説明

電池の冷却構造

【課題】 電池の出力および持続力の低下を抑制する。
【解決手段】 電池セル200は、正極端子202および負極端子204にそれぞれ接続される極板と、極板に接触する電解液とを含む。負極端子204には、冷却媒体と接触する部分の表面積を減少させるように部材206が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の冷却構造に関し、特に、電池の出力および持続力の低下を抑制する冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の1つとして、モータからの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両に搭載される電池としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池など、繰返し充放電可能な二次電池が用いられている。二次電池は、モータの高出力化に対応して高電圧化されており、一般に、複数の電池セルが直列に接続された電池モジュールがさらに複数直列に接続された電池パックとして構成されている。
【0003】
このような二次電池においては、充放電時の発熱に対して電池性能を維持するために、電池を冷却する必要がある。たとえば、特開2001−60465号公報(特許文献1)は、冷却液によって正極端子や負極端子を直接冷却することにより、温度上昇を効率よく抑制する電池の冷却装置を開示する。この電池の冷却装置は、電池ケースの内部を、発電要素を収納する発電要素収納部と冷却部とに分離し、発電要素の電極に接続された端子をこの発電要素収納部から冷却部を通して電池ケースの外部に突出させると共に、この電池ケースの冷却部に冷媒を送り込み、排出させる。
【0004】
特許文献1に開示された電池の冷却装置によると、冷却装置から送り込まれた冷媒が電池ケース内部の冷却部を流れるので、この冷却部を貫通する端子を効率よく冷却することができる。電池の端子は、充放電電流が流れることにより発熱量が大きくなるが、熱伝導率の高い金属が用いられると共に、電池容量が大きくなるほど断面積も大きくなるので、この端子を直接冷却することにより、電池の発熱を効率よく放熱させることができる。しかも、熱伝導率の高い冷媒を用いて冷却を行うことができるので、空冷に比べてさらに放熱効率がよくなる。
【特許文献1】特開2001−60465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される冷却装置のように、電池の端子を冷却する場合、両端子が同様に冷却されると、両端子からの放熱量が同じ程度になる可能性がある。両端子の放熱量が同じ程度になると、端子に接続される電池内部の極板間における温度差が同じ程度になる。そのため、極板に接触する電解液の液体内の温度分布が一様となるため、温度差に起因する電解液内部における流動はない。このとき、それぞれの極板付近においては、電池の充放電に対応する反応により電解液に含まれる反応関与物質の濃度が希薄になる。そのため、極板付近において反応関与物質が供給不足となり、電池の出力あるいは持続力が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る電池の冷却構造は、電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造である。電池は、正極端子および負極端子にそれぞれ接続される極板と、極板に接触する電解液とを含む。正極端子および負極端子は、冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される。
【0008】
第1の発明によると、正極端子および負極端子は、冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成されているため、正極端子と負極端子とでは、冷却媒体と端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。そのため、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る電池の冷却構造によると、第1の発明の構成に加えて、正極端子と負極端子とのうちのいずれか一方に、冷却媒体と接触する部分の表面積を減少させるような部材が設けられることにより、冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される。
【0010】
第2の発明によると、正極端子と負極端子とのうちのいずれか一方に、部材を設けて、冷却媒体と接触する部分の表面積を減少させるようにすることにより、正極端子と負極端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。したがって、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差を生じさせることができる。
【0011】
第3の発明に係る電池の冷却構造によると、第2の発明の構成に加えて、部材は、極板と電解液とにおける反応熱の大きい方の端子に設けられる。
【0012】
第3の発明によると、部材は、極板と電解液とにおける反応熱の大きい方の端子に設けられる。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、発熱量が大きい方の端子に冷却媒体と接触する部分の表面積を減少させる部材を設けることにより、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0013】
第4の発明に係る電池の冷却構造によると、第1の発明の構成に加えて、正極端子と負極端子とのうちのいずれか一方に、冷却媒体と接触する部分の表面積を増加させるような部材が設けられることにより、冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される。
【0014】
第4の発明によると、正極端子と負極端子とのうちのいずれか一方に、部材(たとえば、ヒートシンク)を設けて、冷却媒体と接触する部分の表面積を増加させるようにすることにより、正極端子と負極端子との間で冷却媒体と熱交換される熱量に差が生じる。したがって、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差を生じさせることができる。
【0015】
第5の発明に係る電池の冷却構造によると、第4の発明の構成に加えて、部材は、極板と電解液とにおける反応熱の小さい方の端子に設けられる。
【0016】
第5の発明によると、部材は、極板と電解液とにおける反応熱の小さい方の端子に設けられる。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が小さい方の端子の方が発熱量は小さい。したがって、発熱量が小さい方の端子に冷却媒体と接触する部分の表面積を増加させる部材を設けることにより、正極端子および負極端子にそれぞれ接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0017】
第6の発明に係る電池の冷却構造によると、第1の発明の構成に加えて、正極端子と負極端子とは、冷却媒体に露出する部分の体積が互いに異なるように形成されることにより、冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される。
【0018】
第6の発明によると、正極端子と負極端子とは、冷却媒体に露出する部分の体積が互いに異なるように形成される。露出する部分の体積が異なるように形成することにより、正極端子と負極端子とにおいて、冷却媒体に接触する部分の表面積を異なるように形成させることができる。そのため、正極端子と負極端子とでは、冷却媒体と端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差を生じさせることができる。
【0019】
第7の発明に係る電池の冷却構造によると、第6の発明の構成に加えて、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の体積が他方の端子よりも小さくなるように形成される。
【0020】
第7の発明によると、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の体積を他方の端子よりも小さくなるように形成する。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、反応熱の大きい一方の端子の体積を他方の端子の体積よりも小さくなるように形成させることにより、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0021】
第8の発明に係る電池の冷却構造は、電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造である。電池は、端子に接続される極板と、極板に接触する電解液とを含む。正極端子と負極端子は、熱伝導率が互いに異なる材質で形成される。
【0022】
第8の発明によると、正極端子と負極端子とは、熱伝導率が互いに異なる材質で形成される。正極端子と負極端子との間で熱伝導率が異なると、冷却媒体と端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。そのため、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における電池の充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【0023】
第9の発明に係る電池の冷却構造においては、第8の発明の構成に加えて、正極端子と負極端子とのうちの、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の材質は、他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成される。
【0024】
第9の発明によると、正極端子と負極端子とのうちの、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の材質は、他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成される。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、反応熱の大きい一方の端子の材質を他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成させることにより、正極端子および負極端子のぞれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0025】
第10の発明に係る電池の冷却構造は、電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造である。電池は、端子に接続される極板と、極板に接触する電解液とを含む。冷却構造は、冷却媒体を供給するための供給手段を含む。正極端子および負極端子は、供給される冷却媒体が流れる方向と平行な方向に沿って設けられる。供給手段は、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおいて反応熱の小さい一方の端子から他方の端子への方向に冷却媒体が供給されるように設けられる。
【0026】
第10の発明によると、正極端子および負極端子は、供給手段により供給される冷却媒体が流れる方向と平行な方向に沿って設けられる。供給手段は、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおいて反応熱の小さい一方の端子から他方の端子への方向に冷却媒体が供給されるように設けられる。これにより、冷却媒体は反応熱の小さい方の端子に接触して温度が上昇した後、他方の端子に接触する。そのため、反応熱の大きい方の端子においては冷却効率が低下する。その結果、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における電池の充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電池の冷却構造について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
<第1の実施の形態>
以下において、ハイブリッド車両に搭載される走行用二次電池である電池パックを冷却する冷却構造について説明する。ただし、本実施の形態に係る冷却構造は、走行用二次電池に対して限定して適用されるものではない。
【0029】
図1に示すように、電池パック100の内部には、車両の側面側から冷却媒体が導入される。電池パック100の内部には、複数の電池セル200を多数直列に接続された二次電池が設けられる。なお、本実施の形態において、内部に極板と、極板に接触する電解液とを含む電池であれば、特に二次電池に限定されるものではないが、たとえば、電池は、リチウムイオン電池でもよいし、ニッケルカドミウム電池でもよいし、ニッケル水素電池でもよいし、鉛蓄電池でもよい。
【0030】
また、本実施の形態において、電池パック100の内部に導入される冷却媒体は、冷却風(気体)であるが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、冷却媒体は、液体であってもよい。また、冷却風を電池パック100の内部に供給する供給装置は、特に限定されるものではないが、たとえば、外気あるいは乗員室内から吸気した冷却風を電池パックに導くダクト(図示せず)とダクト内に冷却風の流れを形成する送風ファン(図示せず)とにより構成される。
【0031】
電池パック100の幅方向の側面上部から導入された冷却風は、電池パック100の内部の複数の電池セル200の上部を車両の幅方向に流通する。冷却風は、複数の電池セル200の上部から下部へと流通した後、冷却風が導入された電池パック100の同じ側面の下部へと排出される経路で流通する。
【0032】
図2および図3に示すように、電池パック100は、電池セル200が車両の幅方向に複数個配置されて構成される。電池セル200は、直方体の形状を有するが、特に限定されるものではなく、楕円形状あるいは円筒形状を有していてもよい。
【0033】
電池セル200には、正極端子202と負極端子204とが設けられる。本実施の形態において、正極端子202および負極端子204は、それぞれ同じ円筒形状を有するが、特に正極端子202および負極端子204の形状については特に限定されるものではない。
【0034】
電池セル200の内部には、正極端子202に接続された極板と、負極端子204に接続された極板とが設けられる。また、電池セル200の内部には、それぞれの極板に接触するように電解液が充填されている。極板の形状は、特に限定されるものではなく、たとえば、棒状の形状を有していてもよいし、正極端子202側の極板と負極端子204側の極板とがセパレータ(仕切り板)を介して積層されて形成される積層体が巻回された形状を有していてもよい。それぞれの極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質が電子を放出したり吸収したりして、電池セル200が充電されたり放電されたりする。
【0035】
本実施の形態においては、正極端子202および負極端子204のうちいずれか一方に、冷却風と接触する部分の表面積を減少させる部材が設けられる点に特徴を有する。具体的には、図2および図3に示すように、円筒形の端子の半周面を覆うように部材206が負極端子204側に設けられる。部材206は、負極端子204と冷却風とが接触する部分の表面積を、正極端子202と冷却風とが接触する部分の表面積と異なるように形成されれば、特に形状は限定されるものではない。部材206は、熱伝導率の低い材質であれば特に限定されるものではないが、たとえば、樹脂等により形成されてもよい。
【0036】
以上のような構造に基づいて、本実施の形態に係る電池の冷却構造の作用について説明する。
【0037】
電池パック100における車両の幅方向の側面上部から供給装置により冷却風が導入されると、冷却風は、車両の幅方向に流通し、電池セル200の正極端子202および負極端子204に接触する。
【0038】
一方、電池パック100においては、車両の走行状態に応じて、充電あるいは放電が行なわれる。すなわち、極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質の反応が進行して、電力が出力されたり、蓄えられたりする。そのため、充放電時においては、極板付近における反応熱により極板が発熱する。双方の極板において発生した熱は、正極端子202および負極端子204にそれぞれ伝熱する。発熱した正極端子202および負極端子204のそれぞれにおいて、接触した冷却風と熱交換が行なわれて、端子の温度が低下する。このとき、部材206が負極端子204に設けられているため、冷却風と負極端子204とが接触する表面積が少ないため、冷却風と端子との間で交換される熱量は負極端子204側の方が少なくなる。そのため、正極端子202と負極端子204との間において、温度差が生じる。正極端子202と負極端子204との間において、温度差が生じると、双方の極板間においても温度差を有するようになる。そのため、電解液の内部において、熱対流に基づく流動が発生する。このとき、電解液の内部において、温度の高い部分は上部へ移動し、温度の低い部分は下部へ移動する。そのため、極板付近における、電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下は電解液の流動により抑制される。
【0039】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池の冷却構造によると、正極端子および負極端子は、冷却風と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成されているため、正極端子と負極端子とでは、冷却風と端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。そのため、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【0040】
なお、部材は、正極端子および負極端子のうちいずれに設けられてもよいが、好ましくは、充放電時における反応熱が高い方の端子に設けられることが望ましい。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、発熱量が大きい方の端子に冷却風と接触する部分の表面積を減少させる部材を設けることにより、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0041】
また、本実施の形態において、冷却風と接触する部分の表面積を減少させる部材を負極端子側に設けたが、たとえば、負極端子に塗料を付着させるなどして、表面積を減少させるようにしてもよい。
【0042】
そして、本実施の形態において、正極端子と負極端子のうちいずれか一方に、冷却風と接触する表面積を減少させる部材を設けるようにしたが、正極端子と負極端子のうちいずれか一方に、冷却風と接触する表面積を増加させる放熱部材(たとえば、熱伝導率の高い材質で形成されるヒートシンク)を設けるようにしてもよい。
【0043】
このようにしても、正極端子と負極端子とにおいて、冷却風と接触する表面積が異なるようにすることができる。そのため、正極端子と負極端子との間で冷却媒体と熱交換される熱量に差が生じる。したがって、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差を生じさせることができる。
【0044】
好ましくは、放熱部材は、正極端子と負極端子の充放電時における反応熱が低い方の端子に設けられることが望ましい。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が小さい方の端子の方が発熱量は小さい。したがって、発熱量が小さい方の端子に冷却風と接触する部分の表面積を増加させる放熱部材を設けることにより、正極端子および負極端子にそれぞれ接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る電池の冷却構造について説明する。本実施の形態において、電池パック100が上述の第1の実施の形態における電池セル200に代えて電池セル300を含む点以外は、同じ構成である。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0046】
図4に示すように、電池セル300には、正極端子302と負極端子304とが設けられる。本実施の形態において、正極端子302および負極端子304は、円筒形状を有するが、特に限定されるものではない。また、電池セル300の内部構造については、上述の第1の実施の形態における電池セル200の構造と同じである。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0047】
本実施の形態においては、正極端子302と負極端子304とは、冷却風に露出する部分の体積が互いに異なるように形成される点に特徴を有する。本実施の形態において、正極端子302を形成する円筒形状の径の方が負極端子304を形成する円筒形状の径よりも大きい。なお、正極端子302の円筒の高さを負極端子304の高さよりも大きくなるようにしてもよい。なお、負極端子304を形成する円筒形状の径を、正極端子302を形成する円筒形状の径よりも大きくしてもよい。
【0048】
以上のような構造に基づいて、本実施の形態に係る電池の冷却構造の作用について説明する。
【0049】
電池パック100における車両の幅方向の側面上部から供給装置により冷却風が導入されると、冷却風は、車両の幅方向に流通し、電池セル300の正極端子302および負極端子304に接触する。
【0050】
一方、電池パック100においては、車両の走行状態に応じて、充電あるいは放電が行なわれる。すなわち、極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質の反応が進行して、電力が出力されたり、蓄えられたりする。そのため、充放電時においては、極板付近における反応熱により極板が発熱する。双方の極板において発生した熱は、正極端子302および負極端子304にそれぞれ伝熱する。発熱した正極端子302および負極端子304のそれぞれにおいて、接触した冷却風と熱交換が行なわれて、端子の温度が低下する。このとき、正極端子302の冷却風に露出する部分の体積を、負極端子304の冷却風に露出する部分の体積よりも大きくすることにより、正極端子302の冷却風に接触する部分の表面積が増加する。そのため、冷却風と端子との間で交換される熱量は負極端子304の方が少なくなる。そのため、正極端子302と負極端子304との間において、温度差が生じる。正極端子302と負極端子304との間において、温度差が生じると、双方の極板間においても温度差を有するようになる。そのため、電解液の内部において、熱対流に基づく流動が発生する。このとき、電解液の内部において、温度の高い部分は上部へ移動し、温度の低い部分は下部へ移動する。そのため、極板付近における、電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下は電解液の流動により抑制される。
【0051】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池の冷却構造によると、露出する部分の体積が異なるように形成することにより、正極端子と負極端子とにおいて、冷却媒体に接触する部分の表面積を異なるように形成させることができる。そのため、上述の第1の実施の形態における効果と同様の効果を有する。
【0052】
なお、好ましくは、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の体積が他方の端子よりも小さくなるように形成されることが望ましい。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、反応熱の大きい一方の端子の体積を他方の端子の体積よりも小さくなるように形成させることにより、正極端子およに負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0053】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る電池の冷却構造について説明する。本実施の形態において、電池パック100が上述の第1の実施の形態における電池セル200に代えて電池セル400を含む点以外は、同じ構成である。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0054】
図5に示すように、電池セル400には、正極端子402と負極端子404とが設けられる。本実施の形態において、正極端子402および負極端子404は、それぞれ同じ円筒形状を有するが、特に限定されるものではない。また、電池セル400の内部構造については、上述の第1の実施の形態における電池セル200の構造と同じである。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0055】
本実施の形態においては、正極端子402と負極端子404とにおいては、互いに熱伝導率が異なる材質で形成される点に特徴を有する。本実施の形態において、負極端子404の方が正極端子402よりも熱伝導率の低い材質で形成される。なお、正極端子402よりも負極端子404の方が熱伝導率の低い材質で形成されてもよい。
【0056】
以上のような構造に基づいて、本実施の形態に係る電池の冷却構造の作用について説明する。
【0057】
電池パック100における車両の幅方向の側面上部から供給装置により冷却風が導入されると、冷却風は、車両の幅方向に流通し、電池セル400の正極端子402および負極端子404に接触する。
【0058】
一方、電池パック100においては、車両の走行状態に応じて、充電あるいは放電が行なわれる。すなわち、極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質の反応が進行して、電力が出力されたり、蓄えられたりする。そのため、充放電時においては、極板付近における反応熱により極板が発熱する。双方の極板において発生した熱は、正極端子402および負極端子404にそれぞれ伝熱する。発熱した正極端子402および負極端子404のそれぞれにおいて、接触した冷却風と熱交換が行なわれて、端子の温度が低下する。このとき、負極端子404を正極端子402よりも熱伝導率が低い材質で形成することにより、負極端子404における冷却効率が正極端子402よりも低下する。そのため、冷却風と端子との間で交換される熱量は負極端子404側の方が少なくなる。そのため、正極端子402と負極端子404との間において、温度差が生じる。正極端子402と負極端子404との間において、温度差が生じると、双方の極板間においても温度差を有するようになる。そのため、電解液の内部において、熱対流に基づく流動が発生する。このとき、電解液の内部において、温度の高い部分は上部へ移動し、温度の低い部分は下部へ移動する。そのため、極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下は電解液の流動により抑制される。
【0059】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池の冷却構造によると、正極端子と負極端子とは、熱伝導率が互いに異なる材質で形成される。正極端子と負極端子との間で熱伝導率が異なると、冷却風と端子との間で熱交換される熱量に差が生じる。そのため、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における電池の充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【0060】
なお、好ましくは、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の材質は、他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成されることが望ましい。正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液との間において反応熱が大きい方の端子の方が発熱量は大きい。したがって、反応熱の大きい一方の端子の材質を他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成させることにより、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差をより拡大させることができる。そのため、電解液の内部に流動を発生させることができる。
【0061】
<第4の実施の形態>
以下、第4の実施の形態に係る電池の冷却構造について説明する。本実施の形態において、電池パック100が上述の第1の実施の形態における電池セル200に代えて電池セル500を含む点以外は、第1の実施の形態に係る電池の冷却構造と同じ構成である。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0062】
図6に示すように、電池セル500には、正極端子502と負極端子504とが設けられる。本実施の形態において、正極端子502および負極端子504は、それぞれ同じ円筒形状を有するが、特に限定されるものではない。また、電池セル500の内部構造については、上述の第1の実施の形態における電池セル200の構成と同じである。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0063】
本実施の形態において、正極端子502および負極端子504は、供給される冷却風が流れる方向と平行な方向に沿って設けられる点を特徴とする。そして、供給装置は、正極端子502と負極端子504とのうち、極板と電解液とにおいて反応熱の小さい一方の端子から他方の端子への方向に冷却風を供給するように設けられる。本実施の形態においては、図6に示すように、正極端子502から負極端子504への方向に冷却風が供給されるように、電池セル500が配置される。
【0064】
以上のような構造に基づいて、本実施の形態に係る電池の冷却構造の作用について説明する。
【0065】
電池パック100における車両の幅方向の側面上部から供給装置により冷却風が導入されると、冷却風は、車両の幅方向に流通し、電池セル500の正極端子502に接触した後、負極端子504に接触する。
【0066】
一方、電池パック100においては、車両の走行状態に応じて、充電あるいは放電が行なわれる。すなわち、極板付近において、電解液に含まれる反応関与物質の反応が進行して、電力が出力されたり、蓄えられたりする。そのため、充放電時においては、極板付近における反応熱により極板が発熱する。双方の極板において発生した熱は、正極端子502および負極端子504にそれぞれ伝熱する。発熱した正極端子502および負極端子504のそれぞれにおいて、接触した冷却風と熱交換が行なわれて、端子の温度が低下する。このとき、冷却風は反応熱の小さい方の端子に接触して温度が上昇した後、他方の端子に接触する。そのため、反応熱の大きい方の端子において、冷却効率が低下する。すなわち、正極端子502と負極端子504との間において、温度差が生じる。正極端子502と負極端子504との間において、温度差が生じると、双方の極板間においても温度差を有するようになる。そのため、電解液の内部において、熱対流に基づく流動が発生する。このとき、電解液の内部において、温度の高い部分は上部へ移動し、温度の低い部分は下部へ移動する。そのため、極板付近における、電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下は電解液の流動により抑制される。
【0067】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池の冷却構造によると、正極端子および負極端子は、供給装置により供給される冷却風が流れる方向と平行な方向に沿って設けられる。供給装置は、正極端子と負極端子とのうち、極板と電解液とにおいて反応熱の小さい一方の端子から他方の端子への方向に冷却風を供給するように設けられる。これにより、冷却風は反応熱の小さい方の端子に接触して温度が上昇した後、他方の端子に接触する。その結果、反応熱の大きい方の端子においては冷却効率が低下する。そのため、正極端子および負極端子のそれぞれに接続される極板間において温度差が生じる。すなわち、それぞれの極板と接触する電解液の内部において温度差が生じる。電解液の内部に温度差が生じると、熱対流に基づく液体の流動が発生する。液体の流動が発生すると、極板付近における電解液に含まれる反応関与物質の濃度の低下を抑制することができる。そのため、極板と電解液との間における電池の充放電に対応する反応の低下を抑制することができるため、電池の出力および持続力を維持することができる。したがって、電池の出力および持続力の低下を抑制する電池の冷却構造を提供することができる。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施の形態に係る電池の冷却構造が適用される電池パックの外観を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る電池の冷却構造を有する電池セルの斜視図である。
【図3】図2の矢視Aを示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る電池の冷却構造を有する電池セルの斜視図である。
【図5】第3の実施の形態に係る電池の冷却構造を有する電池セルの斜視図である。
【図6】第4の実施の形態に係る電池の冷却構造を有する電池セルの斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
100 電池パック、102 複数の電池セル、200,300,400,500 電池セル、202,302,402,502 正極端子、204,304,404,504 負極端子、206 部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造であって、前記電池は、前記正極端子および前記負極端子にそれぞれ接続される極板と、前記極板に接触する電解液とを含み、
前記正極端子および前記負極端子は、前記冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される、電池の冷却構造。
【請求項2】
前記正極端子と前記負極端子とのうちのいずれか一方に、冷却媒体と接触する部分の表面積を減少させるような部材が設けられることにより、前記冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される、請求項1に記載の電池の冷却構造。
【請求項3】
前記部材は、前記極板と前記電解液とにおける反応熱の大きい方の端子に設けられる、請求項2に記載の電池の冷却構造。
【請求項4】
前記正極端子と前記負極端子とのうちのいずれか一方に、冷却媒体と接触する部分の表面積を増加させるような部材が設けられることにより、前記冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される、請求項1に記載の電池の冷却構造。
【請求項5】
前記部材は、前記極板と前記電解液とにおける反応熱の小さい方の端子に設けられる、請求項4に記載の電池の冷却構造。
【請求項6】
前記正極端子と前記負極端子とは、前記冷却媒体に露出する部分の体積が互いに異なるように形成されることにより、前記冷却媒体と接触する部分の表面積が互いに異なるように形成される、請求項1に記載の電池の冷却構造。
【請求項7】
前記正極端子と前記負極端子とのうち、前記極板と前記電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の前記体積が他方の端子よりも小さくなるように形成される、請求項6に記載の電池の冷却構造。
【請求項8】
電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造であって、前記電池は、前記端子に接続される極板と、前記極板に接触する電解液とを含み、
前記正極端子と前記負極端子は、熱伝導率が互いに異なる材質で形成される、電池の冷却構造。
【請求項9】
前記正極端子と前記負極端子とのうちの、前記極板と前記電解液とにおける反応熱の大きい一方の端子の材質は、他方の端子の材質よりも熱伝導率が低い材質で形成される、請求項8に記載の電池の冷却構造。
【請求項10】
電池に設けられる正極端子と負極端子とに冷却媒体を接触させるようにして冷却する電池の冷却構造であって、前記電池は、前記端子に接続される極板と、前記極板に接触する電解液とを含み、
前記冷却媒体を供給するための供給手段を含み、
前記正極端子および前記負極端子は、供給される前記冷却媒体が流れる方向と平行な方向に沿って設けられ、
前記供給手段は、前記正極端子と前記負極端子とのうち、前記極板と前記電解液とにおいて反応熱の小さい一方の端子から他方の端子への方向に前記冷却媒体が供給されるように設けられる、電池の冷却構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−127902(P2006−127902A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314294(P2004−314294)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】