説明

電池の内部短絡評価方法

【課題】電池の内部短絡安全性は、従来の電池内部短絡評価方法である釘刺し試験は、短絡箇所が電池の最外周部に限られており、その評価結果は最外周部の構成に大きく左右されていた。また、同様に内部短絡評価法として同様に用いられている圧壊試験法は、短絡の発生箇所が試験によってばらつきがあり、内部短絡に対する安全性を正確には評価できていなかった。
【解決手段】電池の内部短絡時の安全性を評価する方法であって、電池内の任意の点を任意の温度で短絡させることが可能であることを特徴とする電池の内部短絡評価方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の評価法に関し、特に内部短絡時の安全性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、軽量で、高エネルギー密度を有することから、主にポータブル機器用の電源として実用化されている。また、現在は、大型で高出力な電源(例えば車載用の電源)としても、リチウム二次電池が注目されており、開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウム二次電池では、正極と負極との間に、それぞれの極板を電気的に絶縁し、さらに電解液を保持する役目をもつ絶縁層がある。リチウム二次電池を極度な高温環境に長時間保持した場合、上述した樹脂製の絶縁層は収縮しやすいために、正極と負極とが物理的に接触して内部短絡が発生する傾向があった。特に近年、リチウム二次電池の高容量化に伴う絶縁層の薄型化の傾向と相まって、内部短絡の課題はより一層重大なものになりつつある。一旦内部短絡が発生すると、短絡電流に伴うジュール熱によって短絡部はさらに拡大し、電池が発熱に至る場合もある。
【0004】
電池に内部短絡が生じた場合においても、その安全性を確保することは非常に重要であり、従来より電池の内部短絡時の安全性を高める技術について、盛んに開発が進められており、正極または負極の集電体露出部において、絶縁性テープを貼付し、集電体間の内部短絡を防ぐ技術(特許文献1参照)や、極板上にイオン透過性の、セラミック粒子とバインダーからなる絶縁層を印刷する技術(特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
さらに、内部短絡が生じた際の安全性を確保するためには、内部短絡が発生した際の電池の安全性を正しく評価することも非常に重要である。
【0006】
例えば、従来、リチウムイオン二次電池などの電池の安全性項目として内部短絡時の発熱挙動を評価する電池評価試験が例えばリチウム電池のためのUL規格(UL1642)、電池工業会からの指針(SBA G1101−1997リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン)などで制定されている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
これらの評価試験の中で、例えば釘刺し試験は電池側面より釘を貫通もしくは突き刺しを行う内部短絡試験である。釘を突き刺すことにより電池内部の正極、負極、釘間で短絡部が発生、そのために短絡部に短絡電流が流れ、ジュール発熱が発生する。これらの現象に基づく電池温度または電池電圧などの変化を観察するものである。また圧壊試験においては丸棒、角棒、平板などにより電池を物理的に変形させる内部短絡試験である。これにより正極、負極間での内部短絡を発生させ電池温度または電池電圧などの変化を観察するものである。
【特許文献1】特開2004−247064号公報
【特許文献2】特開平10−106530号公報
【特許文献3】特開平11−102729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこれら従来の電池評価方法は、いずれも内部短絡に対する安全性を正確には評価できていなかった。
【0009】
また、電池の使用用途を考慮する上で、内部短絡が発生したときに「全く発熱しない」
もしくは「多少の発熱が存在する」など、どのレベルの安全性能を有しているか知る必要がある。しかるに、従来は内部短絡の安全性が正確に評価できていなかったために、安全性のレベルも特定されていなかった。そこで電池ごとに内部短絡に関する安全性レベルを特定することが切望されていた。
【0010】
まず、内部短絡に対する安全性について、我々発明者の鋭意研究により、電池内の短絡箇所(電池表面からの距離、集電体の露出部や活物質形成部、ないしは電池の形状など)によって電池に内部短絡が発生した際の安全性が大きく変化することが明らかとなった。例えば、電池表面近くで発生した短絡は、内部で発生した短絡よりも放熱の影響で見かけ上安全性は高くなる。また、例えば電極の集電体などの抵抗の低い部材の対向した箇所と、電極活物質等の抵抗のある程度高い部材の対向した箇所で同時に短絡が起こった際、短絡に伴う短絡電流は抵抗の低い集電体対向箇所にその多くが流れ、すなわちジュール熱も、熱的な安定性の高くない活物質対向部ではなく、集電体の対向部でその多くが発生するため、見かけ上内部短絡の安全性が高くなる。
【0011】
すなわち、短絡の発生する箇所によっては、より危険な状態になる可能性のある電池においても、評価方法が適切でないと安全な電池であると間違った評価を下してしまう可能性があり、電池の内部短絡安全性を正しく評価するためには、電池の形状や構成を鑑み、見かけ上安全に評価されてしまう箇所を避けた、任意の場所で内部短絡を発生させることが非常に重要である。
【0012】
しかしながら、従来から行われている釘刺し試験においては、短絡箇所が電池の最表面に限られており、その評価結果は最外周部の構成に大きく左右される。例えば、釘刺し試験において、短絡部において発生する熱量W(W)は、電池の電圧をV(V)、短絡部の抵抗をR1(Ω)、電池の内部抵抗をR2(Ω)とすると、
W=V2×R1/(R1+R2)2
で表される。従って、短絡部の抵抗が電池の内部抵抗と等しいとき短絡部での発熱量は極大を示す。つまり、短絡部の抵抗が電池の内部抵抗に比べて十分小さいまたは十分大きいとき、発熱量は小さくなる。釘刺し試験においては、短絡の発生する最外周部に抵抗の小さな箇所、具体的には活物質の存在しない集電体の露出部等を設けることにより評価結果が安全になる。
【0013】
しかし、仮に電池内に異物が混入した場合は、そのサイズや形状、硬さ等によっては、電池内の任意の場所で内部短絡が発生する可能性がある。すなわち、従来の内部短絡安全性評価法である釘刺し試験法においては、市場において起こりうる内部短絡に対する安全性を正確には評価できていない。
【0014】
また、釘刺し試験と並び、内部短絡評価法として用いられている圧壊試験法においても、圧壊試験時の短絡挙動の解析から、一度に複数の点が短絡していることまたは短絡の発生箇所が試験によってばらつきがあることがあきらかとなり、内部短絡に対する安全性を正確には評価できていないと考えられる。
【0015】
また、市場において、電池は使用される装置や環境によって、さまざまな温度で用いられる。よって、市場において起こりうる内部短絡に対する安全性を正確に評価するには、さまざまな温度で内部短絡を発生させる必要がある。
【0016】
これらのことより、電池内部の任意の場所で、任意の温度で短絡試験を行い、電池の内部短絡安全性を総合的に評価するための評価手法、評価装置及び電池の安全性レベルの特定が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、内部短絡時の安全性を正確に評価する方法に関する。
【0018】
すなわち、本発明は、正極と、負極と、正負極を電気的に絶縁する絶縁層とを巻回、または積層した電極群と電解質と、これらを内包する外装体と、電極群と電気的に接続する集電端子とを含む電池の内部短絡時の安全性を評価する方法であって、臨界温度抵抗体により、電池内の任意の点で、前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上の環境温度において短絡を発生させることが可能であるものである。
【0019】
金属酸化物や半導体などは、電気抵抗が温度で大きく変化する。この特性を利用して、サーミスタなどの素子に利用されている。
【0020】
このうち温度の上昇で抵抗が大きくなるものを、正の温度係数(Positive Temperature Coefficient)からPTCと呼ばれ、チタン酸バリウムを主成分としてイットリウム、ランタンなどを配合したものが代表的なものである。
【0021】
一方、温度の上昇で抵抗が減少するものを負の温度係数(Negative Temperature Coefficient)からNTCと呼ばれ、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄などの遷移金属酸化物を混合して焼結したものが代表的なものである。
【0022】
本発明に用いられる臨界温度抵抗体(Critical Tempreratur Resisiter、以下CTRと呼ぶ)は、特定の温度で抵抗が急変する臨界温度係数(Critical Tempreratur Coefficient)を持つものであり、酸化バナジウム系材料が代表的なものである。
【0023】
第2の発明は、第1の発明の電池の内部短絡評価方法において、電池の電極群内部の正極と負極が対向する箇所にCTRを異物として混入させ、加圧子を用いて混入部をプレスし、さらに昇温することによって、正負極間に介在する絶縁体を局所的に破壊し、短絡を発生させて行うものである。
【0024】
第3の発明は、第2の発明の電池の内部短絡評価方法において、CTRを異物として電極群構成時に混入することによって、短絡を発生させて行うものである。
【0025】
第4の発明は、第2の発明の電池の内部短絡評価方法において、完成した電池を分解して外装体から取り出した電極群内部の正極と負極が対向する箇所にCTRを異物として混入し、再度電極群を構成した後に、加圧子による加圧力で混入部をプレスし、昇温することによって、短絡を発生させて行うものである。
【0026】
第5の発明は、第1の発明の電池の内部短絡評価方法において、電池の電極群内部の正極と負極が対向する絶縁体の一部をCTRに置き換えて構成した電池を、昇温することによって、短絡を発生させて行うものである。
【0027】
第6の発明は、第5の発明の電池の内部短絡評価方法において、電池の電極群内部の正極と負極が対向する絶縁体の一部をCTRに、電極群構成時に置き換えて構成した電池を、昇温することによって、短絡を発生させて行うものである。
【0028】
第7の発明は、第5の発明の電池の内部短絡評価方法において、完成した電池を分解して外装体から取り出した電極群の正極と負極が対向する絶縁体の一部をCTRに置き換え、再度電極群を構成した後に、昇温することによって、短絡を発生させて行うものである

【0029】
第8の発明は、第1の発明の電池の内部短絡評価方法において、CTRが酸化バナジウムまたはその変異体であるものである。
【発明の効果】
【0030】
電池の内部短絡を電池内の任意の点をCTRの抵抗変化温度以上において短絡させる評価法を用いることによって、従来の釘刺し試験法のように、評価結果が電池の構成に左右されたり、圧壊試験のように試験結果にばらつきが出たりすることなく、内部短絡時の電池の安全性を正確に評価することが可能となる。またCTRは負の温度−抵抗特性を持ちかつ特定の温度で急激に抵抗値変化するため、低温では絶縁体である。よってCTRの異物は、金属異物と比較して、安全に電極群に挿入することができる。また、CTRを用いることにより、セパレータの一部を、CTRを含むシート等に置き換えて電池を構成した後、昇温し短絡させるといった従来になかった内部短絡評価法も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の電池の内部短絡時の安全性評価方法は、電池内の任意の点をCTRの抵抗変化温度において短絡させることが可能であるものである。
【0032】
電池内に含ませる負の温度−抵抗特性を持ちかつ特定の温度で急激に抵抗値変化するCTRは、温度を上昇させた際、ある温度で急激に電気抵抗が低下する材料であり、その温度変化点は物質特有である。CTRとして、酸化バナジウムが挙げられる。また酸化バナジウムに添加元素(W,Mo,Nb,Ti,Fe,Alなど)を加えることによって、温度特性を変えることも可能である。CTRを用いることにより、CTRの抵抗変化温度において短絡させることが可能である。
【0033】
従来の内部短絡試験法である釘刺し試験は、短絡箇所が電池の最外周部に限られているため、その評価結果は最外周部の構成に大きく左右される。例えば、電池の内周部において内部短絡が発生した場合においては発熱量の大きい電池であっても、電池最外周部の構成を工夫することによって、釘刺し試験において発生する発熱量の低減が可能であり、市場で起こりうる内部短絡に対する安全性が正確に評価できない場合がある。
【0034】
それに対して、電池内の任意の点を短絡させることが可能な内部短絡評価法を用いることによって、電池の局所的な構成にとらわれることなく、内部短絡に対する安全性を正しく評価することができる。
【0035】
電池内の任意の点を任意の温度で短絡させることが可能な評価方法としては、例えば電池の電極群内部の正負極が対向する箇所にCTRを異物として混入させ、混入部をプレスした後、環境温度を前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上にすることによって、絶縁層を局所的に破壊し、短絡を発生させて行う方法が挙げられる。異物は電池内の任意の箇所に設置することができるため、短絡にかかわる正負極を任意に選択することが可能となる。具体的には正極の活物質部と負極の活物質部、また正極集電体と負極活物質部などが挙げられる。また、CTRを変えることにより、異物の抵抗変化温度を制御することができるため、任意の温度で内部短絡を発生させることが可能となる。また異物の形状や硬さ、大きさあるいは短絡時の圧力等を変えることにより、発生する内部短絡を制御することができ、好ましい。
【0036】
さらに、評価の際に、短絡の発生を検出してプレスを停止することが好ましい。こうすることによって、内部短絡の発生箇所を局所に限定することが可能となる。短絡面積が変化すると発生する発熱量にばらつきが生じ、内部短絡に対する安全性の評価精度が低下す
る。短絡の検出方法としては、短絡に伴う電池の電圧低下、温度上昇、短絡時に発生する音、光などが挙げられる。
【0037】
プレスの際には、一定速度で、または一定加圧でプレスすることが好ましい。こうすることにより、試験結果のばらつきを少なくし、精度よく評価を行うことができる。一定速度でプレスする場合は、絶縁層が破壊されるまでの加圧力が、短絡の発生によって開放され、加圧力が低下する。この加圧力の低下によって短絡の発生を検出してもよい。
【0038】
プレスの際の加圧力は50kg/cm2以下が好ましい。50kg/cm2を越えると、電極群自体が変形を起こす可能性があり、短絡発生面積がばらつくことが考えられる。さらには、異物混入部以外での短絡が起こる可能性があり、好ましくない。
【0039】
電池内に異物を混入させる方法としては、完成した電池を分解して外装体から取り出した電極群内部の、正極と負極が対向する箇所に異物を混入し、再度構成した後に、プレスする方法が挙げられる。電池作製後に異物を混入させることによって、電池作製の工程中に内部短絡が発生することを避けることが可能である。
【0040】
電池内に異物を混入させる、さらに別の方法としては、電池作製時の電解液注入前に任意の場所に混入させる方法が挙げられる。電解液注入前に異物を混入させることにより、作製した電池そのままの状態で評価することができ、簡便であるため好ましい。この際に電極群内に混入させるものとしては、電池の作動電圧範囲において電気化学的に、かつ化学的に安定であることが好ましい。例えば、電池がリチウム二次電池であるとき、酸化バナジウムを正極と絶縁層の間に混入させるのが好ましい。
【0041】
電極群内に混入させる異物の大きさとしては、電池がリチウム二次電池である場合、電極面に対して垂直な方向の異物の長さをd、正極の活物質層の厚みをa、絶縁層の厚みをbとしたときに、d≧a+bを満たすことが好ましい。d<a+bの場合、正負極の活物質層に異物を混入した場合は、異物は正極板の集電体には到達せず、正極合剤と負極合剤を介した短絡となる。しかし、異物が大きく、正極集電体と負極合剤間で短絡が発生した場合は、リチウム二次電池の正極集電体の抵抗が正極活物質層の抵抗よりも低いために、より多くのジュール熱が発生する。すなわち、d<a+bの場合は内部短絡時の安全性を過大評価する可能性があるため、d≧a+bを満たすことが好ましい。
【0042】
また同様に、電極群内に混入させる異物の大きさとしては、電極上に置いた際の極板面に垂直な方向の長さをd、絶縁層の厚みをb、正極の厚みをc、負極の厚みをeとしたときに、d≦c+e+2×bを満たすことが好ましい。c+e+2×bを越えると、電極板に対して垂直方向に、2層分の短絡が同時に発生する可能性があり、局所的に発生する発熱量にばらつきが生じ、内部短絡に対する安全性の評価精度が低下する。
【0043】
電極群内に混入させる異物の形状については、異方性を有するものが好ましい。異方性を有することにより、プレス時に過剰な荷重をかけることなく、すみやかに絶縁層を局部的に破壊することができる。球状など、異方性が存在しない場合は、過剰な加圧によって、電極の破壊を伴う可能性がある。
【0044】
電池内の任意の点を任意の温度で短絡させることが可能な別の評価方法としては、電池の絶縁層のうち、正極と負極が対向する箇所を一定面積切除し、CTRに置き換えて構成した電池を、環境温度を前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上にすることによって、短絡を発生させて行う方法が挙げられる。絶縁層の切除箇所および短絡面積を任意に決めることができ、またCTRを変えることによって短絡温度を任意に決めることができる。さらにその面積が常に一定であることから、短絡の状態を非常に精度よく制御することがで
き、内部短絡に対する安全性を正確に評価することができる。
【0045】
その際に絶縁層をCTR置き換える方法としては、電極群構成前に絶縁層をCTRに置き換えてもよいし、完成した電池を分解して外装体から取り出した後に、電極群内の絶縁層をCTRに置き換えて再度構成してもよい。
【0046】
また、前記内部短絡評価方法によって、内部短絡に関する安全レベルが特定された製造法に於いて電池を製造することが好ましい。同じ製造方法に於いて電池を製造することにより、内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0047】
さらに、前記内部短絡評価方法によって、内部短絡に関する安全レベルが特定された製造法に於いて電池パックを製造することが好ましい。同じ製造方法に於いて電池パックを製造することにより、内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0048】
また、前記製造方法によって製造された電池であることが好ましい。これにより電池の内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0049】
さらに、前記製造方法によって製造された電池パックであることが好ましい。これにより電池パックの内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0050】
次に、電池の電極群内部の正負極が対向する箇所にCTRを異物として混入させ、混入部をプレスした後、昇温することによって絶縁層を局所的に破壊し、短絡を発生させて行う方法によって、電池の任意の箇所において任意の温度で短絡を発生させることが可能な、電池の内部短絡に対する安全性を評価する評価装置について、以下に具体的なブロック図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0051】
図1に本発明の電池評価装置ブロック図の一例を示す。1は電池、2は加圧部、3は加圧制御部、4は短絡検出部、5は電池情報測定部、6は加圧部高さ位置検出部、7は温度制御装置である。
【0052】
加圧部2は電池を強制的に短絡させるために設けられたものである。加圧部の先端に丸棒、角棒、平板、などを設置し、CTRを異物として混入させた試験電池に向かって駆動させ加圧する。これにより、例えば丸棒、角棒、平板などを設置した場合には電池を加圧して、絶縁層を局所的に破壊し、電池内部で異物を介して正極、負極間を接続することができる。
【0053】
また加圧部に用いられる加圧機は上記試験を行うことができるものであればどのようなものでもよいが、例えばサーボモータを用いたスクリュー式、ポストガイドスクリュー式、フリコ式、テコ式、クランク式、メカニカルプレス式、油圧プレス式、エアープレス式などの加圧装置が用いられる。
【0054】
温度制御装置7は試験電池の置かれる雰囲気温度を制御する装置である。CTRからなる異物を介して正極と負極が接続しても短絡が開始しないような温度において、CTRを異物として混入させ、混入部を加圧することによって絶縁層を局所的に破壊し、電池内部で異物を介して正極、負極間を接続する。そして、CTRからなる異物の抵抗が、短絡を開始するほど低くなるような温度まで昇温することによって、電池内部で正極、負極間で短絡が発生し内部短絡試験を行うことができる。
【0055】
短絡検出部4は試験電池から得られる情報の変化を検知して基準値と比較して内部短絡
であることを判断し、加圧制御部3へ信号を発信することができる回路のことである。
【0056】
試験電池から得られる情報としては、電池電圧、電池温度、電池内部圧力などが挙げられる。特に電池電圧は内部短絡時に敏感に変化するため特に好ましい。短絡検出部4は電池情報測定部5からの電池情報を受け、短絡による電池情報の変化が生じた際に、短絡が発生したと判断し、加圧制御部3に信号を送る。加圧制御部3はその信号を受けて加圧を停止し、評価が終了する。なお信号の発信は内部短絡が発生した時点に対して任意に発信されるものであり、信号を直後に発信するほか、タイマーを用いて任意の時間を遅らせて発信してもよい。または、加圧部高さ位置検出部6から、加圧部2の位置情報を受け、短絡が発生したと判断してから一定深度に達するまで加圧を続けた後に加圧部2を停止させてもよい。
【0057】
この一連の短絡評価法を用いたときの電池の安全性の評価基準としては、熱電対、サーモビュアーなどを用いて電池の温度上昇量で評価してもよいし、熱量計等で発生する熱量そのものを測定してもよい。
【0058】
また、正極と負極が対向する箇所を一定面積切除し、CTRに置き換えて構成した電池を、昇温することによって、短絡を発生させて行う方法によって、電池の任意の箇所において任意の温度で短絡を発生させ電池の内部短絡に対する安全性を評価する場合は、図1の加圧部2、加圧制御部3、加圧部高さ検出器6を用いずに評価することが可能である。CTRを介して正極と負極が接続しても短絡が開始しないような温度において、絶縁層の正極と負極が対向する箇所を一定面積切除し、前記CTRに置き換えて構成した試験電池を、温度制御装置7を用いてCTRの抵抗が、短絡を開始するほど低くなるような温度まで昇温することによって、電池内部で正極、負極間で短絡が発生し内部短絡試験を行うことができる。
【0059】
以上から、本発明の電池内部短絡評価装置を用いることで電池の内部短絡に対する安全性を正確に評価することができるものである。
【0060】
また、上記内部短絡評価装置によって、内部短絡に関する安全レベルが特定された製造法に於いて電池を製造することが好ましい。同じ製造方法に於いて電池を製造することにより、内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0061】
さらに、内部短絡評価装置によって、内部短絡に関する安全レベルが特定された製造法に於いて電池パックを製造することが好ましい。同じ製造方法に於いて電池パックを製造することにより、内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0062】
また、上記製造方法によって製造された電池であることが好ましい。これにより電池の内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0063】
さらに、上記製造方法によって製造された電池パックであることが好ましい。これにより電池パックの内部短絡安全性レベルを同様に保証することができる。
【0064】
なお、上述した本発明の電池評価装置は特定の電池種に限定されるものではなく、たとえばマンガン乾電池、アルカリ乾電池、リチウム一次電池のような一次電池、また鉛蓄電池 やニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル-水素電池、リチウム二次電池などの二次電池への適用が可能である。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の電池の内部短絡評価方法を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0066】
《実施例1》
<電池の作製>
内部短絡に対する安全性を評価する電池として、以下に示すような円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0067】
(i)正極の作製
正極活物質であるニッケルマンガンコバルトリチウム酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/32)粉末(メディアン径15μm)3kgと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))1kgと、導電剤であるアセチレンブラック90gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤ペーストを、厚み20μmのアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に塗布した。塗布された正極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで活物質形成部の厚さが180μmになるように圧延し、正極活物質層を形成した。得られた電極を、円筒型の外装体(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入可能な幅(56mm)に裁断して、正極を得た。
【0068】
なお、電極群の最内周部にあたる部分に集電体露出部を設け、アルミニウムからなる接続端子を溶接した。
【0069】
(ii)負極の作製
負極活物質である人造黒鉛粉末(メディアン径20μm)3kgと、結着剤である変性スチレンブタジエンゴム粒子を40重量%含む水分散液(日本ゼオン株式会社製のBM−400B(商品名))75gと、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)30gと、分散媒である適量の水とを、双腕式練合機で攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを、厚み20μmの銅箔からなる帯状の負極集電体の両面に塗布した。塗布された負極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで活物質形成部の厚さが180μmになるように圧延し、負極活物質層を形成した。得られた極板を、外装体に挿入可能な幅(57.5mm)に裁断して、負極を得た。なお、電極群の最外周部にあたる部分に約1周分の長さの集電体露出部を設け、その端部にニッケルからなる接続端子を溶接し負極板とした。
【0070】
(iii)電池の組み立て
正極と、負極とを、厚さ20μmのポリエチレン製の絶縁層(旭化成株式会社製のハイポア(商品名))を介して捲回し、電極群を作製した。ニッケルめっきを施した鉄製の円筒型の外装体(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に、電極群を挿入した後、電解質を5.0g外装体内に注液し、外装体の開口部を蓋体で封口して、容量2400mAhのリチウム二次電池を完成させた。電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒にLiPF6を1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。混合溶媒におけるECとDMCとEMCとの体積比は、1:1:1とした。電解質には3重量%のビニレンカーボネート(VC)を添加した。
【0071】
以上のような手順で20個の電池を作製し、以下の評価を行った。
【0072】
まず、慣らし充放電を二度行い、次いで400mAの電流値で4.1Vに達するまで充電した。その後、45℃環境下で7日間保存した。
【0073】
その後、以下の条件で充電した電池を用いて内部短絡に対する安全性の評価を行った。
定電流充電: 電流値1500mA/充電終止電圧4.25V
定電圧充電: 充電電圧4.25V/充電終止電流100mA
以上のような手順で作製した電池を電池Aとし、以下の評価を行った。
【0074】
(内部短絡安全性評価)
充電した電池Aをドライ環境で分解して電極群を取り出し、その最外周部を一部巻きほぐした。正極活物質層と負極活物質層の対向する箇所の、負極と絶縁層の間に幅200μm、厚み300μm、長さ3mmの酸化バナジウム(VO2:抵抗変化温度67℃)を置いた。この時、電極面に対して垂直な方向の長さ(高さ)は200μmとなる。このときの電極群の模式図を図2に示す。
【0075】
図2において、8は正極である。また、9は負極であり、負極活物質9a、負極集電体露出部9b、負極接続端子9cを備えている。さらに、10は絶縁層、11は異物および12は電極群である。異物11は、前述の200μm、厚み300μm、長さ3mmの酸化バナジウムである。
【0076】
その後、再度捲回した電極群を密閉状態で20℃の恒温槽内に入れ、電池温度が20℃に達するまでキープした。その後、φ6mmの半球状の加圧子を用いて電極群12を加圧した。加圧条件は1mm/sの一定速度、最大圧力を50kg/cm2とした。そして、異物11が絶縁層10を破壊することによって圧力が減少した瞬間に加圧を停止した。その後、恒温槽の温度を上昇させ、短絡によって、電池電圧が4.0V以下となった瞬間に昇温を停止した。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、電池電圧が4.0V以下になる瞬間を短絡開始とし、短絡開始温度および短絡発生後5秒後の電池温度を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、短絡開始温度と短絡発生5秒後の電池温度の差である電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0077】
《実施例2》
電池の正極の最外周に集電体の露出部を約1周分設けたこと以外、実施例1と同様にして電池を作製し、同様の評価を行った。
【0078】
《比較例1》
実施例1と同様にして電池Aを作製し、次のような評価を行った。4.25Vに充電した電池を、分解することなく67℃の恒温槽内に入れ、電池温度が67℃に達するまでキープした。加圧子に鉄製の釘(φ3mm)を用いて電極群に突き刺した。加圧条件は1mm/s一定速度、最大圧力を200kg/cm2とした。そして、短絡によって電池電圧が4.0V以下となった後、さらに200μm釘を移動させた後に停止させた。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、短絡発生後5秒間での電池温度上昇量を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0079】
《比較例2》
実施例2と同様にして電池Aを作製し、次のような評価を行った。これを実施例2とする。4.25Vに充電した電池を、分解することなく67℃の恒温槽内に入れ、電池温度が67℃に達するまでキープした。加圧子に鉄製の釘(φ3mm)を用いて電極群に突き刺した。加圧条件は1mm/sの一定速度、最大圧力を200kg/cm2とした。そして、短絡によって電池電圧が4.0V以下となった後、さらに200μm釘を移動させた後に停止させた。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、短絡発生後5秒間での電池温度上昇量を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0080】
表1に実施例1、2および比較例1、2の評価結果を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
内部短絡を発生させる方法として電極群内にCTRを異物として混入させて加圧、昇温した実施例1及び2は、67度において短絡させることができた。また、実施例1及び実施例2は電池の最外周の構成にかかわらず、同様の電池温度上昇量を示した。さらに、測定のばらつきも小さく抑えられた。その一方で、電池の外周から釘を刺すことによって短絡を発生させた比較例1及び2は、各々の電池温度上昇量のばらつきは小さかったものの、最外周の正極集電体の露出の有無によって短絡後の電池電圧上昇量に非常に大きな違いが生じており、特に正極の集電体露出部を設けた比較例2は異物混入によって短絡させた際と比較して電池温度上昇量が非常に小さかった。すなわち、釘刺しによる内部短絡評価法は、電池の局所的な構成によっては、安全性を過大評価する可能性があることが明らかである。その一方で、異物混入による評価法は、電池の局所的な構成に左右されることなく、正確に内部短絡に対する安全性を評価することができる。
【0083】
《実施例3》
実施例1と同様にして電池Aを作製し、次のような評価を行った。充電した電池をドライ環境で分解して電極群を取り出し、その最外周部を一部巻きほぐした。正極活物質層と負極活物質層の対向する箇所の絶縁層を、幅方向の中心部においてφ3mmの円形に切除した。酸化バナジウム(VO2)(メディアン径0.5μm)25mgをφ3.5mmの円筒に入れ加圧することによって厚さ0.7mmのペレットを作製した。このφ3.5mmの酸化バナジウムのペレットをこの切除部を覆うように設置し、正極と負極が直接接しないようにした。このときの電極群の模式図を図3に示す。図2と同じ符号は、図2のものと同一の物質を用いているもので、同一の作用効果を示すものである。図3において、13は絶縁層切除部、14aはVO2のペレットである。
【0084】
その後、再度捲回した電極群を密閉状態で20℃の恒温槽内に入れ、電池温度を上昇させた。短絡によって電池電圧が4.0V以下となった瞬間に昇温を停止した。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、電池電圧が4.0V以下になる瞬間を短絡開始とし、短絡開始温度および短絡発生後5秒後の電池温度を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、短絡開始温度と短絡発生5秒後の電池温度の差である電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0085】
《実施例4》
実施例1と同様にして電池Aを作製し、次のような評価を行った。充電した電池をドライ環境で分解して電極群を取り出し、その最外周部を一部巻きほぐした。正極活物質層と負極活物質層の対向する箇所の絶縁層を、幅方向の中心部においてφ3mmの円形に切除した。VO2(メディアン径0.5μm)200gと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))100gを分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、ペーストを調製した。このペーストをガラス板上に塗布した後、乾燥させ、乾燥後のVO2を含むシートを作製した。このシートの厚さが200μmとなるようにした。このVO2を含むシートをガラス板からはがし、φ3.5mmに打ち抜くことによってCTRからなるシートを作製した。このφ3.5mmの酸化バナジウムを含むシートをこの切除部を覆うように設置し、正極と負極が直接接しないようにした。このときの電極群の模式図を図4に示す。図2と同じ符号は、図2および図3のものと同一の物質を用いているもので、同一の作用効果を示すものである。図4において、13は絶縁層切除部、14bはVO2のシートである。
【0086】
その後、再度捲回した電極群を密閉状態で20℃の恒温槽内に入れ、電池温度が上昇させた。短絡によって電池電圧が4.0V以下となった瞬間に昇温を停止した。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、電池電圧が4.0V以下になる瞬間を短絡開始とし、短絡開始温度および短絡発生後5秒後の電池温度を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、短絡開始温度と短絡発生5秒後の電池温度の差である電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0087】
なお、実施例3および4は絶縁層をCTRに置き換える方法の一例である。これらの方法以外で、絶縁層をCTRに置き換えても、本発明の効果を得ることは可能である。
表2に実施例1、3および4の評価結果を示す。
【0088】
【表2】

【0089】
内部短絡を発生させる方法として、絶縁層とCTRを含むシートを置き換えた試験電池において内部短絡試験を行った実施例3および4は、67度において短絡させることができ、測定のばらつきも小さく抑えられた。
【0090】
《実施例5》
電池Aと同様の正極板、負極板を用いて、電池Aと同じ絶縁層を介して捲回し、電極群を作製する際、図2に示すように、正極活物質層と負極活物質層の対向する箇所の、負極
と絶縁層の間に幅200μm、厚み300μm、長さ3mmの酸化バナジウム(VO2)を置き、電極群を作製した。この電極群を、ニッケルめっきを施した鉄製の円筒型の外装体(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入した後、電池Aと同様の電解質を5.0g外装体内に注液し、外装体の開口部を蓋体で封口して、容量2400mAhのリチウム二次電池を完成させた。
【0091】
以上のような手順で20個の電池を作製し、以下の評価を行った。
まず、慣らし充放電を二度行い、次いで400mAの電流値で4.1Vに達するまで充電した。その後、45℃環境下で7日間保存した。
【0092】
その後、以下の条件で充電した電池を用いて内部短絡に対する安全性の評価を行った。定電流充電: 電流値1500mA/充電終止電圧4.25V
定電圧充電: 充電電圧4.25V/充電終止電流100mA
以上のような手順で作製した電池を電池Bとし、以下の評価を行った。
【0093】
(内部短絡安全性評価)
充電した電池Bを20℃の恒温槽内に入れ、電池温度が20℃に達するまでキープした。その後、φ6mmの半球状の加圧子を用いて電極群を加圧した。加圧条件は1mm/sの一定速度、最大圧力を50kg/cm2とした。そして、異物が絶縁層を破壊することによって圧力が減少した瞬間に加圧を停止した。その後、恒温槽の温度を上昇させ、短絡によって、電池電圧が4.0V以下となった瞬間に昇温を停止した。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、電池電圧が4.0V以下になる瞬間を短絡開始とし、短絡開始温度および短絡発生後5秒後の電池温度を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、短絡開始温度と短絡発生5秒後の電池温度の差である電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0094】
《実施例6》
正極活物質層と負極活物質層の対向する箇所の絶縁層を、幅方向の中心部においてφ3mmの円形に切除し、実施例4と同様のφ3.5mmの酸化バナジウム(VO2)を含むシートに置き換えたこと以外、電池Aと同様に作製した。
以上のような手順で20個の電池を作製し、以下の評価を行った。
まず、慣らし充放電を二度行い、次いで400mAの電流値で4.1Vに達するまで充電した。その後、45℃環境下で7日間保存した。
その後、以下の条件で充電した電池を用いて内部短絡に対する安全性の評価を行った。
定電流充電: 電流値1500mA/充電終止電圧4.25V
定電圧充電: 充電電圧4.25V/充電終止電流100mA
以上のような手順で作製した電池を電池Cとし、以下の評価を行った。
【0095】
(内部短絡安全性評価)
充電した電池Cを20℃の恒温槽内に入れ、電池温度が上昇させた。短絡によって電池電圧が4.0V以下となった瞬間に昇温を停止した。電池電圧以外に、熱電対を用いて電池表面を測定し、電池電圧が4.0V以下になる瞬間を短絡開始とし、短絡開始温度および短絡発生後5秒後の電池温度を評価した。また、同様の測定を10個の電池について行い、短絡開始温度と短絡発生5秒後の電池温度の差である電池温度上昇量の標準偏差を求めた。
【0096】
表3に実施例1、4、5及び6の評価結果を示す。
【0097】
【表3】

【0098】
内部短絡を発生させる方法として、群構成時にCTRを異物として混入させた試験電池において内部短絡試験を行った実施例7および、群構成時に絶縁層をCTRに置き換えた試験電池において内部短絡試験を行った実施例6は、67度において短絡させることができ、測定のばらつきも小さく抑えられた。
【0099】
《実施例7》
電極群に混入させる異物を、タングステンをドープした酸化バナジウム(V0.950.052)としたこと以外、実施例1と同様にして電池Aを作製し、評価を行った。
【0100】
《実施例8》
電極群に混入させる異物を、タングステンをドープした酸化バナジウム(V0.90.12)としたこと以外、実施例1と同様にして電池Aを作製し、評価を行った。
【0101】
《実施例9》
電極群に混入させる異物を、タングステンとモリブデンをドープした酸化バナジウム(V0.8950.1Mo0.0052)としたこと以外、実施例1と同様にして電池Aを作製し、評価を行った。
【0102】
表4に実施例1、7〜9の評価結果を示す。
【0103】
【表4】

【0104】
内部短絡を発生させる方法として、CTRを変えて内部短絡試験を行った実施例7〜9は、それぞれ60,50,45℃において短絡を開始させることができた。また、測定のばらつきも小さく抑えられた。CTRを変更することによって、短絡開始温度を制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の電池の内部短絡評価方法及び電池内部短絡評価装置を用いることで、内部短絡に対する安全性を精度よく評価することが可能であるため、信頼性の高い電池を供給できるようになり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施の形態の電池の内部短絡評価装置のブロック図
【図2】本発明の実施例1の内部短絡評価法の模式図
【図3】本発明の実施例3の内部短絡評価法の模式図
【図4】本発明の実施例4の内部短絡評価法の模式図
【符号の説明】
【0107】
1 電池
2 加圧部
3 加圧制御部
4 短絡検出部
5 電池情報測定部
6 加圧部高さ位置検出部
7 温度制御装置
8 正極
9 負極
9a 負極活物質層
9b 負極集電体露出部
9c 負極接続端子
10 絶縁層
11 異物
12 電極群
13 絶縁層切除部
14a VO2のペレット
14b VO2のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、正負極を電気的に絶縁する絶縁層とを巻回、または積層した電極群と電解質と、これらを内包する外装体と、電極群と電気的に接続する集電端子とを含む電池の内部短絡時の安全性を評価する方法であって、臨界温度抵抗体により、電池内の任意の点で、前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上の環境温度において短絡を発生させることが可能であることを特徴とする電池の内部短絡評価方法。
【請求項2】
前記短絡を発生させることは、電池の電極群内部の正極と負極が対向する箇所に前記臨界温度抵抗体を異物として混入させ、加圧子による加圧力で混入部をプレスし、環境温度を前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上にすることによって、正負極間に介在する絶縁体を局所的に破壊し、短絡を発生させて行うことである請求項1記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項3】
前記異物の混入は、前記異物を電極群構成時に混入することである請求項2記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項4】
前記異物の混入は、完成した電池を分解して外装体から取り出した電極群内部の正極と負極が対向する箇所に前記臨界温度抵抗体を異物として混入し、再度電極群を構成することである請求項2記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項5】
前記短絡を発生させることは、電池の電極群内部の正極と負極が対向する絶縁体の一部を前記臨界温度抵抗体に置き換えて構成した電池の環境温度を前記臨界温度抵抗体の抵抗変化温度以上にすることによって、短絡を発生させて行うことである請求項1記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項6】
前記臨界温度抵抗体の置き換えは、電極群構成時に置き換えることである請求項5記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項7】
前記臨界温度抵抗体の置き換えは、完成した電池を分解して外装体から取り出した電極群の正極と負極が対向する絶縁体の一部を前記臨界温度抵抗体に置き換え、再度電極群を構成することである請求項5記載の電池の内部短絡評価方法。
【請求項8】
前記臨界温度抵抗体が酸化バナジウムまたはその変異体である請求項1から7のいずれかに記載の電池の内部短絡評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−54300(P2009−54300A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217042(P2007−217042)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】