説明

電池パック

【課題】回路基板を安全かつ容易に再利用できる電池パックを提供する。
【解決手段】素電池2に回路基板を取り付けた電池パックであって、素電池2に固定され、前記回路基板を保持したホルダー6と、一端が素電池2に固定された突出部9と、突出部9が挿通する孔24を設けたカバー23とを備えており、突出部9はカバー23の孔24を挿通しており、突出部9の溶融変形により、カバー23が突出部9を介して素電池2に固定されており、カバー23に、孔24を横切るように形成し、少なくとも一端が開口したスリット26を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池に回路基板を取り付けている電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、素電池に回路基板を取り付けた電池パックが知られている。この回路基板は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護回路を構成する電子部品が実装されている。電池パックの構成としては、素電池に固定したフレームに回路基板を取り付け、これらをカバー内に収納した構成が知られている。この構成では、ユーザーによる分解を防止するには、カバーを工具等を用いて容易に取り外しができないように固定する必要がある。また、回路基板を樹脂モールドで覆って、樹脂モールドを素電池と一体に成形した構成も知られている。
【0003】
一方、回路基板はほとんど劣化しないが、前記のような電池パックの構成では、素電池が劣化したときに、ユーザーによる分解を防止しつつ、回路基板のみを取り出して再利用することは困難であった。
【0004】
下記特許文献1には、回路基板、外部出力電極、素電池と電気接続のための端子、結合部品などを一体成形した電池部品部を再使用する構成が提案されている。
【特許文献1】特開2005−203366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の特許文献1の構成では、電池部品部の再使用に際し、外観の傷、変形及び内部の異常を見つけにくいなどの問題があった。このため、メーカーで、外観ユニットを再利用し、新たな製品として再生させることは、品質保証や歩留まりによるコストの点などで困難であった。
【0006】
また、特許文献1の構成は、ユーザーによる分解を防止する構成ではないので、安全性の面で問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1の構成は、電池部品部を金属プレス板のばね力を利用して電池本体に固定したものであり、この構成は強度的に不利であった。また、結合のための追加部品が必要であることに加え、回路基板と結合部品とを一体成形しているので、組立性、コスト面でも不利であった。
【0008】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、回路基板を安全かつ容易に再利用できる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電池パックは、素電池に回路基板を取り付けた電池パックであって、前記素電池に固定され、前記回路基板を保持したホルダーと、一端が前記素電池に固定された突出部と、前記突出部が挿通する孔を設けたカバーとを備えており、前記突出部は前記カバーの前記孔を挿通しており、前記突出部の溶融変形により、前記カバーが前記突出部を介して前記素電池に固定されており、前記カバーに、前記孔を横切るように形成し、少なくとも一端が開口したスリットを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路基板を安全かつ容易に再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電池パックは、スリットにカッターを差し込むことにより、カバーを固定している突出部を切断でき、回路基板を容易に取り外すことができる。一方、カバーは、突出部の溶融変形により素電池に固定されている。さらに、突出部の切断には専用のカッターが必要になる。このため、ユーザーによる分解を防止でき、安全性を確保することができる。
【0012】
前記本発明の電池パックにおいては、前記回路基板と前記素電池とが圧接型コネクタを介して電気接続されていることが好ましい。この構成によれば、回路基板をホルダーから容易に取り外すことができる。
【0013】
また、前記突出部と前記ホルダーとが一体になっていることが好ましい。この構成によれば、部品点数が少なくなり、組立も容易になる。
【0014】
また、前記突出部は、前記回路基板から離れた位置にあることが好ましい。この構成によれば、カッターによる突出部の切断の際に、回路基板の変形や傷付きを防ぐことができる。
【0015】
また、前記突出部のうち、前記スリットに対向する部分に、溝を形成していることが好ましい。この構成によれば、突出部のカッターによる切断が容易になる。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池パックの分解斜視図である。まず、図1を参照しながら、電池パックの概略構成を説明する。図1は、電池パック1、及びこれに取り付ける各種付属部品を示している。素電池2は、例えばアルミ又はアルミ合金で形成された厚さの薄い角形の外装缶3内に、発電要素を内蔵したものである。素電池2は、例えば、角形リチウムイオン電池であり、携帯電話やモバイル機器等に用いられる。
【0017】
素電池2の上部には、樹脂製のホルダー6が、接着テープ12を介して取り付けられる。ホルダー6には箱状部分7、8が形成されており、箱状部分7に正極用のコネクタ13が嵌め込まれ、箱状部分8に負極用のコネクタ16が嵌め込まれる。コネクタ13、16は、圧接型のコネクタである。本図の例では、コネクタ13は、弾性部材14に、金属細線15を低ピッチで配列したものである。同様に、コネクタ16は、弾性部材17に、金属細線18を低ピッチで配列したものである。
【0018】
コネクタ13、16を箱状部分7、8に嵌め込んだ状態で、ホルダー6に回路基板19が設置される。回路基板19は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護回路を構成する電子部品が実装され、これらは樹脂モールド21によって覆われている。回路基板19の上面には、外部接続用の端子20を設けている。
【0019】
回路基板19の凹部22を、ホルダー6の凸部11に嵌合させることにより、回路基板19はホルダー6に仮止めされる。詳細は後に説明するが、コネクタ13を介して、回路基板19裏面の正極端子(図示せず)と、素電池2の正極4とが電気接続され、コネクタ16を介して、回路基板19裏面の負極端子(図示せず)と、素電池2の負極端子5とが電気接続される。
【0020】
さらに外装カバー23の孔24に、ホルダー6の突出部であるピン9を挿通させて、ピン9の先端を溶融変形させて外装カバー23をホルダー6に固定する。最終的には、素電池2の全周には、ラベルが貼り付けられる。
【0021】
ピン9には、溝10が形成され、外装カバー23にはカッター挿入用の角穴25が形成されている。これらの詳細は、後に図7を用いて説明する。
【0022】
以下、図2−4を参照しながら、本実施の形態に係る電池パックについて、より具体的に説明する。図2−4は、本実施の形態に係る電池パックを製造工程順に図示したものである。
【0023】
図2(a)は、接着テープ12の貼り付け完了状態を示している。素電池2の上端面に接着テープ12の裏面を貼り付ける。この状態で、接着テープ12の開口から、素電池2の正極4、負極端子5が露出している。図2(b)は、ホルダー6の接着完了状態を示している。接着テープ12の表面にホルダーを貼り付けている。
【0024】
図3(c)は、コネクタ13、16の取り付け完了状態を示している。ホルダー6の箱状部分7に正極用のコネクタ13を嵌め込み、箱状部分8に負極用のコネクタ16を嵌め込んでいる。このことにより、正極用のコネクタ13と素電池2の正極4(図2(a))が当接し、負極用のコネクタ16と素電池2の負極端子5(図2(a))とが当接する。
【0025】
図3(d)は、回路基板19を仮止めした状態を示している。回路基板19の両端を切り欠いた凹部22(図1参照)と、ホルダー6に形成した凸部11(図1参照)とを嵌合させて、回路基板19をホルダー6に位置決めし仮止めしている。
【0026】
図4(e)は、外装カバー23の取り付け途中の状態を示している。図5(a)は、図4(e)のAA線における断面図を示しており、図5(b)は、図4(e)のBB線における断面図を示している。これらの図から分かるように、外装カバー23の孔24に、ホルダー6のピン9が挿通している。
【0027】
図4(f)は、外装カバー23の取り付け完了状態を示している。図6(a)は、図4(f)のAA線における断面図を示しており、図6(b)は、図4(f)のBB線における断面図を示している。図6(a)、(b)に示したように、ピン9の先端部9aは、孔24の座ぐり部24aにおいて溶融変形している。この溶融変形は、熱や超音波によるものである。この先端部9aの変形により、外装カバー23の移動はピン9により拘束され、外装カバー23はホルダー6に固定されることになる。
【0028】
外装カバー23の固定により、回路基板19の下部のコネクタ13、16が圧縮されていることになる。具体的には、コネクタ13、16の弾性部材14、17(図1参照)は、高さが縮む方向に圧縮されている。この圧縮の反発力により、コネクタ13の金属細線15(図1)と、回路基板19裏面の端子部及び素電池2の正極4(図2(a))との接触状態が良好になる。同様に、コネクタ16の金属細線18(図1)と、回路基板19裏面の端子部及び素電池2の負極端子5(図2(a))との接触状態が良好になる。
【0029】
すなわち、圧接型のコネクタ13、16を用いたことにより、回路基板19と素電池2との間の電気接続は、外装カバー23をホルダー6に取り付けるだけでよく、電気接続のための、接合、接着、機械的結合等はいずれも不要になる。
【0030】
なお、外装カバー23が固定されている状態では、外装カバー23が、回路基板19をホルダー6に押し付けているので、コネクタ13、16の反発力による回路基板19の変形は抑えられることになる。
【0031】
素電池2及び外装カバー23の側面にラベル(図示せず)を巻き付けて電池パックが完成する。
【0032】
以下、回路基板19の再利用について説明する。図6(a)に示したように、外装カバー23には孔24を挟み孔24を横切るように、スリット26が形成されている。スリット26の一端は開口しており、図1に示したように、外装カバー23の側面において角穴25を形成している。この構成によれば、角穴25から孔24側に向けてプレート状部材を挿入することができる。
【0033】
図7(a)は、図6(a)において、スリット26に、プレート状部材であるカッター27を挿入した状態を示している。カッター27の先端がピン9の側面に当接している。本図の例では、カッター27には鋭利な先端が2箇所あり、この先端はピン9に形成した溝10に入り込んでいる。
【0034】
この状態で、カッター27を押し込めば(矢印A方向)、鋭利な先端がピン9を切り込むことになる。さらに、カッター27を押し込めば、図7(b)に示したように、ピン9の一部が切り取られ、ピン9が切断されることになる。切り取られたピン9の一部は、孔24を挟んで対向する位置に形成されたスリット26内に入り込むことになる。
【0035】
図3(d)に示したように、ピン9は回路基板19から離れた位置にあるので、カッター27によるピン9の切断の際に、回路基板19の変形や傷付きを防ぐことができる。
【0036】
また、ピン9を一体に形成したホルダー6の材料として、例えばポリカーボネートやPBTが挙げられる。これらの材料を用いれば、成形性や強度等を確保しつつ、熱溶融及び切断も容易である。
【0037】
ただし、ホルダー6と外装カバー23とがピン9の先端部以外で溶着してしまい、分解の際に支障となるようであれば、ホルダー6と外装カバー23とは溶着しにくい異種材料とすることが好ましい。
【0038】
図7(b)の状態から、カッター27を抜き取れば、ピン9はカッター27の厚み分の空間を介して上下に分離していることになる。この状態では、ピン先端部9aは孔24の座ぐり部24aに載置されているに止まり、外装カバー23を外す方向(矢印B方向)の移動を拘束することはできない。したがって、外装カバー23は素電池2から容易に取り外すことができる。
【0039】
素電池2から外装カバー23を取り外せば、図3(d)の状態になる。この状態では、回路基板19は、回路基板19の凹部22とホルダーの凸部11との嵌合により、ホルダー6に仮止めされている。図6(b)において、コネクタ13と回路基板19とは当接しているに止まり、両者は接合していない。このことは、コネクタ16においても同様である。したがって、回路基板19はホルダー6から容易に取り外すことができる。
【0040】
したがって、本実施の形態によれば、回路基板19を特別に加工することなく、そのまま取り外すことができる。回路基板はほとんど劣化しないので、素電池が劣化しても、回路基板を別の素電池に取り付けて使用することができる。
【0041】
本実施の形態は、外装カバー23はピン9の溶融変形により、素電池2に固定されているので、ユーザーによる外装カバー23の取り外しは困難である。また、ピン9の切断には専用のカッターが必要になるので、ユーザーによるピン9の切断も困難である。すなわち、本実施の形態はユーザーによる分解を防止でき、安全性を確保することができる。さらに、電池パックの完成状態では、外装カバー23の側面はラベルで覆われるので、外装カバー23の角穴25は目視することはできない。このことも、ユーザーが外装カバー23を取り外すことの防止に役立つ。
【0042】
なお、カッター27の先端形状は、ピン9を切断できればよく、図7の形状に限るものではない。例えば先端を鋭利なくさび形にしたものでもよい。また、ピン9の溝部10の有無や形状も任意であり、カッター27の形状に応じて決定すればよい。
【0043】
また、図6において、スリット26は一端が開口しているが、両端を開口させてもよい。
【0044】
また、回路基板19と素電池2との接続に、圧接型コネクタ13、16を用いた例で説明したが、電気接続のための、接合、接着、機械的結合等が不要な電気接続であれば、他の構成であってもよい。例えば、図1の弾性部材14、17をコイルばねや板ばねとしたものでもよい。
【0045】
また、ピン9をホルダー6と一体にした例で説明したが、ピン9及びホルダー6のそれぞれが、素電池2に接合されていればよく、ピン9とホルダー6とが分離した構成でもよい。
【0046】
また、ホルダー6を接着テープ12で素電池2に接着した例で説明したが、固定が確実であればよく、他の固定手段を用いもよい。例えば、素電池2に固定したガイドにより、ホルダー6を素電池2に機械的に結合させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明の電池パックは、回路基板を安全かつ容易に再利用することができるので、例えば、携帯電話やモバイル機器に用いる電池パックとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図2】(a)図は接着テープ12の貼り付け完了状態を示す斜視図、(b)図はホルダー6の接着完了状態を示す斜視図。
【図3】(c)図はコネクタ13、16の取り付け完了状態を示す斜視図、(d)図は回路基板19の取り付け完了状態を示す斜視図。
【図4】(e)図は外装カバー23の取り付け途中の状態を示す斜視図、(f)図は外装カバー23の取り付け完了状態を示す斜視図。
【図5】(a)図は図4(e)のAA線における断面図、(b)図は図4(e)のBB線における断面図。
【図6】(a)図は図4(f)のAA線における断面図、(b)図は図4(f)のBB線における断面図。
【図7】(a)図は図6(a)において、スリット26にカッター27を挿入した状態を示す図、(b)図は(a)図の状態において、カッター27を押し込んだ状態を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1 電池パック
2 素電池
9 ピン
13,16 コネクタ
19 回路基板
23 外装カバー
24 孔
25 角穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池に回路基板を取り付けた電池パックであって、
前記素電池に固定され、前記回路基板を保持したホルダーと、
一端が前記素電池に固定された突出部と、
前記突出部が挿通する孔を設けたカバーとを備えており、
前記突出部は前記カバーの前記孔を挿通しており、
前記突出部の溶融変形により、前記カバーが前記突出部を介して前記素電池に固定されており、
前記カバーに、前記孔を横切るように形成し、少なくとも一端が開口したスリットを備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記回路基板と前記素電池とが圧接型コネクタを介して電気接続されている請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記突出部と前記ホルダーとが一体になっている請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記突出部は、前記回路基板から離れた位置にある請求項1から3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記突出部のうち、前記スリットに対向する部分に、溝を形成している請求項1から4のいずれかに記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−193820(P2009−193820A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33472(P2008−33472)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】