説明

電池パック検査装置

【課題】受電電源系統への逆潮流を防止できる電池パックの検査装置を提供する。
【解決手段】受電電源系統1に電圧レギュレータとして機能するAC/DC電源装置2を接続する。AC/DC電源装置2の出力側に検査対象となる電池パック41,42を2台1組で接続する。AC/DC電源装置2と各電池パック41,42の間には、それぞれDC/DC回生充放電装置31,32を設ける。2台の電池パックのうちの1台を電力のバッファタンクとして使用することで、検査電池41の放電時における受電電源系統1への逆潮流を防止する。検査電池41からの回生電力をバッファ電池42に貯め、受電電力を使わずにバッファ電池42から検査電池41に電力を供給する。回生時に、2台のDC/DC回生充放電装置31,32の変換効率が100%以下であることを利用して、検査電池の電力がバッファ電池からオーバーフローすることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な回路構成で、受電電源系統に対する逆潮流を防止することを可能とした電池パック検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電池パック検査装置として、特許文献1に記載の技術が知られている。この従来技術は、電池パックを2台1組と考え、1台を検査対象の電池パックとし、他の1台を電力のバッファタンクのように使うことで、受電電源系統から検査対象に供給する電力を削減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術は、検査対象の電池パック(以下、検査電池と呼ぶ)から放電された電力をバッファ側の電池パック(以下、バッファ電池と呼ぶ)に貯め、これを再び試験対象の電池に供給することで、受電電源系統から検査電池に供給する電力を削減することができ、省エネ性に優れている。しかし、この従来技術は、受電電源系統から2台の電池パックに供給する電力の切替と、2台の電池パック間の充放電とを、複数のスイッチを有する切替部によって制御しているため、装置の構成が複雑であった。
【0005】
また、このような切替部によって、受電電源系統から2台の電池パックに対する電力の切換を行うと、切替のタイミングによっては、電池パックから受電電源系統に逆潮流が生じ、受電電源系統に逆潮流を吸収するだけの容量がない場合には、受電電源系統の損傷を招くおそれがあった。特に、電気自動車用の電池パックは、その容量も大きく大電流が流れることから、小容量の受電電源系統では逆潮流を吸収できない可能性があった。
【0006】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、簡単な構成で逆潮流を効果的に防止することで、小容量の受電電源系統でも安全に検査を行うことができ、しかも、省エネ性能に優れた電池パック検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の電池パック検査装置は、受電電源系統に接続されたAC/DC電源装置の出力側に、各電池パックに電力を供給するDC/DC回生充放電装置を複数台並列に接続し、各DC/DC回生充放電装置にそれぞれ電池パックを接続すると共に、前記AC/DC電源装置をその出力側の電圧を一定に制御する電圧レギュレータとすることで、従来技術に使用されていた切替部を不要としたものである。
【0008】
本発明の一態様では、2台一組となった電池パックのそれぞれにDC/DC回生充放電装置を接続し、DC/DC回生充放電装置の変換効率が一般には90%以下であることを利用し、各電池パックのDC/DC回生充放電装置を経由して2台の電池パック間で充放電を行うことにより、充電時にバッファ電池のオーバーフローを防止し、オーバーフローした電力が受電電源系統に逆潮流することを防止する。
【0009】
本発明の他の態様では、検査電池から放電される電気エネルギーを全て、バッファ電池に充電する制御を行う際に、バッファ電池の充電電流を確認した後に、検査電池の放電を開始することで、逆潮流を防ぎ、一方、検査電池の放電終了時は、検査電池の放電を先に終了し、実際の検査電池の放電電流を確認した後に、バッファ電池の充電を終了する。
【0010】
本発明の更に他の態様では、バッファ電池の充電を先に行い続いて検査電池の放電を行うにあたり、検査電池とバッファ電池の設定電流を段階的に制御することで、バッファ電池の充電と検査電池の放電の時間差分に消費する商用電力を抑制する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受電電源系統に対する逆潮流を効果的に防止することができると共に、試験対象の電池パックとバッファ側の電池パック間における潮流の切替を簡単な構成で実施できる電池パック検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電池パック検査装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】電池パックのセット状態を示す回路図。
【図3】検査電池41への充電状態を示す回路図。
【図4】検査電池41の内部抵抗測定状態を示す回路図。
【図5】検査電池41への100%充電状態を示す回路図。
【図6】検査電池41の充電容量測定状態を示す回路図。
【図7】検査電池41の出荷容量調整状態を示す回路図。
【図8】検査を完了した電池パックの交換状態を示す回路図。
【図9】第2の電池パックに対する充電状態を示す回路図。
【図10】第2の電池パックの内部抵抗測定状態を示す回路図。
【図11】第2の電池パックの100%充電状態を示す回路図。
【図12】第2の電池パックの充電容量測定状態を示す回路図。
【図13】第2の電池パックの出荷容量調整状態を示すグラフ。
【図14】各工程における受電電源系統1の充電電流、及び電池パック41,42の充放電電流とSOCを示すタイミングチャート。
【図15】検査電池から放電される電気エネルギーをバッファ電池に充電する制御の一例を示すタイミングチャート。
【図16】検査電池から放電される電気エネルギーをバッファ電池に充電する制御の他の例を示すタイミングチャート。
【図17】検査電池とバッファ電池の受電電力を見て、検査電池に充電する時のステップ1からステップ5を示すフローチャート。
【図18】検査電池とバッファ電池の受電電力を見て、検査電池に充電する時のステップ6からステップ10を示すフローチャート。
【図19】検査電池とバッファ電池の受電電力を見て、検査電池から放電する時のステップ1からステップ5を示すフローチャート。
【図20】検査電池とバッファ電池の受電電力を見て、検査電池から放電する時のステップ6からステップ10を示すタイミング。
【図21】電池間の充放電電流を見て、検査電池に充電する時のステップ1からステップ5を示すフローチャート。
【図22】電池間の充放電電流を見て、検査電池に充電する時のステップ6からステップ10を示すフローチャート。
【図23】電池間の充放電電流を見て、検査電池から放電する時のステップ1からステップ5を示すフローチャート。
【図24】電池間の充放電電流を見て、検査電池から放電する時のステップ6からステップ10を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に従って具体的に説明する。
【0014】
[実施例の構成]
図1は、本実施例のシステム構成図である。図中1は、本システムに電力を供給する受電電源系統、2は、この受電電源系統1の出力側に接続されたAC/DC電源装置である。本実施例では、このAC/DC電源装置2として、その出力側の電圧を一定に制御する電圧レギュレータとして機能するものを採用する。すなわち、AC/DC電源装置2は、その出力側に接続されたDCラインの電圧調整レギュレ一夕として働き、検査電池とバッファ電池との間の充放電力の不足分を瞬時に補う。また、前記AC/DC電源装置2の受電電源系統1側(受電部)には、逆潮流継電器RPRを設け、ハードウェア的に逆潮流を防止する。
【0015】
前記AC/DC電源装置2の出力側には、各電池パックに電力を供給するDC/DC回生充放電装置31,32を複数台並列に接続し、各DC/DC回生充放電装置31,32にそれぞれ電池パック41,42を接続する。この場合、第1の電池パック41が検査電池であり、第2の電池パック42がバッファ電池となる。なお、本実施例では、AC/DC電源装置2の出力側に2台の電池パックを接続しているが、必ずしも2台に限らず、2台1組とした電池パックを、複数組接続することも可能である。
【0016】
また、検査電池とバッファ電池の組合せを固定せず、前記AC/DC電源装置2の出力側に接続されている電池の複数台を検査電池とし、複数台をバッファ電池として使用することも可能である。また、前記AC/DC電源装置2の出力側に接続されている電池の一部をバッファ専用の電池とすることも可能である。
【0017】
前記DC/DC回生充放電装置31,32は、その充放電動作を制御するとともに各電池パックの試験を行うための計測制御装置5を接続する。この計測制御装置5は、各電池パック41,42の出力端子に接続された電圧検出部51と、充放電電流を検出する電流検出部52と、電池パックの内部抵抗及び充電容量の検査開始指令部53を設ける。この計測制御装置5は、前記電圧検出部51と電流検出部52が検出した電池パックの端子電圧と充放電電流、及び検査開始検査指令に基づいて、前記DC/DC回生充放電装置31,32に所定のタイミングで充放電を実施させる。
【0018】
前記各機器の容量、効率などは、下記の通りである。
(1) 現在の受電電力:Wdc
(2) 許容電力:Wmax(電源装置能力または受電契約量による。)
AC/DC電源装置2
変換効率:Eac
(3) DC/DC回生充放電装置31
変換効率:Ebat
検査電池要求電流:Isv(充電はプラス、放電はマイナスとする。)
電流設定値:Ibatsv(Isvに一致するまでの過渡的設定値)
(4) DC/DC回生充放電装置32
変換効率:Ebuf
電流設定値:Ibufsv(バッファ電池用設定値)
(5) 検査電池41
端子電圧:Vbat
電流:Ibat
(6) バッファ電池42
端子電圧:Vbuf
電流設定値:Ibufsv
(7) 制御誤差の吸収分(余裕分):α
【0019】
[実施例の作用]
図2から図13に、本実施例による2台の電池パック41,42の検査工程を説明する。なお、ここに示す検査工程は一例であり、必ずしもこれに限らない。この場合、各装置の容量及び検査電池のSOC( State of charge :電気容量に対して、充電している電気量を比率で表したもの)は次の通りとする。
【0020】
(a) AC/DC電源装置2
容量…450V/200A
(b) DC/DC回生充放電装置31,32
容量…450V/200A、
変換効率…90%
(c) 検査電池のSOC
検査開始時…2%
内部抵抗測定時…50%
充電容量測定時…100%から0%
出荷時…30%
【0021】
(1) 電池パックのセット…図2
2台の電池パックを各DC/DC回生充放電装置31,32にセットする。この場合、各電池パック41,42のSOCは、一例として2%とする。なお、実際には、検査対象となる各電池パックのSOCは一定ではない。
【0022】
(2) 検査電池41への充電…図3
AC/DC電源装置2から、DC/DC回生充放電装置31を通じて、検査電池41へ50Aで充電を開始する。この充電開始は、計測制御装置5の検査開始指令部53からの検査開始指令による。なお、充電電流の50Aは一例であり、必ずしもこれに限らない。
【0023】
(3) 内部抵抗測定…図4
計測制御装置5は、その電圧検出部51と電流検出部52により、検査電池41の端子電圧と充電電流を監視し、検査電池41のSOCが50%に達した場合には、充電を終了し、内部抵抗検査開始指令を出力する。この検査開始指令を受けて、DC/DC回生充放電装置31,32は、検査電池41を一例として200Aで放電させ、その電力をバッファ電池42に貯める。その際、検査電池41の放電電流と端子電圧に基づいて、検査電池41の内部抵抗を測定する。なお、内部抵抗測定のために放電電流を流す時間は短くて良いので、各電池パックのSOCの変化は少ない(図4では1%のSOCの増加・減少)。
【0024】
(4) 検査電池41への100%充電…図5
内部抵抗検査後の検査電池41に対して、次の充電容量測定のために100%の充電を行う。この充電は、受電電源系統1に接続されたAC/DC電源装置2から、一例として50Aで行う。
【0025】
(5) 検査電池41の充電容量測定…図6
計測制御装置5は、その電圧検出部51と電流検出部52により、検査電池41の端子電圧と充電電流を監視し、検査電池41のSOCが100%に達した場合には、充電容量の検査開始指令を出力する。この検査開始指令を受けて、DC/DC回生充放電装置31,32は、検査電池41を一例として50Aですべてバッファ電池42に向けて放電させ、その際、検査電池41の放電電流と端子電圧に基づいて、検査電池41の充電容量を測定する。
【0026】
この場合、DC/DC回生充放電装置31,32のそれぞれの変換効率が一例として90%であるため、検査電池のSOC100%をすべて放電しても、バッファ電池42には100%×90%×90%の電力(SOC81%分)が充電されることになり、バッファ電池42のSOCは元から残っていた電力を加えてもそのSOCは84%になる。従って、検査電池41の100%の電力を放電しても、バッファ電池42によって十分吸収されることになり、検査電池41から受電電源系統1に対する逆流が生じることはない。
【0027】
(6) 出荷容量調整…図7
検査後の電池パックを出荷する時には、一定のSOC、例えば30%が求められる。そこで、完全に放電した検査電池41を、バッファ電池42からの放電によって充電する。この場合、DC/DC回生充放電装置31,32のそれぞれの変換効率が一例として90%であるため、検査電池41のSOC30%を得るためには、バッファ電池42のSOC約37%分の電力を充電する必要がある。
【0028】
(7) 検査を完了した電池パックの交換…図8
検査後の電池パックを取り外し、そこに新たな電池パックをセットする。この新たな電池パックのSOCも2%とする。以降は、この新たな電池パック41がバッファ電池として機能し、前記(1) から(6) においてバッファ電池として機能した電池パック42が検査電池となる。
【0029】
(8) 第2の電池パックに対する充電…図9
第2回目の検査を行う電池パック42に対して、AC/DC電源装置2から50Aで、SOC50%まで充電を行う。この場合、電池パック42は、バッファ電池として機能した結果、既にSOCが47%に達しているので、AC/DC電源装置2からの充電量は少なくて済む。従って、その分検査に要する電力が少なくて済み、省エネ性に優れる。
【0030】
(9) 第2の電池パックの内部抵抗測定…図10
検査電池42のSOCが50%に達した場合には、検査電池42を一例として200Aで放電させ、その電力をバッファ電池41となる新たにセットした電池パックに貯める。その際、検査電池42の放電電流と端子電圧に基づいて、検査電池42の内部抵抗を測定する。
【0031】
(10)第2の電池パックの100%充電…図11
内部抵抗検査後の第2の検査電池42に対して、次の充電容量測定のために100%の充電を行う。この充電は、受電電源系統1に接続されたAC/DC電源装置2から、一例として50Aで行う。
【0032】
(11)第2の電池パックの充電容量測定…図12
第2の検査電池42のSOCが100%に達した場合には、充電容量の検査開始指令を出力する。この検査開始指令を受けて、DC/DC回生充放電装置31,32は、検査電池42を一例として50Aですべてバッファ電池である新たに交換した電池パック41に向けて放電させ、その際、検査電池42の放電電流と端子電圧に基づいて、検査電池42の充電容量を測定する。
【0033】
この場合、DC/DC回生充放電装置31,32のそれぞれの変換効率が一例として90%であるため、第2の検査電池42の100%の電力を放電しても、バッファ電池として機能する新たに交換した電池41によって十分吸収されることになり、検査電池42から受電電源系統1に対する逆流が生じることはない。この点は、第1の電池パックの充電容量の検査時と同様である。
【0034】
(12)第2の電池パックの出荷容量調整…図13
充電容量測定の結果、完全に放電した検査電池42を、バッファ電池41からの放電によってSOC30%まで充電する。この場合、DC/DC回生充放電装置31,32のそれぞれの変換効率が一例として90%であるため、検査電池41のSOC30%を得るためには、バッファ電池42のSOC約37%分の電力を充電する必要があることは、第1の電池パックの場合と同様である。
【0035】
このようにして、第2の電池パックの出荷容量調整が終了した後は、第2の電池パックを取り外し、そこに新たな電池パックをセットし、今までバッファ電池として機能させていた電池パック41について、前記と同様にして検査を行う。
【0036】
以下同様に、2台の電池パックを交互に検査電池とバッファ電池とすることで、検査電池の放電電流をバッファ電池に蓄積し、それを検査電池の充電に利用することで、受電電源系統1からの供給電力を削減する。同時に、各電池パックに接続されたDC/DC回生充放電装置31,32の変換効率が100%でないことを利用して、検査電池を100%放電した場合でも、その全容量をバッファ電池側にためることを可能とし、それにより、検査電池から受電電源系統への逆潮流を確実に防止する。
【0037】
図14は、前記(1) から(14)の各工程における受電電源系統1の充電電流、及び電池パック41,42の充放電電流とSOCを示すタイミングチャートである。なお、前記の通り、各電池パックから見ての充電電流をプラス、放電電流をマイナスで示している。このタイミングチャートから解るように、本発明では、電池パックの放電時において、受電電源系統1に対する逆潮流が発生することがない。
【0038】
[充放電の制御…その1]
本発明の検査装置は、基本的に前記図2から図13に記載の順序で電池パックの検査を行うものである。ところで、前記のようにして検査前の電池をバッファ電池を回生電力の受け皿(バッファ)として使用する場合において、逆潮流を防ぐためには、検査電池から放電される電気エネルギーを全て、バッファ電池に充電する制御を行う。しかし、実際には、電流制御の遅れや誤差が生じるため、本実施例では、以下の処理を行うことで逆潮流を確実に防止する。
【0039】
すなわち、図15のタイミングチャートに示すように、検査電池41の放電要求時t1に、DC/DC回生充放電装置31,32の変換効率を考慮した電流を、受電電源系統1からバッファ電池に対して放電する。そして、実際のバッファ電池42の充電電流を確認したt2以降に、検査電池41の放電を開始することで、逆潮流を防ぐ。一方、検査電池41の放電終了時は、t3において検査電池41の放電を先に終了し、実際の検査電池41の充電電流を確認したt4以降に、バッファ電池42の放電を終了する。
【0040】
この場合、本実施例では、AC/DC電源装置2が電圧レギュレータとして機能するため、DC/DC回生充放電装置31,32の充放電制御を行うだけで、検査電池41とバッファ電池42との間の充放電力の不足分を瞬時に補うことができる。
【0041】
[充放電の制御…その2]
前記の逆潮流防止は、バッファ電池42の充電を先に行い、続いて検査電池41の放電を行うが、この時間差分のために、受電電源系統1の電力を短時間であるが消費することになる。すなわち、本実施例では、AC/DC電源装置2がレギュレータとして働くため、自動的にAC/DC電源装置から大電流が電池パック側に流れることになる。特に、電池検査においては、短時間の大電流放電を行う場合があり、上記の制御だけだと受電電源系統1の受電契約量を大きくする必要がある。
【0042】
そこで、図16のように、検査電池41とバッファ電池42の設定電流を段階的に制御することで受電電源系統1の電力を抑えることが可能になる。すなわち、バッファ電池42の放電電流値が一定値に達した場合に、検査電池41をその電流値に応じた分だけ放電させることを2〜3回繰り返すことにより、受電電源系統1からの供給電力のピークを抑えることができる。
【0043】
[制御フロー…その1]
次に、DC/DC回生充放電装置31,32により、検査電池41とバッファ電池42間の充放電を制御する方法の一例を、図17〜図20のフローチャートに示す。この制御方法は、検査電池とバッファ電池の受電電力を見て、検査電池とバッファ電池の充放電を制御するものである。この制御方法は、AC/DC電源装置2の下に、複数台の電池がぶら下がった場合に、効率的に制御できる利点がある。
【0044】
(1) 検査電池に充電する時の制御…図17,図18
(ステップ1)
検査電池41とバッファ電池42をそれぞれ本実施例の装置にセットし、計測制御装置5から検査開始指令を出力した後、計測制御装置5の電流検出部52により検査電池要求電流Isv>0か、否かを判定する。
【0045】
(ステップ2)
検査電池要求電流Isv>0であることを検出した場合は、AC/DC電源装置2の許容電力まで検査電池の充電電流を増加する。この場合の電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=Ibatsv+(Wmax−Wac)×Eac×Ebat÷Vbat
ただし、0≦Ibatsv≦Isv、Ibatsvの初回は0
【0046】
(ステップ3)
バッファ電池42が放電可能か、否かをチェックする。この場合、バッファ電池42のSOCが一定以上なら放電可能と判定する。
【0047】
(ステップ4)
現在の(受電電力ー余裕分)をバッファ電池から放電させる。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、電流設定値Ibufsvは、次の通りである。
Ibufsv=(Wac−α)×(−1)×Eac÷Ebuf÷Vbuf
ただし、Ibufsv≦0
【0048】
(ステップ5)
検査電池41の電流設定値Ibatsvが検査電池要求電流Isvbを越えたか否か(Ibatsv<Isvか?)をチェックする。電流設定値Ibatsvが検査電池要求電流Isvに達しない場合には、ステップ2に戻り、前記の処理を繰り返す。
【0049】
(ステップ6)
電流設定値Ibatsvが検査電池要求電流Isvを越えた場合には、計測制御装置5からの検査電池充電終了要求を待つ。
【0050】
この検査電池充電終了としては、次のような各種のものを適宜使用する。
(1) CC充電、CC放電(定電流 Constant Current)
時間を設定し、時間到達で終了とする。ただし、充電時は設定電圧を超えると(放電時は下回る)終了とする。
(2) CV充電、CV放電(定電圧 Constant Voltage)
(3) CCCV充電
一定電流で充電し、電圧が設定値に到達したら、それ以降は一定電圧充電する。2次電池の場合は、一定電圧になるように制御していくと充電電流が減少する。充電電流が設定値以下になると終了とする。このモードは、満充電を行う場合に使用する。設定時間を加える場合もある。
【0051】
(ステップ7)
検査電池の充電終了が来た場合、バッファ電池42が放電中か否かをチェックする。放電中の場合に、次の放電電流の減少ステップ(ステップ8)に進み、放電中でない場合には、バッファ電池42に対する処理は終了する。
【0052】
(ステップ8)
AC/DC電源装置2の受電許容値までバッファ電池42の放電電流を減少する。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、バッファ電池の電流設定値Ibufsvは、次の通りである。
Ibufsv=Ibufsv+(Wmax−Wac+α)×Eac÷Ebuf÷Vbuf
ただし、Ibufsv≦0
【0053】
(ステップ9)
現在の受電電力をゼロにするよう、検査電池41の充電電流を減らす。この場合、電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=Ibatsv−(Wac×Eac÷Ebat÷Vbat)
ただし、Ibatsv≧0
【0054】
(ステップ10)
検査電池41の電流設定値Ibatsvが0になったか否か(Ibatsv=0か?)をチェックする。電流設定値Ibatsvが0でない場合には、ステップ7に戻り、前記の処理を繰り返す。電流設定値Ibatsvが0になった場合には、検査電池に対する充電を終了する。
【0055】
(2)検査電池を放電する時の制御…図19,図20
(ステップ1)
検査電池41とバッファ電池42をそれぞれ本実施例の装置にセットし、計測制御装置5から検査開始指令を出力した後、計測制御装置5の電流検出部52により検査電池要求電流Isv<0か、否かを判定する。
【0056】
(ステップ2)
バッファ電池42が充電可能か、否かをチェックする。この場合、バッファ電池42のSOCが一定以下なら充電可能と判定する。バッファ電池が充電可能である場合には、次のステップ3に進み、充電可能でない場合には、次のステップ4に進む。
【0057】
(ステップ3)
バッファ電池42が充電可能であることを検出した場合は、AC/DC電源装置2の受電許容値までバッファ電池の充電電流を増加する。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、バッファ電池の電流設定値Ibufsvは、次の通りである。
Ibufsv=Ibufsv+(Wmax−Wac+α)×Eac÷Ebuf÷Vbuf
ただし、0≦Ibufsv≦Isv×Vbat×Ebat÷Ebuf÷Vbuf×(−1)
Ibufsvの初回は0
【0058】
(ステップ4)
バッファ電池の充電電力に相当する量を検査電池41の放電電力とする。この場合、電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=Ibatsv−(Wac×Eac÷Ebat÷Vbat)
ただし、Ibatsv≦0
【0059】
(ステップ5)
検査電池41の電流設定値Ibatsvが検査電池要求電流Isvb以下か否か(Isv<Ibatsvか?)をチェックする。検査電池要求電流Isvbが電流設定値Ibatsvに達しない場合(Isv<IbatsvがYes)には、ステップ2に戻り、前記の処理を繰り返す。
【0060】
(ステップ6)
検査電池要求電流Isvbが電流設定値Ibatsvを越えた場合(Isv<IbatsvがNo)には、計測制御装置5からの検査電池放電終了要求を待つ。
【0061】
(ステップ7)
バッファ電池42が放電中か否かをチェックする。放電中の場合に、次の検査電池41の放電電流の減少ステップ(ステップ8)に進み、放電中でない場合には、バッファ電池42の充電電流の減少ステップ(ステップ9)に進む。
【0062】
(ステップ8)
AC/DC電源装置2の許容電力まで検査電池41の放電電流を減少する。この場合、検査電池の電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=Ibatsv+(Wmax−Wac)×Eac×Ebat÷Vbat
ただし、Ibatsv≦0
【0063】
(ステップ9)
現在の受電電力に相当する分、バッファ電池42の充電電流を減少する。この場合、バッファ電池の電流設定値Ibufsvは次の通りである。
Ibufsv=Ibufsv−(Wac×Eac÷Ebuf)
ただし、Ibufsv≧0
【0064】
(ステップ10)
検査電池41の電流設定値Ibatsvが0になったか否か(Ibatsv=0か?)をチェックする。電流設定値Ibatsvが0でない場合には、ステップ7に戻り、前記の処理を繰り返す。電流設定値Ibatsvが0になった場合には、検査電池の放電を終了する。
【0065】
[制御フロー…その2]
図21〜図24は、DC/DC回生充放電装置31,32により、検査電池41とバッファ電池42間の充放電を制御する方法の他の例を示すものである。この制御方法は、電池間の充放電電流を見て、検査電池とバッファ電池の充放電を制御するものである。なお、本制御方法については、前記[制御フロー…その1]との相違するステップのみを取り出して説明する。
【0066】
(1)検査電池に充電する時の制御…図21,図22
(ステップ4)
検査電池41の充電電力相当を、バッファ電池42から放電する。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、バッファ電池の電流設定値Ibufsvは、次の通りである。
Ibufsv=((Vbat×Ibat)÷Ebat÷Ebuf÷Vbuf)×(−1)+α
ただし、Ibufsv≦0
【0067】
(ステップ9)
バッファ電池42の放電電力相当を、検査電池41から放電する。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、検査電池の電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=((Vbuf×Ibuf)÷Ebuf÷Ebat÷Vbat)×(−1)+α
ただし、Ibatsv≦0
【0068】
(2)検査電池を放電する時の制御…図23,図24
(ステップ4)
バッファ電池42の充電電力相当を、検査電池41から放電する。この場合、検査電池の電流設定値Ibatsvは、次の通りである。
Ibatsv=((Vbuf×Ibuf)÷Ebuf÷Ebat÷Vbat)×(−1)
ただし、Ibatsv≦0
【0069】
(ステップ9)
検査電池41の充電電力相当を、バッファ電池42から充電する。この場合、余裕分(制御誤差の吸収)をαとすると、バッファ電池の電流設定値Ibufsvは次の通りである。
Ibufsv=((Vbat×Ibat)÷Ebat÷Ebuf÷Vbuf)×(−1)
ただし、Ibufsv≧0
【符号の説明】
【0070】
1…受電電源系統
2…AC/DC電源装置
31,32…DC/DC回生充放電装置
41,42…電池パック(検査電池、バッファ電池)
5…計測制御装置
51…電圧検出部
52…電流検出部
53…検査開始司令部
RPR…逆潮流継電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電電源系統に、出力側の電圧を一定に制御する電圧レギュレータとして機能するAC/DC電源装置を接続し、
このAC/DC電源装置の出力側に、各電池パックに電力を供給するDC/DC回生充放電装置を複数台一組として並列に接続し、
各DC/DC回生充放電装置にそれぞれ検査対象となる電池パックを接続し、これら複数台1組の電池パックの1つを検査電池とし、他の電池をバッファ電池とし、
前記AC/DC電源装置から検査電池に充電すると共に、各電池パックのDC/DC回生充放電装置を経由して検査電池とバッファ電池間で充放電を行い、検査電池からの放電時にその特性を検査することを特徴とする電池パック検査装置。
【請求項2】
前記検査電池とバッファ電池にそれぞれ接続されたDC/DC回生充放電装置として、その変換効率が100%に満たないことを利用して、検査電池とバッファ電池間の充放電時に、その電力を消費することで、放電電流が受電電源系統に逆潮流することを防止することを特徴とする請求項1に記載の電池パック検査装置。
【請求項3】
検査電池から放電してバッファ電池に充電を行う時に、バッファ電池の放電電流を確認した後に検査電池の放電を開始し、検査電池の放電終了時は、検査電池の放電を先に終了し、検査電池の放電電流を確認した後にバッファ電池の放電を終了することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池パック検査装置。
【請求項4】
前記検査電池とバッファ電池の設定電流を段階的に制御することで、バッファ電池の充電と検査電池の放電の時間差分に消費する商用電力を抑制することを特徴とする請求項3に記載の電池パック検査装置。
【請求項5】
前記検査電池とバッファ電池の受電電力に基づいて、検査電池とバッファ電池の充放電を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池パック検査装置。
【請求項6】
前記検査電池とバッファ電池間の充放電電流に基づいて、検査電池とバッファ電池の充放電を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池パック検査装置。
【請求項7】
前記AC/DC電源装置の受電電源系統側に、逆潮流継電器を設置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池パック検査装置。

【図1】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−80966(P2011−80966A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235663(P2009−235663)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】