説明

電池劣化均等化システムおよび方法

【課題】電動車両などの車両において電池を使い切った状態で電池交換を行うことを可能とした電池劣化均等化システムを提供することである。
【解決手段】提案する電池劣化均等化システムは、複数個の電池セルが直列または直並列に接続された電池ブロック部が着脱可能に備えられる。このシステムは、前記電池ブロック部の各電池セルの電流および電圧を監視する電池監視部16と、前記電池監視部16からの電流および電圧を基に、前記各電池セルの内部抵抗値を算出し、算出された各電池セルの内部抵抗値を基に前記各電池セルが目標とする電圧値を設定し、前記設定された電圧値に向けて充放電を制御する電池制御部18と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などの車両に搭載される電池システムに関し、特に、その電池システムにおける電池劣化均等化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両などの車両では組電池(電池パック)が電源として使用されている。
以下では、電池セル(単電池)を複数個集めて電池ブロックとし、電池ブロックを複数個集めて電池パックと定義する。
【0003】
電池パックの一部である電池ブロックが充放電を繰り返すことで劣化すると、その劣化した電池ブロックを取り替えることになる。このとき、その電池ブロックを構成するそれぞれの電池セルに注目すると、全ての電池セルが劣化している訳ではなく、一部の電池セルの劣化が電池パック全体の劣化として表出する。したがって、取り替える電池ブロック内には、1個1個ではまだ使用可能な電池セルがいくつも含まれていることになり、非常に不経済である。
【0004】
関連技術として、特許文献1には、電池交換に先立って、新しい電池モジュールを、交換対象の電池モジュール以外の電池モジュールの充電電気量よりも低く充電することで、組電池の電池モジュールの交換後に、均等処理などの特別な処理を施すことなく、組電池全体としての性能を最大限に発揮できる二次電池の交換方法が示されている。
【0005】
また、特許文献2には、組電池のSOC(充電状態)検出値を求め、これを所定のSOC目標値に収束させるSOC一定制御を行なうとともに、容量バラツキが所定値を超えた場合には、SOC検出値を所定のレートで減少させて均等充電を行なうことで、車両走行時でも組電池の容量バラツキの解消が可能なハイブリッド車の電池制御装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−185915号公報
【特許文献2】特開2002−204538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、電動車両などの車両において電池を使い切った状態で電池交換を行うことを可能とした電池劣化均等化システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
提案する第1の電池劣化均等化システムは、複数個の電池セルが直列または直並列に接続された電池ブロック部が着脱可能に備えられる。この第1のシステムは、前記電池ブロック部の各電池セルの電流および電圧を監視する電池監視部と、前記電池監視部からの電流および電圧を基に、前記各電池セルの内部抵抗値を算出し、算出された各電池セルの内部抵抗値を基に前記各電池セルが目標とする電圧値を設定し、前記設定された電圧値に向けて充放電を制御する電池制御部と、を有する。そして、内部抵抗の低い(劣化度の低い)前記電池セルを選択して劣化を進ませ、前記電池ブロック部を構成する前記各電池セルが均一に劣化が進むように制御する。
【0009】
提案する第2の電池劣化均等化システムは、第1の電池劣化均等化システムにおいて、前記電池制御部が、前記電池監視部で取得した前記各電池セルの電流および電圧を収集するセル電圧電流収集部と、収集された前記電流および電圧を基に前記各電池セルの内部抵抗値を算出する抵抗算出部と、充放電の電圧値の目標値のバラツキ範囲を示す値が所定の閾値以上であったときに、前記各電池セルの内部抵抗値の平均値以下の内部抵抗値を持つ電池セルに対し、充電の目標とする電圧値を基準値から上げて設定するとともに、放電の目標とする電圧値を基準値から下げて設定する目標電圧設定部と、設定された充放電の目標とする各電圧値で、前記電池ブロック部の各電池セルに対する充放電を制御する充放電部と、を有するものである。
【0010】
なお、以下の実施形態において、電池監視部は、図2の電池監視部16に対応する。抵抗算出部は、図4のCPU61、電池セル情報テーブル72、および電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム76の組み合わせに対応する。目標電圧設定部は、CPU61、および電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム76の組み合わせに対応する。充放電部は、図4の充電制御部67と放電制御部68の組み合わせに対応する。
【発明の効果】
【0011】
提案する第1の電池劣化均等化システムでは、内部抵抗の低い(劣化度の低い)電池セルを選択して劣化を進ませ、電池ブロック部を構成する各電池セルが均一に劣化が進むように制御している。よって、交換予定の電池ブロックにおいて、劣化が進んでいない電池セルの劣化度合いを、劣化が進んでいる電池セルに追いつかせて、交換予定の電池ブロックにおいて、ほぼ全ての電池セルが劣化した状態での電池ブロックの交換が可能となり、使い切っていない電池セルをいくつか含む形での不経済な電池ブロックの交換を回避することができる。
【0012】
提案する第2の電池劣化均等化システムでは、電池セル間で劣化バラツキがある交換予定の電池ブロックにおいて、内部抵抗値が平均値以下で劣化が進んでいない電池セルについて、目標とする電圧値の範囲を広げることで、その内部抵抗値が平均値以下の電池セルの劣化を進ませている。よって、交換予定の電池ブロックにおいて、劣化が進んでいない電池セルの劣化度合いを、劣化が進んでいる電池セルに追いつかせて、交換予定の電池ブロックにおいて、ほぼ全ての電池セルが劣化した状態での電池ブロックの交換が可能となり、使い切っていない電池セルをいくつか含む形での不経済な電池ブロックの交換を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電池パックを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電池劣化均等化システムを示す図である。
【図3】図2の電池部を示す図である。
【図4】図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部を示す図である。
【図5】電池ブロック情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【図6】電池セル情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【図7】電池セル毎のSOC(充電状態)の目標値の設定処理のフローチャートである。
【図8】図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部の充電時の関連部分を示す図である。
【図9】図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部の放電時の関連部分を示す図である。
【図10】図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部の充放電時の関連部分(変形例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、電池パックを示す図である。
図1に示すように、電池セル(単電池)複数個(ここでは、4個)を直列(あるいは並列)に接続して電池ブロックが構成され、その電池ブロックが複数個(ここでは2個の電池ブロック4、8)が集まって電池パック1が構成される。この電池パック1内の電池セルの劣化が進んだ場合、電池ブロック毎に交換可能となっている。
【0015】
電池ブロック4は、4個の電池セル5−1、5−2、5−3、5−4が直列に接続されて構成され、電池ブロック8は、4個の電池セル9−1、9−2、9−3、9−4が直列に接続されて構成される。
【0016】
各電池セルは使用するほど劣化が進むが、図1では、電池セル9−1、9−2、9−4が劣化が進んだ電池セルであり、残りが劣化が進んでない通常の電池セルである。
本実施形態では、複数の電池ブロックのうちから所定のロジックに基づいて、交換予定の電池ブロックを指定し、その交換予定の電池ブロック内の各電池セルについて必要な調整を行うものである。例えば図1では、劣化が進んでいる電池セルを多く含んでいるので、電池ブロック8が交換予定の電池ブロックとして指定される(指定方法の詳細は後述する)。
【0017】
図2は、電動車両などの車両に搭載される、本発明の一実施形態に係る電池劣化均等化システムを示す図である。
図2に示すように、電池劣化均等化システムは、負荷11、充電装置12、電池パック13、電池部15、電池監視部16、電池制御部18、走行制御部19、充電か放電かに応じて切り替わるリレー等のスイッチ21、を有する。
【0018】
電池部15は、複数の電池ブロックを含み、それぞれの電池ブロックは複数の電池セルが例えば直列(並列でもよい)に接続されて構成される。電池監視部16は、電池部15内の各電池セルの電流、電圧を監視(測定)し、一定間隔で、測定結果の電流、電圧を電池制御部18に通知する。
【0019】
電池制御部18は、電池パック13を制御する。具体的には、充放電のために、電池パック13の各電池セルの電圧を収集して、関連ユニット(図4の電池セル情報テーブル72、図8、図9の測定電圧発生回路134、154)に設定し、充電や放電の目標とする電圧値設定のために、電池パック13の各電池セルの電流・電圧を収集して、各電池セルの内部抵抗を求め、充電装置12による電池パック13への充電を実行し、電池パック13から負荷11への放電を実行する。
【0020】
図3は、図2の電池部を示す図である。
図3では、電池部15は、4個の電池ブロック25−1、25−2、25−3、25−4を有する。各電池ブロックは、スイッチ27−1、27−2、27−3、27−4と、6個の電池セルを有している。
【0021】
各スイッチは、電池に異常が生じた場合や車両整備時に切断される。
図4は、図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部を示す図である。図2で分けられていた電池部と電池監視部はこの図4では一体化されている。
【0022】
図4に示すように、電池ブロック30は、スイッチ31と、直列に接続された複数の電池セル(ここでは、6個の電池セル34、35、36、37、38、39)を有する。
また、電池制御部18は、CPU61と、セル電圧・電流収集部62と、メモリ64と、充電制御部67と、放電制御部68と、を有する。
【0023】
メモリ64には、電池ブロック情報テーブル71、電池セル情報テーブル72、OCV(open circuit voltage:開回路電圧)−CCV(closed circuit voltage:閉回路電圧)対応表データ73、SOC(state of charge:充電状態)−OCV対応表データ74、交換予定ブロック設定プログラム75、電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム76が格納されている。
【0024】
交換予定ブロック設定プログラム75と、電池セル目標SOC範囲設定プログラム76とは、同時には動作しない。
一方、電池セル目標SOC範囲設定プログラム76と、セル電圧・電流収集部62とは非同期で動作する。
【0025】
SOC(充電状態)は、電池セルの残容量/全容量×100(単位:%)で定義される。SOCの上限値は、それ以上充電すると過充電になる値であり、SOCの下限値はそれ以下まで放電すると過放電になる値である。この下限値と上限値の間の範囲を電池セルの使用範囲と呼ぶ。一般に知られているように、電池セルは充放電を繰り返し、劣化度合いが進むと、過充電になる上限値が小さくなるとともに、過放電になる下限値が大きくなる。すなわち、使用範囲が狭まる。劣化が進むと、電池セルの内部抵抗が大きくなる。
【0026】
すなわち、閾値(固定値)を予め定めておいて、電池セルの内部抵抗を求め、それが閾値より大きいかどうかによって、電池セルの劣化度合いを判断することができる。
電池セルの内部抵抗Rを求めるために、電池セルを流れる電流Iと電池セルの電圧Vを測定する(R=V/I)。
【0027】
図4では、電池セル34、35、36、37、38、39の電圧を求めるのに、電圧センサ51、52、53、54、55、56をそれぞれ用いる。
1度には1つの電池セルについて電圧を求める。例えば、電池セル34の電圧を求める場合、セル電圧・電流収集部62は、スイッチ41−1、41−2のみを導通させ、残りのスイッチ42−1、・・・、46−2を非導通させるような信号を出力する。
【0028】
電流については、電流センサ33での測定値を各電池セルで兼用する。
測定結果の電流、電圧については、電池セル情報テーブル72の該当する項目に設定される。また、測定結果の電圧については、充電制御部67や放電制御部68のセル毎に設けられた測定電圧発生回路(後述)にもそれぞれ設定される。
【0029】
交換予定ブロック設定プログラム75は、電池パック13が備える複数の電池ブロックのうちで、交換予定の電池ブロックを1つだけ決める処理を実行するプログラムである。電池ブロック情報テーブル71は、図5に示すように、電池ブロックを識別するための電池ブロック番号と、交換予定フラグとの項目を有するテーブルである。ここでは、交換予定フラグは、交換予定である電池ブロックに対しオン(値“1”)に設定され、交換予定でない電池ブロックに対しオフ(値“0”)に設定される。
【0030】
交換予定ブロック設定プログラム75は、各電池ブロックについて、その電池ブロック内の各電池セルの内部抵抗のバラツキ(内部抵抗の最大値と最小値の差)を算出し、それが予め定められた閾値以上の電池ブロックのうちから、交換予定の電池ブロックを算出(決定)する。すなわち、バラツキが閾値以上の電池ブロックに対しては、後述するように、電池セル毎に目標とするSOC範囲(電圧範囲)の調整を行い、バラツキが閾値より小さい電池ブロックに対しては、電池セル毎に目標とするSOC範囲(電圧範囲)の調整を行わない。
【0031】
電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム76は、交換予定の電池ブロックに対し、その交換予定の電池ブロック内の各電池セルの目標とするSOC範囲(電圧範囲)の調整を行い、その結果を、電池セル情報テーブル72に格納する。
【0032】
図6に示すように、電池セル情報テーブル72は、電池ブロック番号、電池セル番号、測定電流、測定電圧、内部抵抗、目標SOC(下限)、目標SOC(上限)、目標電圧(下限)、目標電圧(上限)、の各項目を有する。
【0033】
測定電流、測定電圧は、セル電圧・電流収集部62が収集した該当行の電池セルに対する電流、電圧の測定値である。
内部抵抗は、測定電圧/測定電流、である。
【0034】
目標SOC(下限)は、それ以下が使用しない領域となる値を示している。目標SOC(上限)は、それ以上が使用しない領域となる値を示している。
目標電圧(下限)は、目標SOC(下限)に対応する放電時の目標電圧値である。目標電圧(上限)は目標SOC(上限)に対応する充電時の目標電圧値である。
【0035】
例えば、後述の図7のステップS1、S4、および、S6で、SOC範囲を設定またはリセットした後に、その設定またはリセットされたSOC範囲に対応する目標電圧範囲を求める方法を以下に説明する。
【0036】
車両走行中には、電池セルに対する電圧を測定した場合、CCV(閉回路電圧)が測定される。SOCとOCV(開回路電圧)との関係を測定して、SOC−OCV対応表データ73として、メモリ64に格納し、OCVとCCVの関係との関係を測定して、OCV−CCV対応表データ74として、メモリ64に格納しておくことで、SOCから対応するCCVを求めることができる。
【0037】
もっとも、走行中でない場合は、OCVが測定できるので、SOC−OCV対応表データ73のみで、目標電圧(下限、上限)は求められる。また、本実施形態のように、目標SOC(下限、上限)の基準値、目標SOCを広げた場合の値(下限、上限)が固定値として既知の場合は、予め、それぞれの目標SOCに対応するOCVやCCVを事前に求めておき、メモリ64に格納しておいてもよい。
【0038】
図7は、電池セル毎のSOC(充電状態)の目標値の設定処理のフローチャートである。
このフローチャートの処理は、電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム76がCPU61により実行される(一定周期で起動される)ことで、実行される。
【0039】
図7のステップS1で、CPU61は、図5の電池ブロック情報テーブル71を参照して、交換予定の電池ブロックの電池ブロック番号を取得する。そして、CPU61は、電池セル情報テーブル72を参照して、電池ブロック番号の項目に設定された値が、取得した電池ブロック番号(ここでは、“1”)に一致するレコード(行)について、SOC(充電状態)の範囲(下限、上限)を広げる。ここでは、SOC範囲の基準値を(10%、90%)とし、1回広げる毎に範囲が5%(下限値が−2.5%、上限値が+2.5%)広げるものとする。また、目標とする電圧範囲も広げる。
【0040】
このステップS1の処理結果としては、10%−90%であったSOC範囲が、7.5%−92.5%に広げられることになる。
続く、ステップS2では、交換予定の電池ブロック内の各電池セル劣化状態を推定すべく、各電池セルの内部抵抗を算出する。具体的には、CPU61は、電池セル情報テーブル72を参照して、電池ブロック番号の項目に設定された値が、取得した電池ブロック番号(ここでは、“1”)に一致するレコード(行)について、測定電流の項目に設定された電流値で、測定電圧の項目に設定された電圧値を割ることで、内部抵抗を求め、同じ行の内部抵抗の項目に設定する。
【0041】
そして、ステップS3で、CPU61は、交換予定の電池ブロック内の各電池セルについて、内部抵抗の最大値と最小値の差を求め、この差が予め定められた閾値以上であるかどうかを判定する。
【0042】
ステップS3で差が予め定められた閾値より小さいと判定された場合、ステップS4で、CPU61は、交換予定の電池ブロック内の電池セル毎に設定していた目標とするSOC範囲をリセット(基準のSOC範囲(ここでは、10%−90%))に戻し、(目標とする電圧範囲もリセットし、)一連の処理を終了する。
【0043】
ステップS3で差が予め定められた閾値以上であると判定された場合、ステップS5で、CPU61は、交換予定の電池ブロック内の各電池セルの内部抵抗の平均値を算出する。
【0044】
そして、ステップS6で、CPU61は、内部抵抗が平均値以下の電池セルについて、SOC範囲の下限、上限をさらに広げる。ここでは、SOC範囲が7.5%−92.5%から5%−95%に広げ、目標とする電圧範囲も広げる。そして、一連の処理を終了する。
【0045】
このようにすることで、電池セル間で劣化バラツキがある交換予定の電池ブロックにおいて、目標とするSOC範囲(電圧範囲)を一律に広げることで、各電池セルの劣化を進ませるとともに、内部抵抗値が平均値以下で劣化が進んでいない電池セルについて、目標とするSOC範囲をさらに一定量広げることで、その内部抵抗値が平均値以下の電池セルの劣化をさらに進ませている。
【0046】
よって、交換予定の電池ブロックにおいて、一律に電池セルの劣化を進ませるとともに、劣化が進んでいない電池セルの劣化度合いを、劣化が進んでいる電池セルに追いつかせて、交換予定の電池ブロックにおいて、ほぼ全ての電池セルが劣化した状態での電池ブロックの交換が可能となり、使い切っていない電池セルをいくつか含む形での不経済な電池ブロックの交換を回避することができる。
【0047】
続いて、図8および図9を参照して、電池セル毎の充放電動作を説明する。
図8は、図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部の充電時の関連部分を示す図である。
【0048】
電池ブロック30に対し図4で示されていた、電流センサ33、電圧センサ51、・・・、56や、スイッチ41−1、・・・、46−2を含む電流・電圧測定関連ユニットは、図8では省略され、代わりに、電池セル34、・・・、37、・・・のより詳細な構成がスイッチ81、・・・、84、・・・、101、・・・、104、・・・、抵抗91、92、93、94、・・・を追加することで示されている。また、充電制御部67の構成がより詳細に示されている。
【0049】
充電時には、図2のスイッチ21が充電装置12と導通する側に切り替わり、充電装置12から電池パック13への充電が行われる。
図8では、電池ブロック30の内部には、充電時に過充電になった電池セルをバイパスし過充電でない電池セルを充電し、放電時に過放電となった電池セルをバイパスし過放電でない電池セルを放電するために、通り道(パス)を決めるためのスイッチと抵抗が設けられている。
【0050】
図8に示すように、充電時には、充電制御部67からの信号により、電池セル34、35、36、37、・・・に対し、スイッチ101、102、103、104、・・・の導通/非導通を制御する。
【0051】
充電制御部67は、電池パック13が含む電池セルの数だけ、セル充電制御部を有する。すべてのセル充電制御部は同じ構成をしているので、ここでは、電池セル34に対する充電を制御するセル充電制御部121についてのみ説明する。
【0052】
セル充電制御部121は、コンパレータ136と、充電目標電圧発生回路132と、測定電圧発生回路134と、を有する。
充電目標電圧発生回路132は、図7のフローチャートにおいて、ステップS6で、電池セル34に対し求められた目標電圧(上限)に相当する電圧を発生している。交換予定の電池ブロックに変更がなく、図7のフローチャートが実行される度に、ステップS6で、求められた目標電圧(上限)に相当する電圧がこの回路132に設定され、出力される。
【0053】
測定電圧発生回路134は、セル電圧・電流収集部62により最後に(直近の収集タイミングで)電池セル34に対し収集された電圧を発生している。
コンパレータ136は、充電目標電圧発生回路132の出力電圧と、測定電圧発生回路134の出力電圧とを比較し、比較結果の信号を、電池セル34に対する充電電流をバイパスさせるかどうかを決めるスイッチ101に出力する。
【0054】
すなわち、コンパレータ136は、測定電圧発生回路134の出力電圧が充電目標電圧発生回路132の出力電圧以上となったときに、スイッチ101を導通させる信号を出力して電池セル34への充電をバイパスさせて過充電を回避し、測定電圧発生回路134の出力電圧が充電目標電圧発生回路132の出力電圧より低いときに、スイッチ101を非導通にさせる信号を出力して電池セルへの充電を実行する。
【0055】
これにより、互いに直列に接続された電池セル毎の充電を可能としている。
図9は、図2の電池部、電池監視部、および、電池制御部の放電時の関連部分を示す図である。
【0056】
電池ブロック30に対し図4で示されていた、電流センサ33、電圧センサ51、・・・、56や、スイッチ41−1、・・・、46−2を含む電流・電圧測定関連ユニットは、図9では省略され、代わりに、電池セル34、・・・、37、・・・のより詳細な構成がスイッチ81、・・・、84、・・・、101、・・・、104、・・・、抵抗91、92、93、94、・・・、を追加することで示されている。また、放電制御部68の構成がより詳細に示されている。
【0057】
放電時には、図2のスイッチ21が負荷11と導通する側に切り替わり、電池パック13から負荷11への放電が行われる。
図9では、電池ブロック30の内部には、充電時に過充電になった電池セルをバイパスし過充電でない電池セルを充電し、放電時に過放電となった電池セルをバイパスし過放電でない電池セルを放電するために、通り道(パス)を決めるためのスイッチと抵抗が設けられている。
【0058】
図9に示すように、放電時には、放電制御部68からの信号により、電池セル34、35、36、37、・・・に対し、スイッチ81、82、83、84、・・・、の導通/非導通を制御する。
【0059】
放電制御部68は、電池パック13が含む電池セルの数だけ、セル放電制御部を有する。すべてのセル放電制御部は同じ構成をしているので、ここでは、電池セル34に対する放電を制御するセル放電制御部141についてのみ説明する。
【0060】
セル放電制御部141は、コンパレータ156と、放電目標電圧発生回路152と、測定電圧発生回路154と、を有する。
放電目標電圧発生回路152は、図7のフローチャートにおいて、ステップS6で、電池セル34に対し求められた目標電圧(下限)に相当する電圧を発生している。交換予定の電池ブロックに変更がなく、図7のフローチャートが実行される度に、ステップS6で、求められた目標電圧(下限)に相当する電圧がこの回路152に設定され、出力される。
【0061】
測定電圧発生回路154には、セル電圧・電流収集部62により最後に(直近の収集タイミングで)電池セル34に対し収集された電圧を発生している。
コンパレータ156は、放電目標電圧発生回路152の出力電圧と、測定電圧発生回路154の出力電圧とを比較し、比較結果の信号を、電池セル34に対する放電をバイパスさせるかどうかを決めるスイッチ81に出力する。
【0062】
すなわち、コンパレータ156は、測定電圧発生回路154の出力電圧が放電目標電圧発生回路152の出力電圧より低くなったときに、スイッチ81を導通させる信号を出力して電池セル34からの放電をバイパスさせて過放電を回避し、測定電圧発生回路154の出力電圧が放電目標電圧発生回路152の出力電圧以上となったときに、スイッチ81を非導通にさせる信号を出力して電池セル34からの放電を実行する。
【0063】
これにより、互いに直列に接続された電池セル毎の放電を可能としている。
そして、交換予定の電池ブロックにおいて、充電時にセル充電制御部により導通させる必要があるスイッチ数(充電をバイパスする電池セルの数)が所定数以上(例えば6個の電池セルのうちの4個以上)になったときや、放電時にセル放電制御部により導通させる必要があるスイッチ数(放電をバイパスする電池セルの数)が所定数以上(例えば6個の電池セルのうちの4個以上)になったときなどに、不図示のユニットにより、車両の運転者に、該当の電池ブロックの交換が必要である旨を示す情報がランプ点灯、音声などで報知される。
【0064】
なお、以上の説明では、電池ブロック内において、複数の電池セルが直列に接続されていたが、複数の電池セルを並列に接続することも可能である。この場合、図4、図8、図9において、別個に設けられていた充電制御部67と放電制御部68は、図10に示すように、充放電制御部230として一体化する。
【0065】
充放電制御部230は、電池ブロック内の並列に接続された電池セル181、182、・・・の充放電をそれぞれ制御するセル充放電制御部231、232、・・・を備えている。
【0066】
電池ブロック内の並列に接続された電池セル181、182、・・・には、電池セルに対する電流の流れを遮断するかどうかを決めるためのスイッチ191、192、・・・がそれぞれ設けられている。
【0067】
充電を行なうか放電を行なうかに応じて、セル充放電制御部231、232、・・・からの出力信号に基づいて、導通/非導通となるように、それらのスイッチ191、192、・・・は制御される。
【0068】
電圧センサ221は、電池ブロック内の複数の電池セルのうちの1つ(ここでは、電池セル181)の両端の電圧を測定する。各電池セルが並列接続である関係から、残りの電池セル(電池セル182、・・・)の測定電圧も、電圧センサ221の測定値で代表する。
【0069】
また、並列に接続された電池セル181、182、・・・に直列に電流センサ211、212、・・・が設けられる。電池セル181、182、・・・の内部抵抗R、R、・・・は、電圧センサ221の測定電圧Vを、電流センサ211、212、・・・の測定電流I、I、・・・で割って求める(R=V/I、R=V/I、・・・)。
【0070】
続いて、図10における充電時と放電時の動作について説明する。
図10において、充電時には、スイッチ21が充電装置12側に切り替わるとともに、各セル充放電制御部内のスイッチ(ここでは、代表して、セル充放電制御部231について詳細を示している。セル充放電制御部231ではスイッチ248)が充電時の制御を行なうコンパレータ(セル充放電制御部231ではコンパレータ247)側に切り替わる。
【0071】
コンパレータ247は、充電目標電圧発生回路241の出力電圧と、測定電圧発生回路245の出力電圧とを比較し、比較結果の信号を、電池セル181に対する充電電流を遮断するかどうかを決めるスイッチ191に出力する。
【0072】
すなわち、コンパレータ247は、測定電圧発生回路245の出力電圧が充電目標電圧発生回路241の出力電圧以上となったときに、スイッチ191を非導通させる信号を出力して電池セル181への充電を遮断して過充電を回避し、測定電圧発生回路245の出力電圧が充電目標電圧発生回路241の出力電圧より低いときに、スイッチ191を導通させる信号を出力して電池セル181への充電を実行する。
【0073】
これにより、互いに並列に接続された電池セル毎の充電を可能としている。
図10において、放電時には、スイッチ21が負荷11側に切り替わるとともに、各セル充放電制御部内のスイッチ(ここでは、代表して、セル充放電制御部231について詳細を示している。セル充放電制御部231ではスイッチ248)が放電時の制御を行なうコンパレータ(セル充放電制御部231ではコンパレータ249)側に切り替わる。
【0074】
コンパレータ249は、放電目標電圧発生回路243の出力電圧と、測定電圧発生回路245の出力電圧とを比較し、比較結果の信号を、電池セル181からの放電電流を遮断するかどうかを決めるスイッチ191に出力する。
【0075】
すなわち、コンパレータ249は、測定電圧発生回路245の出力電圧が放電目標電圧発生回路243の出力電圧より低くなったときに、スイッチ191を非導通させる信号を出力して電池セル181からの放電を遮断して過放電を回避し、測定電圧発生回路245の出力電圧が放電目標電圧発生回路243の出力電圧以上となったときに、スイッチ191を導通させる信号を出力して電池セル181からの放電を実行する。
【0076】
これにより、互いに並列に接続された電池セル毎の放電を可能としている。
【符号の説明】
【0077】
1、13 電池パック
4、8、25−1、25−2、25−3、25−4、30 電池ブロック
5−1、5−2、5−3、5−4、9−1、9−2、9−3、9−4、34、35、36、37、38、39、181、182 電池セル
11 負荷
12 充電装置
15 電池部
16 電池監視部
18 電池制御部
19 走行制御部
21、27−1、27−2、27−3、27−4、31、41−1、41−2、42−1、42−2、43−1、43−2、44−1、44−2、45−1、45−2、46−1、46−2、81、82、83、84、101、102、103、104、191、192、248 スイッチ
33、211、212 電流センサ
51、52、53、54、55、56、221 電圧センサ
61 CPU
62 セル電圧・電流収集部
64 メモリ
67 充電制御部
68 放電制御部
71 電池ブロック情報テーブル
72 電池セル情報テーブル
73 OCV−CCV対応表データ
74 SOC−OCV対応表データ
75 交換予定ブロック設定プログラム
76 電池セル目標SOC範囲(電圧範囲)設定プログラム
91、92、93、94 抵抗
121、122、123、124 セル充電制御部
136、156、247、249 コンパレータ
132、241 充電目標電圧発生回路
134、154、245 測定電圧発生回路
156、243 放電目標電圧発生回路
230 充放電制御部
231、232 セル充放電制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の電池セルが直列または直並列に接続された電池ブロック部が着脱可能に備えられる電池劣化均等化システムにおいて、
前記電池ブロック部の各電池セルの電流および電圧を監視する電池監視部と、
前記電池監視部からの電流および電圧を基に、前記各電池セルの内部抵抗値を算出し、算出された各電池セルの内部抵抗値を基に前記各電池セルが目標とする電圧値を設定し、前記設定された電圧値に向けて充放電を制御する電池制御部と、
を有し、内部抵抗の低い前記電池セルを選択して劣化を進ませ、前記電池ブロックを構成する前記各電池セルが均一に劣化が進むようにすることを特徴とする電池劣化均等化システム。
【請求項2】
前記電池制御部は、
前記電池監視部で取得した前記各電池セルの電流および電圧を収集するセル電圧電流収集部と、収集された前記電流および電圧を基に前記各電池セルの内部抵抗値を算出する抵抗算出部と、充放電の電圧値の目標値のバラツキ範囲を示す値が所定の閾値以上であったときに、前記各電池セルの内部抵抗値の平均値以下の内部抵抗値を持つ電池セルに対し、充電の目標とする電圧値を基準値から上げて設定するとともに、放電の目標とする電圧値を基準値から下げて設定する目標電圧設定部と、設定された充放電の目標とする各電圧値で前記電池ブロックの各電池セルに対する充放電を実行する充放電部と、
から成る、ことを特徴とする請求項1に記載の電池劣化均等化システム。
【請求項3】
前記目標電圧設定部は、充電の目標とする電圧値を設定するに際し、充電状態の上限値を基準値から一定量上げて、充電状態と電圧との関係を基に、一定量上げた充電状態の上限値に対応する電圧を求め、
放電の目標とする電圧値を設定するに際し、充電状態の下限値を基準値から一定量下げて、充電状態と電圧との関係を基に、一定量下げた充電状態の下限値に対応する電圧を求める、ことを特徴とする請求項2記載の電池劣化均等化システム。
【請求項4】
複数個の電池セルが直列または直並列に接続された電池ブロック部が着脱可能に備えられる電池システムにおける電池劣化均等化方法において、
前記電池ブロック部の各電池セルの電流および電圧を監視する監視ステップと、
前記監視ステップにおいて監視された各電池セルの電流および電圧を基に、前記各電池セルの内部抵抗値を算出する抵抗算出ステップと、
算出された各電池セルの内部抵抗値を基に前記各電池セルが目標とする電圧値を設定し、前記設定された電圧値に向けて充放電を制御する制御ステップと、を有し、
前記制御ステップにおいて、内部抵抗の低い前記電池セルを選択して劣化を進ませ、前記電池ブロック部を構成する前記各電池セルが均一に劣化が進むようにすることを特徴とする電池劣化均等化方法。
【請求項5】
前記制御ステップは、
前記監視ステップで取得した前記各電池セルの電流および電圧を収集するセル電圧電流収集ステップと、
収集された前記電流および電圧を基に前記各電池セルの内部抵抗値を算出する抵抗算出ステップと、
充放電の電圧値の目標値のバラツキ範囲を示す値が所定の閾値以上であったときに、前記各電池セルの内部抵抗値の平均値以下の内部抵抗値を持つ電池セルに対し、充電の目標とする電圧値を基準値から上げて設定するとともに、放電の目標とする電圧値を基準値から下げて設定する目標電圧設定ステップと、
設定された充放電の目標とする各電圧値で、前記電池ブロック部の各電池セルに対する充放電を制御する充放電ステップと、を含むことを特徴とする請求項4記載の電池劣化均等化方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−85315(P2013−85315A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221480(P2011−221480)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】