説明

電池パック

【課題】電池セルから発生したガスを確実に電池パック外に排出できると共に、電池セル内に発生したガスを電池パック外に排出するためのガス開放室の設計・製造・組み立てを容易にできる。
【解決手段】複数の電池セル2を収容するケース(筐体)3と、ケース3内に電池セル2を収容する電池室10に対して分離して設けられ、電池セル2を構成する密閉容器5がそれぞれ連結されたガス開放室4と、ガス開放室4と前記密閉容器4との間に設けられて、密閉容器5内がガス開放室4内より高圧となったことを条件として開放されるブローアウト弁(一方向弁)14と、ガス開放室4を外気と連通させる排気管15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを収容した電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の電池セル(単電池)が直列や並列に配列された電池パックが使用されている。各電池セルは、過充電などの異常時に、内部に大量のガスが発生するため、内部での燃焼や爆発防止用のガス排出口が設けられている。
ガス排出口から排出されるガスは、一般に高温であり、また、腐食性を有する場合もあるので、電池パックの一部の電池セルから排出されたガスが電池パック内に充満すると、他の電池セルや電池パックを構成する電池セル以外の部材も高温となったり腐食したりして劣化してしまうことになる。
このため、図3に示すように、各電池セル22のガス排出口27は、電池パック21内に配管されたパイプ状のガス排出ダクト24につながれ、電池セル22内部に発生したガスは、このガス排出ダクト24を通じて外部へ排出されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような電池パック21にはエギゾーストマニホールドを備えるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−100840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようなパイプ状のガス排出ダクト24は、例えば数十個の電池セル22が収容された電池パック21では、配管が複雑になってコストがかかると共に、設計や製造また組み立てに労力がかかってしまう。また、各電池セル22のガス排出口27とガス排出ダクト24との位置あわせに手間がかかる。
また、単に各電池セル22のガス排出口27がガス排出ダクト24に接続されている場合には、一部の電池セル22から排出されたガスGが、ガス排出ダクト24を通じて他の電池セル22に流入してしまうことが考えられる。
【0005】
また、ガス排出ダクト24のガスが排出される出口24aの位置は、ガス排出ダクト24のレイアウトによって制約されてしまい、電池パック21を搭載する車両や機器類などの形状に合わせて任意の位置にガス排出ダクト24の出口24aを設けることが難しかった。また、ガス排出ダクト24の出口24aの位置を特定してしまうと、ガス排出ダクト24のレイアウトが制約されてしまい、電池セル22の配列も制約されてしまうことがあった。
また、電池パック21をコンパクトにするためにガス排出ダクト24の形状を制限すると、ガス排出ダクト24の断面積が十分に確保できなかったり、ガス排出ダクト24の曲がり部分や連結部分でのガス流の圧損が大きくなったりすることがあり、ガスGの気流挙動の解析や設計が困難でガス排出ダクト24から有効にガスGを排出できない懸念がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電池セルから発生したガスを確実に電池パック外に排出できると共に、電池セル内に発生したガスを電池パック外に排出するためのガス開放室の設計・製造・組み立てが容易にできる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電池パックは、複数の電池セルを収容する筐体と、該筐体内に前記電池セルを収容する空間に対して分離して設けられ、前記電池セルを構成する密閉容器がそれぞれ連結されたガス開放室と、前記ガス開放室と前記密閉容器との間に設けられて、前記密閉容器内が前記ガス開放室内より高圧となったことを条件として開放される一方向弁と、前記ガス開放室を外気と連通させる排気管とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、密閉容器内にガスが発生し、この密閉容器内がガス開放室内より高圧となると一方向弁が開放され、密閉容器内のガスがガス開放室へ流入し、ガス開放室の排気管からガス開放室の外部へ排出される。ガス開放室と密閉容器との間には一方向弁が設けられていることにより、ガス開放室のガスが他の密閉容器に流入することを防ぐことができる。
そして、本発明では、複数の電池セルを収容する筐体内に電池セルを収容する空間に対して分離して設けられ、電池セルを構成する密閉容器がそれぞれ連結されたガス開放室を備えていることにより、従来のパイプ状のガス排出ダクトに電池セルの密閉容器を連結する電池パックと比べて、ガス排出ダクトの配管が不要であると共に、ガス開放室と密閉容器との位置合わせが容易にできるので、電池パックの設計・製造・組み立てにかかる労力やコストを軽減させることができる。
【0009】
また、本発明に係る電池パックでは、前記電池セルは、所定の平面上に行列状に配列されており、前記ガス開放室は、前記平面より上方の他の平面上に設けられることが好ましい。
本発明では、ガス開放室は、電池セルの配列された所定の平面より上方の他の平面上に設けられることにより、電池パックの製造を容易に行うことができる。
また、電池セルを収容する空間の上方にガス開放室が設けられることにより、例えば、電池パックが屋外に設置された場合などには、ガス開放室が空気層となり、その断熱効果によって電池室は直射日光や外気の温度変化の影響を受けにくい。
また、電池セルが発熱し電池パック内部の温度が上昇しても、ガス開放室の断熱効果によって、電池パック外部に電池パック内部の温度上昇の影響を及ぼしにくい。
【0010】
また、本発明に係る電池パックでは、前記ガス開放室は、六面体状をなし、前記排気管が前記六面体のいずれかの面に設けられてもよい。
本発明では、排気管が六面体のいずれかの面に設けられてもよいことにより、電池パックが搭載される車両や機器類にあわせて位置を設定することができ、電池パックのレイアウト性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池セルの密閉容器内から発生したガスは他の電池セルの密閉容器内に流入することがなく効率よくガス開放室の外部に排出できると共に、電池パックの設計・製造・組み立てにかかる労力やコストを軽減させることができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の実施の形態による電池パックの一例を示す図で(b)のA−A線断面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図2】電池セルから発生したガスの排出方法を説明する図である。
【図3】従来の電池パックの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による電池パックについて、図1および図2に基づいて説明する。
図1(a)乃至(c)に示すように、本実施の形態による電池パック1は、複数の電池セル2と、複数の電池セル2を収容するケース3と、ケース3内に設けられたガス開放室4とから概略構成される。
電池セル2は、内部に図示しない電極板などを備える略直方体の密閉容器5と、密閉容器5の上面5aからそれぞれ上方に突出する正極および負極の電極端子6とを備えている。密閉容器5の上面5aには、密閉容器5の内外を連通させて密閉容器5内にガスが発生した際に密閉容器5内からガスを排出させるガス排出口7が形成されている。
【0014】
ケース3は、上方が開口した略直方体形状の収容部8と、収容部8の上部に設置される蓋部9とから構成される。
ケース3には、下部側の空間に12個の電池セル2が3行4列に配列された電池室10が形成され、上部側の空間がガス開放室4となっている。電池室10とガス開放室4との間には、仕切板11が設けられている。ガス開放室4、電池室10は、共に略直方体形状である
仕切板11は、ケース3内の側面に密着して固定されている。
電池セル2は、例えば下面や側面がケース3内に固定されている。
【0015】
電池セル2と仕切板11との間には、ゴムなどの弾性体で形成され、電池セル2および仕切板11と密着して電池セル2の位置を固定する固定部材13が配設されている。固定部材13は、上下方向に貫通する貫通孔13aを備え、貫通孔13aの下端は電池セル2のガス排出口7と接続され、貫通孔13aの上端は仕切板11に形成されたガス流入口12と接続されている。
ガス流入口12は、各電池セル2のガス排出口7の鉛直上に位置しており、仕切板11には各電池セル2のガス排出口7に対応して複数のガス流入口12が形成されている。
【0016】
各ガス流入口12には、一方向に開放可能なブローアウト弁(一方向弁)14が設けられている。
ブローアウト弁14は、ガス流入口12のガス開放室4側に設けられた金属板などで、密閉容器5内がガス開放室4内よりも高圧となったことを条件としてガス開放室4側に吹き飛ぶ弁である。ブローアウト弁14は、密閉容器5側には移動しない構成である。
通常時は、ブローアウト弁14がガス流入口12を塞いで密閉容器5内とガス開放室4内の連通を遮断している。そして、密閉容器5内にガスが発生し、密閉容器5内がガス開放室4内よりも高圧となりブローアウト弁14がガス開放室4側に吹き飛ぶと、ガス流入口12が開放されて、固定部材13の貫通孔13aを通して電池セル2の密閉容器5の内部とガス開放室4の内部とが連通する。
【0017】
ガス開放室4には、内部のガスを電池パック1外に排出する排気管15が設けられている。本実施の形態では、排気管15はガス開放室4の側面に設けられているが、内部のガスを電池パック1外に排出できる位置であればガス開放室4どの位置に設けられてもよい。また、排気管15は1個設けられてもよいし、複数個設けられてもよい。ガス開放室4の任意の位置に排気管15を設けることができることにより、電池パック1のレイアウト性を高めることができる。
また、電池セル2から発生したガスが有害成分を含有する場合には、この有害成分と結合し有害性を除去または低減できる薬剤などをガス開放室4内に入れておいてもよい。また、この薬剤を乾燥剤のような形態とし、ガスと触れ易いように充填しても良い。
【0018】
使用する薬剤として、例えば、有害成分が一酸化炭素(CO)の場合には、一酸化炭素を吸収し二酸化炭素(CO2)にして毒性を減らすホプカライト(CuMn2O4)などが有効である。また、有害成分が腐食性ガスの場合には、シリカゲルや酸化カルシウムなどが有効である。
また、このような薬剤は、空気中に暴露しておくと、平時にわずかな一酸化炭素や水分を吸収してしまい、ガスが発生した際には劣化している可能性がある。このため、水分を通しにくいビニル等のフィルムで薬剤を密封し、ガスが発生した際に高温のガスがフィルムに当たりフィルムが溶けることで薬剤を露出させ、ガスに含まれる有害成分を除去または低減させるを構成とすることが好ましい。
【0019】
上述した本実施の形態による電池パック1では、ガス開放室4は以下のように設置される。
ケース3内に配列された電池セル2の上部に、電池セル2のガス排出口7と固定部材13の貫通孔13aとが重なるように固定部材13を設置する。そして、固定部材13の上部に、仕切板11のガス流入口12と固定部材13の貫通孔13aとが重なるように仕切板11を設置する。このとき、ガス開放室4は電池パック1の上部側の空間であることにより、図3に示すようなパイプ状のガス排出ダクト24が設置された従来の電池パック21と比べて、電池セル22とガス排出ダクト24の位置あわせを行わなくてよいので、容易に設置することができる。
【0020】
次に、ガス流入口12にブローアウト弁14を設置する。そして、ガス開放室4に排気管15を取り付けると共に、収容部8の上部に蓋部9を設置してガス開放室4が完成する。
なお、ブローアウト弁14は、仕切板11を収容部8に設置する前に予めガス流入口12を塞ぐように仕切板11に設置しておいてもよい。また、排気管15は収容部8を製造する際に設置されていてもよい。
【0021】
次に、本実施の形態による電池パックの電池セル内に発生したガスの排出方法について説明する。
図2に示すように、過充電などの異変により、一部の電池セル2Aの密閉容器5内にガスGが発生して充満すると、密閉容器5内の圧力が上昇し、ガス開放室4内よりも高圧となる。
そして、密閉容器5内がガス開放室4内よりも高圧となったことにより、電池セル2Aのブローアウト弁14がガス開放室4側に吹き飛ばされて、ガスGが発生した密閉容器5内とガス開放室4内とが連通する。
【0022】
密閉容器5内に発生したガスGは、固定部材13の貫通孔13aを通してガス開放室4に流入し、ガス開放室4に設けられた排気管15から電池パック1外に排出される。
このとき、ブローアウト弁14は一方向弁であることにより、他の正常な電池セル2Bのブローアウト弁14は閉じたままであるので、ガス開放室4内のガスが、正常な電池セル2Bの密閉容器5内に流入することがない。
【0023】
次に、上述した電池パックの効果について図面を用いて説明する。
本実施の形態による電池パック1によれば、電池セル2Aの密閉容器5内に発生したガスGを、ガス開放室4に設けられた排気管15から電池パック1外に排出できると共に、ガスが発生した電池セル2A以外の電池セル2Bのブローアウト弁14は閉じたままで、電池セル2Aから発生したガスGが他の電池セル2Bの密閉容器5内に流入することを防止できる効果を奏する。
また、ガス開放室4は電池パック1のケース3の上部側の空間に形成されていることにより、図3に示すようなパイプ状のガス排出ダクト24に電池セル22のガス排出口27を連結し、このガス排出ダクト24からガスGを排出させる従来の電池パック21と比べて、ダクトを配管する必要がなく、ガス開放室4と電池セル2のガス排出口7との位置あわせが容易なので(図1参照)、電池パック1の設計・製造・組み立てにかかる労力やコストを低減させることができる。
【0024】
また、図3に示すような従来の電池パック21では、電池セル22の位置を変更するとこれに伴いガス排出ダクト24の配管も変更しなければならないことがあったが、図1に示す本実施の形態による電池パック1では、電池セル2の位置を変更しても、この位置に合わせて仕切板11にガス流入口12を形成すればよく、ガス開放室4の形状を変更させることがないので、電池セル2の位置変更にも容易に対応でき、設計の自由度がある。
また、本実施の形態による電池パック1では、ケース3の上部側全体に形成されたガス開放室4からガスGを排出させることにより、従来のパイプ状のガス排出ダクト24(図3参照)のようにガスGの流路に角部や断面形状が変化する部分がなく、ガス流の排気圧損を減らすことができるので、ガスGはガス開放室4から安定した状態で確実に排出され電池パック1の安全性を向上させることができる。
また、ガス開放室4の排気管15は、ガス開放室4の任意の位置に設置できるので、電池パック1を搭載する車両や機器類に合わせて排気管15の位置を設定することができ、電池パック1のレイアウト性を高めることができる。
【0025】
また、電池室10の上部側にガス開放室4が設けられていることにより、電池パック1外部の温度変化がガス開放室4の断熱効果によって電池室10に伝達しにくい。例えば、電池パック1が屋外に設置された場合などには、ガス開放室4の断熱効果によって電池室10は直射日光による温度上昇の影響を受けにくい。また、電池室10の温度変化が電池パック1の外部に伝達しにくい。
また、電池パック1の一部をガス開放室4としているので、図3に示すパイプ状のガス排出ダクト24が配管された従来の電池パック21と比べて、製造が行いやすいと共に、電池パック1をコンパクトにすることができる。
【0026】
以上、本発明による電池パック1の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、固定部材13は、弾性体で形成されて電池セル2の位置を固定し、貫通孔13aを介してガス排出口7とガス流入口12とを連結しているが、固定部材13は、弾性体で形成されていなくてもよい。また、固定部材13に代わって、ガス排出口7とガス流入口12とを連結する部材を設けてもよく、また、ガス排出口7とガス流入口12とを直接連結してもよい。
また、上記の実施の形態では、ガス排出口7の鉛直上にガス流入口12が設けられているが、ガス排出口7とガス流入口12とが連結されていれば、ガス排出口7とガス流入口12の位置が鉛直方向にずれていてもよい。
また、上記の実施の形態では、電池室10の上部にガス開放室4が設けられているが、ガス開放室4の位置は、電池室10に対して側方や下方に設けられてもよい。
また、上記の実施の形態では、電池セル2が3行4列に配列されているが、このほか形態に配列されていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 電池パック
2、2A、2B 電池セル
3 ケース(筐体)
4 ガス開放室
5 密閉容器
7 ガス排出口
10 電池室
11 仕切板
12 ガス流入口
14 ブローアウト弁(一方向弁)
15 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを収容する筐体と、
該筐体内に前記電池セルを収容する空間に対して分離して設けられ、前記電池セルを構成する密閉容器がそれぞれ連結されたガス開放室と、
前記ガス開放室と前記密閉容器との間に設けられて、前記密閉容器内が前記ガス開放室内より高圧となったことを条件として開放される一方向弁と、
前記ガス開放室を外気と連通させる排気管とを備えることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池セルは、所定の平面上に行列状に配列されており、前記ガス開放室は、前記平面より上方の他の平面上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記ガス開放室は、六面体状をなし、前記排気管が前記六面体のいずれかの面に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−175844(P2011−175844A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38808(P2010−38808)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】