表ケースに防水膜を取り付ける場合は、一般的には手作業で貼り付ける必要があり、この際に防水膜に皺が入ってしまう。防水膜は薄くて腰がないからである。防水膜に皺が入ると、ビビリ音が発生し易くなる。また、この皺により防水膜が破れたり、表ケースと防水膜の接合部に隙間が生じるなどして漏水の原因にもなる。
【0008】
さらに、特許文献2の方法では、最終組み立て工程において部品点数や工数が増えるという問題がある。また、電気音響変換部品内の振動板と防水膜との間の距離がばらつき易く、最終製品である電子機器の音響特性がばらつくという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の電気音響変換装置は、
通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通しているものである。
また、筐体と、該筐体内に設けられた振動体と、前記筐体に形成された通音孔および通気試験孔と、前記通音孔を覆う防水膜とを有する電気音響変換装置も、上記目的を達成するものである。
本発明の電気音響変換装置は、通気試験孔を有することにより、通気試験孔から筐体外部へ又は通気試験孔から筐体内部へ気体を流通させることができるので、防水膜を筐体に装着した状態で、防水膜の通気試験を行うことができる。
【0010】
上記の電気音響変換装置において、防水膜は、通音開口部を有する枠体に装着されている態様が推奨される。薄い防水膜の取り扱い性が向上するためである。
上記の電気音響変換装置において、枠体は、さらに通気開口部を有し、枠体の通気開口部は通気試験孔に連通している態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、防水膜は通気開口部を有し、この通気開口部は枠体の通気開口部に連通している態様が推奨される。
【0011】
上記の電気音響変換装置において、防水膜のガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)が1秒以上である態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、防水膜が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜である態様が推奨される。
【0012】
上記の電気音響変換装置としては、例えば、音波受信装置や音波発信装置が挙げられる。
上記の電気音響変換装置において、一又は複数の筐体が通話音を放音する通音孔と通知音を放音する通音孔とを有する場合は、双方の通音孔が同一の防水膜で覆われている態様が推奨される。電気音響変換装置の製造工程が簡素化されるからである。
上記の電気音響変換装置において、通気試験孔に封止体が設けられた態様が推奨される。電気音響変換装置の音響特性を向上するためである。
【0013】
上記の電気音響変換装置において、筐体の外周部の一部又は全周に弾性体が形成されている態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、通気試験孔が前記弾性体により封止されている態様が推奨される。
【0014】
上記電気音響変換装置と、該電気音響変換装置に嵌合する凹部を有する外装筐体を含む電子機器を構成することが好ましい。
上記の電気音響変換装置と外装筐体とを有する電子機器として、電気音響変換装置が外装筐体の一部に当接することにより通気試験孔が封止されている態様が推奨される。
【0015】
上記目的を達成し得た本発明の防水カバーは、枠体と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されているものである。
【0016】
本発明における「筐体」とは、電気音響変換装置の振動体を内包する空間を確保する収納体であり、その形状や、開口の位置、開口の大きさに特に制限を受けるものではない。
本発明における「防水膜」は、外部からの水や埃の侵入を防止するための膜である。したがって、防水膜の通気性は必ずしも必要ではない。
【0017】
また、開口部を有する供給台紙上に、この開口部と上記の電気音響変換装置の通音孔とが重なるように当該電気音響変換装置を粘着させ、この状態で開口部又は前記通気試験孔から気体を流入させることにより電気音響変換装置の気体漏れを測定することが好適である。
【0018】
また、電子機器の製造にあたっては、電気音響変換装置が粘着された供給台紙から前記電気音響変換装置を剥がし取り、該電気音響変換装置を外装筐体に装着する態様が推奨される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電気音響変換装置によれば、電気音響変換装置の筐体内外部に連通する通気試験孔を有するため、電気音響変換装置に防水膜を取り付けた状態で、防水膜に気体を通す通気試験を行うことができる。そのため、電子機器の組み立て時の部品点数が減り、生産効率が上がる。また、本発明の電気音響変換装置によれば、防水膜を電気音響変換装置に取り付けるため、防水膜を電子機器の外装筐体に取り付けた場合に比べて、筐体内の振動体と防水膜との距離を一定に保ち易く、電気音響変換装置の音響特性が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態における電気音響変換装置、電子機器、防水カバー及び電気音響変換装置の通気試験方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
電気音響変換装置の構成
図1は、電気音響変換装置の一例である携帯電話用のスピーカー(着信音等の通知音を発する音波発信装置)の断面を示すものである。図1において、スピーカーの筐体1内には、支持体2に支持された振動体3が設けられている。筐体1の上面には、振動体3から発せられる音をスピーカー外部に放出するための通音孔4と、後に説明する通気試験の際に筐体1内の気体を外部へ流出させるための通気試験孔5が形成されている。
【0022】
通音孔4の形状に特に制限はないが、本実施の形態では、通音孔4は円形であり、その直径は16mmである。通気試験孔5の形状にも特に制限はないが、本実施の形態では、通気試験孔5も円形であり、その直径は1mmである。
【0023】
筐体1上には、枠体7と、枠体7で支持された防水膜9で構成される防水カバーが形成され、筐体1内部への水や埃の侵入を防止することができる。枠体7には、ポロン(株式会社ロジャースイノアック製「SR−S−48P」)を使用した。
【0024】
枠体7に形成された通音開口部11は、筐体1の通音孔4に連通している。振動体3から発せられる音をスピーカー外部に放出するためのものである。
【0025】
防水膜9には、防水性であり、音波の強度減衰率が小さいものであれば適宜使用できる。本実施の形態で使用した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFEシート;ジャパンゴアテックス株式会社製「GAW315」)は、防水性に優れる他、多孔質構造で質量が小さく、通気性にも優れているため、防水膜9を透過する音波の強度減衰率が小さく、電気音響変換装置の用途に適している。音波の強度減衰率は、防水膜9の単位面積当たりの質量に大きく依存するので、必ずしも、防水膜9が通気性を有する必要はない。防水膜の通気性が高すぎると、通気試験による防水膜の損傷チェックが困難になるため、防水膜のガーレー透気抵抗度は好ましくは1秒以上、さらに好ましくは3秒以上である。防水膜のガーレー透気抵抗度が高いほど、より微細な欠点も検知できる。ガーレー透気抵抗度は、JIS P 8117(1998)により測定した値である。
【0026】
枠体7及び防水膜9は、両面テープ6、8、10(住友スリーエム株式会社製の両面粘着テープ「ST−416P」)によって固定されている。
【0027】
防水膜9と枠体7は、両面テープ6、10の両側に離型紙(後述の供給台紙18)が貼り付けられた状態で準備され、筐体1への装着側の離型紙を剥がした状態、つまり、もう片側には離型紙が残っている状態で、筐体1を接合できるため、皺が入ることはない。また、最終的に取り付けられる電子機器には、防水膜9と筐体1とが接合された状態で取り付けることができるため、筐体1を電子機器に取り付ける工程で皺が入ることはない。
【0028】
通常は、埃等の異物が筐体1内に侵入することを防止するため、筐体1の通音孔4を覆うように保護メッシュを設けるが、携帯電話等の電子機器や音響変換装置の薄型化が要求される中、保護メッシュを省略した音響変換装置が製造される場合もある。しかし、このような場合は、音響変換装置を最終的に電子機器に組み付けるまでの間に、音響変換装置の筐体1内の振動体3部分に異物が侵入する懸念がある。この点、本実施の形態における電気音響変換装置では、筐体1に予め防水膜9を装着することから、最終工程までの間に筐体1内に異物が侵入することを防止できるため、上記保護メッシュを省略してもよく、電子機器の薄型化に有効である。
【0029】
通気試験
以上のように構成されたスピーカーの防水性を確認するために行われる通気試験の方法について説明する。
通気試験は、筐体1の外部から内部へ防水膜9を介して空気を流入させたときの空気の通り難さを測定することにより行う。空気の通り難さの度合いは、例えばガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)を基準とすることができる。通常、ガーレー透気抵抗度は、一定面積の試験片に所定の圧力で空気を流入させ、一定量の空気が試験片を通り抜けるのに要した時間を測定することにより求められるが、ここでは、図14に示すように、PETフィルムを基材とし、中央に開口部を有する剥離ライナー(「供給台紙」とも言う場合もある)18に防水カバーが装着されたスピーカーを載せ、スピーカーを剥離ライナー18と共に試験装置の試料設置部分(円筒21)に設置し、一定量の空気が電気音響変換装置を通り抜けるのに要した時間を電気音響変換装置のガーレー透気抵抗度とする。測定条件は、JIS P 8117(1998)に準じる。ガーレー透気抵抗度が所定の値よりも小さい場合には、気体漏れが大きいということであり、防水膜9に破れ等の不良があると判断する。なお、通気試験は、通気試験孔5から筐体1の内部へ気体を流入させることによっても行うことができる。
【0030】
JISに規定されるガーレー透気抵抗度は、本来は紙及び板紙を被検物としたものであるが、本明細書においては、被検物の形状によらずにガーレー透気抵抗度を定義し、例えば、図14に示すように、防水膜9が装着されたスピーカー(電気音響変換装置)に対して測定した透気抵抗度を「電気音響変換装置のガーレー透気抵抗度」ということにする。
【0031】
通気試験孔5は、スピーカーの筐体1内に流入させた空気を十分に放出でき、通気試験の際、筐体1内の圧力を大気圧に近い状態に開放できる程度の開口面積を有していれば良い。防水膜9自体の透気抵抗度が高い場合には、通気試験孔5の開口面積は小さくてよい。
【0032】
ここで、防水カバーのガーレー透気抵抗度をTmとし、スピーカー筐体(防水カバーが取り付けられていない状態)のガーレー透気抵抗度をTdとした場合、Tm≧Tdとなるのが好ましい。TdがTmよりも大きくなる(即ちスピーカー筐体の通気性が防水カバーの通気性よりも低くなる)と、スピーカー筐体部分の圧力損失が影響して防水カバーの透気抵抗度を測定することが困難になる場合がある。
防水カバーのガーレー透気抵抗度Tmとスピーカー筐体のガーレー透気抵抗度Tdは、前記通気試験の方法と同様にして測定する。つまり、通気試験の電気音響変換装置の替わりに防水カバーまたはスピーカー筐体を両面粘着テープで供給台紙に固定してガーレー透気抵抗度を測定する。
【0033】
通気試験が終了した後は、図2に示すように、封止体19(ビスや、ゴム栓等)により通気試験孔5を密閉しておくことが望ましい。スピーカーの音響特性を低下させないようにするため、及び通気試験孔5を通じての浸水を防止するためである。また、ビス等の代わりに、筐体1の外部から粘着テープ等を貼ることもできる。
【0034】
通気試験孔の変形例
図3及び図4は、電気音響変換装置の他の一例である携帯電話用スピーカーの断面を示すものである。図3及び図4に示したスピーカーの構成は、基本的には図1に示したスピーカーと同様の構成であるので、共通する構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0035】
図1に示したスピーカーの構成では、筐体1の側面に通気試験孔5が形成されているが、図3及び図4の構成では、通音孔4と同じく、通気試験孔5が筐体1の上面に設けられている。通気試験を行う際には、固定治具等(図示せず)により筐体1を底面または側面から固定しておく必要があることから、筐体1の底面または側面では、排気場所が制限されることがあるためである。
【0036】
なお当然のことながら、筐体1の上面に通気試験孔5を設け、しかも枠体7が通気試験孔5を覆うこととなる場合(図3)、及び、防水膜9が通気試験孔5を覆うこととなる場合(図4)には、筐体1の内部の空気を外部に排気するため、枠体7及び防水膜9に通気開口部12、13を設け、通気試験孔5と連通させておく必要がある。
【0037】
図3に示すスピーカーのように、防水膜9が通気試験孔5を覆っていない場合には、通気試験に用いるガーレー試験機(図示せず)の空気流出口を構成するガスケットが通気試験孔5に重なる場合であっても、ガスケットと枠体7の通気開口部12とは、少なくとも防水膜9と両面テープ10の厚さ分は互いに離間しているため、排気経路が確保される。
【0038】
一方、後に図面を用いて説明するが、図4に示したスピーカーの構成では、防水カバーの上面の高さが揃っているため、防水カバーの上面側に電子機器の外装筐体を装着すれば、スピーカーと外装筐体との当接により、通気試験孔5が封止される。
【0039】
また、図5に示すように、通気試験孔5は必ずしも筐体1に設けられている必要はなく、筐体1の内部空間と外部とが通気可能な状態となっていればよい。この場合、枠体7の強度が高いことが望ましい。
【0040】
本実施の形態では、電気音響変換装置として携帯電話用のスピーカー(着信音等の通知音を発する音波発信装置)を例に挙げて説明したが、携帯電話用のレシーバ(相手の話声を発する音波発信装置)であっても、また、防水性を必要とするデジタルカメラ用のスピーカーであっても同様に構成することができる。
【0041】
また、音波を発生する電気音響変換装置だけでなく、携帯電話用マイクロフォン等、音波受信装置であっても、上記スピーカーと同様に、電気信号と振動体の振動とが互いに変換される点で同じであり、本発明の電気音響変換装置を構成することができる。
【0042】
電子機器の外装筐体への装着
(第1の装着例)
図6は、図4に示したスピーカーを、携帯電話の外装筐体14に装着する状況を示すものである。図6に示すように、外装筐体14は、平坦な面で構成される当接部15を備えている。防水膜9の通気開口部13を当接部15に押し当てるようにスピーカーを装着すれば、装着と同時に通気試験孔5の封止が完了する。
携帯電話を構成するために必要な他の部品は常法により組み立てられ、携帯電話が完成する。
【0043】
(第2の装着例)
図7〜図9は、通気試験から、外装筐体への装着に至るまでの工程断面図である。
まず、図7に示すように、通気試験孔5が筐体1の側面に形成されたスピーカーの通気試験を行う。
【0044】
次に、図8に示すように、弾性体であるゴムカバー16により、スピーカーの外周を覆う。通気試験孔5は、ゴムカバー16により封止される。
【0045】
最後に、図9に示すように、外装筐体14の凹部に、ゴムカバー16が装着されたスピーカーを嵌合させる。ゴムカバー16は、上述のように通気試験孔5を封止できるとともに、スピーカーを外装筐体14の凹部に確実に嵌合させることができる。
ゴムカバー16は、スピーカーの外周部の全面に亘って形成されていなくても、スピーカー外周部の一部で通気試験孔を封止できる位置に弾性体が形成されていれば、外装筐体14の凹部への嵌合には有効である。
【0046】
(第3の装着例)
図10に示すように、スピーカーの周囲に形成される弾性体は、オーリング(Oリング)17であっても、スピーカーを外装筐体14の凹部に確実に嵌合させることができる。
【0047】
防水カバー
図11(a)は、本実施の形態における電気音響変換装置の作成を可能とする防水カバーの概略の断面図である。図11(a)に示すように、本実施の形態にかかる防水カバーは、枠体7と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜9とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されている。枠体7には、上述のポロンを使用した。防水膜9には、上述の多孔質ポリテトラフルオロエチレンを使用した。
【0048】
枠体7及び防水膜9は、両面テープ8(住友スリーエム社製の両面粘着テープST−416P)によって固定されている。
【0049】
図11(b)〜(d)は、図11(a)に示した防水カバーを防水膜9側から見た平面図の例を示すものである。点線は、枠体7の通音開口部11の外周の位置を示す。図11(b)〜(d)に示すように、枠体7及び防水膜9には、通気開口部12、13を形成するための幅広部を備える。幅広部は、図11(b)に示すように、枠体7の通音開口部11の中心と、防水膜9の中心をずらして貼り合わせることにより構成してもよいし、図11(c)に示すように、防水膜9を楕円に形成し、この楕円の長軸方向端部に構成してもよいし、図11(d)に示すように、通気開口部12、13を形成する場所に特定して防水膜9、枠体7及び両面テープ6、8、10に凸部を形成してもよい。
【0050】
図12(a)は、本実施の形態における電気音響変換装置の作成を可能とする防水カバーの断面図である。図12(a)は、枠体7に2つの通音開口部11が形成された例を示すものである。2つの通音開口部11としては、例えば、上述のスピーカーの通音孔4(図12では図示せず)に対応する通音開口部11、レシーバの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11の例が挙げられる。
【0051】
図12(b)は、図12(a)に示した防水カバーを防水膜9側から見た平面図を示すものである。図12(a)及び(b)に示すように、通音開口部11が複数存在する場合であっても、これを同一の防水膜9で覆えば、防水カバーの製造工程ないしは電気音響変換装置の製造工程が簡素化される。
【0052】
図12(c)は、スピーカーの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11、レシーバの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11が一つの通音開口部11にまとめられた例を示すものである。防水膜9は、図12(b)の例と同様に1枚である。この場合は、枠体7の通気開口部12及び防水膜9の通気開口部13は、枠体7及び防水膜9の隅部に設けられる。
【0053】
スピーカーの供給態様
図13は、本発明の実施の形態にかかるスピーカーを通気試験する際のスピーカーの供給態様の例を示す図である。図13に示すように、防水カバーが装着された状態の複数のスピーカーが供給台紙18上に用意されている。これにより、スピーカーを供給台紙18から剥がさず、この状態で一括して通気試験を行うことが可能である。また、取り扱い性に優れ、電子機器の最終組み立て工程を簡略化することができる。
【0054】
また、スピーカーを電子機器の外装筐体14に装着する際には、図13に示す状態から、スピーカーを供給台紙18からピックアップすれば、電子機器への実装の自動化も可能となる。防水膜9単体を電子機器へ装着する場合は手作業で貼付する必要があり、皺発生の原因となる。なお、スピーカーを電子機器の外装筐体14に装着する手順としては、スピーカーを電子機器の回路基板に接続してから外装筐体14を被せる方法と、スピーカーを外装筐体14に貼り付けてから、スピーカーを回路基板に接続する方法がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置を外装筐体へ装着する態様を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図11】図11の(a)は、本発明の実施の形態にかかる防水カバーの概略断面であり、(b)〜(d)は、防水膜の形状のバリエーションを示す図である。
【図12】図12の(a)は、本発明の実施の形態にかかる防水カバーの概略断面であり、(b)はその平面図、(c)は他の防水カバーの平面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置を一括して通気試験を行う態様を示す図である。
【図14】図14は、ガーレー試験機において試験片を装着する部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
2 支持体
3 振動体
4 通音孔
5 通気試験孔
6、8、10 両面テープ
7 枠体
9 防水膜
11 通音開口部
12、13 通気開口部
14 外装筐体
15 当接部
16 ゴムカバー
17 オーリング
18 供給台紙(剥離ライナー)
19 封止体
20 ガスケット
21 円筒
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やデジタルカメラ等、高い防水性が要求される電子機器、当該電子機器において用いられる電気音響変換装置、及び当該電気音響変換装置に用いられる防水カバーに関するものであり、特に、マイクロフォン、スピーカー等の電気音響変換装置の通気試験構造及び通気試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レシーバ用筐体内に振動板が設けられて構成されており、前面ケースに形成された複数の音声用の穴部に、筐体が、その開口部側が対向する状態で前面ケースの裏面側に取り付けられた構造が記載されている。また、水滴が穴部を通ってレシーバの内部に浸入することを防止するため、前面ケースとレシーバとの間には音の伝達性能の良好な防水膜が設けられた構造が記載されている。
【0003】
特許文献2には、裏ケースの前側が表ケースによって覆われており、裏ケースの収納凹部には回路基板が収納され、回路基板の前側が防水型キーシート材によって覆われた構成が記載されている。防水型キーシート材の外縁部が裏ケースの外縁部と表ケースの外縁部との間に挟まれている。防水型キーシート材には取付孔が形成され、その取付孔にマイクホルダが挿入される構成が記載されている。また、マイクホルダにはマイクロフォンが取り付けられ、マイクホルダの端面には防水膜が張り付けられ、マイクホルダの小開口が防水膜によって閉塞されている。
【特許文献1】特開平8−79865号公報(図1等)
【特許文献2】特開2006−262262号公報(図2〜4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、スピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換部品を備える電子機器に、例えば水深1M程度の防水性が要求される場合には、防水膜に微小な破れ等の損傷がないか否か、すなわち所定の防水機能が発揮されるかどうかの試験を行わなければならない。この試験には、防水膜に気体を通す通気試験(気体漏れ試験)を行うことが有効である。
【0005】
しかしながら、特許文献1の図1に示されるように、防水膜がレシーバ筐体に取り付けられた状態では、閉空間(筐体内部)に対しては気体を流入させることができないため、通気試験を実施することができない。
【0006】
一方、特許文献2の図2に示されたように、マイクホルダ等、防水膜を支持する部品、表ケース、裏ケース、回路基板、マイクロフォン等を各々最終組み立て工程において取り付ける方法では、表ケースに防水膜を取り付けた状態で通気試験を行うことができる。防水膜を表ケースに取り付けるのは、マイクホルダと防水膜を接着した後では、防水膜自体の防水性が評価できないからである。
【0007】
しかしながら、表ケースに防水膜を取り付ける場合は、一般的には手作業で貼り付ける必要があり、この際に防水膜に皺が入ってしまう。防水膜は薄くて腰がないからである。防水膜に皺が入ると、ビビリ音が発生し易くなる。また、この皺により防水膜が破れたり、表ケースと防水膜の接合部に隙間が生じるなどして漏水の原因にもなる。
【0008】
さらに、特許文献2の方法では、最終組み立て工程において部品点数や工数が増えるという問題がある。また、電気音響変換部品内の振動板と防水膜との間の距離がばらつき易く、最終製品である電子機器の音響特性がばらつくという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の電気音響変換装置は、
通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通しているものである。
また、筐体と、該筐体内に設けられた振動体と、前記筐体に形成された通音孔および通気試験孔と、前記通音孔を覆う防水膜とを有する電気音響変換装置も、上記目的を達成するものである。
本発明の電気音響変換装置は、通気試験孔を有することにより、通気試験孔から筐体外部へ又は通気試験孔から筐体内部へ気体を流通させることができるので、防水膜を筐体に装着した状態で、防水膜の通気試験を行うことができる。
【0010】
上記の電気音響変換装置において、防水膜は、通音開口部を有する枠体に装着されている態様が推奨される。薄い防水膜の取り扱い性が向上するためである。
上記の電気音響変換装置において、枠体は、さらに通気開口部を有し、枠体の通気開口部は通気試験孔に連通している態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、防水膜は通気開口部を有し、この通気開口部は枠体の通気開口部に連通している態様が推奨される。
【0011】
上記の電気音響変換装置において、防水膜のガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)が1秒以上である態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、防水膜が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜である態様が推奨される。
【0012】
上記の電気音響変換装置としては、例えば、音波受信装置や音波発信装置が挙げられる。
上記の電気音響変換装置において、一又は複数の筐体が通話音を放音する通音孔と通知音を放音する通音孔とを有する場合は、双方の通音孔が同一の防水膜で覆われている態様が推奨される。電気音響変換装置の製造工程が簡素化されるからである。
上記の電気音響変換装置において、通気試験孔に封止体が設けられた態様が推奨される。電気音響変換装置の音響特性を向上するためである。
【0013】
上記の電気音響変換装置において、筐体の外周部の一部又は全周に弾性体が形成されている態様が推奨される。
上記の電気音響変換装置において、通気試験孔が前記弾性体により封止されている態様が推奨される。
【0014】
上記電気音響変換装置と、該電気音響変換装置に嵌合する凹部を有する外装筐体を含む電子機器を構成することが好ましい。
上記の電気音響変換装置と外装筐体とを有する電子機器として、電気音響変換装置が外装筐体の一部に当接することにより通気試験孔が封止されている態様が推奨される。
【0015】
上記目的を達成し得た本発明の防水カバーは、枠体と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されているものである。
【0016】
本発明における「筐体」とは、電気音響変換装置の振動体を内包する空間を確保する収納体であり、その形状や、開口の位置、開口の大きさに特に制限を受けるものではない。
本発明における「防水膜」は、外部からの水や埃の侵入を防止するための膜である。したがって、防水膜の通気性は必ずしも必要ではない。
【0017】
また、開口部を有する供給台紙上に、この開口部と上記の電気音響変換装置の通音孔とが重なるように当該電気音響変換装置を粘着させ、この状態で開口部又は前記通気試験孔から気体を流入させることにより電気音響変換装置の気体漏れを測定することが好適である。
【0018】
また、電子機器の製造にあたっては、電気音響変換装置が粘着された供給台紙から前記電気音響変換装置を剥がし取り、該電気音響変換装置を外装筐体に装着する態様が推奨される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電気音響変換装置によれば、電気音響変換装置の筐体内外部に連通する通気試験孔を有するため、電気音響変換装置に防水膜を取り付けた状態で、防水膜に気体を通す通気試験を行うことができる。そのため、電子機器の組み立て時の部品点数が減り、生産効率が上がる。また、本発明の電気音響変換装置によれば、防水膜を電気音響変換装置に取り付けるため、防水膜を電子機器の外装筐体に取り付けた場合に比べて、筐体内の振動体と防水膜との距離を一定に保ち易く、電気音響変換装置の音響特性が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態における電気音響変換装置、電子機器、防水カバー及び電気音響変換装置の通気試験方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
電気音響変換装置の構成
図1は、電気音響変換装置の一例である携帯電話用のスピーカー(着信音等の通知音を発する音波発信装置)の断面を示すものである。図1において、スピーカーの筐体1内には、支持体2に支持された振動体3が設けられている。筐体1の上面には、振動体3から発せられる音をスピーカー外部に放出するための通音孔4と、後に説明する通気試験の際に筐体1内の気体を外部へ流出させるための通気試験孔5が形成されている。
【0022】
通音孔4の形状に特に制限はないが、本実施の形態では、通音孔4は円形であり、その直径は16mmである。通気試験孔5の形状にも特に制限はないが、本実施の形態では、通気試験孔5も円形であり、その直径は1mmである。
【0023】
筐体1上には、枠体7と、枠体7で支持された防水膜9で構成される防水カバーが形成され、筐体1内部への水や埃の侵入を防止することができる。枠体7には、ポロン(株式会社ロジャースイノアック製「SR−S−48P」)を使用した。
【0024】
枠体7に形成された通音開口部11は、筐体1の通音孔4に連通している。振動体3から発せられる音をスピーカー外部に放出するためのものである。
【0025】
防水膜9には、防水性であり、音波の強度減衰率が小さいものであれば適宜使用できる。本実施の形態で使用した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFEシート;ジャパンゴアテックス株式会社製「GAW315」)は、防水性に優れる他、多孔質構造で質量が小さく、通気性にも優れているため、防水膜9を透過する音波の強度減衰率が小さく、電気音響変換装置の用途に適している。音波の強度減衰率は、防水膜9の単位面積当たりの質量に大きく依存するので、必ずしも、防水膜9が通気性を有する必要はない。防水膜の通気性が高すぎると、通気試験による防水膜の損傷チェックが困難になるため、防水膜のガーレー透気抵抗度は好ましくは1秒以上、さらに好ましくは3秒以上である。防水膜のガーレー透気抵抗度が高いほど、より微細な欠点も検知できる。ガーレー透気抵抗度は、JIS P 8117(1998)により測定した値である。
【0026】
枠体7及び防水膜9は、両面テープ6、8、10(住友スリーエム株式会社製の両面粘着テープ「ST−416P」)によって固定されている。
【0027】
防水膜9と枠体7は、両面テープ6、10の両側に離型紙(後述の供給台紙18)が貼り付けられた状態で準備され、筐体1への装着側の離型紙を剥がした状態、つまり、もう片側には離型紙が残っている状態で、筐体1を接合できるため、皺が入ることはない。また、最終的に取り付けられる電子機器には、防水膜9と筐体1とが接合された状態で取り付けることができるため、筐体1を電子機器に取り付ける工程で皺が入ることはない。
【0028】
通常は、埃等の異物が筐体1内に侵入することを防止するため、筐体1の通音孔4を覆うように保護メッシュを設けるが、携帯電話等の電子機器や音響変換装置の薄型化が要求される中、保護メッシュを省略した音響変換装置が製造される場合もある。しかし、このような場合は、音響変換装置を最終的に電子機器に組み付けるまでの間に、音響変換装置の筐体1内の振動体3部分に異物が侵入する懸念がある。この点、本実施の形態における電気音響変換装置では、筐体1に予め防水膜9を装着することから、最終工程までの間に筐体1内に異物が侵入することを防止できるため、上記保護メッシュを省略してもよく、電子機器の薄型化に有効である。
【0029】
通気試験
以上のように構成されたスピーカーの防水性を確認するために行われる通気試験の方法について説明する。
通気試験は、筐体1の外部から内部へ防水膜9を介して空気を流入させたときの空気の通り難さを測定することにより行う。空気の通り難さの度合いは、例えばガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)を基準とすることができる。通常、ガーレー透気抵抗度は、一定面積の試験片に所定の圧力で空気を流入させ、一定量の空気が試験片を通り抜けるのに要した時間を測定することにより求められるが、ここでは、図14に示すように、PETフィルムを基材とし、中央に開口部を有する剥離ライナー(「供給台紙」とも言う場合もある)18に防水カバーが装着されたスピーカーを載せ、スピーカーを剥離ライナー18と共に試験装置の試料設置部分(円筒21)に設置し、一定量の空気が電気音響変換装置を通り抜けるのに要した時間を電気音響変換装置のガーレー透気抵抗度とする。測定条件は、JIS P 8117(1998)に準じる。ガーレー透気抵抗度が所定の値よりも小さい場合には、気体漏れが大きいということであり、防水膜9に破れ等の不良があると判断する。なお、通気試験は、通気試験孔5から筐体1の内部へ気体を流入させることによっても行うことができる。
【0030】
JISに規定されるガーレー透気抵抗度は、本来は紙及び板紙を被検物としたものであるが、本明細書においては、被検物の形状によらずにガーレー透気抵抗度を定義し、例えば、図14に示すように、防水膜9が装着されたスピーカー(電気音響変換装置)に対して測定した透気抵抗度を「電気音響変換装置のガーレー透気抵抗度」ということにする。
【0031】
通気試験孔5は、スピーカーの筐体1内に流入させた空気を十分に放出でき、通気試験の際、筐体1内の圧力を大気圧に近い状態に開放できる程度の開口面積を有していれば良い。防水膜9自体の透気抵抗度が高い場合には、通気試験孔5の開口面積は小さくてよい。
【0032】
ここで、防水カバーのガーレー透気抵抗度をTmとし、スピーカー筐体(防水カバーが取り付けられていない状態)のガーレー透気抵抗度をTdとした場合、Tm≧Tdとなるのが好ましい。TdがTmよりも大きくなる(即ちスピーカー筐体の通気性が防水カバーの通気性よりも低くなる)と、スピーカー筐体部分の圧力損失が影響して防水カバーの透気抵抗度を測定することが困難になる場合がある。
防水カバーのガーレー透気抵抗度Tmとスピーカー筐体のガーレー透気抵抗度Tdは、前記通気試験の方法と同様にして測定する。つまり、通気試験の電気音響変換装置の替わりに防水カバーまたはスピーカー筐体を両面粘着テープで供給台紙に固定してガーレー透気抵抗度を測定する。
【0033】
通気試験が終了した後は、図2に示すように、封止体19(ビスや、ゴム栓等)により通気試験孔5を密閉しておくことが望ましい。スピーカーの音響特性を低下させないようにするため、及び通気試験孔5を通じての浸水を防止するためである。また、ビス等の代わりに、筐体1の外部から粘着テープ等を貼ることもできる。
【0034】
通気試験孔の変形例
図3及び図4は、電気音響変換装置の他の一例である携帯電話用スピーカーの断面を示すものである。図3及び図4に示したスピーカーの構成は、基本的には図1に示したスピーカーと同様の構成であるので、共通する構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0035】
図1に示したスピーカーの構成では、筐体1の側面に通気試験孔5が形成されているが、図3及び図4の構成では、通音孔4と同じく、通気試験孔5が筐体1の上面に設けられている。通気試験を行う際には、固定治具等(図示せず)により筐体1を底面または側面から固定しておく必要があることから、筐体1の底面または側面では、排気場所が制限されることがあるためである。
【0036】
なお当然のことながら、筐体1の上面に通気試験孔5を設け、しかも枠体7が通気試験孔5を覆うこととなる場合(図3)、及び、防水膜9が通気試験孔5を覆うこととなる場合(図4)には、筐体1の内部の空気を外部に排気するため、枠体7及び防水膜9に通気開口部12、13を設け、通気試験孔5と連通させておく必要がある。
【0037】
図3に示すスピーカーのように、防水膜9が通気試験孔5を覆っていない場合には、通気試験に用いるガーレー試験機(図示せず)の空気流出口を構成するガスケットが通気試験孔5に重なる場合であっても、ガスケットと枠体7の通気開口部12とは、少なくとも防水膜9と両面テープ10の厚さ分は互いに離間しているため、排気経路が確保される。
【0038】
一方、後に図面を用いて説明するが、図4に示したスピーカーの構成では、防水カバーの上面の高さが揃っているため、防水カバーの上面側に電子機器の外装筐体を装着すれば、スピーカーと外装筐体との当接により、通気試験孔5が封止される。
【0039】
また、図5に示すように、通気試験孔5は必ずしも筐体1に設けられている必要はなく、筐体1の内部空間と外部とが通気可能な状態となっていればよい。この場合、枠体7の強度が高いことが望ましい。
【0040】
本実施の形態では、電気音響変換装置として携帯電話用のスピーカー(着信音等の通知音を発する音波発信装置)を例に挙げて説明したが、携帯電話用のレシーバ(相手の話声を発する音波発信装置)であっても、また、防水性を必要とするデジタルカメラ用のスピーカーであっても同様に構成することができる。
【0041】
また、音波を発生する電気音響変換装置だけでなく、携帯電話用マイクロフォン等、音波受信装置であっても、上記スピーカーと同様に、電気信号と振動体の振動とが互いに変換される点で同じであり、本発明の電気音響変換装置を構成することができる。
【0042】
電子機器の外装筐体への装着
(第1の装着例)
図6は、図4に示したスピーカーを、携帯電話の外装筐体14に装着する状況を示すものである。図6に示すように、外装筐体14は、平坦な面で構成される当接部15を備えている。防水膜9の通気開口部13を当接部15に押し当てるようにスピーカーを装着すれば、装着と同時に通気試験孔5の封止が完了する。
携帯電話を構成するために必要な他の部品は常法により組み立てられ、携帯電話が完成する。
【0043】
(第2の装着例)
図7〜図9は、通気試験から、外装筐体への装着に至るまでの工程断面図である。
まず、図7に示すように、通気試験孔5が筐体1の側面に形成されたスピーカーの通気試験を行う。
【0044】
次に、図8に示すように、弾性体であるゴムカバー16により、スピーカーの外周を覆う。通気試験孔5は、ゴムカバー16により封止される。
【0045】
最後に、図9に示すように、外装筐体14の凹部に、ゴムカバー16が装着されたスピーカーを嵌合させる。ゴムカバー16は、上述のように通気試験孔5を封止できるとともに、スピーカーを外装筐体14の凹部に確実に嵌合させることができる。
ゴムカバー16は、スピーカーの外周部の全面に亘って形成されていなくても、スピーカー外周部の一部で通気試験孔を封止できる位置に弾性体が形成されていれば、外装筐体14の凹部への嵌合には有効である。
【0046】
(第3の装着例)
図10に示すように、スピーカーの周囲に形成される弾性体は、オーリング(Oリング)17であっても、スピーカーを外装筐体14の凹部に確実に嵌合させることができる。
【0047】
防水カバー
図11(a)は、本実施の形態における電気音響変換装置の作成を可能とする防水カバーの概略の断面図である。図11(a)に示すように、本実施の形態にかかる防水カバーは、枠体7と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜9とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されている。枠体7には、上述のポロンを使用した。防水膜9には、上述の多孔質ポリテトラフルオロエチレンを使用した。
【0048】
枠体7及び防水膜9は、両面テープ8(住友スリーエム社製の両面粘着テープST−416P)によって固定されている。
【0049】
図11(b)〜(d)は、図11(a)に示した防水カバーを防水膜9側から見た平面図の例を示すものである。点線は、枠体7の通音開口部11の外周の位置を示す。図11(b)〜(d)に示すように、枠体7及び防水膜9には、通気開口部12、13を形成するための幅広部を備える。幅広部は、図11(b)に示すように、枠体7の通音開口部11の中心と、防水膜9の中心をずらして貼り合わせることにより構成してもよいし、図11(c)に示すように、防水膜9を楕円に形成し、この楕円の長軸方向端部に構成してもよいし、図11(d)に示すように、通気開口部12、13を形成する場所に特定して防水膜9、枠体7及び両面テープ6、8、10に凸部を形成してもよい。
【0050】
図12(a)は、本実施の形態における電気音響変換装置の作成を可能とする防水カバーの断面図である。図12(a)は、枠体7に2つの通音開口部11が形成された例を示すものである。2つの通音開口部11としては、例えば、上述のスピーカーの通音孔4(図12では図示せず)に対応する通音開口部11、レシーバの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11の例が挙げられる。
【0051】
図12(b)は、図12(a)に示した防水カバーを防水膜9側から見た平面図を示すものである。図12(a)及び(b)に示すように、通音開口部11が複数存在する場合であっても、これを同一の防水膜9で覆えば、防水カバーの製造工程ないしは電気音響変換装置の製造工程が簡素化される。
【0052】
図12(c)は、スピーカーの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11、レシーバの通音孔4(図示せず)に対応する通音開口部11が一つの通音開口部11にまとめられた例を示すものである。防水膜9は、図12(b)の例と同様に1枚である。この場合は、枠体7の通気開口部12及び防水膜9の通気開口部13は、枠体7及び防水膜9の隅部に設けられる。
【0053】
スピーカーの供給態様
図13は、本発明の実施の形態にかかるスピーカーを通気試験する際のスピーカーの供給態様の例を示す図である。図13に示すように、防水カバーが装着された状態の複数のスピーカーが供給台紙18上に用意されている。これにより、スピーカーを供給台紙18から剥がさず、この状態で一括して通気試験を行うことが可能である。また、取り扱い性に優れ、電子機器の最終組み立て工程を簡略化することができる。
【0054】
また、スピーカーを電子機器の外装筐体14に装着する際には、図13に示す状態から、スピーカーを供給台紙18からピックアップすれば、電子機器への実装の自動化も可能となる。防水膜9単体を電子機器へ装着する場合は手作業で貼付する必要があり、皺発生の原因となる。なお、スピーカーを電子機器の外装筐体14に装着する手順としては、スピーカーを電子機器の回路基板に接続してから外装筐体14を被せる方法と、スピーカーを外装筐体14に貼り付けてから、スピーカーを回路基板に接続する方法がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置を外装筐体へ装着する態様を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の工程断面図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施の形態にかかる電気音響変換装置の概略断面図である。
【図11】図11の(a)は、本発明の実施の形態にかかる防水カバーの概略断面であり、(b)〜(d)は、防水膜の形状のバリエーションを示す図である。
【図12】図12の(a)は、本発明の実施の形態にかかる防水カバーの概略断面であり、(b)はその平面図、(c)は他の防水カバーの平面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態にかかる電気音響変換装置を一括して通気試験を行う態様を示す図である。
【図14】図14は、ガーレー試験機において試験片を装着する部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
2 支持体
3 振動体
4 通音孔
5 通気試験孔
6、8、10 両面テープ
7 枠体
9 防水膜
11 通音開口部
12、13 通気開口部
14 外装筐体
15 当接部
16 ゴムカバー
17 オーリング
18 供給台紙(剥離ライナー)
19 封止体
20 ガスケット
21 円筒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通していることを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項2】
筐体と、該筐体内に設けられた振動体と、前記筐体に形成された通音孔および通気試験孔と、前記通音孔を覆う防水膜とを有することを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項3】
前記防水膜は、通音開口部を有する枠体に装着されている請求項1または請求項2に記載の電気音響変換装置。
【請求項4】
前記枠体は、さらに通気開口部を有し、該枠体の通気開口部は前記通気試験孔に連通している請求項3に記載の電気音響変換装置。
【請求項5】
前記防水膜は通気開口部を有し、当該通気開口部は前記枠体の通気開口部に連通する請求項4に記載の電気音響変換装置。
【請求項6】
前記防水膜のガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)が1秒以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項7】
前記防水膜が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で構成される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項8】
音波受信装置である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項9】
音波発信装置である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項10】
一又は複数の筐体が通話音を放音する通音孔と通知音を放音する通音孔とを有し、双方の通音孔が同一の防水膜で覆われている請求項9に記載の電気音響変換装置。
【請求項11】
前記通気試験孔に封止体が設けられた請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項12】
前記筐体の外周部の一部又は全周に弾性体が形成されている請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項13】
前記通気試験孔が前記弾性体により封止されている請求項12に記載の電気音響変換装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の電気音響変換装置と、該電気音響変換装置に嵌合する凹部を有する外装筐体を含む電子機器。
【請求項15】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電気音響変換装置と外装筐体とを有する電子機器であって、前記電気音響変換装置が前記外装筐体の一部に当接することにより前記通気試験孔が封止されていることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
枠体と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されていることを特徴とする防水カバー。
【請求項17】
開口部を有する供給台紙上に、前記開口部と請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電気音響変換装置の通音孔とが重なるように当該電気音響変換装置を粘着させ、この状態で前記開口部側又は前記通気試験孔側から気体を流入させることにより電気音響変換装置の気体漏れを測定する通気試験方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電気音響変換装置が粘着された供給台紙から前記電気音響変換装置を剥がし取り、該電気音響変換装置を外装筐体に装着することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項1】
通音孔が形成された筐体と、該筐体内に設けられた振動体とを有する電気音響変換装置であって、当該電気音響変換装置は、前記通音孔が防水膜で覆われることにより閉空間を構成しており、当該閉空間と外部とは通気試験孔により連通していることを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項2】
筐体と、該筐体内に設けられた振動体と、前記筐体に形成された通音孔および通気試験孔と、前記通音孔を覆う防水膜とを有することを特徴とする電気音響変換装置。
【請求項3】
前記防水膜は、通音開口部を有する枠体に装着されている請求項1または請求項2に記載の電気音響変換装置。
【請求項4】
前記枠体は、さらに通気開口部を有し、該枠体の通気開口部は前記通気試験孔に連通している請求項3に記載の電気音響変換装置。
【請求項5】
前記防水膜は通気開口部を有し、当該通気開口部は前記枠体の通気開口部に連通する請求項4に記載の電気音響変換装置。
【請求項6】
前記防水膜のガーレー透気抵抗度(JIS P 8117:1998)が1秒以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項7】
前記防水膜が、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で構成される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項8】
音波受信装置である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項9】
音波発信装置である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項10】
一又は複数の筐体が通話音を放音する通音孔と通知音を放音する通音孔とを有し、双方の通音孔が同一の防水膜で覆われている請求項9に記載の電気音響変換装置。
【請求項11】
前記通気試験孔に封止体が設けられた請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項12】
前記筐体の外周部の一部又は全周に弾性体が形成されている請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の電気音響変換装置。
【請求項13】
前記通気試験孔が前記弾性体により封止されている請求項12に記載の電気音響変換装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の電気音響変換装置と、該電気音響変換装置に嵌合する凹部を有する外装筐体を含む電子機器。
【請求項15】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電気音響変換装置と外装筐体とを有する電子機器であって、前記電気音響変換装置が前記外装筐体の一部に当接することにより前記通気試験孔が封止されていることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
枠体と、この枠体内の通音開口部を覆う防水膜とを有する防水カバーであって、前記枠体に通気試験孔が形成されていることを特徴とする防水カバー。
【請求項17】
開口部を有する供給台紙上に、前記開口部と請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電気音響変換装置の通音孔とが重なるように当該電気音響変換装置を粘着させ、この状態で前記開口部側又は前記通気試験孔側から気体を流入させることにより電気音響変換装置の気体漏れを測定する通気試験方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電気音響変換装置が粘着された供給台紙から前記電気音響変換装置を剥がし取り、該電気音響変換装置を外装筐体に装着することを特徴とする電子機器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−44344(P2009−44344A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205815(P2007−205815)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
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