説明

電池およびその製造方法

【課題】蓋体を貫通する電極端子を備えた電池において、絶縁成型体やパッキンを用いなくても、蓋体と電極端子とを確実に絶縁した状態でシールし、且つ安定に固定できるようにする。
【解決手段】蓋体20には、上方に突出する凸部21、22が形成され、凸部21、22の中に貫通孔25、26が、下方から上方にかけて孔の幅が狭くなるテーパー状に形成されている。正極端子板40及び負極端子板50の中央部分にある嵌合部42、52は、貫通孔25、26に嵌合するテーパー状に形成されている。
嵌合部42の外面と貫通孔25の内面との間に、熱溶着テープ60が介在し、嵌合部52の外面と貫通孔26の内面との間にも熱溶着テープ70が介在している。熱溶着テープ60,70は、絶縁基材層の一方の面に熱溶着層、他方の面に熱溶着層が積層された積層構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池およびその製造方法に関し、特に、ロボット、電気自動車などの電源、あるいはバックアップ電源として用いられる大容量の角型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池は、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の電源のみならず、ロボット、電気自動車、バックアップ電源などの用途に大容量の電池が利用されており、さらなる高容量化も求められている。
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、上記のような比較的大容量の電源としても適している。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は一般に、正極と負極とがセパレータを介して配置された電極体が、開口部を有する外装体内に収納され、外装体の開口部が蓋体で封口され、電極体に接続された電極端子が蓋体から外方に突出した構成となっている。
高容量で且つ大電流で充放電可能な電池、特に角型の電池においては、金属製の正極端子及び負極端子が、金属製の蓋体を貫通するように取付けられているタイプのものが多い。このタイプの電池においては、蓋体を貫通する電極端子を、蓋体に対して絶縁した状態で固定する必要がある。
【0004】
そのために、例えば、特許文献1に開示されている電池では、ネジを形成した電極端子に、角柱状に成型した絶縁体を嵌め込み、さらに、この絶縁成型体を外装体に形成した貫通孔に嵌め込んで、電極端子をナットで締め付けることによって固定している。ここで、電極端子または絶縁部品と外装体とをシールするため、絶縁体の上下にパッキンを配して、ナットで締め付けている。
【0005】
その他に、特許文献2に示されるリチウム電池では、電極端子及び外装蓋を、それぞれトリアジンジチオール化合物またはシランカップリング剤で表面処理し、ポリフェニルスルフィドからなる絶縁密封材料で互いに接着している。この電池においては、絶縁成型体やパッキンを用いなくても、外装蓋とこれを貫通する端子との間で絶縁性とシール性を確保しながら、電極端子を外装蓋に強固に固着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−87613号公報
【特許文献2】特開2008−27823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の技術においては、電極端子の表面及び外装蓋の表面を処理することによって表面上に形成される化合物の層は単層であるため、電極端子と外装蓋とを絶縁密封材料で接着する工程において、電極端子と蓋体とが互いに接触して導通する可能性がある。
本発明は上記課題を考慮してなされたものであって、蓋体を貫通する電極端子を備えた電池において、絶縁成型体やパッキンを用いなくても、蓋体と電極端子とを確実に絶縁した状態でシールし、且つ安定に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、正極板と負極板とがセパレータを介して配置された電極体が、開口部を有する外装体の中に収納され、当該開口部が蓋体で封口されてなる電池において、蓋体に、正極板あるいは負極板に接続された電極端子が貫通する貫通孔を形成し、電極端子の外面を、貫通孔の内面に嵌合する形状に形成し、電極端子の外面と貫通孔の内面の間に、絶縁基材層と熱溶着層が積層された積層構造を有する熱溶着シートを介在させて、当該熱溶着シートによって絶縁封止した。
【0009】
上記発明において、貫通孔を、電池内方から外方にかけて孔幅が狭くなるテーパー形状とし、電極端子の嵌合部分も貫通孔の形状に合わせたテーパー形状とすることが好ましい。
また、上記発明において、蓋体に、その外面から突出する突部を形成し、貫通孔を、その突部の中を貫通させることが好ましい。
【0010】
電極端子の外面には、表面粗化処理を施すことが好ましい。
外装缶が角筒形である角型電池においては、特に、金属製の蓋体を電極端子が貫通するように取付ける必要性が高いので、本発明を適用することによって得られる効果が大きい。
本発明にかかる電池の製造方法は、上記電池を製造する方法であって、熱溶着シートを介在させて、蓋体に形成された貫通孔に電極端子を嵌合させる嵌合工程と、電極端子を貫通孔に嵌合させた状態で蓋体を加熱することによって熱溶着シートを溶着させる溶着工程とを設けた。
【0011】
上記製造方法において、嵌合工程の前に、電極端子の外面に、熱溶着シートを溶着して貼り付ける貼付工程を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、電極端子の外面と貫通孔の内面の間に、絶縁基材層と熱溶着層が積層された積層構造を有する熱溶着シートを介在させ、当該熱溶着シートによって絶縁封止しているので、電極端子の外面と貫通孔の内面の間が熱溶着層によって良好に封止され、電極端子の蓋体に対する固定も安定になされる。また、絶縁基材層が介在しているため、電極端子と蓋体との絶縁も十分に確保できる。
【0013】
従って、本発明によれば、絶縁成型体やパッキンを用いなくても、電極端子を蓋体に対して良好に絶縁した状態で固定することができる。
ここで、貫通孔を、電池内方から外方にかけて孔幅が狭くなるテーパー形状とし、電極端子の嵌合部分も貫通孔の形状に合わせたテーパー形状とすれば、熱溶着シートを挟んで嵌合部分と貫通孔とを溶着する工程において、電極端子を蓋体の方に押し付けるだけで、嵌合部分の外面と貫通孔の内面との押圧を容易に行うことができる。
【0014】
また、蓋体に、その外面から突出する突部を形成し、その突部の中を貫通するように貫通孔を形成すれば、電極端子と蓋体との接触面積を大きくできる。従って、電極端子と蓋体との間の封止性を向上できるとともに、より安定して固定することができる。
電極端子の外面に、表面粗化処理を施すことによって、電極端子の外面に対する熱溶着層の密着性が向上する。
【0015】
上記本発明の電池の製造方法によれば、嵌合工程、溶着工程を通して、電極端子を蓋体に対して、良好に絶縁しながら、固定すると共に封止することができる。
また、嵌合工程の前に、電極端子の外面に、熱溶着シートを溶着して貼り付ける貼付工程を設けることによって、嵌合工程において、蓋体の貫通孔と電極端子との間に熱溶着シートを容易に介在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかる電池1の構成を示す斜視図である。
【図2】上記電池1の組み立て図である。
【図3】電池1に組み込まれる積層電極体10の構成を示す図である。
【図4】蓋体20の構成を示す図である。
【図5】正極端子板40の形状を示す図である。
【図6】熱溶着テープ60の形状及び断面を示す図である。
【図7】熱溶着テープ60が貼り付けられた正極端子板40が、蓋体20の貫通孔25に嵌め込まれて、押圧される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る電池1について説明する。
図1は、実施の形態にかかる電池1の構成を示す斜視図であり、図2は電池1の組み立て図である。図中、矢印Xは前方向、矢印Yは横方向、矢印Zは上方向を指す。
〔電池1の全体構造〕
電池1は、角型リチウムイオン二次電池であって、図1に示すように、外装缶30の中に積層電極体10が電解液と共に収納され、外装缶30の開口部31に、蓋体20が溶接によって接合されて構成されている。
【0018】
外装缶30は、アルミニウム板が有底角筒形に成型されたものであって、長方形状の開口部31を有している。そして、この開口部31には、長方形状のアルミニウム板で形成された蓋体20が装着されて封口されている。
この蓋体20を貫通するように、正極端子板40及び負極端子板50が装着され、蓋体20の上面には、正極端子板40の外部端子部41及び負極端子板50の外部端子部51が突出している。
【0019】
図3は、積層電極体10の構成を示す図である。
図3に示すように、積層電極体10は、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して交互に配置されて構成されている。この積層電極体10において、負極板12の枚数は正極版11の枚数より1枚多く、負極51枚と正極版50枚がセパレータを介して交互に積層された後に、最も外側にセパレータ13が配置されている。
【0020】
積層電極体10には、絶縁テープ14が巻き付けられて、正極板11と負極板12とが互いにずれないように固定されている。
正極板11は、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に、正極活物質としてのLiCoO、導電剤としてのカーボンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンが混合されてなる正極活物質層が形成されてなる。
【0021】
正極板11は、その全体形状が長方形状である。
この正極板11には、正極集電体から延伸された正極タブ11aが形成されている。この正極タブ11aは、正極板11の一辺から突出するように形成されている。正極タブ11aは、正極集電体と同じアルミニウム箔からなり正極活物質層が形成されていない。
負極板12は、負極集電体としての銅箔の両面に、負極活物質としての黒鉛粉末、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンが混合されてなる負極活物質層が形成されてなる。
【0022】
この負極板12は、全体形状が正極板11より若干大きい長方形状である。
負極板12にも、負極集電体から延伸された負極タブ12aが、一辺から突出するように形成されている。負極タブ12aも負極集電体と同じ銅箔からなり負極活物質層が形成されていない。
セパレータ13は、ポリプロピレン(PP)製であって、負極板12と同等の大きさの長方形状である。
【0023】
電解液は、非水電解液であって、例えばエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とが体積比で30:70の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6が1M(モル/リットル)の割合で溶解した溶液である。
〔蓋体20の特徴〕
図4は、蓋体20の形状を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【0024】
蓋体20には、正極端子板40及び負極端子板50を貫通させる箇所に、上方に突出する凸部21及び凸部22が形成されている。凸部21及び凸部22は、前後方向(X方向)より横方向(Y方向)に長く、凸部21の中には正極端子板40の嵌合部42が嵌り込む貫通孔25、凸部22の中には負極端子板50の嵌合部52が嵌り込む貫通孔26が形成されている。
【0025】
この貫通孔25及び貫通孔26は、前後方向(X方向)に薄い扁平な角錐台形状であって、下方から上方にかけて孔の前後幅(X方向の幅)及び横幅(Y方向の幅)が狭くなっている。
凸部21と凸部22、貫通孔25と貫通孔26とは同じ形状・サイズである。
すなわち、貫通孔25は、4つの台形状の内面25a〜25dを有し、貫通孔26も4つの台形状の内面26a〜26dを有している。そして、各内面25a〜25d及び各内面26a〜26dは、Z軸に対して傾斜して、テーパー角Θを有している。
【0026】
そして、凸部21の頂部には、貫通孔25の開口部27が形成されている。また、凸部22の頂部にも貫通孔26の開口部28が形成されている。
蓋体20の中央には注液口23が開設され、当該注液口23はリベット24で封止されている。
〔正極端子板及び負極端子板の構成〕
正極端子板40及び負極端子板50は、導電性材料からなりY−Z面に沿って伸びる板状部材であって、蓋体20の凸部21,22において、貫通孔25,26を貫通するように装着され、積層電極体10の正極タブ11a,負極タブ12aに接続されて、外部端子となるものである。
【0027】
図5は、正極端子板40の形状を示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
正極端子板40の上部分である外部端子部41は、蓋体20の凸部21の上方に突出して外部端子となる部分であって、横幅(Y方向幅)が一定の長方形板状に形成されている。この板厚(X方向幅)と横幅(Y方向幅)の積(断面積)は、電池1使用時の電流量に応じて設定される。
【0028】
正極端子板40の中央部分にある嵌合部42は、蓋体20の貫通孔25を貫通する部分であって、貫通孔25に嵌合するように形成された扁平な四角錐台形状であって、下方にいくほど前後幅(X方向の幅)及び横幅(Y方向の幅)が広がっている。すなわち、嵌合部42は、上記貫通孔25の4つの内面25a〜25dに合わせて、4つの台形状の外面42a〜42dを有し、各外面42a〜42dは、Z軸に対して傾斜してテーパー角Θを有している。
【0029】
なお、嵌合部42の外面42a〜42dのテーパー角、及び貫通孔25の内面25a〜25dのテーパー角Θを大きく設定するほど、下記のように蓋体20に正極端子板40を溶着する工程において、貫通孔25と嵌合部42との間に面圧をかけやすいが、ある程度テーパー角Θを大きく設定する方が嵌合部42を貫通孔25に容易に装着できる。
正極端子板40の下部分である接続部43は、積層電極体10の正極タブ11aに接続される部分であって、長方形板状に形成されている。
【0030】
このような形状の正極端子板40は、アルミニウム部材をプレス加工することによって作製することができる。
負極端子板50も、正極端子板40と同様の形状であって、上方に突出する外部端子部51及び積層電極体10の負極タブ12aに接続される接続部53は長方形板状に形成され、嵌合部52は、蓋体20の貫通孔26に嵌合する扁平な四角錐台形状であって下方にいくほど縦幅及び横幅が広がっている。
【0031】
この負極端子板50は、銅部材をプレス加工した後、ニッケルめっきすることによって作製することができる。
〔熱溶着テープによる封止〕
正極端子板40における嵌合部42の外面と、蓋体20の貫通孔25の内面との間には、熱溶着テープ60が介在している。そして、この熱溶着テープ60によって、両者の間が絶縁且つ封止された状態で、正極端子板40が蓋体20に固定されている。
【0032】
負極端子板50における嵌合部52の外面と、蓋体20における貫通孔26の内面との間にも、熱溶着テープ70が介在している。そして、この熱溶着テープ70によって、両者の間が絶縁且つ封止された状態で、負極端子板50が蓋体20に固定されている。
図6(a)は、熱溶着テープ60の形状を示す平面図、図6(b)は、その断面を模式的に示す図である。
【0033】
熱溶着テープ60は、正極端子板40の嵌合部42の外面全体を被覆できる形状を有している。具体的には、図6(a)に示すように、嵌合部42の4つの台形状外面(前面42a,後面42b,左面42c、右面42d)に対応する面部分60a,60b,60c,60dを有している。
また、この熱溶着テープ60は、図6(b)に示すように、絶縁基材層61の一方の面に熱溶着層62、他方の面に熱溶着層63が積層された積層構造となっている。
【0034】
そして、熱溶着層62,63は、絶縁基材層61と比べて溶融温度が低い材料で形成されている。
具体的には、絶縁基材層61は、溶融温度が250℃以上の材料で形成され、熱溶着層62,63は、溶融温度が200℃未満の材料で形成される。
ここでは、絶縁基材層61は、ポリエチレンナフタレート(PEN:融点265〜270℃、ガラス転移温度113℃)からなる厚さ20μmの層とするが、ポリエチレンテレフタラート(PET:融点264℃)などで形成してもよい。また、熱溶着層62,63は、ポリプロピレン(PP:融点160〜170℃)からなる厚さ40μmの層とする。
【0035】
このような熱溶着テープ60が、嵌合部42の外面と貫通孔25の内面との間で加熱されて熱溶着層62,63が溶融することによって、嵌合部42の外面と貫通孔25の内面との間が封止されている。
熱溶着テープ70も、熱溶着テープ60と同様の構成であって、負極端子板50の嵌合部52の外面全体を被覆できる形状を有し、絶縁基材層の両面に熱溶着層が積層された積層構造となっている。そして、この熱溶着テープ70が、嵌合部52の外面と貫通孔26の内面との間で加熱されて、熱溶着層が溶融することによって、嵌合部52の外面と貫通孔26の内面との間が封止されている。
【0036】
なお、上記正極端子板40において、嵌合部42の外面に表面粗化処理を施してもよく、それによって熱溶着テープ60の熱溶着層62が嵌合部42の外面に付着しやすくなり、熱溶着層62が溶着した後における熱溶着テープ60と嵌合部42の外面との密着性も向上する。表面粗化の方法としては、鉄やガラスなどの微粒子を噴射するサンドブラスト法で表面を物理的に粗化してもよいし、エッチング液で表面を化学的に粗化してもよい。
【0037】
また、負極端子板50においても同様に、嵌合部52の外面に表面粗化処理を施してもよく、同様に熱溶着テープ70が付着しやすくなり、溶着後の密着性も向上する。
〔電池1の製造方法〕
電池1の製造方法について以下に説明する。
1.蓋体20、外装缶30、正極端子板40及び負極端子板50の作製
蓋体20、外装缶30、正極端子板40及び負極端子板50は、金型によるプレス加工で成型した。蓋体20、正極端子板40及び負極端子板50のサイズは、図5に示すとおりである。
【0038】
2.正極板の作製
正極活物質としてのLiCoO2を90質量%と、導電剤としてのカーボンブラックを5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5質量%と、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混合して正極スラリーを調製する。次に、この正極スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み:15μm)の両面に塗布する。
【0039】
その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.1mmにまで圧縮した後、長方形状(幅95mm高さ115mm)で且つ正極タブ11aが幅30mm高さ20mmで突出するように切断して正極板11を作製する。
なお、正極材料としては、上記のLiCoO2の他に、LiNiO2,LiMn4或いはこれらの複合体等を用いることができる。
【0040】
3.負極板の作製
負極活物質としての黒鉛粉末を95質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5質量%と、溶剤としてのNMP溶液とを混合してスラリーを調製した後、このスラリーを負極集電体としての銅箔(厚み:10μm)の両面に塗布した。黒鉛粉末としては天然黒鉛、人造黒鉛等が好適に用いられる。
【0041】
その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.08mmにまで圧縮した後、長方形状(幅100mm高さ120mm)で且つ負極タブ12aが幅30mm高さ20mmで突出するように切断して負極板12を作製する。
4.積層電極体の作製
図3に示すように、正極板11(50枚)と、負極板12(51枚)とを、セパレータ13を介して交互に積層し、電極体の最外にセパレータ13を配置して、積層電極体10を作製する。セパレータ13のサイズは幅100mm高さ120mm、厚さ30μmである。
【0042】
そして図2に示すように、絶縁テープ14を積層電極体10に巻き付けて固定する。
積層電極体10の上面からは、正極タブ11aの束及び負極タブ12aの束が突出している。
5.端子板への熱溶着テープの貼り付け
正極端子板40を200℃に加熱して、その嵌合部42の外面全体に熱溶着テープ60を貼り付ける。
【0043】
同様にして、負極端子板50における嵌合部52の外面全体に、熱溶着テープ70を貼り付ける。
6.蓋体20に対する端子板40,50の溶着
ヒータ付き治具(不図示)に蓋体20をセットすると共に、熱溶着テープ60が貼り付けられた正極端子板40及び熱溶着テープ70が貼り付けられた負極端子板50を、蓋体20の貫通孔25及び貫通孔26にセットし、押圧治具(不図示)で、正極端子板40及び負極端子板50を蓋体20に押圧する。
【0044】
このように、熱溶着テープ60,70が貼り付けられた端子板40,50を貫通孔25,26にセットすることによって、端子板40,50の外面と貫通孔25,26の内面との間には熱溶着テープ60,70が自動的に介挿される。
図7は、熱溶着テープ60が嵌合部42に貼り付けられた正極端子板40が、蓋体20の貫通孔25に嵌め込まれて、押圧される様子を示す断面図であって、(a)は正極端子板40を横方向に切断した図、(b)は正極端子板40を縦方向に切断した図である。
【0045】
図7における白抜き矢印Fは、押圧治具が正極端子板40を押圧する力を示し、白抜き矢印Fは、それに伴ってヒータ付き治具が蓋体20を押圧する力を示している。
嵌合部42の4つの面(前面42a,背面42b,左面42c、右面42d)、並びにこれら各面に対向する貫通孔25の内面25a〜25dは、テーパー角を有している(Z軸に対して傾斜している)ので、上記のように押圧治具が正極端子板40を押圧すると、嵌合部42の外面と貫通孔25の内面とが熱溶着テープ60を挟んで互いに押し合い、両面間に面圧がかかる。この面圧は、F×sinΘ(Θはテーパー角)にほぼ等しいので、テーパー角が大きいほど大きな面圧がかかりやすい。
【0046】
この面圧が一定の大きさ(例えば0.8MPa)になるよう押圧治具による押圧を維持しながら、ヒータを駆動して蓋体20を200℃で3秒間加熱する。それによって、熱溶着テープ60の熱溶着層62,63が溶融して、嵌合部42の外面と貫通孔25の内面との間が封止されると共に、正極端子板40が蓋体20に固定される。
7.端子板と積層電極体との接続
図2に示すように、蓋体20に固定された正極端子板40及び負極端子板50に、それぞれ積層電極体10の正極タブ11aの束及び負極タブ12aの束を接続する。この接続は、例えば超音波溶接で行うことができる。
【0047】
なお、ここでは、蓋体20に端子板40,50を溶着した後で、端子板と積層電極体とを接続するが、この順序を入れ替えて、先に端子板と積層電極体とを接続してから、蓋体20に端子板40,50を溶着することもできる。
8.外装缶への積層電極体の封入及び封口
外装缶30に積層電極体10を挿入し、蓋体20を外装缶30の開口部31に装着して開口部31を封口し、蓋体20の周囲と外装缶30の開口縁とをレーザ溶接して封止する。
【0048】
9.電解液封入及び密封
アルゴン置換の環境下で、注液口23から、電解液を注入し、注液口23をリベット24で封止することによって、電池1が作製される。
〔電池1による効果〕
正極端子板40における嵌合部42の外面42a〜42dと、蓋体20の貫通孔25の内面25a〜25dとの間に、熱溶着テープ60が介在し、この熱溶着テープ60は、絶縁基材層61の一方の面に熱溶着層62、他方の面に熱溶着層63が積層された積層構造となっているので、嵌合部42の外面42a〜42dと、蓋体20の貫通孔25の内面25a〜25dとの間は、良好に封止がなされ、正極端子板40の蓋体20に対する固定もしっかりなされ、且つ絶縁性も確保できる。
【0049】
すなわち、上記製法のように正極端子板40を押圧しながら熱溶着を行って、嵌合部42の外面42a〜42dと貫通孔25の内面25a〜25dとを、熱溶着テープ60を挟んで互いに押圧しながら熱溶着層63、64を溶融させると、良好な封止性が確保され、正極端子板40の蓋体20に対する固定もしっかりなされる。
また、熱溶着テープ60は、絶縁基材層61を有しており、この絶縁基材層61は200℃程度に加熱した時にも溶融しないので、上記のように押圧しながら熱溶着を行っても、正極端子板40と蓋体20との間は絶縁基材層61によって良好に絶縁された状態が維持される。
【0050】
同様に、負極端子板50における嵌合部52の外面と、蓋体20の貫通孔26の内面26a〜26dとの間にも、熱溶着テープ70が介在している。そして、この熱溶着テープ70も、絶縁基材層の両面に熱溶着層が積層された構造なので、嵌合部52の外面と、蓋体20の貫通孔26の内面26a〜26dとの間は、良好に封止がなされ、負極端子板50の蓋体20に対する固定もしっかりなされ、且つ絶縁性が確保される。
【0051】
なお、先行技術では、端子部材は、ワッシャと絶縁板とを介してナットで蓋体に固定されているが、本実施形態の電池1によれば、端子板を蓋体に固定するのにナットなどの部品は必要ないので、その分、部品点数が少なくて済む。
さらに、本実施形態の電池1においては、貫通孔25,26及びこれに嵌合する嵌合部42,52が、テーパー状に形成されているので、熱溶着テープ60,70を溶着する工程において、熱溶着テープ60を巻き付けた正極端子板40及び熱溶着テープ70を巻き付けた負極端子板50を、蓋体20の貫通孔25,26に嵌め込んで押し付けるだけで、嵌合部42,52の外面と貫通孔25,26の内面とを互いに押圧することができる。
【0052】
従って、熱溶着テープ60,70を溶着する溶着工程を容易に行うことができる。
また、貫通孔25,26が凸部21,22の中に形成されているので、正極端子板40及び負極端子板50と蓋体20との接触面積を大きくできる。すなわち、貫通孔25,26の長さを長くし、貫通孔25の内面25a〜25d、貫通孔26の内面26a〜26dの面積を大きくできる。それに伴って、嵌合部42,52の長さも長くし、外面42a〜42d及び外面52a〜52dの面積も大きくすることができる。
【0053】
従って、正極端子板40及び負極端子板50と蓋体20との間の封止性を向上させることができ、正極端子板40及び負極端子板50の蓋体20に対する固定も安定してできる。
また、電池1においては、蓋体20は横長であって、前後幅(X方向の幅)は比較的小さいが、正極端子板40及び負極端子板50が横方向に伸長する板状であるため、蓋体20を貫通させながら、端子の断面積を十分に確保できる。
【0054】
〔その他の事項〕
(1)
上記実施の形態にかかる電池1では、外装缶及び蓋体がアルミニウム製であったが、ステンレス製であってもよい。
(2)
本発明において、上記実施の形態にかかる電池1のように、蓋体20に凸部21,22を形成し、その凸部21,22の中に貫通孔25、26を形成することが、封止性の向上効果、並びに安定して固定する効果を高くする上で好ましいが、電極端子板を貫通させる貫通孔を凸部に形成することは必須ではなく、蓋体に凸部を形成せずに貫通孔を形成してもよい。
(3)
上記実施の形態にかかる電池1では、正極端子板40及び負極端子板50の両方が、蓋体20に形成された貫通孔25,26を貫通しているが、正極端子板及び負極端子板のいずれか一方だけが蓋体を貫通するように取付けられた電池においても、同様に実施することができる。
(4)
上記実施の形態にかかる電池1は、蓋体20の前後幅に合わせて、正極端子板40及び負極端子板50の形状も板状で、その嵌合部42、52が扁平な四角錐台形状であったが、蓋体の前後幅が大きい場合は、電極端子は板状でなくてもよく、嵌合部42、52の形状も、扁平でなくてもよい。
【0055】
例えば、電極端子の形状は角柱状あるいは円錐状であってもよく、嵌合部の形状が角錐台状あるいは円柱状であってもよく、その場合も同様に実施することができる。
(5)上記電池1の製造方法では、5.の工程で端子板40,50に熱溶着テープ60,70を貼り付けてから、6.の工程(蓋体20に対する端子板40,50の溶着)でこれを貫通孔25、26に装着したが、5.の端子板40,50に熱溶着テープ60,70を貼り付ける工程は行わずに、6.の工程において、端子板40,50を貫通孔25、26に嵌合させるときに、端子板40,50の外面と貫通孔25、26の内面との間に、熱溶着テープ60,70を介挿させても、同様に熱溶着を行うことができる。
(6)
本発明は、電極体の構造は特に限定されることなく、例えば、電極体が扁平渦巻型の角型電池にも適用できる。また、電池の形状についても角型電池に限定されることなく、電極体が渦巻型の円筒型電池にも適用できる。
【0056】
また、本発明は、リチウムイオン二次電池に限られることなく、あらゆるタイプの電池に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ロボット、電気自動車の電源あるいはバックアップ電源として用られる比較的高容量の電池、特に角型電池に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 電池
10 積層電極体
11 正極板
11a 正極タブ
12 負極板
12a 負極タブ
13 セパレータ
14 絶縁テープ
20 蓋体
21,22 凸部
25,26 貫通孔
25a〜25d 内面
26a〜26d 内面
27,28 開口部
30 外装缶
31 開口部
40 正極端子板
41 外部端子部
42 嵌合部
42a〜42d 外面
43 接続部
50 負極端子板
51 外部端子部
52 嵌合部
52a〜52d 外面
53 接続部
60,70 熱溶着テープ
61 絶縁基材層
62,63 熱溶着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とがセパレータを介して配置された電極体が、開口部を有する外装体の中に収納され、当該開口部が蓋体で封口されてなる電池であって、
前記蓋体には、
前記正極板あるいは前記負極板に接続された電極端子が貫通する貫通孔が形成され、
前記電極端子の貫通部分は、前記貫通孔の内面に嵌合する形状に形成され、
前記電極端子の貫通部分の外面と前記貫通孔の内面の間には、
絶縁基材層と熱溶着層が積層された積層構造を有する熱溶着シートが介在し、
当該熱溶着シートによって絶縁封止されていることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記貫通孔は、
電池内方から外方にかけて孔幅が狭くなるテーパー形状であって、
前記電極端子の貫通部分も、
前記貫通孔の形状に合わせたテーパー形状であることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記蓋体には、
その外面から突出する突部が形成され、
前記貫通孔は、当該突部の中を貫通していることを特徴とする請求項1または2記載の電池。
【請求項4】
前記電極端子の外面には、表面粗化処理が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電池。
【請求項5】
前記外装缶は、角筒形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電池。
【請求項6】
請求項1記載の電池を製造する方法であって、
前記熱溶着シートを介在させて、前記蓋体に形成された貫通孔に前記電極端子を嵌合させる嵌合工程と、
前記電極端子を前記貫通孔に嵌合させた状態で前記蓋体を加熱することによって熱溶着シートを溶着させる溶着工程とを備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
前記嵌合工程の前に、前記電極端子の外面に、前記熱溶着シートを溶着して貼り付ける貼付工程を備えることを特徴とする請求項6記載の電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−14952(P2012−14952A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150308(P2010−150308)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】