説明

電池モジュール加圧スペーサ

【課題】電池セルに適した加圧特性を発揮しうる電池モジュール加圧スペーサを提供すること。
【解決手段】厚さ方向に積層される板状の電池セルの間に介在させて電池セルを加圧するための可撓性の電池モジュール加圧スペーサ1であって、少なくとも一対の加圧板10、11と、一対の加圧板10、11の間に配設されたバネ部2とを有し、バネ部2は、伸縮方向と直交する方向に突出した略C字状を呈する曲面部23と、曲面部23の両端に配置された固定端部21、22とを有する薄板バネ2を複数備えて構成されており、加圧板10、11の内面には、薄板バネ2の固定端部21、22を挿入して保持するためのバネ保持部12が設けられており、2枚の加圧板10、11の間隔を減少させて所定量圧縮した場合のバネ部2のばね定数が、自然長近傍のばね定数よりも小さくなるという非線形特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール加圧スペーサ及びこれに用いる板バネに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池、キャパシタ等の電気の蓄積及び放出が可能な電池セルは、板状に形成され、これを複数枚組み合わせて大容量化した電池モジュールを構成する場合がある(特許文献1、2参照)。
この場合に、各電池セルの性能を十分に発揮させるためには、反応時に変動が少なく安定した加圧力で加圧し続けることが有効であることが知られている。また、反応時の発熱による高温化を抑えるべく冷却することも有効であるといわれている。
【0003】
そのため、複数枚の電池セルを積層して電池モジュールを構成する場合には、各電池セル同士の間にスペーサを介在させ、適度な加圧と冷却の機能を追加することが好ましいと考えられる。また、加圧特性としては、電池セルが膨張収縮を繰り返しても変動が少ない安定した加圧力を付与し続けることができるような特性とすることが好ましい。つまり、加圧時の反力がほぼ一定になる非線形ばね定数の特性(ばねの反力が変位に比例せず、スペーサとして使用する加圧力の範囲で変位がある程度増加するとばね定数が低下する特性)を有するスペーサを用いることが好ましい。
【0004】
しかしながら、現在のところ、比較的簡単な構成で電池セルに適した加圧特性を発揮しうるスペーサは、未だ開発されていないと言える。
例えば、特許文献1に示される構成は、ベローズ圧力調整装置を備えた複雑なもので、その制御も単純ではない。
また、特許文献2に示されている皿バネは、一応非線形特性を発揮するものの、皿バネを支持するバネ保持具との間で力の作用点をずらしながら変位する。したがって、皿バネを変位させる場合には、作用点をずらす際の摩擦力によって、ヒステリシスが発生することを避けられない。この摩擦ヒステリシスは、繰り返し安定した加圧力を得るための妨げとなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開平10−261426号公報
【特許文献2】特開2001−167745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、比較的簡単な構成でヒステリシスが少ない非線形特性を発揮して、電池セルに適した加圧特性を発揮しうる電池モジュール加圧スペーサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さ方向に積層される板状の電池セルの間に介在させて当該電池セルを加圧するための可撓性の電池モジュール加圧スペーサであって、
少なくとも一対の加圧板と、該一対の加圧板の間に配設されたバネ部とを有し、
該バネ部は、伸縮方向と直交する方向に突出した略C字状を呈する曲面部と、該曲面部の両端に配置された固定端部とを有する薄板バネを複数備えて構成されており、
上記加圧板の内面には、上記薄板バネの上記固定端部を挿入して保持するためのバネ保持部が設けられており、
上記2枚の加圧板の間隔を減少させて所定量圧縮した場合の上記バネ部のばね定数が、自然長近傍のばね定数よりも小さくなるという非線形特性を示すことを特徴とする電池モジュール加圧スペーサにある(請求項1)。
【0008】
本発明の上記電池モジュール加圧スペーサを構成する薄板バネは、上記固定端部の間に上記略C字状を呈する曲面部を有している。この曲面部は、薄板バネに圧縮力が付与されて変位した場合に、内部の空間が減少して潰れるように変形する。このような変形を伴って加圧力が発揮されるので、上記薄板バネは、自然状態からの変位が進んで荷重が高い側に変位してからばね定数が低下し、たわみ量の増加に対する荷重の増加が小さくなってくるという、非線形特性が現れる。
このよう非線形特性を有する薄板バネを、上記特定の方向に配置して2枚の加圧板の間に挟み込むこんで本発明の電池モジュール加圧スペーサを構成した。これにより、この電池モジュール加圧スペーサの加圧板に加圧すべき電池セルを当接させてある程度高い荷重を付与した状態で使用した場合には、電池セルが膨張収縮等の変位を繰り返しても、電池セルに対して変動が少ない安定した加圧力を付与し続けることができる。これにより、比較的簡単な構成で、電池セルの特性を十分に発揮させることができる電池モジュールを得ることができる。
【0009】
特に、上記構成によって、薄板バネと加圧板との力の作用点は、上記バネ保持部の位置でほぼ固定され、皿バネの場合のように作用点をずらすことを前提とした伸縮は必要ない。そのため、皿バネの場合のような摩擦によるヒステリシスは生じず、全体としてヒステリシスの少ない特性を得ることができる。
【0010】
なお、上記薄板バネが上述した非線形特性を発揮する理由は、変位が進むにつれて上記曲面部が加圧方向と直交する方向に突出する寸法が増大することと関係がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の上記薄板バネを構成する材料としては、例えば、ステンレス薄板、ハード鋼など、様々なばね鋼を用いることができる。
また、上記加圧板は、適度な剛性が備わっていれば特に材質は問わないが、少なくともその内面に上記薄板バネの上記固定端部を挿入して保持するためのバネ保持部を設ける。このばね保持部は、加圧板の内面に凹部を設けてその内部を上記ばね保持部とする構成としてもよいし、一対の突起部を形成してその間を上記ばね保持部とする構成としてもよい。
【0012】
また、上記バネ部は、2個の上記薄板バネを、互いの上記曲面部を反対方向に向けてその凹所を対面させると共に両端の上記固定端部をそれぞれ対面させて配置してなる状態を一組として、これを複数組備えて構成されており、上記加圧板の上記各バネ保持部には、対面させた上記固定端部を揃えて挿入してあることが好ましい(請求項2)。
上記各薄板バネを、それぞれ1個ずつ独立して上記バネ保持部に保持させてももちろんよいが、上記のごとく2個の薄板バネを対面させて一組とすることにより、上記バネ保持部の数を半減させることができる。
【0013】
また、上記薄板バネの上記固定端部は、少なくとも上記曲面部と繋がる部分が、上記曲面部よりも曲率半径が小さく該曲面部と反対方向に湾曲した曲面形状を呈していることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記固定端部における上記曲面部と繋がる部分が直線的に屈曲している場合に比べて、上記曲面部と反対方向に湾曲した曲面形状で繋がることによって境界部分を滑らかにすることができ、応力集中を抑えて上記の非線形特性をより確実に実現することができる。また、上記固定端部全体が曲面形状であってもよいし、上記曲面部と繋がる部分だけ曲面形状であってそれよりも端部側を滑らかに直線状に繋げてもよい。
【0014】
また、上記一対の加圧板は、その間隔が上記バネ部が自然状態よりも所定量縮んだ状態となる間隔以上に拡がらないよう規制するための間隔規制部を有していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記加圧板に挟持されたバネ部が、上記間隔規制部の作用によって所定量縮んでいる。そのため、このような電池モジュール加圧スペーサを用いた場合には、その縮ませた量を適切に調整しておくことによって、反力の大きさを容易に使用範囲に設定することができ、安定した使用状態が容易に得られる。なお、上記間隔規制部の構成は、上記一対の加圧板の間隔を狭めることはできるが、所定量以上に広げることができないような作用が得られれば様々な構成を採用することができる。
【0015】
また、上記薄板バネの自然状態における上記曲面部の加圧方向の中央部の板厚t1と曲率半径Rとは、R/t1が十分に大きい状態にする必要がある。板厚t1の絶対値としては、実用的には0.05〜2mmといういわゆる薄板の範囲とすることが好ましい。また、上記曲面部の曲率半径Rは、上記板厚t1のおよそ50倍以上程度の十分に大きい半径とすることが好ましい。
なお、上記板厚t1と曲率半径Rとは、要求される加圧特性に応じて変更可能である。
【0016】
また、上記薄板バネの上記曲面部は、その加圧方向の中央部が最も板厚が大きくなるように板厚寸法が変化していることが好ましい(請求項5)。この場合には、荷重がかかったときの応力の発生をバネ全体に平均化することが可能となるという効果が得られる。また、最も板厚が大きい部分である中央部の板厚をt1、曲面部の加圧方向両端近傍の板厚をt0とした場合、t1/t0は1.1〜2.5の範囲とすることが好ましい。この範囲の下限を下回った場合には、中央部の板厚を大きくすることによる上記効果が十分に得られないおそれがあり、一方、この範囲の上限を超える場合には、薄板バネ製造時の加工コストが増大するおそれがある。
【0017】
また、本発明の電池モジュール加圧スペーサは、それ自体が電池セルからの伝熱を受けて放熱することができ、電池セルの冷却機能も発揮する。
特に、上記一対の加圧板の間の間隙は、冷却媒体が流通可能なように液密構造になっていることが好ましい(請求項6)。この場合には、冷却媒体を積極的に流通させることによって、電池セルの冷却をより効率よく行うことができる。
【0018】
また、電池モジュール加圧スペーサにおいては、上記複数の薄板バネは、その上記加圧方向と直交する方向である長手方向の向きの配列が、少なくとも一部の上記薄板バネが他のものと互いに平行とならないよう配置されていることが好ましい(請求項7)。後述する実施例1のように、複数の薄板バネの長手方向の向きの配列をすべて略平行とすることも可能であるが、敢えて、その一部を互いに平行とならないように配置することが構造安定性が高まる。即ち、すべての薄板バネの長手方向の向きが平行の場合には、伸縮時に長手方向と直交する方向へバネが傾き、上下の加圧板が左右にずれる現象が生じる場合がある。これは、加圧板同士の移動可能域を上下方向(積層方向)だけに制限する構造にすれば解決可能ではあるが、上記のごとくバネの配列に非平行な部位を設けることによって、容易に左右のずれを防止することが可能となる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例に係る電池モジュール加圧スペーサにつき、図1〜図4を用いて説明する。
本例の電池モジュール加圧スペーサ1は、図1、図2に示すごとく、少なくとも一対の加圧板10、11と、該一対の加圧板10、11の間に配設されたバネ部20とを有する。バネ部20は、伸縮方向(矢印Y方向)と直交する方向に突出した略C字状を呈する曲面部23と、該曲面部23の両端に配置された固定端部21、22とを有する薄板バネ2を複数備えて構成されている。加圧板10、11の内面には、上記薄板バネ2の上記固定端部21、22を挿入して保持するためのバネ保持部12が設けられている。そして、2枚の加圧板10、11の間隔を減少させて所定量圧縮した場合の上記バネ部20のばね定数が、自然長近傍のばね定数よりも小さくなるという非線形特性を示す。
以下、さらに詳説する。
【0020】
本例の電池モジュール加圧スペーサ1(以下、適宜単に加圧スペーサ1という)を適用する電池モジュール7は、図3に示すごとく、厚み方向(矢印Y方向)に積層される複数の電池セル8を上下左右の天板71、底板72、及び2枚の側板73、74により囲んだハウジング内に収容したものである。そして、各電池セル8の間には、上記加圧スペーサ1が介在されており、これらの加圧スペーサ1に荷重が付与された状態、すなわち所定量厚みを減少させた状態で上記ハウジング内に収容されている。これにより、加圧スペーサ1内のバネ部20に付与された荷重は、加圧力として上記各電池セル8に作用した状態となる。
【0021】
上記加圧スペーサ1は、図1に示すごとく、加圧板10、11とバネ部20とより構成されている。
同図に示すごとく、本例のバネ部20は、2個の上記薄板バネ2を、互いの上記曲面部23の凹所を対面させると共に両端の上記固定端部21、22をそれぞれ対面させて配置してなる状態を一組として、これを複数組備えて構成されている。本例では4組でバネ部20を構成した。
また、同図に示すごとく、上記加圧板10、11の上記各バネ保持部12には、対面させた上記固定端部21、22を揃えて挿入してある。
【0022】
各薄板バネ2は、図2に示すごとく、上記固定端部21、22の厚み及び曲面部23の両端近傍の板厚をt0及び中央部230の板厚t1がいずれも0.11mmであり、全長一定の厚みとしてある。また、自然状態における曲面部23の加圧方向の寸法Aは10mmであり、加圧方向に直交する寸法Bは3.4mmであり、B/Aが0.28となり、自然状態における上記曲面部23の中央部の曲率半径Rは15mmであり、t1/Rが0.007となるように形成されている。また、薄板バネ2の長さLは100mmとした。
【0023】
また、同図に示すごとく、上記薄板バネ2の固定端部21、22は、上記曲面部23と繋がる部分を含め端部までが、曲面部23よりも曲率半径が小さく該曲面部23と反対方向に湾曲した曲面形状を呈している。
上記固定端部21、22の曲率半径R2は3mmとし、上記曲面部23の曲率半径Rよりも小さくした。
【0024】
加圧板10、11は、図1に示すごとく、いずれも略コ字状の断面形状を有しており、その内面に上記バネ保持部12がそれぞれ設けられている。バネ保持部12は、加圧方向に窪むように設けられており、上記バネ部20を構成する上記の組の数だけ(本例では4つ)設けられている。また、加圧板10、11の幅方向両端は、互いに対面して可撓性の(反力が実質的に生じない)シール材16を挟持する屈曲部106、116を有している。
【0025】
本例では、上記各薄板バネ2が自然長の状態に対応する間隔となるように上記加圧板10、11の間隔を調整してある。したがって、上記電池モジュール加圧スペーサ1によって電池セルに加圧力を加える場合には、上記シール材16がある程度押し潰された状態となるように加圧板10、11の間隔を狭めて、各薄板バネ2を圧縮した状態で使用することとなる。
【0026】
ここで、上記薄板バネ2のバネ特性を、イメージ化して図4に示す。同図は、横軸に薄板バネ2の圧縮方向のたわみ(変位)δを、縦軸に荷重Pを取ったものである。同図より知られるごとく、薄板バネ2のバネ特性は、点aを超えてからばね定数が低下し、たわみδの増加に伴う荷重Pの増加割合(ばね定数)が、点aよりもたわみδが小さい領域よりも小さくなっている。そして、本例では、上記点aよりもたわみδが大きい領域において加圧するよう使用することによって、電池モジュール加圧スペーサ1によって加圧する電池セルが例えば膨張収縮して変位が生じても、この電池セルに付与される加圧力(荷重P)の変動を小さく抑えることができる。
また、本例の電池モジュール加圧スペーサ1は、薄板バネ2と加圧板10、11との力の作用点がバネ保持部12の位置でほぼ固定され、皿バネの場合のように作用点をずらすことを前提とした伸縮は必要ない。そのため、皿バネの場合のような摩擦によるヒステリシスは生じず、全体としてヒステリシスの少ないものとなる。
このように、本例の電池モジュール7においては、上記電池モジュール加圧スペーサ1が非線形特性を発揮するので、電池セル8が膨張収縮を繰り返しても安定した加圧力を付与し続けることができ、電池セル8の特性を十分に発揮させることができる。
【0027】
(実施例2)
本例は、図5に示すごとく、実施例1における一対の加圧板10、11の幅方向両端の構造を変更して、互いに係合する間隔規制部18を設けた。間隔規制部18は、各加圧板10、11の幅方向両端に設けた略L字状の係合部180、181を互いに係合させて構成されている。そして、加圧板10、11の間隔は、同図(a)に示すごとく、上記バネ部20が自然状態よりも所定量縮んだ状態に規制されて、それ以上拡がらないようになっている。実際の使用時には、同図(b)に示すごとく、間隔規制部18の係合部180と係合部181との間に間隙185が形成されるように、加圧板10、11の間隔を狭くして、加圧板10、11に接触する電池セル8に対して所定の加圧力が加わる状態で使用される。
【0028】
この場合には、予め薄板バネを所定量縮ませているので、その縮ませた量を適切に調整しておくことによって、反力の大きさを容易に使用範囲に設定することができ、安定した使用状態が容易を得ることができる。
その他は、上記実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0029】
(実施例3)
本例は、図6に示すごとく、実施例1におけるバネ部20のように2個の薄板バネ2を一組として扱うのではなく、1個ずつそれぞれの薄板バネ2を独立して加圧板10、11間に配設した例である。つまり、各バネ保持部12には、1個の薄板バネ2の固定端部21、22のみが挿入されている。
【0030】
また、同図に示すごとく、本例では加圧板10、11の幅方向中心を境として、その右側に位置する各薄板バネ2の配設方向を曲面部23が右側(外方)に突出するようにし、幅方向中心よりも左側を反対側に向けて配置した。これにより、同図に示すごとく、左右対称で、かつ、各薄板バネ2の間隔を狭くすることができ、コンパクト化を図ることができる。その他は実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0031】
(実施例4)
本例は、図7に示すごとく、実施例1〜3における加圧板10、11に設けるバネ保持部12の構成を変更した例である。
同図(a)に示す例は、加圧板10、11の内面側に略U字状の別部材121をその開口部側が内方に向くように接合してバネ保持部12を形成した例である。
同図(b)に示す例は、加圧板10、11の内面側に角溝122を掘ることによりバネ保持部12を形成した例である。
同図(c)に示す例は、加圧板10、11の内面側に別部材123を間隔を空けて接合し、その間隙部をバネ保持部12とした例である。
いずれの場合にも、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0032】
(実施例5)
本例は、上記実施例1〜4又はその他の構成に適用可能な本発明の薄板バネについて、そのバネ特性を評価する実験を行った。
薄板バネとして、基本的に実施例1に示した形状及び寸法を有し、伸縮方向(Y方向)の全長M(平板状に延ばした場合の長さ)を変更したものを準備して比較した。また、バネ保持部12に挿入した一対の固定端部21、22を接着剤によって最初に固定した場合と固定しなかった場合で比較した。
【0033】
具体的に説明すると、準備した薄板バネは3種類(試料E1〜E3)であり、試料E1は長さMを16.25mmとし、試料E2とE3は長さMを16.75mmにした。その他の寸法及び形状はいずれも実施例1と同様とした。
各薄板バネは、実施例1と同様の加圧板10、11に挟持して試験材とした。また、試料E2は、バネ保持部12に挿入した一対の固定端部21、22を挿入したままで固定はしなかったが、試料E1とE3は、接着剤によって実験前に固定した。
【0034】
実験は、自然長の状態からの圧縮変位量に対する反力の大きさを求め、ばね定数を算出するよう行った。圧縮方向の変位(荷重)の付与は摩擦を極力排除したネジ式ジャッキを用いて行った。距離の測定はダイヤルゲージを用いて行い、荷重の測定は電気式荷重計を用いて行った。
実験結果を図8に示す。同図は、横軸に圧縮方向の変位量(mm)を、縦軸にばね定数(kg/mm2)を取ったものである。各試料は、符号E1〜E3としてプロットした。
【0035】
図8から知られるごとく、いずれの薄板バネ(試料E1〜E2)も変位量が所定量を超えたあたりから低下することがわかる。また、試料E1と試料E3との比較から、伸縮方向の長さMが狭いほどばね定数が大きいこともわかる。また、試料E2と試料E3との比較から、固定部21、22をバネ保持部12内で固定した方がばね定数が大きくなることもわかる。
【0036】
(実施例6)
本例では、実施例1のバネ構造体1における各薄板バネ2の長手方向の向きの配列を変更した例を示す。
図9(a)は、実施例1の電池モジュール加圧スペーサ1における各薄板バネ2の長手方向の方向Zを示した図である。同図に示すごとく、この例では、4組の薄板バネ2の長手方向の方向Zがすべて平行となっている。
これに対して、図9(b)(c)は、少なくとも一部の上記薄板バネが他のものと互いに平行とならないよう配置されている例である。
【0037】
図9(a)に示すごとく、すべての薄板バネ2の長手方向の向きZが平行な場合には、薄板バネ2の長手方向と直交する方向Xの方向にバネが傾き、上下の加圧板が左右にずれる現象が生じるおそれがある。この場合には、加圧板同士の移動可能域を上下方向(積層方向)だけに制限する構造にすれば解決可能ではあるが、その分、加圧板の構造が複雑になると共に摩擦対策を行う必要がある。
これに対し、図9(b)、(c)の場合には、薄板バネ2の存在によってそのような左右のずれを防止することが可能となるのでより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1における、電池モジュール加圧スペーサの構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、薄板バネの構成を示す説明図。
【図3】実施例1における、電池モジュールの構成を示す説明図。
【図4】実施例1における、薄板バネのバネ特性のイメージを示す説明図。
【図5】実施例2における、電池モジュール加圧スペーサの構成を示す説明図。
【図6】実施例3における、電池モジュール加圧スペーサの構成を示す説明図。
【図7】実施例4における、加圧板のバネ保持部の構成を示す説明図。
【図8】実施例5における、変位量とばね定数との関係を示す説明図。
【図9】実施例6における、薄板バネの長手方向の方向の配置を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
1 電池モジュール加圧スペーサ
10、11加圧板
12 バネ保持部
2 薄板バネ
21、22 固定端部
23 曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層される板状の電池セルの間に介在させて当該電池セルを加圧するための可撓性の電池モジュール加圧スペーサであって、
少なくとも一対の加圧板と、該一対の加圧板の間に配設されたバネ部とを有し、
該バネ部は、伸縮方向と直交する方向に突出した略C字状を呈する曲面部と、該曲面部の両端に配置された固定端部とを有する薄板バネを複数備えて構成されており、
上記加圧板の内面には、上記薄板バネの上記固定端部を挿入して保持するためのバネ保持部が設けられており、
上記2枚の加圧板の間隔を減少させて所定量圧縮した場合の上記バネ部のばね定数が、自然長近傍のばね定数よりも小さくなるという非線形特性を示すことを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項2】
請求項1において、上記バネ部は、2個の上記薄板バネを、互いの上記曲面部を反対方向に向けてその凹所を対面させると共に両端の上記固定端部をそれぞれ対面させて配置してなる状態を一組として、これを複数組備えて構成されており、上記加圧板の上記各バネ保持部には、対面させた上記固定端部を揃えて挿入してあることを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記薄板バネの上記固定端部は、少なくとも上記曲面部と繋がる部分が、上記曲面部よりも曲率半径が小さく該曲面部と反対方向に湾曲した曲面形状を呈していることを特徴とする非線形特性を有する電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記一対の加圧板は、その間隔が上記バネ部が自然状態よりも所定量縮んだ状態となる間隔以上に拡がらないよう規制するための間隔規制部を有していることを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記薄板バネの上記曲面部は、その加圧方向の中央部が最も板厚が大きくなるように板厚寸法が変化していることを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記一対の加圧板の間の間隙は、冷却媒体が流通可能なように液密構造になっていることを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記複数の薄板バネは、その上記加圧方向と直交する方向である長手方向の向きの配列が、少なくとも一部の上記薄板バネが他のものと互いに平行とならないよう配置されていることを特徴とする電池モジュール加圧スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−170140(P2009−170140A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4266(P2008−4266)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(595097841)愛鋼株式会社 (3)
【出願人】(000133065)株式会社タケヒロ (16)
【Fターム(参考)】